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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022113328
(43)【公開日】2022-08-04
(54)【発明の名称】カルボナーラ風ソース
(51)【国際特許分類】
   A23L 23/00 20160101AFI20220728BHJP
【FI】
A23L23/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021009486
(22)【出願日】2021-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100156982
【弁理士】
【氏名又は名称】秋澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】小川 紀子
【テーマコード(参考)】
4B036
【Fターム(参考)】
4B036LF03
4B036LH13
4B036LK03
4B036LP01
(57)【要約】
【課題】本発明は卵黄の加熱凝固に由来するザラつきのある食感が抑制されたカルボナーラソースを提供することを課題とする。
【解決手段】レッドパーム油及びHLB値が5.5以上の乳化剤を含有し、任意に卵黄を含んでいても良いカルボナーラソースであって、ソース全量に対する卵黄の含有量A(質量%)とレッドパーム油の含有量B(質量%)と乳化剤の含有量C(質量%)とが下記式
式1: 2.0≦A+B×4≦23.0
式2: 4.5≦C/B×100≦7.5
を満たし、卵黄の含有量が1.5質量%以下とすることによって上記課題を解決する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レッドパーム油及びHLB値が5.5以上の乳化剤を含有し、任意に卵黄を含んでいても良いカルボナーラソースであって、ソース全量に対する卵黄の含有量A(質量%)とレッドパーム油の含有量B(質量%)と乳化剤の含有量C(質量%)とが下記式
式1: 2.0≦A+B×4≦23.0
式2: 4.5≦C/B×100≦7.5
を満たし、卵黄の含有量が1.5質量%以下である、前記カルボナーラソース。
【請求項2】
レッドパーム油及び乳化剤を含み、任意に卵黄を含んでいても良い原料を加熱混合処理する工程を含む、請求項1に記載のカルボナーラソースの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカルボナーラ風ソースに関する。
【背景技術】
【0002】
カルボナーラソースとは、卵黄又は全卵、チーズ及びクリーム類、更に必要に応じて添加される調味料並びに具材等を含む原料混合物を加熱処理してクリーム状に調理されたソースである。カルボナーラソースは、卵黄に由来するまろやかさと淡黄色の色味が特徴であり、滑らかで適度な粘度を有する。このようなカルボナーラソースを得るためには、加熱凝固性のある卵黄(凝固温度は65~70℃)を相応量使用し、卵黄を含む原料混合物をゆっくりと加熱して卵黄が加熱凝固してダマ状にならずに適度な粘度になる段階で加熱を停止することが肝要である。しかしながら、食品工業的には75~100℃での加熱工程を備える必要があり、このような条件下では卵黄が加熱凝固してぼそぼそとしたザラつきのある食感が生じる。それ故、卵黄の加熱凝固を防止又は抑制する技術が求められていた。
特許文献1では、澱粉を含まず、卵黄及びチーズを含有する水分散液を加熱した後均質化し、この均質化液に澱粉を混合して加熱する工程を含むカルボナーラソースの製造方法が開示されている。特許文献2、特許文献3では、チーズと特定の乳化剤とを水系媒体中で均質化処理した後、この均質化物に卵黄を混合することを特徴としたカルボナーラ用レトルトソースの製造方法が開示されている。特許文献4では、卵黄と糖アルコールが配合されているカルボナーラ用レトルトソースが開示されている。特許文献5では、耐熱性(耐熱凝固性)に優れたアルカリプロテアーゼで処理した酵素処理卵黄が開示されている。特許文献6では、卵黄、澱粉及び水を加えた懸濁液を加熱凝固させた後に微粉化して得た加熱処理しても熱凝固しない卵黄含有食品原料が開示されている。何れも優れた技術ではあるが、更なる改良が求められていた。
一方で、卵黄の加熱凝固によるザラつきを抑えるために、カルボナーラソースに対する卵黄の使用割合を低減することも行われているが、その低減に依存して卵黄由来のまろやかさも弱くなるという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-166959
【特許文献2】特開2005-198549
【特許文献3】特開2005-198550
【特許文献4】特開平10-257871
【特許文献5】特開2005-52052
【特許文献6】特開平10-191936
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は卵黄の加熱凝固に由来するザラつきのある食感が抑制され、かつ、卵黄の使用量を低減したにも関わらず、まろやかさがあり良好な色味を有するカルボナーラソースを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明者等は上記課題を解決する為鋭意研究を重ねた結果、レッドパーム油及びHLB値が5.5以上の乳化剤を含有し、任意に卵黄を含んでいても良いカルボナーラソースであって、ソースの全量に対する卵黄の含有量A(質量%)とレッドパーム油の含有量B(質量%)と乳化剤の含有量C(質量%)とが下記式
式1: 2≦A+B×4≦23
式2: 4.5≦C/B×100≦7.5
を満たし、卵黄の含有量が1.5質量%以下である、前記カルボナーラソースにより、卵黄の加熱凝固に由来するザラつきのある食感が抑制でき、かつ、卵黄の使用量を低減したにも関わらず、まろやかさがあり良好な色味を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は以下の通りである。
[1]レッドパーム油及びHLB値が5.5以上の乳化剤を含有し、任意に卵黄を含んでいても良いカルボナーラソースであって、ソース全量に対する卵黄の含有量A(質量%)とレッドパーム油の含有量B(質量%)と乳化剤の含有量C(質量%)とが下記式
式1: 2≦A+B×4≦23
式2: 4.5≦C/B×100≦7.5
を満たし、卵黄の含有量が1.5質量%以下である、前記カルボナーラソース。
[2]レッドパーム油及び乳化剤を含み、任意に卵黄を含んでいても良い原料を加熱混合処理する工程を含む、前記[1]に記載のカルボナーラソースの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、卵黄の加熱凝固のために生じるザラつきのある食感が抑制され、卵黄の使用量を低減したにも関わらず、まろやかさがあり良好な色味を有するカルボナーラソースを提供することができる。また本発明のカルボナーラソースは冷凍保存後再加熱しても同様の効果を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のカルボナーラソースはレッドパーム油及びHLB値が5.5以上の乳化剤を含有し任意に卵黄を含んでいても良いカルボナーラソースであって、ソース全量に対する卵黄の含有量A(質量%)とレッドパーム油の含有量B(質量%)と乳化剤の含有量C(質量%)とが下記式
式1: 2≦A+B×4≦23
式2: 4.5≦C/B×100≦7.5
を満たし、卵黄の含有量が1.5質量%以下である。
【0009】
パーム油の原料であるヤシ科アブラヤシ属のアブラヤシ(パーム椰子)を栽培して収穫されるパーム果実は、その果肉にβ-カロテンを主成分とするカロテノイドを豊富に含有している。そのため、パーム果実を圧搾又は抽出し、任意に脱ガムして得られるパーム粗油は赤橙色を呈している。通常、このパーム粗油を脱酸、脱色、脱臭、脱ガム、蒸留等の工程に供し、食用油脂として広く使用されている白色に近い色味を帯びたパーム油が得られる。なお、パーム果実から採取されるパーム油は、パーム種子から採取されるパーム核油とは区別されるものである。
本発明において使用される「レッドパーム油」はパーム粗油及びパーム粗油を精製する過程においてカロテノイドを残すようにして精製されたパーム油のことであり、パーム粗油又はカロテノイドを残すように精製されたパーム油を分別、水素添加、エステル交換等の加工に供して得られるものも含まれる。例えば、蒸留により精製したレッドパーム油を分別して得られるレッドパームオレイン、レッドパームスーパーオレイン等も含まれる。このようなレッドパーム油は、原料アブラヤシの栽培状況や産地、精製方法にもよるが、一般的に400~600ppmあるいはそれ以上のカロテノイドが含まれることもある。本発明に使用するレッドパーム油は、パーム果実から搾油、精製、加工等の工程を経て製造することができるが、市販されているものを使用することもできる。
本発明のカルボナーラソースにおけるレッドパーム油の含有量は、後述の通りソースに使用する卵黄の量との関係によって異なるが、好ましくはソース全量に対して0.1~5.5質量%であり、好ましくは0.3~5.5質量%であり、より好ましくは0.7~4.5質量%であり、更に好ましくは1.5~4.0質量%である。
【0010】
本発明において使用される「卵黄」とは、常法により割卵した後に黄味と白身を分離して得た黄身部分である。卵黄を含む全卵として使用しても良い。本発明のカルボナーラソースに使用する卵黄又は全卵は、食用に供される鳥類由来の卵黄又は全卵であればよく、そのような鳥類としてニワトリ、ウズラ、アヒル、ガチョウ、ダチョウ、ホロホロチョウ、キジ、エミュー、カモメ等が挙げられ、最も好ましくはニワトリの卵由来の卵黄又は全卵である。
一般に、カルボナーラソースに使用する卵黄の量は、ベーコン等の固形具材を除いたソース全量に対して1.0~10.0質量%である。食品工業的に加熱処理する温度(75~100℃)では卵黄が加熱凝固してザラついた食感になるため、本発明のカルボナーラソースにおける卵黄の含有量は、ソース全量に対して1.5質量%以下であり、好ましくは1.3質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以下であり、更に好ましくは0.8質量%以下である。
【0011】
本発明のカルボナーラソースにおいて、ベーコン等の固形成分を除くソース全量に対する卵黄の含有量をA(質量%)、レッドパーム油の含有量をB(質量%)とした場合、「A+B×4」の値が2.0~23.0であり、好ましくは2.5~21.0であり、より好ましくは3.0~18.0であり、更に好ましくは4.0~15.0である。「A+B×4」の値が2.0未満になるとカルボナーラソースのまろやかさ弱くなり色味が薄くなり、また、23.0を超えると色味が濃くなりすぎ油っぽくなるためにまろやかさが損なわれる恐れがある。
【0012】
乳化剤とは、1分子の中に親油基(疎水基)と親水基とを含む両親媒性の化合物のことであり、親油基は油脂に馴染み易く、親水基は水に馴染み易い性質である。このような乳化剤は、レシチン(大豆、卵黄等に由来)、サポニン(キラヤ、ダイズ等に由来)、カゼインナトリウム(牛乳等の畜乳由来)等の天然乳化剤と合成乳化剤とに大別される。食品利用できる合成乳化剤は、親油基が炭素数8~22の飽和脂肪酸及び/又は不飽和脂肪酸で構成され、親水基がグリセリン、ポリグリセリン、ショ糖、プロピレングリコール、ソルビタン等で構成される。
またHLBとは、親水性疎水性バランス(Hydrophile Lipophile Balance)の略であって、乳化剤が親水性か親油性かを知る指標となるもので、0~20の値をとる。HLB値が小さい程、親油性が強いことを示し低HLB乳化剤は親油性が高く、高HLB乳化剤は親水性が高い。
【0013】
本発明において、「乳化剤」は、食用に供される乳化剤であれば何れも好適に使用することができる。そのような乳化剤として、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン、サポニン、カゼインナトリウム、有機酸モノグリセリド、有機酸ジグリセリド等が挙げられ、それら乳化剤の2種以上の組み合わせでもよい。
乳化剤のHLB値は5.5以上であり、好ましくは6~18であり、より好ましくは6.5~17.5であり、最も好ましくは8~17である。乳化剤のHLB値が5.5未満ではレッドパーム油が乳化されず油浮きが生じると共に色味が薄くなる。乳化剤のHLB値が18を超えると親水性が高くなりすぎる傾向にあり、レッドパーム油を充分に乳化できず油浮きが生じる傾向にある。HLB値が5.5以上の乳化剤としてはHLB値7のリョートーシュガーエステルS-770、HLB値9のリョートーシュガーエステルS-970、HLB値11のリョートーシュガーエステルS-1170、HLB値13のリョートーポリグリエステルSWA15D、HLB値14のリョートーポリグリエステルSWA10D、HLB値16のリョートーシュガーエステルS-1670(いずれも三菱ケミカルフーズ株式会社、「リョートー」は商標である)、HLB値6のポエムK-37V、HLB値8のL-300(何れも理研ビタミン株式会社、「ポエムは商標である」)等を上げることが出来る。乳化剤を2種以上組み合わせる場合、組み合わせる乳化剤のHLB値はそれぞれ5.5以上である。
本発明のカルボナーラソースにおいて、ソース全量に対するレッドパーム油の含有量をB(質量%)と乳化剤の含有量をC(質量%)とした場合、乳化剤の使用量は「C/B×100」、すなわちカルボナーラソース中に含まれるレッドパーム油の全量に対する質量%として表すと「C/B×100」の値は4.5~7.5、好ましくは5.0~7.0であり、更に好ましくは5.5~6.5である。「C/B×100」の値が4.5未満ではレッドパーム油に対する使用量が少なくレッドパーム油を充分に乳化できなくなりカルボナーラソースに油浮きが生じると共に色味が薄くなる。また、「C/B×100」の値が7.5を超えると乳化剤の異味により味のバランスが悪くなりまろやかさが損なわれる。
なお、本発明のカルボナーラソースに使用する乳化剤は、カルボナーラソースの原料として使用する卵黄等に内在するレシチン等の乳化性物質をも包含することを意図するものではなく、卵黄等の原料に含まれる内在性の乳化性物質とは別に添加するものである。
【0014】
本発明のカルボナーラソースは、通常カルボナーラソースに使用されるその他の原料を含むことができる。そのような原料として、例えばチーズ類;植物性や動物性のクリーム類;食塩、砂糖、エキス、香辛料等の調味料;増粘多糖類;澱粉類;加工澱粉類;食用色素等を含むことができる。更に、ベーコン等の固形具材も任意に使用することができる。
【0015】
本発明のカルボナーラソースの製造方法は、レッドパーム油及び乳化剤を含み、任意に卵黄を含んでいても良い原料を加熱混合処理する以外は、通常のカルボナーラソースの製造方法にしたがって製造することができる。得られたカルボナーラソースを常法によりレトルト処理することも出来る。また得られたカルボナーラソースを常法により冷凍して冷凍カルボナーラソースを製造することも出来る。
加熱混合処理の方法は特に限定されず、例えば原料を加熱調理用ニーダーに投入し、混合しながら80~90℃まで加熱し、80~90℃で5~15分間混合加熱することにより行うことができる。
レトルト処理の方法についても特に限定されず、例えば、食品をレトルトパウチに充填、密封し、レトルト(高圧釜)により121℃、30分以上処理することによって行うことができる。
冷凍処理の方法についても特に限定されず、例えば袋に充填して密封し、冷凍装置により急速冷凍することにより行うことができる。
【0016】
得られたカルボナーラソースは、そのままパスタに掛けて食することもできるが、チルドないしは冷凍保存した後に湯煎又は電子レンジ加熱ないしは解凍して食することもでき、レトルト処理して常温保存の後に同様に加熱して食することもできる。
【実施例0017】
以下本発明を具体的に説明する為に実施例を示すが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
製造例1 カルボナーラソースの製造
(1)下記配合表の原料を調理器に投入し、混合しながら中心温度が85℃になるまで昇温し、85℃で10分間混合加熱してカルボナーラソースを得た。
【表1】


卵黄液:鶏卵を割卵して卵黄と卵白とを分離し、卵黄を均質化したものである。
レッドパーム油:カロチーノ ピュアオレイン(イエナ商事株式会社、カロテノイド含量500ppm以上(規格値))である。
乳化剤:HLB値14のリョートーポリグリエステルSWA10D(三菱ケミカルフーズ株式会社)である。
加工澱粉:ヒドロキシプロピルリン酸架橋澱粉(C☆CreamTex75710、カーギルジャパン社製)である。
【0018】
評価例1 カルボナーラソースの官能評価
皿に盛り付けた茹でスパゲッティ200gにカルボナーラソース100gを上掛けして十分に混合し、10名の熟練パネラーにより下記評価表に従って官能評価を行った。
評価基準表1
【0019】
試験例1 従来のカルボナーラソース(評価の基準)
表1記載の質量部の卵黄、レッドパームオイル、乳化剤及び加熱温度にした以外は製造例1に従ってカルボナーラソースを製造し、評価例1に従って官能評価を行った。
参考例1及び2では、食品工業的なカルボナーラソースの製造における加熱温度範囲に準じて85℃で加熱した。参考例3及び4では、卵黄の加熱凝固が起こらない65℃で加熱した(家庭や飲食店等で即食する際の加熱温度)。卵黄3.0質量部を用いて85℃で加熱した参考例1は従来の食品工業的なカルボナーラソースであり、まろやかさを許容範囲の下限である3点、色味を許容範囲の薄い淡黄色の下限である3点、ザラつきを1点とした。卵黄1.5質量部を用いて85℃で加熱した参考例2はザラつきを低減した従来の食品工業的なカルボナーラソースであり、まろやかさと色味を1点、ザラつきを許容範囲の下限である3点とした。卵黄3質量部を用いて65℃で加熱した参考例3は即食用のカルボナーラソースであり、ザラつきを5点、まろやかさと色味を各々3点とした。卵黄10質量部を用いて65℃で加熱した参考例4は色味が濃い即食用のカルボナーラソースであり、まろやかさ及びザラつきを5点、色味を許容範囲の濃い淡黄色の上限である3点とした。これらの評価点は、以降の試験例における官能評価を実施する際の基準点とした。
【0020】
表1

RP油は、レッドパーム油の略である(以降、表中は同様に略す)。
【0021】
試験例2 卵黄に対するレッドパーム油の置換割合の検討
表2記載の質量部の卵黄、レッドパームオイル、乳化剤にした以外は製造例1に従ってカルボナーラソースを製造し、評価例1に従って評価を行った。結果を表2に示す。
その結果、卵黄を使用せずレッドパーム油を0.5質量部使用した実施例1では、まろやかさ及び色味が参考例1及び3と同等であり、ザラつきは全くなかった。レッドパーム油を0.5質量部未満にした実施例2、4~5では、卵黄を使用することにより実施例1よりもまろやかさと色味が良好になり、ザラつきがあるものの参考例2よりも十分に低減されていた。レッドパーム油を2.0及び3.0質量部使用した実施例9及び10では、参考例4に匹敵するまろやかさであり、色味は濃くもなく薄くもなく非常に良好な淡黄色であり、ザラつきは卵黄の使用量に依存していた。実施例14~17では、レッドパーム油の使用量が多いため、油っぽさが出てきてまろやかさの評価点が低くなる傾向であり、色味も濃くなったが、相対的に十分に許容されうるものであった。
比較例3では、レッドパーム油が少ないためにまろやかさ及び色味ともやや悪かった。比較例1及び2では、卵黄及びレッドパーム油の量がいずれか又は双方とも少ないためにまろやかさ及び色味が不適であった。比較例4~6では、卵黄とレッドパーム油の合計あるいはレッドパーム油が多いために色味が強くなりすぎ不適であった。
以上の結果から卵黄とレッドパーム油の使用量の関係を検討したところ、実施例1と比較例3とからレッドパーム油の使用量に4を乗じた値に卵黄の使用量を加えた値「A+B×4」が2以上、実施例17と比較例4~6とからその値が22.5以下の範囲であればまろやかさ、ザラつき及び色味が許容範囲以上のカルボナーラソースが得られると推察された。
【0022】
表2





【0023】
試験例3 レッドパーム油に対する乳化剤の割合の検討
表3記載の量の乳化剤を使用した以外は実施例9に従ってカルボナーラソースを製造し、評価例1に従って評価を行った。結果を表3に示す。
その結果、レッドパーム油に対する乳化剤の割合が外割で4質量%の比較例7では、レッドパーム油を十分に乳化することができず油浮きが生じ、色味もやや薄くなり物足りないものであった。乳化剤の割合が外割で8質量%の比較例8では、十分に乳化されて油浮きがなかったものの、乳化剤の異味によりまろやかさが損なわれた。
【0024】
表3
【0025】
試験例4 乳化剤のHLB値の検討
表4記載の乳化剤を使用した以外は実施例9に従ってカルボナーラソースを製造し、評価例1に従って評価を行った。結果を表4に示す。
その結果、HLB7~16の乳化剤を使用した実施例9、18、19では、いずれの評価項目も良好であった。HLB5の乳化剤を使用した比較例9では、レッドパーム油の乳化が不十分であったためか、油浮きが著しく、カルボナーラソースの色味も薄くなり、まろやかさもやや物足りないものであった。
【0026】
表4

乳化剤1:リョートーポリグリエステルSWA10D(HLB14)
乳化剤2:リョートーシュガーエステルS-770(HLB7)
乳化剤3:リョートーシュガーエステルS-1670(HLB16)
乳化剤4:リョートーシュガーエステルS-570(HLB5)
※全て三菱ケミカルフーズ株式会社
【0027】
製造例2 冷凍カルボナーラスパゲッティの製造方法
製造例1で得られたカルボナーラソースを真空冷却器に投入し、中心温度が20℃になるまで冷却し、その内100gを樹脂製容器に盛り付けた200gのスパゲッティに上掛けし、-35℃で急速冷凍し、樹脂製フィルムで密封して冷凍カルボナーラソースを得た。
家庭用冷凍冷蔵庫の冷凍室で1週間保管した冷凍カルボナーラスパゲッティを電子レンジに投入し、600Wで5分間加熱した以外は評価例1に従って官能評価を行った。なお、評価の基準についても同様に冷凍カルボナーラスパゲッティにして基準点とした。
【0028】
試験例5 冷凍カルボナーラスパゲッティの検討
卵黄、レッドパーム油、乳化剤の使用量を試験例2と同様にし、製造例2に従って冷凍カルボナーラスパゲッティを製造して評価した。
その結果、何れも試験例2と同様の評価結果であり、本発明のカルボナーラソースは冷凍スパゲッティとしても効果が得られることが判った。