(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022113573
(43)【公開日】2022-08-04
(54)【発明の名称】駆動回路および駆動回路の制御方法
(51)【国際特許分類】
G02F 1/163 20060101AFI20220728BHJP
【FI】
G02F1/163
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021009896
(22)【出願日】2021-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100213333
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿山 昌代
(72)【発明者】
【氏名】宮川 和典
(72)【発明者】
【氏名】久保田 節
(72)【発明者】
【氏名】難波 正和
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 泰士
(72)【発明者】
【氏名】守山 正巳
(72)【発明者】
【氏名】北村 和也
【テーマコード(参考)】
2K101
【Fターム(参考)】
2K101AA22
2K101DA01
2K101DB03
2K101DB27
2K101DC05
2K101DC06
2K101DC33
2K101DC63
2K101EC02
2K101EC92
2K101EC93
2K101ED01
2K101EE01
2K101EG52
2K101EJ16
2K101EK05
(57)【要約】
【課題】簡易な構成でありながら、調光素子の光透過率を容易且つ短時間で安定した可変動作を可能とする駆動回路を提供する。
【解決手段】間隙を隔てて一対に配置される透明電極対111,121と、間隙に充填され、銀イオンを組成に含む電解液140と、を備える調光素子100を駆動させる駆動回路200は、プラス端子およびマイナス端子を備え、透明電極対111,121に電圧を印加する直流電源10と、第1第1透明電極111とマイナス端子との間に設けられる第1スイッチング素子11と、第1第1透明電極111とプラス端子との間に設けられる第2スイッチング素子12と、第2第2透明電極121とマイナス端子との間に設けられる第3スイッチング素子13と、第2第2透明電極121とプラス端子との間に設けられる第4スイッチング素子14と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隙を隔てて一対に配置される透明電極対と、前記間隙に充填され、銀イオンを組成に含む電解液と、を備える調光素子を駆動させる駆動回路であって、
プラス端子およびマイナス端子を備え、前記透明電極対に電圧を印加する直流電源と、
第1透明電極と前記マイナス端子との間に設けられる第1スイッチング素子と、
前記第1透明電極と前記プラス端子との間に設けられる第2スイッチング素子と、
第2透明電極と前記マイナス端子との間に設けられる第3スイッチング素子と、
前記第2透明電極と前記プラス端子との間に設けられる第4スイッチング素子と、
を備える、駆動回路。
【請求項2】
前記第1透明電極と前記第1スイッチング素子との間に設けられ、前記電圧を調整する第1可変抵抗器と、
前記第2透明電極と前記第3スイッチング素子との間に設けられ、前記電圧を調整する第2可変抵抗器と、
をさらに備える、請求項1に記載の駆動回路。
【請求項3】
前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子、前記第3スイッチング素子、および前記第4スイッチング素子のオンオフ動作を制御する制御装置をさらに備える、
請求項1又は2に記載の駆動回路。
【請求項4】
前記直流電源は、
安定化電源、乾電池、リチウムイオン電池、釦型電池、又は太陽電池で構成される、
請求項1から3のいずれか一項に記載の駆動回路。
【請求項5】
間隙を隔てて一対に配置される透明電極対と、前記間隙に充填され、銀イオンを組成に含む電解液と、を備える調光素子を駆動させる駆動回路の制御方法であって、
前記駆動回路は、
プラス端子およびマイナス端子を備え、前記透明電極対に電圧を印加する直流電源と、
第1透明電極と前記マイナス端子との間に設けられる第1スイッチング素子と、
前記第1透明電極と前記プラス端子との間に設けられる第2スイッチング素子と、
第2透明電極と前記マイナス端子との間に設けられる第3スイッチング素子と、
前記第2透明電極と前記プラス端子との間に設けられる第4スイッチング素子と、
前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子、前記第3スイッチング素子、および前記第4スイッチング素子のオンオフ動作を制御する制御装置と、
を備えており、
前記制御装置が、前記調光素子の光透過率を減衰、上昇、又は維持させる指令を受けるステップと、
前記制御装置が、前記指令に基づいて、前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子、前記第3スイッチング素子、および前記第4スイッチング素子のそれぞれのオン又はオフを決定するステップと、
前記制御装置が、前記決定に基づいて、前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子、前記第3スイッチング素子、および前記第4スイッチング素子のそれぞれに、オン信号又はオフ信号を送信するステップと、
前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子、前記第3スイッチング素子、および前記第4スイッチング素子が、前記制御装置から、前記オン信号又は前記オフ信号を受信するステップと、
前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子、前記第3スイッチング素子、および前記第4スイッチング素子が、前記オン信号又は前記オフ信号に基づいて、オンオフ動作を行うステップと、
を含む、制御方法。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記指令が、前記調光素子の光透過率を減衰させる指令であったとき、前記第1スイッチング素子にオン信号を送信し、前記第2スイッチング素子にオフ信号を送信し、前記第3スイッチング素子にオフ信号を送信し、且つ、前記第4スイッチング素子にオン信号を送信し、
前記指令が、前記調光素子の光透過率を上昇させる指令であったとき、前記第1スイッチング素子にオフ信号を送信し、前記第2スイッチング素子にオン信号を送信し、前記第3スイッチング素子にオン信号を送信し、且つ、前記第4スイッチング素子にオフ信号を送信し、
前記指令が、前記調光素子の光透過率を維持させる指令であったとき、前記第1スイッチング素子にオフ信号を送信し、前記第2スイッチング素子にオン信号を送信し、前記第3スイッチング素子にオフ信号を送信し、且つ、前記第4スイッチング素子にオン信号を送信する、若しくは、
前記第1スイッチング素子にオン信号を送信し、前記第2スイッチング素子にオフ信号を送信し、前記第3スイッチング素子にオン信号を送信し、且つ、前記第4スイッチング素子にオフ信号を送信する、
請求項5に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属塩析出型エレクトロクロミック方式の調光素子用駆動回路および当該駆動回路の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビカメラにおいて、撮像面に入射する光の量を調整する際、レンズの絞りの開口径(F値)を変化させて、出力画像の明るさを調整している。晴天時の屋外のような高照度な場所から屋内のような低照度な場所まで、明るさの差が幅広い状況下において、1台のテレビカメラで連続撮影する際、前述したレンズのF値調整のみでは、特に、高照度な場所での明るさを充分に減衰させることができない。このため、過度な量の光が撮像面に入ってしまうことになり、光量調整の限界が生じる。そこで、光量の減衰を目的として、予め光透過率が異なるNDフィルタ(Neutral Density Filter)を複数準備し、撮像面に入射する光の量の状況に応じて、適正な光透過率を有するNDフィルタを選択する。レンズのF値を変化させると、明るさが変わるのはもちろんだが、ピントの合う深さ方向の距離(被写界深度)、解像度までもが変化してしまう。特に、昨今の4K、8Kの高精細テレビシステムでは、レンズのF値を一定より小さくすると、光の回折現象由来の画像ボケ(通称;小絞りボケ)が生じ、取得した画像の解像度が著しく低下することが問題となっている。
【0003】
そこで、光透過率を自由且つ無段階に調整できる可変NDフィルタに期待が寄せられおり、特に、ほぼ100%~1%の範囲で光透過率を無段階に調整できる金属塩の析出現象を採用した可変NDフィルタが注目されている。前述した光の回折現象の対策としては、レンズのF値を解像度が優れた値に設定し、可変NDフィルタの光透過率を調整すれば解決できる。
【0004】
例えば、特許文献1には、空隙を隔てて対向配置された2枚の透明基板の対向面に形成された透明導電膜と、空隙に充填され、銀イオンを組成に含む電解液と、を備え、透明導電膜対の短絡又は透明導電膜対に対して、銀を含む析出層側が負電位で一定の直流電圧の印加を繰り返すことで、銀を含む析出層を出現又は消失させて光透過率を可変させる反射率可変素子が開示されている。
【0005】
例えば、非特許文献1には、間隙を隔てて一対に配置される透明電極対と、間隙に充填され、銀イオンを組成に含む電解液と、を備える金属塩析出型調光素子において、透明電極間にパルス状の電圧を印加することで、所望の光透過率を長時間維持させる駆動方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】宮川ほか、NHK放送技術研究所、村上開明堂「金属塩析出型調光素子の応答性改善」、2017年映像情報メディア学会年次大会・ITE Annual Convention 2017,23D-1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来の技術では、使用用途がテレビカメラ用の調光用素子に求められる透過率の回復(向上)を満足することができない。具体的には、透明電極対に、極性の異なる逆電位(銀を含む析出層側が正電位)電圧を素早く印加することが想定されていなかったため、調光素子の光透過率を短時間で回復させ難いという問題があった。一方で、印加電圧の量および極性を容易に制御可能な方法として、バイポーラ電源、電圧印加制御プログラムなどを組み合わせることで調光素子の透過率の可変駆動(以下;駆動)を制御すると、駆動回路が大型化して重くなり、可搬性が劣る問題が生じてしまう。あるいは、小型のマイコンを電源回路に組み込むことで調光素子の駆動を制御すると、温度環境および経年劣化に対する駆動電圧の微調整が煩雑になるという問題が生じてしまう。
【0009】
すなわち、駆動回路を小型、軽量で可搬性に優れた簡易な構成としつつ、調光素子の光透過率を容易且つ短時間で安定した可変動作を実現することが、困難であった。
【0010】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、簡易な構成でありながら、調光素子の光透過率を容易且つ短時間で安定した可変動作を可能とする駆動回路、および駆動回路の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施形態に係る駆動回路は、間隙を隔てて一対に配置される透明電極対と、前記間隙に充填され、銀イオンを組成に含む電解液と、を備える調光素子を駆動させる駆動回路であって、プラス端子およびマイナス端子を備え、前記透明電極対に電圧を印加する直流電源と、第1透明電極と前記マイナス端子との間に設けられる第1スイッチング素子と、前記第1透明電極と前記プラス端子との間に設けられる第2スイッチング素子と、第2透明電極と前記マイナス端子との間に設けられる第3スイッチング素子と、前記第2透明電極と前記プラス端子との間に設けられる第4スイッチング素子と、を備える、ことを特徴とする。
【0012】
さらに、一実施形態に係る駆動回路において、前記第1透明電極と前記第1スイッチとの間に設けられ、前記電圧を調整する第1可変抵抗器と、前記第2透明電極と前記第3スイッチとの間に設けられ、前記電圧を調整する第2可変抵抗器と、をさらに備える、ことを特徴とする。
【0013】
さらに、一実施形態に係る駆動回路において、前記第1透明電極と前記第1スイッチング素子との間に設けられ、前記電圧を調整する第1可変抵抗器と、前記第2透明電極と前記第3スイッチング素子との間に設けられ、前記電圧を調整する第2可変抵抗器と、をさらに備える、ことを特徴とする。
【0014】
さらに、一実施形態に係る駆動回路において、前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子、前記第3スイッチング素子、および前記第4スイッチング素子のオンオフ動作を制御する制御装置をさらに備える、ことを特徴とする。
【0015】
一実施形態に係る駆動回路の制御方法は、間隙を隔てて一対に配置される透明電極対と、前記間隙に充填され、銀イオンを組成に含む電解液と、を備える調光素子を駆動させる駆動回路の制御方法であって、前記駆動回路は、プラス端子およびマイナス端子を備え、前記透明電極対に電圧を印加する直流電源と、第1透明電極と前記マイナス端子との間に設けられる第1スイッチング素子と、前記第1透明電極と前記プラス端子との間に設けられる第2スイッチング素子と、第2透明電極と前記マイナス端子との間に設けられる第3スイッチング素子と、前記第2透明電極と前記プラス端子との間に設けられる第4スイッチング素子と、前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子、前記第3スイッチング素子、および前記第4スイッチング素子のオンオフ動作を制御する制御装置と、を備えており、前記制御装置が、前記調光素子の光透過率を減衰、上昇、又は維持させる指令を受けるステップと、前記制御装置が、前記指令に基づいて、前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子、前記第3スイッチング素子、および前記第4スイッチング素子のそれぞれのオン又はオフを決定するステップと、前記制御装置が、前記決定に基づいて、前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子、前記第3スイッチング素子、および前記第4スイッチング素子のそれぞれに、オン信号又はオフ信号を送信するステップと、前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子、前記第3スイッチング素子、および前記第4スイッチング素子が、前記制御装置から、前記オン信号又は前記オフ信号を受信するステップと、前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子、前記第3スイッチング素子、および前記第4スイッチング素子が、前記オン信号又は前記オフ信号に基づいて、オンオフ動作を行うステップと、を含む、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、簡易な構成でありながら、調光素子の光透過率を容易且つ短時間で安定した可変動作を可能とする駆動回路および駆動回路の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】本発明の一実施形態に係る調光素子の構成の一例を示す模式図である。
【
図1B】本発明の一実施形態に係る調光素子の構成の一例を示す模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る駆動回路の構成の一例を示す模式図である。
【
図3A】本発明の一実施形態に係る駆動回路の制御方法の一例を示すフローチャートである。
【
図3B】本発明の一実施形態に係る駆動回路の制御方法の一例を示すフローチャートである。
【
図3C】本発明の一実施形態に係る駆動回路の制御方法の一例を示すフローチャートである。
【
図3D】本発明の一実施形態に係る駆動回路の制御方法の一例を示すフローチャートである。
【
図4A】本発明の一実施形態に係る駆動回路の制御方法の一例を示す模式図である。
【
図4B】本発明の一実施形態に係る駆動回路の制御方法の一例を示す模式図である。
【
図4C】本発明の一実施形態に係る駆動回路の制御方法の一例を示す模式図である。
【
図4D】本発明の一実施形態に係る駆動回路の制御方法の一例を示す模式図である。
【
図5A】実施例で作製した調光素子の光透過率を減衰させた時に、本発明の一実施形態に係る駆動回路を適用した場合における時間と透過率との関係の一例を示す図である。
【
図5B】実施例で作製した調光素子の光透過率を維持させたい時に、本発明の一実施形態に係る駆動回路を適用した場合における時間と透過率との関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、同一の構成要素には原則として同一の参照番号を付して、重複する説明を省略する。各図において、説明の便宜上、各構成の縦横の比率を実際の比率から誇張して示している。
【0019】
〔調光素子〕
まず、
図1Aおよび
図1Bを参照して、本実施形態に係る駆動回路200が適用される調光素子100の構成の一例について、説明する。
【0020】
図1Aおよび
図1Bに示す調光素子100は、基板110と、基板120と、第1透明電極111および第2透明電極121を含む透明電極対Aと、電解液140と、シール材150a,150bと、を備える。
【0021】
図1Aおよび
図1Bに示す調光素子100における各構成を説明するに先立ち、析出層170の形成に伴う調光素子100の光透過率の変化について簡単に説明する。
【0022】
図1Aに示すように、駆動回路200が、第2透明電極121を陽極(+)として、第1透明電極111を陰極(-)として、透明電極対Aに、例えば、約2.6Vの電圧を印加する。これにより、電解液140中に溶け込んで無色透明状態であった銀イオンが、第1透明電極111の表面に銀となって析出し、析出層170が形成される。この際、調光素子100は、光透過率を減衰させる。
【0023】
一方、
図1Bに示すように、駆動回路200が、第1透明電極111を陽極(+)として、第2透明電極121を陰極(-)として、透明電極対Aに、例えば、約0.55Vの電圧を印加する。これにより、析出層170として析出した銀の結晶粒は、電解液140中に溶け込んで無色透明な状態となる。この際、調光素子100は、光透過率が上昇する。
【0024】
【0025】
<基板>
基板110は、入射光310側に設けられる。基板110は、一方の面Saに第1透明電極111が設けられる。基板110は、透明電極対A、電解液140などを介して、基板120と対向する。
【0026】
基板120は、透過光320側に設けられる。基板120は、一方の面Sbに第2透明電極121が設けられる。基板120は、透明電極対A、電解液140などを介して、基板110と対向する。
【0027】
基板110,120は、ガラス基板であってもよいし、アクリルなどの樹脂基板であってもよい。基板110,120は、同種の材料で形成されてもよいし、異種の材料で形成されてもよい。基板110,120は、表面又は裏面、あるいは、表面および裏面に、透明導電膜が成膜可能であれば、材料の制限はない。基板110,120は、その構成、個数などが特に限定されるものではなく、調光素子100の最大光透過率に影響を与えない範囲で自由な設計が可能である。
【0028】
<透明電極対>
図1Aおよび
図1B記載の透明電極対Aは、第1透明電極111と、第2透明電極121と、を備え、間隙を隔てて一対に設けられる。当該間隙には、銀イオンを組成に含む電解液140が充填される。
【0029】
第1透明電極111および第2透明電極121は、透光性を有する材料で形成される。透光性を有する材料としては、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)、FTO(フッ素添加酸化スズ)、IZO(酸化インジウム亜鉛)、酸化スズ、酸化亜鉛などの透明酸化物導電体(TCO(Transparent Conductive Oxide))が挙げられる。あるいは、第1透明電極111,121は、SnO2で形成されてもよい。
【0030】
第1透明電極111および第2透明電極121は、抵抗値が8.0Ω/cm2以上20.0Ω/cm2以下の範囲を満たすことが好ましい。抵抗値は透明電極対の間に電場を加えて光透過率を変更する際の応答性に影響を及ぼすところであり、抵抗値が20.0Ω/cm2以下であれば、光透過率の可変速度を十分なものとすることができる。また、透明電極を製造する際、光透過率が高くなるように設計するが、その時の抵抗値は、上述の範囲を満たすことにより、最大光透過率と応答性のバランスが両立できる。第1透明電極111,121は、抵抗値が同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0031】
第1透明電極111および第2透明電極121は、それぞれの膜厚は特に制限されず、用途に応じて適宜の膜厚とすればよいが、例示的に100nm~200nmとすることができる。各透明電極の膜厚は、上述した抵抗値および光透過率に影響するので、所望の分光透過特性および光透過率の可変速度を考慮して適宜設計すればよい。第1透明電極111および第2透明電極121は、膜厚が同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0032】
<電解液>
図1Aおよび
図1Bの電解液140は、透明電極対Aに挟まれる間隙に充填され、シール材150a,150bにより封止される。
【0033】
電解液140は、例えば、銀イオンを組成に含み、必要に応じて銀イオンよりも含有重量が少ない銅イオンを組成に含むことも好ましい。このような電解液140は、例えば、炭酸プロピレン等のエステル系溶剤およびメタノールなどのアルコールを含む非水溶媒に、硝酸銀(AgNO3)などの銀塩および塩化第二銅(CuCl2)などの銅塩を溶解させることにより得られる。上記非水溶媒に、必要に応じて、臭化リチウム(LiBr)などの支持電解質をさらに溶解させてもよい。電解液140は、必要に応じて増粘剤をさらに含んでもよい。こうした増粘剤の例は、ポリプロピレン、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタアクリレートなどのポリマーである。
【0034】
<シール材>
図1Aおよび
図1Bのシール材150a,150bは、第1透明電極111および第2透明電極121に挟まれる間隙に充填される電解液140を封止する。シール材150a,150bは、その素材は、基板110および基板120と同じことが好ましいが特に限定されるものではなく、ガラス基板など一般的なものを使用すればよい。シール材150a,150bは、電解液140の厚さに関係することとなり、膜厚が0.3mm程度であることが好ましい。
【0035】
〔駆動回路〕
次に、
図2を参照して、上述の調光素子100を駆動させる本実施形態に係る駆動回路200の構成の一例について、説明する。
【0036】
駆動回路200は、直流電源10と、第1スイッチング素子11と、第2スイッチング素子12と、第3スイッチング素子13と、第4スイッチング素子14と、第1可変抵抗器21と、第2可変抵抗器22と、制御装置30と、を備える。
【0037】
直流電源10は、例えば、安定化電源で構成されることが好ましい。また、直流電源10は、例えば、乾電池、リチウムイオン電池、釦型電池などの可搬性に優れた電源で構成されてもよい。また、直流電源10は、太陽電池で構成されてもよい。直流電源10が太陽電池で構成されることで、例えば、窓材などと一体化させることができる。
【0038】
直流電源10は、透明電極対Aに所定の電圧を印加する。直流電源10は、例えば、プラス電位側が、第2スイッチング素子12を介して、第1透明電極111と電気的に接続される。直流電源10は、例えば、プラス端子が、第4スイッチング素子14を介して、第2透明電極121と電気的に接続される。直流電源10は、例えば、マイナス電位側が、第1スイッチング素子11および第1可変抵抗器21を介して、第1透明電極111と電気的に接続される。直流電源10は、例えば、マイナス端子が、第3スイッチング素子13および第2可変抵抗器22を介して、第2透明電極121と電気的に接続される。
【0039】
図4Aに示すように、例えば、第1スイッチング素子11がオン状態となり、第2スイッチング素子12がオフ状態となり、第3スイッチング素子13がオフ状態となり、第4スイッチング素子14がオン状態となる場合、直流電源10は、プラス端子が、第4スイッチング素子14を介して、第2透明電極121と電気的に接続され、マイナス端子が、第1スイッチング素子11および第1可変抵抗器21を介して、第1透明電極111と電気的に接続される。この際、透明電極対Aには、第2透明電極121がプラス極となり、第1透明電極111がマイナス極となるように、所定の電圧が印加される。透明電極対Aに、例えば、2.6Vの電圧が印加されると、第1透明電極111の表面に、銀を主成分とする析出層170が形成され、調光素子100の光透過率は減衰する。なお、本実施形態では、析出層170が第1透明電極111側に形成される場合を一例に挙げて説明しているが、前述の印加電圧の正負極性が双方逆になれば、析出層170は、第2透明電極121側に形成されても構わない。
【0040】
図4Bに示すように、例えば、第1スイッチング素子11がオフ状態となり、第2スイッチング素子12がオン状態となり、第3スイッチング素子13がオン状態となり、第4スイッチング素子14がオフ状態となる場合、直流電源10は、プラス端子が、第2スイッチング素子12を介して、第1透明電極111と電気的に接続され、マイナス端子が、第3スイッチング素子13および第2可変抵抗器22を介して、第2透明電極121と電気的に接続される。この際、透明電極対Aには、第1透明電極111がプラス極となり、第2透明電極121がマイナス極となるように、所定の電圧が印加される。透明電極対Aに、例えば、0.55Vの電圧が印加されると、析出層170が含む銀の結晶粒は、電解液140中に溶込み透明になっていき、調光素子100の光透過率は上昇する。
【0041】
図4Cに示すように、例えば、第1スイッチング素子11がオフ状態となり、第2スイッチング素子12がオン状態となり、第3スイッチング素子13がオフ状態となり、第4スイッチング素子14がオン状態となる場合、直流電源10は、プラス端子が、第2スイッチング素子12を介して、第1透明電極111と電気的に接続され、且つ、プラス端子が、第4スイッチング素子14を介して、第2透明電極121と電気的に接続される。この際、透明電極対Aには、第1透明電極111および第2透明電極121がプラス極となり、電位差が0となる。したがって、透明電極対Aは、短絡状態となり、調光素子100の光透過率は所定の値(例えば、透過率15%など)で長時間維持される。
【0042】
図4Dに示すように、例えば、第1スイッチング素子11がオン状態となり、第2スイッチング素子12がオフ状態となり、第3スイッチング素子13がオン状態となり、第4スイッチング素子14がオフ状態となる場合、直流電源10は、マイナス端子が、第1スイッチング素子11および第1可変抵抗器21を介して、第1透明電極111と電気的に接続され、且つ、マイナス端子が、第3スイッチング素子13および第2可変抵抗器22を介して、第2透明電極121と電気的に接続される。この際、透明電極対Aには、第1透明電極111および第2透明電極121がマイナス極となり、電位差が0となる。したがって、透明電極対Aは、短絡状態となり、調光素子100の光透過率は所定の値(例えば、透過率15%など)長時間維持される。
【0043】
上述のように、4つのスイッチング素子のオンオフが適切に切り替わることで、直流電源10は、透明電極対Aに、極性の異なる電圧(例えば、+2.6V、-0.55V、短絡)を素早く切り替えながら印加することができる。
【0044】
なお、本明細書では、直流電源10が透明電極対Aに印加する電圧の一例として、2.6V、0.55Vを挙げて説明するが、印加電圧の値が、これらの値に限定されないことは勿論である。また、この印加電圧は、直流電源の出力電圧を変化させてもよいし、可変抵抗器21,22の抵抗値を変化させて実現してもよい。
【0045】
第1スイッチング素子11は、直流電源10のマイナス端子と第1透明電極111との間に設けられる。第2スイッチング素子12は、直流電源10のプラス端子と第1透明電極111との間に設けられる。第3スイッチング素子13は、直流電源10のマイナス端子と第2透明電極121との間に設けられる。第4スイッチング素子14は、直流電源10のプラス端子と第2透明電極121との間に設けられる。
【0046】
第1スイッチング素子11、第2スイッチング素子12、第3スイッチング素子13、および第4スイッチング素子14は、その構成が特に限定されるものではない。第1スイッチング素子11、第2スイッチング素子12、第3スイッチング素子13、および第4スイッチング素子14は、単純なオンオフスイッチであってもよいし、IC(Integrated Circuit)又はオペアンプなどの集積回路内に構成されるスイッチであってもよい。スイッチング素子としては、例えば、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、バイポーラトランジスタなどが挙げられる。
【0047】
第1可変抵抗器21は、第1透明電極111と第1スイッチング素子11との間に設けられる。第1可変抵抗器21は、調光素子100の光透過率を上昇させる際に、透明電極対Aに印加される電圧を調整する。すなわち、第1可変抵抗器21は、透明電極対Aに対して、第2透明電極121がプラス極となり、第1透明電極111がマイナス極となるように、直流電源10から電圧が供給される際に、当該電圧(例えば、2.6V)を調整する。第1可変抵抗器21は、その構成が特に限定されるものではなく、公知の可変抵抗器であってよい。第1透明電極111と第1スイッチング素子11との間に第1可変抵抗器21を設けることで、例えば、素子の入れ替え、素子の経年劣化、素子の使用温度環境などにより動作電圧(例えば、2.6V)がずれても、容易に、所望の電圧に調整することが可能となる。
【0048】
第2可変抵抗器22は、第2透明電極121と第3スイッチング素子13との間に設けられる。第2可変抵抗器22は、調光素子100の光透過率を減衰させる際に、透明電極対Aに印加される電圧を調整する。すなわち、第2可変抵抗器22は、透明電極対Aに対して、第1透明電極111がプラス極となり、第2透明電極121がマイナス極となるように、直流電源10から電圧が供給される際に、当該電圧(例えば、0.55V)を調整する。第2可変抵抗器22は、その構成が特に限定されるものではなく、公知の可変抵抗器であってよい。第2透明電極121と第3スイッチング素子13との間に第2可変抵抗器22を設けることで、例えば、素子の入れ替え、素子の経年劣化、素子の使用温度環境などにより動作電圧(例えば、0.55V)がずれても、容易に、所望の電圧に調整することが可能となる。
【0049】
上述のように、直流電源10と透明電極対Aとの間に、2つの可変抵抗器が設けられることで、直流電源10が透明電極対Aに極性の異なる電圧を素早く切り替えながら印加するのと同時に、2つの可変抵抗器が当該電圧を適切に調整することが可能となる。これにより、駆動回路200を簡易な構成としつつ、調光素子100の光透過率の上昇、減衰、維持を、容易且つ短時間で自在に可変させることができる。
【0050】
制御装置30は、例えば、小型コンピュータであり、駆動回路200の各部を制御する。例えば、制御装置30は、第1スイッチング素子11、第2スイッチング素子12、第3スイッチング素子13、および第4スイッチング素子14のオンオフ動作を制御する。例えば、制御装置30は、第1可変抵抗器21および第2可変抵抗器22の抵抗を制御する。
【0051】
例えば、制御装置30は、調光素子100の光透過率を減衰させる指令を受け、第1スイッチング素子11がオン状態となり、第2スイッチング素子12がオフ状態となり、第3スイッチング素子13がオフ状態となり、第4スイッチング素子14がオン状態となるように、各スイッチング素子のオンオフ動作を制御する(
図4A参照)。また、例えば、制御装置30は、透明電極対Aに印加される電圧が2.6Vとなるように、第1可変抵抗器21の抵抗を制御する。
【0052】
例えば、制御装置30は、調光素子100の光透過率を上昇させる指令を受け、第1スイッチング素子11がオフ状態となり、第2スイッチング素子12がオン状態となり、第3スイッチング素子13がオン状態となり、第4スイッチング素子14がオフ状態となるように、各スイッチング素子のオンオフ動作を制御する(
図4B参照)。また、例えば、制御装置30は、透明電極対Aに印加される電圧が0.55Vとなるように、第2可変抵抗器22の抵抗を制御する。
【0053】
例えば、制御装置30は、調光素子100の光透過率を維持する指令を受け、第1スイッチング素子11がオフ状態となり、第2スイッチング素子12がオン状態となり、第3スイッチング素子13がオフ状態となり、第4スイッチング素子14がオン状態となるように、各スイッチング素子のオンオフ動作を制御する(
図4C参照)。調光素子100を所定期間待機させる場合又は調光素子100を保管する場合には、制御装置30がこのような制御を行うことで、調光素子100の寿命を長くすることができる。
【0054】
例えば、制御装置30は、調光素子100の光透過率を維持する指令を受け、第1スイッチング素子11がオン状態となり、第2スイッチング素子12がオフ状態となり、第3スイッチング素子13がオン状態となり、第4スイッチング素子14がオフ状態となるように、各スイッチング素子のオンオフ動作を制御する(
図4D参照)。調光素子100を所定期間待機させる場合又は調光素子100を保管する場合には、制御装置30がこのような制御を行うことで、調光素子100の寿命を長くすることができる。
【0055】
透明電極対Aが短絡状態となる際、回路構成中に、第1可変抵抗器21および第2可変抵抗器22が混在しないことが好ましい。したがって、制御装置30は、調光素子100の光透過率を所定の値で長時間維持させる場合、第1透明電極111および第2透明電極121の両者がマイナス極となるように透明電極対Aを短絡させるよりも、第1透明電極111および第2透明電極121の両者がプラス極となるように透明電極対Aを短絡させることが好ましい。
【0056】
なお、第1スイッチング素子11、第2スイッチング素子12、第3スイッチング素子13、および第4スイッチング素子14は、上述したように、制御装置30によりオンオフ動作が制御されるのみならず、オペレータにより手動でオンオフ動作が制御されてもよい。例えば、第1スイッチング素子11、第2スイッチング素子12、第3スイッチング素子13、および第4スイッチング素子14が、トグルスイッチなどで構成される場合には、オペレータにより、トグルスイッチが手動で切り替えられてよい。
【0057】
本実施形態に係る駆動回路200は、4つのスイッチング素子のオンオフ動作を適切に制御することで、透明電極対Aに、極性の異なる電圧を素早く切り替えながら印加することができ、且つ、2つの可変抵抗器の抵抗を適切に制御することで、透明電極対Aに印加する電圧を調整することができる。これにより、配線または直流電源10の極性を変更することなく、調光素子100の光透過率の上昇、減衰、維持を、容易且つ短時間で自在に可変させることができる。
【0058】
また、本実施形態に係る駆動回路200は、少なくとも直流電源、4つのスイッチング素子、および2つの可変抵抗器を備えていればよいという単純な構成を有する。これにより、駆動回路が大型化して重くなり、汎用性が低くなる、あるいは、温度環境および経年劣化に対する駆動電圧の微調整が煩雑になる、という従来の問題を回避し、簡単な操作が可能であり且つ小型で可搬性に優れた駆動回路200を実現できる。
【0059】
〔駆動回路の制御方法〕
次に、
図3A乃至
図3D、および
図4A乃至
図4Dを参照して、上述の調光素子100を駆動させる駆動回路200の制御方法の一例について、説明する。
【0060】
<第1制御方法>
図3Aおよび
図4Aを参照して、第1制御方法の一例について説明する。
【0061】
ステップS101において、制御装置30は、調光素子100の光透過率を減衰させる指令を受ける。
【0062】
ステップS102において、制御装置30は、調光素子100の光透過率を減衰させる指令に基づいて、第1スイッチング素子11、第2スイッチング素子12、第3スイッチング素子13、および第4スイッチング素子14のそれぞれのオン又はオフを決定する。例えば、制御装置30は、第1スイッチング素子11をオンさせることを決定する。例えば、制御装置30は、第2スイッチング素子12をオフさせることを決定する。例えば、制御装置30は、第3スイッチング素子13をオフさせることを決定する。例えば、制御装置30は、第4スイッチング素子14をオンさせることを決定する。
【0063】
ステップS103において、制御装置30は、決定に基づいて、第1スイッチング素子11、第2スイッチング素子12、第3スイッチング素子13、および第4スイッチング素子14のそれぞれに、オン信号又はオフ信号を送信する。例えば、第1スイッチング素子11にオン信号を送信する。例えば、制御装置30は、第2スイッチング素子12にオフ信号を送信する。例えば、制御装置30は、第3スイッチング素子13にオフ信号を送信する。例えば、制御装置30は、第4スイッチング素子14にオン信号を送信する。
【0064】
ステップS104において、第1スイッチング素子11、第2スイッチング素子12、第3スイッチング素子13、および第4スイッチング素子14は、制御装置30から、オン信号又はオフ信号を受信する。例えば、第1スイッチング素子11は、制御装置30からオン信号を受信する。例えば、第2スイッチング素子12は、オフ信号を受信する。例えば、第3スイッチング素子13は、オフ信号を受信する。例えば、第4スイッチング素子14は、オン信号を受信する。
【0065】
ステップS105において、第1スイッチング素子11、第2スイッチング素子12、第3スイッチング素子13、および第4スイッチング素子14は、制御装置30から受信したオン信号又はオフ信号に基づいて、オンオフ動作を行う。例えば、第1スイッチング素子11は、オン動作する。例えば、第2スイッチング素子12は、オフ動作する。例えば、第3スイッチング素子13は、オフ動作する。例えば、第4スイッチング素子14は、オン動作する。
【0066】
第1制御方法により、第1透明電極111の表面に、銀を主成分とする析出層170が形成され、調光素子100の光透過率は減衰する。
【0067】
<第2制御方法>
図3Bおよび
図4Bを参照して、第2制御方法の一例について説明する。
【0068】
ステップS201において、制御装置30は、調光素子100の光透過率を上昇させる指令を受ける。
【0069】
ステップS202において、制御装置30は、調光素子100の光透過率を上昇させる指令に基づいて、第1スイッチング素子11、第2スイッチング素子12、第3スイッチング素子13、および第4スイッチング素子14のそれぞれのオン又はオフを決定する。例えば、制御装置30は、第1スイッチング素子11をオフさせることを決定する。例えば、制御装置30は、第2スイッチング素子12をオンさせることを決定する。例えば、制御装置30は、第3スイッチング素子13をオンさせることを決定する。例えば、制御装置30は、第4スイッチング素子14をオフさせることを決定する。
【0070】
ステップS203において、制御装置30は、決定に基づいて、第1スイッチング素子11、第2スイッチング素子12、第3スイッチング素子13、および第4スイッチング素子14のそれぞれに、オン信号又はオフ信号を送信する。例えば、第1スイッチング素子11にオフ信号を送信する。例えば、制御装置30は、第2スイッチング素子12にオン信号を送信する。例えば、制御装置30は、第3スイッチング素子13にオン信号を送信する。例えば、制御装置30は、第4スイッチング素子14にオフ信号を送信する。
【0071】
ステップS204において、第1スイッチング素子11、第2スイッチング素子12、第3スイッチング素子13、および第4スイッチング素子14は、制御装置30から、オン信号又はオフ信号を受信する。例えば、第1スイッチング素子11は、制御装置30からオフ信号を受信する。例えば、第2スイッチング素子12は、オン信号を受信する。例えば、第3スイッチング素子13は、オン信号を受信する。例えば、第4スイッチング素子14は、オフ信号を受信する。
【0072】
ステップS205において、第1スイッチング素子11、第2スイッチング素子12、第3スイッチング素子13、および第4スイッチング素子14は、制御装置30から受信したオン信号又はオフ信号に基づいて、オンオフ動作を行う。例えば、第1スイッチング素子11は、オフ動作する。例えば、第2スイッチング素子12は、オン動作する。例えば、第3スイッチング素子13は、オン動作する。例えば、第4スイッチング素子14は、オフ動作する。
【0073】
第2制御方法により、析出層170が含む銀の結晶粒は、銀イオンとなって電解液140中に分散し、調光素子100の光透過率は上昇する。
【0074】
<第3制御方法>
図3Cおよび
図4Cを参照して、第3制御方法の一例について説明する。
【0075】
ステップS301において、制御装置30は、調光素子100の光透過率を維持させる指令を受ける。
【0076】
ステップS302において、制御装置30は、調光素子100の光透過率を維持させる指令に基づいて、第1スイッチング素子11、第2スイッチング素子12、第3スイッチング素子13、および第4スイッチング素子14のそれぞれのオン又はオフを決定する。例えば、制御装置30は、第1スイッチング素子11をオフさせることを決定する。例えば、制御装置30は、第2スイッチング素子12をオンさせることを決定する。例えば、制御装置30は、第3スイッチング素子13をオフさせることを決定する。例えば、制御装置30は、第4スイッチング素子14をオンさせることを決定する。
【0077】
ステップS303において、制御装置30は、決定に基づいて、第1スイッチング素子11、第2スイッチング素子12、第3スイッチング素子13、および第4スイッチング素子14のそれぞれに、オン信号又はオフ信号を送信する。例えば、制御装置30は、第1スイッチング素子11にオフ信号を送信する。例えば、制御装置30は、第2スイッチング素子12にオン信号を送信する。例えば、制御装置30は、第3スイッチング素子13にオフ信号を送信する。例えば、制御装置30は、第4スイッチング素子14にオン信号を送信する。
【0078】
ステップS304において、第1スイッチング素子11、第2スイッチング素子12、第3スイッチング素子13、および第4スイッチング素子14は、制御装置30から、オン信号又はオフ信号を受信する。例えば、第1スイッチング素子11は、制御装置30からオフ信号を受信する。例えば、第2スイッチング素子12は、オン信号を受信する。例えば、第3スイッチング素子13は、オフ信号を受信する。例えば、第4スイッチング素子14は、オン信号を受信する。
【0079】
ステップS305において、第1スイッチング素子11、第2スイッチング素子12、第3スイッチング素子13、および第4スイッチング素子14は、制御装置30から受信したオン信号又はオフ信号に基づいて、オンオフ動作を行う。例えば、第1スイッチング素子11は、オフ動作する。例えば、第2スイッチング素子12は、オン動作する。例えば、第3スイッチング素子13は、オフ動作する。例えば、第4スイッチング素子14は、オン動作する。
【0080】
図3Dおよび
図4Dを参照して、第3制御方法の別の一例について説明する。
【0081】
ステップS401において、制御装置30は、調光素子100の光透過率を維持させる指令を受ける。
【0082】
ステップS402において、制御装置30は、調光素子100の光透過率を維持させる指令に基づいて、第1スイッチング素子11、第2スイッチング素子12、第3スイッチング素子13、および第4スイッチング素子14のそれぞれのオン又はオフを決定する。例えば、制御装置30は、第1スイッチング素子11をオンさせることを決定する。例えば、制御装置30は、第2スイッチング素子12をオフさせることを決定する。例えば、制御装置30は、第3スイッチング素子13をオンさせることを決定する。例えば、制御装置30は、第4スイッチング素子14をオフさせることを決定する。
【0083】
ステップS403において、制御装置30は、決定に基づいて、第1スイッチング素子11、第2スイッチング素子12、第3スイッチング素子13、および第4スイッチング素子14のそれぞれに、オン信号又はオフ信号を送信する。例えば、制御装置30は、第1スイッチング素子11にオン信号を送信する。例えば、制御装置30は、第2スイッチング素子12にオフ信号を送信する。例えば、制御装置30は、第3スイッチング素子13にオン信号を送信する。例えば、制御装置30は、第4スイッチング素子14にオフ信号を送信する。
【0084】
ステップS404において、第1スイッチング素子11、第2スイッチング素子12、第3スイッチング素子13、および第4スイッチング素子14は、制御装置30から、オン信号又はオフ信号を受信する。例えば、第1スイッチング素子11は、制御装置30からオン信号を受信する。例えば、第2スイッチング素子12は、オフ信号を受信する。例えば、第3スイッチング素子13は、オン信号を受信する。例えば、第4スイッチング素子14は、オフ信号を受信する。
【0085】
ステップS405において、第1スイッチング素子11、第2スイッチング素子12、第3スイッチング素子13、および第4スイッチング素子14は、制御装置30から受信したオン信号又はオフ信号に基づいて、オンオフ動作を行う。例えば、第1スイッチング素子11は、オン動作する。例えば、第2スイッチング素子12は、オフ動作する。例えば、第3スイッチング素子13は、オン動作する。例えば、第4スイッチング素子14は、オフ動作する。
【0086】
第3制御方法により、透明電極対Aは、短絡状態となり、調光素子100の光透過率は所定の値(例えば、透過率15%など)で長時間維持される。
【0087】
上述した第1制御方法、第2制御方法、又は第3制御方法のいずれかの駆動回路200の制御方法によれば、駆動回路200を簡易な構成としつつ、調光素子100の光透過率を容易且つ短時間で可変可能となる。
【実施例0088】
以下、
図5Aおよび
図5Bを参照して、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、説明の便宜状、
図1の参照符号を参照する。
【0089】
〔試料の作製〕
以下に示す方法により、実施例に係る試料を作製した。実施例に係る試料は、本実施形態に係る調光素子100の一例である。
【0090】
まず、大きさが34mm×50mmであるガラス基板110の一方の面SaにITOからなる第1透明電極111をSa面のほぼ全域に成膜し、大きさが34mm×50mmであるガラス基板120の一方の面SbにITOからなる第2透明電極121をSb面のほぼ全域に成膜した。第1透明電極111および第2透明電極121の成膜にあたり、DCスパッタ法を用いて、ITO(スズ5重量%)のターゲットを採用した。スパッタリング条件は、酸素流量0.8sccm、アルゴン流量50sccmとし、真空度0.6Paの状態として、膜厚40nmとなるようITO膜を成膜した。次いで、酸素流量0.4sccm、アルゴン流量50sccmとし、真空度0.6Paの状態として、膜厚120nmとなるようITO膜を成膜した。DCスパッタの出力はDC200Wに固定した。これにより、第1透明電極111および第2透明電極121が形成された。
【0091】
次に、第1透明電極111が形成されたガラス基板110と第2透明電極121が形成されたガラス基板120とを、第1透明電極111と第2透明電極121とが対向するように、間隙を隔てて一対に配置した。
【0092】
次に、第1透明電極111および第2透明電極121に挟まれる間隙の内部に、銀イオンおよび該銀イオンよりも含有重量が少ない銅イオンを含む組成を有した電解液140を充填した。当該電解液140が漏れないように、ガラス基板110およびガラス基板120と、0.3mm厚のシール材150a、151bとで密閉された構造とした。こうして、実施例に係る試料を作製した。
【0093】
〔実験例1〕
作製した試料に対して、駆動回路200により、第1透明電極111を陽極(+)として、第2透明電極121を陰極(-)として、0.55Vの電圧を印加し、第1透明電極111の表面に析出層170として析出している銀の結晶粒を酸化させた。そして、波長550nmにおける光透過率が75%~10%の範囲で変化する際の時間を評価した。
【0094】
また、作製した試料に対して、駆動回路200により、第1透明電極111および第2透明電極121を短絡させた。そして、波長550nmにおける透過率を、55%、35%、15%と変化させて、各光透過率が変化する際の時間を評価した。
【0095】
図5Aおよび
図5Bは、波長と透過率との関係の一例を示す図である。
図5Aにおいて、横軸は時間[秒]を示しており、縦軸は透過率[%]を示している。
図5Bにおいて、横軸は時間[秒]を示しており、縦軸は透過率[%]を示している。
【0096】
〔評価〕
図5Aから、第1透明電極111と第2透明電極121との間に、0.55Vの電圧を印加した場合、光透過率は、30秒程度で回復することがわかる。一方、
図5Aから、第1透明電極111と第2透明電極121との間に、0Vの電圧を印加した場合、光透過率は、30秒程度経過してもなかなか回復せず、略同じ光透過率(55%、35%、15%)を維持していることがわかる。
【0097】
実験例1から、作製した試料に対して、本実施形態に係る駆動回路200を適用することで、透明電極対Aに所定の電圧を印加した場合には、調光素子100の光透過率を早急に上昇あるいは減衰させることができ、透明電極対Aを短絡させた場合には、調光素子100の光透過率を所定の値で長時間維持させることができることが示唆される。つまり、本実施形態に係る駆動回路200を調光素子100に適用することで、調光素子100の光透過率を容易且つ短時間で可変可能としつつ、駆動回路200自体の構成を極めて簡易化可能であることが示唆される。
【0098】
<変形例>
本実施形態では、第1透明電極111および第2透明電極121が1層の透光性導電膜で構成される場合を一例に挙げて説明しているが、第1透明電極111および第2透明電極121は、2層またはそれ以上の複数層の透光性導電膜で構成されてよい。この際、第1透明電極111および第2透明電極121は、各層の表面粗さが異なるように構成されてよい。透光性導電膜の表面粗さは、例えば、スパッタ法における成膜時の酸素導入量を変えることで、調整される。なお、第1透明電極111および第2透明電極121が2層またはそれ以上の複数層の透光性導電膜で構成される場合、析出層170は第1透明電極111側(入射光310側)に形成されることが好ましい。
【0099】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本開示の趣旨および範囲内で、多くの変更および置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。例えば、実施形態のフローチャートに記載の複数の工程を1つに組み合わせたり、あるいは1つの工程を分割したりすることが可能である。
本発明によれば、簡易な構成でありながら、調光素子の光透過率を容易且つ短時間で安定した可変動作を可能とする駆動回路を実現できるため、カメラ用フィルタのほか、防眩ミラー、照明用の調光用フィルタ、窓材などのフィルタ用途に適用される場合において、特に有用である。