(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022011384
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】レベルシフト回路
(51)【国際特許分類】
H03K 19/0185 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
H03K19/0185 230
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020112502
(22)【出願日】2020-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】新日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】涌井 努
【テーマコード(参考)】
5J056
【Fターム(参考)】
5J056AA11
5J056AA32
5J056AA36
5J056BB59
5J056CC21
5J056DD13
5J056DD29
5J056FF08
5J056KK01
(57)【要約】
【課題】製造コストの低いレベルシフト回路を提供する。
【解決手段】レベルシフト回路は、第1正側電圧と第1負側電圧とをハイレベルとローレベルとする入力信号を、第2正側電圧と第2負側電圧とをハイレベルとローレベルとする出力信号に変換する。レベルシフト回路は、インバータ回路と、第1正側電圧とインバータ入力端子との間をオン/オフするスイッチ回路と、インバータ入力端子と第2負側電圧との間に接続された第1電流制限回路と、第1電流制限回路に対して直列に接続された第1電圧制限回路と、第2正側電圧とインバータ回路の第1MOSFETのソースとの間に接続された第2電流制限回路と、インバータ回路と第2負側電圧との間に接続された第2電圧制限回路と、インバータ出力信号のレベルに応じた出力信号を出力する出力回路と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1正側電圧と前記第1正側電圧より低い第1負側電圧とをハイレベルとローレベルとする2値の入力信号を、第2正側電圧と前記第2正側電圧より低い第2負側電圧とをハイレベルとローレベルとする2値の出力信号に変換するレベルシフト回路であって、
それぞれのゲートがインバータ入力端子に接続され、それぞれのドレインがインバータ出力端子に接続されたP型である第1MOSFETおよびN型である第2MOSFETを含むインバータ回路と、
前記入力信号に応じて、前記第1正側電圧と前記インバータ入力端子との間をオン/オフするスイッチ回路と、
前記インバータ入力端子と前記第2負側電圧との間に接続され、所定の抵抗値の抵抗成分を有する第1電流制限回路と、
前記インバータ入力端子と前記第2負側電圧との間において、前記第1電流制限回路に対して直列に接続され、電流が流れた場合に所定の電圧値の電圧降下が生じる第1電圧制限回路と、
前記第2正側電圧と前記インバータ回路の前記第1MOSFETのソースとの間に接続され、所定の抵抗値の抵抗成分を有する第2電流制限回路と、
前記インバータ回路の前記第2MOSFETのソースと前記第2負側電圧との間に接続され、電流が流れた場合に所定の電圧値の電圧降下が生じる第2電圧制限回路と、
前記インバータ出力端子から出力されたインバータ出力信号を受け取り、前記インバータ出力信号のレベルに応じた前記出力信号を出力する出力回路と、
を備えるレベルシフト回路。
【請求項2】
前記スイッチ回路は、ゲートに前記入力信号が印加されるMOSFETである
請求項1に記載のレベルシフト回路。
【請求項3】
前記第1電流制限回路および前記第2電流制限回路のそれぞれは、ゲートに所定の電圧値が印加され、ドレイン-ソース間が抵抗として機能するMOSFETである
請求項1または2に記載のレベルシフト回路。
【請求項4】
前記第1電流制限回路および前記第2電流制限回路のそれぞれは、抵抗である
請求項1または2に記載のレベルシフト回路。
【請求項5】
前記第1電圧制限回路および前記第2電圧制限回路は、ダイオード接続されたMOSFETである
請求項1から4の何れか1項に記載のレベルシフト回路。
【請求項6】
前記インバータ回路、前記スイッチ回路、前記第1電流制限回路、前記第1電圧制限回路、前記第2電流制限回路、前記第2電圧制限回路および前記出力回路は、P型半導体基板に形成され、
ソースが前記第1負側電圧に接続されているN型のMOSFETと、ソースが前記第2負側電圧に接続されているN型のMOSFETとは、アイソレーションされている
請求項1から5の何れか1項に記載のレベルシフト回路。
【請求項7】
前記インバータ回路に含まれる前記第1MOSFETおよび前記第2MOSFETは、両方にしきい値電圧以上のゲート-ソース間電圧が印加された場合、前記第2MOSFETのゲート-ソース間電圧が前記第1MOSFETのゲート-ソース間電圧より大きい否かに応じて、前記出力信号のレベルが切り替わるように、前記第1MOSFETおよび前記第2MOSFETのゲート長とゲート幅が調整されている
請求項1から6の何れか1項に記載のレベルシフト回路。
【請求項8】
前記出力回路は、前記インバータ出力信号を受け取り、前記インバータ出力信号を所定のしきい値で二値化した前記出力信号を出力するインバータである
請求項1から7の何れか1項に記載のレベルシフト回路。
【請求項9】
前記出力回路は、
前記インバータ出力信号を受け取り、前記インバータ出力信号を所定のしきい値で二値化した、前記第2正側電圧と前記第2負側電圧とをハイレベルとローレベルとする第1信号を出力する第1出力インバータ回路と、
前記第1信号を受け取り、前記第1信号のレベルを反転させた、前記第2正側電圧と前記第2負側電圧とをハイレベルとローレベルとする第2信号を出力する第2出力インバータ回路と、
前記第1信号および前記第2信号を受け取り、前記第2信号のレベルを保持し、保持しているレベルを前記出力信号として出力するラッチ回路と、
を含む請求項1から7の何れか1項に記載のレベルシフト回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レベルシフト回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、第1電源電圧で動作する回路から出力された2値の信号を、第1電源電圧とは異なる第2電源電圧で動作する回路の信号に変換するレベルシフト回路が知られている。例えば、従来のレベルシフト回路は、第1電源電圧(例えば、+3.3Vの単電源電圧)で動作する2段のMOSインバータと、第1電源電圧とは異なる第2電源電圧(例えば、-2.5Vおよび+2.5Vの両電源電圧)で動作するラッチ回路とを含む。
【0003】
2段のMOSインバータは、直列に接続される。2段のMOSインバータのそれぞれは、P型のMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)とN型のMOSFETとを含む。P型のMOSFETおよびN型のMOSFETは、ゲート同士、ドレイン同士が接続されている。P型のMOSFETは、ソースが第1電源電圧の正側(例えば3.3V)に接続される。N型のMOSFETは、ソースが第1電源電圧の負側(例えば0V)に接続される。
【0004】
ラッチ回路は、2つのP型のMOSFETにより構成された正帰還回路と、それぞれがN型のMOSFETである第1出力スイッチおよび第2出力スイッチとを含む。正帰還回路は、一方のP型のMOSFETのドレインが他方のP型のMOSFETのゲートに接続される。また、正帰還回路は、2つのP型のMOSFETのそれぞれのソースが第2電源電圧の正側(例えば+2.5V)に接続される。
【0005】
第1出力スイッチは、ゲートに2段のMOSインバータのうちの後段から出力された信号が印加され、ドレインが正帰還回路の一方のP側MOSFETのドレインに接続され、ソースが第2電源電圧の負側(例えば-2.5V)に接続される。第2出力スイッチは、ゲートに2段のMOSインバータのうちの前段から出力された信号が印加され、ドレインが正帰還回路の他方のP側MOSFETのドレインに接続され、ソースが第2電源電圧の負側(例えば-2.5V)に接続される。このような従来のレベルシフト回路は、例えば、単電源電圧で動作する回路から出力された信号を、両電源電圧で動作する回路の信号に変換することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-197881号公報
【特許文献2】特開2005-150989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、+3.3Vの単電源電圧で動作する回路には、-5.5V以上+5.5V以下のゲート-ソース間耐圧を有するMOSFETを用いることが可能である。また、負側電圧が-2.5V、正側電圧が+2.5Vの両電源電圧で動作する回路も、-5.5V以上+5.5V以下のゲート-ソース間耐圧を有するMOSFETを用いることが可能である。
【0008】
しかし、+3.3Vの単電源の信号を、負側電圧が-2.5V、正側電圧が+2.5Vの両電源の信号に変換する場合、上述した従来のレベルシフト回路は、ラッチ回路に含まれる第1出力スイッチおよび第2出力スイッチのゲート-ソース間に、最大で、+5.8V(=3.3V-(-2.5V))の電圧が印加されてしまう。
【0009】
このため、このような場合、ラッチ回路は、+5.5Vより高いゲート-ソース間耐圧を有するMOSFETを有さなければならない。従って、従来のレベルシフト回路は、例えば、単電源電圧の信号を両電源電圧の信号に変換するような場合、+5.5Vよりも高耐圧のMOSFETを含まなければならなくなる。レベルシフト回路の製造プロセスの標準的な工程が、+5.5V耐圧を有するMOSFET素子の製造工程である場合には、+5.5Vを超える高耐圧のMOSFET素子を製造するためにガラスマスクの追加や製造工程を追加することで実現可能な場合があるが、ガラスマスクや製造工程を追加しなければならなくなり、製造コストが高くなってしまっていた。
【0010】
本発明は、単電源から単電源、単電源から両電源の両方のレベルシフトを実現でき、ガラスマスクや製造工程の追加を不要とする標準的な素子のみで実現可能な製造コストの低いレベルシフト回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るレベルシフト回路は、第1正側電圧と前記第1正側電圧より低い第1負側電圧とをハイレベルとローレベルとする2値の入力信号を、第2正側電圧と前記第2正側電圧より低い第2負側電圧とをハイレベルとローレベルとする2値の出力信号に変換するレベルシフト回路であって、それぞれのゲートがインバータ入力端子に接続され、それぞれのドレインがインバータ出力端子に接続されたP型である第1MOSFETおよびN型である第2MOSFETを含むインバータ回路と、前記入力信号に応じて、前記第1正側電圧と前記インバータ入力端子との間をオン/オフするスイッチ回路と、前記インバータ入力端子と前記第2負側電圧との間に接続され、所定の抵抗値の抵抗成分を有する第1電流制限回路と、前記インバータ入力端子と前記第2負側電圧との間において、前記第1電流制限回路に対して直列に接続され、電流が流れた場合に所定の電圧値の電圧降下が生じる第1電圧制限回路と、前記第2正側電圧と前記インバータ回路の前記第1MOSFETのソースとの間に接続され、所定の抵抗値の抵抗成分を有する第2電流制限回路と、前記インバータ回路の前記第2MOSFETのソースと前記第2負側電圧との間に接続され、電流が流れた場合に所定の電圧値の電圧降下が生じる第2電圧制限回路と、前記インバータ出力端子から出力されたインバータ出力信号を受け取り、前記インバータ出力信号のレベルに応じた前記出力信号を出力する出力回路と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、単電源から単電源、単電源から両電源の両方のレベルシフトを実現でき、ガラスマスクや製造工程の追加を不要とする標準的な素子のみで構成されたレベルシフト回路が提供可能となり、製造コストを低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態に係るレベルシフト回路の構成を前段回路とともに示す図である。
【
図2】
図2は、レベルシフト回路に入出力される信号等の波形図を示す図である。
【
図3】
図3は、第1変形例に係るレベルシフト回路の構成を示す図である。
【
図4】
図4は、第2変形例に係るレベルシフト回路の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら、実施形態に係るレベルシフト回路20を詳細に説明する。
【0015】
図1は、実施形態に係るレベルシフト回路20の構成を前段回路10とともに示す図である。
【0016】
レベルシフト回路20は、2値の入力信号を、入力信号とはレベルが異なる2値の出力信号に変換する。より詳しくは、レベルシフト回路20は、第1正側電圧と第1正側電圧より低い第1負側電圧とをハイレベルとローレベルとする2値の入力信号を、第2正側電圧と第2正側電圧より低い第2負側電圧とをハイレベルとローレベルとする2値の出力信号に変換する。
【0017】
第1正側電圧、第1負側電圧、第2正側電圧および第2負側電圧のそれぞれは、グランド電圧(0V)以上の電圧であっても、グランド電圧より低い電圧であってもよい。ただし、第1正側電圧および第2正側電圧は、第1負側電圧および第2負側電圧より高いことが必要となる。また、第1正側電圧および第1負側電圧の電位差、並びに、第2正側電圧および第2負側電圧の電位差は、レベルシフト回路20のMOSFETおよび前段回路10のMOSFETのゲート-ソース間電圧やドレイン-ソース間電圧の耐圧を超えない電圧にする必要がある。
【0018】
なお、本実施形態において、第1正側電圧は、VDD1とも表され、第1負側電圧は、VSS1とも表される。また、本実施形態において、第2正側電圧は、VDD2とも表され、第2負側電圧は、VSS2とも表される。
【0019】
また、素子の端子が第1正側電圧に接続される、と記載した場合、素子の端子が第1正側電圧を発生する電圧源に電気的に接続されることを意味する。第1負側電圧、第2正側電圧および第2負側電圧についても同様である。
【0020】
前段回路10は、第1正側電圧と第1負側電圧とを動作電圧として動作する回路である。
図1の例においては、前段回路10は、P型である第1入力MOSFET14と、N型である第2入力MOSFET16とを含むインバータである。第1入力MOSFET14および第2入力MOSFET16は、互いのゲート同士が接続され、互いのドレイン同士が接続される。また、第1入力MOSFET14は、ソースが第1正側電圧に接続される。第2入力MOSFET16は、ソースが第1負側電圧に接続される。
【0021】
前段回路10は、第1入力MOSFET14および第2入力MOSFET16のドレインから、第1正側電圧と第1負側電圧とをハイレベルとローレベルとする2値の出力信号をレベルシフト回路20の入力信号としてレベルシフト回路20へ出力する。なお、前段回路10は、第1正側電圧と第1負側電圧とをハイレベルとローレベルとする2値の入力信号を出力する回路であれば、インバータに限らず、どのような回路であってもよい。
【0022】
レベルシフト回路20は、入力端子22と、出力端子24と、インバータ回路32と、スイッチ回路34と、第1電流制限回路36と、第1電圧制限回路38と、第2電流制限回路40と、第2電圧制限回路42と、出力回路44とを備える。
【0023】
入力端子22は、前段回路10から入力信号を受け取る。出力端子24は、第2正側電圧と第2負側電圧とを動作電圧として動作する後段回路へ、第2正側電圧と第2負側電圧とをハイレベルとローレベルとする2値の出力信号を出力する。出力信号は、入力信号のレベルの変化に同期してレベルが変化する。例えば、入力信号がハイレベルである場合、出力信号は、ハイレベルであり、入力信号がローレベルである場合、出力信号は、ローレベルである。また、例えば、入力信号がハイレベルである場合、出力信号は、ローレベルであり、入力信号がローレベルである場合、出力信号は、ハイレベルであってもよい。
【0024】
インバータ回路32は、インバータ入力端子52と、インバータ出力端子54と、P型である第1MOSFET56と、N型である第2MOSFET58とを含む。第1MOSFET56および第2MOSFET58のそれぞれは、ゲートがインバータ入力端子52に接続され、ドレインがインバータ出力端子54に接続される。
【0025】
スイッチ回路34は、入力端子22を介して受け取った入力信号に応じて、第1正側電圧とインバータ入力端子52との間をオン/オフする。例えば、スイッチ回路34は、入力信号が第1負側電圧のレベルである場合、オンとなり第1正側電圧とインバータ入力端子52との間を短絡する。また、例えば、スイッチ回路34は、入力信号が第1正側電圧のレベルである場合、オフとなり第1正側電圧とインバータ入力端子52との間を開放する。
【0026】
例えば、スイッチ回路34は、MOSFETである。
図1の例においては、スイッチ回路34は、ゲートに入力信号が印加され、ソースに第1正側電圧が接続され、ドレインがインバータ入力端子52に接続されたP型のMOSFETである。
【0027】
第1電流制限回路36は、インバータ入力端子52と第2負側電圧との間に接続される。第1電流制限回路36は、所定の抵抗値の抵抗成分を有する。第1電流制限回路36は、スイッチ回路34がオンした場合に、スイッチ回路34および第1電圧制限回路38に過大な電流が流れないようにすることができる。例えば、第1電流制限回路36の抵抗値は、数100kΩから数MΩ程度であってよい。第1電流制限回路36は、抵抗値が小さいほど、インバータ回路32の応答速度を速くすることができ、抵抗値が大きいほど、スイッチ回路34および第1電圧制限回路38に流れる電流量を小さくすることができる。
【0028】
例えば、第1電流制限回路36は、ゲートに所定の電圧値が印加され、ドレイン-ソース間が抵抗として機能するMOSFETである。
図1の例においては、第1電流制限回路36は、ゲートに第2正側電圧が印加され、ドレインがインバータ入力端子52に接続され、ソースが第1電圧制限回路38に接続されたN型のMOSFETである。
【0029】
第1電圧制限回路38は、インバータ入力端子52と第2負側電圧との間において、第1電流制限回路36に対して直列に接続される。第1電圧制限回路38は、電流が流れた場合に所定の電圧値の電圧降下が生じる。第1電圧制限回路38は、入力信号が第1電源電圧のレベルである場合、スイッチ回路34に過大な電圧を印加させないようにして、スイッチ回路34を保護することができる。
【0030】
例えば、第1電圧制限回路38は、ダイオード接続されたMOSFETである。
図1の例においては、第1電圧制限回路38は、ゲートおよびドレインが、第1電流制限回路36のソースに接続され、ソースが第2負側電圧に接続されたN型のMOSFETである。
【0031】
第2電流制限回路40は、第2正側電圧とインバータ回路32の第1MOSFET56のソースとの間に接続される。第2電流制限回路40は、所定の抵抗値の抵抗成分を有する。第2電流制限回路40は、第1MOSFET56、第2MOSFET58および第2電圧制限回路42に過大な電流が流れないようにすることができる。例えば、第2電流制限回路40の抵抗値は、数100kΩから数MΩ程度であってよい。第2電流制限回路40は、抵抗値が小さいほど、インバータ回路32の応答速度を速くすることができ、抵抗値が大きいほど、第1MOSFET56、第2MOSFET58および第2電圧制限回路42に流れる電流量を小さくすることができる。
【0032】
例えば、第2電流制限回路40は、ゲートに所定の電圧値が印加され、ドレイン-ソース間が抵抗として機能するMOSFETである。
図1の例においては、第2電流制限回路40は、ゲートに第2負側電圧が印加され、ドレインがインバータ回路32の第1MOSFET56のソースに接続され、ソースが第2正側電圧に接続されたP型のMOSFETである。
【0033】
第2電圧制限回路42は、インバータ回路32の第2MOSFET58のソースと第2負側電圧との間に接続される。第2電圧制限回路42は、電流が流れた場合に所定の電圧値の電圧降下が生じる。
【0034】
第2電圧制限回路42は、スイッチ回路34がオンした場合に、インバータ回路32の第2MOSFET58のゲート-ソース間に過大な電圧が印加されないようにして、第2MOSFET58を保護することができる。
【0035】
例えば、第2電圧制限回路42は、ダイオード接続されたMOSFETである。
図1の例においては、第2電圧制限回路42は、ゲートおよびドレインが、インバータ回路32の第2MOSFET58のソースに接続され、ソースが第2負側電圧に接続されたN型のMOSFETである。
【0036】
出力回路44は、第2正側電圧と第2負側電圧とを動作電圧として動作する回路である。出力回路44は、インバータ出力端子54から出力されたインバータ出力信号を受け取る。すなわち、出力回路44は、インバータ回路32の第1MOSFET56のドレイン(第2MOSFET58のドレイン)から出力されたインバータ出力信号を受け取る。出力回路44は、インバータ出力信号のレベルに応じた出力信号を出力する。出力回路44は、例えば、インバータ出力信号が所定電圧値以下である場合、ハイレベルの出力信号を出力し、インバータ出力信号が所定電圧値より大きい場合、ローレベルの出力信号を出力する。出力回路44は、例えば、インバータ出力信号が所定電圧値以下である場合、ローレベルの出力信号を出力し、インバータ出力信号が所定電圧値より大きい場合、ハイレベルの出力信号を出力してもよい。
【0037】
図1の例においては、出力回路44は、P型である第1出力MOSFET64と、N型である第2出力MOSFET66とを含むインバータである。第1出力MOSFET64および第2出力MOSFET66は、互いのゲート同士が接続され、互いのドレイン同士が接続される。また、第1出力MOSFET64は、ソースが第2正側電圧に接続される。第2出力MOSFET66は、ソースが第2負側電圧に接続される。そして、第1出力MOSFET64および第2出力MOSFET66は、相補的に動作する。すなわち、第1出力MOSFET64および第2出力MOSFET66は、一方がオンの場合、他方がオフとなるように動作する。このような構成の出力回路44は、第1出力MOSFET64および第2出力MOSFET66のドレインから、第2正側電圧と第2負側電圧とをハイレベルとローレベルとする2値の出力信号を出力する。
【0038】
ここで、インバータ回路32に含まれる第1MOSFET56および第2MOSFET58は、両方にしきい値電圧以上のゲート-ソース間電圧が印加された場合、第2MOSFET58のゲート-ソース間電圧が第1MOSFET56のゲート-ソース間電圧より大きい否かに応じて、出力信号のレベルが切り替わるように、それぞれのゲート長とゲート幅が調整されている。
【0039】
すなわち、第1MOSFET56および第2MOSFET58は、両方にしきい値電圧以上のゲート-ソース間電圧が印加された場合、何れもオンとなるが、インバータ動作となるように、それぞれのゲート長とゲート幅が調整されている。これにより、第1MOSFET56および第2MOSFET58は、インバータ入力信号のレベルに応じて、相補的に動作することができる。
【0040】
従って、レベルシフト回路20は、第1MOSFET56および第2MOSFET58の両方にしきい値電圧以上のゲート-ソース間電圧が印加された場合において、第2MOSFET58のゲート-ソース間電圧が第1MOSFET56のゲート-ソース間電圧より大きい場合、出力信号がハイレベルまたはローレベルのうちの一方のレベルとなる。また、レベルシフト回路20は、第1MOSFET56および第2MOSFET58の両方にしきい値電圧以上のゲート-ソース間電圧が印加された場合において、第2MOSFET58のゲート-ソース間電圧が第1MOSFET56のゲート-ソース間電圧以下である場合、出力信号がハイレベルまたはローレベルのうちの他方のレベルとなる。
【0041】
また、前段回路10、レベルシフト回路20および後段回路がP型半導体基板に形成されている場合、ソースが第1負側電圧に接続されているN型のMOSFETと、ソースが第2負側電圧に接続されているN型のMOSFETとは、アイソレーションされている。例えば、前段回路10に含まれるソースが第1負側電圧に接続されているN型のMOSFET(例えば、第2入力MOSFET16)は、P-Sub基板におけるDeep N-WELLによりアイソレーションされた領域に形成される。これに代えて、レベルシフト回路20および後段回路に含まれる、ソースが第2負側電圧に接続されているN型のMOSFET(例えば、第1電圧制限回路38、第2電圧制限回路42および第2出力MOSFET66)は、P-Sub基板におけるDeep N-WELLによりアイソレーションされた領域に形成されてもよい。
【0042】
また、前段回路10、レベルシフト回路20および後段回路がN型半導体基板に形成されている場合、ソースが第1正側電圧に接続されているP型のMOSFETと、ソースが第2正側電圧に接続されているP型のMOSFETとは、アイソレーションされている。例えば、前段回路10に含まれるソースが第1正側電圧に接続されているP型のMOSFETは、N-Sub基板におけるDeep P-WELLによりアイソレーションされた領域に形成される。これに代えて、レベルシフト回路20および後段回路に含まれる、ソースが第2正側電圧に接続されているP型のMOSFETは、P-Sub基板におけるDeep P-WELLによりアイソレーションされた領域に形成されてもよい。
【0043】
図2は、レベルシフト回路20に入出力される信号等の波形図を示す図である。
【0044】
レベルシフト回路20に入力される入力信号は、VDD1(第1正側電圧)とVSS1(第1負側電圧)とをハイレベルとローレベルとする2値信号である。
【0045】
インバータ入力端子52に入力されるインバータ入力信号は、(VSS2+VGSM11+VDSM10)と(VSS2+VGSM11)とをハイレベルとローレベルとする2値信号であり、入力信号に対してレベルが反転している。なお、VGSM11は、第1電圧制限回路38に電流が流れた場合は強反転領域(飽和領域あるいは非飽和領域)で動作し、電流がほとんど流れない場合は弱反転領域で動作する。弱反転領域で動作する場合は、VGSM11は、ダイオードのように振る舞う。
【0046】
インバータ出力端子54から出力されるインバータ出力信号は、(VDD2-VDSM12)と(VSS2+VGSM15)とをハイレベルとローレベルとする2値信号であり、インバータ入力信号に対してレベルが反転している。なお、VGSM15は、第2電圧制限回路42に電流が流れた場合は強反転領域(飽和領域と非飽和領域)で動作し、電流がほとんど流れない場合は弱反転領域で動作する。弱反転領域で動作する場合は、VGSM15は、ダイオードのように振る舞う。
【0047】
つぎに、
図1に示したレベルシフト回路20の具体的な動作について説明する。
図1に示す各MOSFETは、次のような特性を有する。
【0048】
各MOSFETは、+5.5V耐圧を有するMOSFET素子の標準的な製造工程で製造した素子(以下、+5.5V耐圧工程の標準的素子という)であり、ゲート-ソース間電圧およびドレイン-ソース間電圧が、-5.5V以上、+5.5V以下の範囲である場合、素子破壊の可能性および劣化が非常に小さい。
【0049】
また、N型のMOSFETのしきい値電圧(Vthn)は、1Vと仮定する。ここで、仮定するとしたのは、しきい値電圧は、製造工程により決まる値であるためである。以降も同様とする。P型のMOSFETのしきい値電圧(|Vthp|)は、|1V|と仮定する。つまり、N型のMOSFETは、ゲート-ソース間電圧(VGSn)がVthn以上の場合に、オンとなる。また、P型のMOSFETは、ゲート-ソース間電圧(|VGSp|)が|Vthp|以上の場合に、オンとなる。
【0050】
また、N型のMOSFETの飽和電圧をVDSnsatと表す。また、P型のMOSFETの飽和電圧を|VDSpsat|と表す。VDSnsat=|VDSpsat|=0.2Vと仮定する。飽和領域で動作時のN型のMOSFETのゲート-ソース間電圧(VGSna)は、VGSna=Vthn+VDSnsat=1V+0.2=1.2Vである。弱反転領域で動作時のN型のMOSFETのゲート-ソース間電圧(VGSnb)は、VGSnb=0.7Vと仮定する。また、飽和領域で動作時のP型のMOSFETのゲート-ソース間電圧(|VGSp|)は、|Vthp|+|VDSpsat|=1V+0.2=1.2Vである。
【0051】
(第1電源条件)
図1に示すレベルシフト回路20は、VDD1=3.3V、VSS1=0V、VDD2=2.5VおよびVSS2=-2.5Vの第1電源条件の場合、次のように動作する。
【0052】
入力信号のレベルがVDD1の場合、スイッチ回路34のゲート電圧(VGM9)がVDD1となる。ゲート電圧(VGM9)がVDD1である場合、スイッチ回路34は、P型のMOSFETであるので、オフとなる。従って、入力信号のレベルがVDD1の場合、第1電流制限回路36および第1電圧制限回路38に流れる電流は、ゼロとなる。
【0053】
また、第1電流制限回路36がオンであるので、第1電圧制限回路38は、弱反転領域で動作するためダイオードのように動作する。このため、第1電流制限回路36のドレイン電圧(VDM10)、つまり、インバータ入力端子52に入力されるインバータ入力信号は、VSS2に弱反転領域のゲート-ソース間電圧(VGSnb)分の電圧が加算された電圧となる。
【0054】
この場合、第1電流制限回路36のドレイン電圧(VDM10)、つまり、インバータ入力端子52に入力されるインバータ入力信号の電圧は、式(1)のように表される。
VDM10=VSS2+VGSnb≒-2.5V+0.7V=-1.8V…(1)
【0055】
また、スイッチ回路34のドレイン-ソース間電圧(|VDSM9|)は、式(2)のように表される。
|VDSM9|=VDD1-VDM10
=VDD1-(VSS2+VGSnb)
≒3.3V-(-2.5V+0.7V)=5.1V…(2)
【0056】
また、第2電流制限回路40は、オンである。このため、インバータ回路32の第1MOSFET56のソース電圧は、VDD2となる。従って、第1MOSFET56のゲート-ソース間電圧(|VGSM13|)は、式(3)のようになる。
|VGSM13|=VDD2-VDM10
=VDD2-(VSS2+VGSnb)
≒2.5V-(-2.5V+0.7V)=4.3V…(3)
【0057】
第2MOSFET58がオンで第2電圧制限回路42に電流が流れるときは、第2電圧制限回路42は飽和領域での動作となり第2電圧制限回路42のゲート-ソース間電圧(VGSM15)がVGSna=1.2V、第2MOSFET58がオフで第2電圧制限回路42に電流が流れないときは、第2電圧制限回路42は弱反転領域での動作となり第2電圧制限回路42のゲート-ソース間電圧(VGSM15)がVGSnb=0.7Vとなる。第2電圧制限回路42のゲート-ソース間電圧(VGSM15)が飽和領域で動作時は、第2MOSFET58のゲート-ソース間電圧(VGSM14)は式(4)のようになり、第2電圧制限回路42のゲート-ソース間電圧(VGSM15)が飽和領域で動作時は、第2MOSFET58のゲート-ソース間電圧(VGSM14)は、式(5)のようになる。
VGSM14=VDM10-VGSM15=VDM10-VGSna
≒-1.8V-1.2V-≒-3.0V…(4)
VGSM14=VDM10-VGSM15=VDM10-VGSnb
≒-1.8V-0.7V≒-2.5V…(5)
【0058】
式(3)から、P型である第1MOSFET56のゲート-ソース間電圧(|VGSM13|)は、|Vthp|以上であるので、第1MOSFET56は、オンとなる。式(4)および式(5)から、N型である第2MOSFET58のゲート-ソース間電圧(VGSp14)は、Vthn以上ではないので、第2MOSFET58は、オフとなる。
【0059】
従って、入力信号のレベルがVDD1の場合、第1MOSFET56のドレイン(第2MOSFET58のドレイン)、すなわち、インバータ出力端子54から出力されるインバータ出力信号の電圧は、ほぼVDD2(+2.5V)となる。これにより、出力回路44の第1出力MOSFET64は、オフとなり、出力回路44の第2出力MOSFET66は、オンとなる。この結果、出力信号のレベルは、VSS2となる。
【0060】
このようにレベルシフト回路20は、第1電圧条件において、入力信号のレベルがVDD1の場合、VSS2のレベルの出力信号を出力することができる。
【0061】
また、式(1)~式(5)に示すように、第1電源条件において、入力信号のレベルがVDD1の場合、第1MOSFET56のゲート-ソース間電圧(|VGSM13|)および第2MOSFET58のゲート-ソース間電圧(VGSM14)は、-5.5V以上、5.5V以下の範囲となる。また、スイッチ回路34のドレイン-ソース間電圧(|VDSM9|)も、-5.5V以上、5.5V以下の範囲となる。すなわち、第1電源条件において、入力信号のレベルがVDD1の場合、第1MOSFET56、第2MOSFET58およびスイッチ回路34は、+5.5V耐圧工程の標準的素子により実現することができる。
【0062】
一方、入力信号のレベルがVSS1の場合、スイッチ回路34は、オンとなる。従って、入力信号のレベルがVSS1の場合、第1電流制限回路36および第1電圧制限回路38に所定値の電流が流れる。また、第1電流制限回路36がオン、第1電圧制限回路38には電流が流れるため、第1電圧制限回路38のゲート-ソース間電圧(VGSM11)はVGSna=1.2Vとなる。このため、第1電流制限回路36のドレイン電圧(VDM10)、つまり、インバータ入力端子52に入力されるインバータ入力信号は、VSS1に第1電圧制限回路38のゲート-ソース間電圧(VGSM11)と第1電流制限回路36の電圧降下分(VDSM10)が加算された電圧となる。
【0063】
スイッチ回路34のオン抵抗が第1電流制限回路36のオン抵抗に比べ十分に小さい場合、スイッチ回路34のドレイン-ソース間電圧(|VDSM9|)は式(6)のように表される。
|VDSM9|=VDD1-VDM10≒0V…(6)
【0064】
式(6)から、第1電流制限回路36のドレイン電圧(VDM10)、つまり、インバータ入力端子52に入力されるインバータ入力信号の電圧は、式(7)のように表される。
VDM10=VSS2+VGSM11+VDSM10
=VDD1-|VDSM9|≒3.3V-0V=3.3V…(7)
【0065】
また、第2電流制限回路40は、オンである。このため、インバータ回路32の第1MOSFET56のソース電圧は、VDD2となる。従って、第1MOSFET56のゲート-ソース間電圧(|VGSM13|)は、式(8)のようになる。
|VGSM13|=VDD2-VDM10≒2.5V-3.3V=-0.8V…(8)
【0066】
式(8)から、P型である第1MOSFET56のゲート-ソース間電圧(|VGSM13|)は、|Vthp|以上ではないので、第1MOSFET56は、オフとなる。よって、第2電圧制限回路42には電流が流れないため、第2電圧制限回路42のドレイン電圧(VDM15)は、VSS2に弱反転領域で動作時の第2電圧制限回路42のゲート-ソース間電圧VGSnb=0.7Vが加算された電圧となる。従って、第2MOSFET58のゲート-ソース間電圧(VGSM14)は、式(9)のようになる。
VGSM14=VDM10-VGSM15
=VDM10-(VSS2+VGSnb)
≒3.3V-(-2.5V+0.7V)=5.1V…(9)
【0067】
式(9)から、N型である第2MOSFET58のゲート-ソース間電圧(VGSp14)は、Vthn以上であるので、第2MOSFET58は、オンとなる。
【0068】
従って、入力信号のレベルがVSS1の場合、第1MOSFET56のドレイン(第2MOSFET58のドレイン)、すなわち、インバータ出力端子54から出力されるインバータ出力信号の電圧は、VSS2(-2.5V)に弱反転領域で動作時の第2電圧制限回路42のゲート-ソース間電圧VGSnb=0.7V分の電圧が加算された電圧となる。これにより、出力回路44の第1出力MOSFET64は、オンとなり、出力回路44の第2出力MOSFET66は、オフとなる。この結果、出力信号のレベルは、VDD2となる。
【0069】
このようにレベルシフト回路20は、第1電圧条件において、入力信号のレベルがVSS1の場合、VDD2のレベルの出力信号を出力することができる。
【0070】
また、式(6)~式(9)に示すように、第1電源条件において、入力信号のレベルがVSS1の場合、第1MOSFET56のゲート-ソース間電圧(|VGSM13|)および第2MOSFET58のゲート-ソース間電圧(VGSM14)は、-5.5V以上、5.5V以下の範囲となる。また、スイッチ回路34のドレイン-ソース間電圧(|VDSM9|)も、-5.5V以上、5.5V以下の範囲となる。すなわち、第1電源条件において、入力信号のレベルがVSS1の場合、第1MOSFET56、第2MOSFET58およびスイッチ回路34は、+5.5V耐圧工程の標準的素子により実現することができる。
【0071】
(第2電源条件)
図1に示すレベルシフト回路20は、VDD1=3.3V、VSS1=0V、VDD2=5VおよびVSS2=0Vの第2電源条件の場合、次のように動作する。
【0072】
入力信号のレベルがVDD1の場合、第1電流制限回路36のドレイン電圧(VDM10)、つまり、インバータ入力端子52に入力されるインバータ入力信号の電圧は、式(10)のように表される。
VDM10=VSS2+VGSnb≒0V+0.7V=0.7V…(10)
【0073】
また、スイッチ回路34のドレイン-ソース間電圧(|VDSM9|)は、式(11)のように表される。
|VDSM9|=VDD1-VDM10
=VDD1-(VSS2+VGSnb)
≒3.3V-(0V+0.7V)=2.6V…(11)
【0074】
また、第1MOSFET56のゲート-ソース間電圧(|VGSM13|)は、式(12)のようになる。
|VGSM13|=VDD2-VDM10
=VDD2-(VSS2+VGSnb)
≒5V-(0V+0.7V)=4.3V…(12)
【0075】
また、第2MOSFET58がオンで第2電圧制限回路42に電流が流れるときは第2電圧制限回路42のゲート-ソース間電圧(VGSM15)がVGSna=1.2Vとなる。第2MOSFET58がオフで第2電圧制限回路42に電流が流れないときは第2電圧制限回路42のゲート-ソース間電圧(VGSM15)がVGSnb=0.7Vとなる。第2電圧制限回路42のゲート-ソース間電圧(VGSM15)が飽和領域で動作時は、第2MOSFET58のゲート-ソース間電圧(VGSM14)は式(13)のようになり、第2電圧制限回路42のゲート-ソース間電圧(VGSM15)が飽和領域で動作時は、第2MOSFET58のゲート-ソース間電圧(VGSM14)は、式(14)のようになる。
VGSM14=VDM10-VGSM15=VDM10-VGSna
≒0.7V-1.2V=-0.5V…(13)
VGSM14=VDM10-VGSM15=VDM10-VGSnb
≒0.7V-0.7V=0V…(14)
【0076】
式(12)から、P型である第1MOSFET56のゲート-ソース間電圧(|VGSM13|)は、|Vthp|以上であるので、第1MOSFET56は、オンとなる。式(13)および式(14)から、N型である第2MOSFET58のゲート-ソース間電圧(VGSp14)は、Vthn以上ではないので、第2MOSFET58は、オフとなる。
【0077】
従って、入力信号のレベルがVDD1の場合、第1MOSFET56のドレイン(第2MOSFET58のドレイン)、すなわち、インバータ出力端子54から出力されるインバータ出力信号の電圧は、ほぼVDD2(+5V)となる。これにより、出力回路44の第1出力MOSFET64は、オフとなり、出力回路44の第2出力MOSFET66は、オンとなる。この結果、出力信号のレベルは、VSS2となる。
【0078】
このようにレベルシフト回路20は、第2電圧条件において、入力信号のレベルがVDD1の場合、VSS2のレベルの出力信号を出力することができる。
【0079】
また、式(10)~式(14)に示すように、第2電源条件において、入力信号のレベルがVDD1の場合、第1MOSFET56のゲート-ソース間電圧(|VGSM13|)および第2MOSFET58のゲート-ソース間電圧(VGSM14)は、-5.5V以上、5.5V以下の範囲となる。また、スイッチ回路34のドレイン-ソース間電圧(|VDSM9|)も、-5.5V以上、5.5V以下の範囲となる。すなわち、第2電源条件において、入力信号のレベルがVDD1の場合、第1MOSFET56、第2MOSFET58およびスイッチ回路34は、+5.5V耐圧工程の標準的素子により実現することができる。
【0080】
一方、入力信号のレベルがVSS1の場合、スイッチ回路34は、オンとなる。従って、第1電流制限回路36および第1電圧制限回路38に所定値の電流が流れる。スイッチ回路34のオン抵抗が第1電流制限回路36のオン抵抗に比べ十分に小さい場合、スイッチ回路34のドレイン-ソース間電圧(|VDSM9|)は、式(15)のように表される。
|VDSM9|=VDD1-VDM10≒0V…(15)
【0081】
式(15)から、第1電流制限回路36のドレイン電圧(VDM10)、つまり、インバータ入力端子52に入力されるインバータ入力信号の電圧は、式(16)のように表される。
VDM10=VSS2+VGSM11+VDSM10
=VDD1-|VDSM9|≒3.3V-0V=3.3V…(16)
【0082】
また、第2電流制限回路40は、オンであるため、インバータ回路32の第1MOSFET56のゲート-ソース間電圧(|VGSM13|)は、式(17)のようになる。
|VGSM13|=VDD2-VDM10≒5V-3.3V=1.7V≧|Vthp|…(17)
【0083】
また、インバータ回路32の第2MOSFET58のゲート-ソース間電圧(VGSM14)は、式(18)のようになる。
VGSM14=VDM10-VGSM15=VDM10-VGSna
≒3.3V-1.2V=2.1V≧Vthn…(18)
【0084】
式(17)および式(18)から、第1MOSFET56および第2MOSFET58は、両方にしきい値電圧以上のゲート-ソース間電圧が印加されるため、第1MOSFET56および第2MOSFET58はどちらもオンとなる。
【0085】
図1の例の場合、式(16)から、インバータ入力端子52に入力されるインバータ入力信号の電圧はハイレベルであるため、第1MOSFET56および第2MOSFET58の両方にしきい値電圧以上のゲート-ソース間電圧が印加された場合であって、第2MOSFET58のゲート-ソース間電圧が第1MOSFET56のゲート-ソース間電圧より大きい(VGS
M14>|VGS
M13|)場合、インバータ出力端子54から出力されるインバータの出力信号の電圧がローレベルとなるように、それぞれのゲート長とゲート幅が調整されている。
【0086】
このとき、第2電圧制限回路42が強反転領域で動作しているため、第2電圧制限回路42のゲート-ソース間電圧(VGSM15)は、VGSna=1.2Vであり、ローレベルとなるインバータの出力信号の電圧はVSS2(0V)にVGSna分の電圧が加算された電圧となる。
【0087】
従って、入力信号のレベルがVSS1の場合、第1MOSFET56のドレイン(第2MOSFET58のドレイン)、すなわち、インバータ出力端子54から出力されるインバータ出力信号の電圧は、VSS2+VGSna(0V+1.2V=1.2V)となる。これにより、出力回路44の第1出力MOSFET64は、オンとなり、第2出力MOSFET66は、オフとなる。この結果、出力信号のレベルは、VDD2となる。
【0088】
このようにレベルシフト回路20は、第2電圧条件において、入力信号のレベルがVSS1の場合、VDD2のレベルの出力信号を出力することができる。
【0089】
また、式(15)~式(18)に示すように、入力信号のレベルがVSS1の場合、第1MOSFET56のゲート-ソース間電圧(|VGSM13|)および第2MOSFET58のゲート-ソース間電圧(VGSM14)は、-5.5V以上、5.5V以下の範囲となる。また、スイッチ回路34のドレイン-ソース間電圧(|VDSM9|)も、-5.5V以上、5.5V以下の範囲となる。すなわち、入力信号のレベルがVSS1の場合、第1MOSFET56、第2MOSFET58およびスイッチ回路34は、+5.5V耐圧工程の標準的素子により実現することができる。
【0090】
以上のように、本実施形態に係るレベルシフト回路20は、スイッチ回路34、第1MOSFET56および第2MOSFET58を、+5.5V耐圧工程の標準的なMOSFETにより実現することができる。これにより、本実施形態に係るレベルシフト回路20によれば、ガラスマスクや製造工程の追加を不要とする標準的な素子のみで実現可能となり、製造コストを低くすることができる。また、第1電流制限回路36および第2電流制限回路40により本実施形態に係るレベルシフト回路20には必要な応答速度に応じた電流に調整することが可能となる。さらに、第1MOSFET56および第2MOSFET58のゲート長とゲート幅を調整することで、単電源電圧から異なる単電源電圧への信号に変換することも可能となる。
【0091】
なお、第1正側電圧VDD1、第1負側電圧VSS1、第2正側電圧VDD2、第2負側電圧VSS2は、前段回路10およびレベルシフト回路20のMOSFETのゲート-ソース間電圧やドレイン-ソース間電圧の耐圧を超えない電圧にする必要がある。さらに、
図1の例では、インバータ入力端子52に入力されるインバータ入力信号がハイレベル(VSS2+VGS
M11+VDS
M10)のときに、第2MOSFET58がオンするとともにゲート-ソース間電圧の耐圧を超えないように第1正側電圧VDD1と第2負側電圧VSS2を設定する必要がある。また、インバータ入力端子52に入力されるインバータ入力信号がローレベル(VSS2+VGS
M11)のときに、第1MOSFET56がオンするとともにゲート-ソース間電圧の耐圧を超えないように第1負側電圧VSS1と第2正側電圧VDD2を設定する必要がある。
【0092】
また、
図1の例では、第1電流制限回路36と第2電流制限回路40ゲートに、それぞれVDD2およびVSS2を印加した例としているが、所望の抵抗値の抵抗成分となるような電圧が入力されればよく、VDD2やVSS2に限定されない。
【0093】
(変形例)
図3は、第1変形例に係るレベルシフト回路20の構成を示す図である。レベルシフト回路20は、
図3に示すような構成であってもよい。
図3に示すレベルシフト回路20は、第1電流制限回路36および第2電流制限回路40が、
図1示す構成と異なる。
【0094】
図3に示す第1電流制限回路36および第2電流制限回路40のそれぞれは、抵抗である。また、抵抗は、例えば、半導体基板に形成される。例えば、抵抗の抵抗値は、数100kΩから数MΩ程度である。このようなレベルシフト回路20は、第1電流制限回路36および第2電流制限回路40が抵抗であっても、
図1に示す構成と同様に動作することができる。
【0095】
図4は、第2変形例に係るレベルシフト回路20の構成を示す図である。出力回路44は、
図1に示すようなインバータに限らず、他の構成であってもよい。例えば、出力回路44は、
図4に示すように、第1出力インバータ回路74と、第2出力インバータ回路76と、ラッチ回路78とを含んでもよい。
【0096】
第1出力インバータ回路74は、インバータ出力端子54から出力されたインバータ出力信号を受け取る。第1出力インバータ回路74は、インバータ出力信号を所定のしきい値で二値化した、VDD2(第2正側電圧)とVSS2(第2負側電圧)とをハイレベルとローレベルとする第1信号を出力する。
【0097】
例えば、第1出力インバータ回路74は、P型である第3出力MOSFET82と、N型である第4出力MOSFET84とを含む。第3出力MOSFET82および第4出力MOSFET84は、互いのゲート同士が接続され、互いのドレイン同士が接続される。また、第3出力MOSFET82は、ソースがVDD2(第2正側電圧)に接続される。第4出力MOSFET84は、ソースがVSS2(第2負側電圧)に接続される。このような第1出力インバータ回路74は、第3出力MOSFET82および第4出力MOSFET84のドレインから第1信号を出力する。
【0098】
第2出力インバータ回路76は、第1出力インバータ回路74から第1信号を受け取る。第2出力インバータ回路76は、第1信号のレベルを反転させた、VDD2(第2正側電圧)とVSS2(第2負側電圧)とをハイレベルとローレベルとする第2信号を出力する。
【0099】
例えば、第2出力インバータ回路76は、P型である第5出力MOSFET86と、N型である第6出力MOSFET88とを含む。第5出力MOSFET86および第6出力MOSFET88は、互いのゲート同士が接続され、互いのドレイン同士が接続される。また、第5出力MOSFET86は、ソースがVDD2(第2正側電圧)に接続される。第6出力MOSFET88は、ソースがVSS2(第2負側電圧)に接続される。このような第2出力インバータ回路76は、第5出力MOSFET86および第6出力MOSFET88のドレインから第2信号を出力する。
【0100】
ラッチ回路78は、第1出力インバータ回路74から第1信号を受け取り、第2出力インバータ回路76から第2信号を受け取る。そして、ラッチ回路78は、第2信号のレベルを保持し、保持しているレベルを出力信号として出力端子24から出力する。例えば、ラッチ回路78は、P型である第1ラッチMOSFET92と、P型である第2ラッチMOSFET94と、N型である第3ラッチMOSFET96と、N型である第4ラッチMOSFET98とを含む。
【0101】
第1ラッチMOSFET92および第2ラッチMOSFET94のそれぞれは、ソースがVDD2(第2正側電圧)に接続される。第1ラッチMOSFET92は、ゲートが第2ラッチMOSFET94のドレインに接続される。第2ラッチMOSFET94は、ゲートが第1ラッチMOSFET92のドレインに接続される。
【0102】
第3ラッチMOSFET96および第4ラッチMOSFET98のそれぞれは、ソースがVSS2(第2負側電圧)に接続される。第3ラッチMOSFET96は、ゲートに第2信号が印加され、ドレインが第1ラッチMOSFET92のドレインに接続される。第4ラッチMOSFET98は、ゲートに第1信号が印加され、ドレインが第2ラッチMOSFET94のドレインに接続される。このようなラッチ回路78は、第1ラッチMOSFET92および第3ラッチMOSFET96のドレインから出力信号を出力する。
【0103】
なお、出力回路44は、このような回路に限らず、他の回路であってもよい。例えば、出力回路44は、ラッチ回路78を含まず、第2出力インバータ回路76から出力された第2信号を、出力信号として出力してもよい。
【0104】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述の実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。また、上述の各実施形態および変形例は、任意に組み合わせることができる。
【0105】
本実施形態に係るレベルシフト回路20は、ガラスマスクや製造工程の追加を不要とする標準的なMOSFETにより実現することができる。このため、製造コストの低いレベルシフト回路20を提供することができる。また、第1電流制限回路36および第2電流制限回路40により本実施形態に係るレベルシフト回路20には必要な応答速度に応じた電流に調整することが可能となる。さらに、第1MOSFET56および第2MOSFET58のゲート長とゲート幅を調整することで、単電源電圧から異なる単電源電圧への信号に変換することも可能となる。
【符号の説明】
【0106】
20 レベルシフト回路
22 入力端子
24 出力端子
32 インバータ回路
34 スイッチ回路
36 第1電流制限回路
38 第1電圧制限回路
40 第2電流制限回路
42 第2電圧制限回路
44 出力回路
52 インバータ入力端子
54 インバータ出力端子
56 第1MOSFET
58 第2MOSFET