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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022011399
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】スイッチング電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
H02M3/28 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020112522
(22)【出願日】2020-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】新日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】三添 公義
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AS01
5H730BB43
5H730DD04
5H730EE02
5H730EE07
5H730EE58
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD25
5H730FD51
5H730FF19
5H730FG03
5H730FG04
(57)【要約】
【課題】RCC方式の絶縁型スイッチング電源装置においてトランスに補助巻線を設けないでフライバック動作を適確に行えるようにすること。
【解決手段】このスイッチング電源装置において、制御回路16は、スイッチングトランジスタ12のターンオンを制御するために、一次側に巻線電圧監視回路28を備えている。この巻線電圧監視回路28は、一次巻線Lの両端に接続される第1および第2の入力端子28a,28bと、スイッチング制御回路24に接続される出力端子28cを有し、オフ時間中に一次巻線Lに発生するフライバック電圧を両入力端子28a,28bを通じて監視し、両入力端子28a,28bが等電位になった瞬間またはその直後に、フライバック電圧の消滅またはその直後の自由振動の極性変換を知らせる反転検出信号を出力端子28cより出力する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流の入力電圧が印加される一次巻線と前記一次巻線に磁気的に結合している二次巻線とを有するトランスと、前記一次巻線に直列に接続されているスイッチングトランジスタと、前記二次巻線に接続されている整流平滑回路と、前記スイッチングトランジスタのオン・オフを制御する制御回路とを有するRCC方式の絶縁型スイッチング電源装置であって、
前記制御回路は、
前記一次巻線の両端に接続され、前記スイッチングトランジスタがオフしている時に、前記一次巻線に発生するフライバック電圧の消滅またはその直後の自由振動の極性反転を検出して、その検出したタイミングを示す反転検出信号を出力する巻線電圧監視回路を有し、
前記反転検出信号に基づいて前記スイッチングトランジスタをターンオンさせる、
スイッチング電源装置。
【請求項2】
前記巻線電圧監視回路は、
その正極側端子が前記入力電圧を入力する正極側の入力端子と前記一次巻線の一方の端との間の第1のノードに接続され、一定のバイアス電圧を与えるバイアス電圧源と、
その一方の端子が前記一次巻線の他方の端と前記スイッチングトランジスタとの間の第2のノードに接続され、その他方の端子が第3のノードおよび第1の抵抗を介して一次側グランド電位端子に接続され、その制御端子が前記バイアス電圧源の負極側端子に接続されているトランジスタと、
前記第3のノードの電圧を基準電圧と比較してその大小関係を表す二値の論理レベルを出力するコンパレータと、
を有し、前記トランジスタの前記一方の端子の電圧が前記制御端子の電圧に前記トランジスタの閾値電圧を加えた電圧以下になった時に、前記コンパレータの出力の論理レベルが反転して、その論理レベルの反転エッジが前記反転検出信号となる、
請求項1に記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記第2のノードと前記トランジスタの前記一方の端子との間に第2の抵抗が設けられている、請求項2に記載のスイッチング電源装置。
【請求項4】
前記巻線電圧監視回路は、
その一方の端子が前記入力電圧を入力する正極側の入力端子と前記一次巻線の一方の端との間の第1のノードに接続され、その他方の端子が定電流源を介して一次側グランド電位端子に接続され、その制御端子が前記他方の端子に接続されている第1のトランジスタと、
その一方の端子が前記一次巻線の他方の端と前記スイッチングトランジスタとの間の第2のノードに接続され、その他方の端子が第3のノードおよび第1の抵抗を介して前記一次側グランド電位端子に接続され、その制御端子が前記第1のトランジスタの制御端子に接続されている第2のトランジスタと、
前記第3のノードの電圧を基準電圧と比較してその大小関係を表す二値の論理レベルを出力するコンパレータと、
を有し、前記第2のトランジスタの前記一方の端子の電圧が前記制御端子の電圧に前記第2のトランジスタの閾値電圧を加えた電圧以下になった時に、前記コンパレータの出力の論理レベルが反転して、その論理レベルの反転エッジが前記反転検出信号となる、
請求項1に記載のスイッチング電源装置。
【請求項5】
前記第2のノードと前記第2のトランジスタの前記一方の端子との間に第2の抵抗が設けられている、請求項4に記載のスイッチング電源装置。
【請求項6】
前記巻線電圧監視回路は、
一端が前記入力電圧を入力する正極側の入力端子と前記一次巻線の一方の端との間の第1のノードに接続され、他端が第3のノードに接続されている第1の抵抗と、
一端が前記第3のノードに接続され、他端が一次側グランド電位端子に接続されている第2の抵抗と、
一端が前記一次巻線の他方の端と前記スイッチングトランジスタとの間の第2のノードに接続され、他端が第4のノードに接続されている第3の抵抗と、
一端が前記第4のノードに接続され、他端が前記一次側グランド電位端子に接続されている第4の抵抗と、
前記第3のノードの電圧と前記第4のノードの電圧とを比較してその大小関係を表す二値の論理レベルを出力するコンパレータと、
を有し、前記第4のノードの電圧が前記第3のノードの電圧以下になった時に、前記コンパレータの出力の論理レベルが反転して、その論理レベルの反転エッジが前記反転検出信号となる、
請求項1に記載のスイッチング電源装置。
【請求項7】
前記制御回路は、前記スイッチングトランジスタがオンしている時に、前記スイッチングトランジスタを流れる電流を検出する電流監視回路を有し、前記電流監視回路の出力信号に基づいて前記スイッチングトランジスタをターンオフさせる、請求項1~6のいずれか一項に記載のスイッチング電源装置。
【請求項8】
前記制御回路は、前記整流平滑回路より出力される出力電圧の状態をフィードバックする出力電圧監視回路を有し、前記巻線電圧監視回路の出力信号と前記出力電圧監視回路の出力信号とに基づいて前記スイッチングトランジスタをターンオンさせ、前記電流監視回路の出力信号と前記出力電圧監視回路の出力信号とに基づいて前記スイッチングトランジスタをターンオフさせる、請求項7に記載のスイッチング電源装置。
【請求項9】
入力電圧が印加される一次巻線と前記一次巻線に磁気的に結合している二次巻線とを有するトランスと、前記一次巻線に直列に接続されているスイッチングトランジスタと、前記二次巻線に接続されている整流平滑回路と、前記スイッチングトランジスタのオン・オフを制御する制御回路とを有するRCC方式の絶縁型スイッチング電源装置であって、
前記制御回路は、
前記スイッチングトランジスタと直列に接続されるセンス抵抗を有し、前記スイッチングトランジスタがオンしている時に、前記スイッチングトランジスタを流れる電流に比例するセンス電圧を出力する電流監視回路と、
前記一次巻線の両端に接続され、前記スイッチングトランジスタがオフしている時に、前記一次巻線で発生するフライバック電圧の消滅またはその直後の自由振動の極性反転を検出して、その検出したタイミングを示す反転検出信号を出力する巻線電圧監視回路と、
前記整流平滑回路より出力される出力電圧を基準値と比較して前記出力電圧の状態をフォトカプラを通じてフィードバックする出力電圧監視回路と、
を有し、前記反転検出信号と前記フォトカプラの出力とに基づいて前記スイッチングトランジスタをターンオンさせ、前記センス電圧と前記フォトカプラの出力とに基づいて前記スイッチングトランジスタをターンオフさせる、
スイッチング電源装置。
【請求項10】
前記巻線電圧監視回路は、
その正極側端子が前記入力電圧を入力する正極側の入力端子と前記一次巻線の一方の端との間の第1のノードに接続され、一定のバイアス電圧を与えるバイアス電圧源と、
その一方の端子が前記一次巻線の他方の端と前記スイッチングトランジスタとの間の第2のノードに接続され、その他方の端子が第3のノードおよび第1の抵抗を介して一次側グランド電位端子に接続され、その制御端子が前記直流電圧源の負極側端子に接続されているトランジスタと、
前記第3のノードの電圧を基準電圧と比較してその大小関係を表す二値の論理レベルを出力するコンパレータと、
を有し、前記トランジスタの前記一方の端子の電位が前記制御端子の電位に前記トランジスタの閾値電圧を加えた電位以下になった時に、前記コンパレータの出力の論理レベルが反転して、その論理レベルの反転エッジが前記反転検出信号となる、
請求項9に記載のスイッチング電源装置。
【請求項11】
前記第2のノードと前記トランジスタの前記一方の端子との間に第2の抵抗が設けられている、請求項10に記載のスイッチング電源装置。
【請求項12】
前記巻線電圧監視回路は、
その一方の端子が前記入力電圧を入力する正極側の入力端子と前記一次巻線の一方の端との間の第1のノードに接続され、その他方の端子が定電流源を介して一次側グランド電位端子に接続され、その制御端子が前記一方の端子に接続されている第1のトランジスタと、
その一方の端子が前記一次巻線の他方の端と前記スイッチングトランジスタとの間の第2のノードに接続され、その他方の端子が第3のノードおよび第1の抵抗を介して前記一次側グランド電位端子に接続され、その制御端子が前記第1のトランジスタの制御端子に接続されている第2のトランジスタと、
前記第3のノードの電圧を基準電圧と比較してその大小関係を表す二値の論理レベルを出力するコンパレータと、
を有し、前記第2のトランジスタの前記一方の端子の電圧が前記制御端子の電圧に前記第2のトランジスタの閾値電圧を加えた電圧以下になった時に、前記コンパレータの出力の論理レベルが反転して、その論理レベルの反転エッジが前記反転検出信号となる、
請求項9に記載のスイッチング電源装置。
【請求項13】
前記第2のノードと前記第2のトランジスタの前記一方の端子との間に第2の抵抗が設けられている、請求項12に記載のスイッチング電源装置。
【請求項14】
前記巻線電圧監視回路は、
一端が前記入力電圧を入力する正極側の入力端子と前記一次巻線の一方の端との間の第1のノードに接続され、他端が第3のノードに接続されている第1の抵抗と、
一端が前記第3のノードに接続され、他端が一次側グランド電位端子に接続されている第2の抵抗と、
一端が前記一次巻線の他方の端と前記スイッチングトランジスタとの間の第2のノードに接続され、他端が第4のノードに接続されている第3の抵抗と、
一端が前記第4のノードに接続され、他端が前記一次側グランド電位端子に接続されている第4の抵抗と、
前記第3のノードの電圧と前記第4のノードの電圧とを比較してその大小関係を表す二値の論理レベルを出力するコンパレータと
を有し、前記第4のノードの電圧が前記第3のノードの電圧以下になった時に、前記コンパレータの出力の論理レベルが反転して、その論理レベルの反転エッジが前記反転検出信号となる、
請求項9に記載のスイッチング電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスを用いる絶縁型のスイッチング電源装置に係り、特にRCC方式の絶縁型スイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
RCC(Ringing Choke Converter)方式の絶縁型スイッチング電源装置は、特別な発振回路をもたない自励式のフライバック型DC-DCコンバータである。このタイプのスイッチング電源装置は、基本構成として、トランスと、トランスの一次巻線に直列に接続されているスイッチングトランジスタと、トランスの二次巻線に接続されている整流平滑回路と、スイッチングトランジスタのオン・オフを制御する制御回路とを有している。
【0003】
かかる構成においては、制御回路がスイッチングトランジスタをターンオンさせて一次巻線に励磁電流を流すと、トランスに磁気エネルギーが蓄積され、次いでスイッチングトランジスタをターンオフさせると、トランスに蓄積されていた電磁エネルギーが二次電流として二次巻線および整流平滑回路を介して負荷側に放出(供給)され、以後も同様のオン動作およびオフ動作が繰り返される。同じ絶縁型のスイッチング電源装置でも、RCC方式の絶縁型スイッチング電源装置は、フォワード方式のものに比べて、トランスの設計・製作が難しい反面、二次側でチョークコイルを省略できるとともに、入力電圧を広くとれる利点があり、ACアダプタ等の小電力用途で多く用いられている。
【0004】
従来のRCC方式の絶縁型スイッチング電源装置は、トランスに一次巻線および二次巻線に加えて補助巻線を備えている。一般に、補助巻線の極性は、一次巻線と同じで、二次巻線と逆になっている。スイッチングトランジスタがオンしている時は、補助巻線に一方向の誘導起電力が発生する。この誘導起電力は、制御回路の各部の動作に用いられる。そして、スイッチングトランジスタがオフしている時は、補助巻線に逆方向の誘導起電力またはフライバック電圧が発生する。補助巻線に発生するフライバック電圧は二次巻線のフライバック電圧に同期して消滅するので、制御回路は、補助巻線のフライバック電圧または補助巻線を流れる電流に基づいてスイッチングトランジスタを適確なタイミングでターンオフさせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-207062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、スイッチング電源用のトランスは、殆どがカスタム品で、高品質のものは熟練工による手巻きで製作されており、巻線の数が多いほどピン端子等を含めてトランス全体のサイズが増すとともに製作の手間も増え、価格が高くなる。このため、RCC方式の絶縁型スイッチング電源装置においては、全部品の中でトランスがサイズおよびコストの面で際立っている。
【0007】
そこで、RCC方式の絶縁型スイッチング電源装置において一次巻線および二次巻線だけのトランスを用いて上記のようなフライバック動作を適確に行えるようにすれば、この種の絶縁型スイッチング電源の顕著な小型化および低コスト化を実現し、フォワード方式などの他の方式に対して優位性を高められる。
【0008】
本発明は、上記従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、トランスに補助巻線を設けないでフライバック動作を適確に行えるようにしたRCC方式の絶縁型スイッチング電源装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の観点におけるスイッチング電源装置は、入力電圧が印加される一次巻線と前記一次巻線に磁気的に結合している二次巻線とを有するトランスと、前記一次巻線に直列に接続されているスイッチングトランジスタと、前記二次巻線に接続されている整流平滑回路と、前記スイッチングトランジスタのオン・オフを制御する制御回路とを有するRCC方式の絶縁型スイッチング電源装置であって、前記制御回路は、前記一次巻線の両端に接続され、前記スイッチングトランジスタがオフしている時に、前記一次巻線に発生するフライバック電圧の消滅またはその直後の自由振動の極性反転を検出して、その検出したタイミングを示す反転検出信号を出力する巻線電圧監視回路を有し、前記反転検出信号に基づいて前記スイッチングトランジスタをターンオンさせる。
【0010】
上記の装置構成においては、スイッチングトランジスタがオフしている時は、一次巻線および二次巻線に電磁エネルギーを放出させる誘導起電力またはフライバック電圧がそれぞれ発生し、二次側では二次巻線および整流平滑回路を介して負荷側に二次電流が流れる。一方、一次側では、巻線電圧監視回路が第1および第2の入力端子を通じて一次巻線のフライバック電圧を監視し、両入力端子が等電位になった瞬間またはその直後にフライバック電圧の消滅またはその直後の自由振動の極性変換を知らせる反転検出信号を出力する。制御回路は、この反転検出信号に基づいてスイッチングトランジスタをターンオンさせる。
【0011】
本発明の第2の観点におけるスイッチング電源装置は、入力電圧が印加される一次巻線と前記一次巻線に磁気的に結合している二次巻線とを有するトランスと、前記一次巻線に直列に接続されているスイッチングトランジスタと、前記二次巻線に接続されている整流平滑回路と、前記スイッチングトランジスタのオン・オフを制御する制御回路とを有するRCC方式の絶縁型スイッチング電源装置であって、前記制御回路は、前記スイッチングトランジスタと直列に接続されるセンス抵抗を有し、前記スイッチングトランジスタがオンしている時に、前記スイッチングトランジスタを流れる電流に比例するセンス電圧を出力する電流監視回路と、前記一次巻線の両端に接続され、前記スイッチングトランジスタがオフしている時に、前記一次巻線に発生するフライバック電圧の消滅またはその直後の自由振動の極性反転を検出して、その検出したタイミングを示す反転検出信号を出力する巻線電圧監視回路と、前記整流平滑回路より出力される出力電圧を基準値と比較して前記出力電圧の状態をフォトカプラを通じてフィードバックする出力電圧監視回路とを有し、前記反転検出信号と前記フォトカプラの出力とに基づいて前記スイッチングトランジスタをターンオンさせ、前記センス電圧と前記フォトカプラの出力とに基づいて前記スイッチングトランジスタをターンオフさせる。
【0012】
上記の装置構成においては、スイッチングトランジスタがオンしている時は、一次側で時間に比例して略リニアに増大する電流が一次巻線およびスイッチングトランジスタを流れ、電流監視回路よりその電流に比例するセンス電圧が出力される。この時、一次巻線には入力電圧に対して逆らう極性の誘導起電力が発生する。一方、二次側では、二次巻線に発生する誘導起電力の極性が整流平滑回路の整流素子の極性と対抗するため、二次巻線および該整流素子には電流が流れない。もっとも、負荷に対しては、整流平滑回路の容量素子より放電の電流が供給される。出力電圧監視回路は、二次側の出力電圧の状態をフォトカプラを介して一次側にフィードバックする。制御回路は、電流監視回路からのセンス電圧と出力電圧監視回路のフォトカプラの出力とに基づいてスイッチングトランジスタをターンオフさせる。
【0013】
スイッチングトランジスタがターンオフすると、一次巻線および二次巻線に電磁エネルギーを放出させる誘導起電力またはフライバック電圧がそれぞれ発生し、二次側では二次巻線および整流平滑回路を介して負荷側に二次電流が流れる。出力電圧監視回路は、二次側の出力電圧の状態をフォトカプラを介して一次側にフィードバックする。
【0014】
一方、一次側では、巻線電圧監視回路が第1および第2の入力端子を通じて一次巻線のフライバック電圧を監視し、両入力端子が等電位になった瞬間またはその直後にフライバック電圧の消滅またはその直後の自由振動の極性変換を知らせる反転検出信号を出力する。制御回路は、この反転検出信号とフォトカプラの出力とに基づいてスイッチングトランジスタをターンオンさせる。
【0015】
本発明の好適な一実施形態における巻線電圧監視回路は、その正極側端子が前記入力電圧を入力する正極側の入力端子と前記一次巻線の一方の端との間の第1のノードに接続され、一定のバイアス電圧を与えるバイアス電圧源と、その一方の端子が前記一次巻線の他方の端と前記スイッチングトランジスタとの間の第2のノードに接続され、その他方の端子が第3のノードおよび第1の抵抗を介して一次側グランド電位端子に接続され、その制御端子が前記バイアス電圧源の負極側端子に接続されているトランジスタと、前記第3のノード上の電圧を基準電圧と比較してその大小関係を表す二値の論理レベルを出力するコンパレータとを有し、前記トランジスタの前記一方の端子の電圧が前記制御端子の電圧に前記トランジスタの閾値電圧を加えた電圧以下になった時に、前記コンパレータの出力の論理レベルが反転して、その論理レベルの反転エッジが前記反転検出信号となる。この実施形態において、さらに好ましくは、前記第2のノードと前記第2のトランジスタの前記一方の端子との間に第2の抵抗が設けられる。
【0016】
別の好適な実施形態における巻線電圧監視回路は、その一方の端子が前記入力電圧を入力する正極側の入力端子と前記一次巻線の一方の端との間の第1のノードに接続され、その他方の端子が定電流源を介して一次側グランド電位端子に接続され、その制御端子が前記他方の端子に接続されている第1のトランジスタと、その一方の端子が前記一次巻線の他方の端と前記スイッチングトランジスタとの間の第2のノードに接続され、その他方の端子が第3のノードおよび第1の抵抗を介して前記一次側グランド電位端子に接続され、その制御端子が前記第1のトランジスタの制御端子に接続されている第2のトランジスタと、前記第3のノードの電圧を基準電圧と比較してその大小関係を表す二値の論理レベルを出力するコンパレータとを有し、前記第2のトランジスタの前記一方の端子の電圧が前記制御端子の電圧に前記第2のトランジスタの閾値電圧を加えた電圧以下になった時に、前記コンパレータの出力の論理レベルが反転して、その論理レベルの反転エッジが前記反転検出信号となる。この実施形態において、さらに好ましくは、前記第2のノードと前記第2のトランジスタの前記一方の端子との間に第2の抵抗が設けられる。
【0017】
別の好適な形態における巻線電圧監視回路は、一端が前記入力電圧を入力する正極側の入力端子と前記一次巻線の一方の端との間の第1のノードに接続され、他端が第3のノードに接続されている第1の抵抗と、一端が前記第3のノードに接続され、他端が一次側グランド電位端子に接続されている第2の抵抗と、一端が前記一次巻線の他方の端と前記スイッチングトランジスタとの間の第2のノードに接続され、他端が第4のノードに接続されている第3の抵抗と、一端が前記第4のノードに接続され、他端が前記一次側グランド電位端子に接続されている第4の抵抗と、前記第3のノードの電圧と前記第4のノードの電圧とを比較してその大小関係を表す二値の論理レベルを出力するコンパレータとを有し、前記第4のノードの電圧が前記第3のノードの電圧以下になった時に、前記コンパレータの出力の論理レベルが反転して、その論理レベルの反転エッジが前記反転検出信号となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、上記のような構成により、RCC方式の絶縁型スイッチング電源装置において補助巻線の無い一次巻線および二次巻線のトランスを用いてフライバック動作を適確に行うことが可能であり、この種の電源装置の顕著な小型化および低コスト化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1の実施形態におけるスイッチング電源装置の構成を示す回路図である。
図2】第2の実施形態におけるスイッチング電源装置の構成を示す回路図である。
図3】第3の実施形態におけるスイッチング電源装置の構成を示す回路図である。
図4図3のオン時間制御部の一構成例を示す回路図である。
図5図3のオフ時間制御部の一構成例を示す回路図である。
図6】第3の実施形態におけるスイッチング電源の全体の作用を説明するための各部の波形図である。
図7】第3の実施形態においてフォカトカプラの出力が無い場合の作用を説明するための各部の波形図である。
図8】第4の実施形態における巻線電圧監視回路の構成を示す回路図である。
図9】第5の実施形態における巻線電圧監視回路の構成を示す回路図である。
図10】第6の実施形態によるスイッチング電源装置の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。
[実施形態1]
【0021】
図1に、本発明の第1の実施形態におけるスイッチング電源装置の構成を示す。このスイッチング電源装置は、トランス10、スイッチングトランジスタ12、整流平滑回路14および制御回路16を基本要素とするRCC方式の絶縁型スイッチング電源装置として構成されている。
【0022】
トランス10は、一次巻線Lおよび二次巻線Lを有し、補助巻線を設けていない。両巻線L,Lは、共通のコアまたはボビンにそれぞれの極性を互いに逆にして巻き付けられ、磁気的に結合されている。
【0023】
トランス10の一次側において、入力端子18,18には、図示しない直流電源(たとえばバッテリ、DC-DCコンバータまたはAC-DCコンバータ)より直流の電圧VINが入力される。この直流の入力電圧VINは、平滑用のコンデンサCを介して一次巻線Lに常時印加される。
【0024】
基準電位端子である負極側の入力端子18は一次側グランド電位端子に接続され、正極側の入力端子18と一次側グランド電位端子との間で一次巻線L、スイッチングトランジスタ12およびセンス抵抗20が直列に接続されている。スイッチングトランジスタ12は、たとえばN型MOSFETからなり、制御回路16の制御の下でオン・オフする。
【0025】
トランス10の二次側において、二次巻線Lは、整流平滑回路14および出力端子22,22を介して負荷(図示せず)に接続される。整流平滑回路14は、整流用のダイオードDと平滑用のコンデンサCとで構成されている。負極側の出力端子22は二次側グランド電位の端子に接続されている。
【0026】
このスイッチング電源装置において、スイッチングトランジスタ12がオンしている時は、正極側の入力端子18から一次巻線L、スイッチングトランジスタ12およびセンス抵抗20を介して一次側グランド電位端子に至る経路(以下、「電流経路JS」と称する。)で時間に比例して略リニアに増大する直流の電流Isが流れ、一次巻線Lおよびセンス抵抗20で電圧降下が生じる。ここで、一次巻線Lの電圧降下は誘導起電力であり、入力電圧VINに対して逆らう極性を有している。センス抵抗20の電圧降下は、センス抵抗20の抵抗値が非常に低いため、一次巻線Lの電圧降下(誘導起電力)に比べて無視できるほど小さい。
【0027】
一方、二次側では、二次巻線Lに発生する誘導起電力の極性が整流平滑回路14のダイオードDの極性と対抗するため、二次巻線LおよびダイオードDには電流が流れない。もっとも、負荷に対しては、コンデンサCより放電の電流が供給される。こうして、スイッチングトランジスタ12がオンしている時は、一次巻線Lに励磁電流が流れ、トランス10に電磁エネルギーが蓄えられる。
【0028】
スイッチングトランジスタ12がオフしている時は、一次側の電流経路JSで電流が遮断される。一方、二次側では、トランス10に蓄積されている電磁エネルギーを放出するための誘導起電力またはフライバック電圧VFB2(図示せず)が二次巻線Lに発生する。このフライバック電圧VFB2の極性はダイオードDの極性と同じであり、二次巻線LおよびダイオードDを電流Iが流れ、この二次電流Iは平滑コンデンサCを介して負荷に供給される。
【0029】
制御回路16は、スイッチングトランジスタ12のオン・オフを直接制御するスイッチング制御回路24と、オン・オフ制御に必要な各種モニタ信号をスイッチング制御回路24に与える3つの監視回路、すなわち電流監視回路26、巻線電圧監視回路28および出力電圧監視回路30を有している。
【0030】
電流監視回路26は、オン時間制御用のモニタ信号を与える監視回路であり、上記センス抵抗20を含んでいる。スイッチングトランジスタ12がターンオンすると、電流経路JSで電流Isが流れる。この電流Isは、一次巻線Lのインダクタンスに反比例し入力電圧VINに比例する傾きで時間の経過とともに略リニアに増大する。センス抵抗20からは、電流Isに比例して略リニアに上昇するセンス電圧VSENSが得られる。スイッチング制御回路24は、電流監視回路26からのセンス電圧VSENSをオン時間制御用のモニタ信号として取り込み、センス電圧VSENSが比較参照値に到達したタイミングでスイッチングトランジスタ12をターンオフさせる。
【0031】
なお、本発明において、「オン時間」とはスイッチングトランジスタ12がターンオンしてからターンオフするまでの期間(オン状態の持続時間)であり、「オフ時間」とはスイッチングトランジスタ12がターンオフしてからターンオンするまでの期間(オフ状態の持続時間)である。「オン時間」の長さはスイッチングトランジスタ12がターンオフするタイミングに依存し、「オフ時間」の長さはスイッチングトランジスタ12がターンオンするタイミングに依存する。
【0032】
巻線電圧監視回路28は、スイッチング制御回路24にオフ時間制御用のモニタ信号を与える監視回路であり、一次巻線Lの両端に接続される第1および第2の入力端子28a,28bと、スイッチング制御回路24に接続される出力端子28cを有している。より詳しくは、第1の入力端子28aは、正極側の入力端子18と一次巻線Lの一端との間のノードNに接続されている。第2の入力端子28bは、一次巻線Lの他端とスイッチングトランジスタ12との間のノードNに接続されている。
【0033】
巻線電圧監視回路28は、オフ時間中に一次巻線Lに発生する電圧、特にフライバック電圧VFB1(図示せず)を両入力端子28a,28bを通じて監視し、両入力端子28a,28bが等電位になった瞬間またはその直後に、フライバック電圧VFB1の消滅またはその直後の自由振動の極性変換を知らせる信号(以後、「反転検出信号」と称する。)PRを出力端子28cより出力するように構成されている。スイッチング制御回路24は、巻線電圧監視回路28からの反転検出信号PRをオフ時間終了の頃合いを知らせるモニタ信号またはタイミング信号として入力し、反転検出信号PRに基づいてスイッチングトランジスタ12をターンオンさせる。
【0034】
このスイッチング電源装置においては、スイッチングトランジスタ12がオン状態からオフ状態に切り替わると、トランス10に蓄積されていた電磁エネルギーを放出するための誘導起電力またはフライバック電圧VFB1,VFB2が一次巻線Lおよび二次巻線Lにそれぞれ発生し、それまで一次巻線Lで流れていた励磁電流に対して一次巻線Lおよび二次巻線Lの巻数比に比例して二次巻線Lに二次電流Iが流れ始める。
【0035】
ここで、一次巻線Lおよび二次巻線Lの巻線数をそれぞれT,Tとすると、両巻線L,Lのフライバック電圧VFB1,VFB2の間にはVFB1:VFB2=T:Tの関係がある。また、二次側において、オフ時間中に二次巻線LおよびダイオードDを二次電流Iが流れている時は、ダイオードDに生じる電圧降下をVD2、出力端子22,22間の電圧または出力電圧をVOUTとすると、VFB2=VD2+VOUTである。
【0036】
この実施形態では、上記のように一次側でノードN,Nに巻線電圧監視回路28が接続されている。この巻線電圧監視回路28においては、オフ時間中に、第1の入力端子28aにノードNより入力電圧VINが印加され、第2の入力端子28bにノードNより入力電圧VINとフライバック電圧VFB1とが重畳して印加される。
【0037】
そして、オフ時間中にトランス10に蓄積されていた電磁エネルギーがすべて放出されると、二次側でダイオードDを流れる二次電流がゼロになる。この瞬間、二次巻線Lでフライバック電圧VFB2が消滅し、同時に一次巻線Lでもフライバック電圧VFB1が消滅する。巻線電圧監視回路28は、一次巻線Lでフライバック電圧VFB1が消滅して両入力端子28a,28bが等電位になった瞬間を検出して反転検出信号PRを出力し、さらにオフ時間を引き延ばすときはフライバック電圧VFB1の消滅直後に一次巻線Lで発生する電圧振動または自由振動の極性反転を検出して反転検出信号PRを出力する。これらの反転検出信号PRは、たとえば二値信号のLレベルからHレベルへの立ち上がりエッジ(反転エッジ)として出力される。スイッチング制御回路24は、反転検出信号PRを入力すると、それに応動して直ちに、あるいは他の条件との掛け合わせでスイッチングトランジスタ12をターンオンさせる。
【0038】
出力電圧監視回路30は、オン時間およびオフ時間を通じて出力電圧VOUTの状態を一次側にフィードバックする監視回路であり、一次側と二次側との間の絶縁用にフォトカプラ(フォトダイオードPD/フォトトランジスタPT)を用いている。出力電圧VOUTが上昇すると、このフォトカプラにおいては、フォトダイオードPDの発光出力または光強度が上昇して、フォトトランジスタPTの出力するフォトカプラ電流IPCが増大する。反対に、出力電圧VOUTが低下すると、フォトダイオードPDの発光出力が低下して、フォトカプラ電流IPCが減少する。出力電圧監視回路30は、周知の回路構成を有し、典型的には、出力電圧VOUTを一定の基準電圧と比較して比較誤差を増幅して出力する誤差増幅器と、この誤差増幅器の出力に応じてフォトダイオードPDを発光駆動する駆動回路とを含んでいる。
【0039】
スイッチング制御回路24は、一次側でフォトトランジスタPTが出力するフォトカプラ電流IPCをフィードバック制御用のモニタ信号として入力し、そのフィードバック量をオン時間制御およびオフ時間制御に反映させる。より詳しくは、オン時間制御では、センス電圧VSENSに対する比較参照値にフォトカプラ電流IPCの電流量を反映させ、フォトカプラ電流IPCの増減に応じて比較参照値を逆方向に変化させる。すなわち、フォトカプラ電流IPCが増大するときは比較参照値を低下させ、フォトカプラ電流IPCが減少するときは比較参照値を上昇させる。
【0040】
また、オフ時間制御では、フライバック電圧VFB1が消滅した時点で出力電圧VOUTが高すぎる時は、スイッチングトランジスタ12のターンオンを保留し、フォトカプラ電流IPCの電流量に応じてオフ時間を引き延ばす。この間に二次側ではコンデンサCより放電の負荷電流が出力されてコンデンサCの端子間電圧つまり出力電圧VOUTが低下し、フォトカプラ電流IPCの電流量がある値以下に減少してから、スイッチングトランジスタ12をターンオンさせる。
【0041】
制御回路16は、一次側に電圧レギュレータ100を備えている。この電圧レギュレータ100はたとえばリニアレギュレータからなり、ノードNより入力電圧VINを取り込んで、安定した動作電圧用の電源電圧VREGを生成し、この電源電圧VREGをスイッチング制御回路24内の各部および巻線電圧監視回路28内の各部に供給する。
【0042】
上記のように、この実施形態におけるRCC方式の絶縁型スイッチング電源装置は、一次巻線Lおよび二次巻線Lだけのトランス10を使用し、一次巻線Lの両端に接続される巻線電圧監視回路28を備えている。この巻線電圧監視回路28は、スイッチングトランジスタ12がオフしている時に一次巻線Lに発生する誘導起電力またはフライバック電圧VFB1を第1および第2の入力端子28a,28bを通じて監視し、両入力端子28a,28bが等電位になった瞬間またはその直後にフライバック電圧VFB1の消滅またはその直後の自由振動の極性変換を知らせる反転検出信号PRを出力する。スイッチング制御回路24はこの反転検出信号PRに基づいてスイッチングトランジスタ12をターンオンさせる。このように補助巻線を設けない小型簡便なトランス10を用いてフライバック動作を適確に行うことができるため、この種のスイッチング電源装置の顕著な小型化および低コスト化を実現することができる。

[実施形態2]
【0043】
図2に、第2の実施形態におけるスイッチング電源装置の構成を示す。この実施形態は、上記第1の実施形態のスイッチング電源装置における巻線電圧監視回路28の具体的な回路構成を特徴とする。この実施形態における巻線電圧監視回路28は、P型MOSFET34、バイアス電圧源35、抵抗38、コンパレータ42および基準電圧源44を有している。
【0044】
より詳しくは、直流の電圧源からなるバイアス電圧源35の正極側端子は、巻線電圧監視回路28の第1の入力端子28aとしてノードNに接続されている。P型MOSFET34は、そのソースが巻線電圧監視回路28の第2の入力端子28bとしてノードNに接続され、そのドレインがノードNおよび抵抗38を介して一次側グランド電位端子に接続され、そのゲートがバイアス電圧源35の負極側端子に接続されている。
【0045】
バイアス電圧源35は、その出力電圧またはバイアス電圧VBIASをノードN上の電圧つまり入力電圧VINに逆らう極性でP型MOSFET34のゲートに与える。これによって、P型MOSFET34は、その閾値電圧をVTH34とすると、ゲート電圧Vg(ただし、Vg=Va-VBIAS=VIN-VBIAS)とソース電圧Vbとの電圧差(Vb-Vg)であるゲート・ソース間電圧VGS34が閾値電圧VTH34より大きいときはオン状態となり、ゲート・ソース間電圧VGS34が閾値電圧VTH34より小さいときはオフ状態となる。
【0046】
バイアス電圧BIASは、好ましくは閾値電圧VTH34近辺に設定されてよい。たとえば、VBIAS=VTH34であるとすると、ゲート電圧VgはVg=VIN-VTH34である。この場合、P型MOSFET34のソース電圧つまり第2の入力端子28bの電圧Vbが第1の入力端子28aの電圧Va(VIN)より高いときは、ゲート・ソース間電圧VGS34が閾値電圧VTH34より大きいため、P型MOSFET34はオンしている。しかし、第2の入力端子28bの電圧VbがVa(VIN)以下になると、VGS34≦VTH34となって、P型MOSFET34はオフする。
【0047】
コンパレータ42は、その反転入力端子(-)がノードNに接続され、その非反転入力端子(+)が基準電圧源44に接続され、その出力端子が巻線電圧監視回路28の出力端子28cとしてスイッチング制御回路24の対応する入力端子に接続されている。コンパレータ42は、ノードNの電圧Vを基準電圧源44からの比較基準電圧VREFと比較し、V>VREFのときは出力をLレベルとし、V≦VREFのときは出力をHレベルとする。ノードNの電圧Vが比較基準電圧VREFより高い状態から比較基準電圧VREF以下まで低下した時に、コンパレータ42の出力がLレベルからHレベルに変化し、その立ち上がりエッジ(反転エッジ)が反転検出信号PRとなる。比較基準電圧VREFは、P型MOSFET34および抵抗38に実質的な電流が少しでも流れていれば、V>VREFとなるような低い値に設定されてよい。
【0048】
この実施形態の巻線電圧監視回路28は、一次巻線Lの両端間(ノードN,N間)電圧の変化、特にフライバック電圧VFB1の消滅またはその直後の自由振動の極性反転を検出するために、第1の入力端子28aの電圧Vaと第2の入力端子28bの電圧Vbとの大小関係(差分)をP型MOSFET34のゲート・ソース間電圧VGS34に反映させる。そして、P型MOSFET34をゲート・ソース間電圧VGS34に応じてオンまたはオフさせ、P型MOSFET34がオン状態からオフ状態に変わった時に、コンパレータ42より反転検出信号PRを出力するようにしている。
【0049】
この巻線電圧監視回路28において、P型MOSFET34のソース(入力端子28b)の電圧Vbは、スイッチングトランジスタ12がターンオフした直後が最大で、およそ(VIN+T/T×VOUT)となり、スイッチングトランジスタ12がターンオンした直後が最小で、グランドレベル付近まで下がる。つまり、P型MOSFET34のゲート・ソース間電圧VGS34は、スイッチングトランジスタ12のターンオフ直後が最大で、ターンオン直後が最小になる。
【0050】
上記のように、オフ期間中は、二次側で二次巻線LおよびダイオードDを二次電流Iが流れる。この時、一次側では、一次巻線Lにフライバック電圧VFB1が発生して、第1の入力端子28aの電圧Vaと第2の入力端子28bの電圧Vbとの大小関係はVa<Vbであり、P型MOSFET34においてはVGS34>VTH34であり、P型MOSFET34はオンしている。電流経路JB上では電流Ibが流れ、抵抗38の抵抗値をR38とすると、ノードNの電圧VはV=R38×Ib(>VREF)であり、コンパレータ42の出力はLレベルになっている。
【0051】
そして、オフ時間中にトランス10に蓄積されていた電磁エネルギーがすべて放出されると、二次側でダイオードDを流れる二次電流Iがゼロになる。この瞬間、二次巻線Lでフライバック電圧VFB2が消滅し、同時に一次巻線Lでもフライバック電圧VFB1が消滅し、Va=Vbとなる。P型MOSFET34においては、VGS34≦VTH34の関係が成立し、P型MOSFET34はオフする。これにより、電流経路JB上では電流Ibが遮断され、ノードNの電圧Vはグランドレベルになり、コンパレータ42の出力がLレベルからHレベルに変わり、その立ち上がりエッジ(反転エッジ)が反転検出信号PRとしてスイッチング制御回路24に与えられる。
【0052】
スイッチング制御回路24は、最初の反転検出信号PRに応動して直ちにスイッチングトランジスタ12をターンオンさせてもよいが、後述するように出力電圧VOUTについてフィードバック制御を行う場合にはフォトカプラ[PD/PT]の出力(フォトカプラ電流)IPCに応じてターンオフを保留してオフ時間を引き延ばすことがある。
【0053】
この引き延ばしの間に、トランス10の寄生容量、寄生インダクタンス、抵抗等により一次側で共振現象が起こり、自由振動(電圧振動)が発生する。この自由振動においてP型MOSFET34のソース(入力端子28b)の電圧Vbが入力電圧VINより高い半サイクルと低い半サイクルとが交互に繰り返され、前者の半サイクルから後者の半サイクルに変わる度毎に巻線電圧監視回路28より反転検出信号PRが出力される。スイッチング制御回路24は、出力電圧VOUTが基準値以下に低下したことをフォトカプラ[PD/PT]の出力IPCを通じて検出すると、その直後に入力する反転検出信号PRに応じてスイッチングトランジスタ12をターンオンさせる。
【0054】
上記のように、この第2の実施形態におけるRCC方式の絶縁型スイッチング電源装置は、第1の実施形態と同様の巻線電圧監視回路28を備えているので、補助巻線の無い小型簡便なトランス10を用いてフライバック動作を適確に行うことが可能であり、この種の電源装置の顕著な小型化および低コスト化を実現することができる。
【0055】
さらに、この実施形態における巻線電圧監視回路28は、P型MOSFET34、バイアス電圧源35、抵抗38、コンパレータ42および基準電圧源44を有する比較的小規模な回路構成でありながら、フライバック電圧VFB1の消滅した瞬間さらにはその直後の自由振動の極性変換を精確に検出し、スイッチングトランジスタ12を適確にターンオンさせることができる。

[実施形態3]
【0056】
図3に、第3の実施形態におけるスイッチング電源装置の構成を示す。この実施形態は、上記第1の実施形態のスイッチング電源装置における誘導起電力監視回路28の具体的な回路構成とスイッチング制御回路24の具体的な回路構成とを特徴とする。

《巻線電圧監視回路の構成及び作用》
【0057】
この実施形態における巻線電圧監視回路28は、上記第2の実施形態のものと同様の回路構成を有している。ただし、電流経路JB上でノードNと巻線電圧監視回路28の第2の入力端子28bとの間に抵抗50を設けている。
【0058】
かかる構成においては、オフ期間中にP型MOSFET34がオンしている時、P型MOSFET34のソース(入力端子28b)の電圧Vbは最大値(VIN-VBIAS+VGS34)にクランプされる。抵抗50の抵抗値をR50、ノードNの電圧をVN2とすると、電流経路JB上の抵抗50には[VN2-(VIN-VBIAS+VGS34)]/R50で表される電流Ibが流れる。この時、ノードNの電圧Vは、R38×Ib(>VREF)であり、コンパレータ42の出力はLレベルである。
【0059】
そして、二次側でダイオードDの導通が止まって、ノードNの電圧VN2がドロップすると、抵抗50(電流経路JB)を流れる電流Ibが急激に減少し、電圧VN2が入力電圧VIN以下になると、P型MOSFET34がオフして抵抗50(電流経路JB)には電流Ibが流れなくなり、上記第2の実施形態と同様にコンパレータ42より反転検出信号PRが出力される。オフ時間の引き延ばしがない場合は、それ以降コンパレータ42の出力はHレベルの状態を保つ。
【0060】
このように、オフ期間の終了間際にノードNの電圧VN2がドロップした時にP型MOSFET34をオフにするタイミングを抵抗50によって調整することができる。そして、P型MOSFET34のソース(入力端子28b)の電圧Vbが最大電圧(VIN-VBIAS+VGS34)でクランプされるため、P型MOSFET34は素子耐性の低いトランジスタであってもよい。これにより、後述する同一の半導体チップ64上で、P型MOSFET34を巻線電圧監視回路28内の他のトランジスタやスイッチング制御回路24内のトランジスタ等と同程度の耐圧性を有するトランジスタとして作製することができる。

《スイッチング制御回路の構成及び作用》
【0061】
この実施形態の制御回路16において、スイッチング制御回路24は、オン時間制御部52、オフ時間制御部54、定電流源56、コンデンサ58、RSフリップフロップ60、ドライバ回路62を含んでいる。外付けのコンデンサ58を除いて、スイッチング制御回路24は、巻線電圧監視回路28および電圧レギュレータ100等と共に同一の半導体チップ64上に集積回路として構築される。
【0062】
図4に示すように、オン時間制御部52は、一構成例として、増幅回路65、スイッチ66、定電圧源68、バッファ回路70、抵抗71およびコンパレータ72を有している。電流監視回路26(図3)からのセンス電圧VSENSは増幅回路65で増幅されてからコンパレータ72の非反転入力端子(+)に入力される。コンパレータ72の反転入力端子(-)には、スイッチ66と抵抗71との間のノードNに得られる可変の参照電圧VSTが入力される。
【0063】
定電圧源68は一定の基準電圧Vrefを発生し、バッファ回路70の出力端子に上記基準電圧Vrefが得られる。ノードNは、抵抗71を介してバッファ回路70の出力端子に接続されるとともに、スイッチ66を介してフォトトランジスタPT(図3)の出力端子に接続されている。ここで、スイッチ66は、RSフリップフロップ60(図3)の出力信号SSWの論理レベルに応じてオン・オフし、SSWがLレベルのときはオフしてフォトカプラ電流IPCを遮断し、SSWがHレベルのときはオンして抵抗71にフォトカプラ電流IPCを流す。
【0064】
これにより、SSWがHレベルで、スイッチ66がオンすると、ノードN上の可変参照電圧VSTはフォトカプラ電流IPCの電流量に依存し、IPCが流れないときはVSTが基準電圧Vrefのレベルを保ち、IPCが流れるときはVSTが抵抗71の電圧降下だけ基準電圧Vrefより低い値になる。
【0065】
コンパレータ72は、センス電圧VSENSと可変参照電圧VSTとを比較し、VSENS<VSTのときは出力をLレベルとし、VSENS≧VSTのときは出力をHレベルとする。コンパレータ72からのHレベルの出力は、スイッチングトランジスタ12をターンオフさせるためのターンオフ指示信号SOFFとしてRSフリップフロップ60のリセット端子(R)に与えられる。
【0066】
なお、オン時間制御部52よりターンオフ指示信号SOFFがRSフリップフロップ60のリセット端子(R)に与えられると、後述するように、RSフリップフロップ60の出力信号SSWがHレベルからLレベルに変わる。すると、オン時間制御部52においては、スイッチ66がオフして、ノードNの可変参照電圧VSTが瞬時に基準電圧Vrefのレベルまで上昇し、コンパレータ72の出力がHレベルからLレベルに戻る。このように、ターンオフ指示信号SOFFは、パルス幅の非常の狭いHレベルのパルスとして生成される。
【0067】
図5に示すように、オフ時間制御部54は、一構成例として、定電流源56、コンデンサ58、スイッチ74、バッファ回路76、抵抗78、コンパレータ80、基準電圧源82およびDフリップフロップ84を含んでいる。
【0068】
より詳しくは、バッファ回路76の入力端子側のノードNと一次側グランド電位端子との間にコンデンサ58とスイッチ74が並列に接続され、電源電圧VREGの電源電圧端子とノードNとの間に定電流源56が接続されている。バッファ回路76の出力端子は、抵抗78およびノードNを介してコンパレータ80の非反転入力端子(+)に接続されている。ノードNは、フォトトランジスタPT(図3)の出力端子に接続されている。
【0069】
スイッチ74は、RSフリップフロップ60(図3)の出力信号SSWの論理レベルに応じてオン・オフし、SSWがHレベルのときはオンしてノードNを一次側グランド電位端子に接続し、SSWがLレベルのときはオフしてノードNを一次側グランド電位端子から電気的に分離する。ノードNが一次側グランド電位端子から電気的に分離されると、定電流源56より一定の充電電流Iがコンデンサ58に流れ込み、ノードNには時間に比例して一定の傾きで上昇する基準のランプ電圧VRAMPが発生する。
【0070】
この基準ランプ電圧VRAMPはバッファ回路76に入力され、バッファ回路76の出力端子にはランプ電圧VRAMPと同じ電圧が得られる。フォトトカプラ電流IPCが流れていないときは、基準ランプ電圧VRAMPがバッファ回路76、抵抗78およびノードNを介してコンパレータ80の非反転入力端子(+)に入力される。しかし、フォトトカプラ電流IPCが流れているときは、抵抗78で電圧降下が生じて、その電圧降下だけ基準ランプ電圧VRAMPより低い電圧または変形ランプ電圧VRTがノードNに得られ、この変形ランプ電圧VRTがコンパレータ80の非反転入力端子(+)に入力される。
【0071】
コンパレータ80の反転入力端子(-)には、基準電圧源82より一定の比較基準電圧VREMが入力される。コンパレータ80は、基準ランプ電圧VRAMPまたは変形ランプ電圧VRTを比較基準電圧VREMと比較し、VRAMPまたはVRTがVREMより低い間は出力をLレベルとし、VRAMPまたはVRTがVREM以上になると出力をHレベルとする。
【0072】
コンパレータ80の出力は、Dフリップフロップ84のデータ端子(D)に入力される。Dフリップフロップ84のクロック端子(CK)には、巻線出力監視回路28(図3)より反転検出信号PRが入力される。Dフリップフロップ84は、反転検出信号PRに応動してコンパレータ80の出力をラッチする。Dフリップフロップ84の出力(Q)の論理レベルは、巻線出力監視回路28からの反転検出信号PRがクロック端子(CK)に入力された時点でのコンパレータ80の出力の論理レベルに対応し、その時点における基準ランプ電圧VRAMPまたは変形ランプ電圧VRTと比較基準電圧VREMとの大小関係によって決まる。
【0073】
すなわち、巻線出力監視回路28からの反転検出信号PRが入力された時点で、ノードN上の基準ランプ電圧VRAMPまたは変形ランプ電圧VRTが比較基準電圧VREMより低いときは、コンパレータ80の出力がLレベルで、Dフリップフロップ84の出力(Q)がLレベルのままである。しかし、巻線出力監視回路28より反転検出信号PRが入力された時点で、ノードN上の基準ランプ電圧VRAMPまたは変形ランプ電圧VRTが比較基準電圧VREM以上になっているときは、コンパレータ80の出力がHレベルで、Dフリップフロップ84の出力(Q)がLレベルからHレベルに変わる。出力(Q)のHレベルは、スイッチングトランジスタ12をターンオンさせるためのターンオン指示信号SONとしてRSフリップフロップ60のセット端子(S)に与えられる。
【0074】
RSフリップフロップ60(図3)の出力信号SSWは、Dフリップフロップ84のリセット端子またはクリア端子(CLR)にも与えられる。オフ時間制御部54よりターンオン指示信号SONがRSフリップフロップ60のセット端子(S)に与えられると、後述するように、RSフリップフロップ60の出力信号SSWがLレベルからHレベルに変わる。すると、オフ時間制御部54においては、Dフリップフロップ84がリセットされ、その出力(Q)がHレベルからLレベルに戻る。また、スイッチ74がオンして、ノードNがグランド電位端子に短絡接続され、コンパレータ80の出力がHレベルからLレベルに戻る。このように、ターンオン指示信号SONは、パルス幅の非常の狭いHレベルのパルスとして生成される。
【0075】
再び図3において、RSフリップフロップ60は、オン時間制御部52からのターンオフ指示信号SOFFをリセット端子(R)に入力し、オフ時間制御部54からのターンオン指示信号SONをセット端子(S)に入力し、両信号SOFF,SONが入力される度毎に出力(Q)の論理レベルを反転させる。
【0076】
より詳しくは、RSフリップフロップ60は、オン時間制御部52からのオン時間を終了させる(つまりオフ時間を開始させる)ためのターンオフ指示信号SOFFをリセット端子(R)に入力すると、出力(Q)の論理レベルをHレベルからLレベルに反転させる。そして、オフ時間制御部54からのオフ時間を終了させる(つまりオン時間を開始させる)ためのターンオン指示信号SONをセット端子(S)に入力すると、出力(Q)の論理レベルをLレベルからHレベルに反転させる。
【0077】
RSフリップフロップ60の出力(Q)はスイッチング制御信号SSWであり、上記のようにオン時間制御部52およびオフ時間制御部54内のスイッチ68,74に対して与えられるだけでなく、ドライバ回路62を介してスイッチングトランジスタ12に対しても与えられる。ドライバ回路62は、スイッチング制御信号SSWに応じたスイッチング駆動信号Sdrvをスイッチングトランジスタ12の制御端子に与える。

《装置全体の作用》
【0078】
次に、この実施形態におけるスイッチング電源装置の全体の作用を説明する。図6は、このスイッチング電源装置におけるオン時間中およびオフ時間中の各部の波形を示す。図中、TONはオン時間、TOFFはオフ時間である。
【0079】
たとえば、時点t~時点tのオン時間TONにおいては、時点tで、コンパレータ42の出力がLレベルからHレベルに変わり、その立ち上がりエッジが反転検出信号PRとしてスイッチング制御回路24に与えられ、スイッチング制御回路24が反転検出信号PRに応動してスイッチング制御信号SSWをLレベルからHレベルに変えてスイッチングトランジスタ12をターンオンさせる。
【0080】
スイッチングトランジスタ12がターンオンすると、一次側の電流経路JSでは時間の経過とともに略リニアに増大する電流Isが流れ、センス電圧VSENSが略リニアに上昇する。スイッチング制御回路24のオン時間制御部52内では、スイッチ66がオンし、ノードN上には基準電圧(Vref)よりフォトカプラ電流IPCの電流量に応じた抵抗71の電圧降下だけ低い比較参照電圧VSTが得られる。オン時間中は出力電圧VOUTが漸次的に低下してフォトカプラ電流IPCが漸次的に減少するため、比較参照電圧VSTはオン時間の開始直後が極小で、そこから漸次的に上昇する。
【0081】
一方、スイッチング制御回路24のオフ時間制御部54内では、スイッチ74がオン状態にあり、ノードN上には基準ランプ電圧VRAMPまたは変形ランプ電圧VRTのいずれも存在せず、コンパレータ80の出力およびDフリップフロップ84の出力(ターンオン指示信号)SONはLレベルのままである。
【0082】
また、オン時間TON中は、入力電圧VINに逆らう誘導起電力が一次巻線Lに発生して、ノードNの電位はグランド付近まで低下する。二次側では、二次巻線Lに誘導起電力が発生するものの、その極性がダイオードDの極性と逆であるため、二次巻線LおよびダイオードDには電流が流れず、コンデンサCの放電による電流が負荷に供給される。これにより、上記のように出力電圧VOUTが漸次的に低下してフォトカプラ電流IPCも漸次的に減少する。
【0083】
そして、時点tで、オン時間制御部52内の増幅回路65により増幅されたセンサ電圧VSENSがノードN上の比較参照電圧VSTのレベルに追い付くと、コンパレータ72がHレベルのターンオフ指示信号SOFFを出力し、RSフリップフロップ60がこれに応動してスイッチング制御信号SSWをHレベルからLレベルに変えて、スイッチングトランジスタ12をターンオフさせる。こうして、時点t~時点tのオン時間TONが終了し、代わって時点t~時点tのオフ時間TOFFが開始される。
【0084】
時点tで、オフ時間TOFFが開始されると、オフ時間制御部54内では、スイッチ74がオフすることによって、ノードNには基準ランプ電圧VRAMPが生成され、ノードNにはフォトカプラ電流IPCの電流量に応じて基準ランプ電圧VRAMPより低い変形ランプ電圧VRTが生成される。この場合、二次側で二次巻線LおよびダイオードDを流れる二次電流Iはターンオフの直後が最大でそれから略リニアに減少するが、コンデンサCへの充電を経て負荷に供給されるため、出力電圧VOUTおよびフォトカプラ電流IPCは少し遅れて極大になる。
【0085】
一方、一次側では、一次巻線Lと同じ極性の誘導起電力またはフライバック電圧VFB1が発生し、ノードNの電位がターンオフの直後に入力電圧VINのレベルを大きく超えて跳ね上がり、以後フライバック電圧VFB2が消滅するまで略一定のレベルを維持する。
【0086】
そして、上述したように、二次側でダイオードDの導通が止まると、巻線出力監視回路28内でコンパレータ42の出力がLレベルからHレベルに変わり、その立ち上がりのエッジ(反転エッジ)が反転検出信号PRとしてスイッチング制御回路24のオフ時間制御部54に与えられる。
【0087】
この時、オフ時間制御部54では、ノードN上の変形ランプ電圧VRTが比較基準電圧VREMより低いため、コンパレータ80の出力はLレベルであり、Dフリップフロップ84のクロック端子(CK)に反転検出信号PRが入力されても出力(Q)はLレベルのままであり、ターンオン指示信号SONは出力されない。
【0088】
こうしてフライバック電圧VFB1が消滅した直後にオフ時間が引き延ばされると、トランス10の浮遊容量やインダクタンス等によって一次巻線Lにいわゆる自由振動(電圧振動)が発生し、入力電圧VINを基準としてノードNの電圧VN2が略一定の周期で極性反転を繰り返す。
【0089】
これにより、ノードNの電圧VN2が入力電圧VINに対して正の極性から負の極性に反転する度毎に、巻線電圧監視回路28においてコンパレータ42の出力がLレベルからHレベルに反転し、その立ち上がりエッジ(反転エッジ)が反転検出信号PRとしてスイッチング制御回路24のオフ時間制御部54に与えられる。しかし、オフ時間制御部54内でノードN上の変形ランプ電圧VRTが比較基準電圧VREMより低い間は、ターンオン指示信号SONは発生されない。また、ノードNの電位が入力電圧VINに対して負の極性から正の極性に変わった時は、コンパレータ42の出力がHレベルからLレベルに戻る。
【0090】
こうして、オフ時間を引き延ばしている間に、オフ時間制御部54内で変形ランプ電圧VRTが比較基準電圧VREMを超えると、コンパレータ80の出力がLレベルからHレベルに変わり、その直後に巻線電圧監視回路28からの反転検出信号PRがDフリップフロップ84のクロック端子(CK)に入力されると、このタイミングでDフリップフロップ84の出力(Q)がLレベルからHレベルに変わり、ターンオン指示信号SONが出力される。
【0091】
オフ時間制御部54からターンオン指示信号SONが出力されると、RSフリップフロップ60はこれに応動してスイッチング制御信号SSWをLレベルからHレベルに変えて、スイッチングトランジスタ12をターンオンさせる。
【0092】
上記のようにして時点t~時点tのオフ時間TOFFが終了すると、代わって時点t~時点tのオン時間TONが開始され、以後も上記と同様のオン時間動作およびオフ時間動作が交互に繰り返される。
【0093】
なお、図6の例では、フォトカプラ電流IPCが出力されている。しかし、出力電圧VOUTの状態如何により、あるいは出力電圧監視回路30における比較基準値の設定次第では、フォトカプラ電流IPCが出力されない場合もある。この場合の各部の波形は図7のようになる。
【0094】
すなわち、時点t11~時点t12のオン時間TONにおいては、フォトカプラ電流IPCの電流量がゼロであるため、スイッチング制御回路24のオン時間制御部52内では、センス電圧VSENSに対する比較参照電圧VSTが基準電圧(Vref)に保持され、増幅回路65で増幅されたセンス電圧VSENSがその基準電圧(Vref)まで上昇した時点(t12)で、ターンオフ指示信号SOFFが出力される。そして、スイッチング制御回路24のRSフリップフロップ60は、そのターンオフ指示信号SOFFに応動してスイッチング制御信号SSWをHレベルからLレベルに変えて、スイッチングトランジスタ12をターンオフさせる。
【0095】
また、時点t12~時点t13のオフ時間TOFFにおいては、フォトカプラ電流IPCの電流量がゼロであるため、オフ時間制御部54では、ノードN上に基準ランプ電圧VRAMPが得られる。そして、この基準ランプ電圧VRAMPが比較基準電圧VREMを超えてからフライバック電圧VFB1が消滅して巻線電圧監視回路28より反転検出信号PRが出力されると、これに応動してスイッチング制御回路24がスイッチング制御信号SSWをLレベルからHレベルに立ち上げて、スイッチングトランジスタ12をターンオンさせる。以後も、上記と同様のオン時間動作およびオフ時間動作が交互に繰り返される。
【0096】
なお、この実施形態におけるスイッチング制御回路24の構成および機能は、上記第1および第2の実施形態にも適用可能である。

[他の実施形態又は変形例]
【0097】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、上述した実施形態は本発明を限定するものではない。当業者にあっては、具体的な実施態様において本発明の技術思想および技術範囲から逸脱せずに種々の変形・変更を加えることが可能である。
【0098】
図8および図9に、第4および第5の実施形態におけるスッチング電源装置の構成をそれぞれ示す。これら第4および第5の実施形態は、巻線電圧監視回路28の構成を除いて、上述した第2および第3の実施形態(図2図3)とそれぞれ同じ構成を有している。図9の第5の実施形態におけるスイッチング電源装置は、図3の第3の実施形態と同様に電流経路JB上においてノードN2と巻線電圧監視回路28の第2の入力端子28bとの間に抵抗50を設けている以外は図8の第4の実施形態のスイッチング電源装置と同様の回路構成を有している。
【0099】
図8および図9の巻線電圧監視回路28では、第1の入力端子28aと一次側グランド電位端子との間でP型MOSFET32と定電流源36が直列に接続され、P型MOSFET32のドレインとゲートが短絡接続(ダイオード接続)されるとともにP型MOSFET34のゲートに共通接続されている。これにより、第1の入力端子28aの電圧Va(VIN)からP型MOSFET32のゲート・ソース間電圧VGS32を減じた電圧(VIN-VGS32)がP型MOSFET34のゲートに入力される。ここで、P型MOSFET32のゲート・ソース間電圧VGS32はP型MOSFET32のトランジスタサイズや定電流源36の出力電流(基準電流)IREFによって調整可能であり、たとえばP型MOSFET34の閾値電圧VTH34付近の値に設定することも可能である。また、出力電流(基準電流)IREFの値を小さくすることにより制御回路16の消費電流に影響を与えないようにすることができる。このように、P型MOSFET32および定電流源36は、バイアス電圧源35(図2図3)と同等の機能を有している。
【0100】
さらに、第6の実施形態におけるスイッチング電源装置として、電圧監視回路28を図10に示すように構成することも可能である。図10において、電圧監視回路28は、4個の抵抗86,88,90,92とコンパレータ94を含んでいる。
【0101】
より詳しくは、第1の入力端子28aと一次側グランド電位端子との間に抵抗86,88が直列に接続されている。これらの抵抗86,88は、第1の入力端子28aの電圧Vaに対する分圧回路96を構成している。両抵抗86,88間のノードNには、電圧Vaをそれぞれの抵抗値R86,R88で分圧した電圧VNa=Va×R88/(R86+R88)が得られる。ノードN上の分圧電圧VNaは、コンパレータ94の非反転入力端子(+)に入力される。
【0102】
一方、第2の入力端子28bと一次側グランド電位端子との間に抵抗90,92が直列に接続されている。これらの抵抗90,92は第2の入力端子28bの電圧Vbに対する分圧回路98を構成している。両抵抗90,92間のノードNには、電圧Vbをそれぞれの抵抗値R90,R92で分圧した電圧VNb=Vb×R92/(R90+R92)が得られる。ノードN上の分圧電圧VNbは、コンパレータ94の反転入力端子(-)に入力される。
【0103】
好ましくは、分圧回路96の分圧比R88/(R86+R88)と分圧回路98の分圧比R92/(R90+R92)は同じである。したがって、好ましくは、R86=R90,R88=R92に設定されてよい。
【0104】
コンパレータ94は、ノードNの分圧電圧VNaとノードNの分圧電圧VNbとを比較し、VNa<VNbのときは出力をLレベルとし、VNa≧VNbのときは出力をHレベルとする。
【0105】
ノードNの分圧電圧VNaとノードNの分圧電圧VNbの大小関係は、両入力電圧Va,Vbの大小関係に対応している。上述したように、第1の入力端子28aの電圧Vaと第2の入力端子28bの電圧Vbとの間では、オフ期間中はVa<Vbの関係が保たれ、二次側でダイオードDの導通が止まった時にそれまでのVa<Vbの関係からVa≧Vbの関係に反転する。分圧電圧VNaと分圧電圧VNbとの間では、オフ期間中はVNa<VNbの関係が保たれ(これによって、コンパレータ94の出力はLレベルに保たれ)、二次側でダイオードDの導通が止まった時にそれまでのVNa<VNbの関係からVNa≧VNbの関係に反転し、この時コンパレータ94の出力はLレベルからHレベルに変わり、その立ち上がりエッジ(反転エッジ)が反転検出信号PRとなる。
【0106】
上記のように、本発明のスイッチング電源装置は、補助巻線を設けずに一次巻線および二次巻線だけの小型簡便なトランスを用いてフライバック動作を適確に行うことができるため、スイッチング電源装置の顕著な小型化および低コスト化を実現することができる。
【符号の説明】
【0107】
10 トランス
12 スイッチングトランジスタ(N型MOSFET)
14 整流平滑回路
16 制御回路
20 センス抵抗
24 スイッチング制御回路
28 巻線電圧監視回路
28a,28b 巻線電圧監視回路の入力端子
30 出力電圧監視回路
32,34 P型MOSFET
35 バイアス電圧源
36 定電流源
38 抵抗
42 コンパレータ
44 基準電圧源
50 抵抗
52 オン時間制御部
54 オフ時間制御部
60 RSフリップフロップ
86,88,90,92 抵抗
94 コンパレータ
100 電圧レギュレータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10