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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114179
(43)【公開日】2022-08-05
(54)【発明の名称】パン類用冷凍生地の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A21D 6/00 20060101AFI20220729BHJP
   A21D 2/26 20060101ALI20220729BHJP
【FI】
A21D6/00
A21D2/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021010361
(22)【出願日】2021-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】301049777
【氏名又は名称】日清製粉株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚本 一民
(72)【発明者】
【氏名】茂木 大介
(72)【発明者】
【氏名】小林 砂理
(72)【発明者】
【氏名】神尾 里奈
【テーマコード(参考)】
4B032
【Fターム(参考)】
4B032DB01
4B032DG01
4B032DG07
4B032DG08
4B032DK14
4B032DK17
4B032DK21
4B032DP01
4B032DP37
(57)【要約】
【課題】焼成前の最終発酵が不要で、外観及び食感に優れたパン類を簡便に製造し得るパン類用冷凍生地の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明のパン類用冷凍生地の製造方法は、穀粉類を含む製パン原料を用いて生地を調製する生地調製工程と、該生地を冷凍する冷凍工程とを有する。前記製パン原料は、前記穀粉類100質量部に対し、グリアジンを0.3~3質量部、増粘剤を0.2~3質量部、膨張剤を0.3~5質量部含む。前記生地調製工程では、前記製パン原料に含まれる前記穀粉類の20~80質量%を発酵させて発酵穀粉類を得、該発酵穀粉類と該製パン原料の残りとを用いて生地を調製する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
最終発酵を行わずに焼成が可能なパン類用冷凍生地の製造方法であって、
穀粉類を含む製パン原料を用いて生地を調製する生地調製工程と、該生地を冷凍する冷凍工程とを有し、
前記製パン原料は、前記穀粉類100質量部に対し、グリアジンを0.3~3質量部、増粘剤を0.2~3質量部、膨張剤を0.3~5質量部含み、
前記生地調製工程では、前記製パン原料に含まれる前記穀粉類の20~80質量%を発酵させて発酵穀粉類を得、該発酵穀粉類と該製パン原料の残りとを用いて生地を調製する、パン類用冷凍生地の製造方法。
【請求項2】
前記製パン原料は、前記穀粉類100質量部に対し、グルテンを0.3~3質量部含む、請求項1に記載のパン類用冷凍生地の製造方法。
【請求項3】
前記製パン原料において、前記グルテンに対する前記グリアジンの含有質量比が0.2~5である、請求項2に記載のパン類用冷凍生地の製造方法。
【請求項4】
前記増粘剤は、ペクチン及びキサンタンガムから選択される1種以上を含む、請求項1~3の何れか1項に記載のパン類用冷凍生地の製造方法。
【請求項5】
前記膨張剤は遅効型膨張剤である、請求項1~4の何れか1項に記載のパン類用冷凍生地の製造方法。
【請求項6】
前記生地調製工程は中種法又は液種法によって実施される、請求項1~5の何れか1項に記載のパン類用冷凍生地の製造方法。
【請求項7】
前記生地調製工程で調製された生地を分割・成形した後で且つ前記冷凍工程の前に、該生地に対して実施される発酵時間が20分以下である、請求項1~6の何れか1項に記載のパン類用冷凍生地の製造方法。
【請求項8】
前記パン類用冷凍生地は、冷凍状態のまま焼成が可能である、請求項1~7の何れか1項に記載のパン類用冷凍生地の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パン類用冷凍生地に関する。
【背景技術】
【0002】
パン類の製造工程は、製パン原料の混捏による生地の調製、生地の一次発酵、生地の分割・成型、生地のホイロ(二次発酵、最終発酵)、生地の焼成等の多数の工程を有するところ、近年、製造工程の合理化が重要な課題の一つとなっており、その解決手段の一つとして冷凍生地を利用したパン類の製造方法が検討されている。斯かるパン類の製造方法として、例えば、ホイロ後に冷凍した生地を焼成する工程を有するものが知られている。この方法を用いると、熟練した製パン技術者を必要とせず、高品質のパン類を比較的簡単に製造することができ、例えば、店頭で冷凍庫から冷凍生地を取り出し、発酵を行うことなく、そのままあるいは解凍して、オーブンで焼成するだけで焼きたてのパン類を提供することが可能である。しかし一般に、ホイロ後に冷凍した生地は、ホイロ無しで冷凍した生地に比べて体積が大きく嵩張るため、流通過程や保管時に比較的大きなスペースを要し、物流コストがかかるという問題があった。また、ホイロ後に長期間冷凍保管されていた生地を焼成すると、冷凍障害等によりパン類の外観、食感等が低下するという問題もあった。
【0003】
このような最終発酵済みの冷凍生地の問題に鑑みて、これに関する種々の改良技術が提案されている。例えば特許文献1には、ストレート法による製パン方法において、穀粉類及びペクチンを含む製パン原料を用いて調製した生地をホイロにより発酵させた後、該生地を圧扁するなどして比容積を特定範囲に調整することが記載されている。特許文献2には、穀粉に対して炭酸ナトリウム及び/又は炭酸カリウムを特定量含有する生地をホイロ後に冷凍した後で加熱調理したパンは、長時間の冷凍保管後であっても、白色化の発生が抑制され、風味が損なわれていないことが記載されている。特許文献3には、穀粉類及び膨張剤を含む特定の製パン原料を用いた冷凍生地が記載されている。
【0004】
特許文献4には、パン類又は小麦系菓子類の製造方法においてグリアジンに富む成分を生地に配合することで、パン又はパン生地の冷凍変性、特に老化の抑制が達成され、また、生地の膨張性が向上することが記載されている。特許文献5には、製パン原料として小麦粉及び難消化性澱粉を用いるパンの製造方法において、該小麦粉の一部として特定の超強力粉を用いるとともに、活性グルテン及びグリアジンを用いることで、難消化性澱粉の使用に起因する不都合(生地の伸展性の低下等)を抑制できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-196176号公報
【特許文献2】特開2017-176015号公報
【特許文献3】特開2020-130007号公報
【特許文献4】特開平8-66147号公報
【特許文献5】特開2007-14253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、焼成前の最終発酵が不要で、外観及び食感に優れたパン類を簡便に製造し得るパン類用冷凍生地の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、最終発酵を行わずに焼成が可能なパン類用冷凍生地の製造方法であって、穀粉類を含む製パン原料を用いて生地を調製する生地調製工程と、該生地を冷凍する冷凍工程とを有し、前記製パン原料は、前記穀粉類100質量部に対し、グリアジンを0.3~3質量部、増粘剤を0.2~3質量部、膨張剤を0.3~5質量部含み、前記生地調製工程では、前記製パン原料に含まれる前記穀粉類の20~80質量%を発酵させて発酵穀粉類を得、該発酵穀粉類と該製パン原料の残りとを用いて生地を調製する、パン類用冷凍生地の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のパン類用冷凍生地の製造方法によれば、焼成前の最終発酵が不要で、外観及び食感に優れたパン類を簡便に製造し得るパン類用冷凍生地が提供される。
本発明によって製造されたパン類用冷凍生地は、最終発酵を行わずに冷凍状態のまま又は解凍してからオーブン等で焼成するだけで、ボリュームがあって外観に優れ、且つ歯切れがよい、口溶けがよい、もちもち感がある等、食感にも優れたパン類となり得る。本発明によって製造されたパン類用冷凍生地によれば、誰でも簡単に、焼きたての高品質のパン類をタイムリーに提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のパン類用冷凍生地の製造方法は、穀粉類を含む製パン原料を用いて生地を調製する生地調製工程と、該生地を冷凍する冷凍工程とを有する。
【0010】
前記生地調製工程で用いる製パン原料は、典型的には、穀粉類を主体とする。製パン原料における穀粉類の含有量は、該製パン原料の全質量に対して、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは50~80質量%である。
穀粉類は、穀物由来の粉体であり、典型的には、穀粉及び澱粉である。ここでいう「澱粉」は特に断らない限り、小麦等の植物から単離された「純粋な澱粉」を指し、穀粉中に本来的に内在する澱粉とは区別される。本発明では、穀粉類(穀粉、澱粉)の1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
穀粉類(穀粉、澱粉)としては、パン類の製造に使用可能なものを特に制限なく用いることができる。穀粉としては、例えば、小麦粉、そば粉、米粉、コーンフラワー、大麦粉、ライ麦粉、はとむぎ粉、ひえ粉、あわ粉が挙げられる。澱粉としては、例えば、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉等の澱粉(生澱粉);該生澱粉にα化、エーテル化、エステル化、アセチル化、架橋処理、酸化処理等の処理の1種以上を施した加工澱粉が挙げられる。
【0011】
本発明では、外観及び食感に優れたパン類の製造を容易とする観点から、穀粉類として小麦粉を用いることが好ましい。小麦粉としては、パン類の製造に使用可能なものを特に制限なく用いることができ、例えば、強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム小麦粉が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。小麦粉の中でも特に強力粉が好ましい。
製パン原料に含まれる穀粉類における小麦粉の含有量は、該穀粉類の全質量に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上である。
【0012】
前記生地調製工程では、製パン原料として、前記の穀粉類(好ましくは小麦粉)に加えて更に、少なくともグリアジン、増粘剤及び膨張剤を用いる。グリアジンは生地物性に影響を及ぼし、適切な量を使用することで、パン類のボリュームアップによる外観の向上及び食感の向上に寄与し得る。増粘剤及び膨張剤は、主としてパン類のボリュームアップによる外観の向上に寄与し得る。
【0013】
本発明で製パン原料として用いるグリアジンは、好ましくは、小麦等の穀物中に存在する糖タンパク質としてのグリアジンを主体とした改良剤(以下、「グリアジン改良剤」とも言う。)である。グリアジン改良剤は、例えば、小麦グルテンからアルコール水溶液等の溶媒を用いて、その可溶性成分として抽出・分離し、更に通常はこれを乾燥して粉末化することにより得ることができ、常温常圧で粉体である。グリアジン改良剤におけるグリアジンの含有量は、該グリアジン改良剤の全質量に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60~95質量%である。本発明で使用可能な市販のグリアジン改良剤の一例として、グリアA(アサマ化成)が挙げられる。
【0014】
前記生地調製工程で用いる製パン原料は、該製パン原料に含まれる穀粉類100質量部に対し、グリアジンを0.3~3質量部、好ましくは0.4~2.5質量部、より好ましくは0.5~2.0質量部含有する。穀粉類100質量部に対しグリアジンの含有量が0.3質量部未満では、グリアジンを使用する意義に乏しく、3質量部を超えると、生地の緩みが大きくなり、グリアジンによる効果(パン類のボリューム及び食感の向上効果等)が得られにくくなる。
【0015】
前記増粘剤としては、水に溶解又は分散して粘稠性を生じる高分子物質で食用のものを特に制限無く用いることができ、例えば、ゲル化剤及び増粘多糖類が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることできる。ゲル化剤としては、例えば、ゼラチン、寒天、カラギーナン、ペクチンが挙げられる。増粘多糖類としては、例えば、アルギン酸又はその塩(例えばナトリウム塩等)、アラビアガム、カードラン、カロブビーンガム、キサンタンガム、キチン、キトサン、グアーガム、サイリウムシードガム、タマリンドシードガム、トラガントガム、ジェランガムが挙げられる。
【0016】
前記増粘剤としては、ペクチン及びキサンタンガムが特に好ましく、製パン原料として何れか一方又は両方を用いることが好ましい。ペクチン及びキサンタンガムは、パン類のボリュームが出やすく、パン類の保形性の向上効果にも優れることから、本発明で好ましく用いられる。ペクチンの中でも特に柑橘類由来のペクチンが好ましい。
製パン原料に含まれる増粘剤におけるペクチン及びキサンタンガムの合計含有量は、該増粘剤の全質量に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、なお好ましくは95質量%以上である。
【0017】
前記生地調製工程で用いる製パン原料は、該製パン原料に含まれる穀粉類100質量部に対し、増粘剤を0.2~3質量部、好ましくは0.3~2.5質量部、より好ましくは0.5~2.0質量部含有する。製パン原料における増粘剤の含有量が斯かる特定範囲にあることで、ボリュームに優れたパン類が得られやすくなり、また、生地の締まりを抑制し、製パン工程における生地の損傷を抑制することができる。穀粉類100質量部に対し増粘剤の含有量が0.2質量部未満では、増粘剤を使用する意義に乏しく、3質量部を超えると、生地が脆くなり、パン類の外観及び食感が低下するおそれがある。
【0018】
前記膨張剤は、生地の膨張性を高めてパン類のボリュームを向上させる役割を担うものであり、また、前記生地調製工程で調製された生地を分割・成形した後で且つ前記冷凍工程の前に、該生地に対して実施される発酵時間を20分以下とするのに有用な成分である。膨張剤としては、パン類の製造に使用可能なものを特に制限なく用いることができ、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸水素アンモニウム等のアルカリ性剤;該アルカリ性剤(ガス発生基剤)と酸性剤とを含有するいわゆるベーキングパウダーが挙げられる。前記酸性剤としては、例えば、酒石酸水素カリウム(特にL-体)、リン酸二水素カルシウム、焼ミョウバン、フマル酸、酒石酸、リン酸ナトリウム、グルコノデルタラクトンが挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明では、1種類の膨張剤を用いてもよく、2種類以上の膨張剤を併用してもよい。
【0019】
前記膨張剤としては、遅効型膨張剤が好ましい。一般的に、膨張剤(ベーキングパウダー)は速効型、中間型(持続型)、遅効型に大別される。製パン原料に遅効型膨張剤を用いることで、焼成段階でパン類のボリュームが出やすく、パン類の食感がより良好なものとなり得る。遅効型膨張剤には、酸性剤として遅効性酸性剤が配合されている。
前記遅効性酸性剤としては、例えば、グルコノデルタラクトン、リン酸二水素カルシウム、リン酸ナトリウム、焼ミョウバン、コーティング有機酸が挙げられる。ただし、リン酸二水素カルシウム、リン酸ナトリウム、焼ミョウバンは、食品安全性等の観点から使用基準が定められ、近年忌避される傾向にある。
前記コーティング有機酸は、表面がコート剤で被覆された有機酸である。前記コート剤としては、例えば、硬化油脂、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸の金属塩等の油脂;乳化剤が挙げられる。前記有機酸としては、例えば、フマル酸、酒石酸が挙げられる。前記コーティング有機酸としては、特開2011-67195号公報又は特開2017-163887号公報に記載のベーキングパウダー組成物を用いることができ、また市販品として、例えばオリエンタル酵母工業株式会社製の「デルトン」、「ブランニュー」、奥野製薬工業株式会社製の「トップふくらし粉860」、「トップふくらし粉950」等を用いることができる。
遅効型膨張剤として本発明で特に好ましいものは、遅効性酸性剤としてグルコノデルタラクトン又は油脂コーティング有機酸(前記コーティング有機酸において、前記コート剤として油脂を用いたもの)を含有するものである。斯かる遅効性膨張剤を用いることで、焼成前の最終発酵無しでも、焼成時の生地の伸び(いわゆる窯伸び)が効果的に促進され、ボリュームのあるパン類が得られやすくなる。
【0020】
前記生地調製工程で用いる製パン原料は、該製パン原料に含まれる穀粉類100質量部に対し、膨張剤を0.3~5質量部、好ましくは0.5~4質量部、より好ましくは0.5~1.5質量部含有する。穀粉類100質量部に対し膨張剤の含有量が0.3質量部未満では、膨張剤を使用する意義に乏しく、5質量部を超えると、生地がもろくなる、パン類の食感が歯抜かりのある好ましくないものとなる等の不都合が生じるおそれがある。
【0021】
前記生地調製工程で用いる製パン原料は、グルテンを含んでいてもよい。これにより、パン類のボリューム及び食感双方の更なる向上が期待できる。グルテンとしては、活性グルテンが好ましい。活性グルテンは、バイタルグルテンなどとも呼ばれるもので、多数の市場流通品が存在し、本発明ではそれら流通品を特に制限なく用いることができる。活性グルテンは、小麦蛋白質の濃縮物であり、主にグルテニンとグリアジンとから構成され、基本的には、小麦粉と水とを混捏してグルテンが発達した生地を形成した後、該生地の澱粉等の水溶性成分を除去することにより小麦蛋白質の含有量を高めたものである。活性グルテンにおける小麦蛋白質の含有量は、該活性グルテンの全質量に対して、好ましくは70~95重量%である。活性グルテンは、小麦グルテンであることが好ましく、小麦の種類としては、パンコムギ、デュラムコムギ、クラブコムギ、スペルトコムギ、エンマコムギ(以上、イネ科コムギ属);タルホコムギ、クサビコムギ(以上、イネ科エギロプス属)が挙げられる。
【0022】
前記生地調製工程で用いる製パン原料は、該製パン原料に含まれる穀粉類100質量部に対し、グルテン(好ましくは活性グルテン)を好ましくは0.3~3質量部、より好ましくは0.5~2.0質量部含有する。これにより、生地に適度な弾性及び伸展性が付与されるとともに、冷凍耐性が付与される。製パン原料におけるグルテンの含有量が少なすぎるとこれを使用する意義に乏しく、グルテンの含有量が多すぎると、生地の伸展性が低下するなどして、所望の効果が奏されないおそれがある。
【0023】
また、前記生地調製工程で用いる製パン原料において、グルテン(好ましくは活性グルテン)に対するグリアジン(グリアジン改良剤)の含有質量比(グリアジンの含有質量/グルテンの含有質量)は、好ましくは0.2~5、より好ましくは0.25~4である。グルテンに対して0.2倍量以上、特に0.25倍量以上のグリアジンを用いることにより、生地の弾性が良くなり、パン類のボリューム及び食感の向上効果が一層確実に奏され得る。また、活性グルテンに対して5倍量以下、特に4倍量以下のグリアジンを用いることにより、生地の伸展性が良くなり、パン類のボリューム及び食感の向上効果が一層確実に奏される。また、これらの効果に加えて更に、冷凍生地を冷凍状態のまま焼成しても糊化しにくくなり、パン類のボリュームが大きくなりやすくなるという効果も奏され得る。
【0024】
前記生地調製工程で用いる製パン原料は、α-アミラーゼを含んでいてもよい。これにより、パン類のボリューム及び食感の更なる向上が期待できる。α-アミラーゼとしては、市販の酵素製剤を使用することができる。
前記生地調製工程で用いる製パン原料は、該製パン原料に含まれる穀粉類100質量部に対し、α-アミラーゼを好ましくは5×10-6~1.0×10-2質量部、より好ましくは1.5×10-5~5.0×10-3質量部含有する。
【0025】
前記生地調製工程で用いる製パン原料は、キシラナーゼを含んでいてもよい。これにより、パン類のボリューム及び食感の更なる向上が期待できる。キシラナーゼとしては、市販の酵素製剤を使用することができる。
前記生地調製工程で用いる製パン原料は、該製パン原料に含まれる穀粉類100質量部に対し、キシラナーゼを好ましくは1×10-5~2.0×10-4質量部、より好ましくは5.0×10-5~2.0×10-4質量部含有する。
【0026】
前記生地調製工程で用いる製パン原料は、前述した各種成分(穀粉類、グリアジン、増粘剤、膨張剤、グルテン、α-アミラーゼ、キシラナーゼ)以外の他の成分を含んでいてもよい。斯かる他の成分としては、パン類の製造の従来用いられている各種公知の副原料として、例えば、イースト、イーストフード、糖類、食塩、油脂、鶏卵、乳製品が挙げられ、製造するパン類の種類等に応じて、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
前記生地調製工程は、前述した製パン原料に含まれる穀粉類(冷凍生地の調製に使用する全ての穀粉類)の20~80質量%、好ましくは25~75質量%、より好ましくは30~70質量%を発酵させて発酵穀粉類を得、該発酵穀粉類と該製パン原料の残りとを用いて生地(本捏生地)を調製する点で特徴付けられる。このような特徴的な工程で調製することで、焼成前の最終発酵(ホイロ)を行わずとも、冷凍状態のまま又は解凍してからオーブン等で焼成するだけで外観及び食感に優れるパン類となる、パン類用冷凍生地が得られるようになる。前記第1工程における穀粉類の使用量が、製パン原料に含まれる穀粉類の30質量%未満又は80質量超では、本発明の所定の効果は奏されない。
【0028】
前記生地調製工程は、公知の中種法又は液種法によって実施することができる。両法は、きめ細かくボリュームのあるパンに焼き上がり、中種又は液種として発酵させているために芳香や風味が豊かになり、老化も遅くソフトな食感になるという特長がある。
【0029】
中種法は、一般的に、生地(本捏生地)を調製する前段階で、製パン原料の一部を用いて中種と呼ばれる発酵種を調製し、該発酵種と該製パン原料の残りとを混捏して本捏生地を調製する方法である。
中種法を利用した前記生地調製工程の一例として、製パン原料として使用する穀粉類(例えば小麦粉)の20~80質量%にイースト及び水を加えて中種生地を調製し、該中種生地の発酵を行って発酵種(発酵穀粉類を含む生地)を得、該発酵種と製パン原料の残りとを混捏して本捏生地を調製する方法が挙げられる。
【0030】
液種法は、基本的には中種法と同様であるが、本捏生地の調製に先立って調製される発酵種(発酵穀粉類を含む生地)が、水分量が比較的多い液状の液種である点で主に相違する。液種法には、1)穀粉類(例えば小麦粉)と水とイーストとを、穀粉類:水:イースト=20~40:20~50:0.1~1程度の割合で混合し、室温(25℃)程度で発酵させて液種を調製するポーリッシュ法、2)イースト、砂糖及び水を混合した発酵液を調製し、該発酵液に穀粉類(例えば小麦粉)を加えて液種とするブリュー法、3)穀粉類(例えば小麦粉)及び水の混合物に少量のモルトシロップ等を加えることで、該穀粉類に本来的に付着している酵母等を利用して発酵させて液種を作り、更に該液種に、穀粉類(例えば小麦粉)、水及び少量のモルトシロップ等を加えて種を植え継いで液種を調製する天然酵母液種法等があり、本発明では何れの液種法も利用できる。
【0031】
前記生地調製工程はこのように、冷凍生地の調製に使用する全ての製パン原料の一部を用いて発酵穀粉類を得る第1工程と、該発酵穀粉類と該製パン原料の残りとを用いて生地(本捏生地)を調製する第2工程とを有するところ、該第1工程及び該第2工程それぞれにおける製パン原料の使用量については、前述したとおり穀粉類について、冷凍生地の調製に使用する全ての穀粉類の20~80質量%を該第1工程で使用することさえ満たせばよく、穀粉類以外の他の製パン原料については、該生地調製工程における生地の調製法(中種法か液種法かなど)、製造するパン類の種類等に応じて適宜調整することができる。したがって、前述したグリアジン、増粘剤、膨張剤、グルテン、α-アミラーゼ及びキシラナーゼは、前記第1工程のみで使用してもよく、前記第2工程のみで使用してもよく、適当に配分して両工程で使用してもよいが、これらは典型的には、発酵穀粉類を得るための該第1工程では使用せず、該発酵穀粉類を用いた本捏生地の調製工程である該第2工程で使用する。
【0032】
本発明のパン類用冷凍生地の製造方法では、中種法、液種法等による前記生地調製工程の後、典型的には、得られた生地(本捏生地)を発酵させ(一次発酵)、その発酵済み生地を適当な大きさに分割して丸め(分割工程)、必要に応じ室温でベンチタイムを取った後、該生地を所望の形状に成形し(成形工程)、必要に応じ該生地を発酵させ(ホイロ、二次発酵)、しかる後、該生地を冷凍する(前記冷凍工程)。
【0033】
前記の一次発酵(前記生地調製工程の後で且つ前記分割工程の前に実施される生地の発酵)及びホイロ(前記成形工程の後で且つ前記冷凍工程の前に実施される生地の発酵)それぞれの温度及び時間は、製造するパン類の種類等に応じて適宜調整すればよく特に制限されない。一次発酵もホイロも、典型的には、所定の湿度及び温度の環境下に対象となる生地を静置することによって実施される。
前記一次発酵の一実施形態として、一次発酵前の生地(本捏生地)の品温(捏上温度)を18~25℃とし、その後の一次発酵を、対象の生地(本捏生地)を雰囲気温度23~28℃の環境に10~40分間静置する条件で行う形態が挙げられる。
前記ホイロの一実施形態として、対象の生地(本捏生地)を雰囲気温度27~35℃、相対湿度70~90%の環境に30~90分間静置する条件で行う形態が挙げられる。
【0034】
本発明のパン類用冷凍生地の製造方法では、前記ホイロ(二次発酵)は行わなくてもよい。すなわち、本発明のパン類用冷凍生地の製造方法では、前記生地調製工程で調製された生地を分割・成形した後で且つ前記冷凍工程の前に、該生地に対して実施される発酵時間は、一般的なホイロの発酵条件(例えば前記条件)であれば、20分以下でよく、10分以下でもよく、0分でもよい。前記ホイロ(二次発酵)のデメリットとしては前述したように、生地の体積増大に起因する保管スペースの増大に伴う物流コストの高騰、冷凍障害によるパン類の外観及び食感の低下等があるが、本発明にホイロ時間を20分以下、あるいはホイロ無しが可能であるため、こうしたデメリットを回避することができる。
【0035】
本発明のパン類用冷凍生地の製造方法では、前記冷凍工程の直前に、冷凍対象の生地を常温常圧の環境に静置する時間(いわゆるラックタイム)を設けてもよい。生地の冷凍直前にラックタイムを設けることで、生地の成形時にグルテンの加工硬化が発生した場合に、該加工硬化が緩和される構造緩和が促進され、これにより、生地の形状が安定し、更に、冷凍生地を焼成して得られるパン類のボリュームが改善し、また、パン類の外観において、表面の割れや底割れが軽減される効果が期待される。ラックタイムをどの程度取るかは、製造するパン類の種類等に応じて適宜調整すればよく特に制限されないが、典型的には3~60分間である。
【0036】
前記冷凍工程では、生地の冷凍方法は特に制限されず、この種のパン生地の冷凍方法を適宜利用することができ、いわゆる緩慢冷凍、急速冷凍どちらであっても所定の効果は奏されるが、氷結晶生成による生地の損傷を最小限に抑える観点から、急速冷凍が好ましい。
【0037】
本発明によって製造されたパン類用冷凍生地は、焼成することでパン類となる。このパン類用冷凍生地を焼成する場合、解凍してから焼成してもよいが、冷凍状態のまま焼成することも可能である。冷凍生地を解凍せずにそのまま焼成することにより、ボリュームがあり食感にも優れるパン類が得られやすくなる。
冷凍生地を解凍してから焼成する場合、スチームコンベクションオーブン等を用いて、加湿環境下、好ましくは飽和水蒸気の存在下で冷凍生地を高速で解凍させてから、その解凍した生地を焼成してもよい。
焼成前の解凍の有無を問わず、生地焼成の好ましい条件の一例として、加熱温度は好ましくは160~230℃、より好ましくは160~210℃、加熱時間は好ましくは5~40分間、より好ましくは10~25分間が挙げられる。
【0038】
本発明は種々のパン類に適用可能であり、具体的には例えば、食パン、菓子パン、デニッシュペストリー、フランスパン、クロワッサン、ハードロール、セミハードロール、バターロール、ブリオッシュ、ベーグル等が挙げられる。本発明が特に好適なパン類として、セミハードロール、クロワッサン、デニッシュペストリー、ベーグルが挙げられる。
【実施例0039】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0040】
下記の表1~7に記載の各原料の詳細は以下のとおりである。
・強力粉:商品名「ミリオン」、日清製粉株式会社製
・グリアジン:商品名「グリアA」、アサマ化成株式会社製
・ペクチン:増粘剤、商品名「フリーズJP」、三晶株式会社製
・キサンタンガム:増粘剤、商品名「キサンタンガム」、日本コロイド株式会社製
・膨張剤A:グルコノデルタラクトン含有量70質量%の遅効性膨張剤、商品名「デルトン」、オリエンタル酵母工業株式会社製
・膨張剤B:グルコノデルタラクトン非含有の速効性膨張剤、商品名「ベーキングパウダーC#1」、オリエンタル酵母工業株式会社製
・グルテン:活性グルテン、商品名「H-10」、小川製粉株式会社製
・生地改良剤A:商品名「CアンティS」、オリエンタル酵母工業株式会社製
・生地改良剤B:商品名「FDインプルーバー2J」、株式会社光洋商会製
・乳化剤:商品名「MM-100」、理研ビタミン株式会社製
・乳化油脂:商品名「ソフィカルスーパー」、理研ビタミン株式会社製
【0041】
〔実施例1~6、8~12、比較例1、対照例1~3:中種法によるハードロール用冷凍生地の製造〕
中種法による生地調製工程、冷凍工程を行い、ハードロール用冷凍生地を製造した。
具体的には、先ず、表1~2に記載の中種原料(水を除く)を添加混合し、そこへ水を加えて低速で4分間、次いで中低速で3分間、混捏して中種生地を得た(捏上げ温度25℃)。前記中種生地を雰囲気温度27℃、相対湿度75%の環境に2時間静置して発酵させ、中種を得た。次に、表1~2に記載の本捏用原料(水を除く)を添加混合し、そこへ前記中種及び水を加えて低速で5分間、次いで中速で5分間、中高速で5~7分間混捏(本捏)して本捏生地を得た(捏上げ温度24~25℃)。また表1~2に示す選択原料を、表1~2に示す比率となるように、本捏する前の強力粉中に配合した。
次に、得られた本捏生地を、雰囲気温度27℃、相対湿度75%の環境で20分間静置して発酵させ(一次発酵)、その発酵済み生地を80gずつに分割し、雰囲気温度27℃の環境で15分間のベンチタイムを取った後、該生地を所定の形状に成形し、5分間のラックタイムを取った後、成形した生地の表面に小麦粉を付着させてから、-40℃にて30分間急速冷凍してハードロール用冷凍生地を製造した。製造した冷凍生地は-20℃で保管した。
【0042】
〔実施例7、比較例2~4:中種法によるハードロール用冷凍生地の製造〕
成形した生地の表面に小麦粉を付着させた後で且つ冷凍する前に、該生地を雰囲気温度32℃、相対湿度80%の環境に10分間静置して発酵させた、すなわち生地の分割・成形後で且つ冷凍前にホイロを行った以外は、前記と同様の方法でハードロール用冷凍生地を製造した。
【0043】
〔評価試験1:中種法によるハードロールの外観及び食感評価〕
各実施例、比較例及び対照例のハードロール用冷凍生地を、発酵を行わずに、オーブンを用いて焼成してハードロールを製造した。焼成方法として、冷凍生地を解凍せずにそのまま焼成する方法(ダイレクトオーブン)と、解凍してから焼成する方法との2種類を採用した。前者の方法は、デッキオーブン(戸倉商事株式会社製)を用いて行い、加熱温度210~220℃、加熱時間20分間で冷凍生地を焼成した。後者の方法は、スチームコンベクションオーブン(ラショナル社製)を用いて行い、設定温度50℃のスチームモードで冷凍生地を解凍した後、コンビネーションモード(オーブン機能とスチーム機能を組み合わせたモード)で加熱温度170~180℃、加熱時間18~30分間で生地を焼成した。
焼成したハードロールを常温常圧で30~40分間放置した後、10名の専門パネラーにより、ハードロールの外観(ボリューム)及び食感(歯切れ、口溶け)を下記評価基準に従って評価してもらった。結果を表1~2に示す。表1~2の「ハードロール評価」の欄の数値は、10名の専門パネラーの評価点の算術平均値である。
【0044】
<外観の評価基準>
5点:対照例と比較してボリュームに非常に優れる。
4点:対照例と比較してボリュームに優れる。
3点:対照例と比較してボリュームにやや優れる。
2点:対照例と同程度である。
1点:対照例と比較してかなりボリュームに劣る。
<食感(歯切れ、口溶け)の評価基準>
5点:対照例と比較して非常に歯切れがよく、口溶けが非常によい。
4点:対照例と比較して歯切れがよく、口溶けがよい。
3点:対照例と比較してやや歯切れがよく、口溶けが若干よい。
2点:対照例と同等のヒキ、口溶けである。
1点:対照例と比較して、ヒキが悪く、口溶けが悪い。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
表1に示すとおり、各実施例は、製パン原料にグリアジン、増粘剤及び膨張剤を含んでいるため、これを満たさない比較例及び対照例に比べて、ハードロールの外観及び食感に優れていた。実施例1と実施例7と比較例2との対比から、本発明を適用すれば、生地の成形後且つ冷凍前のホイロを行わない場合(実施例1)でも、ホイロを行った場合(実施例7)に比べて評価が大きく劣ることはなく、高品質のハードロールが得られることがわかる。また、表2の各例は、強力粉の中種原料及び本捏用原料としての使用量が表1の各例と異なるところ、結果は表1と同様であった。
【0048】
〔実施例13、対照例4:中種法によるベーグル用冷凍生地の製造〕
中種法による生地調製工程、冷凍工程を行い、ベーグル用冷凍生地を製造した。
具体的には、先ず、表3に記載の中種原料(水を除く)を添加混合し、そこへ水を加えて低速で4分間、次いで中低速で2分間、混捏して中種生地を得た(捏上げ温度25℃)。前記中種生地を雰囲気温度27℃、相対湿度75%の環境に2時間静置して発酵させ、中種を得た。次に、表3に記載の本捏用原料(水を除く)を添加混合し、そこへ前記中種及び水を加えて低速で7分間、次いで中速で5分間、中高速で5~7分間混捏(本捏)して本捏生地を得た(捏上げ温度24~25℃)。また表3に示す選択原料を、表3に示す比率となるように、本捏する前の強力粉中に配合した。
次に、得られた本捏生地を、雰囲気温度27℃、相対湿度75%の環境で20分間静置して発酵させ(一次発酵)、その発酵済み生地を100gずつに分割し、雰囲気温度27℃の環境で15分間のベンチタイムを取った後、該生地を所定の形状(リング状)に成形し、-40℃にて30分間急速冷凍してベーグル用冷凍生地を製造した。製造した冷凍生地は-20℃で保管した。
【0049】
〔評価試験2:中種法によるベーグルの外観及び食感評価〕
各実施例及び対照例のベーグル用冷凍生地を、発酵を行わずに、オーブンを用いて焼成してベーグルを製造した。焼成方法として、ダイレクトオーブンを採用した。具体的には、デッキオーブン(戸倉商事株式会社製)を用いて、加熱温度180~220℃、加熱時間20分間で冷凍生地を焼成した。
焼成したベーグルを常温常圧で30~40分間放置した後、10名の専門パネラーにより、ベーグルの外観(ボリューム)及び食感(歯切れ、口溶け、もちもち感)を前記評価基準及び下記評価基準に従って評価してもらった。結果を表3に示す。表3の「ベーグル評価」の欄の数値は、10名の専門パネラーの評価点の算術平均値である。
【0050】
<食感(もちもち感)の評価基準>
5点:対照例と比較して非常にもちもちしている。
4点:対照例と比較してもちもちしている。
3点:対照例と比較して若干もちもちしている。
2点:対照例と同等のもちもち感である。
1点:対照例と比較してもちもち感が不足している。
【0051】
【表3】
【0052】
〔実施例14、対照例5:中種法によるメロンパン用冷凍生地の製造〕
中種法による生地調製工程、冷凍工程を行い、メロンパン用冷凍生地を製造した。
具体的には、先ず、表4に記載の中種原料(水を除く)を添加混合し、そこへ水を加えて低速で4分間、次いで中低速で2分間、混捏して中種生地を得た(捏上げ温度25℃)。前記中種生地を雰囲気温度27℃、相対湿度75%の環境に2時間静置して発酵させ、中種を得た。次に、表4に記載の本捏用原料(水を除く)を添加混合し、そこへ前記中種及び水を加えて低速で3分間、次いで中低速で5分間、中高速で5分間混捏(本捏)して本捏生地を得た(捏上げ温度26~27℃)。また表4に示す選択原料を、表4に示す比率となるように、本捏する前の強力粉中に配合した。
また、本捏生地とは別に、皮生地を常法に従って製造した。皮生地の配合は次のとおりである。薄力粉100質量部、油脂(マーガリン)25質量部、グラニュー糖55質量部、全卵25質量部、発酵乳5質量部、ベーキングパウダー0.2質量部。
次に、得られた本捏生地を、雰囲気温度27℃、相対湿度75%の環境で20分間静置して発酵させ(一次発酵)、その発酵済み生地を50gずつに分割し、雰囲気温度27℃の環境で15分間のベンチタイムを取った後、該生地を所定の形状に成形し、その成形した生地に前記皮生地40gを重ねてメロンパンの形状とし、-40℃にて30~40分間急速冷凍してメロンパン用冷凍生地を製造した。製造した冷凍生地は-20℃で保管した。
【0053】
〔評価試験3:中種法によるメロンパンの外観及び食感評価〕
各実施例及び対照例のメロンパン用冷凍生地を、発酵を行わずに、オーブンを用いて焼成してメロンパンを製造した。焼成方法として、ダイレクトオーブンを採用した。具体的には、デッキオーブン(戸倉商事株式会社製)を用いて、加熱温度170~290℃、加熱時間20分間で冷凍生地を焼成した。
焼成したメロンパンを常温常圧で60分間放置した後、10名の専門パネラーにより、メロンパンの外観(ボリューム)及び食感(歯切れ、口溶け)を前記評価基準に従って評価してもらった。結果を表4に示す。表4の「メロンパン評価」の欄の数値は、10名の専門パネラーの評価点の算術平均値である。
【0054】
【表4】
【0055】
〔実施例15、対照例6:液種法によるハードロール用冷凍生地の製造〕
液種法による生地調製工程、冷凍工程を行い、ハードロール用冷凍生地を製造した。
具体的には、先ず、表5に記載の液種原料(水を除く)を添加混合し、そこへ水を加えてホイッパーで均一に混ぜ合わせて液種生地を得た(捏上げ温度22~24℃)。前記液種生地を雰囲気温度23~25℃の環境12~30時間静置して発酵させ、液種を得た。次に、表5に記載の本捏用原料(水を除く)を添加混合し、そこへ前記液種及び水を加えて低速で5分間、次いで中低速で5分間、中高速で5~7分間混捏(本捏)して本捏生地を得た(捏上げ温度24~25℃)。また表5に示す選択原料を、表5に示す比率となるように、本捏する前の強力粉中に配合した。
次に、得られた本捏生地を、雰囲気温度27℃、相対湿度75%の環境で20分間静置して発酵させ(一次発酵)、その発酵済み生地を80gずつに分割し、雰囲気温度27℃の環境で15分間のベンチタイムを取った後、該生地を所定の形状に成形し、5分間のラックタイムを取った後、成形した生地の表面に小麦粉を付着させてから、10分間のラックタイムを取った後、-40℃にて30分間急速冷凍してハードロール用冷凍生地を製造した。製造した冷凍生地は-20℃で保管した。
【0056】
〔評価試験4:液種法によるハードロールの外観及び食感評価〕
各実施例及び対照例のハードロール用冷凍生地を、発酵を行わずに、オーブンを用いて焼成してハードロールを製造した。焼成方法として、ダイレクトオーブンを採用した。具体的には、デッキオーブン(戸倉商事株式会社製)を用いて、加熱温度210~250℃、加熱時間18分間で冷凍生地を焼成した。
焼成したハードロールを常温常圧で30~40分間放置した後、10名の専門パネラーにより、ハードロールの外観(ボリューム)及び食感(歯切れ、口溶け)を前記評価基準に従って評価してもらった。結果を表5に示す。表5の「ハードロール評価」の欄の数値は、10名の専門パネラーの評価点の算術平均値である。
【0057】
【表5】
【0058】
〔実施例16、対照例7:液種法によるベーグル用冷凍生地の製造〕
液種法による生地調製工程、冷凍工程を行い、ベーグル用冷凍生地を製造した。
具体的には、先ず、表6に記載の中種原料(水を除く)を添加混合し、そこへ水を加えてホイッパーで均一に混ぜ合わせて液種生地を得た(捏上げ温度22~24℃)。前記液種生地を雰囲気温度23~25℃の環境12~30時間静置して発酵させ、液種を得た。次に、表6に記載の本捏用原料(水を除く)を添加混合し、そこへ前記液種及び水を加えて低速で7分間、次いで中低速で5分間、中高速で6~8分間混捏(本捏)して本捏生地を得た(捏上げ温度24~25℃)。また表6に示す選択原料を、表6に示す比率となるように、本捏する前の強力粉中に配合した。
次に、得られた本捏生地を、雰囲気温度27℃、相対湿度75%の環境で20~30分間静置して発酵させ(一次発酵)、その発酵済み生地を100gずつに分割し、雰囲気温度27℃の環境で15分間のベンチタイムを取った後、該生地を所定の形状(リング状)に成形し、10分間のラックタイムを取った後、-40℃にて30分間急速冷凍してベーグル用冷凍生地を製造した。製造した冷凍生地は-20℃で保管した。
【0059】
〔評価試験5:液種法によるベーグルの外観及び食感評価〕
各実施例及び対照例のベーグル用冷凍生地を、発酵を行わずに、オーブンを用いて焼成してベーグルを製造した。焼成方法として、冷凍生地を解凍してから焼成する方法を採用した。具体的には、スチームコンベクションオーブン(ラショナル社製)を用いて、設定温度50℃のスチームモードで冷凍生地を解凍した後、コンビネーションモード(オーブン機能とスチーム機能を組み合わせたモード)で加熱温度170~180℃、加熱時間18~25分間で生地を焼成した。
焼成したベーグルを常温常圧で30~40分間放置した後、10名の専門パネラーにより、ベーグルの外観(ボリューム)及び食感(歯切れ、口溶け、もちもち感)を前記評価基準に従って評価してもらった。結果を表6に示す。表6の「ベーグル評価」の欄の数値は、10名の専門パネラーの評価点の算術平均値である。
【0060】
【表6】
【0061】
〔実施例17、対照例8:液種法によるロールパン用冷凍生地の製造〕
液種法による生地調製工程、冷凍工程を行い、ロールパン用冷凍生地を製造した。
具体的には、先ず、表7に記載の中種原料(水を除く)を添加混合し、そこへ水を加えてホイッパーで均一に混ぜ合わせて液種生地を得た(捏上げ温度22~24℃)。前記液種生地を雰囲気温度23~25℃の環境12~30時間静置して発酵させ、液種を得た。次に、表7に記載の本捏用原料(水を除く)を添加混合し、そこへ前記液種及び水を加えて低速で4分間、次いで中低速で4分間、中高速で0~1分間、低速で3分間、中低速で5分間、中高速で5分間混捏(本捏)して本捏生地を得た(捏上げ温度26℃)。また表7に示す選択原料を、表7に示す比率となるように、本捏する前の強力粉中に配合した。
次に、得られた本捏生地を、雰囲気温度27℃、相対湿度75%の環境で30分間静置して発酵させ(一次発酵)、その発酵済み生地を50gずつに分割し、雰囲気温度27℃の環境で15分間のベンチタイムを取った後、該生地を所定の形状に成形し、-40℃にて30~40分間急速冷凍してロールパン用冷凍生地を製造した。製造した冷凍生地は-20℃で保管した。
【0062】
〔評価試験6:液種法によるロールパンの外観及び食感評価〕
各実施例及び対照例のロールパン用冷凍生地を、発酵を行わずに、オーブンを用いて焼成してロールパンを製造した。焼成方法として、ダイレクトオーブンを採用した。具体的には、デッキオーブン(戸倉商事株式会社製)を用いて、加熱温度210~250℃、加熱時間18分間で冷凍生地を焼成した。
焼成したロールパンを常温常圧で40~60分間放置した後、10名の専門パネラーにより、ロールパンの外観(ボリューム)及び食感(歯切れ、口溶け)を前記評価基準に従って評価してもらった。結果を表7に示す。表7の「ロールパン評価」の欄の数値は、10名の専門パネラーの評価点の算術平均値である。
【0063】
【表7】