IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 地方独立行政法人鳥取県産業技術センターの特許一覧 ▶ 独立行政法人産業技術総合研究所の特許一覧

特開2022-114451醤油加工品及び水性液状食品の加工品並びにその調理品とその製造方法
<>
  • 特開-醤油加工品及び水性液状食品の加工品並びにその調理品とその製造方法 図1
  • 特開-醤油加工品及び水性液状食品の加工品並びにその調理品とその製造方法 図2
  • 特開-醤油加工品及び水性液状食品の加工品並びにその調理品とその製造方法 図3
  • 特開-醤油加工品及び水性液状食品の加工品並びにその調理品とその製造方法 図4
  • 特開-醤油加工品及び水性液状食品の加工品並びにその調理品とその製造方法 図5
  • 特開-醤油加工品及び水性液状食品の加工品並びにその調理品とその製造方法 図6
  • 特開-醤油加工品及び水性液状食品の加工品並びにその調理品とその製造方法 図7
  • 特開-醤油加工品及び水性液状食品の加工品並びにその調理品とその製造方法 図8
  • 特開-醤油加工品及び水性液状食品の加工品並びにその調理品とその製造方法 図9
  • 特開-醤油加工品及び水性液状食品の加工品並びにその調理品とその製造方法 図10
  • 特開-醤油加工品及び水性液状食品の加工品並びにその調理品とその製造方法 図11
  • 特開-醤油加工品及び水性液状食品の加工品並びにその調理品とその製造方法 図12
  • 特開-醤油加工品及び水性液状食品の加工品並びにその調理品とその製造方法 図13
  • 特開-醤油加工品及び水性液状食品の加工品並びにその調理品とその製造方法 図14
  • 特開-醤油加工品及び水性液状食品の加工品並びにその調理品とその製造方法 図15
  • 特開-醤油加工品及び水性液状食品の加工品並びにその調理品とその製造方法 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114451
(43)【公開日】2022-08-05
(54)【発明の名称】醤油加工品及び水性液状食品の加工品並びにその調理品とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/50 20160101AFI20220729BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20220729BHJP
   A23L 29/231 20160101ALI20220729BHJP
   A23L 29/256 20160101ALI20220729BHJP
   A23L 29/275 20160101ALI20220729BHJP
【FI】
A23L27/50 106
A23L5/00 C
A23L29/231
A23L29/256
A23L29/275
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008304
(22)【出願日】2022-01-21
(31)【優先権主張番号】P 2021009957
(32)【優先日】2021-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】307016180
【氏名又は名称】地方独立行政法人鳥取県産業技術センター
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100134533
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 夏香
(74)【代理人】
【識別番号】100186451
【弁理士】
【氏名又は名称】梅森 嘉匡
(72)【発明者】
【氏名】杉本 優子
(72)【発明者】
【氏名】木村 伸一
(72)【発明者】
【氏名】小谷 幸敏
(72)【発明者】
【氏名】加藤 愛
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼重 至成
(72)【発明者】
【氏名】武仲 能子
【テーマコード(参考)】
4B035
4B039
4B041
【Fターム(参考)】
4B035LG02
4B035LG05
4B035LG23
4B035LG25
4B035LG27
4B035LG28
4B035LG35
4B035LK01
4B035LP02
4B035LP03
4B035LP07
4B035LP12
4B035LP16
4B035LP26
4B035LP35
4B035LP36
4B039LB03
4B039LB04
4B039LB05
4B039LB07
4B039LB11
4B039LB14
4B039LC20
4B039LG12
4B039LG33
4B039LG35
4B039LG42
4B039LR21
4B041LC03
4B041LC10
4B041LD10
4B041LE02
4B041LH05
4B041LH13
4B041LK01
4B041LK07
4B041LK41
4B041LP01
4B041LP02
4B041LP10
4B041LP14
(57)【要約】
【課題】液状、粉末、シート状の加工品とは異なる水性液状食品加工品で、見た目や食感のインパクトがある水性液状食品加工品の製造方法及びこれを用い、利便性が高く見た目や食感のインパクトがある調理品を提供する。
【解決手段】(A)カルシウム塩と水性液状食品とを含む食用溶液を、アルギン酸ナトリウム水溶液中に滴下して、カプセルを形成する滴下ステップと、(B)前記カプセルを、水洗いする水洗ステップと、を含む製造方法で作成した水性液状食品加工品を、食用皮で包む。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシウム塩と醤油液とを含む醤油溶液を、アルギン酸ナトリウム水溶液中に滴下して、カプセルを形成する滴下ステップと、
前記カプセルを、水洗いする水洗ステップと、
その後、前記カプセルを、乳酸を含むキトサン水溶液中に入れるキトサン添加ステップと、
を含むことを特徴とする醤油加工品の製造方法。
【請求項2】
前記キトサン添加ステップの後に、
前記カプセルを水洗いして、ペクチン溶液中に入れて、その後、水洗いして、アルギン酸ナトリウム水溶液中に入れるキトサン再添加前処理ステップと、
その後、前記カプセルを、水洗いして、乳酸を含むキトサン水溶液中に入れるキトサン再添加ステップと、
を、1又は複数回繰り返すことを特徴とする請求項1記載の醤油加工品の製造方法。
【請求項3】
前記アルギン酸ナトリウム水溶液が、pH8以上に調整してあることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の醤油加工品の製造方法。
【請求項4】
前記アルギン酸ナトリウム水溶液が、エタノールを添加してあることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の醤油加工品の製造方法。
【請求項5】
前記醤油液が増粘剤を含む液であり、
前記滴下ステップにおける前記アルギン酸ナトリウム水溶液中のアルギン酸ナトリウムの濃度が0.5~1wt%であり、
前記キトサン水溶液中のキトサンの濃度が0.1~0.5wt%であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の醤油加工品の製造方法。
【請求項6】
キトサンを含むアルギン酸カルシウム被膜内に醤油液を内包したカプセルであることを特徴とする醤油加工品。
【請求項7】
前記被膜がさらにペクチンを含むことを特徴とする請求項6記載の醤油加工品。
【請求項8】
カルシウム塩と水性液状食品とを含む食品溶液を、アルギン酸ナトリウム水溶液中に滴下して、カプセルを形成する滴下ステップと、
前記カプセルを、水洗いする水洗ステップと、
を含むことを特徴とする水性液状食品加工品の製造方法。
【請求項9】
前記水洗ステップの後、前記カプセルを、乳酸を含むキトサン水溶液中に入れるキトサン添加ステップを含むことを特徴とする請求項8に記載の水性液状食品加工品の製造方法。
【請求項10】
前記アルギン酸ナトリウム水溶液が、pH8以上に調整してあり、かつ、エタノールを添加してあることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の水性液状食品加工品の製造方法。
【請求項11】
前記食品溶液の粘度が、8.6×10mPas以上3.8×10mPas以下であることを特徴とする請求項8~10のいずれかに記載の水性液状食品加工品の製造方法。
【請求項12】
前記食品溶液の粘度が、3.5×10mPas以上5.8×105mPas以下であることを特徴とする請求項8~10のいずれかに記載の水性液状食品加工品の製造方法。
【請求項13】
前記食品溶液が増粘剤を含む液であることを特徴とする請求項8~12のいずれかに記載の水性液状食品加工品の製造方法。
【請求項14】
アルギン酸カルシウム被膜内に水性液状食品を内包したカプセルであることを特徴とする水性液状食品加工品。
【請求項15】
前記アルギン酸カルシウム被膜がキトサンを含むことを特徴とする請求項14に記載の水性液状食品加工品。
【請求項16】
請求項14に記載の水性液状食品加工品を食用皮で包むことを特徴とする調理品の製造方法。
【請求項17】
請求項14に記載の水性液状食品加工品を、単独又は固形食品とともに内包し、食用皮で包んであることを特徴とする調理品。
【請求項18】
請求項16又は請求項17に記載の調理品をさらに茹で又は蒸し又は焼いたものであることを特徴とする調理品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、醤油加工品及びその製造方法に関する。さらに、醤油加工品のみならず、酢やコーヒーなどの水性液状食品を加工して得られる水性液状食品の加工品と、その製造方法、その水性液状食品の加工品を利用した調理品とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、醤油加工品として、赤色着色料を利用した桃色調味料、マグロなどの魚醤を利用した魚醤油、そして液体のみならずシート化あるいは粉末化した醤油調味料が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6721994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された桃色調味料や魚醤等の出現は、醤油加工品が使用される料理の幅を拡げることに繋がった。
【0005】
しかし、より一層の需要を喚起するには、醤油加工品として今までとは異なるインパクトを与えることが望ましい。
【0006】
したがって、本発明の第1の目的は、上記した課題を解決し、見た目や食感のインパクトがある醤油加工品及びその製造方法を提供することにある。
【0007】
さらに、醤油以外の水性液状食品においても、より一層の需要を喚起するには、今までとは異なるインパクトを与えることが望ましい。
【0008】
したがって、本発明の第2の目的は、上記した課題を解決し、見た目や食感のインパクトがある水性液状食品の加工品及びその製造方法を提供することにある。
【0009】
また、醤油をはじめとする液状食品は、餃子などの調理品で別途容器に入れる必要があり、このような調理品は、お弁当に入れるときやパーティーで提供する際に不便であるという問題があった。かかる問題を回避するために液状食品を調理品の中に包含させようとしても、餃子の皮の外に染み出すなど、包含しにくいという問題があった。また、液状のままでは、調理品に付けすぎて過剰摂取し健康によくないという問題があった。さらに、より一層の需要を喚起するには、今までとは異なるインパクトを与えることが望ましい。
【0010】
したがって、本発明の第3の目的は、上記した課題を解決し、利便性が高く、見た目や食感のインパクトがある水性液状食品の加工品の調理品及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明者らは、上記第1の目的を達成するため、人工いくらの製法に用いられるオリフィス法によるカプセル化を検討した。オリフィス法は、内包したい物質(芯物質)とポリマーとを混和し、ポリマーと反応してゲル化を起こす硬化液中に、ポリマーと混和した芯物質を滴下する方法で、かかる方法により、液滴は表面張力で丸くなりながら、その表面が急速にゲル化され、カプセル化するというものである。しかし、従来のオリフィス法を応用しても、醤油液が内包されずカプセル化できないという問題点があることが判明した。そこで、試行錯誤して、ポリマーや硬化液濃度を最大化する工夫をしたが、カプセルはできるが、すぐに離水し醤油液が漏れ出るという問題点が生じることが分かった。そこで、本願発明者らは、発想を転換し、さらに試行錯誤して、本発明を完成したものである。
【0012】
さらに、本願発明者らは、上記第2の目的を達成するため、上記試行錯誤の結果として得られた知見に基づいて、醤油液にとどまらず、水性液状食品全般についても、上述した発想を適用しうるものであるという確証を得て、さらなる試行錯誤のうえ、水性液状食品全般を対象とした加工品とその製造方法の発明として、本発明を完成するに至った。
【0013】
また、本願発明者らは、上記第3の目的を達成するため、かかる加工品の利用について、上記知見に基づいて、なお一層研究を推し進めた結果、さらに、水性液状食品の加工品を利用した調理品とその製造方法の発明として、本発明を完成するに至った。
【0014】
本発明の第1の態様は、上記第1の目的を達成するため、カルシウム塩と醤油液とを含む醤油溶液を、アルギン酸ナトリウム水溶液中に滴下して、カプセルを形成する滴下ステップと、
前記カプセルを、水洗いする水洗ステップと、
その後、前記カプセルを、乳酸を含むキトサン水溶液中に入れるキトサン添加ステップと、
を含むことを特徴とする醤油加工品の製造方法を提供する。本願において、原料とする「醤油液」には、特に断らない限り、濃口(こいくち)醤油、薄口(うすくち(淡口))醤油、溜(たまり)醤油、再仕込み醤油、白醤油、また、これらに添加物や加工を加えた液状の醤油調味料・醤油加工品を含むものとし、例えば、特許文献1に記載された桃色調味料や魚醤、だししょうゆ等を含むものとする。また、本願において、カプセル化とは、液状等の内包物を被膜で覆って固形化すること、カプセルとは、内包物が被膜内に覆われた状態のものを指す。
【0015】
本発明の第1の態様によれば、カプセル状の形状を有し内部の醤油液の色が透けて見える醤油加工品を得ることができ、液状、粉末、シート状の醤油加工品とは異なる見た目や食感を有し、見た目や食感のインパクトがある醤油加工品を製造することができる。また、醤油液が内包され、また、内包された醤油液がしみ出してすぐに離水してしまうことを防止できるので、醤油液のカプセル化を実現できる。アルギン酸により陰イオンに付帯している状態から陽イオン電荷をもつキトサン水溶液で処理を行うことにより、膜が強化された醤油液カプセルの醤油加工品ができる。
【0016】
前記キトサン添加ステップの後に、
前記カプセルを水洗いして、ペクチン溶液中に入れて、その後、水洗いして、アルギン酸ナトリウム水溶液中に入れるキトサン再添加前処理ステップと、
その後、前記カプセルを、水洗いして、乳酸を含むキトサン水溶液中に入れるキトサン再添加ステップと、
を、1又は複数回繰り返すことが好ましい。さらに被膜の厚みが増し、よりプチッとした食感が強い醤油液カプセルの醤油加工品を実現できる。
【0017】
キトサン再添加ステップを含む場合は前記キトサン再添加ステップの後、キトサン再添加ステップを含まない場合は前記キトサン添加ステップの後、さらに、前記カプセルを、水洗いして、ゼラチン水溶液中に入れるコラーゲン添加ステップを含むことが好ましい。カプセルにコラーゲン被膜を形成することができ、カプセル同士が重なっても結着しない。
【0018】
前記アルギン酸ナトリウム水溶液が、pH8以上に調整してあることが好ましい。被膜の破断強度が向上し脆さが低減された醤油液カプセルの醤油加工品を実現できる。
【0019】
前記アルギン酸ナトリウム水溶液が、エタノールを添加してあることが好ましい。歩留まりが良くなる。キトサン添加ステップとの組み合わせにより、被膜の破断強度が向上し脆さが低減される。
【0020】
前記醤油液が増粘剤を含む液であり、
前記滴下ステップにおける前記アルギン酸ナトリウム水溶液中のアルギン酸ナトリウムの濃度が0.5~1wt%であり、
前記キトサン水溶液中のキトサンの濃度が0.1~0.5wt%であることが好ましい。真球度が高いカプセルを形成でき、またカプセルが安定化する。味の面では渋みが生じず、作業性の面では作製に過度な手間が生じにくい。
【0021】
本発明の第2の態様は、上記第1の目的を達成するため、キトサンを含むアルギン酸カルシウム被膜内に醤油液を内包したカプセルであることを特徴とする醤油加工品を提供する。
【0022】
本発明の第2の態様によれば、カプセル状の形状を有し内部の醤油液の色が透けて見え、液状、粉末、シート状の醤油加工品とは異なる見た目や食感を有し、見た目や食感のインパクトがある醤油加工品を実現できる。また、カプセル化してすぐに離水することを防止できる。また、いままでの液体、粉末、シート状の醤油とは異なる使用が可能となり、料理の幅が拡がる。また、離水して醤油液が染み出すことを防止し、且つ、浸透圧差による食品からの離水をも防止することができるので、新しい食感のドレッシングを作ることができる。また、口の中で潰すことにより口内調理を可能とし、新しい風味や食感を得ることができ、新しい食体験を提案できる。また、必要以上の調味料の使用を抑制できるため、減塩に対する効果も期待される。
【0023】
また、前記被膜がさらにペクチンを含むことが好ましい。被膜の厚みが増し、プチッとした食感が強くなる。
【0024】
本発明の第3の態様は、上記第2の目的を達成するため、カルシウム塩と水性液状食品とを含む食品溶液を、アルギン酸ナトリウム水溶液中に滴下して、カプセルを形成する滴下ステップと、
前記カプセルを、水洗いする水洗ステップと、
を含むことを特徴とする水性液状食品加工品の製造方法を提供する。
【0025】
水性液状食品としては、例えば、醤油液、練乳、各種の酢、白だし、炭酸アルコール飲料、レモン果汁、コーヒー、炭酸フルーツ飲料、日本酒、水等を含む。
【0026】
前記水洗ステップの後、前記カプセルを、乳酸を含むキトサン水溶液中に入れるキトサン添加ステップを含むことが好ましい。「プチッ」とした食感を演出し、より食感のインパクトが増加する。
【0027】
前記アルギン酸ナトリウム水溶液が、pH8以上に調整してあり、かつ、エタノールを添加してあることが好ましい。
【0028】
また、前記食品溶液の粘度が、8.6×10mPas以上3.8×10mPas以下であることが好ましい。
【0029】
さらに、前記食品溶液の粘度が、3.5×10mPas以上5.8×105mPas以下であることがより好ましい。
【0030】
また、前記食品溶液が増粘剤を含む液であることが好ましい。増粘剤としては、例えば、ゼラチン、キサンタンガム、グァーガム、カラギーナン、アラビアガム、片栗粉等を含む。
【0031】
本発明の第4の態様は、上記第2の目的を達成するため、アルギン酸カルシウム被膜内に水性液状食品を内包したカプセルであることを特徴とする水性液状食品加工品を提供する。
【0032】
また、前記アルギン酸カルシウム被膜がキトサンを含むことが好ましい。プチッとした好ましい食感が加わる。
【0033】
本発明の第5の態様は、上記第3の目的を達成するため、上述した本発明の第4の態様の水性液状食品加工品を食用皮で包むことを特徴とする調理品の製造方法を提供する。
【0034】
本発明の第6の態様は、上記第3の目的を達成するため、上述した本発明の第4の態様の水性液状食品加工品を、単独又は固形食品とともに内包し、食用皮で包んであることを特徴とする調理品を提供する。
【0035】
本発明の第7の態様は、上記第3の目的を達成するため、上述した本発明の第5又は第6の態様の調理品をさらに茹で又は蒸し又は焼いたものであることを特徴とする調理品を提供する。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、見た目や食感のインパクトがある醤油加工品及びその製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、見た目や食感のインパクトがある水性液状食品加工品及びその製造方法を提供することができる。さらに、本発明によれば、利便性が高く、見た目や食感のインパクトがある調理品及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】滴下ステップのイメージ図である。
図2】キトサン添加の繰り返し処理を示すイメージ図である。
図3】アルギン酸ナトリウム濃度とカプセル形状との関係を示す写真である。
図4】乳酸カルシウム濃度とカプセル形状との関係を示す写真である。
図5】pHとカプセル硬さとの関係を示す特性図である。
図6】エタノール濃度とカプセル硬さ・高さとの関係を示す特性図である。
図7】キトサン濃度とカプセル硬さ・高さとの関係を示す特性図である。
図8】キトサン処理の繰り返し数とカプセル硬さ・高さとの関係を示す特性図である。
図9】官能評価の結果を示す図である。
図10】アルギン酸ナトリウムとエタノールの添加とカプセル形状との関係を示す写真である。
図11】増粘剤とエタノールの添加とカプセル形状との関係を示す写真である。
図12】水性液状食品の種類とカプセル化状態を示す写真である。
図13】アラビアガムを増粘剤とする食用溶液の粘度とカプセル化状態を示す写真である。
図14】片栗粉を増粘剤とする食用溶液の粘度とカプセル化状態を示す写真である。
図15】カラギーナンを増粘剤とする食用溶液の粘度とカプセル化状態を示す写真である。
図16】調理品内のカプセル残存状態及び残存率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明について、実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例0039】
本実施例の醤油加工品及びその製造方法は、以下に示す通りであり、本実施例の醤油加工品の製造方法は、醤油液のカプセル化を実現できた。また、かかる製造方法で作成した製造例で示した醤油加工品は、醤油加工品として新しい使用方法や今までにないインパクトを与えることができた。
【0040】
また、上述した醤油加工品及びその製造方法の実施例に加えて別の実施例を含む本実施例の水性液状食品の加工品及びその製造方法は、以下に示す通りであり、本実施例の水性液状食品加工品の製造方法は、水性液状食品のカプセル化を実現できた。また、かかる製造方法で作成した製造例で示した水性液状食品加工品は、新しい使用方法や今までにないインパクトを与えることができた。
【0041】
また、さらに上述した水性液状食品の加工品及びその製造方法の実施例を利用した本実施例の調理品及びその製造方法は、以下に示す通りであり、本実施例の水性液状食品加工品の製造方法は、上述した水性液状食品加工品の実施例を利用し、カプセル化した水性液状食品を内包した調理品を実現できた。また、かかる製造方法で作成した製造例で示した調理品は、利便性が高く、また今までにないインパクトを与えることができた。
【0042】
{製造方法}
以下、製造工程順に製造方法を説明する。ステップ100とステップ200とは前後を問わず、また同時進行でもよい。ステップ110及びステップ120はステップ100に対する追加ステップであり、ステップ210はステップ200に対する追加ステップである。後述の各製造例で述べるように、ステップ100、200、300、400、500、900の各ステップを含む製造方法によって、カプセル化した醤油加工品を得ることができ、ステップ100、200、300、400、500、600、900の各ステップを含む製造方法によって、より被膜が硬化された醤油液カプセルで、カプセル状の形状を有し内部の醤油液の色が透けて見え、見た目や食感のインパクトがある醤油加工品を得ることができる。ステップ600の後、ステップ900の前に、1又は複数回ステップ800、600を繰り返して含ませる製造方法によって、より被膜が厚くなった醤油液カプセルで、より、見た目や食感のインパクトがある醤油加工品を得ることができる。
【0043】
醤油液以外も含む水性液状食品も同様な手順を用いる。ステップの説明においては、醤油液を水性液状食品と読み替えるものとし、適宜説明を加える。後述の各製造例で示すように、ステップ100、200、300、400、500、900の各ステップを含む製造方法によって、カプセル化した水性液状食品の加工品を得ることができる。粘度の低い水性液状食品については、ステップ200にステップ210を追加して粘度を調整し、また、ステップ100にステップ110とステップ120を追加してアルギン酸ナトリウム液を調整することにより、より適切にカプセル化した水性液状食品の加工品を得ることができる。かかる製造方法によって、カプセル状の形状を有し内部の水性液状食品の色が透けて見え、見た目や食感のインパクトがある水性液状食品加工品を得ることができる。なお、上記醤油液による製造例で示した通り、醤油液以外の水性液状食品でも、ステップ600の後、ステップ900の前に、1又は複数回ステップ800、600を繰り返して含ませる製造方法によって、より被膜が厚くなった水性液状食品カプセルで、プチッと弾けるような食感が向上し、より、見た目や食感のインパクトがある水性液状食品加工品を得ることができる。
【0044】
調理品については、後述の各製造例で述べるように、上述の製造方法で醤油加工品を始めとする水性液状食品加工品を作成し、さらに、ステップ1000を含む製造方法によって、カプセル化した水性液状食品加工品を内包し、利便性が高く、見た目や食感のインパクトがある調理品を得ることができる。
【0045】
(ステップ100:アルギン酸ナトリウム水溶液作成ステップ)
アルギン酸ナトリウム水溶液を作成する。混和すると粘性が出て気泡を含むようになるため、作成したアルギン酸ナトリウム水溶液はすぐに使用せず、目視で気泡が見えなくなるまで静置あるいは冷蔵庫で保冷する。室温静置の場合はおよそ10分程度である。
【0046】
(ステップ110:アルカリ化ステップ)
ステップ100において作成したアルギン酸ナトリウム水溶液のpHをアルカリ性に調整する。調整には、1M炭酸カリウム水溶液を用い、アルギン酸ナトリウム水溶液に添加してよく混ぜる。pHを8以上とすることが好ましい。アルカリ性となるため、カプセルの硬さが向上する。水溶液中でアルギン酸ナトリウムをなるべく多く電離し、膜成分となるアルギン酸イオンを増加させることで、アルギン酸カルシウムの膜形成が促進できると考えられる。アルギン酸ナトリウム水溶液のpHを、電離が促進されるアルカリ性に調整した。
【0047】
炭酸カリウムは、食品添加物の「かん水」の成分である。なお、炭酸カリウムを含む食品用アルカリ化剤ではpH11以上に上げることは困難で、水酸化ナトリウムであればpHをさらに上げることができたが、食品での使用は制限されているため、pH8~11が好ましい。食品添加物として用いられる塩であれば、かん水でなくてもよい。
【0048】
(ステップ120:アルコール添加ステップ)
ステップ100において作成したアルギン酸ナトリウム水溶液にエタノールを添加する。
【0049】
アルギン酸ナトリウムはアルコールに不溶であるが、アルギン酸ナトリウム水溶液にアルコールを添加すると、「ママコ」と呼ばれる不完全な溶解状態にあるアルギン酸ナトリウムが浮き上がり、水面で弾け、その後均一化するという現象が確かめられた。したがって、アルコール添加によりアルギン酸ナトリウム水溶液の「ママコ」が解消され、一様な分散状態となっているものと考えられる。
【0050】
カプセル化する際に、滴下液がポリマー液の表面張力に勝てないと滴下液がポリマー液面で広がる現象が生じてしまい、歩留まりが悪くなることがあるが、アルコール添加によりポリマー液の表面張力が下がることから、カプセル化の歩留まりを向上させることができる。
【0051】
(ステップ200:硬化剤入り醤油溶液作成ステップ)
硬化剤と、醤油液とを混和し、溶解させ、硬化剤入り醤油溶液を作成する。醤油溶液が醤油液カプセルの内包液(芯物質)となる。
【0052】
硬化剤としては、食品に用いられるカルシウム塩を使用した。カルシウム塩としては、例えば、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、グルコン酸カルシウム等が挙げられ、なかでも、食味にほとんど影響を及ぼさない点で乳酸カルシウムが好ましい。
【0053】
原料となる「醤油液」として、濃口醤油、薄口醤油、溜醤油、再仕込み醤油、白醤油、また、これらに添加物や加工を加えた液状の醤油調味料・醤油加工品を使用してもよい。原料となる「醤油液」として特許文献1に記載された桃色調味料の原液を使用した場合、粘性を有するので、そのまま硬化剤と混和する。
【0054】
なお、醤油液だけでなく水性液状食品全般を用いることができ、本ステップによって、硬化剤入り水性液状食品溶液を作成してもよい。原料となる「水性液状食品」として、上述した醤油液のほか、練乳、各種の酢、白だし、炭酸アルコール飲料、レモン果汁、コーヒー、炭酸フルーツ飲料、日本酒、水等が挙げられるが、これに限定されない。練乳を使用した場合、粘性を有するので、そのまま硬化剤と混和する。
【0055】
(ステップ210:増粘剤添加ステップ)
魚醤や生醤油等、粘度が低いものを用いる場合は、予め、例えば、ゼラチンを添加して加熱する、あるいは片栗粉を混和させて沸騰する、アラビアガムやカラギーナンやキサンタンガムを加熱せず、あるいは加熱しながら混和させるなどの、増粘剤添加処理を行って粘性を高めたものを、原料となる「醤油液」とする。かかる処理によって粘性を有する醤油液を作成してからステップ200で硬化剤と混和することが好ましい。粘性をつけて形状保持力を上げることができる。ゼラチンを用いる場合は電子レンジで加熱して完全に溶解させ、ゼラチン水溶液中のゼラチンの濃度(最終濃度)が2.5~10wt%になるようにゼラチンを添加することが好ましい。
【0056】
好ましい増粘剤としては、ゼラチン、キサンタンガム、グァーガム、カラギーナン、アラビアガム、片栗粉が挙げられるが、これに限定されない。ゼラチンでは7.5wt%以上10wt%未満の濃度が好ましく、70℃以上での加熱溶解を行うことが好ましい。5wt%以下ではカプセル形成ができず、10wt%以上では溶解が手間になる。その他、発明者らが実験及び食品添加物についての知見に基づいて考察した結果、キサンタンガムでは濃度は5.0wt%以下が好ましく、0.1~0.2wt%がより好ましく、常温(約22℃)または70℃以上での加熱溶解を行うことが好ましい。グァーガムでは濃度は5.0wt%以下が好ましく、0.9~1.8wt%がより好ましく、常温(約22℃)または70℃以上での加熱溶解を行うことが好ましい。カラギーナンでは濃度は5.0wt%以下が好ましく、0.5~2.0wt%がより好ましく、70℃以上での加熱溶解を行うことが好ましい。アラビアガムでは濃度は15wt%以下が好ましく、8~12wt%がより好ましく、70℃以上での加熱溶解を行うことが好ましい。片栗粉では濃度は10wt%以下が好ましく、3~6wt%がより好ましく、沸騰後数分加熱する加熱溶解を行うことが好ましい。1又は2以上の増粘剤を混合してもよい。
【0057】
なお、醤油液だけでなく水性液状食品全般においても、本ステップによって同様に増粘剤を添加してもよい。上述した好ましい増粘剤とその割合等は魚醤や生醤油等の場合の例であるが、水性液状食品全体ではこれに限定されない。増粘剤として、例えば片栗粉を用いて、水性液状食品(例えば各種の酢、白だし、炭酸アルコール飲料、レモン果汁、コーヒー、炭酸フルーツ飲料、日本酒、水など)に対し、上述の方法で粘度調整して、硬化剤入りの食品溶液を完成させる。増粘剤は加熱融解するものが多く、加熱により水性液状食品が劣化することを防止するため及び水性液状食品に含まれる成分が増粘剤の粘度調整に影響することを防止するため、一部又は全部の水性液状食品を後入れとすることが好ましい。具体的には、ステップ200とステップ210を組み合わせ、まず、水又は水性液状食品に所定の硬化剤を溶解させ、さらに増粘剤を最終濃度の倍になるよう添加して溶解し、その後、水性液状食品を少しずつ加え、均一になるよう混和することが好ましい。
【0058】
発明者らが種々の実験に基づいて考察した結果、増粘剤添加により、カルシウム塩と水性液状食品とを含む食品溶液の粘度は、8.6×10mPas以上3.8×10mPas以下とすることが好ましく、3.5×10mPas以上5.8×105mPas以下とすることがより好ましい。増粘剤としては、醤油液以外の水性液状食品に対しても、ゼラチン、キサンタンガム、グァーガム、カラギーナン、アラビアガム、片栗粉が挙げられるが、これに限定されない。
【0059】
(ステップ300:滴下ステップ)
ステップ200で作成した硬化剤入り醤油溶液(内包液)を、ステップ100で作成したアルギン酸ナトリウム水溶液(外液)中に滴下する。滴下には、スポイト、ピペット等を用い、容量は10~100μL程度で滴下を行う。
【0060】
滴下容量が10μL未満であると液滴が表層で留まり表面硬化が効果的に行われず、100μLより多いと滴下している間に液滴が重量で沈んでしまうため丸型カプセルの形成が難しい。
【0061】
醤油液だけでなく水性液状食品全般でも同様である。上述した好ましい容量等は醤油溶液の場合の例であるが、水性液状食品全体ではこれに限定されない。図1は、滴下ステップのイメージ図である。図1において上から滴下している液は、硬化剤入りの食品溶液(内包液)である。内包液は、ステップ200で作成した食品溶液であり、食品溶液の原料となる水性液状食品の粘度が低い場合は、ステップ200は、追加ステップであるステップ210を加えたステップであることが好ましい。
【0062】
水性液状食品に対し増粘剤によってカプセル形成に最適化した粘度にすることで、上述したステップで調整したアルギン酸ナトリウム水溶液(外液)に滴下したときに、滴下速度を遅くできるので、液が切れるまでの時間、すなわち、球状になるまでの時間が長くなり、したがって、100μL以上、例えば300μL程度の量であってもカプセル形成が可能となった。
【0063】
内包液の比重が軽くて外液の中に沈まない場合は、外液を撹拌して内包液の粒を沈める。
【0064】
なお、人工いくらの製法として知られている液中硬化被膜法(オリフィス法)では、アルギン酸ナトリウムとカプセルに内包したい液を混和し、かかる液を、カルシウムを含む溶液に滴下して、カプセル、すなわち内包したい物を膜で覆った状態の物質、を形成するが、かかる方法では、安定して醤油液を内包しておけるカプセルは形成できなかった。
【0065】
(ステップ400:カプセル取り出しステップ)
1~5分程度室温で静置し、ステップ300で形成されたカプセルをストレイナーや玉掬いなどで取り出す。
【0066】
(ステップ500:水洗ステップ)
ステップ400で取り出したカプセルを水中に落とし、表面に残るポリマー液を除去する水洗を行う。
【0067】
水洗が不完全であるとカプセル同士が結合し、一方で水洗回数を重ねると味が薄くなる傾向があるので、水洗はカプセルに対して大量の水により1回で行うことが好ましい。
【0068】
(ステップ600:キトサン添加ステップ)
ステップ500で水洗したカプセルを、乳酸を含むキトサン水溶液に入れて、室温で30秒程度、時々撹拌しながら静置する。その後、ステップ500と同様に1回水洗する。キトサン水溶液中の乳酸の濃度は、0.5wt%とした。
【0069】
キトサンは乳酸を含む水に溶解して、水溶液中で陽イオン電荷を持ち、陽イオン性被膜剤としての役割を果たす。キトサンの濃度を2wt%まで高くしても作成可能であるが、独特の渋みがあることと水溶液作成が手間であることから、1wt%キトサン水溶液を作成し、使用時に0.5wt%に希釈してかかるカプセル化処理に使用することが好ましい。
【0070】
なお、ステップ600は、後述するステップ800の後で再度ステップ600を行う際は、キトサン再添加ステップという。
【0071】
(ステップ700:コラーゲン添加ステップ)
ステップ600で水洗したカプセルを、1wt%ゼラチン水溶液に入れて、室温で30秒程度、時々撹拌しながら静置する。その後、ステップ500と同様に1回水洗する。
【0072】
1wt%ゼラチン水溶液は、水に粉ゼラチンを入れ、電子レンジで加熱し溶解して使用する。1wt%は冷えてもゼリー化しない濃度であるが、濃度を高くしても食感に変化はないので、ゼラチン水溶液の濃度はこれに限定されない。
【0073】
(ステップ800:キトサン再添加前処理ステップ)
ステップ800は、まず、ステップ600で水洗したカプセルを、0.5wt%ペクチン水溶液に入れて、室温で30秒程度、時々撹拌しながら静置する。その後、ステップ500と同様に1回水洗し、さらにその後、0.1wt%アルギン酸ナトリウム水溶液に入れて、室温で30秒程度、時々撹拌しながら静置する。その後、ステップ500と同様に1回水洗する。
【0074】
ステップ800は、2回以上キトサン添加を行う場合に、1回毎に行う処理である。キトサン添加の後、アルギン酸ナトリウム水溶液による処理を行う前に、ペクチン水溶液による処理を行うことで、カプセル同士が結着することを防止できる。繰り返しキトサンを添加することで、膜強度を調整でき、2回の繰り返しで膜の状態は、より人工イクラに近づく。陽イオン性被膜剤であるキトサン添加の後、陰イオン性被膜剤であるアルギン酸ナトリウム水溶液による処理を行うのみではカプセルの結着が生じ団子のようになった。
【0075】
(ステップ900:保存ステップ)
ステップ500又はステップ700の処理を行ったカプセル、又は、ステップ800の後にステップ600又はステップ700の処理を行ったカプセルを容器に入れて乾燥しない程度の水を滴下し、使用時まで保存する。大量の水で保存すると、カプセルが水和するためか厚ぼったくなり味も薄くなるので、容器いっぱいにカプセルを敷き詰めてひたひたになる程度までの水を入れることが好ましい。
【0076】
(ステップ1000:調理ステップ)
ステップ500、ステップ600、ステップ700、又はステップ900の処理を行ったカプセルである水性液状食品加工品を餃子の皮やパイの皮などの食用皮に包み、餃子の形やパイの形に成形しながら、内包した中身がこぼれ出ないように密閉して調理品を製造する。
【0077】
食用皮に包む際、上述した水性液状食品加工品を、ミンチや餃子の餡などの固形食品やその他の食品とともに包んでもよい。
【0078】
かかる調理品は、常温又は冷蔵にて保存することができる。生のままで食することができる食用皮の場合は、そのまま食することができる。
【0079】
さらに、上記密閉後、加熱調理してもよい。加熱調理方法としては、茹でる、蒸す、焼くといった方法が好ましい。
【0080】
{製造例}
次に、上記ステップの組み合わせが異なる幾つかの製造例を示す。
【0081】
[製造例1]
製造例1は、ステップ100、200、300、400、500、900によって製造した。製造例1では、膜形成ができ、カプセル化した醤油加工品を得ることができた。カプセル状の形状を有し内部の醤油液の色が透けて見える醤油加工品を得ることができ、液状、粉末、シート状の醤油加工品とは異なる見た目や食感を有することができた。しかし、物理的に弱く、金属製のスプーン、箸等で扱うと、容易にカプセルが破壊された。製品として取り扱うには、よりカプセルを硬化して取り扱いやすくすることが望ましい。ステップ300の段階で、カプセルが沈まず表面で広がってしまう現象が生じやすいという問題がある。
【0082】
製造例1~12では、カプセルの容量は30μLとなるように調整した。製造例1~8では、ステップ100においてアルギン酸ナトリウム水溶液中のアルギン酸ナトリウムの濃度(最終濃度)が0.5wt%であるアルギン酸ナトリウム水溶液を用いた。また、製造例1~8では、醤油液として、特許第6721994号公報記載の桃色調味料の原液を用いた。製造例1~13では、ステップ200において醤油溶液中の乳酸カルシウムの濃度(最終濃度)が2wt%となるよう調整した。
【0083】
[製造例2]
製造例2は、ステップ100、110、200、300、400、500、900によって製造した。ステップ110で、アルギン酸ナトリウム水溶液40mLに対して1M炭酸カリウム水溶液50μLを添加する。製造例2では、pHが9~10となるように調整した。
【0084】
製造例2では、膜が強化され、スプーンで掬う、箸でつまむ等の物理的衝撃を与えてもカプセルが壊れず、取り扱いやすさが向上した。ゼリーのようなつるっとした食感で、製造例1の食感とほとんど同じであった。組み合わせたい食品に適するようにより硬い食感、例えば人工イクラのようなカプセルを破る食感、を演出したい場合は、さらに硬い膜とすることが望ましい。カプセルを平面に載せると、製造例1ではカプセルが平たく広がったが、製造例2ではある程度の丸さを保っていた。
【0085】
製造例2では、被膜の破断強度が向上し脆さが低減された醤油液カプセルの醤油加工品を実現できた。
【0086】
[製造例3]
製造例3は、ステップ100、120、200、300、400、500、900によって製造した。ステップ120で、アルギン酸ナトリウム水溶液中のエタノールの濃度(最終濃度)が5v%となるようにエタノールを添加した。製造例3では、製造例2と同様に膜が強化された。表面張力が低下するせいか、ステップ300の段階で、カプセルが沈まず表面で広がってしまう現象が生じにくくなり、歩留まりが格段に良くなった。アルコール添加により表面張力が低下した効果と考えられる。食感や取り扱いやすさは製造例1と同じである。
【0087】
製造例3では、膜が強化された醤油液カプセルの醤油加工品が得られ、歩留まりが良くなった。
【0088】
[製造例4]
製造例4は、ステップ100、200、300、400、500、600、700、900によって製造した。製造例4~8では、ステップ600において、1wt%キトサン水溶液を作成し、使用時に0.5wt%に希釈し、乳酸を加えて、0.5wt%乳酸を含む0.5wt%キトサン水溶液を作成して使用した。製造例4~8では、分子量が5万程度のキトサンを使用した。キトサンとしては最小程度の分子量であるが、分子量を大きくしても膜厚は変化するが膜硬化には影響を与えないので、キトサンの分子量はこれに限定されない。
【0089】
製造例4では、プツンとした食感が出て、金属製スプーンや箸でかき混ぜてもカプセルがほとんど破けないような強さが出た。また、コラーゲン添加の効果により、ツヤが出て、カプセル同士が重なっても球形をある程度保てる等の見目の部分も改善された。人工イクラ程の強度はなかった。
【0090】
製造例4では、カプセル状の形状を有し内部の醤油液の色が透けて見える醤油加工品を得ることができ、液状、粉末、シート状の醤油加工品とは異なる見た目や食感を有し、見た目や食感のインパクトがある醤油液カプセルの醤油加工品を得ることができた。また、醤油液が内包されかつカプセル化してすぐに離水することを防止できるので、醤油液のカプセル化を実現できた。アルギン酸により陰イオンに付帯している状態から陽イオン電荷をもつキトサン水溶液で処理を行うことにより膜が強化したカプセル化を実現できた。また、カプセル同士の結着を防止できた。カプセルにコラーゲン被膜を形成することができ、カプセル同士が重なっても結着しなかった。したがって、醤油加工品として、いままでの液体、フィルム、粉末の醤油とは異なる使用が可能となり、料理の幅が拡がる。また、内包された醤油液がしみ出すことを防止し、且つ、浸透圧差による食品からの離水をも防止することができるので、新しい食感のドレッシングを作ることができる。また、口の中で潰すことにより口内調理を可能とし、新しい風味や食感を得ることができ、新しい食体験を提案できる。
【0091】
製造例4は、キトサンを含むアルギン酸カルシウム被膜内に醤油液を内包したカプセルである醤油加工品である。アルギン酸カルシウム被膜がキトサン被膜で覆われて、被膜が強化されていると考えられる。
【0092】
[製造例5]
製造例5は、ステップ100、200、300、400、500、600、800、600、800、600、700、900によって製造した。図2は、キトサン添加の繰り返し処理を示すイメージ図である。ステップ600(キトサン添加ステップ)は、陽イオンを持つキトサン溶液処理で、ステップ800(キトサン再添加前処理ステップ)は、陰イオン荷電のペクチン溶液処理と陰イオン荷電のアルギン酸溶液処理である。キトサン添加は合計3回繰り返した。なお、ステップ700(コラーゲン添加ステップ)は省略しても良い。
【0093】
なお、ステップ900の前が、ステップ800におけるペクチン水溶液による処理、又はアルギン酸ナトリウム水溶液による処理であると、保存中にカプセル同士が結着してしまう。
【0094】
製造例5では、ステップ800を挟んでステップ600を2回以上繰り返すことで透明被膜が目視できる程、カプセル被膜を厚くすることができた。
【0095】
キトサン被膜により水溶液中のカプセルは陽イオン電荷を持つと推測される。そこに、陰イオン性被膜剤であるペクチン水溶液で処理し、陰イオン性被膜剤であるアルギン酸水溶液で処理して、またキトサン被膜を行うことで膜が強化されると考えられる。
【0096】
水洗いの作業が多いため、味は薄くなるが、乾燥防止のためにステップ900において滴下するカプセル保存液を工夫することで、味を戻すことは可能と考えられる。例えば、カプセル保存液として、各種の醤油液を水の代わりに滴下する方法が考えられる。通常アルギン酸カプセル膜は高ナトリウムには弱いが、キトサン被膜やアルカリ化、あるいはアルコール添加といった膜強化により、ナトリウム強さが得られていることから、ナトリウムの多い保存液が適用できる。
【0097】
製造例5では、ステップ800で使用する0.5wt%ペクチン水溶液はリンゴ由来の粉末のペクチンを水に溶かして作成した。増粘剤としても用いられるため、食品への被膜が可能であると予想して使用した。
【0098】
なお、ステップ800で、0.1wt%アルギン酸ナトリウム水溶液の代わりに0.5wt%アルギン酸ナトリウム水溶液を用いても繰り返し被膜は可能であった。ただし、粘性が高く、濾過時の取り扱いがしにくいこと、繰り返し被膜の回数を増やすと、段々カプセル同士が決着しやすくなった。
【0099】
製造例5では、カプセル状の形状を有し内部の醤油液の色が透けて見える醤油加工品を得ることができ、液状、粉末、シート状の醤油加工品とは異なる見た目や食感を有し、見た目や食感のインパクトがある醤油加工品で、さらに被膜の厚みが増し、よりプチッとした食感が強い醤油液カプセルの醤油加工品を実現できた。
【0100】
製造例5は、キトサンとペクチンとを含むアルギン酸カルシウム被膜内に醤油液を内包したカプセルである醤油加工品である。アルギン酸カルシウム被膜がキトサン被膜で覆われて被膜が強化され、さらにペクチン水溶液による処理とアルギン酸ナトリウムによる処理を挟んで複数回キトサン添加を行うことにより、被膜がさらに強化された。製造例5では、醤油溶液を覆う複数層の被膜が形成されており、被膜を形成する成分としてペクチンをも含むと考えられる。
【0101】
[製造例6]
製造例6は、ステップ100、110、200、300、400、500、600、700、900によって製造した。ステップ110でアルギン酸ナトリウム水溶液40mLに対して1M炭酸カリウム水溶液50μLを添加した。製造例6では、イクラ程の膜強度はないが、製造例2に比べて強度が高まり、取扱中に潰れない。また、プツンとした食感があり、製造例2よりも硬い食感を演出できる。
【0102】
製造例6では、カプセル状の形状を有し内部の醤油液の色が透けて見え、見た目や食感のインパクトがある醤油加工品で、被膜の破断強度が向上し脆さが低減された醤油液カプセルの醤油加工品を実現できた。
【0103】
[製造例7]
製造例7は、ステップ100、120、200、300、400、500、600、700、900によって製造した。ステップ120でアルギン酸ナトリウム水溶液に対し、最終濃度が5v%となるようにエタノールを添加した。
【0104】
製造例7では、カプセル状の形状を有し内部の醤油液の色が透けて見え、見た目や食感のインパクトがある醤油加工品で、被膜の破断強度が向上し脆さが低減された醤油液カプセルの醤油加工品を実現できた。また、製造例4よりも歩留まりが良くなった。
[製造例8]
製造例8は、ステップ100、120、200、300、400、500、600、800、600、800、600、700、900によって製造した。ステップ120でアルギン酸ナトリウム水溶液に対し、最終濃度が5v%となるようにエタノールを添加した。製造例5で得られたキトサン添加の繰り返しによる効果は製造例8でも確認された。
【0105】
製造例8では、カプセル状の形状を有し内部の醤油液の色が透けて見え、見た目や食感のインパクトがあるカプセルを得ることができた。製造例7よりも、さらに厚みが増し、よりプチッとした食感が強くなった醤油液カプセルの醤油加工品を実現できた。また、製造例5よりも歩留まりが良くなった。
【0106】
[製造例9]
製造例9は、ステップ100、200、300、400、500、900によって製造した。製造例9では、ステップ100において1wt%アルギン酸ナトリウム水溶液を用いた。製造例9~13では、醤油液として、薄口醤油(ヤマサ醤油株式会社製)の原液を使用した。芯物質をポリマーに滴下すると、硬化液中に射出した液体の形状(底に落ちていく様そのままの形状)、すなわちしっぽができる状態で膜硬化が起こった。製造例9ではカプセル化が困難であった。
【0107】
[製造例10]
製造例10は、ステップ100、120、210、200、300、400、500、900によって製造した。ステップ120で、アルギン酸ナトリウム水溶液中のエタノールの濃度(最終濃度)が5v%となるよう、アルギン酸ナトリウム水溶液にエタノールを添加した。製造例9より丸に近いカプセルを得ることができた。これは、ポリマー液の表面張力が下がったためと推測される。しかし、球形とは言えなかった。
【0108】
[製造例11]
製造例11は、ステップ100、120、210、200、300、400、500、900によって製造した。ステップ120で、アルギン酸ナトリウム水溶液中のエタノールの濃度(最終濃度)が5v%となるようにエタノールを添加した。
【0109】
製造例11、12では、ステップ100でアルギン酸ナトリウム水溶液のアルギン酸ナトリウム濃度は0.5wt%で、ステップ210では、増粘剤として10wt%ゼラチン水溶液を使用した。常温では固まらないがとろみがついている程度の濃度である。ゼラチンの添加によりカプセル化が可能となった。
【0110】
製造例11では、カプセル状の形状を有し内部の醤油液の色が透けて見える醤油加工品を得ることができた。カプセルを丸型に形成でき、またカプセルが安定化し、渋みが生じず、作成に過度な手間が生じにくい。
【0111】
製造例11におけるステップ500とステップ900の間に、ステップ600、700を追加することで、あるいは、ステップ600、800、600、800、600、700を追加することで、さらに食感の変更が可能と考えられる。
【0112】
[製造例12]
製造例12は、ステップ100、210、200、300、400、500、900によって製造した。製造例12では、ステップ210において、製造例11と同様に10wt%ゼラチン水溶液を使用した。他のステップは製造例9と同様である。
【0113】
内包物が薄口醤油で、外液にエタノール添加を行わない製造例12では、被膜はゼリー状となったが、金属製スプーンですくうことが可能な程度に強度があった。
【0114】
[製造例13]
製造例13は、ステップ100、110、210、200、300、400、500、900によって製造した。製造例13では、カプセルの容量は40μLとなるように調整し、ステップ100において0.5wt%アルギン酸ナトリウム水溶液を用い、ステップ110で、アルギン酸ナトリウム水溶液40mLに対して1M炭酸カリウム水溶液50μLを添加してpH10に調整した。製造例13では、ステップ210において、増粘剤として、キサンタンガムが0.01wt%とグァーガムが0.09wt%となるように添加した。その他の点は製造例12と同様である。粒の形状は球状というより少し長細くなった。食感は、多少膜は厚いものの中から醤油の液体が出てくる感じであった。
【0115】
[製造例14]
製造例14、15は、ステップ100、110、120、200、300、400、500、900によって製造した。製造例14は、水性液状食品として、特許第6721994号公報記載の桃色調味料の原液を用いた。製造例14では、ステップ300で滴下する際、カルシウム塩と水性液状食品とを含む食品溶液の粘度は2.2×10mPasであった。ステップ120でアルギン酸ナトリウム水溶液にエタノールを添加したことで、カプセル化するのに要する増粘剤の濃度が下がり、カプセル化しやすくなる効果を生じた。
【0116】
製造例14、17、18、22~49は、カプセルの容量が30μLとなるよう調整した。また、製造例14~49では、ステップ100においてアルギン酸ナトリウム水溶液中のアルギン酸ナトリウムの濃度(最終濃度)が0.5wt%であるアルギン酸ナトリウム水溶液を用いた。製造例14~49では、硬化剤として乳酸カルシウムを用いた。
【0117】
製造例14~21、36~49では、ステップ110で、アルギン酸ナトリウム水溶液40mLに対して1M炭酸カリウム水溶液50μLを添加し、pHが9~10となるように調整した。また、製造例14~49では、ステップ120で、アルギン酸ナトリウム水溶液中のエタノールの濃度(最終濃度)が5v%となるようにエタノール(99.5%)を添加した。製造例14によれば、カプセル化を実現でき、見た目や食感のインパクトがある水性液状加工品を得られた。
【0118】
[製造例15]
製造例15は、水性液状食品として練乳を用いた。製造例15、19~21は、カプセルの容量が300μLとなるよう調整した。製造例15では、食品溶液の粘度は2.2×103mPasであった。製造例15によれば、カプセル化を実現でき、見た目や食感のインパクトがある水性液状加工品を得られた。
【0119】
[製造例16]
製造例16~21、36~49は、ステップ100、110、120、200、210、300、400、500、900によって製造した。製造例16は、水性液状食品として、製造例9と同じ薄口醤油の原液を用いた。
【0120】
製造例16~21では、ステップ200とステップ210を組み合わせ、まず、50mLの水又は水性液状食品に乳酸カルシウム2gを溶解させ、さらに増粘剤を最終濃度の倍になるよう添加して溶解し、その後、50mLの水性液状食品を少しずつ加え、均一になるよう混和した。この2段階で、食用溶液中の乳酸カルシウムの濃度(最終濃度)が2wt%となるよう調整した。製造例14~47のうち、水性液状食品が濃縮品(健康酢など)であるものや、そのまま賞味することに適さない食品(醤油、酢など)であるものは、乳酸カルシウムを溶解させる液の中の水の割合を多くして賞味を調整し、それでも濃い場合は味を確認しながら水の分量を増やし、その分、後で加える水性液状食品の量を減らして調整した。
【0121】
製造例16~21では、ステップ210で、増粘剤として、片栗粉を用いた。いずれも片栗粉の濃度は2~4wt%とした。製造例16~21によれば、カプセル化を実現でき、見た目や食感のインパクトがある水性液状加工品を得られた。
【0122】
[製造例17]
製造例17は、水性液状食品として酢を用いた。
【0123】
[製造例18]
製造例18は、水性液状食品として白だしを用いた。
【0124】
[製造例19]
製造例19は、水性液状食品として健康酢を用いた。
【0125】
[製造例20]
製造例20は、水性液状食品としてレモン果汁を用いた。
【0126】
[製造例21]
製造例21は、水性液状食品としてコーヒーを用いた。なお、後述するオリフィス法ではコーヒーでカプセル化しようとしても時間経過とともに中までポリマー化して単なるゼリーとなってしまい、カプセル化できなかった。
【0127】
[製造例22]
製造例22~35は、水性液状食品として水を用い、ステップ100、120、200、210、300、400、500、900によって製造した。製造例22~35によれば、カプセル化を実現でき、見た目や食感のインパクトがある水性液状加工品を得られた。製造例22~26は、増粘剤としてアラビアガム(アラビアセネガル)を用いた。製造例22~26では、ステップ200とステップ210を組み合わせ、まず、50mLの水に乳酸カルシウム2gを溶解させ、さらにアラビアガムを最終濃度の倍になるよう添加して溶解し、その後、50mLの水を少しずつ加え、均一になるよう混和した。この2段階で、食用溶液中の乳酸カルシウムの濃度(最終濃度)が2wt%となるよう調整した。顆粒が目視観察できなくなったことを確認し、カプセル化と粘度測定を行った。
【0128】
製造例22では、ステップ300で滴下する際、カルシウム塩と水性液状食品とを含む食品溶液の粘度が3.5×10mPasになるように増粘剤の濃度を調整した。
【0129】
なお、製造例22~35において、粘度は以下のように測定した値である。
【0130】
粘度の測定には、レオメータ(Anton Paar社製:MCR302)で、直径12mmのコーン型の治具を使用した。測定条件として、25℃、剪断速度を0.5~0.001(1/s)で変化させて粘度を測定し、縦軸が粘度、横軸が剪断速度のグラフを作成し、線形関数でフィッティングして剪断速度0.01(1/s)における粘度の値をその物質の粘度の値とした。
【0131】
一部の製造例については、剪断速度を0.01(1/s)で固定して30分間測定を行い、粘度が安定してからのデータ値を平均してその物質の粘度とした。上記の測定方法との差異は、粘度の結果に影響せず、上記の測定方法でも同程度のオーダーであることを確認した。原理的には、縦軸を粘度、横軸を剪断速度としたグラフでは、剪断速度が十分に小さいときに一定の粘度値を示し、それが本来の意味でのその物質の粘度である。しかし、粘度が一定になるまで剪断速度を落として測定しようとすると、1サンプルにつき半日から1日という時間がかかるため、本発明においては、剪断速度0.01(1/s)のときの粘度の値をもって、その物質の粘度とした。なお、0.5wt%アルギン酸ナトリウム水溶液の粘度は5.0×10mPasで、これにエタノールの濃度(最終濃度)が5v%となるようにエタノール(99.5%)を添加した液の粘度は6.8×10mPasとなった。
【0132】
[製造例23]
製造例23では食品溶液の粘度が7.8×10mPasになるように増粘剤の濃度を調整した。
【0133】
[製造例24]
製造例24では食品溶液の粘度が7.8×10mPas以上2.7×10mPas以下になるように増粘剤の濃度を調整した。
【0134】
[製造例25]
製造例25では食品溶液の粘度が2.7×10mPasになるように増粘剤の濃度を調整した。
【0135】
[製造例26]
製造例26では食品溶液の粘度が3.8×10mPasになるように増粘剤の濃度を調整した。
【0136】
[製造例27]
製造例27~31は、増粘剤として片栗粉を用いた。
【0137】
製造例27~31では、ステップ200とステップ210を組み合わせ、まず、50mLの水に乳酸カルシウム2gを溶解させ、さらに片栗粉を最終濃度の倍になるよう添加して溶解し、その後、50mLの水性液状食品を少しずつ加え、均一になるよう混和した。この2段階で、食用溶液中の乳酸カルシウムの濃度(最終濃度)が2wt%となるよう調整した。作成した液30gをビーカーにとり、ホットスターラーを用いて、650rpm、165℃で加熱撹拌した。このとき、容器回りをアルミホイルで囲んで熱を閉じ込め、上部にラップフィルムを貼って蒸散を防いだ。容器の下から泡が上がり始めたら沸騰し始めたとして、そこから約1分加熱撹拌し、その後室温(約25℃)で静置した。このとき、アルミホイルは取り外し、ラップフィルムは取り外さずに、翌日になって室温になっていることを確認するまで静置し、カプセル化と粘度測定を行った。なお、加熱による蒸散に伴う濃度変化は0.1%以下なので、測定結果には大きな影響を与えない。
【0138】
製造例27では食品溶液の粘度が8.4×10mPasになるように増粘剤の濃度を調整した。
【0139】
[製造例28]
製造例28では食品溶液の粘度が2.1×10mPasになるように増粘剤の濃度を調整した。
【0140】
[製造例29]
製造例29では食品溶液の粘度が2.1×10mPas以上5.1×10mPas以下になるように増粘剤の濃度を調整した。
【0141】
[製造例30]
製造例30では食品溶液の粘度が5.1×10mPasになるように増粘剤の濃度を調整した。
【0142】
[製造例31]
製造例31では食品溶液の粘度が5.8×10mPasになるように増粘剤の濃度を調整した。
【0143】
[製造例32]
製造例32~35は、増粘剤としてカラギーナンを用いた。
【0144】
製造例32~35では、ステップ200とステップ210を組み合わせ、まず、50mLの水に乳酸カルシウム2gを溶解させ、さらに片栗粉を最終濃度の倍になるよう添加して溶解し、その後、50mLの水性液状食品を少しずつ加え、均一になるよう混和した。この2段階で、食用溶液中の乳酸カルシウムの濃度(最終濃度)が2wt%となるよう調整した。作成した液30gをビーカーにとり、70℃の温水槽で10分加熱した。このとき、上部にラップフィルムを貼って蒸散を防いだ。加熱後、温水槽から取り出して撹拌し、その後、室温(約25℃)で翌日まで静置し、カプセル化と粘度測定を行った。
【0145】
製造例32では食品溶液の粘度が8.6×10mPasになるように増粘剤の濃度を調整した。
【0146】
[製造例33]
製造例33では食品溶液の粘度が8.6×10mPas以上9.7×10mPas以下になるように増粘剤の濃度を調整した。
【0147】
[製造例34]
製造例34では食品溶液の粘度が9.7×10mPasになるように増粘剤の濃度を調整した。
【0148】
[製造例35]
製造例35では食品溶液の粘度が6.1×10mPasになるように増粘剤の濃度を調整した。
【0149】
[製造例36]
製造例36~49は、製造例16を水性液状加工品として用いて、さらに、ステップ1000を経て製造した。製造例16の代わりに、製造例1~15、17~35を用いてもよい。製造例36~41は、30μLのカプセルである製造例16を10個、食用皮の例である餃子の皮に包むことで、カプセルを内包させて得られる調理品である。製造例36は、包んだ状態までの調理品である。製造例36~49によれば、見た目や食感のインパクトがある調理品を得られた。また、製造例36~49によれば、口の中で潰すことにより口内調理を可能とし、新しい風味や食感を得ることができ、新しい食体験を提案できる。
【0150】
製造例36は、皮の中に味がついたカプセルが入っているので、別途調味液を用意する必要が無く、利便性が高く、料理の幅が広がる。また、後述するように、製造例36の調理品は、茹でたり蒸したり焼いたり揚げたりといった加熱調理してもカプセル残存率が高いので、噛むとプチプチとした食感が皮の中から生じ、また、水性液状食品を、皿に載った液体ではなく、餃子型等の形状で提供することを実現できる。なお、餃子の皮の代わりに生で食することができる食用皮(例えば生春巻きの皮やクレープの皮等)を使用すれば、そのまま食することもできる。
【0151】
[製造例37]
製造例37は、製造例36を茹でた調理品である。より詳細には、沸騰した湯で5分加熱して得られた調理品である。
【0152】
[製造例38]
製造例38は、製造例36を蒸した調理品である。より詳細には、蒸し器でお湯が沸騰した状態で5分加熱して得られた調理品である。
【0153】
[製造例39]
製造例39は、製造例36を焼いた調理品である。より詳細には、220℃に熱したフライパンで3分加熱し、さらに蒸して得られた調理品である。
【0154】
[製造例40]
製造例40は、製造例36を揚げた調理品である。より詳細には、180℃に熱したサラダ油の中で2分30秒加熱して得られた調理品である。
【0155】
[製造例41]
製造例41は、製造例36を電磁調理した調理品である。より詳細には、650Wの電子レンジで1分加熱して得られた調理品である。
【0156】
[製造例42]
製造例42は、製造例36で餃子の皮の代わりにパイシートを用いて同様な方法で製造例16を包んで得られた調理品を、さらにオーブン調理した調理品である。より詳細には、200℃のオーブンで20分加熱して得られた調理品である。
【0157】
[製造例43]
製造例43~49は、30μLのカプセルである製造例16を10個、さらに、豚ミンチも、食用皮の例である餃子の皮に包むことで、カプセルと他の固形食品を一緒に内包させて得られる調理品である。製造例43は、包んだ状態までの調理品である。
【0158】
製造例43は、皮の中に味がついたカプセルが固形食品とともに入っているので、固形食品を包んだ調理品を食するのに別途調味液を用意する必要が無く、利便性が高く、料理の幅が広がる。また、後述するように、製造例43の調理品は、茹でたり蒸したり焼いたり揚げたりといった加熱調理してもカプセル残存率が高いので、噛むとカプセルより内包液が飛び出し、新しい風味の追加をすることができる。また、お弁当に固形食品を包んだ調理品を入れる際に別途調味液を入れた容器を用意する必要がなく、パーティーで固形食品を包んだ調理品を提供する際に別途皿等に調味液を用意する必要がなく、利便性が高い。なお、餃子の皮の代わりに生で食することができる食用皮(例えば生春巻きの皮やクレープの皮等)を使用すれば、そのまま食することもできる。
【0159】
[製造例44]
製造例44は、製造例43を茹でた調理品である。より詳細には、沸騰した湯で5分加熱して得られた調理品である。
【0160】
[製造例45]
製造例45は、製造例43を蒸した調理品である。より詳細には、蒸し器でお湯が沸騰した状態で5分加熱して得られた調理品である。
【0161】
[製造例46]
製造例46は、製造例43を焼いた調理品である。より詳細には、220℃に熱したフライパンで3分加熱し、さらに蒸して得られた調理品である。
【0162】
[製造例47]
製造例47は、製造例43を揚げた調理品である。より詳細には、180℃に熱したサラダ油の中で2分30秒加熱して得られた調理品である。
【0163】
[製造例48]
製造例48は、製造例43を電磁調理した調理品である。より詳細には、650Wの電子レンジで1分加熱して得られた調理品である。
【0164】
[製造例49]
製造例49は、製造例43で餃子の皮の代わりにパイシートを用いて同様な方法で製造例16を包んで得られた調理品を、さらにオーブン調理した調理品である。より詳細には、200℃のオーブンで20分加熱して得られた調理品である。豚ミンチの代わりにジャムを入れてもよい。
【0165】
[比較方法1]
上記製造例の醤油加工品の製造方法との比較として、人工いくらの製法として知られている液中硬化被膜法(オリフィス法)で醤油液のカプセル化を試みたが、醤油液が内包された被膜を形成できず、カプセル化できなかった。なお、醤油液は製造例9と同様とし、滴下する液(内包液)はアルギン酸ナトリウムと醤油液を混和して作製するポリマー液であり、ポリマー液が滴下される側の液(外液)は乳酸カルシウム水溶液とした。
【0166】
<実験1>
図3は、アルギン酸ナトリウム濃度とカプセル形状との関係を示す写真である。図3の左側は製造例1、中央は製造例1とほぼ同様でステップ100におけるアルギン酸ナトリウム濃度が0.25wt%、右側は製造例1とほぼ同様でステップ100におけるアルギン酸ナトリウム濃度が0.1wt%とした場合のステップ900のときの写真である。製造例1(ステップ100におけるアルギン酸ナトリウム濃度が0.5wt%)ではカプセル化でき、カプセルは崩壊しなかった。アルギン酸ナトリウム濃度が0.5、0.25、0.1wt%のいずれでもカプセル化はできたが、0.25、0.1wt%ではカプセルが崩壊した。
【0167】
なお、アルギン酸ナトリウム水溶液中のアルギン酸ナトリウムの濃度(最終濃度)が2wt%では、水溶液を作成するのに手間や時間がかかるため、作成自体が困難となる。1wt%では、被膜がゼリー状に厚ぼったくなり、内包している液体が弾け出る食感(プチッと感)が得られなくなったものの、カプセルは形成可能だった。
【0168】
得られた結果を踏まえると、ステップ100において、アルギン酸ナトリウム水溶液中のアルギン酸ナトリウムの濃度(最終濃度)は0.5wt%以上1wt%以下が好ましい。
【0169】
<実験2>
図4は、乳酸カルシウム濃度とカプセル形状との関係を示す写真である。図4の左側は製造例1、中央は製造例1とほぼ同様でステップ200における乳酸カルシウム濃度が1wt%、右側は製造例1とほぼ同様でステップ200における乳酸カルシウム濃度が0.5wt%とした場合のステップ900のときの写真である。製造例1(ステップ200における乳酸カルシウム濃度が2wt%)が良好なカプセル形成ができた。乳酸カルシウム濃度が0.5、1、2wt%のいずれでもカプセル化はできたが、1wt%ではポリマー液表面で硬化が止まる場合が多く、沈んだとしても丸型のカプセル形成はできなかった。また、0.5wt%では、カプセルの被膜がポリマー液表面で形成されるが、芯物質が底面に落下し、崩壊した。
【0170】
醤油溶液中の乳酸カルシウムの濃度(最終濃度)が2wt%では良好なカプセル形成ができた。5wt%より濃いと、カプセル形成はできるが食感が悪くなると推測される。
【0171】
得られた結果を踏まえると、ステップ200において、醤油溶液中の硬化剤(乳酸カルシウム)の濃度は、添加後の溶液における硬化剤の濃度(最終濃度)が0.5wt%以上5wt%以下が好ましく、2wt%以上5wt%以下がより好ましい。
【0172】
<実験3>
図5は、pHとカプセル硬さとの関係を示す特性図である。図5は、ステップ110においてアルカリ化を行うことによるカプセルの破断荷重(図5(a))及びもろさ荷重(図5(b))に与える影響を示す。いずれも製造例2と同様にして作製し、1M炭酸カリウム水溶液の量でアルギン酸ナトリウム水溶液のpHを調整した。製造例2は、pHを9~10に調整したものである。また、いずれもアルギン酸ナトリウム水溶液を静置してからステップ300で滴下を開始するまでの時間を30分とし、その後ステップ500で水洗いするまでの時間を1分とした。
【0173】
破断荷重及びもろさ荷重によるカプセルの硬さ測定には、IMADA製電動計測スタンドMX2-500N及びYAMADEN製クリープメーターRE2-33005Sを使用した。サンプルステージの上面に載置したサンプルの上方から円盤状のプランジャー(直径13.1mm)を下降させて測定を行った。液滴の体積を30μL、つぶし速度を1.0mm/s、測定温度を25℃とした。破断荷重が粒の硬さ、もろさ荷重がぷちぷち感に相当するとの見解があり、サンプルによっては食感の違いと必ずしも一致しないものもあったが、カプセル状態を数値化するために測定した。
【0174】
図5に示すように、アルギン酸ナトリウム水溶液をアルカリ性にすると作製したカプセルは硬くなった。pH8以上で粒の硬さ、もろさ荷重が向上した。
【0175】
得られた結果を踏まえると、ステップ110において、アルギン酸ナトリウム水溶液をpH8以上に調整することが好ましく、pH8以上pH10以下に調整することがより好ましい。
【0176】
<実験4>
図6は、エタノール濃度とカプセル硬さ・高さとの関係を示す特性図である。図6は、ステップ120においてアルコール添加を行うことによるカプセルの破断荷重(図6(a))及びもろさ荷重(図6(b))並びにカプセル高さ(図6(c))に与える影響を示す。いずれも製造例3と同様にして作製し、ステップ120で、アルギン酸ナトリウム水溶液中のエタノールの濃度(最終濃度)が0、0.3125、0.625、1.25、2.5、5.0v%となるようにエタノールを添加した。製造例3では、アルギン酸ナトリウム水溶液中のエタノールの濃度(最終濃度)は5.0v%である。
【0177】
破断荷重及びもろさ荷重によるカプセルの硬さ測定は実験3と同様に行った。カプセル高さは、カプセルが載置されたサンプルステージの上面から、カプセルの上端に達したときのプランジャーの下面までの距離を測定して得られたステージ・サンプル間距離で表される。
【0178】
エタノール添加は、0.3v%程度の低濃度でも歩留まりを向上させた。図6に示すように、エタノールを添加してもカプセル高さは変化がないが、破断荷重、もろさ荷重とも低下した。しかし、図6から読み取れるように、エタノールの濃度が1.0v%以下では硬さの低下はほとんど見られず、エタノールの濃度が1.0~5.0v%以下ではやや低下するものの問題ない程度の硬さであった。
【0179】
得られた結果を踏まえると、ステップ120において、エタノールは、添加後のアルギン酸ナトリウム水溶液におけるエタノールの濃度(最終濃度)が0.3v%以上5.0v%以下となるように添加することが好ましく、0.3v%以上1.0v%以下となるように添加することがより好ましい。
【0180】
<実験5>
図7は、キトサン濃度とカプセル硬さ・高さとの関係を示す特性図である。図7は、ステップ600においてキトサン添加を行うことによるカプセルの破断荷重(図7(a))及びもろさ荷重(図7(b))並びにカプセル高さ(図7(c))に与える影響を示す。いずれも製造例7と同様にして作製し、ステップ600で、0.5wt%乳酸を含むキトサン水溶液中のキトサンの濃度(最終濃度)が0、0.0625、0.125、0.25、0.5wt%となるようにキトサンを添加した。ただし、いずれも、ステップ600の後、ステップ700(コラーゲン添加ステップ)を飛ばして、ステップ900に進んだ。
【0181】
破断荷重及びもろさ荷重によるカプセルの硬さ測定、カプセル高さの測定は実験4と同様に行った。
【0182】
外液となるアルギン酸ナトリウム水溶液にエタノールを混和させた場合、内包液となる醤油溶液を滴下して得られた醤油液カプセルにキトサン添加を行うことにより、破断荷重は大きくなり、もろさ荷重も増大した。カプセル高さは、キトサン水溶液中のキトサンの濃度(最終濃度)が0.5wt%で1.2mmから1.5mmと若干大きくなった。キトサン水溶液中のキトサンの濃度(最終濃度)が0.1wt%以上0.5wt%以下で、真球度が高いカプセルを実現できた。図7(b)から読み取れるように、キトサン水溶液中のキトサンの濃度(最終濃度)が0.1wt%以上でもろさ荷重が高い値で安定した。なお、ステップ700(コラーゲン添加ステップ)を飛ばさず、その他の点は製造例7と同様に作製した場合、もろさ荷重は僅かに下がったもののカプセル高さと破断高さへの影響はほとんどなかった。
【0183】
得られた結果を踏まえると、ステップ600において、キトサン水溶液中のキトサンの濃度(最終濃度)は0.0625wt%以上0.5wt%以下が好ましく、0.1wt%以上0.5wt%以下がより好ましい。
【0184】
<実験6>
図8は、キトサン処理の繰り返し数とカプセル硬さ・高さとの関係を示す特性図である。図8は、製造例8において、ステップ600の後、ステップ800を挟んで再度ステップ600を行い、再度ステップ800を挟んで3回目のステップ600を行い、最後にステップ700を行った際、各段階において計測したカプセルの破断荷重(図8(a))及びもろさ荷重(図8(b))並びにカプセル高さ(図8(c))の変移を示す。
【0185】
キトサン処理(添加)を、ペクチン処理とアルギン酸処理を挟んで繰り返すことで、破断荷重、もろさ荷重がともに向上する傾向があった。ただし、3回目では効果が薄れているようであった。カプセル高さは繰り返すたびに向上した。アルギン酸処理でカプセル高さが増加し、ペクチン処理で微減し、最終的には3回目でカプセル高さは1.2mmから2.0mmまで大きくなった。
【0186】
ペクチン処理を行わないと、カプセル同士が結着して団子のようになるが、ペクチン処理を行うと結着を防ぎつつ被膜を形成することができた。
【0187】
キトサン処理を1回のみ行う場合でも、キトサン処理をペクチン処理とアルギン酸処理を挟んで複数回行う場合でも、コラーゲン添加ステップであるステップ700をその後に行うことにより、カプセルにコラーゲン被膜を形成することができ、カプセル同士が重なっても結着しない。また、図8(c)に示すように、カプセル高さが向上した。
【0188】
得られた結果を踏まえると、キトサン処理を1回行うより、ペクチン処理とアルギン酸処理を挟んで複数回行うことが好ましく、硬さ向上の点では2回、真球度向上や膜厚向上の点では3回行うことがより好ましい。
【0189】
<実験7>
図9は、官能評価の結果を示す図である。図9は、製造例1と製造例7と製造例8について、20名(男女比13:7、20~60代)の被験者が、カプセルの硬さ(図9(a))と味(図9(b))について、官能評価した結果を示す。図9において、例えば、「4」とあるのは20人中4人の回答であることを示す。*がついている数字は危険率5%で有意差ありであることを示す。
【0190】
官能評価では、キトサン0wt%の場合(製造例1)と比較し、キトサン0.5wt%(製造例7)では有意にカプセルが硬くなったと評価された。なお、官能評価では、キトサン処理なし(製造例1)と比較し、3回目(製造例8)ではカプセルが硬くなったと評価された。味については、3回目(製造例7)では、キトサン処理なし(製造例1)や1回目(製造例8)よりも味が薄いと評価された。水洗いを繰り返すと味が薄くなると考えられる。
【0191】
得られた結果を踏まえると、食感における硬さの点からは、キトサン処理をした方が好ましく、また複数回処理を行った方がより好ましい。また、味の点からは、キトサン処理を繰り返す場合にはキトサン処理を行わない場合と比べて、内包物の味を濃くしておく必要があると考えられる。
【0192】
<実験8>
図10は、アルギン酸ナトリウムとエタノールの添加とカプセル形状との関係を示す写真である。図10の右上は製造例9、右下は製造例10、左上は製造例9とほぼ同様でステップ100におけるアルギン酸ナトリウム濃度が0.5wt%、左下は製造例10とほぼ同様でステップ100におけるアルギン酸ナトリウム濃度が0.5wt%とした場合のステップ900のときの写真である。
【0193】
醤油液として薄口醤油の原液を使用した場合は、0.5wt%アルギン酸ナトリウム水溶液を用いると安定的にカプセルを形成することが困難であった。エタノールを添加するとさらに表面張力が低下するためカプセルを形成することが困難であった。
【0194】
1.0wt%アルギン酸ナトリウム水溶液を用いた製造例9では、丸に近いカプセルが形成された。しかし、しっぽができる状態で膜硬化が起こった。
【0195】
1.0wt%アルギン酸ナトリウム水溶液を用いエタノール添加により表面張力を下げた製造例10では、球形とまでは言えないが丸に近いカプセルが得られた。
【0196】
得られた結果を踏まえると、醤油液として薄口醤油の原液を使用した場合は、ステップ100において、アルギン酸ナトリウム水溶液中のアルギン酸ナトリウムの濃度(最終濃度)は0.5wt%より1wt%の方が好ましい。
【0197】
得られた結果を踏まえると、醤油液として薄口醤油の原液を使用した場合であって、ステップ100において、アルギン酸ナトリウム水溶液中のアルギン酸ナトリウムの濃度(最終濃度)を1wt%としたときは、エタノールを添加する方が好ましい。
【0198】
<実験9>
図11は、増粘剤とエタノールの添加とカプセル形状との関係を示す写真である。図11の右下は製造例11、右中央は製造例11とほぼ同様でステップ210におけるゼラチン濃度が5wt%、右上は製造例11とほぼ同様でステップ210におけるゼラチン濃度が2.5wt%とし、左下は製造例12、左中央は製造例12とほぼ同様でステップ210におけるゼラチン濃度が5wt%、右上は製造例12とほぼ同様でステップ210におけるゼラチン濃度が2.5wt%とした場合のステップ900のときの写真である。
【0199】
醤油液として薄口醤油の原液を使用した場合は、ゼラチン濃度が2.5、5wt%では、芯物質(醤油溶液)がポリマー水面で広がってしまい、沈まなかった。10wt%ゼラチン水溶液を用いた製造例12では、カプセル化が可能となったが、エタノール添加しないため、ポリマー液に沈んでいる間は丸型のカプセルを形成するものの、ポリマー液底に到達すると、ダルマのような形になり硬化した。
【0200】
エタノール添加を行った製造例11ではカプセル化は可能となった。ゼラチン濃度が2.5、5wt%では、底には沈むようになり丸型傾向であるが、完全なカプセルを形成することはできなかった。
【0201】
得られた結果を踏まえると、醤油液として薄口醤油の原液を使用した場合、ステップ210で増粘剤を添加する方が好ましく、その場合、ステップ100において、アルギン酸ナトリウム水溶液中のアルギン酸ナトリウムの濃度(最終濃度)が0.5wt%であっても、エタノールを添加する方が好ましい。
【0202】
<実験10>
図12は、水性液状食品の種類とカプセル化状態を示す写真である。図12の上段右は製造例14、上段中央は製造例15、中段右は製造例16、中段中央は製造例17、中段左は製造例18、下段右は製造例19、下段中央は製造例20、下段左は製造例21のステップ900のときの写真である。いずれも綺麗な球形にカプセル化できており、見た目のインパクトがあり、美観にも優れる。
【0203】
<実験11>
図13は、アラビアガムを増粘剤とする食用溶液の粘度とカプセル化状態を示す写真である。図13の左側(下側)から、製造例22(1―a)、製造例22と製造例23の間の粘度に調整した例(1―b)、製造例23(1―c)、製造例24のもの2点(1―d、1―e)、製造例25(1―f)、製造例25と製造例26の間の粘度に調整した例(1―g)、製造例26(1―h)の写真である。左(下)から右(上)へ行くほど粘度が大きい例となる。見た目や食感のインパクトを与えるカプセル化を実現するという観点からみると、アラビアガムが増粘剤の場合、食品溶液の粘度が、3.5×10mPas以上3.8×10mPas以下であることが好ましく、7.8×10mPas以上2.7×10mPas以下であることがより好ましい。実験11においては、形状を保つという意味ではカプセル化しているが糸状等であったり球体とはほど遠いカプセルの場合を△、しっぽが付いたカプセルであったり伸びた状態であったり涙型である塊になっているカプセルの場合を○、球体のカプセルの場合を◎とした。
【0204】
図14は、片栗粉を増粘剤とする食用溶液の粘度とカプセル化状態を示す写真である。図14の左側(下側)から、製造例27(2―a)、製造例27と製造例28の間の粘度に調整した例(2―b)、製造例28(2―c)、製造例29のもの2点(2―d、2―e)、製造例30(2―f)、製造例30と製造例31の間の粘度に調整した例(2―g)、製造例31(2―h)の写真である。左(下)から右(上)へ行くほど粘度が大きい例となる。見た目や食感のインパクトを与えるカプセル化を実現するという観点からみると、片栗粉が増粘剤の場合、食品溶液の粘度が、8.4×10mPas以上5.8×10mPas以下であることが好ましく、2.1×10mPas以上5.1×10mPas以下であることがより好ましい。
【0205】
図15は、カラギーナンを増粘剤とする食用溶液の粘度とカプセル化状態を示す写真である。図15の左側(下側)から、製造例32(3―a)、製造例33(3―b)、製造例34(3―c)、製造例34と製造例35の間の粘度に調整した例(3―d)、製造例35(3―e)の写真である。左(下)から右(上)へ行くほど粘度が大きい例となる。見た目や食感のインパクトを与えるカプセル化を実現するという観点からみると、カラギーナンが増粘剤の場合、食品溶液の粘度が、8.6×10mPas以上6.1×10mPas以下であることが好ましく、8.6×10mPas以上9.7×10mPas以下であることがより好ましい。
【0206】
図13図15の結果から、見た目や食感のインパクトを与えるカプセル化を実現するという観点からみると、増粘剤全般において、食品溶液の粘度が、8.6×10mPas以上3.8×10mPas以下であることが好ましく、3.5×10mPas以上5.8×105mPas以下であることがより好ましい。増粘剤は、水和した際の分子構造が異なると粘稠性が高くなる濃度が変わることが知られているが、試行錯誤の末、アラビアガム(分子構造:回転楕円体)、片栗粉(デンプン 分子構造:直鎖)、κ(カッパ)カラギーナン(分子構造:二重螺旋)の全てにおいてカプセル化に好ましい粘度範囲が見いだされた。内包液となる食品溶液の粘度は、外液であるアルギン酸ナトリウム水溶液の粘度より高いことが好ましい。
【0207】
<実験12>
図16は、調理品内のカプセル残存状態及び残存率を示す図である。図16の上段左側から製造例37~42、下段左側から製造例44~49の中身の写真を並べてある。残存率は内包した10個のカプセルがカプセルの状態で残っている割合で算出している。実験12においては、残存率0%を×、1~40%を△、41~70%を○、71~100%を◎とした。カプセルの状態での残存率が高いのは、製造例36又は製造例43を、茹で、蒸し、焼き、又は揚げた調理品で、中でも、茹で、蒸し、焼いたものは残存率が極めて高かった。なお、製造例49で固形食品を豚ミンチからジャムに変更するとカプセル残存率が向上した。
【0208】
{効果}
本実施例によれば、見た目や食感のインパクトがある醤油加工品を製造することができる。また、醤油液が内包されかつカプセル化してすぐに離水することを防止できるので、醤油液のカプセル化を実現できる。
【0209】
本実施例によれば、見た目や食感のインパクトがある水性液状食品加工品を製造することができる。また、水性液状食品加工品のカプセル化を実現できる。
【0210】
本実施例によれば、利便性が高く、見た目や食感のインパクトがある調理品を製造することができる。また、カプセル化した水性液状食品加工品をカプセル化したまま内包する調理品を実現できる。
【0211】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、その発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々と変形実施が可能である。また、上記各実施の形態の構成要素を発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に組み合わせることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16