(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114500
(43)【公開日】2022-08-08
(54)【発明の名称】ゾル状食品およびゾル状食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 29/20 20160101AFI20220801BHJP
A23L 29/269 20160101ALI20220801BHJP
A23L 29/256 20160101ALI20220801BHJP
【FI】
A23L29/20
A23L29/269
A23L29/256
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021010768
(22)【出願日】2021-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】711002926
【氏名又は名称】雪印メグミルク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】特許業務法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 浩
(72)【発明者】
【氏名】奥山 美佐子
【テーマコード(参考)】
4B041
【Fターム(参考)】
4B041LC03
4B041LD01
4B041LE08
4B041LH10
4B041LH16
4B041LK14
4B041LK18
4B041LK37
4B041LP01
4B041LP04
4B041LP13
4B041LP16
4B041LP17
4B041LP25
(57)【要約】 (修正有)
【課題】多糖類及び乳たんぱく質を含むゾル状食品において、冷蔵保存中でも増粘およびゲル化が抑制されたゾル状食品の製造方法を提供する
【解決手段】多糖類及び乳たんぱく質を含むゾル状食品の製造方法であって、多糖類及び乳たんぱく質を含む食品原料を加温して溶解する工程と、溶解された原料溶解物を容器に充填する工程と、原料溶解物を冷却する工程と、を含み冷却工程において、原料溶解物に振動を付与する工程と、を有することを特徴とするゾル状食品の製造方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多糖類及び乳たんぱく質を含むゾル状食品の製造方法であって、
多糖類及び乳たんぱく質を含む食品原料を加温して溶解する工程と、
前記溶解された原料溶解物を容器に充填する工程と、
原料溶解物を冷却する工程と、を含み
前記冷却工程において、原料溶解物に振動を付与する工程と、
を有することを特徴とするゾル状食品の製造方法。
【請求項2】
原料溶解物の冷却工程が、容器充填後に行われる請求項1に記載のゾル状食品の製造方法。
【請求項3】
冷却工程が、20℃以下に冷却する工程である請求項1又は2に記載のゾル状食品の製造方法。
【請求項4】
多糖類としてキサンタンガムおよびカラギナンを含む請求項1~3のいずれかに記載のゾル状食品の製造方法。
【請求項5】
多糖類を0.4~1.0重量%、乳たんぱく質を0.66~3.21重量%含む請求項1~4のいずれかに記載のゾル状食品の製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のゾル状食品の製造方法によって製造されたゾル状食品。
【請求項7】
多糖類と乳たんぱく質を含むゾル状食品であって、製造後冷蔵保存1日間後において内部温度10℃以下における粘度が1500cP以上4000cP以下であり、前記製造後冷蔵保存1日間後の粘度に対して冷蔵保存21日間後の粘度の増加率が40%未満であるゾル状食品。
【請求項8】
前記多糖類としてキサンタンガムおよびカラギナンを含む請求項7に記載のゾル状食品。
【請求項9】
多糖類が全組成物中0.4~1.0重量%、乳たんぱく質を全組成物中0.66~3.21重量%含む請求項7又は8に記載のゾル状食品。
【請求項10】
キサンタンガム0.03~1.8重量%、カラギナン0.01~1.4重量%、乳たんぱく質0.66~3.21重量%を含むゾル状食品であって、内部温度10℃以下における粘度が1500cP以上4000cP以下である前記ゾル状食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品組成物、より詳細にはゾル状食品に関する。また、本発明は、食品組成物の製造方法、より詳細にはゾル状食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デザート等の食品の製造に使用される原材料は多岐にわたり、一般的には糖類・甘味料、乳製品、油脂、果汁・果実加工品、安定剤、チョコレート、ココア、コーヒー、紅茶、鶏卵、餡、乳化剤、着色料、着香料等が使用される。また、安定剤として多糖類をゲル化剤や増粘剤の役割で使用し、デザートの多様な物性・組織形成を可能としている。
【0003】
一方で、ゾル状食品に多糖類を添加することにより、糊っぽさ、ぬめり、糸引き、口溶けの悪さを伴うことがある。また、多糖類同士の相互作用や、多糖類と他原材料との相互作用により物性変化(粘度低下・上昇、凝集、分離、ゲル等)が生じる場合がある。
例えば、キサンタンガムはガラクトマンナン類(ローカストビーンガム、タラガム、グァーガム等)と併用することでゲル形成や増粘を引き起こす。また、カラギナンは、乳たんぱく質および塩存在下で増粘する。カラギナンは、さらにキサンタンガムとの併用で増粘効果が増加し、経時的にゲル化に至る場合もある。
したがって、ゾル状食品に使用する多糖類を選定する際は、配合における特性を確かめながら使用することが必要となる。
【0004】
ゾル状食品に多糖類を添加した場合に起こる保形性や口溶けの悪さの改善策として、酵素分解澱粉を、増粘多糖類及び/又はゼラチンの代替又は併用することにより、加工食品に優れた保形性や口溶け性を備えさせることができ、更には加工食品がゲル状食品の場合であれば優れた離水防止効果をも備えさせ得ることが報告されている(特許文献1参照)。
また、多糖類添加によるゾル状食品の分離抑制や粘質様食感の改質策として、メジアン径が500μm以下である、ゲル化剤によって調整された微細なゲルを含有する改質剤を、多糖類含有ゾル食品に添加する技術が報告されている(特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、特許文献1の酵素分解澱粉を多糖類と併用する技術をゾル状食品に用いると酵素分解澱粉由来の食感・風味が発現してしまうという課題がある。また、特許文献2の改質剤は、微細なゲルを形成させる工程が必要となり、大量生産を前提とした工業的製法においては効率的ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-103992公報
【特許文献2】特開2020-72647公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、本発明者らは、多糖類と乳たんぱく質を含み組織が滑らかで分離・凝集等が起きないゾル状食品の検討を行ったところ、保存中に増粘しゲル化してしまうという新たな課題を見出した。本発明は当該課題に鑑みてなされた発明であり、保存中でも増粘およびゲル化を抑制するゾル状食品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究した結果、乳たんぱく質を含み多糖類を含有するゾル状食品において、容器に充填し冷却する際に振動を与えることで、保存時の増粘およびゲル化を抑制したゾル状食品を提供できることを見出し、本発明に至った。
【0009】
本発明は具体的には以下の通りである。
<1>
多糖類及び乳たんぱく質を含むゾル状食品の製造方法であって、
多糖類及び乳たんぱく質を含む食品原料を加温して溶解する工程と、
前記溶解された原料溶解物を容器に充填する工程と、
原料溶解物を冷却する工程と、を含み
前記冷却工程において、原料溶解物に振動を付与する工程と、
を有することを特徴とするゾル状食品の製造方法。
<2>
原料溶解物の冷却工程が、容器充填後に行われる<1>に記載のゾル状食品の製造方法。
<3>
冷却工程が、20℃以下に冷却する工程である<1>又は<2>に記載のゾル状食品の製造方法。
<4>
多糖類としてキサンタンガムおよびカラギナンを含む<1>~<3>のいずれかに記載のゾル状食品の製造方法。
<5>
多糖類を0.4~1.0重量%、乳たんぱく質を0.66~3.21重量%含む<1>~<4>のいずれかに記載のゾル状食品の製造方法。
<6>
<1>~<5>のいずれかに記載のゾル状食品の製造方法によって製造されたゾル状食品。
<7>
多糖類と乳たんぱく質を含むゾル状食品であって、製造後冷蔵保存1日間後において内部温度10℃以下における粘度が1500cP以上4000cP以下であり、前記製造後冷蔵保存1日間後の粘度に対して冷蔵保存21日間後の粘度の増加率が40%未満であるゾル状食品。
<8>
前記多糖類としてキサンタンガムおよびカラギナンを含む<7>に記載のゾル状食品。
<9>
多糖類が全組成物中0.4~1.0重量%、乳たんぱく質を全組成物中0.66~3.21重量%含む請求項7又は8に記載のゾル状食品。
<10>
キサンタンガム0.03~1.8重量%、カラギナン0.01~1.4重量%、乳たんぱく質0.66~3.21重量%を含むゾル状食品であって、内部温度10℃以下における粘度が1500cP以上4000cP以下である前記ゾル状食品。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、保存中でも増粘およびゲル化が抑制されたゾル状食品を提供することができる。したがって、所望のゾル状態が保持されたゾル状食品を流通、提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
(ゾル状食品)
本発明のゾル状食品は、多糖類と乳たんぱく質を含むゾル状の食品をいう。本発明のゾル状食品は、ゾル状食品のみの単層、プリン、ゼリー又はババロア等の層を含む多層でも良い。本明細書において、「ゾル状食品」とは、室温以下において、保形性を有さず、流動性の物性を有する食品をいう。すなわち、粘性液体状又は粘稠性液体状の食品を意味しており、室温以下において、保形性や弾力性を有し、流動性を有さないゲル状食品とは、異なるものである。
本明細書において、「ゾル状」であるとは 、品温5~15℃において、B型粘度計(型式BL、株式会社東京計器 (現東機産業株式会社)製、No.3ローター)を用いて回転数30で測定した場合にゾル状食品の粘度が1500cP以上4000cP以下であることをいう。
【0012】
本発明のゾル状食品に含まれる乳たんぱく質とは、牛、山羊、羊、水牛、馬、ラクダ、ヤクの少なくとも一つを由来とする乳から作られたクリーム、バター、チーズ、濃縮ホエイ、アイスクリーム類、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調製粉乳、発酵乳、乳酸菌飲料、および乳飲料等の乳製品由来、または乳製品より分離した乳たんぱく質のことである。
乳たんぱく質の含量は風味、食感に影響を与えることから、好ましい乳たんぱく質の含量は全組成中0.1~5.5質量%であり、より好ましくは0.3~4.5質量%、更に好ましくは0.66~3.21質量%である。
【0013】
本発明のゾル状食品には、一般的な食品と同様に糖類・甘味料、乳製品、油脂、果汁・果実加工品、安定剤、チョコレート、ココア、コーヒー、紅茶、鶏卵、餡、乳化剤、着色料、着香料等を使用することができる。
【0014】
また、本発明のゾル状食品に含まれる多糖類は、対象組成物に粘度を付与できる素材であれば、特に制限されない。例えば、キサンタンガム、グァーガム、タラガム、カラギナン、およびローカストビーンガムからなる群から選択される2種以上が挙げられる。本発明のゾル状食品における多糖類の含量は特に制限されず、ゾル状食品の特性に応じて適宜調整できるが、好ましい多糖類の含量は全組成中0.1~2.0質量%であり、より好ましくは0.2~1.5質量%、更に好ましくは0.4~1.0質量%である。
【0015】
本発明のゾル状食品に用いることができる糖類としては、砂糖、異性化糖、ぶどう糖、麦芽糖、乳糖、蜂蜜、トレハロース、マルチトール、パラチニット、水飴、デキストリン等の澱粉分解物が挙げられる。本発明のゾル状食品に用いることができる甘味料としては、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、アドバンテーム、キシリトール、グリチルリチン酸二ナトリウム、サッカリン、サッカリンカルシウム、サッカリンナトリウム、スクラロース、ネオテーム、L-アラビノース、カンゾウ抽出物、D-キシロース、α-グルコシルトランスフェラーゼ処理ステビア、酵素分解カンゾウ、ステビア抽出物、ステビア末、ソーマチン、ブラジルカンゾウ抽出物、ラカンカ抽出物、L-ラムノース、D-リボース、アマチャ抽出物、カンゾウ末等が挙げられる。
【0016】
本発明のゾル状食品に用いることができる乳製品としては、牛、山羊、羊、水牛、馬、ラクダ、ヤクの少なくとも一つを由来とする乳から作られたクリーム、バター、チーズ、濃縮ホエイ、アイスクリーム類、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調製粉乳、発酵乳、乳酸菌飲料、および乳飲料等が挙げられる。乳製品は、単独あるいは2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0017】
本発明のゾル状食品に用いることができる油脂としては、当該分野で市販される任意の油脂が使用され、特に限定されないが、例えば、生乳、バター、クリーム、チーズなどの乳脂肪、ショートニング、マーガリン、加工油脂、シア脂、オリーブ油、大豆油、サラダ油、サフラワー油、コーン油、ゴマ油、ベニバナ油、ひまわり油、菜種油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、パーム分別油などの植物性油脂、カカオマス、ココアバター、ラード、魚油などの動物性油脂が挙げられる。
【0018】
本発明のゾル状食品に用いることができる果汁又は果肉加工品としては、(リンゴ、オレンジ、グレープフルーツ、ミカン、レモン、モモ、メロン、イチゴ、ブドウ、マスカット、巨峰、マンゴー、柿など)が挙げられる。
【0019】
本発明のゾル状食品に用いることができる風味原料として、食塩などの塩類、抹茶、紅茶、ほうじ茶、チョコレート、ココア、酒類、大豆製品(豆乳、豆乳クリーム、きなこ)、ピーナッツ、アーモンド、マカダミアナッツ、カシューナッツ、栗等の種などが挙げられる。
【0020】
本発明のゾル状食品に用いることができる乳化剤としては、レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルなどが挙げられる。ソルビタン脂肪酸エステルの例としては、ソルビタンモノオレイン酸エステル、ソルビタンモノラウリン酸エステルなどが挙げられる。ショ糖脂肪酸エステルの例としては、パルミチン酸またはステアリン酸を脂肪酸として含むショ糖脂肪酸エステルが挙げられる。レシチンとしては、大豆レシチンまたは卵黄レシチンなどが挙げられる。レシチンは、酵素分解レシチンであってもよい。ポリグリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンと脂肪酸のエステルであり、ジグリセリン脂肪酸エステル、トリグリセリン脂肪酸エステル、テトラグリセリン脂肪酸エステル、ペンタグリセリン脂肪酸エステル、ヘキサグリセリン脂肪酸エステル、ヘプタグリセリン脂肪酸エステル、オクタグリセリン脂肪酸エステル、ノナグリセリン脂肪酸エステル、デカグリセリン脂肪酸エステルが挙げられる。乳化剤は、任意の親水性-疎水性バランス(HLB)を有し得る。
【0021】
着香料としては、一般的に食品で用いられている水溶性香料、油性香料、乳化香料、粉末香料および酒類(ブランデー、スピリッツ、リキュール、ワイン等)が挙げられる。着色料は、天然着色料、合成着色料を使用することができる。
【0022】
ビタミンとしては、ビタミンA,ビタミンB(B1,B2、B6,B12など),ビタミンC,ビタミンD、ビタミンEなどが挙げられる。
【0023】
本発明のゾル状食品の具体例としては、ミルクソース(コーヒー入り、果汁入り、抹茶入り、チョコレート入りなどの風味物質を含むことができる)、チーズソース、クリーム、ホイップクリーム、バターソース、飲むプリン、ソフトヨーグルト、飲むヨーグルトなどが挙げられる。
【0024】
本発明の乳たんぱく質を含むゾル状食品において、多糖類として特に好ましくは、キサンタンガムとカラギナンの組み合わせが用いられる。キサンタンガムにカラギナンを組み合わせることにより、糸引きや糊っぽさを抑えてよりいっそう好ましい食感・物性とすることができる。
キサンタンガムは、キサントモナス・キャンペストリス(Xanthomonas campestris)が菌体外に生産する多糖類であり、D-マンノース、D-グルコース、D-グルクロン酸で構成されている。主鎖はβ-1,4結合しているD-グルコースからなり、側鎖は主鎖のD-グルコース残基1つおきにD-マンノース2分子とD-グルクロン酸が結合している。側鎖の末端にあるD-マンノースはピルビン酸塩となっている場合がある。また、主鎖に結合したD-マンノースのC-6位はアセチル化されている場合がある。
カラギナンは、紅藻類のスギノリ目のミリン科、スギノリ科の海藻から抽出され、κタイプ、ιタイプ、λタイプの3種類がある。κタイプとιタイプのカラギナンは、各々カラギナン分子構造中に3、6アンヒドロガラクトース基を有し、ダブルヘリックスを形成してゲル化する傾向がある。一方でλカラギナンには3、6アンヒドロガラクトース基がなくゲルする傾向がみられないと一般的には言われている。
本発明のゾル状食品に含まれるキサンタンガムとカラギナンの混合割合は、重量比で好ましくは1:9~3:7であればよく、更に好ましくは2:8~6:4であり、最も好ましくは5:5である。
キサンタンガムの好ましい範囲は全組成中0.03~1.8重量%であり、カラギナンの好ましい範囲は0.01~1.4重量%である。
キサンタンガムとカラギナンの合計では好ましい範囲は0.04~3.2重量%であり、より好ましくは0.1~2.0質量%であり、さらに好ましくは0.2~1.5質量%、更にいっそう好ましくは0.4~1.0質量%である。
【0025】
(ゾル状食品の製造方法)
本発明は、ゾル状食品の製造方法にも関する。
本発明のゾル状食品は、一般的なデザートの製法と同様に製造することができ、冷却時に振動処理することを特徴とする。典型的には、本発明のゾル状食品は以下の手順で製造することができる。
(1)前述の原料を撹拌・混合しながら、20℃~70℃程度に加温して、原料が均一に溶解・混合した原料混合物を調製する。均一な原料混合物を得ることができればよく、原料の混合順序は特に制限されない。
(2)上記原料混合物を加熱殺菌する。
(3)上記原料混合物を容器に入れて、原料混合物を20℃以下に冷却処理してゾル化させる。冷却処理は、容器に入れた原料混合物を室温又は低温の雰囲気中か又は冷水中で保持することにより行うことができる。
(4)(3)の冷却工程において、容器に振動処理を付与する。振動処理を付与することにより、多糖類と乳たんぱく質を含むゾル状食品の冷蔵保存中でも増粘しゲル化することなく、ゾル状態を維持することができる。
本発明の多糖類と乳たんぱく質を含むゾル状食品の製造方法は、換言すれば、多糖類と乳たんぱく質を含むことによる冷蔵保存時の増粘やゲル化を抑制する方法とも言える。冷蔵保存期間としては、例えば7日間が挙げられ、14日間、21日間、1か月間が挙げられる。また、長期間の保存が可能ないわゆるロングライフ商品の場合、保存期間は3か月が挙げられる。
本発明の製造方法によれば、冷蔵保存期間にわたりゾル状食品の増粘やゲル化を抑制することができ、製造時に有する食感を保持したままのゾル状食品を流通、販売することができる。このような本発明の製造方法によって、後述する実施例で示されるように多糖類と乳たんぱく質を含むゾル状食品であって、製造後冷蔵保存1日間後において内部温度10℃以下における粘度が1500cP以上4000cP以下であり、前記製造後冷蔵保存1日間後の粘度に対して冷蔵保存21日間後の粘度の増加率が40%未満であるゾル状食品を製造することができる。
【0026】
(冷却)
本明細書において冷却とは高温のゾル状食品を内部温度20℃以下に冷却する工程であり、容器に充填する前から冷却を開始してもよいし、容器に充填後に冷却を開始してもよい。冷却方法は、容器内のゾル状食品の温度が低下すれば水冷、空冷問わず制限されない。本発明の製造方法において、冷却時に後述する振動が付与されればよい。振動が付与される冷却時間は、特に制限されないが、できるだけ短時間で行われることが望ましい。例えば、細菌繁殖防止の観点から1時間以内に内部温度10℃以下に冷却する工程が好ましく、30分以内に10℃以下に冷却する工程がよりいっそう好ましい。
【0027】
(振動)
本明細書における振動とは機械的な振動であり、振動が与えられれば方法に特に制限はない。振動の周波数は特に制限はされないが、好ましくは0.01~10Hzであり、より好ましくは0.05~5Hz、更に好ましくは0.1~3Hzである。
具体的な振動を付与する方法(振動処理方法)としては、例えば、振盪機、バイブレーターなどの装置を用いた方法が挙げられるが、振動が付与できれば特に装置については制限されない。
上記振動は、連続的であってもよいし、また、断続的であってもよい。また、振動には、回転による振動や超音波による振動も含まれる。
振動を付与するタイミングとしては、所定温度に冷却されるまでの降温段階でゾル状食品に振動が与えられればよい。好ましくは、内部温度が10℃以下に冷却されるまでに振動が与えられることが好ましい。
本発明において冷却時にゾル状食品に振動を付与することにより、増粘やゲル化を抑制することができたのは、おそらく、多糖類の網目構造が振動によって部分的にしか形成されなかったことによるものと考えられる。
【0028】
(包装容器)
本発明のゾル状食品は、包装容器に充填されており、包装容器としては特に限定されないが、ゾル状食品を喫食するのに適している容器が好ましく、容器素材としては金属、ガラス、紙、プラスチック等いずれも使用可能である。
また、容器の形態についてもゾル状食品を喫食するのに適した形態であれば制限はなく、缶、ビン、紙パック、プラスチックカップ、フィルムパウチ、口栓付きパウチ等が使用できる。
【0029】
(殺菌方法)
以上の製造方法によって得られるゾル状食品は、必要に応じて殺菌処理等が行なわれ、流通、販売される。殺菌方法としては、容器に充填する前に加熱殺菌しホットパックする方法、充填密封後に加熱殺菌する方法、また、容器に充填する前にゾル状食品を加熱殺菌し、その後無菌条件下で充填する無菌充填等いずれの方法も可能である。
【0030】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明する。ただし、これらの例は本発明を制限するものではない。
【実施例0031】
ゾル状食品は、ヤシ油6.0%、脱脂粉乳3.0%、砂糖5.5%、乳化剤0.15%、キサンタンガム0.3%、カラギナン0.3%および水を混合した後、95℃まで加熱し10分間保持し殺菌した。殺菌後、均質処理(10MPa)を行い、65℃で保持した。
ゾル状食品を65℃のまま容器に50g充填し、空冷にて冷却した。冷却の際、比較例として静置冷却した。実施例として65℃にて充填したゾル状食品を振動試験機(型式BIO-SHAKER BR-40LF タイテック株式会社製)を用いて表1に示す振動をかけながら空冷により20℃以下まで冷却した。
比較例品および実施例品は充填した日を0日として7℃にて26日間保存し適宜粘度を測定した。B型粘度計(型式BL、株式会社東京計器 (現東機産業株式会社)製、No.3ローター)を用いて回転数30で測定した。評価は粘度および、凝集の有無、分離・離水の有無にて行った。全ての水準で凝集および分離・離水はなかった。粘度の結果を表1に示す。
【0032】
ヤシ油6.0%、脱脂粉乳3.0%、砂糖5.5%、乳化剤0.15%、キサンタンガム:カラギナンを5:5の割合で0.4~1.0%の範囲(表2中、安定剤量)で適宜配合し水を混合した後、95℃まで加熱し10分間保持し殺菌した。殺菌後、均質処理(10MPa)を行い、65℃で保持した。
ゾル状食品を65℃のまま容器に50g充填し、空冷にて冷却した。冷却の際、比較例として静置冷却した。実施例として実施例1と同様の装置を用いて周波数0.7Hzにて振動冷却し、実施例1と同様の評価を行った。全ての水準で凝集および分離・離水はなかった。粘度の結果を表2に示す。