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特開2022-114715水素の連続製造方法及びそのシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022114715
(43)【公開日】2022-08-08
(54)【発明の名称】水素の連続製造方法及びそのシステム
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/22 20060101AFI20220801BHJP
   B01J 3/00 20060101ALI20220801BHJP
   H01M 8/0668 20160101ALN20220801BHJP
   H01M 8/0606 20160101ALN20220801BHJP
【FI】
C01B3/22
B01J3/00 A
H01M8/0668
H01M8/0606
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021011122
(22)【出願日】2021-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(72)【発明者】
【氏名】川波 肇
【テーマコード(参考)】
4G140
5H127
【Fターム(参考)】
4G140AB01
4G140DA02
4G140DB05
5H127AC02
5H127AC15
5H127BA02
5H127BA12
5H127BA17
(57)【要約】
【課題】低濃度及び/又は低品位のギ酸溶液であっても、その脱水素反応を利用して連続して水素を効率よく製造できる方法及びそのシステムの提供。
【解決手段】
ギ酸を供給しながら触媒を用いて二酸化炭素と水素とに分解して水素を連続して製造する反応工程を含む。ここで、この反応工程で得られる二酸化炭素によって原料となるギ酸溶液からギ酸を抽出した上で、該反応工程に供する抽出工程を含むことを特徴とする。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギ酸の脱水素反応を利用して連続して水素を製造する方法であって、
ギ酸を供給しながら触媒を用いて二酸化炭素と水素とに分解して水素を連続して製造する反応工程を含み、
前記反応工程で得られる二酸化炭素によって原料となるギ酸溶液からギ酸を抽出し前記反応工程に供する抽出工程を含むことを特徴とする水素の連続製造方法。
【請求項2】
前記反応工程で得られた二酸化炭素を液化し水素と分離するとともに、液化二酸化炭素又は超臨界二酸化炭素を前記抽出工程に供する分離工程を含むことを特徴とする請求項1記載の水素の連続製造方法。
【請求項3】
前記分離工程での二酸化炭素の圧力により前記反応工程へのギ酸の供給を行うことを特徴とする請求項2記載の水素の連続製造方法。
【請求項4】
前記ギ酸溶液はギ酸水溶液であることを特徴とする請求項1乃至3のうちの1つに記載の水素の連続製造方法。
【請求項5】
ギ酸の脱水素反応を利用して連続して水素を製造する水素製造システムであって、
ギ酸を供給しながら触媒を用いて二酸化炭素と水素とに分解して水素を連続して製造する反応部を含み、
前記反応部で得られる二酸化炭素によって原料となるギ酸溶液からギ酸を抽出し前記反応部に供するギ酸抽出部を含むことを特徴とする水素製造システム。
【請求項6】
前記反応部で得られた二酸化炭素を液化し水素と分離するとともに、液化二酸化炭素又は超臨界二酸化炭素を前記ギ酸抽出部に供する分離部を含むことを特徴とする請求項5記載の水素製造システム。
【請求項7】
前記分離部での二酸化炭素の圧力により前記反応部へのギ酸の供給を行うことを特徴とする請求項6記載の水素製造システム。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギ酸の脱水素反応を利用して連続して水素を製造する方法及びそのシステムに関し、特に、低濃度及び/又は低品位のギ酸を利用可能であり併せて高圧二酸化炭素を供給可能な水素の連続製造方法及びそのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ギ酸(HCOOH)を適切な触媒下で分解させると、一酸化炭素(CO)を殆ど発生させずに、選択的に、水素(H)と二酸化炭素(CO)を発生させることができる。この水素と二酸化炭素を分離するには、得られた高圧の混合ガスを冷却し、二酸化炭素を液化させ、水素は高圧ガスのまま分離させることができる。(なお、以下において、ギ酸:Formic AcidをFAと略号表記することがある。)
【0003】
例えば、特許文献1では、特定の触媒を用いてギ酸やギ酸塩から脱水素化反応により全圧が20MPa以上、100MPa以下の水素と二酸化炭素とを含む高圧混合ガスを生成させ、生成した高圧混合ガスの全圧を0.4MPa以下に下げることなく気液相分離させて、水素濃度の高い高圧ガスを製造する高圧水素ガスの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-124730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、ギ酸を分解して高圧の水素と二酸化炭素を生成できるが、水溶液で提供されるギ酸の分解後には、反応系にギ酸水溶液の媒体である水が残存する。そのため、ギ酸水溶液を添加しながら連続的に運転させると、反応系には水が蓄積さされて希釈され、最終的には、反応が停止してしまう。そこで、水を生じないように、高濃度のギ酸を用いることが考慮されるがギ酸の高濃度化は技術的に難しく、高コストとなる。一方で、より安価な低濃度及び/又は低品位のギ酸を用いようとすると、反応系に含まれる多量の水を除去することが必要となる。
【0006】
本発明は、上記したような事情を鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、低濃度及び/又は低品位のギ酸水溶液であっても、その脱水素反応を利用して連続して水素を効率よく製造できる方法及びそのシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による方法は、ギ酸の脱水素反応を利用して連続して水素を製造する方法であって、ギ酸を供給しながら触媒を用いて二酸化炭素と水素とに分解して水素を連続して製造する反応工程を含み、前記反応工程で得られる二酸化炭素によって原料となるギ酸溶液からギ酸を抽出し前記反応工程に供する抽出工程を含むことを特徴とする。
【0008】
かかる特徴によれば、低濃度及び/又は低品位のギ酸溶液であっても、反応工程でのギ酸濃度が低下せず、その脱水素反応を利用して連続して水素を効率よく製造できるのである。
【0009】
上記した発明において、前記反応工程で得られた二酸化炭素を液化し水素と分離するとともに、液化二酸化炭素又は超臨界二酸化炭素を前記抽出工程に供する分離工程を含むことを特徴としてもよい。かかる特徴によれば、ギ酸の脱水素反応を利用して連続して水素を効率よく製造できるのである。併せて、各種用途の高圧、液化又は超臨界などの形態の二酸化炭素を供給可能となるのである。
【0010】
上記した発明において、前記分離工程での二酸化炭素の圧力により前記反応工程へのギ酸の供給を行うことを特徴としてもよい。また、前記ギ酸溶液はギ酸水溶液であることを特徴としてもよい。かかる特徴によれば、ギ酸の脱水素反応を利用して連続して水素を更に効率よく製造できるのである。
【0011】
また、本発明によるシステムは、ギ酸の脱水素反応を利用して連続して水素を製造する水素製造システムであって、ギ酸を供給しながら触媒を用いて二酸化炭素と水素とに分解して水素を連続して製造する反応部を含み、前記反応部で得られる二酸化炭素によって原料となるギ酸溶液からギ酸を抽出し前記反応部に供するギ酸抽出部を含むことを特徴とする。
【0012】
かかる特徴によれば、低濃度及び/又は低品位のギ酸溶液であっても、反応工程でのギ酸濃度が低下せず、その脱水素反応を利用して連続して水素を効率よく製造できるのである。
【0013】
上記した発明において、前記反応部で得られた二酸化炭素を液化し水素と分離するとともに、液化二酸化炭素又は超臨界二酸化炭素を前記ギ酸抽出部に供する分離部を含むことを特徴としてもよい。かかる特徴によれば、ギ酸の脱水素反応を利用して連続して水素を効率よく製造できるのである。併せて、各種用途の高圧又は液化または超臨界二酸化炭素を供給可能となるのである。
【0014】
上記した発明において、前記分離工程での二酸化炭素の圧力により前記反応工程へのギ酸の供給を行うことを特徴としてもよい。かかる特徴によれば、ギ酸の脱水素反応を利用して連続して水素を更に効率よく製造できるのである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明によるシステムを示すブロック図である。
図2】本発明によるシステムの一部を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明による1つの実施形態について、図1を用いて説明する。
【0017】
図1に示すように、全体システム1は、ギ酸製造部10と、ギ酸抽出部20と、ギ酸反応部30と、分離部40と、から構成され、これらは、必ずしも常時、配管で連結されてなくともよい。
【0018】
ギ酸製造部10は、二酸化炭素を原料として、天然ガスや石油由来のガスの改質で得られる水素、各種化成品製造プロセスなどで生成する水素ないしは水から得られた水素からギ酸(FA)を合成する。ここで得られるギ酸溶液(FA Sol.)の溶媒は、水、ポリエチレングリコール、あるいはイオン液体などの二酸化炭素に難溶性の溶媒であることが好ましい。更に、原料の二酸化炭素の圧力は室温(25℃)において、常圧(0.1MPa)以上100MPa以下の範囲で、水素の圧力は室温(25℃)において、常圧(0.1MPa)以上100MPa以下の範囲で適宜調整することができる。なお、ギ酸製造部10でギ酸の製造を行う際に用いられる触媒は、固体触媒でも錯体触媒であっても、超臨界二酸化炭素または液化二酸化炭素に難溶性の触媒であれば、適宜用いることができる。
【0019】
ギ酸製造部10で得られたギ酸溶液(FA Sol.)は、分離部40で得られ送出された高圧二酸化炭素の圧力を利用してギ酸抽出部20へと送液され得るが、別途、機械式ポンプを用いてギ酸抽出部20へと送液しても良い(S1)。また、一旦容器に充填して貯蔵してから、必要な時に、必要な場所へと運搬した後にギ酸抽出部20へと送液しても良い。また、一旦貯蔵したギ酸溶液の送液時に、分離部40で得られ創出された高圧二酸化炭素の圧力を利用してギ酸抽出部20へと送液され得るが、別途、機械式ポンプを用いて、ギ酸抽出部20へと送液しても良い(S22)。
【0020】
ギ酸抽出部20では、ギ酸製造部10で製造されたギ酸溶液あるいは、別途合成されたギ酸溶液の何れかが用いられる。ここで、ギ酸溶液のギ酸濃度は、0.1%~80%の範囲のギ酸溶液であれば好適に用いることができる。また、その溶液の媒体は、水、ポリエチレングリコール、あるいはイオン液体などであることが好ましい。
【0021】
ギ酸抽出部20で用いられる抽出媒体は、常圧よりも少なくとも高圧の超臨界二酸化炭素あるいは液化二酸化炭素(Liq.CO)であって、その抽出時の温度は水の凍結する0℃以上、ギ酸と水の共沸点の間の温度(107.2℃)以下の範囲を選択して行うことができる。更に、好ましくは、0℃以上から、ギ酸の沸点100.8℃、最も好ましくは、水の沸点の100℃以下で行うことによって、二酸化炭素中にギ酸を溶解させることができる。これにより、ギ酸反応部30には、水を限りなく含むことのないギ酸だけを高純度で供給することができる。
【0022】
ここで、ギ酸抽出部20でギ酸が抽出された後の残ギ酸水溶液(aq.FA)に、ギ酸製造部10にて使用された触媒が含まれている場合には、かかる水溶液をギ酸製造部10へと戻し、再度、ギ酸製造部10でこの触媒をギ酸製造用触媒としてリサイクルすることができる(S11)。
【0023】
ギ酸抽出部20で用いられる二酸化炭素は、特に、運転の初動においては外部から添加される超臨界流体又は液体を含む高圧の二酸化炭素を用いることができ、更に稼働時はシステム1の分離部40から得られる超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素を用いることができる(S2)。これにより、二酸化炭素を循環させ連続して運転することができる。
【0024】
ギ酸反応部30では、ギ酸抽出部20にて抽出されたギ酸の二酸化炭素溶液(FA Sol.+CO)を制御しながら添加することで、反応系内に水分を追加することなくギ酸を供給できる(S3)。
【0025】
ギ酸反応部30で得られた水素と二酸化炭素を含む高圧ガス(H/CO)は、熱交換器(図示せず)を介して冷却されて分離部40へと送出される(S4)。
【0026】
ギ酸反応部30から送られた冷却された水素と二酸化炭素を含む高圧ガスは、更に分離部40で冷却され気体と液体に分離される。分離された気体は水素リッチな気体で、液体は二酸化炭素リッチな液体である。なお、この二酸化炭素リッチな液体に含まれる水素は理論上、50体積%以下であり、いずれの濃度でも使用できるが、安全上4体積%以下であることが好ましく、更には1体積%以下であることが好ましい。
【0027】
分離部40で得られた二酸化炭素リッチな液体(Liq.CO)は、熱交換器(図示せず)を介してギ酸反応部30で得られた高圧ガスを冷却すると同時に、液体のまま、様々な用途に用いることができる。
【0028】
例えば、そのまま汎用あるいは目的に応じた二酸化炭素のボンベに充填して貯蔵してもよいし、必要な時に、必要な場所へ運搬し、各種用途に用いることができる(S5)。詳細には、液化二酸化炭素をプレス機で圧縮してドライアイスにし、又、各種冷剤に用いることができる。また、各種高分子材料と混合して発泡剤として利用し、また染料等を溶解させ繊維や布の染色に用いることもできる。また、メッキ時の脱脂や表面処理、断熱膨張によるドライアイス生成を利用したドライアイス洗浄、高圧を利用した殺菌、天然物等の抽出溶剤、クロマトグラフィー等の分析機器類の媒体、二酸化炭素を準溶媒とした塗装やコーティング、消化器、アーク溶接などのシールドガス、ドライ洗浄剤、各種医療用途、食品用途などに適宜、用いることができる。また、液化二酸化炭素を断熱膨張させて、冷媒の冷却や、ドライアイスにして熱交換器に用いることや、タービンを回して電力としてエネルギーを回収することもできる。加えて、これら使用後の低圧あるいは常圧に近い二酸化炭素は、植物工場やビニールハウスで植物の育成促進などや、微生藻類に与えて油等の合成、コンクリートの原料、炭酸カルシウムやアルコールなどの化成品合成などに用いることもできる。
【0029】
ここで、分離部40から得られた二酸化炭素リッチな液体(Liq.CO)の一部は、上述したように、そのままギ酸抽出部20に送液され、ギ酸の抽出媒体として用いる(S2)。更に、この二酸化炭素リッチな液体(Liq.CO)の全量あるいは一部は、ギ酸製造部10にも送液され、ギ酸製造の二酸化炭素原料として再利用することもできる(S21)。
【0030】
更に、分離部40から得られた二酸化炭素リッチな液体(Liq.CO)は、加熱すれば各種装置を昇圧できるため、上記したような、システム1における各種溶液の送液時に必要な加圧操作に使用できる。
【0031】
更に、本発明の1つのより具体的な実施形態について、図1及び図2を用いて説明する。なお、初期状態において、バルブV31~36、液量調整バルブV41及び42は閉じている。
【0032】
ギ酸製造部10(図1参照)では、触媒を分散又は溶解させた水溶液をバッチ式の容器に入れ、ギ酸の原料となる水素と二酸化炭素を1:1から1:5の範囲にある比率で導入する。全圧力を0.1MPa~35MPaとし、適宜、分離部40で得られる二酸化炭素を追加して原料に用いるとともに、圧力の調整に用いる。
【0033】
その後、0℃~100℃の温度範囲で温度調整しながら攪拌し、サンプリングを行いながら、所定のギ酸濃度(0.1%~80%)に達したことを確認後、ギ酸抽出部20の容器(図2の20a及び/または20b)に移送する。この移送には、ギ酸製造部10の系内(容器)に導入した水素と二酸化炭素の圧力を利用できるが、不足分については、分離部40で得られた液化二酸化炭素を用いて加圧させることもできる。
【0034】
なお、ギ酸製造部10の容器が十分な耐圧性を有している場合には、上記したようなギ酸抽出部20への移送をせずに、直接、分離部40で得られた液化二酸化炭素又は超臨界二酸化炭素を容器に注入してギ酸を製造するとともに、ギ酸抽出部20と同様に、ギ酸を抽出することができる。
【0035】
図2には、ギ酸抽出部20の詳細を示した。まず、ギ酸製造部10から送液されるギ酸抽出部20a及び/または20b内のギ酸を含む溶液(上記したように、ここでは、ギ酸分の濃度が0.1%~80%)は、酸性度を調整される。ここで、該溶液が塩基性又は中性付近である場合には、酸(塩酸又は硫酸)を添加して酸性(pH1~2)に調整する。
【0036】
その後、バルブV31及び/またはV33を開いて、ギ酸抽出部20a及び/または20bの容器に、上記した分離部40から液化二酸化炭素又は超臨界二酸化炭素を導入し(図1のS2)全圧を0.1MPa~100MPaの圧力範囲に調整する。ここで分離部40からの二酸化炭素の導入に合わせ、もしくは、これに代えて、V35及び/又はV36を開いてポンプPを用いて二酸化炭素を送液して導入してもよい。そして、室温~ギ酸の沸点付近の100℃の範囲で温度調整をしながら、溶液に含まれるギ酸の抽出を行う。
【0037】
なお、ここでの例のように、ギ酸抽出時に定常状態になるまでには一定の時間がかかるため、ギ酸抽出部20aと20bの様に、ギ酸抽出部20を2本以上の複数本設け、抽出効率を上げることが好ましい。
【0038】
二酸化炭素によるギ酸の抽出が進み定常状態になったら、バルブ31、V33、V35、V36を閉じるとともに、バルブV32及び/またはV34を開け、更に、V41を開けて、ギ酸抽出部20a及び/またはギ酸抽出部20bよりも低い圧力で、抽出されたギ酸をギ酸貯留部22へと送液する。ギ酸貯留部22では、抽出圧力よりも低い圧力であるため、二酸化炭素中のギ酸溶解度が変化し、濃縮されたギ酸と二酸化炭素に分離される。ギ酸貯留部22で濃縮され下方に溜まったギ酸は、何れかの方法でギ酸反応部30へ送液、もしくは容器に一旦貯留してから、運搬されてギ酸反応部30へと導入される(図1のS3)。また、分離した二酸化炭素は、V42を開けて、所定の圧力を維持したまま、熱交換器25で冷却され、液体二酸化炭素として回収され、二酸化炭素貯留槽27に貯められる。その後、上記したように、二酸化炭素貯留槽27の二酸化炭素は、ポンプPによって、再び、ギ酸抽出部20a及び/またはギ酸抽出部20bに送液され、繰り返し利用される。
【0039】
また、ギ酸抽出部20(20a,20b)にて、ギ酸が十分に抽出された後、残った触媒を含有する水溶液は、触媒含有溶液回収槽12に回収されて、再度、ギ酸製造部10へと送られて触媒がリサイクルされる。もしくは、触媒を回収処理して廃液として排出される。
【0040】
この後、ギ酸反応部30では、ギ酸水溶液に触媒を入れ、例えば、30℃~100℃の範囲内で温度設定しながら反応させる。得られる水素及び二酸化炭素の高圧ガスは、図示しない熱交換器で冷却され気液分離槽からなる分離部40に導入される。
【0041】
また、分離部40では、高圧ガスを冷却し、二酸化炭素を液化させ、ガスである水素と分離される。そして、液化した二酸化炭素(Liq.CO2)は、液量調整バルブを介して、液化二酸化炭素貯留部に貯留され、適宜、利用される。
【0042】
以上、従来、利用価値の低かったギ酸分解で得られる二酸化炭素についても、ギ酸製造等に用いることができ、更に、得られる低品位及び/又は低濃度のギ酸の抽出媒体についても利用できて、ギ酸水溶液の濃度変化を伴わない連続的な水素の製造に併せ、高圧の二酸化炭素の製造が可能となる。
【0043】
ここまで、本発明による代表的な実施形態及びこれに基づく改変例について説明したが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。当業者であれば、添付した特許請求の範囲を逸脱することなく、種々の代替実施例を見出すことができるであろう。
【符号の説明】
【0044】
1 システム
10 ギ酸製造部
20 ギ酸抽出部
20a 第1ギ酸抽出部
20b 第2ギ酸抽出部
22 ギ酸貯留部
25 熱交換器
27 二酸化炭素貯留槽
30 ギ酸反応部
40 分離部
図1
図2