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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022115092
(43)【公開日】2022-08-08
(54)【発明の名称】情報処理装置及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20220801BHJP
   A61B 5/0507 20210101ALI20220801BHJP
   A61B 5/0536 20210101ALI20220801BHJP
【FI】
A61B5/055 382
A61B5/055 390
A61B5/0507 100
A61B5/0536
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009328
(22)【出願日】2022-01-25
(31)【優先権主張番号】P 2021011545
(32)【優先日】2021-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】奈良 高明
(72)【発明者】
【氏名】伏見 幹史
(72)【発明者】
【氏名】江田 尚弘
(72)【発明者】
【氏名】新 誠一
(72)【発明者】
【氏名】山形 仁
(72)【発明者】
【氏名】矢野 亨治
(72)【発明者】
【氏名】藤田 博之
【テーマコード(参考)】
4C096
4C127
【Fターム(参考)】
4C096AA18
4C096AC01
4C096AD06
4C096AD14
4C096AD19
4C096BA05
4C096BA06
4C096DC18
4C096DC22
4C096DC28
4C096DC35
4C127AA06
4C127AA10
(57)【要約】
【課題】画質を向上させること。
【解決手段】実施形態に係る情報処理装置は、取得部と、算出部とを備える。取得部は、
計測対象における所定の物理量の空間分布に対応した計測場を取得する。算出部は、前記計測場と空間依存性のある未知量との間の第1の関係式と、前記取得部が取得した前記計測場に基づいて、前記計測対象における前記未知量を算出する。前記第1の関係式は、双対場の発散が前記計測場を用いて表現できる前記双対場を、前記計測場と、前記未知量とを用いて表現した第2の関係式と、前記双対場のヘルムホルツ分解とに基づいて得られた関係式である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象における所定の物理量の空間分布に対応した計測場を取得する取得部と、
前記計測場と空間依存性のある未知量との間の第1の関係式と、前記取得部が取得した前記計測場に基づいて、前記計測対象における前記未知量を算出する算出部とを備え、
前記第1の関係式は、双対場の発散が前記計測場を用いて表現できる前記双対場を、前記計測場と、前記未知量とを用いて表現した第2の関係式と、前記双対場のヘルムホルツ分解とに基づいて得られた関係式である、情報処理装置。
【請求項2】
前記第1の関係式は、前記未知量の空間微分の項が除去された積分方程式である、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記計測場はRF(高周波)磁場であり、前記未知量は、導電率または誘電率のうち少なくとも一方を含む、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記計測場は、前記RF磁場の振幅と位相である、請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記算出部が算出した前記未知量に基づいて、MREPT(Magnetic Resonance Electrical Property Tomography)を行う、請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記計測場は、前記RF磁場の位相であり、
前記算出部が算出した前記未知量に基づいて、QCM(Quantitative Conductivity Mapping)を行う、請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記計測場は、変位であり、前記未知量は、弾性率または粘性率のうち少なくとも一方を含む、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記計測場は、変位であり、前記双対場は、応力テンソルである、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記算出部が算出した前記未知量に基づいて、MRE(Magnetic Resonance Elastography)を行う、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記第1の関係式は、アンペール則及びファラデー則から導かれる関係式である、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記第1の関係式は、弾性体の運動方程式及びフック則から導かれる関係式である、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記取得部は、計測対象に関する形態画像を取得し、
前記形態画像に含まれる前記計測対象に対してセグメンテーション処理を行うことにより、前記取得部が前記計測対象から前記計測場を取得する計測対象領域を特定する特定部をさらに備え、
前記算出部は、前記計測対象領域における前記計測場に基づいて、前記未知量を算出する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記計測対象は、脳であり、
前記取得部は、磁気共鳴イメージングにより、脳の領域の前記形態画像を取得し、
前記特定部は、前記形態画像に基づいて、脳の実質部分の領域を前記計測対象領域として前記セグメンテーション処理により特定し、
前記算出部は、前記実質部分の領域における前記計測場に基づいて、前記未知量を算出する、請求項12に記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記算出部は、前記第1の関係式から得られる項と正則化項とからなる評価関数に基づいて前記未知量を算出する、請求項1~13のいずれか一つに記載の情報処理装置。
【請求項15】
計測対象における所定の物理量の空間分布に対応した計測場を取得し、
前記計測場と空間依存性のある未知量との間の第1の関係式と、取得した前記計測場に基づいて、前記計測対象における前記未知量を算出することを含み、
前記第1の関係式は、双対場の発散が前記計測場を用いて表現できる前記双対場を、前記計測場と、前記未知量とを用いて表現した第2の関係式と、前記双対場のヘルムホルツ分解とに基づいて得られた関係式である、情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、情報処理装置及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医用画像処理装置において、新しい診断情報を提供することが考えられる。例えば、通常のX線CT装置やMRI装置で得られる形態画像とは異なり、人体内部における導電率や誘電率などの電気特性や、弾性率や粘性率などの機械特性を未知量とし、これら未知量の3次元分布を算出し画像化することが考えられる。
【0003】
これらの技術の例として、MREPT(Magnetic Resonance Electrical Property Tomography)、QCM(Quantative Conductivity Mapping)、MRE(Magnetic Resonance Elastography)などが挙げられる。これらにより、例えば癌や肝硬変などを、物性定数の変化として計測することも可能となる。
【0004】
ここで、電気・機械特性が、人体内部で緩やかに変化する(数学的には、局所的に一様である)との仮定のもとで、それらの特性値を算出し画像化が行われる場合があった。しかしながら、その場合、異常部位の境界で、大きな推定誤差を生むこともあった。例えば、MREPTの場合、限局性の固形がんなど、正常組織に対して導電率が不連続に変化する場合、推定精度が低下する場合がある。
【0005】
また、有限要素法を用いる方法や、電磁場の積分表現を用いる方法により、電気・機械特性の、空間的な依存性を考慮する場合もある。しかしながら、例えば、解くべき微分方程式の中に計測場の高階微分が含まれるため不良設定問題になる場合や、解くべき積分方程式が未知量に対して非線形な方程式となるため、積分方程式の求解のために反復法を必要とし、適切な初期解を与えないとしばしば局所最適解に陥る場合もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2013/057655号
【特許文献2】米国特許第5、592、085号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】U. Katscher, et al.,”Electric Properties Tomography: Biochemical, Physical and Technical Background, Evaluation and Clinical Applications”, NMR in Biomed., 2017, Vol.30, e3729, pp.1-15
【非特許文献2】J. Liu, et al.,”Electrical Properties Tomography Based on B1Maps in MRI: Principles, Applications, and Challenges”, IEEE Trans. Biomed. Eng.,2017, Vol.64, No.11, pp.2515-2530
【非特許文献3】J. Chi, et al.,” Magnetic Resonance-Electrical Properties Tomography by Directly Solving Maxwell's Curl Equation”, Appl. Sci. 2020, Vol.10, No.9, 3318,
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本明細書及び図面の開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、画質を向上させることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態に係る情報処理装置は、取得部と、算出部とを備える。取得部は、計測対象における所定の物理量の空間分布に対応した計測場を取得する。算出部は、前記計測場と空間依存性のある未知量との間の第1の関係式と、前記取得部が取得した前記計測場に基づいて、前記計測対象における前記未知量を算出する。前記第1の関係式は、双対場の発散が前記計測場を用いて表現できる前記双対場を、前記計測場と、前記未知量とを用いて表現した第2の関係式と、前記双対場のヘルムホルツ分解とに基づいて得られた関係式である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係る情報処理装置130を含む磁気共鳴イメージング装置100について示した図である。
図2図2は、実施形態に係る情報処理装置130が行う処理の流れについて説明したフローチャートである。
図3図3は、MREPTの場合において、実施形態に係る情報処理装置130が行う処理の流れについて説明したフローチャートである。
図4図4は、QCMの場合において、実施形態に係る情報処理装置130が行う処理の流れについて説明したフローチャートである。
図5図5は、MREの場合において、実施形態に係る情報処理装置130が行う処理の流れについて説明したフローチャートである。
図6図6は、実施形態に係る情報処理装置130が行う処理について説明した図である。
図7図7は、実施形態に係る情報処理装置130が行う処理について説明した図である。
図8図8は、実施形態に係る情報処理装置130が行う処理について説明したフローチャートである。
図9図9は、実施形態に係る情報処理装置130が行う処理について説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、実施形態に係る情報処理装置及び情報処理方法について説明する。
【0012】
図1は、実施形態に係る情報処理装置130が、磁気共鳴イメージング装置100に組み込まれている場合の構成をしめした図である。ただし、実施形態は、情報処理装置130が、磁気共鳴イメージング装置100に組み込まれている場合に限られず、情報処理装置130が、磁気共鳴イメージング装置100から独立して構成されていてもよい。また、情報処理装置130は、超音波診断装置など、磁気共鳴イメージング装置100以外のモダリティの装置に組み込まれていてもよい。例えば、以下の実施形態では、磁気共鳴イメージング装置100を用い、振動板などにより組織を直接振動させて弾性場計測を行うMREの場合について説明するが、実施形態は、弾性場計測は組織を直接振動させて振動計測を行う装置を用いるなど、弾性分布が計測できる各種のモダリティに対しても適用可能である。
【0013】
図1に示すように、磁気共鳴イメージング装置100は、静磁場磁石101と、静磁場電源(図示しない)と、傾斜磁場コイル103と、傾斜磁場電源104と、寝台105と、寝台制御回路106と、送信コイル107と、送信回路108と、受信コイル109と、受信回路110と、シーケンス制御回路120(シーケンス制御部)と、情報処理装置130とを備える。なお、磁気共鳴イメージング装置100に、被検体P(例えば、人体)は含まれない。また、図1に示す構成は一例に過ぎない。例えば、シーケンス制御回路120及び情報処理装置130内の各部は、適宜統合若しくは分離して構成されてもよい。
【0014】
静磁場磁石101は、中空の略円筒形状に形成された磁石であり、円筒内部の空間において、その中心軸(Z軸)方向に静磁場を発生する。静磁場磁石101は、例えば、超伝導磁石等であり、静磁場電源から電流の供給を受けて励磁される。静磁場電源は、静磁場磁石101に電流を供給する。別の例として、静磁場磁石101は、永久磁石でもよく、この場合、磁気共鳴イメージング装置100は、静磁場電源を備えなくてもよい。また、静磁場電源は、磁気共鳴イメージング装置100とは別に備えられてもよい。
【0015】
傾斜磁場コイル103は、中空の略円筒形状に形成されたコイルであり、静磁場磁石101の内側に配置される。傾斜磁場コイル103は、互いに直交するX、Y、及びZの各軸に対応する3つのコイルが組み合わされて形成されており、これら3つのコイルは、傾斜磁場電源104から個別に電流の供給を受けて、X、Y、及びZの各軸に沿って各軸の中心からの距離に応じてZ方向の磁場強度が変化する傾斜磁場を発生する。傾斜磁場コイル103によって発生するX、Y、及びZの各軸の傾斜磁場は、例えば、スライス用傾斜磁場Gs、位相エンコード用傾斜磁場Ge、及びリードアウト用傾斜磁場Grである。傾斜磁場電源104は、傾斜磁場コイル103に電流を供給する。
【0016】
寝台105は、被検体Pが載置される天板105aを備え、寝台制御回路106による制御の下、天板105aを、被検体Pが載置された状態で、傾斜磁場コイル103の空洞(撮像口)内へ挿入する。通常、寝台105は、長手方向が静磁場磁石101の中心軸と平行になるように設置される。寝台制御回路106は、情報処理装置130による制御の下、寝台105を駆動して天板105aを長手方向及び上下方向へ移動する。
【0017】
送信コイル107は、傾斜磁場コイル103の内側に配置され、送信回路108からRF(Radio Frequency:高周波磁場)パルスの供給を受けて、高周波磁場を発生する。送信回路108は、対象とする原子の種類及び磁場強度で定まるラーモア(Larmor)周波数に対応するRFパルスを送信コイル107に供給する。
【0018】
受信コイル109は、傾斜磁場コイル103の内側に配置され、高周波磁場の影響によって被検体Pから発せられる磁気共鳴信号(以下、必要に応じて、「MR信号」と呼ぶ)を受信する。受信コイル109は、磁気共鳴信号を受信すると、受信した磁気共鳴信号を受信回路110へ出力する。
【0019】
なお、上述した送信コイル107及び受信コイル109は一例に過ぎない。送信機能のみを備えたコイル、受信機能のみを備えたコイル、若しくは送受信機能を備えたコイルのうち、1つ若しくは複数を組み合わせることによって構成されればよい。
【0020】
受信回路110は、受信コイル109から出力される磁気共鳴信号を検出し、検出した磁気共鳴信号に基づいて磁気共鳴データを生成する。具体的には、受信回路110は、受信コイル109から出力される磁気共鳴信号をデジタル変換することによって磁気共鳴データを生成する。また、受信回路110は、生成した磁気共鳴データをシーケンス制御回路120へ送信する。なお、受信回路110は、静磁場磁石101や傾斜磁場コイル103等を備える架台装置側に備えられてもよい。
【0021】
シーケンス制御回路120は、情報処理装置130から送信されるシーケンス情報に基づいて、傾斜磁場電源104、送信回路108及び受信回路110を駆動することによって、被検体Pの撮像を行う。ここで、シーケンス情報は、撮像を行うための手順を定義した情報である。シーケンス情報には、傾斜磁場電源104が傾斜磁場コイル103に供給する電流の強さや電流を供給するタイミング、送信回路108が送信コイル107に供給するRFパルスの強さやRFパルスを印加するタイミング、受信回路110が磁気共鳴信号を検出するタイミング等が定義される。例えば、シーケンス制御回路120は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)等の電子回路である。なお、シーケンス制御回路120が実行するパルスシーケンスの詳細については、後述する。
【0022】
さらに、シーケンス制御回路120は、傾斜磁場電源104、送信回路108及び受信回路110を駆動して被検体Pを撮像した結果、受信回路110から磁気共鳴データを受信すると、受信した磁気共鳴データを情報処理装置130へ転送する。情報処理装置130は、磁気共鳴イメージング装置100の全体制御や、画像の生成等を行う。情報処理装置130は、メモリ132、入力装置134、ディスプレイ135、処理回路150を備える。処理回路150は、インタフェース機能131、制御機能133、生成機能136を備える。
【0023】
実施形態では、インタフェース機能131、制御機能133、生成機能136、特定機能137、取得機能138、算出機能139にて行われる各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ132へ記憶されている。処理回路150はプログラムをメモリ132から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路150は、図1の処理回路150内に示された各機能を有することになる。なお、図1においては単一の処理回路150にて、インタフェース機能131、制御機能133、生成機能136、特定機能137、取得機能138、算出機能139にて行われる処理機能が実現されるものとして説明するが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路150を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。換言すると、上述のそれぞれの機能がプログラムとして構成され、1つの処理回路150が各プログラムを実行する場合であってもよい。別の例として、特定の機能が専用の独立したプログラム実行回路に実装される場合であってもよい。なお、図1において、インタフェース機能131、制御機能133、生成機能136、特定機能137、取得機能138、算出機能139は、それぞれ受付部、制御部、生成部、特定部、取得部、算出部の一例である。また、シーケンス制御回路120は、シーケンス制御部の一例である。特定機能137、取得機能138及び算出機能139の具体的な処理については、後述する。
【0024】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphical Processing Unit)或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサはメモリ132に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
【0025】
また、メモリ132にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、寝台制御回路106、送信回路108、受信回路110等も同様に、上記のプロセッサ等の電子回路により構成される。
【0026】
処理回路150は、インタフェース機能131により、シーケンス情報をシーケンス制御回路120へ送信し、シーケンス制御回路120から磁気共鳴データを受信する。また、磁気共鳴データを受信すると、インタフェース機能131を有する処理回路150は、受信した磁気共鳴データをメモリ132に格納する。
【0027】
メモリ132に格納された磁気共鳴データは、制御機能133によってk空間に配置される。この結果、メモリ132は、k空間データを記憶する。
【0028】
メモリ132は、インタフェース機能131を有する処理回路150によって受信された磁気共鳴データや、制御機能133を有する処理回路150によってk空間に配置されたk空間データ、生成機能136を有する処理回路150によって生成された画像データ等を記憶する。例えば、メモリ132は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等である。
【0029】
入力装置134は、操作者からの各種指示や情報入力を受け付ける。入力装置134は、例えば、マウスやトラックボール等のポインティングデバイス、モード切替スイッチ等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスである。ディスプレイ135は、制御機能133を有する処理回路150による制御の下、撮像条件の入力を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)や、生成機能136を有する処理回路150によって生成された画像等を表示する。ディスプレイ135は、例えば、液晶表示器等の表示デバイスである。
【0030】
処理回路150は、制御機能133により、磁気共鳴イメージング装置100の全体制御を行い、撮像や画像の生成、画像の表示等を制御する。例えば、制御機能133を有する処理回路150は、撮像条件(撮像パラメータ等)の入力をGUI上で受け付け、受け付けた撮像条件に従ってシーケンス情報を生成する。また、制御機能133を有する処理回路150は、生成したシーケンス情報をシーケンス制御回路120へ送信する。
【0031】
処理回路150は、生成機能136により、k空間データをメモリ132から読み出し、読み出したk空間データにフーリエ変換等の再構成処理を施すことで、画像を生成する。
【0032】
続いて、実施形態に関する背景について説明する。
【0033】
医用画像処理装置において、通常のX線CT装置やMRI装置とは異なった、新しい診断情報を提供することが考えられる。例えば、通常のX線CT装置やMRI装置で得られる構造画像とは異なり、人体内部における導電率や誘電率などの電気特性や、弾性率や粘性率などの機械特性を未知量とし、これら未知量の3次元分布を算出し画像化することが考えられる。
【0034】
これらの技術の例として、MREPT(Magnetic Resonance Electrical Property Tomography)、QCM(Quantative Conductivity Mapping)、MRE(Magnetic Resonance Elastography)などが挙げられる。これらの技術により、例えば癌や肝硬変などを、物性定数の変化として計測することも可能となる。
【0035】
ここで、従来技術においては、電気・機械特性が、人体内部で緩やかに変化する(数学的には局所的に一様である)との仮定のもとで、それらを算出し画像化を行う場合がある。しかしながら、電気・機械特性が、人体内部で局所的に一様と仮定した場合、異常部位の境界で、大きな推定誤差を生む場合もある。
【0036】
また、有限要素法を用いる方法や、電磁場の積分表現を用いる方法により、電気・機械特性の、空間的な依存性を考慮することも考えられる。しかしながら、例えば、前者の方法の場合、解くべき微分方程式の中に計測場の高階微分が含まれるため不良設定問題になる場合があり、また後者の方法の場合、解くべき積分方程式が未知量に対して非線形な方程式となるため、積分方程式の求解のために反復法を必要とし、適切な初期解を与えないとしばしば局所最適解に陥る場合もあった。
【0037】
かかる背景に鑑みて、実施形態に係る情報処理装置130は、観測ノイズに頑健となるような積分表現を用い、解くべき方程式が未知量に関して線形な積分方程式になるように、計測場に対する双対場を導入し、当該双対場のヘルムホルツ分解から導かれる関係式に基づいて、空間依存性のある未知量を算出する。
【0038】
具体的には、実施形態に係る情報処理装置130は、処理回路150を有する。処理回路150は、取得機能138により、計測対象における所定の物理量の空間分布に対応した計測場を取得する。また、処理回路150は、算出機能139により、計測場と空間依存性のある未知量との間の第1の関係式と、当該計測場に基づいて、計測対象における未知量を算出する。ここで第1の関係式は、双対場の発散が前記計測場を用いて表現できる双対場を、計測場と、未知量とを用いて表現した第2の関係式と、双対場のヘルムホルツ分解とに基づいて得られた関係式である。
【0039】
また、実施形態に係る情報処理方法は、計測対象における所定の物理量の空間分布に対応した計測場を取得し、計測場と空間依存性のある未知量との間の第1の関係式と、取得部が取得した計測場に基づいて、計測対象における未知量を算出することを含み、当該第1の関係式は、双対場の発散が計測場を用いて表現できる双対場を、計測場と未知量とを用いて表現した第2の関係式と、双対場のヘルムホルツ分解とに基づいて得られた関係式である。
【0040】
かかる情報処理装置130及び情報処理方法によれば、画質を向上することができる。
【0041】
以下、図2~7を用いて、実施形態に係る情報処理装置の行う処理について説明する。図2は、実施形態に係る情報処理装置が行う処理の手順を説明したフローチャートである。図2において、実施形態に係る情報処理装置が行う処理の手順の一般論について説明し、図3図5においては、個別の適用事例において、当該手順を適用した場合の処理の詳細について説明している。具体的には、図3図5は、それぞれMREPT(Magnetic Resonance Electrical Property Tomography)、QCM(Quantitative Conductive Mapping)、MRE(Magnetic Resonance Elastography)の例において、実施形態に係る処理を適用した場合の手順を具体的に説明したものである。図6は、計測場、推定する未知量、基礎方程式の関係を、図7は、計測場、双対場、及び計測場と双対場の関係について説明した図である。
【0042】
はじめに、双対場の導入の前に、実施形態に係る情報処理装置130における、計測場と、未知量との関係について説明する。
【0043】
図2において、ステップS100~ステップS130の説明については後述することにし、ステップS140の説明を先に行うと、ステップS140において、処理回路150は、取得機能138により、計測対象における所定の物理量の空間分布に対応した計測場を取得し、算出機能139により、取得した計測場と、ステップS130で得られた関係式とをもとに、計測対象における未知量が算出される。具体的には、処理回路150は、取得機能138により、計測対象における所定の物理量の空間分布に対応した計測場を取得する。続いて、処理回路150は、算出機能139により、取得機能138により取得した計測場と、後述するステップS130で得られた、計測場と空間依存性のある未知量との間の第1の関係式とに基づいて、計測対象における空間依存性のある未知量を推定する。当該第1の関係式は、基礎方程式から導かれる方程式である。なお、後述するように、第1の関係式は、双対場の発散が計測場を用いて表現できるような双対場を、計測場と当該未知量とを用いて表現した第2の関係式と、双対場のヘルムホルツ分解とに基づいて得られた関係式である。
【0044】
図6に、実施形態に係るこれら計測場と未知量との関係が示されている。
【0045】
実施形態の第1の適用例として、MREPT(Magnetic Resonance Electrical Property Tomography)が挙げられる。MREPTは、MRIを用いて、人体内部のRF磁場の振幅及び位相を計測し、導電率と誘電率の分布を画像化する方法である。
【0046】
MREPTの場合、処理回路150は、取得機能138により、以下の式(1)で与えられるRF磁場Hを、計測場として取得する。
【0047】
【数1】
【0048】
ここで、H及びHは、それぞれz軸に直交するx軸及びy軸方向のRF磁場である。
【0049】
また、以下の式(2)で与えられるファラデー則、及び、以下の式(3)で与えられるアンペール則が成り立つ。
【0050】
【数2】
【0051】
【数3】
【0052】
ここで、Eは電場であり、ωはLarmor角周波数であり、μは真空の透磁率であり、HはRF磁場である。また、λeは、インピーダンスであり、以下の式(4)で与えられる。
【0053】
【数4】
【0054】
ここで、σeは導電率であり、εは誘電率である。
【0055】
また、MREPTの場合、処理回路150は、算出機能139により、導電率σe、誘電率ε、あるいは式(4)で与えられるインピーダンスλeを、空間依存性のある未知量として推定する。
【0056】
すなわち、MREPTの場合、図3のステップS140Aに示されているように、処理回路150は、取得機能138により、式(1)で与えられるRF磁場H+を、計測場として取得する。続いて、処理回路150は、算出機能139により、計測場であるRF磁場Hと、ステップS130Aで得られた、計測場Hと空間依存性のある未知量λeとの間の第1の関係式とに基づいて、計測対象において空間的に変化する未知量である導電率σe、誘電率ε、あるいはインピーダンス λeを算出する。
【0057】
換言すると、MREPTの場合、計測場はRF磁場Hの振幅と位相であり、計測対象において空間的に変化する未知量は、導電率σeおよび誘電率εを含む。処理回路150は、算出機能139により算出した当該未知量に基づいて、MREPTを行う。
【0058】
なお、計測場Hと、未知量λeとの間の第1の関係式は、式(2)で与えられるファラデー則及び式(3)で与えられるアンペール則に基づいて導出される。すなわち、第1の関係式は、アンペール則及びファラデー則から導かれる関係式である。
【0059】
なお、以下、計測対象の各ボクセルにおけるRF磁場Hを計測する方法を簡単に説明する。先ず、シーケンス制御回路120が実行するSE(Spin Echo)法シーケンスやGRE(Gradient Echo)法シーケンスに基づいて送信回路108よりRF信号が送信コイル107に送信される。処理回路150は、取得機能138から得られるSE信号あるいはGRE信号を受信コイル109から受信回路110を通して取得する。
【0060】
ここで、RF磁場Hは複素数であることから、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100は、基本的にRF磁場の振幅と位相の計測を行うことになる。
【0061】
RF磁場の振幅の計測については、いくつかの方法が知られており、一般にB1マッピングと呼ばれる。基本的な原理を述べると、信号強度(振幅)をS、位置(x,y,z)における磁化をM0、磁化がRFパルスによって傾くフリップ角をαとすると、S=M0(x、y、z)sinαが成り立つ。従って、信号強度(振幅)は、磁化がRFパルスによって傾くフリップ角をαとして、sinαに比例する。従って、処理回路150は、算出機能139によりフリップ角αを算出し、算出したフリップ角αに基づいてsinαを算出することで、RF磁場の振幅を算出することができる。
【0062】
RF磁場の振幅の計測の一例として、GRE法シーケンスにおける繰り返し時間と計測対象の縦緩和時間(T1)の影響を排除するために、シーケンス制御回路120は、2つのフリップ角(以下、αと2αとおく)でGRE法のパルスシーケンスを実行する。処理回路150は、生成機能136により、シーケンス制御回路120より実行されたパルスシーケンスに基づいて、GRE法の画像を、当該2つのフリップ角について生成する。ここで、ボクセル毎の信号強度の比をrとすると、r=sinα/sin 2α=1/2cosαで与えられるから、処理回路150は、算出機能139により、2つのフリップ角について生成された画像より得られたボクセル毎の信号強度の比rに基づいて、フリップ角αを求めることができ、これに基づいてsinαを求めることにより、RF磁場の振幅を計測する。
【0063】
また、RF磁場の位相の計測については、例えばシーケンス制御回路120が、SE法のパルスシーケンスを実行し、処理回路150が算出機能139により、計測対象からのSE信号のピーク時の位相画像に基づいて送信RF位相を計測する方法が挙げられる。ここでは、RF磁場の送受信にクアドラチャ バードケージコイルを使用した例を説明する。当コイルは自由空間において非常に均一なRF磁場を発生することが知られている。(例えば、Convection-Reaction Equation Based Magnetic Resonance Electrical Properties Tomography (cr-MREPT): IEEE TRANSACTIONS ON MEDICAL IMAGING, VOL. 33, NO. 3, MARCH 2014 777)本コイルでSE画像を取得するとき、エコーピークをk空間の中心においてフーリエ変換することでSE画像を得る。SE画像なので静磁場不均一性による位相は打ち消されるが、RF送受信と傾斜磁場の駆動で発生する渦電流磁場による位相が残り以下の式(5)のように表される。
【0064】
【数5】
【0065】
ここで、φ(r)はSE画像の位相、rは位置、φ+(r)は送信RF磁場の位相、φ-(r)は受信時の位相、∫γBe(r)dtは渦電流磁場による位相である。後者は、同じSEシーケンスで傾斜磁場を反転させたSE画像の位相と引き算処理することで打ち消すことができ、φ+(r)+φ-(r)が求められる。一方、本コイルにおいてはφ+(r)とφ-(r)はほぼ等しいことが知られている(φ+(r)≒φ-(r))。よって、求めたい送信RF位相φ+(r)は、(φ+(r)+φ-(r))/2 で求められる。なお、RF磁場の振幅および位相の計測法について説明したが、本発明の範囲はこの計測法を用いるものに限定されるものではない。振幅および位相の情報を得る手法であれば、他の計測法や推定法を用いても構わない。
【0066】
実施形態の第2の適用例として、QCM(Quantitative Conductivity Mapping)が挙げられる。QCMは、RF磁場の位相分布のみに基づいて、導電率の分布を画像化する方法である。
【0067】
QCMの場合、処理回路150は、取得機能138により、以下の式(6)で与えられる計測場φを、取得する。
【0068】
【数6】
【0069】
より具体的には、処理回路150は、取得機能138により、RF磁場Hの位相成分を抽出することにより、計測場φを取得する。
【0070】
また、QCMの場合、処理回路150は、算出機能139により、導電率σe、あるいは式(7)で与えられる抵抗率ρeを、空間依存性のある未知量として推定する。
【0071】
【数7】
【0072】
すなわち、QCMの場合、図4のステップS140Bに示されているように、処理回路150は、取得機能138により、式(6)で与えられる計測場φを取得する。続いて、処理回路150は、算出機能139により、計測場φと、ステップS130Bで得られた、計測場φと空間依存性のある未知量ρeとの間の第1の関係式とに基づいて、計測対象において空間的に変化する未知量である導電率σeまたは抵抗率ρeを算出する。
【0073】
換言すると、QCMの場合、計測場は例えばRF磁場Hの位相φであり、計測対象において空間的に変化する未知量は、導電率σeまたは抵抗率ρeを含む。処理回路150は、算出機能139により算出した当該未知量に基づいて、QCMを行う。
【0074】
なお、計測場φと、抵抗率ρeとの間の第1の関係式は、MREPTの場合で用いた、式(2)で与えられるファラデー則及び式(3)で与えられるアンペール則において、H+の振幅の空間的変化が緩やかであり、かつσe>>ωεであるという仮定を設けることで導出される。
【0075】
実施形態の第3の適用例として、MRE(Magnetic Resonance Elastography)が挙げられる。MREは、人体に外部から振動を与えたときの変位分布をMRIを用いて計測し、人体内部の弾性率・粘性率等の分布を画像化する方法である。
【0076】
MREの場合、処理回路150は、取得機能138により、変位uを、計測場として取得する。なお、変位uは、ベクトル量である。
【0077】
また、以下の式(8)で与えられる運動方程式、及び、以下の式(9)で与えられるフック則が成り立つ。
【0078】
【数8】
【0079】
【数9】
【0080】
ここで、σmは応力であり、ωは振動の角周波数、ρmは密度、uは変位である。ここで、応力σmはテンソル量であり、変位uはベクトル量であるので、式(8)は、変位uの各成分に-ω ρmを乗じたものが、応力σmの各行または列を取り出したベクトルの発散に等しいことを意味する。また、λm及びμmは弾性定数であり、具体的にはλmはラメの第1定数、μmはラメの第2定数である。また、Iは単位行列を表す。
【0081】
また、MREの場合、処理回路150は、算出機能139により、弾性定数λm、μm、従って、弾性率、粘性率等を、空間依存性のある未知量として推定する。
【0082】
すなわち、MREの場合、図5のステップS140Cに示されているように、処理回路150は、取得機能138により、変位uを、計測場として取得する。
【0083】
続いて、処理回路150は、算出機能139により、計測場である変位uと、ステップS130Cで得られた、変位uと、弾性定数λm、μmとの間の第1の関係式とに基づいて、計測対象において空間的に変化する未知量である弾性定数λm、μmを算出する、あるいはそれらの弾性定数に基づいて、弾性率、粘性率等を算出する。
【0084】
換言すると、MREの場合、計測場は変位uであり、計測対象において空間的に変化する未知量は、弾性率および粘性率を含む。処理回路150は、算出機能139により算出した当該未知量に基づいて、MREを行う。
【0085】
なお、計測場である変位uと、弾性定数λm、μmとの間の第1の関係式は、式(8)で表される運動方程式及び式(9)で与えられるフック則に基づいて導出される。すなわち、第1の関係式は、弾性体の運動方程式及びフック則から導かれる関係式である。
【0086】
続いて、図2に戻り、図2のステップS100及びステップS110について、図7を適宜参照しながら説明する。
【0087】
はじめに、ステップS100において、双対場の発散(ダイバージェンス)が計測場を用いて表現できるような双対場が、計測場に対して導入される。また、ステップS110において、ステップS100で導入された双対場が、計測場と、空間依存性のある未知量とを用いて表現される。すなわち、ステップS110において、双対場の発散が計測場を用いて表現できるような双対場を、計測場と空間依存性のある未知量とを用いて表現した第2の関係式が、導入される。
【0088】
MREPTの場合、例えば以下の式(10)を満たす場E(チルダーが付された量である)が導入される。
【0089】
【数10】
【0090】
ここで、E,E,及びEは、電場のそれぞれx軸、y軸、z軸方向の成分であり、
E+=(Ex+ i Ey)/2である。
【0091】
また、ファラデー則である式(2)を変形すると、以下の式(11)が得られる。
【0092】
【数11】
【0093】
すなわち、式(11)の左辺の場E(チルダーが付された量)の発散は、計測場の定数倍となり、その発散が計測場Hで表現されたものとなる。従って、式(11)の左辺の場E(チルダーが付された量である)は、その発散が計測場Hで表現されたものとなり、計測場Hに対する双対場となる。
【0094】
すなわち、MREPTの場合、図3に示されているように、ステップS100Aにおいて、双対場E(チルダーが付された量である)の発散が計測場Hとなるように、計測場Hに対する双対場E(チルダーが付された量である)が導入される。
【0095】
また、アンペール則である式(3)を変形すると、以下の式(12)が得られる。
【0096】
【数12】
【0097】
ここで、演算子∇Cは、以下の式(13)で定義される演算子である。
【0098】
【数13】
【0099】
すなわち、式(12)において、双対場E(チルダーが付された量である)が、計測場Hと、空間依存性のある未知量λeとを用いて表現される。
【0100】
すなわち、ステップS110Aにおいて、双対場E(チルダーが付された量である)が、計測場Hと、導電率σe/誘電率εから導かれる未知量λeとを用いて表現される。
【0101】
QCMの場合、式(5)で表される計測場φに対して、例えば以下の式(14)を満たす場ψが、計測場φに対する双対場として導入される。
【0102】
【数14】
【0103】
すなわち、QCMの場合、図4に示されているように、ステップS100Bにおいて、双対場ψの発散が計測場φ=arg(H+)のゼロ乗、すなわち定数に比例するように、計測場φに対する双対場ψが導入される。
【0104】
また、MREPTの場合と同様、基礎方程式を変形すると、以下の式(15)が得られる。
【0105】
【数15】
【0106】
すなわち、式(15)において、双対場ψが、計測場φと、空間依存性のある未知量ρeとを用いて表現される。
【0107】
すなわち、QCMの場合、図4に示されているように、ステップS110Bにおいて、双対場ψが、計測場φと、抵抗率ρe(導電率σe)から導かれる未知量とを用いて表現される。
【0108】
MREの場合、例えば以下の式(16)を満たす場σmが導入される。
【0109】
【数16】
【0110】
ここで、式(16)を、運動方程式である式(8)と比較すると、式(16)の左辺の場σmは、応力テンソルである。ここで、式(16)の左辺の場σmの発散は、計測場uで表現されたものとなる。従って、式(16)の左辺の場σmは、その発散が計測場uで表現されたものとなるから、計測場uに対する双対場となる。すなわち、MREにおいて、応力テンソルσmは、双対場となる。
【0111】
なお、式(16)において、ρmは弾性体の密度、ωは、外部から与える振動の角周波数である。また、式(16)において、双対場σmはテンソル量であり、計測場uはベクトル場であるが、式(16)は、式(8)と同様、双対場σmの各行ベクトルまたは各列ベクトルに対する発散が、計測場uの各成分に等しいことを意味する。
【0112】
すなわち、MREの場合、図5に示されているように、ステップS100Cにおいて、双対場σm(の各行または列ベクトル)の発散が計測場である変位uの各成分となるように、変位uの各成分に対する双対場σmが導入される。
【0113】
また、フック則である式(9)は、そのまま、以下の式(17)で示されるように、弾性定数λm及びμmを、推定する未知量として、双対場σmが、計測場uと、空間依存性のある未知量を用いて表現された関係式となる。
【0114】
【数17】
【0115】
すなわち、図5に示されているように、ステップS100Cにおいて、双対場σmが、計測場uと、未知量である弾性定数λm、μmとを用いて表現される。
【0116】
図2に戻り、ステップS120において、双対場のヘルムホルツ分解が行われる。ここで、ヘルムホルツ分解とは、ヘルムホルツの定理を用いて、三次元のベクトル場を、回転なしの場と、発散なしの場との和に表す操作である。ヘルムホルツの定理によると、三次元のベクトル場は、回転なしの場と、発散なしの場との和で表現できることが知られている。以下の式(18)は、有界な関心領域Ω内部における、任意の3次元ベクトル場f(r’)のヘルムホルツ分解を表している。
【0117】
【数18】
【0118】
ここで、r及びr’は位置を表し、dvは関心領域Ω内の体積要素、dSは関心領域Ωの境界∂Ωにおける面積要素、nは境界∂Ωにおける法線ベクトルである。式(18)の第1項及び第2項は、回転なしベクトル場のそれぞれ体積積分項と表面積分項である。一方、式(18)第3項は発散なしのベクトル場である。式(18)は、任意の3次元ベクトル場について成り立つ恒等式である。
【0119】
ステップS120において、双対場のヘルムホルツ分解が行われる。すなわち、ステップS100において導入された双対場を式(18)に代入することにより、双対場を、回転なしベクトル場と、発散なしのベクトル場との和に分解することができる。このように分解された回転なしベクトル場の体積積分項は、双対場の発散を用いて表される。
【0120】
例えば、MREPTの場合、双対場はE(チルダーが付された量である)であるから、これを式(18)に代入すると、以下の式(19)が得られる。
【0121】
【数19】
【0122】
すなわち、MREPTの場合では、図3のステップS120Aにおいて、双対場E(チルダーが付された量である)をヘルムホルツ分解する。これにより、双対場E(チルダーが付された量である)を、式(19)のように、回転なしベクトル場と、発散なしのベクトル場との和に分解することができる。ここで、このように分解された回転なしベクトル場の体積積分項は、双対場E(チルダーが付された量である)の発散を用いて表される。
【0123】
また、QCMの場合、双対場はψであるから、これを式(18)に代入すると、以下の式(20)が得られる。
【0124】
【数20】
【0125】
すなわち、QCMの場合では、図4のステップS120Bにおいて、双対場ψをヘルムホルツ分解する。これにより、双対場ψを、式(20)のように、回転なしベクトル場と、発散なしのベクトル場との和に分解することができる。ここで、このように分解された回転なしベクトル場の体積積分項は、双対場ψの発散を用いて表される。
【0126】
また、MREの場合、双対場はσmであるから、これを式(18)に代入すると、以下の式(21)が得られる。
【0127】
【数21】
【0128】
ここで、図5のステップS120Cにおいて、双対場σmをヘルムホルツ分解する。これにより、双対場σmを、式(21)のように、回転なしベクトル場と、発散なしのベクトル場との和に分解することができる。ここで、このように分解された回転なしベクトル場の体積積分項は、双対場σmの発散を用いて表される。
【0129】
続いて、図2のステップS130の処理について説明する。双対場の発散は、ステップS100で述べたように、計測場を用いて表される。そこで、例えば式(19)~式(21)で示されたように、双対場のヘルムホルツ分解をすることにより得られた、回転なしベクトル場の体積積分項は、双対場の発散を用いて表すことができるのであるから、双対場の発散が計測場である旨の関係式を代入することにより、当該回転なしベクトル場の体積積分項は、計測場を用いて表すことができる。さらに、ステップS110で説明したように、双対場は、計測場と、空間依存性のある未知量とを用いて第2の関係式として表現できるのであるから、この第2の関係式を双対場のヘルムホルツ分解の式に代入することにより、処理回路150は、算出機能139により、計測場と空間依存性のある未知量との間の関係式である第1の関係式を得ることができる。
【0130】
このように、ステップS130において、処理回路150は、算出機能139により、双対場を計測場と空間依存性のある未知量とを用いて表した関係式である第2の関係式と、双対場のヘルムホルツ分解とに基づいて、計測場と空間依存性のある未知量との間の第1の関係式を得ることができる。
【0131】
なお、双対場の発散を計測場とする構成をとる利点を考えると、例えばMREPTの事例において、式(12)を式(11)に代入して、式(11)の左辺を具体的に計算すると、ベクトル解析の公式により、∇・(λe∇)=∇λe・∇+λe∇・(∇)となり、式(11)の左辺は、∇λeを含む項、すなわち空間依存性のある未知量の空間微分の項と、計測場の空間微分とが結合して複雑な形となっているが、これらの合計は、式(11)の右辺となり、計測場自身の定数倍という簡単な式になる。従って、双対場の発散を計測場とすることで、双対場のヘルムホルツ分解により登場する双対場の発散の項を計測場で置き換えることができ、空間依存性のある未知量の空間微分の項を、第1の関係式を表す積分方程式の中から消去することができる。すなわち、第1の関係式は、未知量の空間微分の項が除去された積分方程式となり、この結果、計算アルゴリズムが数値的に安定し、得られる画質が安定する。
【0132】
続いて、ステップS130の処理を、各適用例について具体的に記述すると、例えば、MREPTの場合、式(19)の右辺第1項の、回転なしベクトル場における、双対場E(チルダーが付された量である)の発散部分に、式(11)を代入し、残りの部分の双対場E(チルダーが付された量である)に式(12)を代入すると、以下の式(22)が得られる。
【0133】
【数22】
【0134】
すなわち、図3のステップS130Aにおいて、双対場E(チルダーが付された量である)を計測場Hと空間依存性のある未知量λeとを用いて表した関係式である式(12)と、双対場E(チルダーが付された量である)のヘルムホルツ分解である式(19)とに基づいて、計測場Hと、空間依存性のある未知量λeとの間の関係式である式(22)を得ることができる。
【0135】
また、例えば、QCMの場合、式(20)の右辺第1項の、回転なしベクトル場における、双対場ψの発散部分に、式(14)を代入し、残りの部分の双対場ψに式(15)を代入すると、以下の式(23)が得られる。
【0136】
【数23】
【0137】
すなわち、図4のステップS130Bにおいて、双対場ψを計測場φと空間依存性のある未知量ρeとを用いて表した関係式である式(15)と、双対場ψのヘルムホルツ分解である式(20)とに基づいて、計測場φと、空間依存性のある未知量ρeとの間の関係式である式(23)を導出する。
【0138】
また、例えば、MREの場合、式(21)の右辺第1項の、回転なしベクトル場における、双対場σmの発散部分に、式(16)を代入し、残りの部分の双対場σmに式(17)を代入すると、以下の式(24)が得られる。
【0139】
【数24】
【0140】
すなわち、図5のステップS130Cにおいて、双対場σmを計測場である変位uと空間依存性のある未知量である弾性定数λm、μmとを用いて表した関係式である式(17)と、双対場σmのヘルムホルツ分解である式(21)とに基づいて、計測場である変位uと、空間依存性のある未知量である弾性定数λm、μmとの間の関係式である式(24)を導出する。
【0141】
続いて、図2のステップS140について再び説明する。ステップS140において、計測対象における所定の物理量の空間分布に対応した計測場を取得し、取得した計測場と、ステップS130で得られた関係式とをもとに、計測対象における未知量が算出される。具体的には、ステップS140において、はじめに、処理回路150は、取得機能138により、計測対象における所定の物理量の空間分布に対応した計測場を取得する。
【0142】
例えば、MREPTの場合、処理回路150は、取得機能138により、例えば受信回路110より、RF磁場Hを、前述した方法により、計測場として取得する。
【0143】
QCMの場合、処理回路150は、取得機能138により、例えば受信回路110より、RF磁場Hの位相を、計測場φとして取得する。
【0144】
MREの場合、MRI装置の静磁場中に被検体Pが置かれ、図示しない振動発生装置が、当該被検体に例えば外部から正弦波横振動を加える。シーケンス制御回路120は、例えば、外部振動と同期して正負の極性を交互に繰り返す傾斜磁場MPG(Motion Probing Gradients)位相シフト法のパルスシーケンスを実行する。処理回路150は、取得機能138により、当該パルスシーケンスに係る信号を取得する。処理回路150は、取得機能138により、当該取得した信号を基に、変位uに関する情報を取得する。
【0145】
続いて、処理回路150は、算出機能139により、取得した計測場と、後述するステップS130で得られた、計測場と、空間依存性のある未知量との間の第1の関係式とに基づいて、当該空間依存性のある未知量を推定する。
【0146】
例えば、MREPTの場合、図3のステップS140Aに示されているように、処理回路150は、算出機能139により、取得した計測場Hと、ステップS130Aで得られた関係式である式(22)を基に、計測対象において空間的に変化する未知量であるインピーダンスλeまたは導電率σe/誘電率εを算出する。
【0147】
例えば、QCMの場合、図4のステップS140Bに示されているように、処理回路150は、算出機能139により、取得した計測場φと、ステップS130Bで得られた関係式である式(23)を基に、計測対象において空間的に変化する未知量である抵抗率ρe/導電率σeを算出する。
【0148】
例えば、MREの場合、図5のステップS140Cに示されているように、処理回路150は、算出機能139により、取得した計測場である変位uと、ステップS130Cで得られた関係式である式(24)を基に、計測対象において空間的に変化する未知量である弾性定数λm、μm等を算出する。
【0149】
続いて、双対場を計測場と空間依存性のある未知量とを用いて表した関係式である式(22)~式(24)を用いて画像を生成することの利点について説明する。これらの関係式の特徴として、いずれも、未知量に関する線形積分方程式であることが挙げられる。従って、反復法を用いずに直接解を求めることができる。これに対して、積分方程式が未知量に関する線形方程式でない場合、反復法を用いた計算が必要となり、初期解次第で局所最適解に陥る可能性があるが、実施形態に係る方法では、反復法を用いずに直接解を求めることができる。
【0150】
また、これらの式は、計測場の空間に関する二階微分の項を含まない。従って、ノイズに関して頑健な画像化手法となる。例えば、MREPTの場合、限局性の固形がんなどのように正常組織に対して導電率が不連続に変化する場合であっても、導電率や誘電率の測定精度が低下しにくくなり、これらの組織などをコントラストよく画像化し、または定量評価を行うことができる。
【0151】
また、従来、積分表示を用いる方法では、領域全体における電磁場の積分表現を用いる場合もあった。この場合、例えば、電磁場のソースとしてのMRIコイル等も、積分を行う領域に含める必要があり、従って、MRIコイルの影響を除くために、無負荷時の電磁場を計測もしくは計算をする必要がある場合もあった。これに対して、実施形態に係る手法では、ヘルムホルツ分解を有界な関心領域に限定することができ、無負荷時の電磁場の計測もしくは計算が不要となる。
【0152】
なお、第1の関係式である式(22)~式(24)等を解くことにより処理回路150が算出機能139により未知量を算出する本ステップにおいて、対象物の形態画像を撮影することにより、第1の関係式である式(22)~式(24)における関心領域Ωを特定し、特定した関心領域Ωに基づいて、ステップS140を行ってもよい。これにより、未知量の推定の精度を更に向上させることができる。
【0153】
図8に、そのような実施形態におけるステップS140の処理の手順の一例が示されている。すなわち、図8のステップS141~S143は、図2のステップS140の一例である。以下、例えば脳の領域の磁気共鳴イメージングを行う場合を例について説明する。
【0154】
はじめに、シーケンス制御回路120は、計測対象に関する形態画像を生成するための撮像を実行するパルスシーケンスを実行する。例えば、計測対象が脳の場合、シーケンス制御回路120は、脳の撮像を行うためのパルスシーケンスを実行する。
【0155】
ステップS141において、処理回路150は、取得機能138により、シーケンス制御回路120から、シーケンス制御回路120が実行したパルスシーケンスに基づいて収集された磁気共鳴信号を取得し、取得した磁気共鳴信号を基に、計測対象に関する形態画像を取得する。例えば、計測対象が脳である場合、処理回路150は、取得機能138により、シーケンス制御回路120が実行したパルスシーケンスによる磁気共鳴信号を基に、磁気共鳴イメージングにより、脳の領域の形態画像を取得する。
【0156】
続いて、ステップS142において、処理回路150は、特定機能137により、形態画像に含まれる計測対象に対してセグメンテーション処理を行うことにより、取得機能138により計測対象から計測場を取得する計測対象領域Ω(関心領域Ω)を特定する。一例として、計測対象が脳である場合、処理回路150は、特定機能137により、ステップS141で取得した形態画像に基づいて、脳の実質部分の領域を計測対象領域Ω(関心領域Ω)としてセグメンテーション処理により特定する。
【0157】
続いて、ステップS143において、処理回路150は、取得機能138により、計測取得した計測対象領域Ω(関心領域Ω)における計測場を取得し、算出機能139により、計測対象領域Ω(関心領域Ω)における計測場に基づいて、未知量を算出する。一例として、処理回路150は、取得機能138により、脳の実質部分の領域における計測場を取得し、算出機能139により、第1の関係式である式(22)~式(24)等を、計測対象領域Ωに対して解くことにより、当該未知量を算出する。これにより、未知量の推定の精度を更に向上することができる。
【0158】
また,式(22)~式(24)を用いて画像を生成することの別の利点として、これらが線形な積分方程式であるため、正則化を導入することが容易であることが挙げられる。
【0159】
MREPTの場合、双対場E(チルダーが付された量である)がゼロとなる点においては、式(22)は左辺も右辺もゼロとなり、λeが定まらない。実際、例えば図9(a)に示されるような数値ファントムを用いた場合で説明すると、図9(b)のように、式(22)の左辺の場E(チルダーが付された量)がゼロとなる点においては、図9(c)に示されるように、対応する領域10において、導電率の推定画像にアーチファクトが生じる。特に、観測データH+にノイズが加わった場合、図9(d)のようにこの影響が顕著になる。
【0160】
このような場合、式(22)の積分方程式を直接解く代わりに、例えば以下の式(25)のように、式(22)の積分方程式の左辺と右辺の二乗誤差である第一項に正則化項R(x)(xはベクトル量である)を加えた関数を、評価関数として用い、当該評価関数を最小化することにより、処理回路150は算出機能139により、未知数を算出することができる。
【0161】
【数25】
【0162】
ここで、xは未知量であるλeを画素数分ならべた未知ベクトル、Aおよびbは式(22)から定まる係数行列および右辺ベクトルである。正則化項R(x)は未知量λeが空間的に滑らかになるように追加された項であり、これによりアーチファクトが低減され、画質が改善される。
【0163】
換言すると、式(22)~式(24)で示される、計測場と未知量との間の関係式である第1の関係式は、例えば双対場のゼロ点付近等、その周りで数値計算が不安定となるような特異点を有する場合がある。これに対して、処理回路150は、算出機能139により、正則化を導入し、すなわち第1の関係式から得られる項と正則化項とからなる評価関数に基づいて、当該未知量を算出することができる。これにより、第1の関係式に存在する特異点回りでの数値的安定性が向上し、画質が向上する。
【0164】
図9(e)、(f)に、かかる計算結果の例が示されている。R(x)をxのL2ノルムとした、以下の式(26)を用いた場合の結果が図9(e)、R(x)をxのトータルバリエーションとした、以下の式(27)を用いた場合の結果が図9(f)であり、いずれの場合もアーチファクトの低減が観測される。
【0165】
【数26】
【0166】
【数27】
【0167】
なお、正則化項の与え方は、これら二例に限定されるものではない。
【0168】
以上、MREPTの場合についての処理を説明したが、QCM及びMREの場合、式(22)に基づいて導出された式(25)に代えて、それぞれ式(23)及び式(24)に基づいて式(25)を導出することで、同様の正則化処理を行うことができる。
【0169】
すなわち、QCMの場合、式(25)において、正則化項R(x)におけるxは、未知量であるρeを画素数分並べた未知ベクトルであり、A及びbは式(23)から定まる行列及び右辺ベクトルである。処理回路150は、算出機能139により、このように導出された式(25)に基づいて、未知量であるρeを算出する。
【0170】
また、MREの場合、式(25)において、正則化項R(x)におけるxは、未知量であるλm及びμmを画素数分並べた未知ベクトルであり、A及びbは式(24)から定まる行列及び右辺ベクトルである。処理回路150は、算出機能139により、このように導出された式(25)に基づいて、未知量であるλm及びμmを算出する。
【0171】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、画質を向上させることができる。
【0172】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。
【0173】
例えば、式(11)において、左辺の場E(チルダーが付された量)の発散は、計測場の定数倍となり、その発散が計測場Hで表現されるものが計測場Hの双対場であると述べた。しかし、双対場の定義はこれに限られない。例えば、ファラデー則に由来する式(11)と、アンペール則に由来する式(12)の両者を満たす量であるEチルダーを、Hの双対場と呼ぶこととしてもよい。
【0174】
また同様に、QMCの場合、例えば、式(14)において、左辺の場ψの発散は定数となり、その発散が計測場φの0乗で表現されるものが計測場φの双対場であると述べた。しかし双対場の定義はこれに限らない。例えば、ファラデー則に由来する式(14)と、アンペール則に由来する式(15)の両者を満たす量であるψを,計測場φの双対場であると呼ぶことにしてもよい。
【0175】
また同様に、MREの場合、例えば、式(16)において、左辺の場σmの発散は、計測場の定数倍となり、その発散が計測場uで表現されるものが計測場uの双対場であると述べた。しかし双対場の定義はこれに限らない。例えば、運動方程式に由来する式(16)と、フック則に由来する式(17)の両者を満たす量であるσmを,計測場uの双対場であると呼ぶことにしてもよい。
【0176】
これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0177】
130 情報処理装置
131 インタフェース機能
133 制御機能
136 生成機能
137 特定機能
138 取得機能
139 算出機能
150 処理回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9