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特開2022-115318線量計容器、線量計ユニットおよび線量管理方法
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  • 特開-線量計容器、線量計ユニットおよび線量管理方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022115318
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】線量計容器、線量計ユニットおよび線量管理方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20220802BHJP
   G01T 7/00 20060101ALI20220802BHJP
   G01T 1/00 20060101ALI20220802BHJP
   G21F 7/00 20060101ALI20220802BHJP
   G21F 1/08 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
A61B6/00 390E
G01T7/00 A
G01T1/00 D
G21F7/00 Z
G21F1/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021011858
(22)【出願日】2021-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】500216466
【氏名又は名称】住重アテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】八木 孝秀
(72)【発明者】
【氏名】小嵜 正彦
【テーマコード(参考)】
2G188
4C093
【Fターム(参考)】
2G188BB02
2G188BB17
2G188DD30
2G188JJ05
4C093CA32
4C093CA36
4C093EE11
(57)【要約】
【課題】管理区域外に漏洩する線量と同等の線量を管理区域内で計測する。
【解決手段】第1線量計ユニット10は、第1線量計12と、第1線量計容器14とを備える。第1線量計容器14は、X線装置50が設置される放射線管理区域30内で使用する第1線量計12を収容する。第1線量計容器14は、X線装置50と第1線量計12の間に位置する第1部分14aを有する。第1部分14aは、放射線管理区域30の上部境界壁34と同等のX線遮蔽能力を有するように材料および厚さが選択される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線装置が設置される放射線管理区域内で使用する線量計を収容するための線量計容器であって、前記X線装置と前記線量計の間に位置する第1部分を有し、前記第1部分は、前記放射線管理区域の境界壁と同等のX線遮蔽能力を有するように材料および厚さが選択されることを特徴とする線量計容器。
【請求項2】
前記線量計容器は、前記放射線管理区域内の前記境界壁または前記境界壁の近傍に設置されることを特徴とする請求項1に記載の線量計容器。
【請求項3】
前記第1部分は、厚さが0.1mm以上4mm以下の鉛を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の線量計容器。
【請求項4】
前記境界壁と前記線量計の間に位置する第2部分を有し、前記第2部分は、前記境界壁よりも大きなX線遮蔽能力を有するように材料および厚さが選択されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の線量計容器。
【請求項5】
前記第2部分は、厚さが0.5mm以上の鉛を含むことを特徴とする請求項4に記載の線量計容器。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の線量計容器と、前記線量計容器に収容される前記線量計と、を備えることを特徴とする線量計ユニット。
【請求項7】
X線装置が設置される放射線管理区域の境界壁と同等のX線遮蔽能力を有するように材料および厚さが選択される第1部分を有する線量計容器に線量計を収容することと、
前記X線装置と前記線量計の間に前記第1部分が位置するように、前記放射線管理区域内の前記境界壁または前記境界壁の近傍に前記線量計容器を設置することと、
前記線量計容器から前記線量計を取り出して前記線量計に記録される線量を読み取ることと、を備えることを特徴とする線量管理方法。
【請求項8】
前記放射線管理区域内に設置される前記線量計容器に別の線量計を収容することをさらに備えることを特徴とする請求項7に記載の線量管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線管理区域における線量の計測に関する。
【背景技術】
【0002】
医療機関で診療用X線装置を利用する場合、放射線管理区域内にX線装置を設置し、放射線管理区域外に漏洩する線量を定期的に測定することが義務づけられている。漏洩線量は、放射線管理区域を区画する境界壁の外側に線量計を設置して測定される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-134136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
放射線管理区域外に漏洩する積算線量を計測する場合、放射線管理区域に隣接する部屋に線量計を長期間(例えば3ヶ月)にわたって設置する必要がある。放射線管理区域の上側に隣接する部屋がある場合、隣接する部屋の床面に線量計を継続的に設置しなければならない。規模の大きい病院などでは、放射管理区域に隣接して手術室や集中治療室、MRI検査室などが設けられることがある。手術室などの床面に線量計を継続的に設置すると、手術の支障となるため、継続的に線量計を設置することが難しい。
【0005】
本発明のある態様の例示的な目的のひとつは、管理区域外に漏洩する線量と同等の線量を管理区域内で計測する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、X線装置が設置される放射線管理区域内で使用する線量計を収容するための線量計容器であって、X線装置と線量計の間に位置する第1部分を有し、第1部分は、放射線管理区域の境界壁と同等のX線遮蔽能力を有するように材料および厚さが選択される。
【0007】
本発明の別の態様は、線量計ユニットである。このユニットは、ある態様の線量計容器と、線量計容器に収容される線量計と、を備える。
【0008】
本発明の別の態様は、線量管理方法である。この方法は、X線装置が設置される放射線管理区域の境界壁と同等のX線遮蔽能力を有するように材料および厚さが選択される第1部分を有する線量計容器に線量計を収容することと、X線装置と線量計の間に第1部分が位置するように、放射線管理区域内の境界壁または境界壁の近傍に線量計容器を設置することと、線量計容器から線量計を取り出して線量計に記録される線量を読み取ることと、を備える。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のある態様によれば、管理区域外に漏洩する線量と同等の線量を管理区域内で計測できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態に係る線量計ユニットが設置される放射線管理区域を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、以下に述べる構成は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。また、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0013】
図1は、実施の形態に係る線量計ユニット10,20が設置される放射線管理区域30を模式的に示す図である。放射線管理区域30(単に管理区域30ともいう)は、X線装置50が設置される場所である。X線装置50は、病院などの医療機関で利用される診療用X線装置であり、一般X線撮影装置(いわゆるレントゲン装置)や、CT(Computed Tomography)検査装置などである。X線装置50が設置される検査室32は、例えば、X線撮影室、CT検査室、マンモグラフィ検査室である。X線装置50は、定格出力の管電圧が10kV以上1000kV未満である。X線装置50の定格出力の管電圧の一例は、150kVである。
【0014】
管理区域30は、図1において太線で囲われる領域である。管理区域30は、X線装置50が発生させる放射線(X線)を遮蔽可能な境界壁34,36,38により包囲される。管理区域30の鉛直上側には上部隣接室42があり、管理区域30の鉛直下側には下部隣接室44があり、管理区域30の側方には側部隣接室46がある。上部境界壁34は、検査室32と上部隣接室42の間に設けられる。下部境界壁36は、検査室32と下部隣接室44の間に設けられる。側部境界壁38は、検査室32と側部隣接室46の間に設けられる。上部境界壁34および下部境界壁36は、例えば、コンクリート製であり、150mmの厚みを有する。側部境界壁38は、例えば、厚さ1.5mmの鉛板を石膏ボードなどで挟み込んだ鉛ボード製である。
【0015】
X線装置50を利用する場合、管理区域30の外側に漏洩するX線の線量を定期的に計測する必要がある。具体的には、管理区域30の外側に漏洩するX線の線量率または積算線量を計測する必要がある。線量率は、電離箱式サーベイメータなどを用いて計測される。積算線量は、3ヶ月などの一定期間にわたる線量を積算する必要があり、線量計を一定期間設置した後に回収して線量計に記録される線量を読み取る。積算線量は、蛍光ガラス線量計(RPLD;Radio Photo Luminescence Dosimeter、熱ルミネセンス線量計(TLD;Thermo Luminescence Dosimeter)、光刺激ルミネセンス線量計(OSLD;Optically Stimulated Luminescence Dosimeter)、フィルム線量計などの積算線量計を用いて計測される。
【0016】
図1の例では、管理区域30の漏洩線量を上部隣接室42、下部隣接室44および側部隣接室46にて計測する必要がある。上部隣接室42で線量を計測する場合、上部隣接室42の床となる上部境界壁34の近傍に線量計70を設置して計測する。下部隣接室44で線量を計測する場合、下部隣接室44の天井裏となる下部境界壁36の近傍に線量計72を設置して計測する。例えば、下部境界壁36に線量計72を直接貼り付けて設置する。側部隣接室46で線量を計測する場合、側部隣接室46の壁となる側部境界壁38の近傍に線量計74を設置して計測する。
【0017】
大規模な病院などでは、管理区域30の外側で漏洩線量を計測することが容易ではない場合がある。例えば、管理区域30の周囲の隣接室42,44,46が手術室、集中治療室、MRI検査室などとなる場合である。手術室では、患者を乗せたベッドやストレッチャーを搬出入したり、手術に必要となる各種機器を移動および設置したりする。上部隣接室42が手術室である場合、手術室の床に線量計70を常時設置しなければならないが、手術室の床に線量計70を設置すると、手術室での各種作業の支障となりうる。そのため、上部隣接室42の床に線量計70を常時設置することは現実的ではない。線量計測のために手術室や集中治療室に計測員が一時的とはいえ立ち入ることは現実的とは言えない。また、MRI検査室にて強力な磁場が発生している状態では、電離箱式サーベイメータを使用することはできない。
【0018】
このように、医療機関にて漏洩線量を計測しようとする場合、様々な事情により適切な計測が困難となりうる。仮に線量計測のための日時を決めておき、隣接する部屋を空けるように予定している場合であっても、緊急手術などによって隣接する部屋が使用されてしまい計測が不可となることもある。この場合、後日計測することになるが、別の日時においても隣接する部屋が使用されてしまい計測が不可となることが発生しうる。計測日時が複数回にわたって先送りされてしまうと、法律で義務づけられている6ヶ月以内の計測ができなくなり、法令を遵守できない状況となりうる。
【0019】
そこで、本実施の形態では、管理区域30の外側で漏洩線量を計測する代わりに、管理区域30の内側で漏洩線量と同等の線量を計測する。漏洩線量と同等の線量を管理区域30内で計測するために、X線を遮蔽する容器内に線量計を収容してX線を計測する。線量計を収容する容器は、管理区域30の境界壁34,36,38と同等のX線遮蔽能力を有するように材料および厚さが選択される。
【0020】
図1の管理区域30には、第1線量計ユニット10および第2線量計ユニット20が設けられる。第1線量計ユニット10は、管理区域30内の上部境界壁34の近傍に設けられ、検査室32の天井板40の上に設けられる。第1線量計ユニット10は、上部隣接室42にて漏洩線量を計測する線量計70の代わりに設けられる。第2線量計ユニット20は、管理区域30内の側部境界壁38に設けられる。第2線量計ユニット20は、側部隣接室46にて漏洩線量を計測する線量計74の代わりに設けられる。
【0021】
第1線量計ユニット10は、第1線量計12と、第1線量計容器14とを備える。第1線量計12は、線量率計または積算線量計である。第1線量計容器14は、第1線量計12を収容するケースである。第1線量計容器14は、第1線量計12の周囲全体の360度を包囲する。第1線量計容器14は、例えば、本体と蓋を有し、本体に蓋を取り付けることで、第1線量計12の周囲全体を包囲できるように構成される。また、第1線量計容器14は、本体から蓋を取り外すことで、第1線量計12を交換できるように構成される。
【0022】
第1線量計容器14は、第1部分14aと、第2部分14bとを有する。第1部分14aは、検査室32に設置されるX線装置50と第1線量計12の間に位置する部分であり、X線装置50から第1線量計12に直接的に向かうX線52が透過する部分である。第2部分14bは、第1部分14aとは異なる部分であり、上部境界壁34と第1線量計12の間に位置する部分である。
【0023】
第1線量計容器14の第1部分14aは、上部境界壁34と同等のX線遮蔽能力を有するように材料および厚さが選択される。第1部分14aは、例えば、鉛などのX線遮蔽能力が高い材料で構成される。第1部分14aは、例えば、厚さが0.1mm以上4.0mm以下の鉛、好ましくは1mm以上2mm以下の鉛を含む。上部境界壁34が厚さ150mmのコンクリートである場合、第1部分14aは、上部境界壁34と同等のX線遮蔽能力を有する厚さ1.5mmの鉛を含む。第1線量計容器14の第2部分14bは、第1部分14aと同等のX線遮蔽能力を有するように材料および厚さが選択され、例えば、上部境界壁34と同等のX線遮蔽能力を有する厚さ1.5mmの鉛を含む。
【0024】
第1線量計容器14は、鉛の表面を被覆するための薄い樹脂フィルムなどをさらに有してもよい。樹脂フィルムは、X線を実質的に遮蔽しないように材料および厚さが選択される。
【0025】
第1線量計容器14に収容される第1線量計12は、第1線量計容器14を透過したX線の線量を計測する。第1線量計容器14は、上部境界壁34と同等のX線遮蔽能力を有するため、上部境界壁34を透過して管理区域30の外に漏洩するX線と同等の線量を計測できる。その結果、管理区域30内に設置される第1線量計12は、上部隣接室42に設置される線量計70と同等の線量を計測できる。第1線量計ユニット10は、検査室32の天井板40の上に設置されるため、検査室32での作業の妨げとなりにくい。その結果、第1線量計ユニット10は、検査室32の使用を妨げることなく、長期にわたって線量を計測できる。
【0026】
第2線量計ユニット20は、第2線量計22と、第2線量計容器24とを備える。第2線量計22は、第1線量計12と同様、線量率計または積算線量計である。第2線量計容器24は、第2線量計22を収容するケースである。第2線量計容器24は、第1線量計容器14と同様、第2線量計22の周囲全体の360度を包囲する。第2線量計容器24は、第1線量計容器14と同様、本体と蓋を有する。
【0027】
第2線量計容器24は、第1部分24aと、第2部分24bとを有する。第1部分24aは、検査室32に設置されるX線装置50と第2線量計22の間に位置する部分であり、X線装置50から第2線量計22に直接的に向かうX線54が透過する部分である。第2部分24bは、第1部分24aとは異なる部分であり、側部境界壁38と第2線量計22の間に位置する部分である。
【0028】
第2線量計容器24の第1部分24aは、側部境界壁38と同等のX線遮蔽能力を有するように材料および厚さが選択される。第1部分24aは、例えば、鉛などのX線遮蔽能力が高い材料で構成され、厚さが0.1mm以上4.0mm以下の鉛、好ましくは1mm以上2mm以下の鉛を含む。側部境界壁38が厚さ1.5mmの鉛板を含む鉛ボード製である場合、第1部分24aは、側部境界壁38と同等のX線遮蔽能力を有する厚さ1.5mmの鉛を含む。
【0029】
第2線量計容器24の第2部分24bは、第1部分14aよりも大きいX線遮蔽能力を有するように材料および厚さが選択される。第2部分24bは、側部隣接室46に設置されるX線装置60から第2線量計22に向かうX線62を完全に遮蔽する能力を有するように材料および厚さが選択される。第2部分24bは、厚さが0.5mm以上の鉛を含み、例えば、厚さ10mmの鉛を含む。第2部分24bのX線遮蔽能力を大きくすることで、管理区域30の外で発生するX線の影響を除外できる。側部隣接室46の一例は、心臓カテーテル室や外科イメージ室である。
【0030】
第2線量計容器24は、第1線量計容器14と同様、鉛の表面を被覆するための薄い樹脂フィルムなどをさらに有してもよい。樹脂フィルムは、X線を実質的に遮蔽しないように材料および厚さが選択される。
【0031】
第2線量計容器24に収容される第2線量計22は、第2線量計容器24を透過したX線の線量を計測する。第2線量計容器24の第1部分24aは、側部境界壁38と同等のX線遮蔽能力を有するため、側部境界壁38を透過して管理区域30の外に漏洩するX線と同等の線量を計測できる。その結果、管理区域30内に設置される第2線量計22は、側部隣接室46に設置される線量計74と同等の線量を計測できる。また、第2線量計容器24の第2部分24bは、側部境界壁38よりも大きいX線遮蔽能力を有するため、側部隣接室46に設置されるX線装置60からのX線62を実質的に遮断できる。第2線量計ユニット20は、検査室32の壁に設置されるため、検査室32での作業の妨げとなりにくい。その結果、第2線量計ユニット20は、検査室32の使用を妨げることなく、長期にわたって線量を計測できる。
【0032】
つづいて、線量計ユニット10,20を用いた線量管理方法について説明する。まず、管理区域30の内部で線量計ユニット10,20を設置する場所を決定する。次に、線量計ユニット10,20の設置場所に応じて、線量計容器14,24のX線遮蔽能力を決定する。管理区域30の外部からのX線を考慮する必要がない場合、線量計の周囲全体360度に対してX線遮蔽能力が均等となる第1線量計容器14を使用する。一方、管理区域30の外部からのX線を考慮する必要がある場合、第1部分24aよりも第2部分24bのX線遮蔽能力が大きい第2線量計容器24を使用する。
【0033】
線量計容器14,24のX線遮蔽能力は、管理区域30の境界壁34,36,38のX線遮蔽能力に応じて決定されることが好ましい。X線装置50が設置される管理区域30については、法律上、管理区域30の境界壁34,36,38の材料および厚みを公的機関に申請する必要がある。そのため、申請書類を参照することで、管理区域30の境界壁34,36,38のX線遮蔽能力を把握することができ、線量計容器14,24に必要なX線遮蔽能力を決定できる。
【0034】
管理区域の境界壁のコンクリート厚は、一般的に150mm以上であり、200mm~300mm程度となる場合がある。管理区域30の境界壁のコンクリート厚が200mm以上であったとしても、線量計容器14,24のX線遮蔽能力は厚さ150mmのコンクリートと同等であってもよい。この場合、管理区域30の外側で計測される線量よりも高い線量が線量計ユニット10,20によって計測されるが、計測された線量が基準値を超えていなければ、管理区域30の外部に漏洩するX線の線量が基準値未満であることを確認できる。基準値は、例えば法規制値である。
【0035】
次に、線量計容器14,24に線量計12,22を収容した線量計ユニット10,20を管理区域30内に設置する。検査室32は、X線撮影室やCT検査室であるため、長時間(例えば1時間以上)にわたって連続的に使用されるケースは少なく、線量計ユニット10,20を設置するために短時間だけ計測員が立ち入ることはそれほど難しくない。線量計ユニット10,20は、検査室32の天井や壁に設置されるため、線量計ユニット10,20の設置後であっても、検査室32を通常どおり使用できる。
【0036】
線量計ユニット10,20を管理区域30内に設置してから所定期間(例えば3ヶ月以上6ヶ月未満)が経過した場合、検査室32に計測員が立ち入り、線量計ユニット10,20から計測済みの線量計12,22を回収する。線量計12,22を回収する際、未使用である別の線量計を線量計容器14,24に収容してもよい。これにより、新しい線量計を用いて管理区域30内で継続して線量を計測できる。回収した線量計12,22に記録された線量は、適切なリーダー装置を用いて読み取られる。
【0037】
本実施の形態によれば、管理区域30に隣接する部屋に立ち入ることなく、管理区域30の外部で計測される線量と同等の線量を管理区域30の内部で計測できる。その結果、立ち入りや線量計の設置が困難であるために長期にわたって線量を計測できない状況となることを防ぎ、法令に定められる期間ごとに線量を適切に計測することが容易となる。
【0038】
本実施の形態に係る線量計ユニット10,20は、管理区域30の外側よりもX線の発生源であるX線装置50に近い位置に設置されるため、管理区域30の外側で計測される線量よりも多少高い線量が計測されうる。しかしながら、線量計ユニット10,20によって計測された線量が基準値を超えていなければ、管理区域30の外部に漏洩するX線の線量が基準値未満であることを確認できる。
【0039】
以上、本発明を実施の形態にもとづいて説明した。本発明は上記実施の形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。
【0040】
上述の実施の形態では、検査室32の天井板40の上に第1線量計ユニット10を設置し、検査室32の壁に第2線量計ユニット20を設置する場合について示した。別の実施の形態において、上部隣接室42にX線装置が設置される場合、検査室32の天井板40の上に第2線量計ユニット20を設置してもよい。また、側部隣接室46にX線装置が設置されない場合、検査室32の壁に第1線量計ユニット10を設置してもよい。
【0041】
上述の実施の形態では、線量計容器14,24が鉛で構成される場合について示した。別の実施の形態では、線量計容器14,24が鉛以外の金属材料で構成されてもよい。線量計容器14,24は、例えば、鉄やタングステンなどのX線遮蔽能力が比較的高い材料で構成されてもよい。
【符号の説明】
【0042】
10…第1線量計ユニット、12…第1線量計、14…第1線量計容器、14a…第1部分、14b…第2部分、20…第2線量計ユニット、22…第2線量計、24…第2線量計容器、24a…第1部分、24b…第2部分、30…管理区域、32…検査室、34…上部境界壁、36…下部境界壁、38…側部境界壁、40…天井板、42…上部隣接室、44…下部隣接室、46…側部隣接室、50…X線装置。
図1