(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022115833
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】リチウム含有ガーネット結晶体からなる固体電解質膜およびその製造方法、並びに該固体電解質膜を備えたリチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
H01B 1/06 20060101AFI20220802BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20220802BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20220802BHJP
H01B 1/08 20060101ALI20220802BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20220802BHJP
C01G 35/00 20060101ALI20220802BHJP
C04B 35/50 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
H01B1/06 A
H01M10/0562
H01M10/052
H01B1/08
H01B13/00 Z
C01G35/00 C
C04B35/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022010493
(22)【出願日】2022-01-26
(31)【優先権主張番号】P 2021012251
(32)【優先日】2021-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100218062
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 悠樹
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】浜尾 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】濱本 孝一
【テーマコード(参考)】
4G048
5G301
5H029
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AB02
4G048AC06
4G048AC08
4G048AD02
4G048AD04
4G048AD06
4G048AE06
4G048AE07
5G301CA02
5G301CA12
5G301CA16
5G301CA18
5G301CA26
5G301CA28
5G301CD01
5G301CE01
5G301CE02
5H029AJ06
5H029AJ14
5H029AM12
5H029CJ01
5H029CJ02
5H029CJ08
5H029CJ22
5H029DJ04
5H029DJ16
5H029DJ17
5H029HJ02
5H029HJ05
(57)【要約】
【課題】相対密度が向上した緻密かつ堅牢で、粒子界面の抵抗成分を低減させて高いイオン伝導率を実現することができるリチウム含有ガーネット結晶体からなる固体電解質膜を提供する。
【解決手段】ガーネット型構造を示すLi
aM
1
bM
2
cO
d(5.0≦a≦8.0、2.5≦b≦3.5、1.0≦c≦2.5、10≦d≦14、M
1はAl、Ga、La、Y、Pr、Mg、Ca、SrまたはBaから選択される一種以上の元素、M
2はZr、Hf、TaまたはNbから選択される一種以上の元素)の組成であって、30~250μmの平均粒子径を有する粒子にて構成されていることを特徴とするリチウム含有ガーネット結晶体からなる固体電解質膜。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガーネット型構造を示すLiaM1
bM2
cOd(5.0≦a≦8.0、2.5≦b≦3.5、1.0≦c≦2.5、10≦d≦14、M1はAl、Ga、La、Y、Pr、Mg、Ca、SrまたはBaから選択される一種以上の元素、M2はZr、Hf、TaまたはNbから選択される一種以上の元素)の組成であって、30~250μmの粒子径を有する粒子にて構成されていることを特徴とするリチウム含有ガーネット結晶体からなる固体電解質膜。
【請求項2】
前記組成が、Li6.00Ga0.150Al0.100La3.00Zr1.75Ta0.250O12.0であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム含有ガーネット結晶体からなる固体電解質膜。
【請求項3】
以下の工程:
ガーネット型構造を示すLiaM1
bM2
cOd(5.0≦a≦8.0、2.5≦b≦3.5、1.0≦c≦2.5、10≦d≦14、M1はAl、Ga、La、Y、Pr、Mg、Ca、SrまたはBaから選択される一種以上の元素、M2はZr、Hf、TaまたはNbから選択される一種以上の元素)の組成の固体電解質を合成した後、粉砕して微粒子電解質粉末を作製する第1工程、
得られた微粒子電解質粉末を溶媒に溶解させてスラリーとする第2工程、
該スラリーを基材上に塗工してグリーンシートを作製する第3工程、および、
得られたグリーンシートを一対の焼成基材の間に挟み、焼成することにより30~250μmの粒子径を有する粒子にて構成されている固体電解質膜を作製する第4工程
を含み、
前記第1工程は、Li原料を除く金属原料を含む前駆体酸化物を合成する工程と、前記前駆体酸化物にLi原料を加えて焼成して前記固体電解質を合成する工程とを含む
ことを特徴とするリチウム含有ガーネット結晶体からなる固体電解質膜の製造方法。
【請求項4】
前記組成が、Li6.00Ga0.150Al0.100La3.00Zr1.75Ta0.250O12.0であることを特徴とする請求項3に記載のリチウム含有ガーネット結晶体からなる固体電解質膜の製造方法。
【請求項5】
請求項1または2に記載の固体電解質膜をセパレータとして用い、その両面に正極および負極を設けてなるリチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム含有ガーネット結晶体からなる固体電解質膜およびその製造方法、並びに該固体電解質膜を備えたリチウムイオン二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、ニッカド電池やニッケル水素電池などの他の二次電池に比較してエネルギー密度が高く、高電位で作動させることができるため、携帯電話やノートパソコンなどの小型機器をはじめ、ハイブリッド自動車や電気自動車用の二次電池として需要が高まっている。
【0003】
また近年、安全性を考慮して、電解質として電解液の代わりに固体電解質膜を用いた全固体リチウムイオン電池の研究開発が盛んに行われている。そして、ガーネット型構造を有する酸化物は、酸化物系リチウムイオン伝導体の中で高いリチウムイオン伝導性を有するため、全固体電池等の次世代蓄電池用固体電解質として期待されている。
【0004】
このガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物には、イオン伝導性の乏しい正方晶系の低温相と、高イオン伝導を有する立方晶系の高温相が存在する。この立方晶系のガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物を得るためには、一般的な酸化物原料にて合成した場合、1000℃以上の焼成温度にて合成を行い、さらに高温にて焼結を行い、緻密化させ、固体電解質を作製する。
【0005】
特許文献1では、平均粒径5~100μmの結晶性酸化物系固体電解質粒子を多孔質膜に一層に担持することで、加工性に優れ、高いイオン伝導性を発現するセパレータに関する発明について言及されている。また、特許文献2では、そのイオン伝導性を高めた固体電解質を組み込んだリチウムイオン電池が開示され、特許文献3では、低温において安定的に伝導可能なリチウムイオン伝導膜が開示されている。
【0006】
また、非特許文献1では、一般的なテープキャスティング法を用いてガーネット型酸化物の薄層電解質膜を作製したことが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-183111号公報
【特許文献2】特開2017-183115号公報
【特許文献3】特開2018-6297号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】R.A. Jonson and P.J. McGinn, Solid State Ionics, 323 (2018) 49-55.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
リチウムイオン二次電池において、固体電解質は正極と負極を隔てるセパレータとしての役割を有している。そのため、固体電解質は、短絡防止の観点から緻密かつ堅牢であることが求められる。また、固体電解質の抵抗を低減するため、薄くすることが望まれる。さらに、高いイオン伝導率材料で構成されることが望ましいが、一般的にイオン伝導率を低くするため、固体電解質粒子界面の抵抗成分を低減させることが望まれている。そのため、固体電解質粒子は電解質の断面方向に対して薄くかつ少ないことが望ましい。
【0010】
特許文献1~3に開示された技術では、固体電解質膜の断面方向に単一粒子が担持されているため、上記のような固体電解質粒子界面の抵抗成分を低減させる課題は解決されている。しかしながら、上記特許文献1~3に開示された技術では、酸化物系固体電化質粒子を電気抵抗の高いポリオレフィン微多孔質膜または不織布に担持されているため、部分的にイオン伝導を阻害する電解質となってしまうという問題があった。
【0011】
また、非特許文献1のように、一般的なテープキャスティング法を用いてガーネット型酸化物の薄層電解質膜を作製する技術では、ガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物は難焼結性であるため、一般的なテープキャスティング法を用いて薄層電解質膜を作製する場合、これまで緻密かつ堅牢な薄層電解質膜を得ることは困難であり、固体電解質粒子界面に抵抗成分が生じてしまい、高いイオン伝導率を実現することを妨げるという問題があった。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされてものであり、相対密度が向上した緻密かつ堅牢で、粒子界面の抵抗成分を低減させて高いイオン伝導率を実現することができるリチウム含有ガーネット結晶体からなる固体電解質膜およびその製造方法、並びに該固体電解質膜を備えたリチウムイオン二次電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、ガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物の緻密化プロセスの検討を行った結果、緻密化しない要因として、電解質粉末を粉砕する際に分散溶媒と分解反応が生じ、分解生成物が粒子表面を覆うためであると考察した。そして、微粒子の電解質粉末を合成し、これを用いてテープキャスティング法にて固体電解質膜を作製することにより、固体電解質粉末の粒成長と固体電解質膜の焼結密度の向上が観察されたことを確認し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明によれば、下記の発明が提供される。
〔1〕ガーネット型構造を示すLiaM1
bM2
cOd(5.0≦a≦8.0、2.5≦b≦3.5、1.0≦c≦2.5、10≦d≦14、M1はAl、Ga、La、Y、Pr、Mg、Ca、SrまたはBaから選択される一種以上の元素、M2はZr、Hf、TaまたはNbから選択される一種以上の元素)の組成であって、30~250μmの粒子径を有する粒子にて構成されていることを特徴とするリチウム含有ガーネット結晶体からなる固体電解質膜。
〔2〕前記組成が、Li6.00Ga0.150Al0.100La3.00Zr1.75Ta0.250O12.0であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム含有ガーネット結晶体からなる固体電解質膜。
〔3〕ガーネット型構造を示すLiaM1
bM2
cOd(5.0≦a≦8.0、2.5≦b≦3.5、1.0≦c≦2.5、10≦d≦14、M1はAl、Ga、La、Y、Pr、Mg、Ca、SrまたはBaから選択される一種以上の元素、M2はZr、Hf、TaまたはNbから選択される一種以上の元素)の組成の固体電解質を合成した後、粉砕して固解質粉末を作製する第1工程、
得られた微粒子電解質粉末を溶媒に溶解させてスラリーとする第2工程、
該スラリーを基材上に塗工してグリーンシートを作製する第3工程、および、
得られたグリーンシートを一対の焼成基材の間に挟み、焼成することにより30~250μmの粒子径を有する粒子にて構成されている固体電解質膜を作製する第4工程
を含み、
前記第1工程は、Li原料を除く金属原料を含む前駆体酸化物を合成する工程と、前記前駆体酸化物にLi原料を加えて焼成して前記固体電解質を合成する工程とを含む、リチウム含有ガーネット結晶体からなる固体電解質膜の製造方法。
〔4〕前記組成が、Li6.00Ga0.150Al0.100La3.00Zr1.75Ta0.250O12.0であることを特徴とする請求項3に記載のリチウム含有ガーネット結晶体からなる固体電解質膜の製造方法。
〔5〕請求項1または2に記載の固体電解質膜をセパレータとして用い、その両面に正極および負極を設けてなるリチウムイオン二次電池。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、上記構成を採用したので、理論密度が5.30g・cm-1に対して、固体電解質膜の質量と実測の体積から算出される相対密度が90%以上に向上した緻密かつ堅牢で、粒子界面の抵抗成分を低減させて高いイオン伝導率を実現することができるリチウム含有ガーネット結晶体からなる固体電解質膜およびその製造方法、並びに該固体電解質膜を備えたリチウムイオン二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施例1に記載の固体電解質の粉末のSEM像である。
【
図2】実施例1に記載の固体電解質膜の断面のSEM像である。
【
図3】実施例1に記載の固体電解質膜の断面のSEM画像および元素マッピング分析の結果である。
【
図4】比較例1に記載の固体電解質の粉末のSEM像である。
【
図5】比較例1で作製した固体電解質膜の断面のSEM像である。
【
図6】実施例1に記載の固体電解質膜の断面のSEM画像および元素マッピング分析の結果である。
【
図7】実施例1で作製した固体電解質膜のインピーダンス測定結果を比較例1で作製した固体電解質膜のインピーダンス測定結果と比較して示す図である。
【
図8】実施例2に記載の固体電解質の断面のSEM像である。
【
図9】比較例2に記載の固体電解質の断面のSEM像である。
【
図10】実施例2で作製した固体電解質膜のインピーダンス測定結果を比較例2で作製した固体電解質膜のインピーダンス測定結果と比較して示す図である。
【
図11】実施例3に記載の固体電解質の断面のSEM像である。
【
図12】比較例3に記載の固体電解質の断面のSEM像である。
【
図13】実施例3で作製した固体電解質膜のインピーダンス測定結果を比較例3で作製した固体電解質膜のインピーダンス測定結果と比較して示す図である。
【
図14】実施例4に記載の固体電解質の断面のSEM像である。
【
図15】比較例4に記載の固体電解質の断面のSEM像である。
【
図16】実施例4で作製した固体電解質膜のインピーダンス測定結果を比較例4で作製した固体電解質膜のインピーダンス測定結果と比較して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施形態に基づき詳細に説明する。
本発明のリチウム含有ガーネット結晶体からなる固体電解質膜は、ガーネット型構造を示すLiaM1
bM2
cOd(5.0≦a≦8.0、2.5≦b≦3.5、1.0≦c≦2.5、10≦d≦14、M1はAl、Ga、La、Y、Pr、Mg、Ca、SrまたはBaから選択される一種以上の元素、M2はZr、Hf、TaまたはNbから選択される一種以上の元素)の組成であって、30~250μmの粒子径を有する粒子にて構成されていることを特徴とする。該固体電解質膜の粒子径は、所期の目的を達成するためには、40~150μmであることがより好ましく、50~100μmであることが更に好ましい。
【0018】
本発明の固体電解質膜は、M1として、Al、Ga、La、Y、Pr、Mg、Ca、SrまたはBaから選択される一種以上の元素が選択されるが、これらのうちAl、Ga、Laを含むことが好ましい。
【0019】
また、本発明の固体電解質膜は、M2として、Zr、Hf、TaまたはNbから選択される一種以上の元素が選択されるが、これらのうちZr、Taを含むことが好ましい。
【0020】
本発明のリチウム含有ガーネット結晶体からなる固体電解質膜は、前記した組成を有するが、好ましい典型的な材料としては、Li6.00Ga0.150Al0.100La3.00Zr1.75Ta0.250O12.0、Li6.00Ga0.150Al0.100La3.00Zr1.75Nb0.250O12.0等を挙げることができる。
【0021】
本発明のリチウム含有ガーネット結晶体からなる固体電解質膜は、断面方向に単一粒子にて構成されていることが特徴である。これにより、理論密度に対して、固体電解質膜の質量と実測の体積から算出される相対密度が90%以上に向上した緻密かつ堅牢で、粒子界面の抵抗成分を低減させて高いイオン伝導率を実現することができる。
【0022】
本発明のリチウム含有ガーネット結晶体からなる固体電解質膜は、リチウムイオン二次電池のセパレータとして好適に使用することができる。この場合、リチウムイオン二次電池は、前記固体電解質膜からなるセパレータの両側に、それぞれ正極および負極を設けた概略構成となる。もちろん、それ以外の従来からリチウム二次電池に使用されていた各種部材を必要に応じて用いることができる。
【0023】
次に、本発明の固体電解質膜の製造方法について説明する。
本発明のリチウム含有ガーネット結晶体からなる固体電解質は、ガーネット型構造を示すLiaM1
bM2
cOd(5.0≦a≦8.0、2.5≦b≦3.5、1.0≦c≦2.5、10≦d≦14、M1はAl、Ga、La、Y、Pr、Mg、Ca、SrまたはBaから選択される一種以上の元素、M2はZr、Hf、TaまたはNbから選択される一種以上の元素)の組成の固体電解質を合成した後、粉砕して固体電解質粉末を作製し、得られた微粒子電解質粉末を溶媒に溶解させてスラリーとし、該スラリーをキャリア基材上に塗工してグリーンシートを作製し、得られたグリーンシートを一対の焼成基材の間に挟み、焼成することにより製造することができる。
【0024】
(微粒子電解質粉末の合成(第1工程))
本発明の固体電解質膜を製造する場合、まず、各金属原料を所望のモル比となるように秤量する。
【0025】
ここで、本発明で用いられる各金属原料について述べる。
【0026】
リチウム原料としては、リチウムを含有するものであれば特に制限されず、Li2O、Li2CO3等が挙げられる。
【0027】
アルミニウム原料としては、アルミニウムを含有するものであれば特に制限されず、例えば、Al(NO3)3・9H2O、Al2O3等が挙げられる。
【0028】
ガリウム原料としては、ガリウムを含有するものであれば特に限定されず、例えば、Ga(NO3)3・nH2O、Ga2O、GaCl2,GaN等が挙げられる。
【0029】
ランタン原料としては、ランタンを含有するものであれば特に限定されず、例えば、La(NO3)3・6H2O、La2O3、La2(CO3)3等が挙げられる。
【0030】
イットリウム原料としては、イットリウムを含有するものであれば特に限定されず、例えば、Y2O3、YCl3等が挙げられる。
【0031】
プラセオジウム原料としては、プラセオジウムを含有するものであれば特に限定されず、例えば、PrO、Pr2O3、PrCl3等が挙げられる。
【0032】
マグネシウム原料としては、マグネシウムを含有するものであれば特に限定されず、例えば、MgO、MgCl2、MgF2等が挙げられる。
【0033】
カルシウム原料としては、カルシウムを含有するものであれば特に限定されず、例えば、CaO、CaO2、Ca(OH)2等が挙げられる。
【0034】
ストロンチウム原料としては、ストロンチウムを含有するものであれば特に限定されず、例えば、SrO、SrCl2、Sr(OH)2等が挙げられる。
【0035】
バリウム原料としては、バリウムを含有するものであれば特に限定されず、例えば、BaO、BaO2、BaCO3等が挙げられる。
【0036】
ジルコニウム原料としては、ジルコニウムを含むものであれば特に限定されず、例えば、ZrOCl2・8H2O、ZrO2、ZrC、ZrN等が挙げられる。
【0037】
ハフニウム原料としては、ハフニウムを含むものであれば特に限定されず、例えば、HfO2、HfCl4等が挙げられる。
【0038】
タンタル原料としては、タンタルを含むものであれば特に限定されず、例えば、TaCl4、Ta2O5等が挙げられる。
【0039】
ニオブ原料としては、ニオブを含むものであれば特に限定されず、例えば、NbO、Nb2O5、NbCl5等が挙げられる。
【0040】
各金属原料を秤量した後、リチウム原料以外の金属原料をエタノール等の有機溶媒に溶解し、撹拌機(スターラー)で混合する。ここで、クエン酸等のキレート錯体配位子およびエチレングリコールなどのキレート重合剤を用いてもよい。
【0041】
次に、これらの混合物を徐々に140~150℃程度まで上げながら4~5時間撹拌し高分子化(ゲル化)させる。十分にゲル化が進行した段階で、電気炉等の加熱装置にて300~400℃程度の温度で仮焼成し、C-C結合鎖またはC-H結合鎖を切断する。
【0042】
その後、メノウ乳鉢等にて仮焼粉末を粉砕した後に、電気炉等の加熱装置にて900~1000℃程度の温度で焼成し、前駆体となる酸化物を合成する。
【0043】
次に、得られた前駆体に所定比となるようにリチウム原料(例えば、LiO2)を加え、メノウ乳鉢等を用いて乾式混合を行った後、Ar等の不活性ガス雰囲気をフローさせた管状電気炉等で450~600℃、6~15時間焼成を行い、目的の固体電解質粉末を得る。
【0044】
(スラリーの調製(第2工程))
まず、バインダーを調製する。バインダーとしては、例えば、ポリビニルブチラール系バインダー、ジアミン、アジピン酸ビス(2-エチルヘキシル)をそれぞれ固体電解質粉末に対して所定の質量割合となるように調製する。バインダーに用いる材料はこれに限定されない。
【0045】
次に、バインダーを、例えばトルエンとブタノールを所定の体積割合で混合した溶媒に溶解させ、上記で作製した固体電解質膜を加え、混練機にて撹拌、分散させる。その後、例えば0.2kPa程度に減圧しながら撹拌を続け、スラリーを濃縮し、目的のスラリーを得る。
【0046】
(グリーンシートの作製(第3工程))
上記で得たスラリーを、PET等のキャリアフィルム上に、例えばドクターブレード法を用いて成形し、グリーンシートを作製する。
【0047】
このグリーンシートを、後述の実施例に示すような特定の焼結基材の間に挟んで、例えば電気炉にて1000~1100℃、3~5時間焼成を行う(第4工程)。
【0048】
以上のようにして、本発明のリチウム含有ガーネット結晶体からなる固体電解質膜が得られる。
【実施例0049】
以下に、実施例を示し、本発明の特徴とするところをより詳細に説明するが、本発明はここに記載の実施例に限定されるものではない。
【0050】
[実施例1]
(固体電解質粉末Li6.00Ga0.150Al0.100La3.00Zr1.75Ta0.250O12.0の合成(第1工程))
まず、Ga:Al:La:Zr:Ta=0.150:0.100:3.00:1.75:0.250のモル比となるようにGa原料、Al原料、La原料、Zr原料、Ta原料を秤量し、これらの原料をエタノール中に溶解させ、スターラーで混合した。
【0051】
各金属原料として、Ga(NO3)3・nH2O(高純度化学製、99.9%、このときnは8.5とした)、Al(NO3)3・9H2O(富士フィルム和光純薬製、99.9%)、La(NO3)3・6H2O(富士フィルム和光純薬製、99.9%)、ZrOCl2・8H2O(富士フィルム和光純薬製、99.0%)、TaCl5(レアメタリック社製、99.9%)を使用した。また、キレート錯体配位子としてクエン酸(富士フィルム和光純薬製、98%)、キレート重合剤としてエチレングリコール(富士フィルム和光純薬製、99.5%)を使用した。
【0052】
これらの混合物を、徐々に温度を140℃程度まで上げながら4~5時間程度撹拌し、高分子化(ゲル化)させた。十分にゲル化が進行した段階で、電気炉にて350℃で仮焼成を行い、炭化させた。すなわち、C-C結合鎖またはC-H結合鎖を切った。
【0053】
その後、メノウ乳鉢にて仮焼粉末を軽く粉砕し、再び電気炉で1000℃にて4時間、焼成を行い、前駆体となる酸化物Ga0.150Al0.100La3.00Zr1.75Ta0.250O9.00を合成した。
【0054】
この前駆体に所定比となるようにLi2O(富士フィルム和光純薬製、99.9%)加え、めのう乳鉢を用いて乾式混合を行った後、Arをフローさせた管状電気炉で600℃、24時間焼成を行い、目的の固体電解質粉末を得た。
【0055】
(スラリーの調製(第2工程))
まず、ポリビニルブチラール系バインダー(BM-S、積水化学工業製)、ジアミン(花王株式会社製)、アジピン酸ビス(2-エチルヘキシル)(富士フィルム和光純薬製、一級試薬)を上記にて作製した固体電解質粉末に対してそれぞれ6wt%、2wt%、1wt%となるように調整した。
【0056】
その後、これを、トルエン:ブタノールを85:15の体積比率で混合した溶媒に溶解させた。溶解を確認した後、固体電解質粉末を加え、YSZボール(ニッカトー製)ともに混練機(シンキー製、ARV-310LED)にて1000rpmにて撹拌を行い、分散させた。その後、YSZボールを取り除き、0.2kPaに減圧しながら撹拌を続け、スラリーを濃縮し、目的のスラリーを得た。
【0057】
(グリーンシートの作製(第3工程))
上記にて得られたスラリーを用いて幅10cm、長さ30cmにドクターブレード法で成形した。ブレードギャップ400μm、成形速度1cm/secにて自動塗工機(テスター産業株式会社製、PI-1210型)によってPETフィルム上へ塗工を行った。
【0058】
(グリーンシートの焼成(第4工程))
グリーンシートの焼成には特定の焼成基材を用いた。焼成基材を作製するため、粉体から合成を行った。Li:La:Zr=7:3:2のモル比となるように炭酸リチウム(富士フィルム和光純薬製、試薬特級)、酸化ランタン(関東化学工業株式会社、特級試薬)、酸化ジルコニウム(関東化学工業株式会社、特級試薬)を秤量した。これらを混合した後、アルミナるつぼ(ニッカトー製、C5型)に充填し、電気炉にて850℃、3時間焼成を行った。得られた焼成物を簡単に粉砕した後、一軸加圧プレスを用いてペレット状にした後、電気炉にて1100℃、3時間焼成し、焼成基材を得た。前述のグリーンシートを一対の焼成基材の間に挟み、電気炉にて1100℃、4時間焼成を行い、目的の固体電解質膜を得た。固体電解質膜の厚さは70μmであった。
【0059】
図1に実施例1で作製した固体電解質の粉末の走査型電子顕微鏡像(SEM像)を示す。
図1から明らかなように、凝集によって数μmの二次粒子が観察されるが、サブミクロンオーダーの一次粒子径を有する固体電解質の粉末である。
【0060】
図2に実施例1で作製した固体電解質膜の断面の走査型電子顕微鏡像(SEM像)を示す。
図2から明らかなように、固体電解質膜が断面方向に単一粒子にて構成されていることがわかる。断面方向の固体電解質膜を構成する粒子の粒径はSEM像の観察により、測定した。粒子の粒子径は70μmであった。また、固体電解質膜の理論密度(5.30g・cm
-1)に対する実施例1の固体電解質膜の質量と体積の実測値より求められる相対密度は91%であった。
【0061】
図3に実施例1で作製した固体電解質膜の断面のSEM画像(SEI)およびエネルギー分散型X線分光器(EDS)による元素マッピング分析((Al、Ga)及び(La、ZrとTa))の図を示す。
図3から明らかなように、固体電解質膜のLiを除く各金属元素が偏析することなく粒子内に均一に分散していることがわかる。
【0062】
[比較例1]
(固体電解質粉末Li6.00Ga0.150Al0.100La3.00Zr1.75Ta0.250O12.0の合成)
まず、Li:Ga:Al:La:Zr:Ta=6.00:0.150:0.100:3.00:1.75:0.250のモル比となるようにLi原料、Ga原料、Al原料、La原料、Zr原料、Ta原料を秤量し、混合した。
【0063】
各金属原料として、Ga2O3(富士フィルム和光純薬製、99.9%)、Al(OH)3(高純度化学製、99.9%)、Li2CO3(富士フィルム和光純薬製、99.9%)、La2O3(富士フィルム和光純薬製、99.99%)、ZrO2(高純度化学製、99.9%)、Ta2O5(富士フィルム和光純薬製、99.9%)を使用した。
【0064】
これらの原料を遊星型ボールミル(フリッチュ製、P-7)にて直径5mmのYSZボール(ニッカトー製)とエタノールともに容器に入れ500rpmにて1時間混合した。
【0065】
この混合物をアルミナるつぼ(ニッカトー製、C5型)に充填し、電気炉で850℃にて3時間、焼成を行い、固体電解質粉末Li6.00Ga0.150Al0.100La3.00Zr1.75Ta0.250O12.0を合成した。
【0066】
得られた固体電解質の粉末を遊星型ボールミル(フリッチュ製、P-7)にて直径5mmのYSZボール(ニッカトー製)とエタノールともに容器に入れふたたび、500rpmにて1時間混合した。
【0067】
(スラリーの調製、グリーンシートの作製、グリーンシートの焼成)
実施例1と同様に、スラリーを作製した後、グリーンシートを作製した。その後、実施例1で使用した焼成基材の間にこのグリーンシートを挟み、電気炉にて1100℃、4時間焼成を行い、目的の固体電解質膜を得た。
【0068】
図4に比較例1で作製した固体電解質の粉末の走査型電子顕微鏡像(SEM像)を示す。
図4から明らかなように、数μmの一次粒子径を有する固体電解質の粉末である。
【0069】
図5に比較例1で作製した固体電解質膜の断面の走査型電子顕微鏡像を示す。比較例1の固体電解質膜は粒径5μm以下であった。また、固体電解質膜の理論密度(5.30g・cm
-1)に対する実施例1の固体電解質膜の質量と体積の実測値より求められる相対密度は73%であった。
【0070】
図6に比較例1で作製した固体電解質膜の断面のSEM画像(SEI)およびエネルギー分散型X線分光器(EDS)による元素マッピング分析((Al、Ga)及び(La、ZrとTa))の図を示す。
図6から明らかなように、固体電解質膜のAl、Gaが粒子界面の一部で局在化しているのが観察できる。また、ZrおよびTaは粒子内部で濃度に差が生じており、不均一に分散していることがわかる。
【0071】
実施例1と比較例1の固体電解質膜のインピーダンスを電気化学測定システム(バイオロジック社製、SP-300-AH-2CH)により測定した。その測定結果を
図7に示す。まずLiを含まない前駆体を作製した後にLiを含有させるプロセスで作製した実施例1と、はじめからLiを含む原料で作製した比較例1では、実施例1の固体電解質膜は断面方向に単一の粒子で構成されているため、粒界界面の抵抗が観察されなかった。しかし、比較例1の固体電解質膜は粒子界面の抵抗が大きくなる粒界が数多く観察される。
【0072】
[実施例2]
(固体電解質粉末Li5.0Ga0.10Al0.10La3.0Zr0.60Ta1.4O12の合成)
実施例1と同様に、Ga:Al:La:Zr:Ta=0.10:0.10:3.0:0.60:1.4のモル比となるようにGa原料、Al原料、La原料、Zr原料、Ta原料を秤量し、これらの原料をエタノール中に溶解させ、スターラーで混合した。
【0073】
各金属原料として、Ga(NO3)3・nH2O(高純度化学製、99.9%、このときnは8.5とした)、Al(NO3)3・9H2O(富士フィルム和光純薬製、99.9%)、La(NO3)3・6H2O(富士フィルム和光純薬製、99.9%)、ZrOCl2・8H2O(富士フィルム和光純薬製、99.0%)、TaCl5(レアメタリック社製、99.9%)を使用した。また、キレート錯体配位子としてクエン酸(富士フィルム和光純薬製、98%)、キレート重合剤としてエチレングリコール(富士フィルム和光純薬製、99.5%)を使用した。
【0074】
これらの混合物を、徐々に温度を140℃程度まで上げながら4~5時間程度撹拌し、高分子化(ゲル化)させた。十分にゲル化が進行した段階で、電気炉にて350℃で仮焼成を行い、炭化させた。すなわち、C-C結合鎖またはC-H結合鎖を切った。
【0075】
その後、メノウ乳鉢にて仮焼粉末を軽く粉砕し、再び電気炉で1000℃にて4時間、焼成を行い、前駆体となる酸化物Ga0.10Al0.10La3.0Zr0.6Ta1.4O9.5を合成した。
【0076】
この前駆体に所定比となるようにLi2O(富士フィルム和光純薬製、99.9%)加え、めのう乳鉢を用いて乾式混合を行った後、Arをフローさせた管状電気炉で600℃、24時間焼成を行い、目的の固体電解質粉末を得た。
【0077】
(スラリーの調製、グリーンシートの作製、グリーンシートの焼成)
実施例1と同様に、スラリーを作製した後、グリーンシートを作製した。その後、実施例1で使用した焼成基材の間にこのグリーンシートを挟み、電気炉にて1100℃、4時間焼成を行い、目的の固体電解質膜を得た。
【0078】
図8に実施例2で作製した固体電解質膜の断面の走査型電子顕微鏡像(SEM像)を示す。
図8から明らかなように、固体電解質膜が断面方向に単一粒子にて構成されていることがわかる。断面方向の固体電解質膜を構成する粒子の粒径はSEM像の観察により、測定した。粒子の粒子径は80.9μmであった。また、固体電解質膜の理論密度(6.16g・cm
-1)に対する実施例2の固体電解質膜の質量と体積の実測値より求められる相対密度は93%であった。
【0079】
[比較例2]
(固体電解質粉末Li5.0Ga0.10Al0.10La3.0Zr0.60Ta1.4O12の合成)
比較例1と同様に、まず、Li:Ga:Al:La:Zr:Ta=5.0:0.10:0.10:3.00:0.60:1.4のモル比となるようにLi原料、Ga原料、Al原料、La原料、Zr原料、Ta原料を秤量し、混合した。
【0080】
各金属原料として、Ga2O3(富士フィルム和光純薬製、99.9%)、Al(OH)3(高純度化学製、99.9%)、Li2CO3(富士フィルム和光純薬製、99.9%)、La2O3(富士フィルム和光純薬製、99.99%)、ZrO2(高純度化学製、99.9%)、Ta2O5(富士フィルム和光純薬製、99.9%)を使用した。
【0081】
これらの原料を遊星型ボールミル(フリッチュ製、P-7)にて直径5mmのYSZボール(ニッカトー製)とエタノールともに容器に入れ500rpmにて1時間混合した。
【0082】
この混合物をアルミナるつぼ(ニッカトー製、C5型)に充填し、電気炉で850℃にて3時間、焼成を行い、固体電解質粉末Li5.0Ga0.10Al0.10La3.0Zr0.60Ta1.4O12を合成した。
【0083】
得られた固体電解質の粉末を遊星型ボールミル(フリッチュ製、P-7)にて直径5mmのYSZボール(ニッカトー製)とエタノールともに容器に入れふたたび、500rpmにて1時間混合した。
【0084】
(スラリーの調製、グリーンシートの作製、グリーンシートの焼成)
比較例1と同様に、スラリーを作製した後、グリーンシートを作製した。その後、比較例1で使用した焼成基材の間にこのグリーンシートを挟み、電気炉にて1100℃、4時間焼成を行い、目的の固体電解質膜を得た。
【0085】
図9に比較例2で作製した固体電解質膜の断面の走査型電子顕微鏡像を示す。比較例2の固体電解質膜は粒径5μm以下であった。また、固体電解質膜の理論密度(6.16g・cm
-1)に対する比較例2の固体電解質膜の質量と体積の実測値より求められる相対密度は74%であった。
【0086】
実施例2と比較例2の固体電解質膜のインピーダンスを電気化学測定システム(バイオロジック社製、SP-300-AH-2CH)により測定した。その測定結果を
図10に示す。まずLiを含まない前駆体を作製した後にLiを含有させるプロセスで作製した実施例2と、はじめからLiを含む原料で作製した比較例2では、実施例2の固体電解質膜は断面方向に単一の粒子で構成されているため、粒界界面の抵抗が観察されなかった。しかし、比較例2の固体電解質膜は粒子界面の抵抗が大きくなる粒界が数多く観察される。
【0087】
[実施例3]
(固体電解質粉末Li6.8La3.0Zr1.8Ta0.2O12の合成)
実施例1と同様に、La:Zr:Ta=3.0:1.8:0.2のモル比となるようにLa原料、Zr原料、Ta原料を秤量し、これらの原料をエタノール中に溶解させ、スターラーで混合した。
【0088】
各金属原料として、La(NO3)3・6H2O(富士フィルム和光純薬製、99.9%)、ZrOCl2・8H2O(富士フィルム和光純薬製、99.0%)、TaCl5(レアメタリック社製、99.9%)を使用した。また、キレート錯体配位子としてクエン酸(富士フィルム和光純薬製、98%)、キレート重合剤としてエチレングリコール(富士フィルム和光純薬製、99.5%)を使用した。
【0089】
これらの混合物を、徐々に温度を140℃程度まで上げながら4~5時間程度撹拌し、高分子化(ゲル化)させた。十分にゲル化が進行した段階で、電気炉にて350℃で仮焼成を行い、炭化させた。すなわち、C-C結合鎖またはC-H結合鎖を切った。
【0090】
その後、メノウ乳鉢にて仮焼粉末を軽く粉砕し、再び電気炉で1000℃にて4時間、焼成を行い、前駆体となる酸化物La3.0Zr1.8Ta0.2O8.6を合成した。
【0091】
この前駆体に所定比となるようにLi2O(富士フィルム和光純薬製、99.9%)加え、めのう乳鉢を用いて乾式混合を行った後、Arをフローさせた管状電気炉で600℃、24時間焼成を行い、目的の固体電解質粉末を得た。
【0092】
(スラリーの調製、グリーンシートの作製、グリーンシートの焼成)
実施例1と同様に、スラリーを作製した後、グリーンシートを作製した。その後、実施例1で使用した焼成基材の間にこのグリーンシートを挟み、電気炉にて1100℃、4時間焼成を行い、目的の固体電解質膜を得た。
【0093】
図11に実施例3で作製した固体電解質膜の断面の走査型電子顕微鏡像(SEM像)を示す。
図11から明らかなように、固体電解質膜が断面方向に単一粒子にて構成されていることがわかる。断面方向の固体電解質膜を構成する粒子の粒径はSEM像の観察により、測定した。粒子の粒子径は50.2μmであった。また、固体電解質膜の理論密度(5.23g・cm
-1)に対する実施例3の固体電解質膜の質量と体積の実測値より求められる相対密度は90%であった。
【0094】
[比較例3]
(固体電解質粉末Li6.8La3.0Zr1.8Ta0.2O12の合成)
比較例1と同様に、まず、Li:La:Zr:Ta=6.8:3.0:1.8:0.2のモル比となるようにLi原料、La原料、Zr原料、Ta原料を秤量し、混合した。
【0095】
各金属原料として、Li2CO3(富士フィルム和光純薬製、99.9%)、La2O3(富士フィルム和光純薬製、99.99%)、ZrO2(高純度化学製、99.9%)、Ta2O5(富士フィルム和光純薬製、99.9%)を使用した。
【0096】
これらの原料を遊星型ボールミル(フリッチュ製、P-7)にて直径5mmのYSZボール(ニッカトー製)とエタノールともに容器に入れ500rpmにて1時間混合した。
【0097】
この混合物をアルミナるつぼ(ニッカトー製、C5型)に充填し、電気炉で850℃にて3時間、焼成を行い、固体電解質粉末Li6.8La3.0Zr1.8Ta0.2O12を合成した。
【0098】
得られた固体電解質の粉末を遊星型ボールミル(フリッチュ製、P-7)にて直径5mmのYSZボール(ニッカトー製)とエタノールともに容器に入れふたたび、500rpmにて1時間混合した。
【0099】
(スラリーの調製、グリーンシートの作製、グリーンシートの焼成)
実施例1と同様に、スラリーを作製した後、グリーンシートを作製した。その後、実施例1で使用した焼成基材の間にこのグリーンシートを挟み、電気炉にて1100℃、4時間焼成を行い、目的の固体電解質膜を得た。
【0100】
図12に比較例3で作製した固体電解質膜の断面の走査型電子顕微鏡像を示す。比較例3の固体電解質膜は粒径5μm以下であった。また、固体電解質膜の理論密度(5.23g・cm
-1)に対する比較例3の固体電解質膜の質量と体積の実測値より求められる相対密度は68%であった。
【0101】
実施例3と比較例3の固体電解質膜のインピーダンスを電気化学測定システム(バイオロジック社製、SP-300-AH-2CH)により測定した。その測定結果を
図13に示す。まずLiを含まない前駆体を作製した後にLiを含有させるプロセスで作製した実施例1と、はじめからLiを含む原料で作製した比較例3では、実施例3の固体電解質膜は断面方向に単一の粒子で構成されているため、粒界界面の抵抗が観察されなかった。しかし、比較例3の固体電解質膜は粒子界面の抵抗が大きくなる粒界が数多く観察される。
【0102】
[実施例4]
(固体電解質粉末Li6.9Mg0.10Ca0.10Sr0.10Ba0.10La2.6Zr1.50Nb0.5O12の合成)
実施例1と同様に、Mg:Ca:Sr:Ba:La:Zr:Nb=0.10:0.10:0.10:0.10:2.6:1.5:0.5のモル比となるようにMg原料、Ca原料、Sr原料、Ba原料、La原料、Zr原料、Nb原料を秤量し、これらの原料をエタノール中に溶解させ、スターラーで混合した。
【0103】
各金属原料として、Mg(NO3)2・6H2O(富士フィルム和光純薬製、99.5%)、Ca(NO3)2・4H2O(富士フィルム和光純薬製、99.9%)、Sr(NO3)2(富士フィルム和光純薬製、試薬特級)、Ba(NO3)2(富士フィルム和光純薬製、99.9%)、La(NO3)3・6H2O(富士フィルム和光純薬製、99.9%)、ZrOCl2・8H2O(富士フィルム和光純薬製、99.0%)、NbCl5(富士フィルム和光純薬製、95.0%)を使用した。また、キレート錯体配位子としてクエン酸(富士フィルム和光純薬製、98%)、キレート重合剤としてエチレングリコール(富士フィルム和光純薬製、99.5%)を使用した。
【0104】
これらの混合物を、徐々に温度を140℃程度まで上げながら4~5時間程度撹拌し、高分子化(ゲル化)させた。十分にゲル化が進行した段階で、電気炉にて350℃で仮焼成を行い、炭化させた。すなわち、C-C結合鎖またはC-H結合鎖を切った。
【0105】
その後、メノウ乳鉢にて仮焼粉末を軽く粉砕し、再び電気炉で1000℃にて4時間、焼成を行い、前駆体となる酸化物Mg0.10Ca0.10Sr0.10Ba0.10La2.6Zr1.50Nb0.5O8.55を合成した。
【0106】
この前駆体に所定比となるようにLi2O(富士フィルム和光純薬製、99.9%)加え、めのう乳鉢を用いて乾式混合を行った後、Arをフローさせた管状電気炉で600℃、24時間焼成を行い、目的の固体電解質粉末を得た。
【0107】
(スラリーの調製、グリーンシートの作製、グリーンシートの焼成)
実施例1と同様に、スラリーを作製した後、グリーンシートを作製した。その後、実施例1で使用した焼成基材の間にこのグリーンシートを挟み、電気炉にて1100℃、4時間焼成を行い、目的の固体電解質膜を得た。
【0108】
図14に実施例4で作製した固体電解質膜の断面の走査型電子顕微鏡像(SEM像)を示す。
図14から明らかなように、固体電解質膜が断面方向に単一粒子にて構成されていることがわかる。断面方向の固体電解質膜を構成する粒子の粒径はSEM像の観察により、測定した。粒子の粒子径は54.7μmであった。また、固体電解質膜の理論密度(5.80g・cm
-1)に対する実施例4の固体電解質膜の質量と体積の実測値より求められる相対密度は90%であった。
【0109】
[比較例4]
(固体電解質粉末Li6.9Mg0.10Ca0.10Sr0.10Ba0.10La2.6Zr1.50Nb0.5O12の合成)
比較例1と同様に、まず、Li:Mg:Ca:Sr:Ba:La:Zr:Nb=6.9:0.10:0.10:0.10:0.10:2.6:1.5:0.5のモル比となるようにLi原料、Mg原料、Ca原料、Sr原料、Ba原料、La原料、Zr原料、Nb原料を秤量し、混合した。
【0110】
各金属原料として、MgO(富士フィルム和光純薬製、99.9%)、CaCO3(富士フィルム和光純薬製、99.95%)、SrCO3(富士フィルム和光純薬製、99.9%)、BaCO3(富士フィルム和光純薬製、99%)、Li2CO3(富士フィルム和光純薬製、99.9%)、La2O3(富士フィルム和光純薬製、99.99%)、ZrO2(高純度化学製、99.9%)、Nb2O5(富士フィルム和光純薬製、99.9%)を使用した。
【0111】
これらの原料を遊星型ボールミル(フリッチュ製、P-7)にて直径5mmのYSZボール(ニッカトー製)とエタノールともに容器に入れ500rpmにて1時間混合した。
【0112】
この混合物をアルミナるつぼ(ニッカトー製、C5型)に充填し、電気炉で850℃にて3時間、焼成を行い、固体電解質粉末Li6.9Mg0.10Ca0.10Sr0.10Ba0.10La2.6Zr1.50Nb0.5O12を合成した。
【0113】
得られた固体電解質の粉末を遊星型ボールミル(フリッチュ製、P-7)にて直径5mmのYSZボール(ニッカトー製)とエタノールともに容器に入れふたたび、500rpmにて1時間混合した。
【0114】
(スラリーの調製、グリーンシートの作製、グリーンシートの焼成)
比較例1と同様に、スラリーを作製した後、グリーンシートを作製した。その後、比較例1で使用した焼成基材の間にこのグリーンシートを挟み、電気炉にて1100℃、4時間焼成を行い、目的の固体電解質膜を得た。
【0115】
図15に比較例4で作製した固体電解質膜の断面の走査型電子顕微鏡像を示す。比較例4の固体電解質膜は粒径5μm以下であった。また、固体電解質膜の理論密度(5.80g・cm
-1)に対する比較例4の固体電解質膜の質量と体積の実測値より求められる相対密度は72%であった。
【0116】
実施例4と比較例4の固体電解質膜のインピーダンスを電気化学測定システム(バイオロジック社製、SP-300-AH-2CH)により測定した。その測定結果を
図16に示す。まずLiを含まない前駆体を作製した後にLiを含有させるプロセスで作製した実施例4と、はじめからLiを含む原料で作製した比較例4では、実施例4の固体電解質膜は断面方向に単一の粒子で構成されているため、粒界界面の抵抗が観察されなかった。しかし、比較例4の固体電解質膜は粒子界面の抵抗が大きくなる粒界が数多く観察される。