IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士フイルム株式会社の特許一覧

特開2022-115881積層体、積層体を備えた物品、及び画像表示装置
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022115881
(43)【公開日】2022-08-09
(54)【発明の名称】積層体、積層体を備えた物品、及び画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20220802BHJP
   B32B 7/022 20190101ALI20220802BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20220802BHJP
   C08J 7/04 20200101ALI20220802BHJP
   C08G 59/32 20060101ALI20220802BHJP
   C08G 77/24 20060101ALI20220802BHJP
   B32B 27/16 20060101ALI20220802BHJP
   C08J 7/046 20200101ALI20220802BHJP
【FI】
B32B27/00 101
B32B7/022
G02B1/14
C08J7/04 A CER
C08G59/32
C08G77/24
B32B27/16 101
C08J7/046 CEZ
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071039
(22)【出願日】2022-04-22
(62)【分割の表示】P 2021502154の分割
【原出願日】2020-02-20
(31)【優先権主張番号】P 2019034955
(32)【優先日】2019-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芥川 暢之
(72)【発明者】
【氏名】田村 顕夫
(72)【発明者】
【氏名】北村 哲
(72)【発明者】
【氏名】永田 裕三
(57)【要約】      (修正有)
【課題】耐擦傷性及び繰り返し折り曲げ耐性に優れ、かつ白化が抑制された積層体、該積層体を備えた物品、並びに画像表示装置を提供する。
【解決手段】基材と、ハードコート層と、耐擦傷層とをこの順に有する積層体であって、上記ハードコート層は、カチオン重合性基を有するポリオルガノシルセスキオキサン(a1)を含むハードコート層形成用組成物の硬化物を含み、上記耐擦傷層は、ラジカル重合性化合物(c1)を含む耐擦傷層形成用組成物の硬化物を含む、積層体、上記積層体を備えた物品、並びに画像表示装置を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、ハードコート層と、耐擦傷層とをこの順に有する積層体であって、
前記ハードコート層は、カチオン重合性基を有するポリオルガノシルセスキオキサン(a1)を含むハードコート層形成用組成物の硬化物を含み、
前記耐擦傷層は、ラジカル重合性化合物(c1)を含む耐擦傷層形成用組成物の硬化物を含み、
#0000番のスチールウールで1kg/cmの荷重をかけながら、前記耐擦傷層の表面を往復100回擦った場合に傷が生じない、積層体。
【請求項2】
前記耐擦傷層を内側にして、曲率半径2mmで180°折り曲げ試験を30万回繰り返し行った場合にクラックが発生しない、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記ハードコート層形成用組成物が、さらに、フッ素原子を含有する基と、カチオン重合性基と、ラジカル重合性基とを有するポリマー(S)を含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
前記ポリマー(S)が、ポリオルガノシルセスキオキサンである、請求項3に記載の積層体。
【請求項5】
前記ポリマー(S)が、下記一般式(S-1)で表される構成単位、下記一般式(S-2)で表される構成単位、及び下記一般式(S-3)で表される構成単位を有する、請求項4に記載の積層体。
【化1】
一般式(S-1)中、Lは単結合又は2価の連結基を表し、Qはフッ素原子を含有する基を表す。
一般式(S-2)中、Lは単結合又は2価の連結基を表し、Qはカチオン重合性基を表す。
一般式(S-3)中、Lは単結合又は2価の連結基を表し、Qはラジカル重合性基を表す。
【請求項6】
前記ポリマー(S)における、フッ素原子を有する構成単位の含有モル比率が、全構成単位に対して、1モル%超70モル%以下である、請求項3~5のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項7】
前記ポリマー(S)における、ラジカル重合性基を有する構成単位の含有モル比率が、全構成単位に対して、1モル%超である、請求項3~6のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項8】
前記耐擦傷層の膜厚が、3.0μm未満である、請求項1~7のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項9】
前記基材が、イミド系ポリマー及びアラミド系ポリマーから選ばれる少なくとも1種のポリマーを含有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項10】
前記ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)における前記カチオン重合性基が、エポキシ基である、請求項1~9のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項11】
前記ハードコート層形成用組成物が、前記ポリマー(S)を、前記ハードコート層形成用組成物の全固形分に対して、0.001~5質量%含有する、請求項3~6のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の積層体を備えた物品。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか1項に記載の積層体を表面保護フィルムとして備えた画像表示装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、積層体を備えた物品、及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
陰極管(CRT)を利用した表示装置、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、蛍光表示ディスプレイ(VFD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、及び液晶ディスプレイ(LCD)のような画像表示装置では、表示面への傷付きを防止するために、基材上にハードコート層を有する積層体(ハードコートフィルム)を設けることが好適である。
【0003】
たとえば、特許文献1には、基材上に、カチオン硬化性シリコーン樹脂及びレベリング剤を含む硬化性組成物の硬化物からなるハードコート層を有するハードコートフィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】日本国特開2018-83915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、たとえばスマートフォンなどにおいて、極薄型のフレキシブルなディスプレイに対するニーズが高まってきており、これに伴って、耐擦傷性と繰り返し折り曲げ耐性(繰り返し折り曲げてもクラックが発生しない性質)を両立することができる光学フィルムが強く求められている。また、ハードコート層などの塗布層を乾燥させる際などに生じる膜厚ムラなどに起因する白化が少ないことも求められている。
本発明者らが検討したところ、特許文献1に記載のハードコートフィルムは、耐擦傷性と繰り返し折り曲げ耐性が両立できないことが分かった。
本発明の課題は、耐擦傷性及び繰り返し折り曲げ耐性に優れ、かつ白化が抑制された積層体、上記積層体を備えた物品、並びに画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討し、下記手段により上記課題が解消できることを見出した。
[1]
基材と、ハードコート層と、耐擦傷層とをこの順に有する積層体であって、
上記ハードコート層は、カチオン重合性基を有するポリオルガノシルセスキオキサン(a1)を含むハードコート層形成用組成物の硬化物を含み、
上記耐擦傷層は、ラジカル重合性化合物(c1)を含む耐擦傷層形成用組成物の硬化物を含み、
#0000番のスチールウールで1kg/cmの荷重をかけながら、上記耐擦傷層の表面を往復100回擦った場合に傷が生じない、積層体。
[2]
上記耐擦傷層を内側にして、曲率半径2mmで180°折り曲げ試験を30万回繰り返し行った場合にクラックが発生しない、[1]に記載の積層体。
[3]
上記ハードコート層形成用組成物が、さらに、フッ素原子を含有する基と、カチオン重合性基と、ラジカル重合性基とを有するポリマー(S)を含む、[1]に記載の積層体。
[4]
上記ポリマー(S)が、ポリオルガノシルセスキオキサンである、[3]に記載の積層体。
[5]
上記ポリマー(S)が、下記一般式(S-1)で表される構成単位、下記一般式(S-2)で表される構成単位、及び下記一般式(S-3)で表される構成単位を有する、[4]に記載の積層体。
【化1】
一般式(S-1)中、Lは単結合又は2価の連結基を表し、Qはフッ素原子を含有する基を表す。
一般式(S-2)中、Lは単結合又は2価の連結基を表し、Qはカチオン重合性基を表す。
一般式(S-3)中、Lは単結合又は2価の連結基を表し、Qはラジカル重合性基を表す。
[6]
上記ポリマー(S)における、フッ素原子を有する構成単位の含有モル比率が、全構成単位に対して、1モル%超70モル%以下である、[3]~[5]のいずれか1項に記載の積層体。
[7]
上記ポリマー(S)における、ラジカル重合性基を有する構成単位の含有モル比率が、全構成単位に対して、1モル%超である、[3]~[6]のいずれか1項に記載の積層体。
[8]
上記耐擦傷層の膜厚が、3.0μm未満である、[1]~[7]のいずれか1項に記載の積層体。
[9]
上記基材が、イミド系ポリマー及びアラミド系ポリマーから選ばれる少なくとも1種のポリマーを含有する、[1]~[8]のいずれか1項に記載の積層体。
[10]
上記ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)における上記カチオン重合性基が、エポキシ基である、[1]~[9]のいずれか1項に記載の積層体。
[11]
上記ハードコート層形成用組成物が、上記ポリマー(S)を、上記ハードコート層形成用組成物の全固形分に対して、0.001~5質量%含有する、[3]~[6]のいずれか1項に記載の積層体。
[12]
[1]~[11]のいずれか1項に記載の積層体を備えた物品。
[13]
[1]~[11]のいずれか1項に記載の積層体を表面保護フィルムとして備えた画像表示装置。
本発明は、上記[1]~[13]に係るものであるが、本明細書には参考のためその他の事項についても記載した。
【0007】
<1>
基材と、ハードコート層と、耐擦傷層とをこの順に有する積層体であって、
上記ハードコート層は、
カチオン重合性基を有するポリオルガノシルセスキオキサン(a1)、及び
フッ素原子を含有する基と、カチオン重合性基と、ラジカル重合性基とを有するポリマー(S)を含むハードコート層形成用組成物の硬化物を含み、
上記耐擦傷層は、ラジカル重合性化合物(c1)を含む耐擦傷層形成用組成物の硬化物を含み、
上記耐擦傷層を内側にして、曲率半径2mmで180°折り曲げ試験を30万回繰り返し行った場合にクラックが発生せず、かつ、
#0000番のスチールウールで1kg/cmの荷重をかけながら、上記耐擦傷層の表面を往復100回擦った場合に傷が生じない、積層体。
<2>
上記ポリマー(S)が、ポリオルガノシルセスキオキサンである、<1>に記載の積層体。
<3>
上記ポリマー(S)が、下記一般式(S-1)で表される構成単位、下記一般式(S-2)で表される構成単位、及び下記一般式(S-3)で表される構成単位を有する、<2>に記載の積層体。
【0008】
【化2】
【0009】
一般式(S-1)中、Lは単結合又は2価の連結基を表し、Qはフッ素原子を含有する基を表す。
一般式(S-2)中、Lは単結合又は2価の連結基を表し、Qはカチオン重合性基を表す。
一般式(S-3)中、Lは単結合又は2価の連結基を表し、Qはラジカル重合性基を表す。
<4>
上記ポリマー(S)における、フッ素原子を有する構成単位の含有モル比率が、全構成単位に対して、1モル%超70モル%以下である、<1>~<3>のいずれか1項に記載の積層体。
<5>
上記ポリマー(S)における、ラジカル重合性基を有する構成単位の含有モル比率が、全構成単位に対して、1モル%超である、<1>~<4>のいずれか1項に記載の積層体。
<6>
上記耐擦傷層の膜厚が、3.0μm未満である、<1>~<5>のいずれか1項に記載の積層体。
<7>
上記基材が、イミド系ポリマー及びアラミド系ポリマーから選ばれる少なくとも1種のポリマーを含有する、<1>~<6>のいずれか1項に記載の積層体。
<8>
上記ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)における上記カチオン重合性基が、エポキシ基である、<1>~<7>のいずれか1項に記載の積層体。
<9>
上記ハードコート層形成用組成物が、上記ポリマー(S)を、上記ハードコート層形成用組成物の全固形分に対して、0.001~5質量%含有する、<1>~<8>のいずれか1項に記載の積層体。
<10>
<1>~<9>のいずれか1項に記載の積層体を備えた物品。
<11>
<1>~<9>のいずれか1項に記載の積層体を表面保護フィルムとして備えた画像表示装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耐擦傷性及び繰り返し折り曲げ耐性に優れ、かつ白化が抑制された積層体、上記積層体を備えた物品、並びに画像表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本明細書において、数値が物性値、特性値等を表す場合に、「(数値1)~(数値2)」という記載は「(数値1)以上(数値2)以下」の意味を表す。また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」との記載は、「アクリレート及びメタクリレートの少なくともいずれか」の意味を表す。「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリロイル」等も同様である。
【0012】
[積層体]
本発明の積層体は、
基材と、ハードコート層と、耐擦傷層とをこの順に有する積層体であって、
上記ハードコート層は、
カチオン重合性基を有するポリオルガノシルセスキオキサン(a1)、及び
フッ素原子を含有する基と、カチオン重合性基と、ラジカル重合性基とを有するポリマー(S)を含むハードコート層形成用組成物の硬化物を含み、
上記耐擦傷層は、ラジカル重合性化合物(c1)を含む耐擦傷層形成用組成物の硬化物を含み、
上記耐擦傷層を内側にして、曲率半径2mmで180°折り曲げ試験を30万回繰り返し行った場合にクラックが発生せず、かつ、
#0000番のスチールウールで1kg/cmの荷重をかけながら、上記耐擦傷層の表面を往復100回擦った場合に傷が生じない、積層体である。
【0013】
本発明の積層体が、耐擦傷性及び繰り返し折り曲げ耐性に優れるメカニズムについて、詳細は明らかではないが、本発明者らは以下のように推察している。
カチオン重合性基を有するポリオルガノシルセスキオキサン(a1)は、ハードコート層に硬度と耐屈曲性を付与できる素材であるが、カチオン重合性基を有するポリオルガノシルセスキオキサン(a1)を含むハードコート層形成用組成物の硬化物を含むハードコート層上に、ラジカル重合性化合物(c1)を含む耐擦傷層形成用組成物の硬化物を形成した場合、ハードコート層はカチオン重合系であり、耐擦傷層はラジカル重合系であるため、両層の重合系が異なっており、層間の密着性が弱く、耐擦傷性の向上が低くなっていたと考えられる。
本発明では、ハードコート層形成用組成物に、フッ素原子を含有する基と、カチオン重合性基と、ラジカル重合性基とを有するポリマー(S)を添加することにより、このポリマー(S)が、層間密着剤として機能し、層間の密着性が強くなり、耐擦傷性が優れるものとなったと考えられる。
より詳細には、ポリマー(S)はフッ素原子を含有する基を有するため、ハードコート層形成用組成物を塗布したときに、ポリマー(S)がハードコート層表面(空気界面側表面)に偏在し、効率よく層間を密着させることができる。また、フッ素原子を含有する基の作用により、塗布液の表面張力が低下し、マランゴニ対流や風乾燥ムラ等が抑えられるため、表面散乱に起因する白化を抑制することができると考えられる。
ポリマー(S)はカチオン重合性基を有するため、ハードコート層の素材であるカチオン重合性基を有するポリオルガノシルセスキオキサン(a1)と重合反応により結合することができる。
また、ポリマー(S)はラジカル重合性基を有するため、耐擦傷層の素材であるラジカル重合性化合物(c1)と重合反応により結合することができる。
したがって、ポリマー(S)はハードコート層の素材と耐擦傷層の素材の両方と結合することができるため、層間の密着性を高めることができ、これによって、耐擦傷性を向上することができると考えられる。
【0014】
<基材>
本発明の積層体は基材を含む。
基材は、可視光領域の透過率が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。
【0015】
(ポリマー)
基材はポリマーを含むことが好ましい。
ポリマーとしては、光学的な透明性、機械的強度、熱安定性などに優れるポリマーが好ましい。
【0016】
ポリマーとしては、例えば、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系ポリマー、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマーなどが挙げられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ノルボルネン系樹脂、エチレン・プロピレン共重合体などのポリオレフィン系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロン、芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、トリアセチルセルロースに代表されるセルロース系ポリマー、又は上記ポリマー同士の共重合体、上記ポリマー同士を混合したポリマーも挙げられる。
【0017】
特に、芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー及びイミド系ポリマーは、JIS(日本工業規格) P8115(2001)に従いMIT試験機によって測定した破断折り曲げ回数が大きく、硬度も比較的高いことから、基材として好ましく用いることができる。例えば、特許第5699454号公報の実施例1にあるような芳香族ポリアミド、特表2015-508345号公報、特表2016-521216号公報、及びWO2017/014287号公報に記載のポリイミドを基材として好ましく用いることができる。
アミド系ポリマーとしては、芳香族ポリアミド(アラミド系ポリマー)が好ましい。
基材は、イミド系ポリマー及びアラミド系ポリマーから選ばれる少なくとも1種のポリマーを含有することが好ましい。
【0018】
また、基材は、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の紫外線硬化型、熱硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。
【0019】
(柔軟化素材)
基材は、上記のポリマーを更に柔軟化する素材を含有しても良い。柔軟化素材とは、破断折り曲げ回数を向上させる化合物を指し、柔軟化素材としては、ゴム質弾性体、脆性改良剤、可塑剤、スライドリングポリマー等を用いることが出来る。
柔軟化素材として具体的には、特開2016-167043号公報における段落番号[0051]~[0114]に記載の柔軟化素材を好適に用いることができる。
【0020】
柔軟化素材は、ポリマーに単独で混合しても良いし、複数を適宜併用して混合しても良いし、また、ポリマーと混合せずに、柔軟化素材のみを単独又は複数併用で用いて基材としても良い。
【0021】
これらの柔軟化素材を混合する量は、とくに制限はなく、単独で十分な破断折り曲げ回数を持つポリマーを単独でフィルムの基材としても良いし、柔軟化素材を混合しても良いし、すべてを柔軟化素材(100%)として十分な破断折り曲げ回数を持たせても良い。
【0022】
(その他の添加剤)
基材には、用途に応じた種々の添加剤(例えば、紫外線吸収剤、マット剤、酸化防止剤、剥離促進剤、レターデーション(光学異方性)調節剤、など)を添加できる。それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点又は沸点において特に限定されるものではない。また添加剤を添加する時期は基材を作製する工程において何れの時点で添加しても良く、素材調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。
その他の添加剤としては、特開2016-167043号公報における段落番号[0117]~[0122]に記載の添加剤を好適に用いることができる。
【0023】
以上の添加剤は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール化合物、トリアジン化合物、ベンゾオキサジン化合物を挙げることができる。ここでベンゾトリアゾール化合物とは、ベンゾトリアゾール環を有する化合物であり、具体例としては、例えば特開2013-111835号公報段落0033に記載されている各種ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を挙げることができる。トリアジン化合物とは、トリアジン環を有する化合物であり、具体例としては、例えば特開2013-111835号公報段落0033に記載されている各種トリアジン系紫外線吸収剤を挙げることができる。ベンゾオキサジン化合物としては、例えば特開2014-209162号公報段落0031に記載されているものを用いることができる。基材中の紫外線吸収剤の含有量は、例えば基材に含まれるポリマー100質量部に対して0.1~10質量部程度であるが、特に限定されるものではない。また、紫外線吸収剤については、特開2013-111835号公報段落0032も参照できる。なお、本発明においては、耐熱性が高く揮散性の低い紫外線吸収剤が好ましい。かかる紫外線吸収剤としては、例えば、UVSORB101(富士フイルムファインケミカルズ株式会社製)、TINUVIN 360、TINUVIN 460、TINUVIN 1577(BASF社製)、LA-F70、LA-31、LA-46(ADEKA社製)などが挙げられる。
【0025】
基材は、透明性の観点から、基材に用いる柔軟性素材及び各種添加剤と、ポリマーとの屈折率の差が小さいことが好ましい。
【0026】
(イミド系ポリマーを含む基材)
基材として、イミド系ポリマーを含む基材を好ましく用いることができる。本明細書において、イミド系ポリマーとは、式(PI)、式(a)、式(a’)及び式(b)で表される繰り返し構造単位を少なくとも1種以上含む重合体を意味する。なかでも、式(PI)で表される繰り返し構造単位が、イミド系ポリマーの主な構造単位であると、フィルムの強度及び透明性の観点で好ましい。式(PI)で表される繰り返し構造単位は、イミド系ポリマーの全繰り返し構造単位に対し、好ましくは40モル%以上であり、より好ましくは50モル%以上であり、さらに好ましくは70モル%以上であり、特に好ましくは90モル%以上であり、最も好ましくは98モル%以上である。
【0027】
【化3】
【0028】
式(PI)中のGは4価の有機基を表し、Aは2価の有機基を表す。式(a)中のGは3価の有機基を表し、Aは2価の有機基を表す。式(a’)中のGは4価の有機基を表し、Aは2価の有機基を表す。式(b)中のG及びAは、それぞれ2価の有機基を表す。
【0029】
式(PI)中、Gで表される4価の有機基の有機基(以下、Gの有機基ということがある)としては、非環式脂肪族基、環式脂肪族基及び芳香族基からなる群から選ばれる基が挙げられる。Gの有機基は、イミド系ポリマーを含む基材の透明性及び屈曲性の観点から、4価の環式脂肪族基又は4価の芳香族基であることが好ましい。芳香族基としては、単環式芳香族基、縮合多環式芳香族基及び2以上の芳香族環を有しそれらが直接または結合基により相互に連結された非縮合多環式芳香族基等が挙げられる。基材の透明性及び着色の抑制の観点から、Gの有機基は、環式脂肪族基、フッ素系置換基を有する環式脂肪族基、フッ素系置換基を有する単環式芳香族基、フッ素系置換基を有する縮合多環式芳香族基又はフッ素系置換基を有する非縮合多環式芳香族基であることが好ましい。本明細書においてフッ素系置換基とは、フッ素原子を含む基を意味する。フッ素系置換基は、好ましくはフルオロ基(フッ素原子,-F)及びパーフルオロアルキル基であり、さらに好ましくはフルオロ基及びトリフルオロメチル基である。
【0030】
より具体的には、Gの有機基は、例えば、飽和又は不飽和シクロアルキル基、飽和又は不飽和へテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、アルキルアリール基、ヘテロアルキルアリール基、及び、これらのうちの任意の2つの基(同一でもよい)を有しこれらが直接又は結合基により相互に連結された基から選ばれる。結合基としては、-O-、炭素数1~10のアルキレン基、-SO-、-CO-又は-CO-NR-(Rは、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1~3のアルキル基又は水素原子を表す)が挙げられる。
【0031】
Gで表される4価の有機基の炭素数は通常2~32であり、好ましくは4~15であり、より好ましくは5~10であり、さらに好ましくは6~8である。Gの有機基が環式脂肪族基又は芳香族基である場合、これらの基を構成する炭素原子のうちの少なくとも1つがヘテロ原子で置き換えられていてもよい。ヘテロ原子としては、O、N又はSが挙げられる。
【0032】
Gの具体例としては、以下の式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)又は式(26)で表される基が挙げられる。式中の*は結合手を示す。式(26)中のZは、単結合、-O-、-CH-、-C(CH-、-Ar-O-Ar-、-Ar-CH-Ar-、-Ar-C(CH-Ar-又は-Ar-SO-Ar-を表す。Arは炭素数6~20のアリール基を表し、例えば、フェニレン基であってもよい。これらの基の水素原子のうち少なくとも1つが、フッ素系置換基で置換されていてもよい。
【0033】
【化4】
【0034】
式(PI)中、Aで表される2価の有機基の有機基(以下、Aの有機基ということがある)としては、非環式脂肪族基、環式脂肪族基及び芳香族基からなる群から選択される基が挙げられる。Aで表される2価の有機基は、2価の環式脂肪族基及び2価の芳香族基から選ばれることが好ましい。芳香族基としては、単環式芳香族基、縮合多環式芳香族基、及び2以上の芳香族環を有しそれらが直接または結合基により相互に連結された非縮合多環式芳香族基が挙げられる。基材の透明性、及び着色の抑制の観点から、Aの有機基には、フッ素系置換基が導入されていることが好ましい。
【0035】
より具体的には、Aの有機基は、例えば、飽和又は不飽和シクロアルキル基、飽和又は不飽和へテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、アルキルアリール基、ヘテロアルキルアリール基、及びこれらの内の任意の2つの基(同一でもよい)を有しそれらが直接又は結合基により相互に連結された基から選ばれる。ヘテロ原子としては、O、N又はSが挙げられ、結合基としては、-O-、炭素数1~10のアルキレン基、-SO-、-CO-又は-CO-NR-(Rはメチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1~3のアルキル基又は水素原子を含む)が挙げられる。
【0036】
Aで表される2価の有機基の炭素数は、通常2~40であり、好ましくは5~32であり、より好ましくは12~28であり、さらに好ましくは24~27である。
【0037】
Aの具体例としては、以下の式(30)、式(31)、式(32)、式(33)又は式(34)で表される基が挙げられる。式中の*は結合手を示す。Z~Zは、それぞれ独立して、単結合、-O-、-CH-、-C(CH-、-SO-、-CO-又は―CO―NR-(Rはメチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1~3のアルキル基又は水素原子を表す)を表す。下記の基において、ZとZ、及び、ZとZは、それぞれ、各環に対してメタ位又はパラ位にあることが好ましい。また、Zと末端の単結合、Zと末端の単結合、及び、Zと末端の単結合とは、それぞれメタ位又はパラ位にあることが好ましい。Aの1つの例において、Z及びZが-O-であり、かつ、Zが-CH-、-C(CH-又は-SO-である。これらの基の水素原子の1つ又は2つ以上が、フッ素系置換基で置換されていてもよい。
【0038】
【化5】
【0039】
A及びGの少なくとも一方を構成する水素原子のうちの少なくとも1つの水素原子が、フッ素系置換基、水酸基、スルホン基及び炭素数1~10のアルキル基等からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基で置換されていてもよい。また、Aの有機基及びGの有機基がそれぞれ環式脂肪族基又は芳香族基である場合に、A及びGの少なくとも一方がフッ素系置換基を有することが好ましく、A及びGの両方がフッ素系置換基を有することがより好ましい。
【0040】
式(a)中のGは、3価の有機基である。この有機基は、3価の基である点以外は、式(PI)中のGの有機基と同様の基から選択することができる。Gの例としては、Gの具体例として挙げられた式(20)~式(26)で表される基の4つの結合手のうち、いずれか1つが水素原子に置き換わった基を挙げることができる。式(a)中のAは式(PI)中のAと同様の基から選択することができる。
【0041】
式(a’)中のGは、式(PI)中のGと同様の基から選択することができる。式(a’)中のAは、式(PI)中のAと同様の基から選択することができる。
【0042】
式(b)中のGは、2価の有機基である。この有機基は、2価の基である点以外は、式(PI)中のGの有機基と同様の基から選択することができる。Gの例としては、Gの具体例として挙げられた式(20)~式(26)で表される基の4つの結合手のうち、いずれか2つが水素原子に置き換わった基を挙げることができる。式(b)中のAは、式(PI)中のAと同様の基から選択することができる。
【0043】
イミド系ポリマーを含む基材に含まれるイミド系ポリマーは、ジアミン類と、テトラカルボン酸化合物(酸クロライド化合物およびテトラカルボン酸二無水物などのテトラカルボン酸化合物類縁体を含む)又はトリカルボン酸化合物(酸クロライド化合物及びトリカルボン酸無水物などのトリカルボン酸化合物類縁体を含む)の少なくとも1種類とを重縮合することによって得られる縮合型高分子であってもよい。さらにジカルボン酸化合物(酸クロライド化合物などの類縁体を含む)を重縮合させてもよい。式(PI)又は式(a’)で表される繰り返し構造単位は、通常、ジアミン類及びテトラカルボン酸化合物から誘導される。式(a)で表される繰り返し構造単位は、通常、ジアミン類及びトリカルボン酸化合物から誘導される。式(b)で表される繰り返し構造単位は、通常、ジアミン類及びジカルボン酸化合物から誘導される。
【0044】
テトラカルボン酸化合物としては、芳香族テトラカルボン酸化合物、脂環式テトラカルボン酸化合物及び非環式脂肪族テトラカルボン酸化合物等が挙げられる。これらは、2種以上を併用してもよい。テトラカルボン酸化合物は、好ましくはテトラカルボン酸二無水物である。テトラカルボン酸二無水物としては、芳香族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0045】
イミド系ポリマーの溶媒に対する溶解性、並びに基材を形成した場合の透明性及び屈曲性の観点から、テトラカルボン酸化合物は、脂環式テトラカルボン化合物又は芳香族テトラカルボン酸化合物等であることが好ましい。イミド系ポリマーを含む基材の透明性及び着色の抑制の観点から、テトラカルボン酸化合物は、フッ素系置換基を有する脂環式テトラカルボン酸化合物及びフッ素系置換基を有する芳香族テトラカルボン酸化合物から選ばれることが好ましく、フッ素系置換基を有する脂環式テトラカルボン酸化合物であることがさらに好ましい。
【0046】
トリカルボン酸化合物としては、芳香族トリカルボン酸、脂環式トリカルボン酸、非環式脂肪族トリカルボン酸及びそれらの類縁の酸クロライド化合物、酸無水物等が挙げられる。トリカルボン酸化合物は、好ましくは芳香族トリカルボン酸、脂環式トリカルボン酸、非環式脂肪族トリカルボン酸及びそれらの類縁の酸クロライド化合物から選ばれる。トリカルボン酸化合物は、2種以上を併用してもよい。
【0047】
イミド系ポリマーの溶媒に対する溶解性、並びにイミド系ポリマーを含む基材を形成した場合の透明性及び屈曲性の観点から、トリカルボン酸化合物は、脂環式トリカルボン酸化合物又は芳香族トリカルボン酸化合物であることが好ましい。イミド系ポリマーを含む基材の透明性及び着色の抑制の観点から、トリカルボン酸化合物は、フッ素系置換基を有する脂環式トリカルボン酸化合物又はフッ素系置換基を有する芳香族トリカルボン酸化合物であることがより好ましい。
【0048】
ジカルボン酸化合物としては、芳香族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、非環式脂肪族ジカルボン酸及びそれらの類縁の酸クロライド化合物、酸無水物等が挙げられる。ジカルボン酸化合物は、好ましくは芳香族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、非環式脂肪族ジカルボン酸及びそれらの類縁の酸クロライド化合物から選ばれる。ジカルボン酸化合物は、2種以上併用してもよい。
【0049】
イミド系ポリマーの溶媒に対する溶解性、並びにイミド系ポリマーを含む基材を形成した場合の透明性及び屈曲性の観点から、ジカルボン酸化合物は、脂環式ジカルボン酸化合物又は芳香族ジカルボン酸化合物であることが好ましい。イミド系ポリマーを含む基材の透明性及び着色の抑制の観点から、ジカルボン酸化合物は、フッ素系置換基を有する脂環式ジカルボン酸化合物又はフッ素系置換基を有する芳香族ジカルボン酸化合物であることがさらに好ましい。
【0050】
ジアミン類としては、芳香族ジアミン、脂環式ジアミン及び脂肪族ジアミンが挙げられ、これらは2種以上併用してもよい。イミド系ポリマーの溶媒に対する溶解性、並びにイミド系ポリマーを含む基材を形成した場合の透明性及び屈曲性の観点から、ジアミン類は、脂環式ジアミン及びフッ素系置換基を有する芳香族ジアミンから選ばれることが好ましい。
【0051】
このようなイミド系ポリマーを使用すれば、特に優れた屈曲性を有し、高い光透過率(例えば、550nmの光に対して85%以上、好ましくは88%以上)、低い黄色度(YI値、5以下、好ましくは3以下)、及び低いヘイズ(1.5%以下、好ましくは1.0%以下)を有する基材が得られ易い。
【0052】
イミド系ポリマーは、異なる複数の種類の上記の繰り返し構造単位を含む共重合体でもよい。ポリイミド系高分子の重量平均分子量は、通常10,000~500,000である。イミド系ポリマーの重量平均分子量は、好ましくは、50,000~500,000であり、さらに好ましくは70,000~400,000である。重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography;GPC)で測定した標準ポリスチレン換算分子量である。イミド系ポリマーの重量平均分子量が大きいと高い屈曲性を得られやすい傾向があるが、イミド系ポリマーの重量平均分子量が大きすぎると、ワニスの粘度が高くなり、加工性が低下する傾向がある。
【0053】
イミド系ポリマーは、上述のフッ素系置換基等によって導入できるフッ素原子等のハロゲン原子を含んでいてもよい。ポリイミド系高分子がハロゲン原子を含むことにより、イミド系ポリマーを含む基材の弾性率を向上させ且つ黄色度を低減させることができる。これにより、ハードコートフィルムに発生するキズ及びシワ等が抑制され、且つ、イミド系ポリマーを含む基材の透明性を向上させることができる。ハロゲン原子として好ましくは、フッ素原子である。ポリイミド系高分子におけるハロゲン原子の含有量は、ポリイミド系高分子の質量を基準として、1~40質量%であることが好ましく、1~30質量%であることがより好ましい。
【0054】
イミド系ポリマーを含む基材は、1種又は2種以上の紫外線吸収剤を含有していてもよい。紫外線吸収剤は、樹脂材料の分野で紫外線吸収剤として通常用いられているものから、適宜選択することができる。紫外線吸収剤は、400nm以下の波長の光を吸収する化合物を含んでいてもよい。イミド系ポリマーと適切に組み合わせることのできる紫外線吸収剤は、例えば、ベンゾフェノン系化合物、サリシレート系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物及びトリアジン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。
本明細書において、「系化合物」とは、「系化合物」が付される化合物の誘導体を指す。例えば、「ベンゾフェノン系化合物」とは、母体骨格としてのベンゾフェノンと、ベンゾフェノンに結合している置換基とを有する化合物を指す。
【0055】
紫外線吸収剤の含有量は、基材の全体質量に対して、通常1質量%以上であり、好ましくは2質量%以上であり、より好ましくは3質量%以上であり、通常10質量%以下であり、好ましくは8質量%以下であり、より好ましくは6質量%以下である。紫外線吸収剤がこれらの量で含まれることで、基材の耐候性を高めることができる。
【0056】
イミド系ポリマーを含む基材は、無機粒子等の無機材料を更に含有していてもよい。無機材料は、ケイ素原子を含むケイ素材料が好ましい。イミド系ポリマーを含む基材がケイ素材料等の無機材料を含有することで、イミド系ポリマーを含む基材の引張弾性率を容易に4.0GPa以上とすることができる。ただし、イミド系ポリマーを含む基材の引張弾性率を制御する方法は、無機材料の配合に限られない。
【0057】
ケイ素原子を含むケイ素材料としては、シリカ粒子、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)等の4級アルコキシシラン、シルセスキオキサン誘導体等のケイ素化合物が挙げられる。これらのケイ素材料の中でも、イミド系ポリマーを含む基材の透明性及び屈曲性の観点から、シリカ粒子が好ましい。
【0058】
シリカ粒子の平均一次粒子径は、通常、100nm以下である。シリカ粒子の平均一次粒子径が100nm以下であると透明性が向上する傾向がある。
【0059】
イミド系ポリマーを含む基材中のシリカ粒子の平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察で求めることができる。シリカ粒子の一次粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)による定方向径とすることができる。平均一次粒子径は、TEM観察により一次粒子径を10点測定し、それらの平均値として求めることができる。イミド系ポリマーを含む基材を形成する前のシリカ粒子の粒子分布は、市販のレーザー回折式粒度分布計により求めることができる。
【0060】
イミド系ポリマーを含む基材において、イミド系ポリマーと無機材料との配合比は、両者の合計を10として、質量比で、1:9~10:0であることが好ましく、3:7~10:0であることがより好ましく、3:7~8:2であることがさらに好ましく、3:7~7:3であることがよりさらに好ましい。イミド系ポリマー及び無機材料の合計質量に対する無機材料の割合は、通常20質量%以上であり、好ましくは30質量%以上であり、通常90質量%以下であり、好ましくは70質量%以下である。イミド系ポリマーと無機材料(ケイ素材料)との配合比が上記の範囲内であると、イミド系ポリマーを含む基材の透明性及び機械的強度が向上する傾向がある。また、イミド系ポリマーを含む基材の引張弾性率を容易に4.0GPa以上とすることができる。
【0061】
イミド系ポリマーを含む基材は、透明性及び屈曲性を著しく損なわない範囲で、イミド系ポリマー及び無機材料以外の成分を更に含有していてもよい。イミド系ポリマー及び無機材料以外の成分としては、例えば、酸化防止剤、離型剤、安定剤、ブルーイング剤等の着色剤、難燃剤、滑剤、増粘剤及びレベリング剤が挙げられる。イミド系ポリマー及び無機材料以外の成分の割合は、基材の質量に対して、0%を超えて20質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは0%を超えて10質量%以下である。
【0062】
イミド系ポリマーを含む基材がイミド系ポリマー及びケイ素材料を含有するとき、少なくとも一方の面における、窒素原子に対するケイ素原子の原子数比であるSi/Nが8以上であることが好ましい。この原子数比Si/Nは、X線光電子分光(X-ray Photoelectron Spectroscopy、XPS)によって、イミド系ポリマーを含む基材の組成を評価し、これによって得られたケイ素原子の存在量と窒素原子の存在量から算出される値である。
【0063】
イミド系ポリマーを含む基材の少なくとも一方の面におけるSi/Nが8以上であることにより、ハードコート層との充分な密着性が得られる。密着性の観点から、Si/Nは、9以上であることがより好ましく、10以上であることがさらに好ましく、50以下であることが好ましく、40以下であることがより好ましい。
【0064】
(基材の厚み)
基材はフィルム状であることが好ましい。
基材の厚みは、100μm以下であることがより好ましく、80μm以下であることが更に好ましく、50μm以下が最も好ましい。基材の厚みが薄くなれば、折り曲げ時の表面と裏面の曲率差が小さくなり、クラック等が発生し難くなり、複数回の折れ曲げでも、基材の破断が生じなくなる。一方、基材の取り扱いの容易さの観点から基材の厚みは3μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、15μm以上が最も好ましい。
【0065】
(基材の作製方法)
基材は、熱可塑性のポリマーを熱溶融して製膜しても良いし、ポリマーを均一に溶解した溶液から溶液製膜(ソルベントキャスト法)によって製膜しても良い。熱溶融製膜の場合は、上述の柔軟化素材及び種々の添加剤を、熱溶融時に加えることができる。一方、基材を溶液製膜法で作製する場合は、ポリマー溶液(以下、ドープともいう)には、各調製工程において上述の柔軟化素材及び種々の添加剤を加えることができる。またその添加する時期はドープ作製工程において何れでも添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。
【0066】
塗膜の乾燥、及び/又はベーキングのために、塗膜を加熱してもよい。塗膜の加熱温度は、通常50~350℃である。塗膜の加熱は、不活性雰囲気下又は減圧下で行ってもよい。塗膜を加熱することにより溶媒を蒸発させ、除去することができる。基材は、塗膜を50~150℃で乾燥する工程と、乾燥後の塗膜を180~350℃でベーキングする工程とを含む方法により、形成されてもよい。
【0067】
基材の少なくとも一方の面には、表面処理を施してもよい。
【0068】
<ハードコート層>
本発明の積層体はハードコート層を含む。
ハードコート層は、基材の少なくとも一方の面上に形成されている。
本発明の積層体は、少なくとも1層のハードコート層を、基材と耐擦傷層との間に有する。
本発明の積層体のハードコート層は、カチオン重合性基を有するポリオルガノシルセスキオキサン(a1)、及び、フッ素原子を含有する基とカチオン重合性基とラジカル重合性基とを有するポリマー(S)を含むハードコート層形成用組成物の硬化物を含む。
【0069】
(カチオン重合性基を有するポリオルガノシルセスキオキサン(a1))
カチオン重合性基を有するポリオルガノシルセスキオキサン(a1)(「ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)」ともいう。)について説明する。
ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)におけるカチオン重合性基としては、特に限定されず、一般に知られているカチオン重合性基を用いることができ、具体的には、脂環式エーテル基、環状アセタール基、環状ラクトン基、環状チオエーテル基、スピロオルソエステル基、ビニルオキシ基などを挙げることができる。カチオン重合性基としては、脂環式エーテル基、ビニルオキシ基が好ましく、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルオキシ基が特に好ましく、エポキシ基が最も好ましい。エポキシ基としては、脂環式エポキシ基(エポキシ基と脂環基の縮環構造を有する基)であってもよい。
【0070】
ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)は、下記一般式(1)で表されるポリオルガノシルセスキオキサンであることが好ましい。
【0071】
【化6】
【0072】
一般式(1)中、Rbは、カチオン重合性基を含有する基を表し、Rcは1価の基を表す。q及びrは、一般式(1)中のRbおよびRcの比率を表し、q+r=100であり、qは0超、rは0以上である。一般式(1)中に複数のRb及びRcがある場合、複数のRb及びRcはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。一般式(1)中に複数のRcがある場合、複数のRcは、互いに結合を形成してもよい。
【0073】
一般式(1)中の[SiO1.5]は、ポリオルガノシルセスキオキサン中、シロキサン結合(Si-O-Si)により構成される構造部分を表す。
ポリオルガノシルセスキオキサンとは、加水分解性三官能シラン化合物に由来するシロキサン構成単位(シルセスキオキサン単位)を有するネットワーク型ポリマー又は多面体クラスターであり、シロキサン結合によって、ランダム構造、ラダー構造、ケージ構造などを形成し得る。本発明において、[SiO1.5]が表す構造部分は、上記のいずれの構造であってもよいが、ラダー構造を多く含有していることが好ましい。ラダー構造を形成していることにより、積層体の変形回復性を良好に保つことができる。ラダー構造の形成は、FT-IR(Fourier Transform Infrared Spectroscopy)を測定した際、1020-1050cm-1付近に現れるラダー構造に特徴的なSi-O-Si伸縮に由来する吸収の有無によって定性的に確認することができる。
【0074】
一般式(1)中、Rbは、カチオン重合性基を含有する基を表し、エポキシ基を含有する基を表すことが好ましい。
エポキシ基を含有する基としては、オキシラン環を有する公知の基が挙げられる。
Rbは、下記式(1b)~(4b)で表される基であることが好ましい。
【0075】
【化7】
【0076】
上記式(1b)~(4b)中、**は一般式(1)中のSiとの連結部分を表し、R1b、R2b、R3b及びR4bは、単結合又は2価の連結基を表す。
1b、R2b、R3b及びR4bは、置換又は無置換のアルキレン基を表すことが好ましい。
1b、R2b、R3b及びR4bが表すアルキレン基としては、炭素数1~10の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、i-プロピレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-ヘキシレン基、n-デシレン基等が挙げられる。
1b、R2b、R3b及びR4bが表すアルキレン基が置換基を有する場合の置換基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、シリル基等が挙げられる。
1b、R2b、R3b及びR4bとしては、無置換の炭素数1~4の直鎖状のアルキレン基、無置換の炭素数3又は4の分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、エチレン基、n-プロピレン基、又はi-プロピレン基がより好ましく、さらに好ましくはエチレン基、又はn-プロピレン基である。
【0077】
ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)は、脂環式エポキシ基(エポキシ基と脂環基の縮環構造を有する基)を有することが好ましい。一般式(1)中のRbは、脂環式エポキシ基を有する基であることが好ましく、エポキシシクロヘキシル基を有する基であることがより好ましく、上記式(1b)で表される基であることがさらに好ましい。
【0078】
なお、一般式(1)中のRbは、ポリオルガノシルセスキオキサンの原料として使用する加水分解性三官能シラン化合物におけるケイ素原子に結合した基(アルコキシ基及びハロゲン原子以外の基;例えば、後述の式(B)で表される加水分解性シラン化合物におけるRb等)に由来する。
【0079】
以下にRbの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。下記具体例において、**は一般式(1)中のSiとの連結部分を表す。
【0080】
【化8】
【0081】
一般式(1)中、Rcは1価の基を表す。
Rcが表す1価の基としては、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換のアラルキル基が挙げられる。
【0082】
Rcが表すアルキル基としては、炭素数1~10のアルキル基が挙げられ、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソペンチル基等の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
Rcが表すシクロアルキル基としては、炭素数3~15のシクロアルキル基が挙げられ、例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
Rcが表すアルケニル基としては、炭素数2~10のアルケニル基が挙げられ、例えば、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基等の直鎖又は分岐鎖状のアルケニル基が挙げられる。
Rcが表すアリール基としては、炭素数6~15のアリール基が挙げられ、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。
Rcが表すアラルキル基としては、炭素数7~20のアラルキル基が挙げられ、例えば、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
【0083】
上述の置換アルキル基、置換シクロアルキル基、置換アルケニル基、置換アリール基、置換アラルキル基としては、上述のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基のそれぞれにおける水素原子又は主鎖骨格の一部若しくは全部が、エーテル基、エステル基、カルボニル基、ハロゲン原子(フッ素原子等)、アクリル基、メタクリル基、メルカプト基、及びヒドロキシ基(水酸基)からなる群より選択された少なくとも1種で置換された基等が挙げられる。
【0084】
Rcは、置換又は無置換のアルキル基が好ましく、無置換の炭素数1~10のアルキル基であることがより好ましい。
【0085】
一般式(1)中に複数のRcがある場合、複数のRcは互いに結合を形成していてもよい。2つ又は3つのRcが互いに結合を形成していることが好ましく、2つのRcが互いに結合を形成していることがより好ましい。
【0086】
2つのRcが互いに結合して形成される基(Rc)としては、上述のRcが表す置換又は無置換のアルキル基が結合して形成されるアルキレン基であることが好ましい。
【0087】
Rcが表すアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基、s-ブチレン基、t-ブチレン基、n-ペンチレン基、イソペンチレン基、s-ペンチレン基、t-ペンチレン基、n-ヘキシレン基、イソヘキシレン基、s-ヘキシレン基、t-ヘキシレン基、n-ヘプチレン基、イソヘプチレン基、s-ヘプチレン基、t-ヘプチレン基、n-オクチレン基、イソオクチレン基、s-オクチレン基、t-オクチレン基等の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基が挙げられる。
【0088】
Rcが表すアルキレン基としては、無置換の炭素数2~20のアルキレン基が好ましく、より好ましくは無置換の炭素数2~20のアルキレン基、さらに好ましくは無置換の炭素数2~8のアルキレン基であり、特に好ましくはn-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-ヘキシレン基、n-ヘプチレン基、n-オクチレン基である。
【0089】
3つのRcが互いに結合して形成される基(Rc)としては、上述のRcが表すアルキレン基において、アルキレン基中の任意の水素原子をひとつ減らした3価の基であることが好ましい。
【0090】
なお、一般式(1)中のRcは、ポリオルガノシルセスキオキサンの原料として使用する加水分解性シラン化合物におけるケイ素原子に結合した基(アルコキシ基及びハロゲン原子以外の基;例えば、後述の式(C1)~(C3)で表される加水分解性シラン化合物におけるRc~Rc等)に由来する。
【0091】
一般式(1)中、qは0超であり、rは0以上である。
q/(q+r)は0.5~1.0であることが好ましい。ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)に含まれるRb又はRcで表される基全量に対して、Rbで表される基を半数以上とすることで、有機架橋基が作るネットワークが十分に形成されるため、硬度、繰り返し折り曲げ耐性の各性能を良好に保つことができる。
q/(q+r)は0.7~1.0であることがより好ましく、0.9~1.0がさらに好ましく、0.95~1.0であることが特に好ましい。
【0092】
一般式(1)中、複数のRcがあり、複数のRcが互いに結合を形成していることも好ましい。この場合、r/(q+r)が0.005~0.20であることが好ましい。
r/(q+r)は0.005~0.10がより好ましく、0.005~0.05がさらに好ましく、0.005~0.025であることが特に好ましい。
【0093】
ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、好ましくは500~6000であり、より好ましくは1000~4500であり、更に好ましくは1500~3000である。
【0094】
ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)のGPCによる標準ポリスチレン換算の分子量分散度(Mw/Mn)は、例えば1.0~4.0であり、好ましくは1.1~3.7であり、より好ましくは1.2~3.0であり、さらに好ましくは1.3~2.5である。Mwは重量平均分子量を表し、Mnは数平均分子量を表す。
【0095】
ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)の重量平均分子量、分子量分散度は、下記の装置及び条件により測定する。
測定装置:商品名「LC-20AD」((株)島津製作所製)
カラム:Shodex KF-801×2本、KF-802、及びKF-803(昭和電工(株)製)
測定温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)、試料濃度0.1~0.2質量%
流量:1mL/分
検出器:UV-VIS検出器(商品名「SPD-20A」、(株)島津製作所製)
分子量:標準ポリスチレン換算
【0096】
<ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)の製造方法>
ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)は、公知の製造方法により製造することができ、特に限定されないが、1種又は2種以上の加水分解性シラン化合物を加水分解及び縮合させる方法により製造できる。上記加水分解性シラン化合物としては、エポキシ基を含有するシロキサン構成単位を形成するための加水分解性三官能シラン化合物(下記式(B)で表される化合物)を加水分解性シラン化合物として使用することが好ましい。
一般式(1)中のrが0超である場合には、加水分解性シラン化合物として、下記式(C1)、(C2)又は(C3)で表される化合物を併用することが好ましい。
【0097】
【化9】
【0098】
式(B)中のRbは、上記一般式(1)中のRbと同義であり、好ましい例も同様である。
【0099】
式(B)中のXは、アルコキシ基又はハロゲン原子を示す。
におけるアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブチルオキシ基等の炭素数1~4のアルコキシ基等が挙げられる。
におけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
としては、アルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基がより好ましい。なお、3つのXは、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。
【0100】
上記式(B)で表される化合物は、Rbを有するシロキサン構成単位を形成する化合物である。
【0101】
【化10】
【0102】
【化11】
【0103】
【化12】
【0104】
式(C1)中のRcは、上記一般式(1)中のRcと同義であり、好ましい例も同様である。
式(C2)中のRcは、上記一般式(1)中の2つのRcが互いに結合することにより形成される基(Rc)と同義であり、好ましい例も同様である。
式(C3)中のRcは、上記一般式(1)中の3つのRcが互いに結合することにより形成される基(Rc)と同義であり、好ましい例も同様である。
【0105】
上記式(C1)~(C3)中のXは、上記式(B)中のXと同義であり、好ましい例も同様である。複数のXは、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。
【0106】
上記加水分解性シラン化合物としては、上記式(B)、(C1)~(C3)で表される化合物以外の加水分解性シラン化合物を併用してもよい。例えば、上記式(B)、(C1)~(C3)で表される化合物以外の加水分解性三官能シラン化合物、加水分解性単官能シラン化合物、加水分解性二官能シラン化合物等が挙げられる。
【0107】
Rcが上記式(C1)~(C3)で表される加水分解性シラン化合物におけるRc~Rcに由来する場合、一般式(1)中のq/(q+r)を調整するには、上記式(B)、(C1)~(C3)で表される化合物の配合比(モル比)を調整すれはよい。
具体的には、例えば、q/(q+r)を0.5~1.0とするには、下記(Z2)で表される値を0.5~1.0とし、これらの化合物を加水分解及び縮合させる方法により製造すればよい。
(Z2)=式(B)で表される化合物(モル量)/{式(B)で表される化合物(モル量)+式(C1)で表される化合物(モル量)+式(C2)で表される化合物(モル量)×2+式(C3)で表される化合物(モル量)×3}
【0108】
上記加水分解性シラン化合物の使用量及び組成は、所望するポリオルガノシルセスキオキサン(a1)の構造に応じて適宜調整できる。
【0109】
また、上記加水分解性シラン化合物の加水分解及び縮合反応は、同時に行うことも、逐次行うこともできる。上記反応を逐次行う場合、反応を行う順序は特に限定されない。
【0110】
上記加水分解性シラン化合物の加水分解及び縮合反応は、溶媒の存在下で行うことも、非存在下で行うこともでき、溶媒の存在下で行うことが好ましい。
上記溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル等のエステル;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール等が挙げられる。
上記溶媒としては、ケトン又はエーテルが好ましい。なお、溶媒は1種を単独で使用することも、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0111】
溶媒の使用量は、特に限定されず、加水分解性シラン化合物の全量100質量部に対して、0~2000質量部の範囲内で、所望の反応時間等に応じて、適宜調整することができる。
【0112】
上記加水分解性シラン化合物の加水分解及び縮合反応は、触媒及び水の存在下で進行させることが好ましい。上記触媒は、酸触媒であってもアルカリ触媒であってもよい。
上記酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸等の鉱酸;リン酸エステル;酢酸、蟻酸、トリフルオロ酢酸等のカルボン酸;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等のスルホン酸;活性白土等の固体酸;塩化鉄等のルイス酸等が挙げられる。
上記アルカリ触媒としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属の炭酸塩;炭酸マグネシウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩;炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム等のアルカリ金属の炭酸水素塩;酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム等のアルカリ金属の有機酸塩(例えば、酢酸塩);酢酸マグネシウム等のアルカリ土類金属の有機酸塩(例えば、酢酸塩);リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムイソプロポキシド、カリウムエトキシド、カリウムt-ブトキシド等のアルカリ金属のアルコキシド;ナトリウムフェノキシド等のアルカリ金属のフェノキシド;トリエチルアミン、N-メチルピペリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン等のアミン類(第3級アミン等);ピリジン、2,2'-ビピリジル、1,10-フェナントロリン等の含窒素芳香族複素環化合物等が挙げられる。
なお、触媒は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。また、触媒は、水又は有機溶剤等に溶解又は分散させた状態で使用することもできる。
上記触媒は塩基触媒であることが好ましい。塩基触媒を用いることでポリオルガノシルセスキオキサンの縮合率を高くすることができ、硬化した際の変形回復率を良好に保つことができる。
【0113】
上記触媒の使用量は、特に限定されず、加水分解性シラン化合物の全量1モルに対して、0.002~0.200モルの範囲内で、適宜調整することができる。
【0114】
上記加水分解及び縮合反応に際しての水の使用量は、特に限定されず、加水分解性シラン化合物の全量1モルに対して、0.5~20モルの範囲内で、適宜調整することができる。
【0115】
上記水の添加方法は、特に限定されず、使用する水の全量(全使用量)を一括で添加しても、逐次的に添加してもよい。逐次的に添加する際には、連続的に添加しても、間欠的に添加してもよい。
【0116】
上記加水分解性シラン化合物の加水分解及び縮合反応を行う際の反応条件としては、特に、ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)の縮合率が80%以上となるような反応条件を選択することが重要である。上記加水分解及び縮合反応の反応温度は、例えば40~100℃であり、好ましくは45~80℃である。反応温度を上記範囲に制御することにより、上記縮合率を80%以上に制御できる傾向がある。また、上記加水分解及び縮合反応の反応時間は、例えば0.1~10時間であり、好ましくは1.5~8時間である。また、上記加水分解及び縮合反応は、常圧下で行うこともできるし、加圧下又は減圧下で行うこともできる。なお、上記加水分解及び縮合反応を行う際の雰囲気は、例えば、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の不活性ガス雰囲気下、空気下等の酸素存在下等のいずれであってもよいが、不活性ガス雰囲気下が好ましい。
【0117】
上記加水分解性シラン化合物の加水分解及び縮合反応により、ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)が得られる。上記加水分解及び縮合反応の終了後には、エポキシ基の開環を抑制するために触媒を中和することが好ましい。また、ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)を、例えば、水洗、酸洗浄、アルカリ洗浄、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の分離手段や、これらを組み合わせた分離手段等により分離精製してもよい。
【0118】
ハードコート層において、ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)の縮合率としては、80%以上であることがフィルムの硬度の観点から好ましい。縮合率は、90%以上がより好ましく、95%以上であることがさらに好ましい。
上記縮合率は、ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)の硬化物を含むハードコート層を有する試料について29Si NMR(nuclear magnetic resonance)スペクトル測定を行い、その測定結果を用いて算出することが可能である。
【0119】
エポキシ基を有するポリオルガノシルセスキオキサン(a1)の硬化物は、エポキシ基が重合反応により開環していることが好ましい。
ハードコート層において、エポキシ基を有するポリオルガノシルセスキオキサン(a1)の硬化物のエポキシ基の開環率としては、40%以上であることがフィルムの硬度の観点から好ましい。開環率は、50%以上がより好ましく、60%以上であることがさらに好ましい。
上記開環率は、ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)を含むハードコート層形成用組成物を完全硬化及び熱処理する前後の試料についてFT-IR(Fourier Transform Infrared Spectroscopy)一回反射ATR(Attenuated Total Reflection)測定を行い、エポキシ基に由来するピーク高さの変化から、算出することが可能である。
【0120】
ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)は一種のみ用いてもよく、構造の異なる二種以上を併用してもよい。
【0121】
ハードコート層形成用組成物におけるポリオルガノシルセスキオキサン(a1)の含有率は、ハードコート層形成用組成物の全固形分に対して、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましい。ハードコート層形成用組成物におけるポリオルガノシルセスキオキサン(a1)の含有率の上限は、ハードコート層形成用組成物の全固形分に対して、99.9質量%以下であることが好ましく、98質量%以下であることがより好ましく、97質量%以下であることが更に好ましい。
なお、全固形分とは溶剤以外の全成分のことである。
【0122】
(フッ素原子を含有する基と、カチオン重合性基と、ラジカル重合性基とを有するポリマー(S))
フッ素原子を含有する基と、カチオン重合性基と、ラジカル重合性基とを有するポリマー(S)(「ポリマー(S)」ともいう。)について説明する。
前述のとおり、ポリマー(S)は、ハードコート層と耐擦傷層との密着性を高くする層間密着剤として機能することができる。
【0123】
〔フッ素原子を含有する基〕
ポリマー(S)におけるフッ素原子を含有する基(「フッ素含有基」とも呼ぶ。)とは、少なくとも1つのフッ素原子を含んでなる基であり、例えば、フッ素原子、少なくとも1つのフッ素原子を有する有機基などが挙げられる。上記有機基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、及びこれらの少なくとも2つを組み合わせてなる基が挙げられ、アルキル基であることが好ましい。また、上記アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基は、フッ素原子以外に更に置換基を有していてもよい。
フッ素含有基は、炭素数1~20のフルオロアルキル基であることが好ましく、炭素数2~15のフルオロアルキル基であることがより好ましく、炭素数4~10のフルオロアルキル基であることが更に好ましく、炭素数4~8のフルオロアルキル基であることが特に好ましい。
1つのフッ素含有基中のフッ素原子の数は、3個以上であることが好ましく、5個以上であることがより好ましく、9個以上であることが更に好ましい。
1つのフッ素含有基中のフッ素原子の数は、17個以下であることが好ましく、13個以下であることがより好ましい。
【0124】
フッ素含有基は、下記一般式(f-1)で表される基であることが好ましい。
【0125】
【化13】
【0126】
一般式(f-1)中、q1は0~12の整数を表し、q2は1~8の整数を表し、Rqは水素原子又はフッ素原子を表す。*は結合位置を表す。
q1は1~7の整数を表すことが好ましく、1~5の整数を表すことがより好ましく、1又は2を表すことが更に好ましい。
q2は2~8の整数を表すことが好ましく、4~8の整数を表すことがより好ましく、4~6の整数を表すことが更に好ましい。
Rqはフッ素原子を表すことが好ましい。
【0127】
〔カチオン重合性基〕
ポリマー(S)におけるカチオン重合性基は、特に限定されず、一般に知られているカチオン重合性基を用いることができ、具体的には、脂環式エーテル基、環状アセタール基、環状ラクトン基、環状チオエーテル基、スピロオルソエステル基、ビニルオキシ基などを挙げることができる。カチオン重合性基としては、脂環式エーテル基、ビニルオキシ基が好ましく、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルオキシ基が特に好ましく、エポキシ基が最も好ましい。エポキシ基としては、脂環式エポキシ基(エポキシ基と脂環基の縮環構造を有する基)であってもよい。なお、上記した各基は置換基を有していてもよい。
【0128】
カチオン重合性基は下記式(e-1)で表される基、下記一般式(e-2)で表される基、又は下記一般式(e-3)で表される基であることが好ましい。
【0129】
【化14】
【0130】
一般式(e-2)中、R1aは水素原子又は置換若しくは無置換のアルキル基を表す。
一般式(e-3)中、R2aは置換又は無置換のアルキル基を表す。q3は0~2の整数を表す。R2aが複数存在する場合は互いに同じでも異なっていてもよい。
式(e-1)、一般式(e-2)、一般式(e-3)において、*は結合位置を表す。
【0131】
一般式(e-2)中、R1aは水素原子又は置換若しくは無置換のアルキル基を表す。
1aは置換又は無置換の炭素数1~6のアルキル基を表すことが好ましい。炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、n-ヘキシル基等が挙げられる。
上記アルキル基が置換基を有する場合の置換基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、シリル基等が挙げられる。
1aは無置換の炭素数1~3の直鎖アルキル基であることが好ましく、メチル基又はエチル基であることがより好ましい。
【0132】
一般式(e-3)中、R2aは置換又は無置換のアルキル基を表す。
2aは置換又は無置換の炭素数1~6のアルキル基を表すことが好ましい。炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、n-ヘキシル基等が挙げられる。
上記アルキル基が置換基を有する場合の置換基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、シリル基等が挙げられる。
2aは無置換の炭素数1~3の直鎖アルキル基であることが好ましく、メチル基又はエチル基であることがより好ましい。
q3は0~2の整数を表し、0又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0133】
〔ラジカル重合性基〕
ポリマー(S)におけるラジカル重合性基は、特に限定されず、一般に知られているラジカル重合性基を用いることができる。ラジカル重合性基としては、重合性不飽和基が挙げられ、具体的には、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などが挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。なお、上記した各基は置換基を有していてもよい。
【0134】
ポリマー(S)における、フッ素原子を有する構成単位の含有モル比率は、全構成単位に対して、1モル%超70モル%未満であることが好ましく、1モル%超50モル%未満であることがより好ましく、3モル%以上30モル%以下であることが更に好ましく、5モル%以上20モル%以下であることが特に好ましく、5モル%以上10モル%以下であることが最も好ましい。ポリマー(S)における、フッ素原子を有する構成単位の含有モル比率が、全構成単位に対して、1モル%超50モル%未満であることで、ポリマー(S)中のラジカル重合性基と、耐擦傷層形成用組成物に含まれるラジカル重合性化合物(c1)のラジカル重合性基との重合反応が阻害されにくく、ハードコート層と耐擦傷層との密着性が高くなり、耐擦傷性が向上しやすいため好ましい。
【0135】
耐擦傷性の観点から、ポリマー(S)における、カチオン重合性基を有する構成単位の含有モル比率は、全構成単位に対して、25モル%超85モル%以下であることが好ましく、30モル%以上85モル%以下であることがより好ましく、30モル%以上60モル%以下であることが更に好ましい。
【0136】
耐擦傷性の観点から、ポリマー(S)における、ラジカル重合性基を有する構成単位の含有モル比率は、全構成単位に対して、1モル%超であることが好ましく、10モル%以上90モル%以下であることがより好ましく、30モル%以上60モル%以下であることが更に好ましい。
【0137】
ポリマー(S)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは500~50000であり、より好ましくは1000~30000であり、更に好ましくは1500~12000であり、より一層好ましくは1500~10000であり、特に好ましくは1500~6000であり、最も好ましくは1500~4500である。
【0138】
ポリマー(S)の分子量分散度(Mw/Mn)は、例えば1.00~4.00であり、好ましくは1.10~3.70であり、より好ましくは1.20~3.00であり、さらに好ましくは1.20~2.50である。Mwは重量平均分子量を表し、Mnは数平均分子量を表す。
【0139】
ポリマー(S)の重量平均分子量、分子量分散度は、特に断りがない限り、GPCの測定値(ポリスチレン換算)である。重量平均分子量は、具体的には装置としてHLC-8220(東ソー株式会社製)を用意し、溶離液としてテトラヒドロフランを用い、カラムとしてTSKgel(登録商標)G3000HXL+TSKgel(登録商標)G2000HXLを用い、温度23℃、流量1mL/minの条件下、示差屈折率(RI)検出器を用いて測定する。
【0140】
ポリマー(S)は一種のみ用いてもよく、構造の異なる二種以上を併用してもよい。
【0141】
本発明におけるハードコート層形成用組成物中のポリマー(S)の含有率は、耐擦傷性と白化抑制の観点から、ハードコート層形成用組成物の全固形分に対して、0.001~5質量%であることが好ましく、0.01~3質量%であることがより好ましく、0.1~2質量%であることが更に好ましく、0.1~1質量%であることが特に好ましい。
【0142】
ポリマー(S)の構造は特に限定されないが、ポリオルガノシルセスキオキサン又は(メタ)アクリル系ポリマーであることが好ましく、ポリオルガノシルセスキオキサンであることがより好ましい。ポリマー(S)がポリオルガノシルセスキオキサンであると、本発明の積層体において、白化が特に少なくなり、好ましい。この理由の詳細は明らかではないが、本発明におけるハードコート層形成用組成物には、前述のポリオルガノシルセスキオキサン(a1)が含まれるため、ポリマー(S)がポリオルガノシルセスキオキサンであると、ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)との相溶性が高いため、ハードコート層表面近傍で均一性が高くなる(ミクロ相分離のようにならない)ためであると考えられる。
【0143】
〔ポリオルガノシルセスキオキサン(SS)〕
ポリマー(S)がポリオルガノシルセスキオキサンである場合、ポリマー(S)をポリオルガノシルセスキオキサン(SS)とも呼ぶ。
ポリオルガノシルセスキオキサン(SS)の構造は特に限定されず、ポリオルガノシルセスキオキサンとして採り得る構造を有することができ、例えば、ランダム構造、ラダー構造、ケージ構造などを有していることが好ましい。
ポリオルガノシルセスキオキサン(SS)は、フッ素原子を含有する基を有するシルセスキオキサン単位と、カチオン重合性基を有するシルセスキオキサン単位と、ラジカル重合性基を有するシルセスキオキサン単位とを有することが好ましい。
【0144】
ポリオルガノシルセスキオキサン(SS)は、下記一般式(S-1)で表される構成単位、下記一般式(S-2)で表される構成単位、及び下記一般式(S-3)で表される構成単位を有することが好ましい。
【0145】
【化15】
【0146】
一般式(S-1)中、Lは単結合又は2価の連結基を表し、Qはフッ素原子を含有する基を表す。
一般式(S-2)中、Lは単結合又は2価の連結基を表し、Qはカチオン重合性基を表す。
一般式(S-3)中、Lは単結合又は2価の連結基を表し、Qはラジカル重合性基を表す。
【0147】
一般式(S-1)~(S-3)中、「SiO1.5」は、シルセスキオキサン単位を表す。
【0148】
ポリオルガノシルセスキオキサン(SS)において、一般式(S-1)で表される構成単位の含有モル比率は、全構成単位に対して、1モル%超70モル%以下であることが好ましく、3モル%以上50モル%以下であることがより好ましく、5モル%以上20モル%以下であることが更に好ましい。
【0149】
ポリオルガノシルセスキオキサン(SS)において、一般式(S-2)で表される構成単位の含有モル比率は、全構成単位に対して、15%以上85モル%以下であることが好ましく、30モル%以上80モル%以下であることがより好ましく、30モル%以上70モル%以下であることが更に好ましく、30モル%以上60モル%以下であることが特に好ましい。
【0150】
ポリオルガノシルセスキオキサン(SS)において、一般式(S-3)で表される構成単位の含有モル比率は、全構成単位に対して、1モル%超であることが好ましく、10モル%以上85モル%以下であることがより好ましく、15モル%以上70モル%以下であることが更に好ましく、30モル%以上60モル%以下であることが更に好ましい。
【0151】
一般式(S-1)中、Lは単結合又は2価の連結基を表す。Lが2価の連結基を表す場合、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-S-、-SO-、-NR-、炭素数1~20の有機連結基(例えば、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいシクロアルキレン基、置換基を有してもよいアリーレン基など)、又はこれらを2つ以上組み合わせてなる連結基などが挙げられる。上記Rは水素原子又は置換基を表す。
一般式(S-1)中、Qはフッ素原子を含有する基を表す。フッ素原子を含有する基については、前述したものと同様である。
【0152】
一般式(S-1)で表される構成単位は、下記一般式(S-1-f)で表される構成単位であることが好ましい。
【0153】
【化16】
【0154】
一般式(S-1-f)中、q1は0~12の整数を表し、q2は1~8の整数を表し、Rqは水素原子又はフッ素原子を表す。
一般式(S-1-f)中のq1、q2、Rqは、それぞれ前述の一般式(f-1)中のq1、q2、Rqと同様である。
【0155】
一般式(S-1-f)中、「SiO1.5」は、シルセスキオキサン単位を表す。
【0156】
一般式(S-2)中、Lは単結合又は2価の連結基を表す。Lが2価の連結基を表す場合の具体例はLと同様であり、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキレン基、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-S-、又はこれらを2つ以上組み合わせてなる連結基であることが好ましく、置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキレン基、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、又はこれらを2つ以上組み合わせてなる連結基であることがより好ましく、置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキレン基、又は置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキレン基と-O-を組み合わせてなる連結基であることが更に好ましい。
一般式(S-2)中、Qはカチオン重合性基を表す。カチオン重合性基については、前述したものと同様である。
【0157】
一般式(S-2)で表される構成単位は、下記一般式(S-2-e1)で表される構成単位、下記一般式(S-2-e2)で表される構成単位、又は下記一般式(S-2-e3)で表される構成単位であることが好ましい。
【0158】
【化17】
【0159】
一般式(S-2-e1)中、Lは単結合又は2価の連結基を表す。
一般式(S-2-e2)中、R1aは水素原子又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、Lは単結合又は2価の連結基を表す。
一般式(S-2-e3)中、R2aは置換又は無置換のアルキル基を表す。q3は0~2の整数を表す。R2aが複数存在する場合は互いに同じでも異なっていてもよい。Lは単結合又は2価の連結基を表す。
【0160】
一般式(S-2-e1)、(S-2-e2)、及び(S-2-e3)中、「SiO1.5」は、シルセスキオキサン単位を表す。
【0161】
一般式(S-2-e1)、(S-2-e2)、及び(S-2-e3)中のLは、前述の一般式(S-2)中のLと同様である。
一般式(S-2-e2)中のR1aは、前述の一般式(e-2)中のR1aと同様である。
一般式(S-2-e3)中のR2a、q3は、それぞれ前述の一般式(e-3)中のR2a、q3と同様である。
【0162】
一般式(S-3)中、Lは単結合又は2価の連結基を表す。Lが2価の連結基を表す場合の具体例及び好ましい範囲は前述のLと同様である。
一般式(S-3)中、Qはラジカル重合性基を表す。ラジカル重合性基については、前述したものと同様である。
【0163】
一般式(S-3)で表される構成単位は、下記一般式(S-3-r1)で表される構成単位、又は下記一般式(S-3-r2)で表される構成単位であることが好ましい。
【0164】
【化18】
【0165】
一般式(S-3-r1)中、Lは単結合又は2価の連結基を表し、R3aは水素原子又はメチル基を表す。
一般式(S-3-r2)中、Lは単結合又は2価の連結基を表す。
【0166】
一般式(S-3-r1)、及び(S-3-r2)中、「SiO1.5」は、シルセスキオキサン単位を表す。
【0167】
一般式(S-3-r1)、及び(S-3-r2)中のLは、前述の一般式(S-3)中のLと同様である。
【0168】
ポリオルガノシルセスキオキサン(SS)の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。下記構造式において、「SiO1.5」は、シルセスキオキサン単位を表す。
【0169】
【化19】
【0170】
【化20】
【0171】
【化21】
【0172】
<ポリオルガノシルセスキオキサン(SS)の製造方法>
ポリオルガノシルセスキオキサン(SS)の製造方法は、特に限定されず、公知の製造方法を用いて製造することができるが、例えば、加水分解性シラン化合物を加水分解及び縮合させる方法により製造できる。上記加水分解性シラン化合物としては、フッ素原子を含有する基を有する加水分解性三官能シラン化合物(好ましくは下記一般式(Sd-1)で表される化合物)、カチオン重合性基を有する加水分解性三官能シラン化合物(好ましくは下記一般式(Sd-2)で表される化合物)、及びラジカル重合性基を有する加水分解性三官能シラン化合物(好ましくは下記一般式(Sd-3)で表される化合物)を使用することが好ましい。
下記一般式(Sd-1)で表される化合物は、上記一般式(S-1)で表される構成単位に対応し、下記一般式(Sd-2)で表される化合物は、上記一般式(S-2)で表される構成単位に対応し、下記一般式(Sd-3)で表される化合物は、上記一般式(S-3)で表される構成単位に対応する。
【0173】
【化22】
【0174】
一般式(Sd-1)中、X~Xは各々独立にアルコキシ基又はハロゲン原子を表し、Lは単結合又は2価の連結基を表し、Qはフッ素原子を含有する基を表す。
一般式(Sd-2)中、X~Xは各々独立にアルコキシ基又はハロゲン原子を表し、Lは単結合又は2価の連結基を表し、Qはカチオン重合性基を表す。
一般式(Sd-3)中、X10~X12は各々独立にアルコキシ基又はハロゲン原子を表し、Lは単結合又は2価の連結基を表し、Qはラジカル重合性基を表す。
【0175】
一般式(Sd-1)中のL及びQは、一般式(S-1)中のL及びQとそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(Sd-2)中のL及びQは、一般式(S-2)中のL及びQとそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(Sd-3)中のL及びQは、一般式(S-3)中のL及びQとそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0176】
一般式(Sd-1)~(Sd-3)中、X~X12は各々独立にアルコキシ基又はハロゲン原子を示す。
上記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブチルオキシ基等の炭素数1~4のアルコキシ基等が挙げられる。
上記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
~X12としては、アルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基がより好ましい。なお、X~X12は、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。
【0177】
上記加水分解性シラン化合物の使用量及び組成は、所望するポリオルガノシルセスキオキサン(SS)の構造に応じて適宜調整できる。
【0178】
また、上記加水分解性シラン化合物の加水分解及び縮合反応は、同時に行うことも、逐次行うこともできる。上記反応を逐次行う場合、反応を行う順序は特に限定されない。
【0179】
上記加水分解性シラン化合物の加水分解及び縮合反応は、溶媒の存在下で行うことも、非存在下で行うこともでき、溶媒の存在下で行うことが好ましい。
上記溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル等のエステル;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール等が挙げられる。
上記溶媒としては、ケトン又はエーテルが好ましい。なお、溶媒は1種を単独で使用することも、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0180】
溶媒の使用量は、特に限定されず、通常、加水分解性シラン化合物の全量100質量部に対して、0~2000質量部の範囲内で、所望の反応時間等に応じて、適宜調整することができる。
【0181】
上記加水分解性シラン化合物の加水分解及び縮合反応は、触媒及び水の存在下で進行させることが好ましい。上記触媒は、酸触媒であってもアルカリ触媒であってもよい。
上記酸触媒としては、特に限定されず、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸等の鉱酸;リン酸エステル;酢酸、蟻酸、トリフルオロ酢酸等のカルボン酸;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等のスルホン酸;活性白土等の固体酸;塩化鉄等のルイス酸等が挙げられる。
上記アルカリ触媒としては、特に限定されず、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属の炭酸塩;炭酸マグネシウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩;炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム等のアルカリ金属の炭酸水素塩;酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム等のアルカリ金属の有機酸塩(例えば、酢酸塩);酢酸マグネシウム等のアルカリ土類金属の有機酸塩(例えば、酢酸塩);リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムイソプロポキシド、カリウムエトキシド、カリウムt-ブトキシド等のアルカリ金属のアルコキシド;ナトリウムフェノキシド等のアルカリ金属のフェノキシド;トリエチルアミン、N-メチルピペリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン等のアミン類(第3級アミン等);ピリジン、2,2'-ビピリジル、1,10-フェナントロリン等の含窒素芳香族複素環化合物等が挙げられる。
なお、触媒は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。また、触媒は、水又は溶媒等に溶解又は分散させた状態で使用することもできる。
【0182】
上記触媒の使用量は、特に限定されず、通常、加水分解性シラン化合物の全量1モルに対して、0.002~0.200モルの範囲内で、適宜調整することができる。
【0183】
上記加水分解及び縮合反応に際しての水の使用量は、特に限定されず、通常、加水分解性シラン化合物の全量1モルに対して、0.5~40モルの範囲内で、適宜調整することができる。
【0184】
上記水の添加方法は、特に限定されず、使用する水の全量(全使用量)を一括で添加しても、逐次的に添加してもよい。逐次的に添加する際には、連続的に添加しても、間欠的に添加してもよい。
【0185】
上記加水分解及び縮合反応の反応温度は、特に限定されず、例えば40~100℃であり、好ましくは45~80℃である。また、上記加水分解及び縮合反応の反応時間は、特に限定されず、例えば0.1~15時間であり、好ましくは1.5~10時間である。また、上記加水分解及び縮合反応は、常圧下で行うこともできるし、加圧下又は減圧下で行うこともできる。なお、上記加水分解及び縮合反応を行う際の雰囲気は、例えば、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の不活性ガス雰囲気下、空気下等の酸素存在下等のいずれであってもよいが、不活性ガス雰囲気下が好ましい。
【0186】
上記加水分解性シラン化合物の加水分解及び縮合反応により、ポリオルガノシルセスキオキサン(SS)を得ることができる。上記加水分解及び縮合反応の終了後には、触媒を中和してもよい。また、ポリオルガノシルセスキオキサン(SS)を、例えば、水洗、酸洗浄、アルカリ洗浄、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の分離手段や、これらを組み合わせた分離手段等により分離精製してもよい。
【0187】
〔(メタ)アクリル系ポリマー(SA)〕
ポリマー(S)がアクリル系ポリマーである場合、ポリマー(S)を(メタ)アクリル系ポリマー(SA)とも呼ぶ。
(メタ)アクリル系ポリマー(SA)は、耐擦傷層との密着性の観点から、側鎖にフッ素原子を含有する基を有し、かつ、主鎖にはフッ素原子を有さないことが好ましい。
(メタ)アクリル系ポリマー(SA)は、下記一般式(P-1)で表される構成単位、下記一般式(P-2)で表される構成単位、及び下記一般式(P-3)で表される構成単位を有することが好ましい。
【0188】
【化23】
【0189】
一般式(P-1)中、Mは水素原子又はメチル基を表し、Lは単結合又は2価の連結基を表し、Qはフッ素原子を含有する基を表す。
一般式(P-2)中、Mは水素原子又はメチル基を表し、Lは単結合又は2価の連結基を表し、Qはカチオン重合性基を表す。
一般式(P-3)中、Mは水素原子又はメチル基を表し、Lは単結合又は2価の連結基を表し、Qはラジカル重合性基を表す。
【0190】
一般式(P-1)中、Lは単結合又は2価の連結基を表し、Lが2価の連結基を表す場合の具体例は、前述の一般式(S-1)中のLと同様である。
一般式(P-1)中、Qはフッ素原子を含有する基を表す。フッ素原子を含有する基については、前述したものと同様である。
【0191】
一般式(P-1)で表される構成単位は、下記一般式(P-1-f)で表される構成単位であることが好ましい。
【0192】
【化24】
【0193】
一般式(P-1-f)中、Mは水素原子又はメチル基を表し、q1は0~12の整数を表し、q2は1~8の整数を表し、Rqは水素原子又はフッ素原子を表す。
一般式(P-1-f)中のq1、q2、Rqは、それぞれ前述の一般式(f-1)中のq1、q2、Rqと同様である。
【0194】
一般式(P-2)中、Lは単結合又は2価の連結基を表す。Lが2価の連結基を表す場合の具体例及び好ましい範囲は、前述の一般式(S-2)中のLと同様である。
一般式(P-2)中、Qはカチオン重合性基を表す。カチオン重合性基については、前述したものと同様である。
【0195】
一般式(P-2)で表される構成単位は、下記一般式(P-2-e1)で表される構成単位、下記一般式(P-2-e2)で表される構成単位、又は下記一般式(P-2-e3)で表される構成単位であることが好ましい。
【0196】
【化25】
【0197】
一般式(P-2-e1)中、Mは水素原子又はメチル基を表し、Lは単結合又は2価の連結基を表す。
一般式(P-2-e2)中、Mは水素原子又はメチル基を表し、R1aは水素原子又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、Lは単結合又は2価の連結基を表す。
一般式(P-2-e3)中、Mは水素原子又はメチル基を表し、R2aは置換又は無置換のアルキル基を表す。q3は0~2の整数を表す。R2aが複数存在する場合は互いに同じでも異なっていてもよい。Lは単結合又は2価の連結基を表す。
【0198】
一般式(P-2-e1)、(P-2-e2)、及び(P-2-e3)中のLは、前述の一般式(P-2)中のLと同様である。
一般式(P-2-e2)中のR1aは、前述の一般式(e-2)中のR1aと同様である。
一般式(P-2-e3)中のR2a、q3は、それぞれ前述の一般式(e-3)中のR2a、q3と同様である。
【0199】
一般式(P-3)中、Lは単結合又は2価の連結基を表す。Lが2価の連結基を表す場合の具体例及び好ましい範囲は前述の一般式(S-3)中のLと同様である。
一般式(P-3)中、Qはラジカル重合性基を表す。ラジカル重合性基については、前述したものと同様である。
【0200】
一般式(P-3)で表される構成単位は、下記一般式(P-3-r1)で表される構成単位、又は下記一般式(P-3-r2)で表される構成単位であることが好ましい。
【0201】
【化26】
【0202】
一般式(P-3-r1)中、Mは水素原子又はメチル基を表し、Lは単結合又は2価の連結基を表し、R3aは水素原子又はメチル基を表す。
一般式(P-3-r2)中、Mは水素原子又はメチル基を表し、Lは単結合又は2価の連結基を表す。
【0203】
一般式(P-3-r1)、及び(P-3-r2)中のLは、前述の一般式(P-3)中のLと同様である。
【0204】
(メタ)アクリル系ポリマー(SA)の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0205】
【化27】
【0206】
【化28】
【0207】
【化29】
【0208】
<(メタ)アクリル系ポリマー(SA)の製造方法>
(メタ)アクリル系ポリマー(SA)の製造方法は、特に限定されず、公知の製造方法を用いて製造することができるが、例えば、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーをラジカル重合させる方法により製造できる。上記(メタ)アクリロイル基を有するモノマー((メタ)アクリレートモノマー)としては、フッ素原子を含有する基を有する(メタ)アクリレートモノマー(好ましくは下記一般式(Pd-1)で表される化合物)、カチオン重合性基を有する(メタ)アクリレートモノマー(好ましくは下記一般式(Pd-2)で表される化合物)、及びラジカル重合性基を有する(メタ)アクリレートモノマー(好ましくは下記一般式(Pd-3)で表される化合物)を使用することが好ましい。
下記一般式(Pd-1)で表される化合物は、上記一般式(P-1)で表される構成単位に対応し、下記一般式(Pd-2)で表される化合物は、上記一般式(P-2)で表される構成単位に対応し、下記一般式(Pd-3)で表される化合物は、上記一般式(P-3)で表される構成単位に対応する。
【0209】
【化30】
【0210】
一般式(Pd-1)中、Mは水素原子又はメチル基を表し、Lは単結合又は2価の連結基を表し、Qはフッ素原子を含有する基を表す。
一般式(Pd-2)中、Mは水素原子又はメチル基を表し、Lは単結合又は2価の連結基を表し、Qはカチオン重合性基を表す。
一般式(Pd-3)中、Mは水素原子又はメチル基を表し、Lは単結合又は2価の連結基を表し、Qはラジカル重合性基を表す。
【0211】
一般式(Pd-1)中のM、L及びQは、一般式(P-1)中のM、L及びQとそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(Pd-2)中のM、L及びQは、一般式(P-2)中のM、L及びQとそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(Pd-3)中のM、L及びQは、一般式(P-3)中のM、L及びQとそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0212】
(カチオン重合開始剤)
本発明におけるハードコート層形成用組成物は、カチオン重合開始剤を含むことが好ましい。
本発明におけるハードコート層形成用組成物は、カチオン重合開始剤を含むことで、ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)及びポリマー(S)のカチオン重合性基の重合反応を良好に進行させることができ、ハードコート層において、ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)とポリマー(S)とを結合することができる。
カチオン重合開始剤は一種のみ用いてもよく、構造の異なる二種以上を併用してもよい。また、カチオン重合開始剤は光重合開始剤でも良く、熱重合開始剤でも良い。
ハードコート層形成用組成物中のカチオン重合開始剤の含有率は、特に限定されるものではないが、例えばポリオルガノシルセスキオキサン(a1)100質量部に対して、0.1~200質量部が好ましく、1~50質量部がより好ましい。
【0213】
(溶媒)
本発明におけるハードコート層形成用組成物は、溶媒を含んでいてもよい。
溶媒としては、有機溶媒が好ましく、有機溶媒の一種または二種以上を任意の割合で混合して用いることができる。有機溶媒の具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;エチルセロソルブ等のセロソルブ類;トルエン、キシレン等の芳香族類;プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;ジアセトンアルコール等が挙げられる。
本発明におけるハードコート層形成用組成物における溶媒の含有率は、ハードコート層形成用組成物の塗布適性を確保できる範囲で適宜調整することができる。例えば、ハードコート層形成用組成物の全固形分100質量部に対して、50~500質量部とすることができ、好ましくは80~200質量部とすることができる。
ハードコート層形成用組成物は、通常、液の形態をとる。
ハードコート層形成用組成物の固形分の濃度は、通常、10~90質量%程度であり、好ましくは20~80質量%、特に好ましくは40~70質量%程度である。
【0214】
(その他の添加剤)
本発明におけるハードコート層形成用組成物は、上記以外の成分を含有していてもよく、たとえば、無機微粒子、分散剤、レベリング剤、防汚剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等を含有していてもよい。
【0215】
本発明に用いるハードコート層形成用組成物は、以上説明した各種成分を同時に、または任意の順序で順次混合することにより調製することができる。調製方法は特に限定されるものではなく、調製には公知の攪拌機等を用いることができる。
【0216】
(ハードコート層形成用組成物の硬化物)
本発明の積層体のハードコート層は、ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)及びポリマー(S)を含むハードコート層形成用組成物の硬化物を含むものであり、好ましくは、ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)、ポリマー(S)及びカチオン重合開始剤を含むハードコート層形成用組成物の硬化物を含むものである。
ハードコート層形成用組成物の硬化物は、少なくとも、ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)のカチオン重合性基とポリマー(S)のカチオン重合性基とが重合反応により結合してなる硬化物を含むことが好ましい。
本発明の積層体のハードコート層における、上記ハードコート層形成用組成物の硬化物の含有率は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましい。
【0217】
(ハードコート層の膜厚)
ハードコート層の膜厚は特に限定されないが、0.5~30μmであることが好ましく、1~25μmであることがより好ましく、2~20μmであることが更に好ましい。
ハードコート層の膜厚は、積層体の断面を光学顕微鏡で観察して算出する。断面試料は、断面切削装置ウルトラミクロトームを用いたミクロトーム法や、集束イオンビーム(FIB)装置を用いた断面加工法などにより作成できる。
【0218】
<耐擦傷層>
本発明の積層体は耐擦傷層を含む。
耐擦傷層は、ハードコート層上に形成されている。
本発明の積層体は、少なくとも1層の耐擦傷層を、ハードコート層の基材と反対側の表面上に有する。
本発明の積層体の耐擦傷層は、ラジカル重合性化合物(c1)を含む耐擦傷層形成用組成物の硬化物を含む。
【0219】
(ラジカル重合性化合物(c1))
ラジカル重合性化合物(c1)(「化合物(c1)」ともいう。)について説明する。
化合物(c1)は、ラジカル重合性基を有する化合物である。
化合物(c1)におけるラジカル重合性基としては、特に限定されず、一般に知られているラジカル重合性基を用いることができる。ラジカル重合性基としては、重合性不飽和基が挙げられ、具体的には、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などが挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。なお、上記した各基は置換基を有していてもよい。
化合物(c1)は、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることが好ましく、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることがより好ましい。
化合物(c1)の分子量は特に限定されず、モノマーでもよいし、オリゴマーでもよいし、ポリマーでもよい。
上記化合物(c1)の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
1分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート等が好適に例示される。
1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルが挙げられる。具体的には、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート,ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート,ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、高架橋という点ではペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、もしくはジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、又はこれらの混合物が好ましい。
【0220】
化合物(c1)は一種のみ用いてもよく、構造の異なる二種以上を併用してもよい。
【0221】
耐擦傷層形成用組成物中の化合物(c1)の含有率は、耐擦傷層形成用組成物中の全固形分に対して、80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましい。
【0222】
(ラジカル重合開始剤)
本発明における耐擦傷層形成用組成物は、ラジカル重合開始剤を含むことが好ましい。
本発明における耐擦傷層形成用組成物は、ラジカル重合開始剤を含むことで、前述のハードコート層形成用組成物に含まれるポリマー(S)及び化合物(c1)のラジカル重合性基の重合反応を良好に進行させることができ、ハードコート層塗膜の耐擦傷層塗膜側の表面に偏在しているポリマー(S)と、耐擦傷層塗膜中の化合物(c1)とを結合することができ、ハードコート層と耐擦傷層の密着性を高めることができる。
ラジカル重合開始剤は一種のみ用いてもよく、構造の異なる二種以上を併用してもよい。また、ラジカル重合開始剤は光重合開始剤でも良く、熱重合開始剤でも良い。
耐擦傷層形成用組成物中のラジカル重合開始剤の含有率は、特に限定されるものではないが、例えば化合物(c1)100質量部に対して、0.1~200質量部が好ましく、1~50質量部がより好ましい。
【0223】
(溶媒)
本発明における耐擦傷層形成用組成物は、溶媒を含んでいてもよい。
溶媒としては、前述のハードコート層形成用組成物が含んでいてもよい溶媒と同様である。
本発明における耐擦傷層形成用組成物における溶媒の含有率は、耐擦傷層形成用組成物の塗布適性を確保できる範囲で適宜調整することができる。例えば、耐擦傷層形成用組成物の全固形分100質量部に対して、50~500質量部とすることができ、好ましくは80~200質量部とすることができる。
耐擦傷層形成用組成物は、通常、液の形態をとる。
耐擦傷層形成用組成物の固形分の濃度は、通常、10~90質量%程度であり、好ましくは20~80質量%、特に好ましくは40~70質量%程度である。
【0224】
(その他添加剤)
耐擦傷層形成用組成物は、上記以外の成分を含有していてもよく、たとえば、無機粒子、レベリング剤、防汚剤、帯電防止剤、滑り剤、溶媒等を含有していてもよい。
特に、滑り剤として下記の含フッ素化合物を含有することが好ましい。
【0225】
[含フッ素化合物]
含フッ素化合物は、モノマー、オリゴマー、ポリマーいずれでもよい。含フッ素化合物は、耐擦傷層中で多官能(メタ)アクリレート化合物(c1)との結合形成あるいは相溶性に寄与する置換基を有していることが好ましい。この置換基は同一であっても異なっていてもよく、複数個あることが好ましい。
この置換基は重合性基が好ましく、ラジカル重合性、カチオン重合性、アニオン重合性、縮重合性及び付加重合性のうちいずれかを示す重合性反応基であればよく、好ましい置換基の例としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基、シンナモイル基、エポキシ基、オキセタニル基、水酸基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシル基、アミノ基が挙げられる。その中でもラジカル重合性基が好ましく、中でもアクリロイル基、メタクリロイル基が特に好ましい。
含フッ素化合物はフッ素原子を含まない化合物とのポリマーであってもオリゴマーであってもよい。
【0226】
上記含フッ素化合物は、下記一般式(F)で表されるフッ素系化合物が好ましい。
一般式(F): (R)-[(W)-(Rnfmf
(式中、Rは(パー)フルオロアルキル基又は(パー)フルオロポリエーテル基、Wは単結合又は連結基、Rは重合性不飽和基を表す。nfは1~3の整数を表す。mfは1~3の整数を表す。)
【0227】
一般式(F)において、Rは重合性不飽和基を表す。重合性不飽和基は、紫外線や電子線などの活性エネルギー線を照射することによりラジカル重合反応を起こしうる不飽和結合を有する基(すなわち、ラジカル重合性基)であることが好ましく、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基、アリル基などが挙げられ、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、及びこれらの基における任意の水素原子がフッ素原子に置換された基が好ましく用いられる。
【0228】
一般式(F)において、Rは(パー)フルオロアルキル基又は(パー)フルオロポリエーテル基を表す。
ここで、(パー)フルオロアルキル基は、フルオロアルキル基及びパーフルオロアルキル基のうち少なくとも1種を表し、(パー)フルオロポリエーテル基は、フルオロポリエーテル基及びパーフルオロポリエーテル基のうち少なくとも1種を表す。耐擦傷性の観点では、R中のフッ素含有率は高いほうが好ましい。
【0229】
(パー)フルオロアルキル基は、炭素数1~20の基が好ましく、より好ましくは炭素数1~10の基である。
(パー)フルオロアルキル基は、直鎖構造(例えば-CFCF、-CH(CFH、-CH(CFCF、-CHCH(CFH)であっても、分岐構造(例えば-CH(CF、-CHCF(CF、-CH(CH)CFCF、-CH(CH)(CFCFH)であっても、脂環式構造(好ましくは5員環又は6員環で、例えばパーフルオロシクロへキシル基及びパーフルオロシクロペンチル基並びにこれらの基で置換されたアルキル基)であってもよい。
【0230】
(パー)フルオロポリエーテル基は、(パー)フルオロアルキル基がエーテル結合を有している場合を指し、1価でも2価以上の基であってもよい。フルオロポリエーテル基としては、例えば-CHOCHCFCF、-CHCHOCHH、-CHCHOCHCH17、-CHCHOCFCFOCFCFH、フッ素原子を4個以上有する炭素数4~20のフルオロシクロアルキル基等が挙げられる。また、パーフルオロポリエーテル基としては、例えば、-(CFO)pf-(CFCFO)qf-、-[CF(CF)CFO]pf―[CF(CF)]qf-、-(CFCFCFO)pf-、-(CFCFO)pf-などが挙げられる。
上記pf及びqfはそれぞれ独立に0~20の整数を表す。ただしpf+qfは1以上の整数である。
pf及びqfの総計は1~83が好ましく、1~43がより好ましく、5~23がさらに好ましい。
上記含フッ素化合物は、耐擦傷性に優れるという観点から-(CFO)pf-(CFCFO)qf-で表されるパーフルオロポリエーテル基を有することが特に好ましい。
【0231】
本発明においては、含フッ素化合物は、パーフルオロポリエーテル基を有し、かつ重合性不飽和基を一分子中に複数有することが好ましい。
【0232】
一般式(F)において、Wは連結基を表す。Wとしては、例えばアルキレン基、アリーレン基及びヘテロアルキレン基、並びにこれらの基が組み合わさった連結基が挙げられる。これらの連結基は、更に、オキシ基、カルボニル基、カルボニルオキシ基、カルボニルイミノ基及びスルホンアミド基等、並びにこれらの基が組み合わさった官能基を有してもよい。
Wとして、好ましくは、エチレン基、より好ましくは、カルボニルイミノ基と結合したエチレン基である。
【0233】
含フッ素化合物のフッ素原子含有量には特に制限は無いが、20質量%以上が好ましく、30~70質量%がより好ましく、40~70質量%がさらに好ましい。
【0234】
好ましい含フッ素化合物の例としては、ダイキン化学工業(株)製のR-2020、M-2020、R-3833、M-3833及びオプツールDAC(以上商品名)、DIC社製のメガファックF-171、F-172、F-179A、RS-78、RS-90、ディフェンサMCF-300及びMCF-323(以上商品名)が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0235】
耐擦傷性の観点から、一般式(F)において、nfとmfの積(nf×mf)は2以上が好ましく、4以上がより好ましい。
【0236】
重合性不飽和基を有する含フッ素化合物の重量平均分子量(Mw)は、分子排斥クロマトグラフィー、例えばゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定できる。
本発明で用いられる含フッ素化合物のMwは400以上50000未満が好ましく、400以上30000未満がより好ましく、400以上25000未満が更に好ましい。
【0237】
含フッ素化合物の含有率は、耐擦傷層形成用組成物中の全固形分に対して、0.01~5質量%が好ましく、0.1~5質量%がより好ましく、0.5~5質量%が更に好ましく、0.5~2質量%が特に好ましい。
【0238】
本発明に用いる耐擦傷層形成用組成物は、以上説明した各種成分を同時に、または任意の順序で順次混合することにより調製することができる。調製方法は特に限定されるものではなく、調製には公知の攪拌機等を用いることができる。
【0239】
(耐擦傷層形成用組成物の硬化物)
本発明の積層体の耐擦傷層は、化合物(c1)を含む耐擦傷層形成用組成物の硬化物を含むものであり、好ましくは、化合物(c1)及びラジカル重合開始剤を含む耐擦傷層形成用組成物の硬化物を含むものである。
耐擦傷層形成用組成物の硬化物は、少なくとも、化合物(c1)のラジカル重合性基が重合反応してなる硬化物を含むことが好ましい。
本発明の積層体の耐擦傷層における耐擦傷層形成用組成物の硬化物の含有率は、耐擦傷層の全質量に対して60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましい。
【0240】
(耐擦傷層の膜厚)
耐擦傷層の膜厚は、繰り返し折り曲げ耐性の観点から、3.0μm未満であることが好ましく、0.1~2.0μmであることがより好ましく、0.1~1.0μmであることが更に好ましい。
【0241】
<繰り返し折り曲げ耐性>
本発明の積層体は、優れた繰り返し折り曲げ耐性を有する。
本発明の積層体は、耐擦傷層を内側にして、曲率半径2mmで180°折り曲げ試験を30万回繰り返し行った場合にクラックが発生しない。
繰り返し折り曲げ耐性は具体的には以下のように測定する。
積層体から幅15mm、長さ150mmの試料フィルムを切り出し、温度25℃、相対湿度65%の状態に1時間以上静置させる。その後、180°耐折度試験機((株)井元製作所製、IMC-0755型)を用いて、耐擦傷層を内側(基材を外側)にして繰り返し折り曲げ耐性の試験を行う。上記試験機は、試料フィルムを直径4mmの棒(円柱)の曲面に沿わせて曲げ角度180°で長手方向の中央部分で折り曲げた後、元に戻す(試料フィルムを広げる)という動作を1回の試験とし、この試験を繰り返し行うものである。上記180°折り曲げ試験を30万回繰り返し行った場合にクラックが発生するか否かを目視で評価する。
【0242】
基材と、ハードコート層と、耐擦傷層とをこの順に有する積層体であって、上記ハードコート層が、前述のポリオルガノシルセスキオキサン(a1)、及びポリマー(S)を含むハードコート層形成用組成物の硬化物を含み、かつ上記耐擦傷層が、ラジカル重合性化合物(c1)を含む耐擦傷層形成用組成物の硬化物を含む積層体とすることで、上記繰り返し折り曲げ耐性に優れた積層体とすることができる。
【0243】
<耐擦傷性>
本発明の積層体は、優れた耐擦傷性を有する。
本発明の積層体は、#0000番のスチールウールで1kg/cmの荷重をかけながら、耐擦傷層の表面を往復100回擦った場合に傷が生じないものであり、往復1000回擦った場合に傷が生じないことが好ましい。
耐擦傷性は具体的には以下のように測定する。
積層体の耐擦傷層の表面を、ラビングテスターを用いて、下記条件で擦り試験を行うことで、耐擦傷性の指標とする。
評価環境条件:25℃、相対湿度60%
こすり材:スチールウール(日本スチールウール(株)製、グレードNo.#0000番)
試料と接触するテスターのこすり先端部(2cm×2cm)に巻いて、バンド固定
移動距離(片道):13cm、
擦り速度:13cm/秒、
荷重:1kg/cm
先端部接触面積:2cm×2cm
擦り回数:往復10回、往復100回、往復1000回
試験後の積層体の擦った面(耐擦傷層の表面)とは逆側の面(基材の表面)に油性黒インキを塗り、反射光で目視観察して、スチールウールと接触していた部分に傷が生じたときの擦り回数を計測し評価する。
【0244】
基材と、ハードコート層と、耐擦傷層とをこの順に有する積層体であって、上記ハードコート層が、前述のポリオルガノシルセスキオキサン(a1)、及びポリマー(S)を含むハードコート層形成用組成物の硬化物を含み、かつ上記耐擦傷層が、ラジカル重合性化合物(c1)を含む耐擦傷層形成用組成物の硬化物を含む積層体とすることで、上記耐擦傷性に優れた積層体とすることができる。
【0245】
<積層体の製造方法>
本発明の積層体の製造方法について説明する。
本発明の積層体の製造方法は、下記工程(I)~(IV)を含む製造方法であることが好ましい。
(I)基材上に、カチオン重合性基を有するポリオルガノシルセスキオキサン(a1)、及び、フッ素原子を含有する基とカチオン重合性基とラジカル重合性基とを有するポリマー(S)を含むハードコート層形成用組成物を塗布してハードコート層塗膜を形成する工程
(II)上記ハードコート層塗膜を硬化することによりハードコート層を形成する工程
(III)上記ハードコート層上に、ラジカル重合性化合物(c1)を含む耐擦傷層形成用組成物を塗布して耐擦傷層塗膜を形成する工程
(IV)上記耐擦傷層塗膜を硬化することにより耐擦傷層を形成する工程
【0246】
-工程(I)-
工程(I)は、基材上にカチオン重合性基を有するポリオルガノシルセスキオキサン(a1)、及び、フッ素原子を含有する基とカチオン重合性基とラジカル重合性基とを有するポリマー(S)を含むハードコート層形成用組成物を塗布してハードコート層塗膜を設ける工程である。
基材、ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)、ポリマー(S)及びハードコート層形成用組成物については前述したとおりである。
【0247】
ハードコート層形成用組成物の塗布方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができる。例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ダイコート法等が挙げられる。
【0248】
-工程(II)-
工程(II)は、上記ハードコート層塗膜を硬化することによりハードコート層を形成する工程である。なお、ハードコート層塗膜を硬化するとは、ハードコート層塗膜に含まれるポリオルガノシルセスキオキサン(a1)及びポリマー(S)のカチオン重合性基の少なくとも一部を重合反応させることをいう。
【0249】
ハードコート層塗膜の硬化は、電離放射線の照射又は加熱に行われることが好ましい。
【0250】
電離放射線の種類については、特に制限はなく、X線、電子線、紫外線、可視光、赤外線などが挙げられるが、紫外線が好ましく用いられる。例えばハードコート層塗膜が紫外線硬化性であれば、紫外線ランプにより10mJ/cm~2000mJ/cmの照射量の紫外線を照射して硬化性化合物を半硬化するのが好ましい。50mJ/cm~1800mJ/cmであることがより好ましく、100mJ/cm~1500mJ/cmであることが更に好ましい。紫外線ランプ種としては、メタルハライドランプや高圧水銀ランプ等が好適に用いられる。
【0251】
熱により硬化する場合、温度に特に制限はないが、80℃以上200℃以下であることが好ましく、100℃以上180℃以下であることがより好ましく、120℃以上160℃以下であることがさらに好ましい。
【0252】
硬化時の酸素濃度は0~1.0体積%であることが好ましく、0~0.1体積%であることが更に好ましく、0~0.05体積%であることが最も好ましい。
【0253】
-工程(III)-
工程(III)は、上記ハードコート層上に、ラジカル重合性化合物(c1)を含む耐擦傷層形成用組成物を塗布して耐擦傷層塗膜を形成する工程である。
ラジカル重合性化合物(c1)、及び耐擦傷層形成用組成物については前述したとおりである。
【0254】
耐擦傷層形成用組成物の塗布方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができる。例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ダイコート法等が挙げられる。
【0255】
-工程(IV)-
工程(IV)は、上記耐擦傷層塗膜を硬化することにより耐擦傷層を形成する工程である。
【0256】
耐擦傷層塗膜の硬化は、電離放射線の照射又は加熱に行われることが好ましい。電離放射線の照射及び加熱については、工程(II)において記載したものと同様である。なお、耐擦傷層塗膜を硬化するとは、耐擦傷層塗膜に含まれるラジカル重合性化合物(c1)のラジカル重合性基の少なくとも一部を重合反応させることをいう。
【0257】
本発明では、上記工程(II)において、ハードコート層塗膜を半硬化させることが好ましい。すなわち、工程(II)においてハードコート層塗膜を半硬化させ、次いで、工程(III)では、半硬化されたハードコート層上に耐擦傷層形成用組成物を塗布して耐擦傷層塗膜を形成し、次いで、工程(IV)では、耐擦傷層塗膜を硬化するとともに、ハードコート層の完全硬化を行うことが好ましい。ここで、ハードコート層塗膜を半硬化させるとは、ハードコート層塗膜に含まれるポリオルガノシルセスキオキサン(a1)及びポリマー(S)のカチオン重合性基のうち一部のみを重合反応させることをいう。ハードコート層塗膜の半硬化は、電離放射線の照射量や、加熱の温度及び時間を調節することにより行うことができる。
【0258】
工程(I)と工程(II)の間、工程(II)と工程(III)の間、工程(III)と工程(IV)の間、又は工程(IV)の後に、必要に応じて乾燥処理を行ってもよい。乾燥処理は、温風の吹き付け、加熱炉内への配置、加熱炉内での搬送、ハードコート層及び耐擦傷層が設けられていない面(基材面)からのローラーでの加熱等により行うことができる。加熱温度は、溶媒を乾燥除去できる温度に設定すればよく、特に限定されるものではない。ここで加熱温度とは、温風の温度または加熱炉内の雰囲気温度をいうものとする。
【0259】
本発明の積層体は、耐擦傷性及び繰り返し折り曲げ耐性に優れ、かつ白化が少ないものであり、例えば、光学フィルム(好ましくはハードコートフィルム)として用いることができる。また、本発明の積層体は、画像表示装置の表面保護フィルムとして用いることができ、例えば、フォルダブルデバイス(フォルダブルディスプレイ)の表面保護フィルムとして用いることができる。フォルダブルデバイスとは、表示画面が変形可能であるフレキシブルディスプレイを採用したデバイスのことであり、表示画面の変形性を利用してデバイス本体(ディスプレイ)を折りたたむことが可能である。
フォルダブルデバイスとしては、例えば、有機エレクトロルミネッセンスデバイスなどが挙げられる。
【0260】
本発明は、本発明の積層体を備えた物品、及び本発明の積層体を表面保護フィルムとして備えた画像表示装置にも関する。
【実施例0261】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれによって限定して解釈されるものではない。
【0262】
<基材の作製>
(ポリイミド粉末の製造)
攪拌器、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器及び冷却器を取り付けた1Lの反応器に、窒素気流下、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)832gを加えた後、反応器の温度を25℃にした。ここに、ビストリフルオロメチルベンジジン(TFDB)64.046g(0.2mol)を加えて溶解した。得られた溶液を25℃に維持しながら、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)31.09g(0.07mol)とビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)8.83g(0.03mol)を投入し、一定時間撹拌して反応させた。その後、塩化テレフタロイル(TPC)20.302g(0.1mol)を添加して、固形分濃度13質量%のポリアミック酸溶液を得た。次いで、このポリアミック酸溶液にピリジン25.6g、無水酢酸33.1gを投入して30分撹拌し、さらに70℃で1時間撹拌した後、常温に冷却した。ここにメタノール20Lを加え、沈澱した固形分を濾過して粉砕した。その後、100℃下、真空で6時間乾燥させて、111gのポリイミド粉末を得た。
【0263】
(基材S-1の作製)
100gの上記ポリイミド粉末を670gのN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶かして13質量%の溶液を得た。得られた溶液をステンレス板に流延し、130℃の熱風で30分乾燥させた。その後フィルムをステンレス板から剥離して、フレームにピンで固定し、フィルムが固定されたフレームを真空オーブンに入れ、100℃から300℃まで加熱温度を徐々に上げながら2時間加熱し、その後、徐々に冷却した。冷却後のフィルムをフレームから分離した後、最終熱処理工程として、さらに300℃で30分間熱処理して、ポリイミドフィルムからなる、厚み30μmの基材S-1を得た。
【0264】
<ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)の合成>
(化合物(A)の合成)
温度計、攪拌装置、還流冷却器、及び窒素導入管を取り付けた1000ミリリットルのフラスコ(反応容器)に、窒素気流下で2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン300ミリモル(73.9g)、トリエチルアミン7.39g、及びMIBK(メチルイソブチルケトン)370gを混合し、純水73.9gを、滴下ロートを使用して30分かけて滴下した。この反応液を80℃に加熱し、重縮合反応を窒素気流下で10時間行った。
その後、反応溶液を冷却し、5質量%食塩水300gを添加し、有機層を抽出した。有機層を5質量%食塩水300g、純水300gで2回、順次洗浄した後、1mmHg、50℃の条件で濃縮し、固形分濃度59.8質量%のMIBK溶液として無色透明の液状の生成物{脂環式エポキシ基を有するポリオルガノシルセスキオキサン(a1)である化合物(A)(一般式(1)中のRb:2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基、q=100、r=0である化合物)}を87.0g得た。
生成物を分析したところ、数平均分子量は2050であり、分子量分散度は1.9であった。
なお、1mmHgは約133.322Paである。
【0265】
<ポリマー(S)の合成>
((SX1-1)で表されるポリマーの合成)
トリメトキシ(1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-n-オクチル)シラン30ミリモル(14.05g)、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン135ミリモル(33.26g)、アクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル135ミリモル(31.63g)、トリエチルアミン7.39g、及びMIBK(メチルイソブチルケトン)370gを混合し、純水73.9gを、滴下ロートを使用して30分かけて滴下した。この反応液を50℃に加熱し、重縮合反応を10時間行った。
その後、反応溶液を冷却し、5質量%食塩水300gを添加し、有機層を抽出した。有機層を5質量%食塩水300g、純水300gで2回、順次洗浄した後、30mmHg、50℃の条件で濃縮し、固形分濃度52質量%のMIBK溶液として無色透明の液状の生成物である下記式(SX1-1)で表されるポリマー(ポリオルガノシルセスキオキサン)を得た。
【0266】
上記で得られたポリマー5mgを重クロロホルム0.5mLに溶解させ、BRUKER AVANCE III HD 400MHz(株式会社日立ハイテクサイエンス製)で測定を行った。結果を以下に示す。
H NMR(400MHz,CDCl,ppm):δ6.3-6.5(m,(III)アクリル部CH=CHCO),δ6.0-6.2(m,(III)アクリル部CH=CHCO),δ5.7-5.9(m,(III)アクリル部CH=CHCO),δ4.0-4.2(m,(III)アクリル部の隣CH=CHCOCH),δ3.0-3.2(m,(II)エポキシ部CHOCH),δ1.8-2.3(m,(I)フッ素の隣C13CHCH),δ1.6-1.8(m,(III)シリル基の隣CHSi),δ1.0-1.5(m,(II)脂環部C),δ0.8-1.0(m,(I)シリル基の隣C13CHCHSi),δ0.4-0.8(m,(II)&(III)メチレン部CHCHCHSi).
【0267】
上記(SX1-1)で表されるポリマーの合成において、各モノマーの使用量を変更することで、各構成単位の含有モル比率を変更したポリマー((SX1-2)、(SX1-3)、(SX1-4)、(SX1-5)、(SX1-R1)、(SX1-R2)、(SX1-R3))を合成した。
【0268】
上記(SX1-1)で表されるポリマーの合成において、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランを3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランに変更し、さらに各モノマーの使用量を変更して、(SX4-1)で表されるポリマーを合成した。
【0269】
上記(SX1-1)で表されるポリマーの合成において、アクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピルをアクリル酸3-(トリメトキシシリル)オクチルに変更し、さらに各モノマーの使用量を変更して、(SX5-1)で表されるポリマーを合成した。
【0270】
上記(SX1-1)で表されるポリマーの合成において、トリメトキシ(1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-n-オクチル)シランをトリメトキシ(1H,1H,2H,2H-ノナフルオロ-n-ヘキシル)シランに変更し、さらに各モノマーの使用量を変更して、(SX2-1)で表されるポリマーを合成した。
【0271】
上記(SX1-1)で表されるポリマーの合成において、トリメトキシ(1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-n-オクチル)シランをトリメトキシ(1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロ-n-デシル)シランに変更し、さらに各モノマーの使用量を変更して、(SX3-1)で表されるポリマーを合成した。
層間密着剤として使用した各ポリマーの構造を以下に示す。各ポリマーの分子量(Mw)及び分散度(Mw/Mn)は下記表1に示した。下記構造式において、「SiO1.5」は、シルセスキオキサン単位を表す。
【0272】
【化31】
【0273】
【化32】
【0274】
【化33】
【0275】
【化34】
【0276】
【化35】
【0277】
[実施例1]
<ハードコート層形成用組成物の調製>
(ハードコート層形成用組成物HC-1)
上記化合物(A)を含有するMIBK溶液に、層間密着剤(SX1-1)、CPI-110P、及びMIBK(メチルイソブチルケトン)を添加し、各含有成分の含有量を以下のように調整し、ミキシングタンクに投入、攪拌した。得られた組成物を孔径0.45μmのポリプロピレン製フィルターで濾過し、ハードコート層形成用組成物HC-1とした。
【0278】
化合物(A)のMIBK溶液(固形分濃度59.8質量%)
82.1質量部
層間密着剤(SX1-1)のMIBK溶液(固形分濃度52質量%)
0.2質量部
CPI-110P 13.0質量部
MIBK 4.6質量部
【0279】
なお、CPI-110Pは、サンアプロ株式会社製の光カチオン重合開始剤(固形分濃度50質量%)である。
【0280】
<耐擦傷層形成用組成物の調製>
(耐擦傷層形成用組成物SR-1)
下記に記載の組成で各成分をミキシングタンクに投入、攪拌し、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して耐擦傷層形成用組成物SR-1とした。
DPHA 96.2質量部
イルガキュア127 2.8質量部
RS-90 1.0質量部
メチルエチルケトン 300.0質量部
【0281】
なお、耐擦傷層形成用組成物中に用いた化合物は以下のとおりである。
DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物、日本化薬(株)製
イルガキュア127(Irg.127):ラジカル光重合開始剤、BASF社製
RS-90:滑り剤、DIC(株)製
【0282】
(積層体(ハードコートフィルム)の製造)
厚さ30μmのポリイミド基材S-1上に上記ハードコート層形成用組成物HC-1をワイヤーバー#18を用いて、硬化後の膜厚が18μmとなるようにバー塗布し、基材上にハードコート層塗膜を設けた。
次いで、ハードコート層塗膜を120℃で1分間乾燥した後、25℃、酸素濃度100ppm(parts per million)の条件にて空冷水銀ランプを用いて、照度18mW/cm、照射量19mJ/cmの紫外線を照射した。このようにしてハードコート層塗膜を半硬化した。
その後、半硬化されたハードコート層塗膜上に、耐擦傷層形成用組成物SR-1をダイコーターを用いて、硬化後の膜厚が0.8μmとなるように塗布した。
次いで、得られた積層体を120℃で1分間乾燥した後、25℃、酸素濃度100ppm、照度60mW/cm、照射量600mJ/cmの紫外線を照射し、さらに80℃、酸素濃度100ppmの条件にて空冷水銀ランプを用いて、で照度60mW/cm、照射量600mJ/cmの紫外線を照射することで、ハードコート層塗膜及び耐擦傷層塗膜を完全硬化させた。
その後、得られた積層体を120℃1時間熱処理することで、基材上に、ハードコート層と耐擦傷層を有する実施例1の積層体(ハードコートフィルム)を得た。
【0283】
[実施例2~10、比較例1~7]
用いる層間密着剤の種類及び含有率、ハードコート層の膜厚、並びに耐擦傷層の膜厚を下記表1に記載したとおり変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2~10、比較例1~7の積層体(ハードコートフィルム)をそれぞれ製造した。
【0284】
[積層体(ハードコートフィルム)の評価]
製造した各実施例及び比較例の積層体(ハードコートフィルム)を、以下の方法によって評価した。
【0285】
(耐擦傷性)
製造した各実施例及び比較例の積層体(ハードコートフィルム)の耐擦傷層の表面を、ラビングテスターを用いて、以下の条件で擦り試験を行うことで、耐擦傷性の指標とした。
評価環境条件:25℃、相対湿度60%
こすり材:スチールウール(日本スチールウール(株)製、グレードNo.#0000番)
試料と接触するテスターのこすり先端部(2cm×2cm)に巻いて、バンド固定
移動距離(片道):13cm、
擦り速度:13cm/秒、
荷重:1kg/cm
先端部接触面積:2cm×2cm
擦り回数:往復10回、往復100回、往復1000回
試験後のハードコートフィルムの擦った面(耐擦傷層の表面)とは逆側の面(基材の表面)に油性黒インキを塗り、反射光で目視観察して、スチールウールと接触していた部分に傷が生じたときの擦り回数を計測し評価した。
A:往復1000回擦った場合に傷が生じない
B:往復100回擦った場合に傷が生じないが、往復1000回擦った場合に傷が生じる
C:往復10回擦った場合に傷が生じないが、往復100回擦った場合に傷が生じる
D:往復10回擦った場合に傷が生じる
【0286】
(繰り返し折り曲げ耐性)
製造した各実施例及び比較例の積層体(ハードコートフィルム)から幅15mm、長さ150mmの試料フィルムを切り出し、温度25℃、相対湿度65%の状態に1時間以上静置させた。その後、180°耐折度試験機((株)井元製作所製、IMC-0755型)を用いて、耐擦傷層を内側(基材を外側)にして繰り返し折り曲げ耐性の試験を行った。使用した試験機は、試料フィルムを直径4mmの棒(円柱)の曲面に沿わせて曲げ角度180°で長手方向の中央部分で折り曲げた後、元に戻す(試料フィルムを広げる)という動作を1回の試験とし、この試験を繰り返し行うものである。上記180°折り曲げ試験を30万回繰り返し行った場合にクラックが発生しないものをAとし、クラックが発生したものをBとして評価した。なお、クラックの発生の有無は目視で評価した。
【0287】
(フィルムの白化)
フィルムの白化は、表面粗さ非接触三次元表面形状測定器(VertScan(商品名)、(株)菱化システム製)を用いて測定した表面粗さ(Ra)で評価した。
表面Raが80nm未満のものはA(フィルムがクリアに視認できる)、表面Raが80nmから150nm未満のものはB(フィルムが若干白化)、表面Raが150nm以上のものはC(フィルムが白化)とした。
【0288】
下記表1中、層間密着剤の含有率(質量%)は、ハードコート層形成用組成物の全固形分に対しての値である。
【0289】
【表1】
【0290】
表1に示したとおり、実施例1~10の積層体(ハードコートフィルム)は、耐擦傷性及び繰り返し折り曲げ耐性に優れ、かつ白化が抑制されていた。
【産業上の利用可能性】
【0291】
本発明によれば、耐擦傷性及び繰り返し折り曲げ耐性に優れ、かつ白化が抑制された積層体、上記積層体を備えた物品、並びに画像表示装置を提供することができる。
【0292】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2019年2月27日出願の日本特許出願(特願2019-34955)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。