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特開2022-116455ビスケット用生地の製造方法およびビスケット用生地
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022116455
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】ビスケット用生地の製造方法およびビスケット用生地
(51)【国際特許分類】
   A21D 2/18 20060101AFI20220803BHJP
   A21D 2/14 20060101ALI20220803BHJP
   A21D 13/80 20170101ALI20220803BHJP
【FI】
A21D2/18
A21D2/14
A21D13/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021012624
(22)【出願日】2021-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(72)【発明者】
【氏名】篠田 佳佑
【テーマコード(参考)】
4B032
【Fターム(参考)】
4B032DB21
4B032DG02
4B032DK15
4B032DK18
4B032DK21
4B032DK47
4B032DP08
4B032DP40
(57)【要約】
【課題】
本発明は、常温で液体状の油脂のみを用いたビスケット用生地の製造方法、ビスケット用生地およびビスケットを提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明のビスケット用生地の製造方法は、粉体原料、水性成分、タンパク質素材、油脂組成物及び以下の条件(1)乃至(4)を満たす成分(A)を含むことを特徴とし、前記油脂組成物の上昇融点が10℃以下であり、前記成分(A)および油脂組成物を混合して第1混合物を得る工程と、前記第1混合物に対して水性成分およびタンパク質素材を混合して第2混合物を得る工程と、前記第2混合物に対して粉体原料を混合してビスケット用生地を得る工程とを含むことを特徴とする。成分(A):以下の条件(1)乃至(4)を満たす粒状物(1)澱粉含量が75質量%以上(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×10以上5×10以下(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下(4)目開き0.5mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が30質量%以上100質量%以下
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体原料、水性成分、タンパク質素材、油脂組成物及び以下の条件(1)乃至(4)を満たす成分(A)を含むビスケット用生地の製造方法であって、
前記油脂組成物の上昇融点が10℃以下であり、
前記成分(A)および前記油脂組成物を混合して第1混合物を得る工程と、
前記第1混合物に対して前記水性成分および前記タンパク質素材を混合して第2混合物を得る工程と、
前記第2混合物に対して前記粉体原料を混合してビスケット用生地を得る工程と
を含む、前記製造方法。
成分(A):以下の条件(1)乃至(4)を満たす粒状物
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×10以上5×10以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き0.5mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が30質量%以上100質量%以下
【請求項2】
前記第2混合物100質量部に対して、前記粉体原料を80質量部以上200質量部以下混合することを特徴とする、請求項1に記載の前記製造方法。
【請求項3】
前記第2混合物100質量部中に、前記成分(A)を10質量部以上20質量部以下含ませることを特徴とする、請求項1または2に記載の前記製造方法。
【請求項4】
粉体原料と、
水性成分と、
タンパク質素材と、
上昇融点が10℃以下である油脂組成物と、
以下の条件(1)乃至(4)を満たす成分(A)と
を含むビスケット用生地。
成分(A):以下の条件(1)乃至(4)を満たす粒状物
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×10以上5×10以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き0.5mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が30質量%以上100質量%以下
【請求項5】
前記粉体原料が、小麦粉を50質量%以上100質量%以下含むことを特徴とする、請求項4に記載の前記生地。
【請求項6】
前記タンパク質素材が、卵素材を含むことを特徴とする、請求項4または5に記載の前記生地。
【請求項7】
前記油脂組成物が、植物または植物加工品由来の香気成分を有する風味油であることを特徴とする、請求項4乃至6のいずれか1項に記載の前記生地。
【請求項8】
請求項4乃至7のいずれか1項に記載のビスケット用生地を焼成して得たビスケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂源として上昇融点が10℃以下の油脂組成物のみを用いたビスケット用生地の製造方法およびビスケット用生地に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ビスケット用生地は油脂源としてバターやマーガリンなど常温で固体状の油脂を用いて製造される。これは、常温で固体状の油脂が、低温~常温域にて保形性を有しているためである。ビスケット用生地は、このような常温で固体状の油脂の保形性によって、シート状への伸展加工や繊細な意匠の成形を可能とする。このため、汎用性に優れるビスケット用生地の油脂源には、常温で固体状の油脂が含まれていることが必要不可欠であった。
【0003】
近年、ビスケット菓子には、甘いものだけでなくうすい塩味のものなど、さまざまな風味への展開が望まれている。しかしながら、バターやマーガリンは、一般的に原料が乳脂肪もしくは乳成分を含むため、調製されるビスケットなどにもおのずと乳風味が付与されてしまうという課題を有していた。
【0004】
これに対して、常温で液体状の油脂には、特許文献1のように、さまざまなフレーバーを付与したものが存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-145928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ビスケット菓子に様々な風味を付与するために、ビスケット用生地の油脂源に、キャノーラ油やオリーブ油などの常温で液体状の油脂のみを使用すると、生地に十分な保形性と伸展性を付与できず、機械生産に適用することが困難であった。
【0007】
また、ビスケット用生地の油脂源に、常温で液体状の油脂のみを用いて調製したビスケットは、ざくざくとした硬い食感で、口どけが悪かった。
【0008】
そこで、本発明においては、澱粉素材を用いることにより、油脂源として上昇融点が10℃以下の油脂のみを用いたビスケット用生地の製造方法、ビスケット用生地およびビスケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のビスケット用生地の製造方法、ビスケット用生地およびビスケットの特徴は、以下の[1]乃至[8]である。
[1]
本発明のビスケット用生地の製造方法は、粉体原料、水性成分、タンパク質素材、油脂組成物及び以下の条件(1)乃至(4)を満たす成分(A)を含むことを特徴とし、
前記油脂組成物の上昇融点が10℃以下であり、
前記成分(A)および油脂組成物を混合して第1混合物を得る工程と、
前記第1混合物に対して水性成分およびタンパク質素材を混合して第2混合物を得る工程と、
前記第2混合物に対して粉体原料を混合してビスケット用生地を得る工程と
を含む、前記製造方法。
成分(A):以下の条件(1)乃至(4)を満たす粒状物
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×10以上5×10以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き0.5mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が30質量%以上100質量%以下
[2]
本発明のビスケット用生地の製造方法は、前記第2混合物100質量部に対して、前記粉体原料を80質量部以上200質量部以下混合することを特徴とする。
[3]
本発明のビスケット用生地の製造方法は、前記第2混合物100質量部中に、前記成分(A)を10質量部以上20質量部以下含ませることを特徴とする。
[4]
本発明のビスケット用生地は、粉体原料と、水性成分と、タンパク質素材と、上昇融点が10℃以下の油脂組成物と、以下の条件(1)乃至(4)を満たす成分(A)とを含むことを特徴とする。
成分(A):以下の条件(1)乃至(4)を満たす粒状物
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×10以上5×10以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き0.5mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が30質量%以上100質量%以下
[5]
本発明のビスケット用生地は、前記粉体原料が、小麦粉を50質量%以上100質量%以下含むことを特徴とする。
[6]
本発明のビスケット用生地は、前記タンパク質素材が、卵素材を含むことを特徴とする。
[7]
本発明のビスケット用生地は、前記油脂組成物が、植物または植物加工品由来の香気成分を有する風味油であることを特徴とする。
[8]
本発明のビスケットは、上記[4]乃至[7]のいずれか1つのビスケット用生地を焼成して得たことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のビスケット用生地の製造方法によれば、油脂源として上昇融点が10℃以下の油脂組成物のみを用いて保形性および伸展性に優れ、機械生産に適用可能なたビスケット用生地を得ることができる。
【0011】
本発明のビスケット用生地によれば、従来の加工装置を用いてビスケットを機械生産することを可能とする。
【0012】
また、本発明のビスケット用生地は、油脂組成物に付与する風味を選択することにより、様々な風味のビスケットを提供することを可能とする。
【0013】
本発明のビスケットは、喫食時の崩壊感、歯切れおよび口どけに優れている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のビスケット用生地の製造方法、ビスケット用生地およびビスケットの具体的な態様について以下に説明する。
【0015】
まず、本明細書において、「ビスケット」とは、小麦粉などの粉体原料を主材料として調製した生地を焼いたサクサクした食感の焼き菓子一般を指す語であり、ビスケット、クッキー、サブレ、クラッカーなどが含まれる。
【0016】
また、本明細書において、「油脂源」とは、ビスケット生地に含まれる食用油脂または油脂組成物を意味する。
【0017】
本発明のビスケット用生地の製造方法は、粉体原料、水性成分、タンパク質素材、油脂組成物及び以下の条件(1)乃至(4)を満たす成分(A)を含むビスケット用生地の製造方法に関し、前記油脂組成物の上昇融点が10℃以下であり、前記成分(A)および前記油脂組成物を混合して第1混合物を得る工程と、前記第1混合物に対して前記水性成分および前記タンパク質素材を混合して第2混合物を得る工程と、前記第2混合物に対して前記粉体原料を混合してビスケット用生地を得る工程とを含むものである。
成分(A)は、以下の条件(1)乃至(4)を満たす粒状物である。
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×10以上5×10以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き0.5mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が30質量%以上100質量%以下
【0018】
本発明のビスケット用生地の製造方法における混合は、各工程において成分(A)、油脂組成物、水性成分、タンパク質素材、粉体原料を均一に混合できる方法であればよく、公知の混合装置および混合方法を用いることができる。
【0019】
前記混合時の各素材の温度は、10℃以上30℃以下とされていることが好ましく、15℃以上25℃以下とされていることがより好ましく、18℃以上22℃以下とされていることがさらに好ましい。各素材の温度を上記範囲内とすることにより、保形性と伸展性に優れたビスケット用生地を得ることができる。
【0020】
前記粉体原料としては、小麦粉を含んでいればよく、小麦粉の他にも、米粉、大豆粉、トウモロコシ粉などの澱粉粉末;砂糖、塩などの粉末調味料;果物や野菜のフリーズドライ粉末;およびナッツ類などを含んでもよい。前記粉体原料は、ビスケット用生地100質量部中に30質量部以上80質量部以下含まれていることが好ましく、35質量部以上75質量部以下含まれていることがより好ましく、40質量部以上70質量部以下含まれていることがさらに好ましい。また、前記粉体原料100質量部中に、澱粉粉末が70質量部以上100質量部以下含まれていることが好ましく、70質量部以上95質量部以下含まれていることがより好ましく、70質量部以上90質量部以下含まれていることがさらに好ましい。
【0021】
前記水性成分としては、液体であればよく特に限定されないが、例えば、水、牛乳、豆乳、アーモンドミルク、ヨーグルトおよび生クリームからなる群から選ばれる1種または2種以上を選択して用いることができる。好ましくは、水、牛乳および豆乳からなる群から選ばれる1種または2種以上である。前記水性成分は、ビスケット用生地100質量部中に1質量部以上10質量部以下含まれていることが好ましく、2質量部以上9質量部以下含まれていることがより好ましく、3質量部以上8質量部以下含まれていることがさらに好ましい。
【0022】
前記タンパク質素材としては、卵液、卵白粉、全卵粉などの卵素材;おから、エンドウ蛋白、脱脂粉乳、牛乳および生クリームからなる群から選ばれる1種または2種以上を選択して用いることができる。前記タンパク質素材は、液体状であることが好ましく、卵液が特に好ましい。前記タンパク質素材は、ビスケット用生地100質量部中に1質量部以上10質量部以下含まれていることが好ましく、2質量部以上9質量部以下含まれていることがより好ましく、3質量部以上8質量部以下含まれていることがさらに好ましい。
【0023】
前記油脂組成物としては、上昇融点が10℃以下の食用油脂であればよく、好ましくは5℃以下であり、より好ましくは0℃未満である。上昇融点は、日本油化学会「基準油脂分析試験法2.2.4.2-1996」に準じて測定することができる。食用油脂としては、例えば、菜種油、大豆油、コーン油、オリーブ油、あまに油、えごま油、ゴマ油、米油、綿実油、ひまわり油、サフラワー油およびパーム油などの植物油脂;魚油などの動物油脂からなる群から選ばれる1種または2種以上を選択して用いることができる。食用油脂は、植物油脂であることが好ましく、菜種油、大豆油、コーン油、オリーブ油、あまに油、ゴマ油、米油、綿実油、ひまわり油、サフラワー油およびパーム油からなる群から選ばれる1種または2種以上がより好ましい。前記油脂組成物は、ビスケット用生地100質量部中に10質量部以上30質量部以下含まれていることが好ましく、15質量部以上30質量部以下含まれていることがより好ましく、15質量部以上25質量部以下含まれていることがさらに好ましい。
【0024】
また、前記油脂組成物は、植物または植物加工品由来の香気成分を有することが好ましく、例えば、香気の少ない植物油脂に対してニンニク、ショウガ、ネギ、唐辛子、花椒、バジル、ローズマリーおよびナツメグなどの植物;醤油抽出物などの植物加工品を浸漬または添加するなどして香気成分を付与した油脂組成物を用いることができる。このような、植物または植物加工品由来の香気成分を有する油脂組成物を用いることにより、乳風味以外の様々な風味を有するビスケットを提供することを可能とする。
【0025】
前記成分(A)は、ビスケット用生地100質量部中に1質量部以上10質量部以下含まれていることが好ましく、2質量部以上9質量部以下含まれていることがより好ましく、3質量部以上8質量部以下含まれていることがさらに好ましい。
【0026】
前記成分(A)の条件(1)について、澱粉含量が75質量%以上であることが重要であり、85質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、99質量%以上がさらに好ましく、99.5質量%以上が特に好ましい。前記成分(A)は、発明の効果を損ねない範囲において澱粉以外の成分を含んでいてもよい。澱粉以外の成分としては、例えば、不溶性塩が挙げられ、炭酸カルシウムであることが好ましい。成分(A)中における炭酸カルシウムの含有量は、0.1質量%以上2質量%以下であることが好ましい。
【0027】
澱粉としては、アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉以外に、例えば、コーンスターチ、タピオカ澱粉、甘藷澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦粉、米澱粉等の澱粉;およびこれらの澱粉を化学的、物理的または酵素的に加工した加工澱粉からなる群から選ばれる1種または2種以上を選択して用いることができる。好ましくはコーンスターチ、小麦粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉およびこれらの架橋澱粉からなる群から選ばれる1種または2種以上であり、より好ましくはコーンスターチである。成分(A)中におけるアミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉以外の澱粉の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、75質量%以上であることがさらに好ましい。成分(A)中における前記低分子化澱粉以外の澱粉の含有量は、特に限定するものではないが、低分子化澱粉と合わせて100質量%以下であることが好ましい。
【0028】
前記成分(A)の条件(2)について、アミロース含量5質量%以上である澱粉としては、ハイアミロースコーンスターチ、コーンスターチ、タピオカ澱粉、甘藷澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、ハイアミロース小麦澱粉および米澱粉等の原料澱粉;および前記原料澱粉を化学的、物理的または酵素的に加工した加工澱粉;からなる群から選ばれる1種または2種以上を選択して用いることができる。前記原料澱粉としては、ハイアミロースコーンスターチ、コーンスターチおよびタピオカ澱粉からなる群から選ばれる1種または2種以上が好ましく、ハイアミロースコーンスターチを用いることが特に好ましい。前記原料澱粉は、アミロース含量5質量%以上のアミロース高含有澱粉であることが重要であり、アミロース含量12質量%以上が好ましく、22質量%以上がより好ましく、45質量%以上がさらに好ましく、60質量%以上がさらにより好ましく、65質量%以上が特に好ましい。
【0029】
前記成分(A)の条件(2)について、低分子化澱粉は、前記原料澱粉および前記加工澱粉からなる群から選ばれる1種または2種以上の澱粉を分解処理して低分子化して得られるものである。前記分解処理としては、酸処理、酸化処理または酵素処理などを採用することが可能であり、分解速度やコスト、分解反応の再現性の観点から酸処理を採用することが特に好ましい。
【0030】
前記酸処理の条件は、特に限定するものではないが、例えば、以下のように処理することができる。前記アミロース高含有澱粉と水を反応装置に投入する。あるいは、水に無機酸をあらかじめ溶解させた酸水と原料澱粉を反応装置に投入する。酸処理をより安定的に行う観点から、反応中の原料澱粉の全量が水相内に均一に分散した状態、またはスラリー化した状態にあることが望ましい。そのためには、酸処理を行う上での澱粉スラリー濃度を、例えば10%以上50%以下、好ましくは20%以上40%以下の範囲内になるように調整する。澱粉スラリー濃度が高すぎると、スラリー粘度が上昇し、均一なスラリーの攪拌が難しくなる場合がある。酸処理に用いられる酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸が挙げられ、種類および純度などを問わずに利用することが可能である。酸処理時の無機酸の濃度は、0.05規定度(N)以上4N以下が好ましく、0.1N以上4N以下がより好ましく、0.5N以上3N以下がさらに好ましい。反応温度は、30℃以上70℃以下が好ましく。35℃以上70℃以下がより好ましく、35℃以上65℃以下がさらに好ましい。反応時間は、0.5時間以上120時間以下が好ましく、1時間以上72時間以下がより好ましく、1時以上48時間以下がさらに好ましい。
【0031】
また、前記低分子化澱粉は、ピーク分子量が3×10以上5×10以下であることが重要である。ピーク分子量の下限値は、8×10以上であることが好ましい。ピーク分子量の上限値は、3×10以下であることが好ましく、1.5×10以下であることがより好ましい。
【0032】
なお、澱粉のピーク分子量は、例えば、以下の測定装置および測定方法にて測定することができる。
(測定装置)
HPLCユニット:東ソー株式会社製
ポンプ:DP-8020
RI検出器:RS-8021
脱気装置:SD-8022
ろ過フィルター:DISMIC-25HP PTFE0.45μm、ADVANTEC社製
(測定方法)
1.試料を粉砕し、JIS-Z8801-1規格における目開き0.15mm以下に調製した。
2.1の試料を移動相に1mg/mLとなるように懸濁し、懸濁液を100℃で3分間加熱して完全に溶解した。
3.0.45μmろ過フィルターを用いてろ過を行い、ろ液を分析試料として得た。
4.以下の分析条件にて分子量を測定した。
(分析条件)
カラム:TSKgel α-M(7.8mmφ、30cm)2本、東ソー株式会社製
流速:0.5mL/min
移動相:5mM MaNO含有90%(v/v)ジメチルスルホキシド溶液
カラム温度:40℃
分析量:0.2mL
5.検出器データをソフトウェア(マルチステーションGPC-8020modelIIデータ収集ver.5.70、東ソー株式会社製)にて収集し、分子量ピークを算出した。検量線には、分子量既知のプルラン(ShodexStandardP-82、昭和電工株式会社製)を使用した。
【0033】
前記成分(A)の条件(2)について、成分(A)中の前記低分子化澱粉の含有量は、3質量%以上45質量%以下であることが重要であり、8質量%以上45質量%以下であることが好ましく、12質量%以上35質量%以下であることがより好ましく、15質量%以上25質量%以下であることがさらに好ましい。
【0034】
前記成分(A)の条件(3)について、成分(A)は25℃における冷水膨潤度が、5以上20以下であることが重要である。冷水膨潤度の下限値は、6以上が好ましく、6.5以上がより好ましい。冷水膨潤度の上限値は、17以下が好ましく、15以下がより好ましい。前記成分(A)の25℃における冷水膨潤度を上記範囲内とすることにより、機械生産に適した保形性および伸展性を有するビスケット生地を得られるとともに、ビスケットらしい崩壊感と良好な口どけを有するビスケットを提供することができる。
【0035】
なお、冷水膨潤度は、以下の測定方法にて測定することができる。
(測定方法)
1.試料を130℃で加熱乾燥させて水分計(MX-50、研精工業株式会社製)を用いて水分測定し、得られた水分値から乾燥物質量を算出した。
2.1の乾燥物質量換算で試料1gを25℃の水50mLに分散させた状態とし、30分間25℃で攪拌した。
3.攪拌後、以下の式<1>から算出される相対遠心力が1609.92(×g)となる遠心分離法にて10分間遠心分離し(遠心分離機:日立卓上遠心機CT6E型;ローター:T4SS型スイングローター;アダプター:50TC×2Sアダプター、日立工機社製)、沈殿層と上澄層に分けた。
式<1>
相対遠心力(×g)=1118×遠心半径(cm)×(回転数(rpm))×10-8
4.上澄層を取り除き、沈殿層質量を測定し、これをB(g)とした。
5.沈殿層を乾固(105℃、恒量)したときの質量をC(g)とした。
6.BをCで割った値を冷水膨潤度とした。
【0036】
前記成分(A)の条件(4)について、成分(A)の粒度は、JIS-Z-8801-1規格における目開き0.5mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が、30質量%以上100質量%以下であることが重要であり、50質量%以上100質量%以下であることが好ましく、70質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、85質量%以上100質量%以下であることが特に好ましい。また、目開き0.25mmの篩の篩下かつ目開き0.38mmの篩の篩上の含有量が60質量%以上100質量%以下であることが好ましい。
【0037】
上述の条件(1)乃至(4)を満たす成分(A)は、以下の方法にて調製することができる。製造方法は、アミロース含量5質量%以上である澱粉を既述の方法にて低分子化処理してピーク分子量が3×10以上5×10以下の低分子化澱粉を得る工程と、前記低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、かつ前記低分子化澱粉および前記低分子化澱粉以外の澱粉の合計が75質量%以上である原料をα化処理してα化処理物を得る工程とを含む。必要に応じて、前記原料のα化処理物を粉砕処理してα化処理物の粉砕物を得る工程と、前記粉砕物を目開き0.5mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が30質量%以上100質量%以下となるように篩分け処理して篩分けしたα化物を得る工程を行うことが好ましい。
【0038】
前記α化処理には、澱粉の加熱糊化に使用される一般的な方法を用いることができる。具体的には、ドラムドライヤー、ジェットクッカー、エクストルーダー、スプレードライヤーなどの機械を使用した加熱糊化法が知られているが、本実施形態においては、25℃における冷水膨潤度が既述の成分(A)の条件(3)を満たす観点から、エクストルーダーやドラムドライヤーによる加熱糊化が適しており、エクストルーダーが最も適している。
【0039】
エクストルーダー処理する場合は、通常、澱粉を含む原料に加水して水分含量を10質量%以上60質量%以下に調製した後、例えば、バレル温度30℃以上200℃以下、出口温度80℃以上180℃以下、スクリュー回転数100rpm以上1000rpm以下、加熱時間5秒以上60秒以下の条件で加熱糊化させる。
【0040】
α化処理物の粉砕処理および篩分け処理は、既述の成分(A)の条件(4)を満たすことが可能な方法であればよく、公知の装置および方法を必要に応じて採用することができる。
【0041】
本発明のビスケット用生地の製造方法によれば、油脂源として上昇融点が10℃以下の油脂組成物のみを用いて保形性および伸展性に優れ、機械生産に適用可能なビスケット用生地を得ることができる。
【0042】
本発明のビスケット用生地は、粉体原料と、水性成分と、タンパク質素材と、上昇融点が10℃以下の油脂組成物とを含むものである。成分(A)は、以下の条件(1)乃至(4)を満たす粒状物である。
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×10以上5×10以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き0.5mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が30質量%以上100質量%以下
【0043】
なお、粉体原料、水性成分、タンパク質素材、油脂組成物および成分(A)については、本発明のビスケット用生地の製造方法の説明にて詳述したものと同じであるため割愛する。
【0044】
前記粉体原料は、ビスケット用生地100質量部中に30質量部以上80質量部以下含まれていることが好ましく、35質量部以上75質量部以下含まれていることがより好ましく、40質量部以上70質量部以下含まれていることがさらに好ましい。また、粉体原料100質量部中に、澱粉粉末が70質量部以上100質量部以下含まれていることが好ましく、70質量部以上95質量部以下含まれていることがより好ましく、70質量部以上90質量部以下含まれていることがさらに好ましい。
【0045】
前記水性成分は、ビスケット用生地100質量部中に1質量部以上10質量部以下含まれていることが好ましく、2質量部以上9質量部以下含まれていることがより好ましく、3質量部以上8質量部以下含まれていることがさらに好ましい。
【0046】
前記タンパク質素材は、ビスケット用生地100質量部中に1質量部以上10質量部以下含まれていることが好ましく、2質量部以上9質量部以下含まれていることがより好ましく、3質量部以上8質量部以下含まれていることがさらに好ましい。
【0047】
前記油脂組成物は、ビスケット用生地100質量部中に10質量部以上30質量部以下含まれていることが好ましく、15質量部以上30質量部以下含まれていることがより好ましく、15質量部以上25質量部以下含まれていることがさらに好ましい。
【0048】
前記成分(A)は、ビスケット用生地100質量部中に1質量部以上10質量部以下含まれていることが好ましく、2質量部以上9質量部以下含まれていることがより好ましく、3質量部以上8質量部以下含まれていることがさらに好ましい。
【0049】
本発明のビスケットは、既述の本発明のビスケット用生地を140℃以上210℃以下にて焼成して得たものである。焼成温度は、160℃以上200℃以下が好ましく、170℃以上190℃以下がより好ましい。
【0050】
本発明のビスケット用生地は、前記成分(A)の含有量を上記範囲内とすることにより、油脂源として上昇融点が10℃以下の油脂組成物のみを用いた場合においても、保形性および伸展性に優れたビスケット用生地を提供することができる。
【0051】
また、本発明のビスケットは、前記成分(A)の含有量を上記範囲内とすることにより、好ましい崩壊感と口どけに優れた食感を得ることができる。
【実施例0052】
本発明の実施例について以下に説明する。本実施例に用いた原料は、以下のとおりである。
<粉体原料>
薄力粉:ハート、株式会社ニップン製
粉糖:粉糖、株式会社上原製
<水性成分>
本実施例においては、水を用いた。
<タンパク質素材>
本実施例においては、全卵を溶いた卵液を用いた。
<油脂組成物>
オリーブ油:AJINOMOTO オリーブオイルエクストラバージン、株式会社J-オイルミルズ製、上昇融点0℃未満
ゴマ油:AJINOMOTO 健康 調合ごま油、株式会社J-オイルミルズ製、上昇融点0℃未満
風味油1:「J-OILPRO」プロのための調味油 唐がらし油、株式会社J-オイルミルズ製、上昇融点0℃未満
風味油2:「J-OILPRO」プロのための調味油 オリーブ&バジルオイル、株式会社J-オイルミルズ製、上昇融点0℃未満
風味油3:「J-OILPRO」プロのための調味油 こがし醤油オイル、株式会社J-オイルミルズ製、上昇融点0℃未満
風味油4:「J-OILPRO」プロのための調味油 ねぎ油、株式会社J-オイルミルズ製、上昇融点0℃未満
マーガリン:マイスターゴールドスーパー、株式会社J-オイルミルズ製、上昇融点30℃
<成分(A)>
本実施例に用いた成分(A)は、以下の手順にて調製した。
1.ハイアミロースコーンスターチ(HS-7、株式会社J-オイルミルズ製、アミロース含量70質量%)を水に懸濁して35.6%(w/w)スラリーを調製し、50℃に加温した。そこへ、攪拌しながら4.25Nに調製した塩酸水溶液をスラリー質量比で1/9倍量加え反応を開始した。16時間後、3%NaOHで中和し、水洗、脱水、乾燥して酸処理ハイアミロースコーンスターチを得た。得られた酸処理ハイアミロースコーンスターチのピーク分子量を既述の方法にて測定したところ、1.2×10であった。
2.コーンスターチ79質量%(コーンスターチY、株式会社J-オイルミルズ製)、1で得た酸処理ハイアミロースコーンスターチ20質量%、および炭酸カルシウム1質量%を十分に均一になるまで袋内で混合し混合物を得た。2軸エクストルーダー(KEI-45、株式会社幸和工業社製)を用いて、前記混合物を加圧加熱処理して加熱糊化物を得た。処理条件は以下のとおりである。
混合物供給量:450g/分
加水量:17質量%
バレル温度:混合物入口から出口に向かって50℃、70℃および100℃
出口温度:100℃以上110℃以下
スクリュー回転数:250rpm
3.2で得た加熱糊化物を110℃にて乾燥し、水分含量を10質量%に調整した。当該乾燥した加熱糊化物を、卓上カッター粉砕機で粉砕した後、JIS-Z8801-1規格の篩で篩分けした。篩分けした加熱糊化物を、表1の配合割合で混合し、成分(A)を得た。本実施例に用いた成分(A)の25℃における冷水膨潤度を既述の方法で測定した値を表1に合わせて示す。
【0053】
【表1】
【0054】
表1において、例えば、「0.25mm篩下、0.15mm篩上」とは、「JIS-Z8801-1規格の目開き0.25mmの篩の篩下かつ目開き0.15mmの篩の篩上」を意味する。
【0055】
<実施例1>
実施例1においては、表2に示す配合にてそれぞれビスケット用生地を調製し、製造時の生地の操作性およびビスケットについて評価を行った。比較例および実施例のビスケット用生地は、下記の手順にて調製した。
【0056】
<ビスケット用生地およびビスケットの調製方法>
(比較例1-1の調製手順)
1.常温に戻したマーガリンと粉糖を均一になるまで混合した。
2.卵液を1に少しずつ加えながら均一になるまで混合した。
3.薄力粉にダマが残らないように篩で篩った。
4.2に3の薄力粉を加え、切るようにさっくりと混ぜ、粉っぽさがなくなるまで混合してビスケット用生地を得た。
5.4の混合物を5℃で1時間冷やした。
6.5のビスケット用生地をリバースシーター(Automat、RONDO社製)で3.5mmの厚さになるまで引き延ばした。
7.直径5cmの丸型の型抜きで抜いて成形し、180℃に予熱したオーブンで10分間焼成し、ビスケットを得た。
(比較例1-2の調製手順)
1.オリーブ油と粉糖を均一になるまで混合した。
2.卵液を1に少しずつ加えながら均一になるまで混合した。
3.薄力粉にダマが残らないように篩で篩った。
4.2に3の薄力粉を加え、しっかりと混ぜ、粉っぽさがなくなるまで混合してビスケット用生地を得た。
5.4のビスケット用生地を直径5cmの筒状に成形した。
6.5のビスケット用生地を-10℃で30分冷やした。
7.6のビスケット用生地を3.5mm幅にカットして、180℃に予熱したオーブンで10分間焼成し、ビスケットを得た。
(実施例1-1の調製手順)
1.成分(A)および油脂組成物を均一になるまで混合し第1混合物を得た。
2.第1混合物に水および卵液を均一になるまで混合し第2混合物を得た。
3.薄力粉および粉糖を混合して粉体原料を得た。
4.粉体原料にダマが残らないように篩で篩った。
5.第2混合物に4の粉体原料を加え、切るようにさっくりと混ぜ、粉っぽさがなくなるまで混合してビスケット用生地を得た。
6.ビスケット用生地をリバースシーターで3.5mmの厚さになるまで引き延ばした。
7.直径5cmの丸型の型抜きで抜いて成形し、180℃に予熱したオーブンで10分間焼成し、ビスケットを得た。
【0057】
<評価方法>
製造時の操作性およびビスケットの評価方法について説明する。得られた評価結果は、表2に示す。
(製造時の操作性評価)
製造時のビスケット用生地について、原料混合時のまとまり易さ、リバースシーターで延ばす際の生地の保形性および伸展性について評価した。
(ビスケットの食感評価)
ビスケット用生地を焼成して得たビスケットを専門パネラー5名にて喫食し、咀嚼時の崩壊感および口どけ感について比較例1-1のビスケットを対照として評価を行った。評価結果は、専門パネラー5名の合議にて得た。
(ビスケットの風味評価)
ビスケット用生地を焼成して得たビスケットを専門パネラー5名にて喫食し、風味の好ましさについて評価を行った。評価結果は、専門パネラー5名の合議にて得た。
【0058】
【表2】
【0059】
表2に示すように、実施例1-1のビスケット用生地は、マーガリンを用いたビスケット用生地(比較例1-1)と同等の原料のまとまり易さを有し、リバースシーターでの延伸が可能であった。また、比較例1-1のビスケット用生地とは異なり、ビスケット生地を一旦冷やす工程を経ることなく、リバースシーターでの機械延伸に耐え得る保形性および伸展性を有していた。このとき、実施例1-1のビスケット用生地100質量部中には、油脂組成物が12.5質量部、成分(A)が6.25質量部含まれていた。これに対して、成分(A)を含まない、比較例1-2のビスケット用生地は、原料のまとまりが悪く、麺棒による延伸およびリバーシーターでの機械延伸ができなかった。この結果から、実施例1-1の配合のビスケット用生地とすることにより、油脂源として上昇融点が10℃以下の油脂組成物のみを用いた場合においても、優れた原料のまとまり性と、生地の保形性および伸展性とを有し、リバースシーターを用いた機械生産が可能であることが明らかとなった。
【0060】
また、ビスケットの食感評価において、実施例1-1のビスケットは、マーガリンを用いたビスケット(比較例1-1)と比べて同程度の崩壊感を有し、口どけ感に優れていた。これに対して、成分(A)を含まない比較例1-2のビスケットは、マーガリンを用いたビスケット(比較例1-1)と比べてもろくて崩壊感が強く、口どけ感も悪かった。この結果から、実施例1-1の配合のビスケットとすることにより、油脂源として上昇融点が10℃以下の油脂組成物のみを用いた場合においても、マーガリンを用いたビスケットと同等の崩壊感を有し、口どけ感はより優れていることが明らかとなった。
【0061】
また、ビスケットの風味評価において、比較例1-1のビスケットはマーガリンに由来する乳風味がしていた。これに対して、比較例1-2および実施例1-1のビスケットは、油脂組成物中のオリーブ油またはゴマ油の風味であった。比較例1-2および実施例1-1のオリーブ油またはゴマ風味のビスケットは、好ましい風味であった。
【0062】
<実施例2>
実施例2においては、表3に示す配合とする以外は、実施例1-1と同じ手順でビスケット用生地およびビスケットを調製し、製造時の操作性およびビスケットの食感・風味について評価を行った。評価方法は、ビスケットの食感評価以外は、実施例1にて述べた方法と同じ方法を用いた。ビスケットの食感評価は、専門パネラー5名にて、ビスケットを喫食し、あらかじめ一般的な複数のビスケットを用いて意識合わせを行った「一般的なビスケットらしさ」の観点から崩壊感および口どけ感について評価した。評価結果は、専門パネラーの合議にて得た。得られた評価結果を表3に示す。
【0063】
【表3】
【0064】
表3に示すように、実施例2-1乃至2-4のビスケット用生地は、原料混合時におけるまとまりがよく、保形性および伸展性に優れ、リバースシーターを用いた機械生産に適用可能であることが明らかとなった。このとき、実施例2-1乃至2-4のビスケット用生地100質量部中には、油脂組成物が13.6質量部、成分(A)が5.1質量部含まれていた。
【0065】
実施例2-1乃至2-4のビスケットの食感は、一般的なビスケットらしい崩壊感と、一般的なビスケットよりも優れた口どけを有していた。
【0066】
実施例2-1のビスケットの風味は、風味油1に由来する唐がらし風味が感じられ、辛いビスケットであった。実施例2-2のビスケットの風味は、風味油2に由来するバジル風味が感じられて好ましかった。実施例2-3のビスケットの風味は、風味油3に由来する醤油風味がほのかに感じられて好ましかった。実施例2-4のビスケットの風味は、風味油4に由来するねぎ風味が感じられて好ましかった。
【0067】
本発明のビスケット用生地の製造方法、ビスケット生地およびビスケットは、上述の実施形態及び実施例に限定するものではなく、発明の特徴及び効果を損なわない範囲において、種々の変更が可能である。