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特開2022-117313空気清浄装置、光触媒ユニット及び空気清浄方法
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  • 特開-空気清浄装置、光触媒ユニット及び空気清浄方法 図1
  • 特開-空気清浄装置、光触媒ユニット及び空気清浄方法 図2A
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  • 特開-空気清浄装置、光触媒ユニット及び空気清浄方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022117313
(43)【公開日】2022-08-10
(54)【発明の名称】空気清浄装置、光触媒ユニット及び空気清浄方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/00 20060101AFI20220803BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20220803BHJP
   A61L 9/18 20060101ALI20220803BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
A61L9/00 C
A61L9/01 B
A61L9/18
B01J35/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021013928
(22)【出願日】2021-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(71)【出願人】
【識別番号】504075027
【氏名又は名称】株式会社 釜石電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100209624
【弁理士】
【氏名又は名称】制野 友樹
(72)【発明者】
【氏名】根岸 信彰
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 太郎
【テーマコード(参考)】
4C180
4G169
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180BB08
4C180CC03
4C180CC15
4C180CC17
4C180EA22X
4C180EA24X
4C180EA30X
4C180EA33X
4C180EA34X
4C180EA35X
4C180EA36X
4C180EA37X
4C180EA38X
4C180EA39X
4C180HH15
4C180HH19
4C180KK03
4C180LL01
4C180LL20
4G169AA03
4G169BA04A
4G169BA04B
4G169BA48A
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BC50A
4G169BC50B
4G169CA10
4G169CA11
4G169DA05
4G169EB18X
4G169EE03
4G169HA01
4G169HB01
4G169HE01
4G169HF02
(57)【要約】
【課題】高湿度条件でも光触媒材料の活性の低下が抑制された空気清浄装置、それに用いる光触媒ユニット及び空気清浄方法を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様によれば、空気清浄装置が提供される。この空気清浄装置は、光触媒材料と、光触媒材料を加熱する加熱部と、空気清浄装置が配置される配置空間の湿度に基づき、加熱部による加熱の有無、加熱温度及び加熱時間からなる群から選択される1以上の加熱条件を制御する加熱制御部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気清浄装置であって、
光触媒材料と、
前記光触媒材料を加熱する加熱部と、
前記空気清浄装置が配置される配置空間の湿度に基づき、前記加熱部による加熱の有無、加熱温度及び加熱時間からなる群から選択される1以上の加熱条件を制御する加熱制御部とを備える
空気清浄装置。
【請求項2】
請求項1に記載の空気清浄装置において、
前記加熱制御部は、前記配置空間の湿度が、閾値以上となったか又は閾値を超えた場合、前記加熱部に加熱の開始を指示する
空気清浄装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の空気清浄装置において、
前記光触媒材料は、平均粒子径が5nm以上500nm以下の光触媒粒子が堆積してなる
空気清浄装置。
【請求項4】
請求項3に記載の空気清浄装置において、
前記光触媒粒子は、酸化チタン粒子を含む
空気清浄装置。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の空気清浄装置において、
前記光触媒材料の励起光を照射する光照射部をさらに備える
空気清浄装置。
【請求項6】
光触媒ユニットであって、
光触媒材料と、前記光触媒材料を加熱する加熱部と、
前記光触媒ユニットが配置される配置空間の湿度に基づき、前記加熱部による加熱の有無、加熱温度及び加熱時間からなる群から選択される1以上の加熱条件を制御する加熱制御部とを備える
光触媒ユニット。
【請求項7】
光触媒材料を用いた空気清浄方法であって、
光触媒活性を示している光触媒材料に対して、前記光触媒材料が配置される配置空間の湿度に基づき、加熱の有無、加熱温度及び加熱時間からなる群から選択される1以上の加熱条件を制御しながら加熱する
空気清浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気清浄装置、光触媒ユニット及び空気清浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光触媒材料料は、光の照射下で有機物等を分解することができるため、空気清浄機や壁面等に利用されている。現在、このような有機物等の分解性能等を高めるため、様々な検討がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、光触媒材料料としてのアナターゼ型酸化チタン粒子をコールドスプレー法により金属基材上に堆積させて得られる被膜は、一酸化窒素の分解性能が高いことが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-297184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示されるような被膜に代表される光触媒材料は、高湿度環境に置くと、活性が著しく低下し、空気清浄能をほとんど示さなくなることもあった。
【0006】
本発明では上記事情に鑑み、高湿度条件でも光触媒材料の活性の低下が抑制された空気清浄装置、それに用いる光触媒ユニット及び空気清浄方法を提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、空気清浄装置が提供される。この空気清浄装置は、光触媒材料と、光触媒材料を加熱する加熱部と、空気清浄装置が配置される配置空間の湿度に基づき、加熱部による加熱の有無、加熱温度及び加熱時間からなる群から選択される1以上の加熱条件を制御する加熱制御部とを備える。
【0008】
また、本発明は、次に記載の各態様で提供されてもよい。
前記空気清浄装置において、前記加熱制御部は、前記配置空間の湿度が、閾値以上となったか又は閾値を超えた場合、前記加熱部に加熱の開始を指示する空気清浄装置。
前記空気清浄装置において、前記光触媒材料は、平均粒子径が5nm以上500nm以下の光触媒粒子が堆積してなる空気清浄装置。
前記空気清浄装置において、前記光触媒粒子は、酸化チタン粒子を含む空気清浄装置。
前記空気清浄装置において、前記光触媒材料の励起光を照射する光照射部をさらに備える空気清浄装置。
光触媒ユニットであって、光触媒材料と、前記光触媒材料を加熱する加熱部と、前記光触媒ユニットが配置される配置空間の湿度に基づき、前記加熱部による加熱の有無、加熱温度及び加熱時間からなる群から選択される1以上の加熱条件を制御する加熱制御部とを備える光触媒ユニット。
光触媒材料を用いた空気清浄方法であって、光触媒活性を示している光触媒材料に対して、前記光触媒材料が配置される配置空間の湿度に基づき、加熱の有無、加熱温度及び加熱時間からなる群から選択される1以上の加熱条件を制御しながら加熱する空気清浄方法。
もちろん、この限りではない。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高湿度条件でも光触媒材料の活性の低下が抑制された空気清浄装置、それに用いる光触媒ユニット及び空気清浄方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る空気清浄装置を構成する光触媒ユニットの概略模式図である。
図2A】ヒーターによる加熱有、ガス中の相対湿度が0%のときのアセトアルデヒド濃度及び二酸化炭素濃度対時間のプロットである。
図2B】ヒーターによる加熱無、ガス中の相対湿度が0%のときのアセトアルデヒド濃度及び二酸化炭素濃度対時間のプロットである。
図3A】ヒーターによる加熱有、ガス中の相対湿度が50%のときのアセトアルデヒド濃度及び二酸化炭素濃度対時間のプロットである。
図3B】ヒーターによる加熱無、ガス中の相対湿度が50%のときのアセトアルデヒド濃度及び二酸化炭素濃度対時間のプロットである。
図4A】ヒーターによる加熱有、ガス中の相対湿度が100%のときのアセトアルデヒド濃度及び二酸化炭素濃度対時間のプロットである。
図4B】ヒーターによる加熱無、ガス中の相対湿度が100%のときのアセトアルデヒド濃度及び二酸化炭素濃度対時間のプロットである。
図5】ヒーターのオン/オフを繰り返した場合のアセトアルデヒド濃度及び二酸化炭素濃度対時間のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施形態に係る空気清浄装置について、具体例を示して説明するが、本実施形態に係る空気清浄装置は、以下に示す具体例に何ら限定されるものではなく、その効果を阻害しない限りにおいて、適宜変更を加えて実施することができる。また、以下に示す各構成要素は、互いに組み合わせて実施することができる。
【0012】
〔空気清浄装置〕
本実施形態に係る空気清浄装置は、光触媒材料と、加熱部と、加熱制御部とを備える。このうち、加熱部は、光触媒材料を加熱するものである。また、加熱制御部は、空気清浄装置が配置される配置空間の湿度に基づき、加熱部による加熱の有無、加熱温度及び加熱時間からなる群から選択される1以上の加熱条件を制御するものである。
【0013】
光触媒材料を備える空気清浄装置を高湿度環境に置くと、その表面に空気中の水が吸着して水分子膜が形成し、これによって光触媒材料の表面と分解対象の物質との接触を阻害し、光触媒材料の活性が低下される。これに対し、本発明者らは、この光触媒材料を加熱すると、このような表面への水の吸着が低減され、光触媒材料の活性の低下が抑制されることを見出した。
【0014】
ただし、光触媒材料を過剰に加熱すると、電子と正孔の再結合が起こりやすくなり、光触媒活性が低下する。また、表面への水の吸着の度合いに応じて加熱する方が経済性も高い。そこで、本実施形態に係る空気清浄装置においては、空気清浄装置が配置される配置空間の湿度に基づき、加熱部による加熱の有無、加熱温度及び加熱時間からなる群から選択される1以上の加熱条件を制御するものとした。
【0015】
ここで「空気清浄」とは、空気を吸入し、その空気中の有機成分の全部又は一部を除去することを言う。
【0016】
以下、本実施形態に係る空気清浄装置の必須の構成である光触媒材料、加熱部及び加熱制御部、並びに、本実施形態に係る空気清浄装置の任意の構成である基材、湿度測定部及び光照射部の各部についてより詳細に説明する。
【0017】
[光触媒材料]
光触媒材料は、光触媒活性を示す物質(以下、「光触媒物質」という。)を含んでなるものである。
【0018】
光触媒材料の性状としては、特に限定されず、光触媒物質から構成される光触媒単結晶、光触媒多結晶、光触媒粒子そのもの、光触媒粒子の堆積物、光触媒粒子と他の材料の混合堆積物、光触媒粒子が他の材料(樹脂等)に混合したもの等が挙げられる。
【0019】
光触媒材料の形状としては、特に限定されず、塊体、層状態、膜状体、粉体等が挙げられる。
【0020】
光触媒物質としては、特に限定されず、酸化チタン(TiO、アナターゼ型、ルチル型及びブルッカイト型の3種の結晶構造が存在するが、いずれを用いてもよい。)、酸化タングステン(III)(WO)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化スズ(SnO)、酸化鉄(III)(Fe)、酸化マグネシウム(MgO)、二酸化クロム(CrO)、酸化第二クロム(Cr)、酸化マンガン(MnO)、酸化鉄(III)鉄(II)(Fe)、酸化コバルト(CoO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化銅(CuO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化モリブデン(MoO)やこれらから選択される固溶体、これらに他の元素をドープした化合物等のうち1種又は2種以上を用いることができる。
【0021】
光触媒物質としては、上述したもののうち、酸化チタン粒子を含むことが好ましい。光触媒粒子として、酸化チタンを用いることにより、光触媒活性をより高くすることができる。なお、酸化チタン粒子としては、アナターゼ型を用いることが好ましい。
【0022】
また、光触媒物質として、アナターゼ型酸化チタンと、酸化タングステン(III(以下、酸化タングステンの価数について省略する。)を組み合わせてもよい。アナターゼ型酸化チタン:酸化タングステンの質量比としては、特に限定されないが、アナターゼ型酸化チタンを主たる光触媒としてこの触媒能を高める観点から、60:40~99:1であることが好ましく、70:30~98:2であることがより好ましく、80:20~97:3であることがさらに好ましい。なお、「X:Y」の比についての「A:B~C:D」は、XがA以上B以下の範囲を取るとき、X+Yが合計100(質量%)となる関係を維持したままYがC以下D以上の範囲を取ることを意味する。
【0023】
光触媒材料中に光触媒物質以外の材料を含む場合、光触媒物質の含有量としては、特に限定されないが、例えば1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、4質量%以上、5質量%以上、6質量%以上、7質量%以上、8質量%以上、9質量%以上、10質量%以上、11質量%以上、12質量%以上、13質量%以上、14質量%以上、15質量%以上、16質量%以上、17質量%以上、18質量%以上、19質量%以上、20質量%以上、22質量%以上、24質量%以上、26質量%以上、28質量%以上、30質量%以上、35質量%以上、40質量%以上、45質量%以上、50質量%以上、55質量%以上、60質量%以上、65質量%以上、70質量%以上、75質量%以上、80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、97質量%以上、98質量%以上、99質量%以上、99.9質量%以上、99.99質量%以上であることが好ましい。光触媒粒子の含有量が所要量以上であることにより、光触媒能をさらに高めることができる。一方、光触媒粒子の含有量としては、例えば100質量%以下、99.99質量%以下、99質量%以下、98質量%以下、97質量%以下、95質量%以下、90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下、75質量%以下、70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下、55質量%以下、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、28質量%以下、26質量%以下、24質量%以下、22質量%以下、20質量%以下、19質量%以下、18質量%以下、17質量%以下、16質量%以下、15質量%以下、14質量%以下、13質量%以下、12質量%以下、11質量%以下、10質量%以下、9質量%以下、8質量%以下、7質量%以下、6質量%以下、5質量%以下、4質量%以下、3質量%以、2質量%以下、1.5質量%以下であってよい。
【0024】
光触媒材料が、層状態、膜状体である場合において、光触媒材料の厚さとしては、特に限定されないが、例えば100nm以上であることが好ましく、200nm以上であることがより好ましく、500nm以上であることがさらに好ましく、1μm以上であることが特に好ましい。光触媒材料の厚さが所要量以上であることにより、光触媒活性をより高めることができる。一方、光触媒材料の厚さとしては、500μm以下、400μm以下、300μm以下、200μm以下、100μm以下、70μm以下、50μm以下、40μm以下、30μm以下、20μm以下であってよい。なお、光触媒材料が、曲面を有する層状態、膜状体である場合において、層や膜の形成後に曲げて製造するものである場合等には、光触媒材料の剥がれを防止する観点から、さらに10μm以下、5μm以下、2μm以下、1μm以下であってもよい。
【0025】
一実施形態において、光触媒材料としては、光触媒粒子が堆積してなるものであることが好ましい。ななお、このような光触媒材料は、例えばコールドスプレー溶射法により、光触媒粒子を基材(詳細は後述する)に溶射することにより製造することができる。
【0026】
光触媒材料として光触媒粒子が堆積してなるものを用いる場合において、光触媒粒子の平均粒子径としては、特に限定されないが、例えば500nm以下であることが好ましく、400nm以下であることがより好ましく、300nm以下であることがさらに好ましく、200nm以下であることが特に好ましく、100nm以下であることが最も好ましい。光触媒粒子の平均粒子径が所要量以下であることにより、積層体の光触媒能をより高くすることができる。一方、光触媒粒子の平均粒子径としては、例えば1nm以上、2nm以上、5nm以上、10nm以上であってよい。なお、ここでいう「平均粒子径」とは、光触媒材料の表面についてX線回折測定を行い得られたX線回折パターンにおいて、光触媒粒子に起因する最も強度の高いピークの半値幅を、Scherrer式に代入して求められる結晶子径をいう。
【0027】
光触媒材料として光触媒粒子が堆積してなるものを用いる場合において、光触媒粒子としては、光触媒活性を示すもの(例えば上述した種々の素材)であれば特に限定されないが、酸化チタン粒子を含むことが好ましく、アナターゼ型酸化チタン粒子を含むことがより好ましい。
【0028】
光触媒材料として光触媒粒子が堆積してなるものを用いる場合において、光触媒材料は、光触媒粒子を独立して存在させるための分散剤を含んでいてもよい。このようにして光触媒材料が分散剤を含むことにより、光触媒粒子の凝集がより抑制され、光触媒能を高めることができる。
【0029】
このように光触媒材料が分散剤を含む場合、分散剤の含有量としては、特に限定されないが、光触媒材料の総量に対して例えば0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましく、1質量%以上であることが特に好ましい。分散剤の含有量が所要量以上であることにより、光触媒粒子の凝集がさらに抑制され、光触媒能を高めることができる。一方、分散剤の含有量としては、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1質量%以下、0.5質量%以下であってよい。
【0030】
なお、光触媒材料は、光触媒活性物質や分散剤以外に、助触媒、安定剤等の各種添加剤をそれぞれ0質量%超20質量%以下含んでいてもよい。
【0031】
光触媒材料を用いた空気清浄装置において、光触媒材料は、当該空気清浄装置の内部に取り込まれた空気の流路内に配置する。ここで、光触媒材料の流路内での配置位置としては、取り込んだ空気が当該光触媒材料に接触する位置であれば特に限定されず、流路の内部に配置してもよいし、流路の壁面に配置してもよい。
【0032】
[基材]
本実施形態に係る空気清浄装置は、上述した光触媒材料を固定して支持するための基材を備えてもよい。
【0033】
基材としては、特に限定されず、例えば金属、合金、セラミックス、樹脂、紙、木材、ガラス、プラスチック等のうち1種又は2種以上を用いることができる。基材としては、金属及び/又は合金を含むことが好ましい。金属としては、鉄、金、銀、銅、ニッケル、コバルト、チタン、アルミニウム、クロム、白金、ハラジウム、亜鉛等を用いることができる。また、合金としては、それらの金属の合金を用いることができ、例えば鋳鉄、パーマロイ、黄銅、リン青銅、ステンレス等を用いることができる。金属及び/又は合金として、アルミニウム及び/又はアルミニウム合金を含むことがより好ましい。なお、これらの金属や合金は、金属や合金は、光触媒材料料が使用される環境において化学的、機械的に好ましい耐久性を有していることが多い。また、金属や合金は、高い熱伝導性を有していることから、後述する加熱部として接触式のヒーターを用いる場合、基材側から加熱しても光触媒材料を加熱することができる。
【0034】
基材としては、特に限定されず、1種の材料のみから構成されてもよいし、2種以上の材料から構成されてもよい。基材が2種以上の材料から構成される場合、各材料の存在状態としては特に限定されず、2種以上の材料が積層したものであってもよいし、単に混在したものであってもよい。
【0035】
基材の形状としては、特に限定されず、例えば塊状、板状、棒状等のものを、使用用途(より具体的には、分解対象の物質、濃度、積層体に求められる強度、使用する空間等)等に応じて用いることができる。
【0036】
基材の大きさとしては、特に限定されず、使用用途(より具体的には、分解対象の物質、濃度、積層体に求められる強度、使用する空間等)等に応じて適宜設計することができる。
【0037】
基材が板状である場合、基材の厚さとしては、特に限定されないが、例えば0.5mm以上であることが好ましく、1mm以上であることがより好ましく、1.5mm以上であることがさらに好ましい。基材の厚さが所要量以上であることにより材料強度を高めることができる。一方、基材の厚さとしては、1000mm以下、500mm以下、200mm以下、100mm以下、50mm以下、20mm以下、10mm以下、5mm以下、4mm以下、3mm以下、2mm以下であってよい。基材の厚さが所要量以下であることにより熱伝導性を高めることができる。
【0038】
なお、基材は、各種添加剤を0質量%超20質量%以下含んでいてもよい。
【0039】
[加熱部]
加熱部は、光触媒材料を加熱するものである。加熱部は、後述する加熱制御部によって、加熱の有無、加熱温度及び加熱時間からなる群から選択される1以上の加熱条件を制御されるように構成される。
【0040】
具体的に、加熱部としては、光触媒材料の表面を加熱し得るものであれば特に限定されず、例えばホットプレート、パネルヒーター、セラミックヒーター、赤外線ヒーター、熱風器等の装置を用いることができる。加熱方法は、これらの装置の使用方法に準じるが、接触式の装置であれば、光触媒反応を行う面とは異なる面又は光触媒反応を行う面の一部に配置する。非接触式の装置であれば、加熱される限りにおいてどちらの位置に配置してもよい。
【0041】
[加熱制御部]
加熱制御部は、空気清浄装置が配置される配置空間の湿度に基づき、加熱部による加熱の有無、加熱温度及び加熱時間からなる群から選択される1以上の加熱条件を制御するものである。
【0042】
加熱制御部は、空気清浄装置が配置される配置空間の湿度情報を取得する湿度取得部と、その湿度に基づいて加熱部による加熱の有無、加熱温度及び加熱時間からなる群から選択される1以上の加熱条件を決定する条件決定部と、加熱部に決定された条件での加熱を指示する条件指示部から構成される。なお、これら各部は、1つの装置として構成してもよいし、複数の装置として構成してもよい。
【0043】
加熱制御部の湿度情報の取得は、連続的であっても、間隙的であってもよい。間隙的である場合、例えば1時間に1回等、定期的に湿度情報を取得することが好ましい。湿度測定部の湿度の測定が間隙的である場合、加熱制御部の湿度情報の取得は測定のタイミングに合わせることが好ましい。
【0044】
例えば加熱制御部は、湿度がより高い場合には加熱部による加熱を行い、湿度がより低い場合には加熱部による加熱を行わないと制御してもよい。より具体的に、加熱制御部は、配置空間の湿度が、閾値以上となったか又は閾値を超えた場合、加熱部に加熱の開始を指示してもよい。
【0045】
この閾値としては、配置空間の空気の分解対象の有機物の濃度や、光触媒材料の光触媒活性、湿度と光触媒活性との関係等を考慮して適宜決定すればよい。
【0046】
例えば加熱制御部は、湿度がより高い場合には加熱部による加熱温度をより高温に、湿度がより低い場合には加熱部による加熱温度をより低温に制御してもよい。より具体的に、加熱制御部は、配置空間の湿度が、閾値以上となったか又は閾値を超えた場合、加熱部により高温での加熱を指示してもよい。なお、この場合において、閾値は1つのみを用いても、複数を用いてもよい。また、加熱制御部は、事前に湿度と加熱温度との関係(例えば関数、ルックアップテーブル等)を記憶しておき、湿度から加熱温度を算出し、加熱部にその加熱温度での加熱を指示してもよい。
【0047】
例えば加熱制御部は、湿度がより高い場合には加熱部による加熱時間をより長く、湿度がより低い場合には加熱部による加熱時間をより短く制御してもよい。より具体的に、加熱制御部は、配置空間の湿度が、閾値以上となったか又は閾値を超えた場合、加熱部により長時間の加熱を指示してもよい。なお、この場合において、閾値は1つのみを用いても、複数を用いてもよい。また、加熱制御部は、事前に湿度と加熱時間との関係(例えば関数、ルックアップテーブル等)を記憶しておき、湿度から加熱時間を算出し、加熱部にその加熱時間の加熱を指示してもよい。
【0048】
[湿度測定部]
本実施形態に係る空気清浄装置は、湿度測定部をさらに備えていてもよい。この湿度測定部は配置空間の湿度を測定するものである。
【0049】
湿度測定部の湿度の測定は、連続的であっても、間隙的であってもよい。間隙的である場合、例えば1時間に1回等、定期的に湿度情報を取得することが好ましい。
【0050】
具体的に、湿度測定部としては、湿度計であれば特に限定されず、例えば乾湿球形湿度計、通風形乾湿球湿度計、電気抵抗式湿度計、静電容量式湿度計、露点温度計(光学式)等を用いることができる。なお、乾湿球形湿度計及び通風形乾湿球湿度計は、基本的にはアナログデータとして湿度が得られる。一方、電気抵抗式湿度計、静電容量式湿度計及び露点温度計(光学式)は、基本的にはデジタルデータとして湿度が得られる。加熱制御部への送信のしやすさを考慮すると、デジタルデータとして湿度が得られる、電気抵抗式湿度計、静電容量式湿度計及び露点温度計(光学式)のいずれか1種以上を用いることが好ましいが、アナログデータからデジタルデータの変換を行う等して、湿度に基づき、加熱制御部が何らかの制御ができれば、乾湿球形湿度計及び通風形乾湿球湿度計を用いることはできる。
【0051】
湿度測定部は、測定した湿度情報を、加熱制御部に送信可能に構成される。そして、この湿度測定部で測定された湿度は、直接又は間接的に、上述した加熱制御部へ送信される。
【0052】
[光照射部]
本実施形態に係る空気清浄装置は、光照射部をさらに備えてもよい。この光照射部は、光触媒材料の励起光を照射するものである。
【0053】
具体的に、光照射部としては、光触媒材料の励起光を発生させることができる光源であれば特に限定されるものではなく、例えばUVで活性を示すアナターゼ型酸化チタンのような光触媒材料であれば、UV冷陰極管、UV-LED等を用いることができる。
【0054】
光照射部の光量としては、光触媒材料を励起して光触媒活性を発現させることができるものであれば特に限定されないが、日本工業規格(JIS R1709)で定められている光源を用い、UV-A領域において1mW/cmの強度以上あることが好ましい。
【0055】
光照射部の大きさとしては、光触媒材料を励起して光触媒活性を発現させることができるものであれば特に限定されない。
【0056】
光照射部の配置位置としては、光触媒材料を励起して光触媒活性を発現させることができるものであれば特に限定されない。
【0057】
光触媒材料を用いた空気清浄装置において、光照射部は、当該空気清浄装置の内部に取り込まれた空気の流路内に配置する。ここで、光照射部の流路内での配置位置としては、光触媒材料に当該光照射部の光が照射される位置であれば特に限定されず、流路の内部に配置してもよいし、流路の壁面に配置してもよい。
【0058】
また、本実施形態に係る空気清浄装置は、ここで説明した構成以外の構成を備えてよい。例えば、光触媒材料と機材と加熱部とは、後述する図1のようにそれぞれが直接接触しなくてもよく、それらの間に、必要に応じて何らかの層を設けてもよい。また、表面又は裏面に何らかの層を設けてもよい。
【0059】
〔光触媒ユニット〕
本実施形態に係る光触媒ユニットは、光触媒材料と、加熱部と、加熱制御部とを備える。このうち、加熱部は、光触媒材料を加熱するものである。また、加熱制御部は、光触媒ユニットが配置される配置空間の湿度に基づき、加熱部による加熱の有無、加熱温度及び加熱時間からなる群から選択される1以上の加熱条件を制御するものである。
【0060】
また、本実施形態に係る光触媒ユニットは、基材、湿度測定部及び光照射部の各部のうちいずれか1つ以上を備えてもよい。
【0061】
光触媒材料、加熱部、加熱制御部、基材、湿度測定部及び光照射部は、上述したものと同様のものを用いることができるため、ここでの説明は省略する。
【0062】
〔空気清浄装置・光触媒ユニットの具体的態様〕
以下、空気清浄装置の具体的態様について、図を用いながら、より具体的に説明する。図1は、本実施形態に係る空気清浄装置を構成する光触媒ユニットの概略模式図である。
【0063】
光触媒ユニット10は、光触媒材料1と、基材2と、加熱部3と、加熱制御部4と、湿度測定部5と、光照射部6とを備える。この光触媒ユニット10のうち、光触媒材料1、基材2、加熱部3及び加熱制御部4は、空気清浄装置の内部に、湿度測定部5は、空気清浄装置の外部に配置される。
【0064】
このように空気清浄装置の内部に設けられた光触媒ユニット10において、内部に取り込んだ空気の流路を構成する内壁表面に光触媒材料1を露出させて配置する。この光触媒材料1は、粒径約20nmのアナターゼ型酸化チタン粒子を、基材2としてのアルミニウム板の表面に溶射して堆積させた酸化チタン被膜である。
【0065】
基材2の表面のうち、光触媒材料1が堆積されていない表面には、加熱部としてのパネルヒーター3が配置されている。加熱部3は、加熱制御部4からの指示を受信可能に構成・接続されている。この加熱制御部4は、温度調整器と演算素子とから構成されるものであり、加熱部3へ指示を送信可能に構成・接続されている。また、加熱制御部4のうち演算素子は、湿度測定部5としての湿度計から取得した、空気清浄機の外部の湿度を取得し、これに基づき、加熱部3の加熱条件を決定する。次いで、加熱制御部4は、決定した加熱条件で加熱するよう加熱部3に指示する。
【0066】
一方、光触媒材料1の対向する位置に光照射部5としてのUV-LEDが設けられている。光触媒材料1を構成するアナターゼ型酸化チタンは、UV光によって励起されて光触媒活性を示し、空気清浄装置内部に取り込んだ空気に含まれる有機物を酸化分解して、清浄化する。
【0067】
なお、以上では、湿度測定部5が空気清浄装置の外部に配置される例を示したが、内部に配置されて、例えば取り込まれた空気中の湿度を測定してもよい。
【0068】
なお、空気清浄装置における他の構成については、上述した各部を備えているものであれば特に限定されず、光触媒材料を空気に含まれる有機成分の分解に用いるあらゆる空気清浄装置の構成を採用することができる。
【0069】
〔空気清浄方法〕
本実施形態に係る空気清浄方法は、光触媒材料を用いた空気清浄方法である。具体的に、この空気清浄方法においては、光触媒活性を示している光触媒材料に対して、光触媒材料が配置される配置空間の湿度に基づき、加熱の有無、加熱温度及び加熱時間からなる群から選択される1以上の加熱条件を制御しながら加熱するものである。
【0070】
このような空気清浄方法は、例えば上述した空気清浄装置を用いて行ってもよいし、上述した空気清浄装置を用いずに行ってもよい。上述した空気清浄装置を用いずに行う場合、制御の方法は上述した加熱制御部等を用いずに、オペレータの手動によって行うこともできる。
【0071】
本発明は、以上の具体的な実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の効果を阻害しない範囲において、適宜変更を加えて実施することができる。
【実施例0072】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0073】
〔酸化チタン塗布ガラスの製造〕
Evonik Resource Efficiency GmbH社製 AEROXIDE(登録商標) TiO P25 0.02gを、超純水1mLに分散させ、この懸濁液を50×100mmガラスプレート上に塗布し乾燥させた。
【0074】
〔高湿度環境下におけるアセトアルデヒドの分解反応評価〕
[ヒーターの効果について]
上述した酸化チタン塗布ガラスについて、JIS R 1701-2:2016に準拠してアセトアルデヒドを測定した。具合的に、JIS R 1701-2:2016に準拠する反応容器内に、パネルヒーター(約200mm×50mm×1mm)を置いた。次いで、このパネルヒーターの上に、酸化チタンが被覆されていない側のガラス面をパネルヒーターと接触させるようにして、酸化チタン塗布ガラスを、反応容器の中央部に置いた。
【0075】
パネルヒーターからは、給電ケーブル及び温度センサーケーブルが伸びており、これらのケーブルを容器内部から外部へ取り出す必要がある。一方、反応容器の内部は、気密性を保つ必要がある。そこで、これらのケーブルそれぞれについてシリコーンチューブを被せた後、配管チューブに通し、反応容器出口で十字型の異径ユニオンジョイントで給電ケーブルとセンサーケーブルを別方向に分け、十分に締めつけて気密性を担保した。また、酸化チタン塗布ガラス面における紫外光強度が1mW/cmとなるように20Wブラックライトを配置した。このような反応容器を暗条件に配置した。
【0076】
パネルヒーターの温度コントロールを調整して、表面温度が70℃になるように加熱しながら、相対湿度を0%、50%及び100%にそれぞれ調整した清浄空気と混合することで5ppmのアセトアルデヒド濃度とした標準ガスを容器内に流した。
【0077】
途中、180分間ブラックライトを点灯して酸化チタンに紫外光を照射し、光触媒反応を行った。この際、反応容器から排出されるガス中のアセトアルデヒド濃度及び二酸化炭素濃度をガスクロマトグラフィーにより測定した。
【0078】
図2Aは、ヒーターによる加熱有、ガス中の相対湿度が0%のときのアセトアルデヒド濃度及び二酸化炭素濃度対時間のプロットである。図2Bは、ヒーターによる加熱無、ガス中の相対湿度が0%のときのアセトアルデヒド濃度及び二酸化炭素濃度対時間のプロットである。図3Aは、ヒーターによる加熱有、ガス中の相対湿度が50%のときのアセトアルデヒド濃度及び二酸化炭素濃度対時間のプロットである。図3Bは、ヒーターによる加熱無、ガス中の相対湿度が50%のときのアセトアルデヒド濃度及び二酸化炭素濃度対時間のプロットである。図4Aは、ヒーターによる加熱有、ガス中の相対湿度が100%のときのアセトアルデヒド濃度及び二酸化炭素濃度対時間のプロットである。図4Bは、ヒーターによる加熱無、ガス中の相対湿度が100%のときのアセトアルデヒド濃度及び二酸化炭素濃度対時間のプロットである。なお、これらの図において光源を点灯したのは、経過時間のうち0~180分の間である。
【0079】
ガス中の相対湿度が0%のときは、ヒーターによる加熱の有無によりアセトアルデヒドの分解能に相違は見られなかった(図2A図2B)。ガス中の相対湿度が50%、100%のときはヒーターによる加熱無しの場合(図3B図4B)に比べて、ヒーターによる加熱有の場合(図3A図4A)の方が、アセトアルデヒド分解能が高かった。
【0080】
[表面温度のアセトアルデヒド除去率への影響]
ガスの相対湿度を100%とし、酸化チタンの表面温度を変化させて、アセトアルデヒド除去率(%)を測定した。下記表1に酸化チタンの表面温度と、アセトアルデヒド除去率との関係を示す。
【表1】
【0081】
表1に示すように、表面温度が高いほど、アセトアルデヒド除去率が高くなることが分かった。
【0082】
[ヒーターのオン/オフの繰り返しによるアセトアルデヒド除去率への影響]
ガスの相対湿度を100%とし、300分間ブラックライトを点灯して、酸化チタンに紫外光照射する間、ヒーターのオン/オフを繰り返した。なお、ヒーターのオンの際の表面温度は70℃になるよう調整した。図5は、ヒーターのオン/オフを繰り返した場合のアセトアルデヒド濃度及び二酸化炭素濃度対時間のプロットである。なお、この図において光源を点灯したのは、経過時間のうち0~310分の間である。また、ヒーターをオンにしたのは、経過時間のうち60~130分の間及び190~250分の間である。
【0083】
図5に示すように、ヒーターを加熱している場合にのみ、容器から排出されるガス中のアセトアルデヒド濃度が低下することが分かった。
【符号の説明】
【0084】
1 光触媒材料
2 基材
3 加熱部
4 加熱制御部
5 湿度測定部
6 光照射部
10 光触媒ユニット
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5