(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022117788
(43)【公開日】2022-08-12
(54)【発明の名称】非接触タッチセンサ
(51)【国際特許分類】
H01H 36/00 20060101AFI20220804BHJP
H03K 17/945 20060101ALI20220804BHJP
G01V 3/12 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
H01H36/00 P
H03K17/945 M
G01V3/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021014486
(22)【出願日】2021-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 寧
【テーマコード(参考)】
2G105
5G046
5J050
【Fターム(参考)】
2G105AA01
2G105BB13
2G105CC01
2G105DD02
2G105EE02
2G105FF04
2G105FF13
2G105GG01
2G105HH02
5G046AA03
5G046AB01
5G046AC54
5G046AD02
5G046AE01
5J050AA11
5J050AA48
5J050BB22
5J050EE34
5J050FF18
(57)【要約】 (修正有)
【課題】接触することなくボタンを押下する動作のみを正確に検出できる非接触タッチセンサを提供する。
【解決手段】電波を生成する電波生成部10と、電波生成部10に接続される電波送信用の第1電極11と、第1電極11の内側に当該第1電極11と絶縁した状態で配設され、第1電極11から送信される電波の反射波を受信する第2電極12と、第2電極12の内側に当該第2電極12と絶縁した状態で配設され、第1電極11から送信される電波の反射波を受信する第3電極13と、第2電極12が受信した電波の出力信号と第3電極13が受信した電波の出力信号とを加算する加算部16と、第2電極12が受信した電波の出力信号と第3電極13が受信した電波の出力信号とを減算する差動部17と、加算部16から出力される信号波形と差動部17から出力される信号波形とに基づいて第3電極13に接近する指の動作を検出する検出部18とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を生成する電波生成手段と、
前記電波生成手段に接続される電波送信用の第1電極と、
前記第1電極の内側に当該第1電極と絶縁した状態で配設され、前記第1電極から送信される前記電波の反射波を受信する第2電極と、
前記第2電極の内側に当該第2電極と絶縁した状態で配設され、前記第1電極から送信される前記電波の反射波を受信する第3電極と、
前記第2電極が受信した前記電波の出力信号と前記第3電極が受信した前記電波の出力信号とを加算する加算手段と、
前記第2電極が受信した前記電波の出力信号と前記第3電極が受信した前記電波の出力信号とを減算する減算手段と、
前記加算手段から出力される信号波形と前記減算手段から出力される信号波形とに基づいて前記第3電極に接近する指の動作を検出する検出手段とを備えることを特徴とする非接触タッチセンサ。
【請求項2】
請求項1に記載の非接触タッチセンサにおいて、
前記第1電極に入力される電波信号と前記第2電極から出力される出力信号とを同期検波する第1同期検波手段と、
前記第1電極に入力される前記電波信号と前記第3電極から出力される前記電波信号とを同期検波する第2同期検波手段とを備える非接触タッチセンサ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の非接触タッチセンサにおいて、
前記第2電極から出力される出力信号と前記第3電極から出力される出力信号とに基づいてそれぞれの前記出力信号の出力の大きさを一定にする差動積分回路を備える非接触タッチセンサ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の非接触タッチセンサにおいて、
前記電波生成手段が、乱数発生器により乱数波形の信号を生成する非接触タッチセンサ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の非接触タッチセンサにおいて、
前記電波生成手段が、
発振器が発振したキロオーダーの周波数を有する信号から高調波を生成する高調波生成手段と、
生成した前記高調波からマイクロオーダーの周波数を有する信号をフィルタリングするバンドパスフィルタとを備える非接触タッチセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触でボタン押下を検出する非接触タッチセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
ウイルスなどの流行に伴い、公共の場において非接触で押下(ON/OFF)できるボタンが求められている。一般的な非接触の近接センサでは、指が近づいたことを検知することは可能であるが、例えば、意図しないようなたまたま横から指が近づいてしまったような場合や、手のひら全体で近接してしまったような場合であっても指を検知されてしまい、誤検知が多くなってしまうという問題がある。
【0003】
このような問題に関連する技術が、例えば特許文献1、2に開示されている。特許文献1に示す技術は、検知対象を非接触で検知するためのセンサであって、第一の電極と、第一の電極の外側の少なくとも一部に配置された第二の電極と、第一の電極と第二の電極との間に配置された第三の電極と、第一の電極の静電容量である第一の静電容量の変化を検出することにより、第一の領域内に検知対象が入ったことを検知し、かつ第二の電極の静電容量である第二の静電容量の変化を検出することにより、第二の領域に検知対象が入ったことを検知する判定回路とを備え、第三の電極の電位は、第一の電極の電位及び第二の電極の電位よりも負であり、平面視において、第二の領域は、第一の領域の外周の少なくとも一部を囲んでいるものである。
【0004】
特許文献2に示す技術は、平板状の支持体上の検出面に3本の線状電極E1~E3を並べて配置し、保護用の絶縁層で被覆し、中央の線状電極E2の配置線を境界線として、その左右に検出領域Aleft,Arightを定義し、電極E1,E2によって容量素子C1を形成し、電極E2,E3によって容量素子C2を形成し、容量素子C1の静電容量値と容量素子C2の静電容量値との差を求め、差の絶対値が所定のしきい値以上である場合に、近傍に対象物が存在する旨の検出を行い、差の符号に基づいて、対象物の存在領域が、領域Aleftであるか、領域Arightであるかを特定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-135099号公報
【特許文献2】特開2017-150881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2に示す技術は、近接する対象物を検知する際にできるだけ誤検知を減らす技術であるが、いずれの技術についても指先でボタンを押下するような動作のみを正確に検知できるものではなく、非接触でボタン押下を検出する技術としては十分ではない。
【0007】
本発明は、接触することなくボタンを押下する動作のみを正確に検出することで、指先へのウイルスや菌の付着を防止して感染を抑えることができる非接触タッチセンサを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る非接触タッチセンサは、電波を生成する電波生成手段と、前記電波生成手段に接続される電波送信用の第1電極と、前記第1電極の内側に当該第1電極と絶縁した状態で配設され、前記第1電極から送信される前記電波の反射波を受信する第2電極と、前記第2電極の内側に当該第2電極と絶縁した状態で配設され、前記第1電極から送信される前記電波の反射波を受信する第3電極と、前記第2電極が受信した前記電波の出力信号と前記第3電極が受信した前記電波の出力信号とを加算する加算手段と、前記第2電極が受信した前記電波の出力信号と前記第3電極が受信した前記電波の出力信号とを減算する減算手段と、前記加算手段から出力される信号波形と前記減算手段から出力される信号波形とに基づいて前記第3電極に接近する指の動作を検出する検出手段とを備えるものである。
【0009】
このように、本発明に係る非接触タッチセンサにおいては、電波を生成する電波生成手段と、前記電波生成手段に接続される電波送信用の第1電極と、前記第1電極の内側に当該第1電極と絶縁した状態で配設され、前記第1電極から送信される前記電波の反射波を受信する第2電極と、前記第2電極の内側に当該第2電極と絶縁した状態で配設され、前記第1電極から送信される前記電波の反射波を受信する第3電極と、前記第2電極が受信した前記電波の出力信号と前記第3電極が受信した前記電波の出力信号とを加算する加算手段と、前記第2電極が受信した前記電波の出力信号と前記第3電極が受信した前記電波の出力信号とを減算する減算手段と、前記加算手段から出力される信号波形と前記減算手段から出力される信号波形とに基づいて前記第3電極に接近する指の動作を検出する検出手段とを備えるため、中心部分に配設される第3電極に対して正面から近づく指のみ(ボタンを押下する動作を行う指のみ)を検出することが可能となり、誤検出をなくした非接触のボタンを実現することができるという効果を奏する。
【0010】
また、本発明に係る非接触タッチセンサは、静電容量の変化ではなく、電波の異なる距離からの反射波を加算、減算して得られる波形に基づいて指の動作を検出するため、従来とは全く異なる構成を用いて正確にボタンを押下する動作のみを検出することができるという効果を奏する。
【0011】
本発明に係る非接触タッチセンサは必要に応じて、前記第1電極に入力される電波信号と前記第2電極から出力される出力信号とを同期検波する第1同期検波手段と、前記第1電極に入力される前記電波信号と前記第3電極から出力される前記電波信号とを同期検波する第2同期検波手段とを備えるものである。
【0012】
このように、本発明に係る非接触タッチセンサにおいては、前記第1電極に入力される電波信号と前記第2電極から出力される出力信号とを同期検波する第1同期検波手段と、前記第1電極に入力される前記電波信号と前記第3電極から出力される前記電波信号とを同期検波する第2同期検波手段とを備えるため、様々なノイズ環境下であっても電波生成手段で発振された信号と同期を取ることで、指の接近を確実に検出すると共にノイズによる誤検知を無くすことができるという効果を奏する。
【0013】
本発明に係る非接触タッチセンサは必要に応じて、前記第2電極から出力される出力信号と前記第3電極から出力される出力信号とに基づいてそれぞれの前記出力信号の出力の大きさを一定にする差動積分回路を備えるものである。
【0014】
このように、本発明に係る非接触タッチセンサにおいては、前記第2電極から出力される出力信号と前記第3電極から出力される出力信号とに基づいてそれぞれの前記出力信号の出力の大きさを一定にする差動積分回路を備えることで、第2電極の出力と第3電極の出力との加算や差分を明確にし、指の接近を確実に検出することが可能になるという効果を奏する。
【0015】
本発明に係る非接触タッチセンサは必要に応じて、前記電波生成手段が乱数発生器により乱数波形の信号を生成するものである。
【0016】
このように、本発明に係る非接触タッチセンサにおいては、前記電波生成手段が乱数発生器により乱数波形の信号を生成するため、例えばエレベータのボタンのように複数のボタンが近い距離で配設されているような場合であっても、各ボタンごとに異なる乱数を発生させて信号処理を行うことができるため、各ボタンごとに固有に処理して他のボタンとの間での誤検出をなくすことができるという効果を奏する。
【0017】
本発明に係る非接触タッチセンサは必要に応じて、前記電波生成手段が、発振器が発振したキロオーダーの周波数を有する信号から高調波を生成する高調波生成手段と、生成した前記高調波からマイクロオーダーの周波数を有する信号をフィルタリングするバンドパスフィルタとを備えるものである。
【0018】
このように、本発明に係る非接触タッチセンサにおいては、前記電波生成手段が、発振器が発振したキロオーダーの周波数を有する信号から高調波を生成する高調波生成手段と、生成した前記高調波からマイクロオーダーの周波数を有する信号をフィルタリングするバンドパスフィルタとを備えるため、キロオーダーの周波数を発振可能な極めて安価な発振器からメガオーダーの信号を得ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1の実施形態に係る非接触タッチセンサの構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】指が正面から第3電極に向かってボタンを押下するような動作を行った場合の出力結果の一例を示す図である。
【
図3】指が横から侵入して第3電極に近づいた場合の出力結果の一例を示す図である。
【
図4】掌がセンサ全体を覆うように近づいた場合の出力結果の一例を示す図である。
【
図5】
図2の場合における差動部の出力波形を示す図である。
【
図6】
図3の場合における差動部の出力波形を示す図である。
【
図7】
図4の場合における差動部の出力波形を示す図である。
【
図8】第1の実施形態に係る非接触タッチセンサにおける検出部の処理を示すフローチャートである。
【
図9】第2の実施形態に係る非接触タッチセンサの構成を示す機能ブロック図である。
【
図10】第3の実施形態に係る非接触タッチセンサの構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(本発明の第1の実施形態)
本実施形態に係る非接触タッチセンサについて、
図1ないし
図8を用いて説明する。本実施形態に係る非接触タッチセンサは電波(厳密には電界)の反射波を利用したセンサであり、指がセンサの真上から(垂直方向に向けて)近づいた場合のみを検知することで、誤検知を最小限に抑えつつ非接触でのボタン押下を可能とするものである。
【0021】
図1は、本実施形態に係る非接触タッチセンサの構成を示す機能ブロック図である。本実施形態に係る非接触タッチセンサ1は、1~10MHzの電波を生成する電波生成部10と、当該電波生成部10に接続し、円環状に形成された電波送信用の第1電極11と、当該第1電極11の円環状の内側に第1電極11と絶縁した状態で配設され、第1電極11から送信される電波の反射波を受信する円環状の第2電極12と、当該第2電極12の内側に第2電極12と絶縁した状態で配設され、第1電極11から送信される電波の反射波を受信する円形の第3電極13と、電波生成部10で生成された電波と第2電極12が受信した電波の出力信号とを同期検波する第1同期検波部14と、電波生成部10で生成された電波と第3電極13が受信した電波の出力信号とを同期検波する第2同期検波部15と、第1同期検波部14で復調された信号(以下、出力信号Aという)と第2同期検波部15で復調された信号(以下、出力信号Bという)とを加算する加算部16と、第1同期検波部14で復調された信号と第2同期検波部15で復調された信号とを減算する差動部17と、加算部16から出力される信号波形と差動部17から出力される信号波形とに基づいて第3電極13に接近する指の動作を検出する検出部18とを備える。
【0022】
また、必要に応じて、電波生成部10で生成された電波を増幅して第1電極11に入力する第1増幅器21と、第2電極12で受信した電波の出力信号を増幅する第2増幅器22と、第3電極13で受信した電波の出力信号を増幅する第3増幅器23と、第1同期検波部14及び第2同期検波部15にそれぞれ入力される電波生成部10で生成された電波信号を増幅する第4増幅器24とを備える。
【0023】
電波生成部10で生成された電波は、第1増幅器21で増幅され第1電極11から放射状に出力される。このとき、第1電極11上(電波の出力方向)の近傍に何もなければ、第1電極11から出力された電波はそのまま放射状に広がるだけであり、第2電極12及び第3電極13の出力値に変化はない。しかしながら、例えば指などが近づいた場合には、第1電極11から出力された電波が指で反射し、その反射波が第2電極12及び第3電極13で受信される。そして、指が電極に近づくほど第2電極12及び第3電極13で検出される反射波としての信号値が大きくなる。
【0024】
第2電極12及び第3電極13で検出され、第1同期検波部14及び第2同期検波部15でそれぞれ復調された出力信号A及び出力信号Bは、加算部16で加算処理が行われ、差動部17で減算処理が行われる。以下、指の挙動に応じた加算部16の出力と差動部17の出力とについて詳細に説明する。
図2ないし
図4は、非接触タッチセンサ1に電波を反射する反射物(例えば、指や手等)が近づいた場合の加算部の出力の一例を示す図である。
図2は指が正面から第3電極13に向かってボタンを押下するような動作を行った場合の出力結果の一例、
図3は指が横から侵入して第3電極13に近づいた場合の出力結果の一例、
図4は掌がセンサ全体を覆うように近づいた場合の出力結果の一例を示している。
【0025】
図2において、
図2(A)に示すように、差す指が非接触タッチセンサ1の正面から第3電極13に向かってボタンを押下するような動作を行ったとする。この場合、指が近接するのに伴い第1電極11から送信された電波の反射波が増えるため、
図2(B)に示すように、まず第3電極13で反射波を受信した時刻t1を起点に出力信号Bの値が増加する。指から第3電極13までの距離に比べて第2電極12までの距離が長いことから、
図2(C)に示すように、出力信号Bの増加に若干遅れて時刻t2を起点に出力信号Aが値が増加する。加算部16の出力は、
図2(B)の波形と
図2(C)の波形を加算して
図2(D)に示すような波形となる。
【0026】
図3において、
図3(A)に示すように、差す指が非接触タッチセンサ1の横から侵入して第2電極12や第3電極13上を通過する動作、すなわち意図的にボタンを押下する動作ではなく、たまたま指が非接触タッチセンサ1に近接したような動作を行ったとする。この場合、指がまず第2電極12に接近する。その接近に伴い第1電極11から送信された電波の反射波が第2電極12で受信されるため、
図3(C)に示すように、まず時刻t1を起点に出力信号Aの値が増加する。そして、指が第2電極12上を通過して第3電極13に近づくにつれて、
図3(B)に示すように、時刻t2を起点に出力信号Bの値が増加する。加算部16の出力は、
図3(B)の波形と
図3(C)の波形を加算して
図3(D)に示すような波形となる。
図2(D)及び
図3(D)からわかる通り、加算部16の出力波形はそれぞれの動作で類似した波形となっている。
【0027】
図4において、
図4(A)に示すように、掌全体が非接触タッチセンサ1を覆うように第2電極12及び第3電極13に近づいた動作、すなわち意図的にボタンを押下する動作ではなく、たまたま指、手、体などの一部が非接触タッチセンサ1を覆うように近接したような動作を行ったとする。具体例としては、例えば非接触タッチセンサ1がエレベータのボタンとして提供される場合に、利用者の腕や背中などの比較的面積が大きい部分が非接触タッチセンサ1に近接したり接触するような場合が挙げられる。この場合、近接対象(ここでは掌)が第2電極12及び第3電極13にほぼ同時に接近し、掌とそれぞれの第2電極12及び第3電極13との距離がほぼ一定であることから、
図4(B)及び
図4(C)に示すように、時刻t1を起点に出力信号Aと出力信号Bとがほぼ同時に増加する。つまり、加算部16の出力は、
図4(B)の波形と
図4(C)の波形を加算して
図4(D)に示すような波形となる。なお、
図4(D)の波形は
図2(D)や
図3(D)の波形とは若干異なるものとなっているが、指の動きの速さなどによっては明確に区別するのは難しい場合がある。
【0028】
これに対して、差動部17の出力について以下に説明する。
図5は、
図2の場合における差動部17の出力波形を示す図、
図6は、
図3の場合における差動部17の出力波形を示す図、
図7は、
図4の場合における差動部17の出力波形を示す図である。すなわち、
図2(C)の波形から
図2(B)の波形を減算した場合は
図5のような波形となり、
図3(C)の波形から
図3(B)の波形を減算した場合は
図6のような波形となり、
図4(C)の波形から
図4(B)の波形を減算した場合は
図7のような波形となる。
【0029】
図2ないし
図7に示す波形に基づいて、検出部18が反射対象の動作を検出する。加算部16が出力する波形はいずれの動作においても指や掌などの反射対象の接近に伴い出力が増加し、これだけで各動作の差異を判断するのは難しいものとなるが、少なくとも反射対象が接近している状態であることは判断可能である。なお、
図2(D)ないし
図4(D)に示すように、出力信号Aの増加と出力信号Bの増加に時間差があるかどうかで指のような反射面積が狭いものが接近した場合と掌のような反射面積が広いものが接近した場合との区別は可能である。
【0030】
検出部18は、より厳密な反射対象の動作を特定するために加算部16の波形変化に加えて、
図5ないし
図7の差動部17の波形を参照することで、反射対象の動作をほぼ特定することが可能となる。つまり、加算部16の波形変化(増加)があるのに加えて、
図5に示すように差動部17の出力が減少する波形を検出した場合は指によるボタン押下の動作、
図6に示すように差動部17の出力が増加する波形を検出した場合は横方向からたまたま反射対象が接近した動作(すなわちボタン押下の動作ではない)、
図7に示すように差動部17の出力が変化しない又は極めて微小な変化しかしない場合は非接触タッチセンサ1全体が覆われるような動作(すなわちボタン押下の動作ではない)と判断することが可能となる。
【0031】
図8は、本実施形態に係る非接触タッチセンサにおける検出部の処理を示すフローチャートである。検出部18は、加算部16の出力に変化があるかどうかを常時判定する(S1)。変化があった場合は、反射対象の接近のうち
図2(D)又は
図3(D)に示したような指の接近と同じ挙動であるかどうかを判定する(S2)。指の挙動ではないと判定した場合は、S1に戻って加算部16に変化があるまで待機する。指の挙動であると判定した場合は、差動部17の出力波形を分析する(S3)。なお、上述したように加算部16の挙動だけで指の接近であるか掌の接近であるかを判断することが難しい場合があるので、S2の判定処理を行わずに、S1からS3の処理に直接進むようにしてもよい。
【0032】
差動部17の出力を判定した結果、出力波形が減少する方に振れているかどうかを判定し(S4)、出力波形が増加する方に振れているか又はゼロである場合は、S1に戻って加算部16に変化があるまで待機する。出力波形が減少する方に振れている場合は、指によるボタン押下の動作であると特定し(S5)、その旨の情報を以降の処理に渡して処理を終了する。このような検出部18の処理により、指による非接触でのボタン押下の動作を正確に検知することが可能となる。
【0033】
(本発明の第2の実施形態)
本実施形態に係る非接触タッチセンサについて、
図9を用いて説明する。本実施形態に係る非接触タッチセンサは、エレベータ内に設置される行先ボタンや開閉ボタンのように複数のボタンが近い距離で設置される場合に、他のボタンで使用される電波生成部10が生成する電波との混信を防止して正確にボタン押下を検知するものである。なお、本実施形態において前記第1の実施形態と重複する説明は省略する。
【0034】
図9は、本実施形態に係る非接触タッチセンサの構成を示す機能ブロック図である。第1の実施形態における
図1の場合と異なるのは、電波生成部10が、キロヘルツオーダー(例えば、1kHz~999kHz)の乱数パルス(方形波)を発生する発振器10aと、発振されたパルスをインパルスに変換して高調波を発生させる高調波発生部10bと、この信号を数MHz(1~10MHz)で濾波するバンドパスフィルタ10cとを備えることである。
【0035】
発振器10aは数十キロHz~数百キロHzの乱数パルスを発生させる。乱数の生成方式については、例えば一般的に知られている疑似ランダム信号(PRBS:Pseudo Random Bit Sequence)を用いる。高調波発生部10bは、発振器10aで生成されたパルスから、全ての周波数範囲において均等なエネルギーを持つインパルスに変換して高調波を発生させる。そして、発生した信号を電波として出力するためにバンドパスフィルタ10cで数MHzの信号をフィルタリングする。
【0036】
このとき、例えば1kHz程度の電波であれば300m程度のアンテナが必要になるため、非接触タッチセンサ1として実用的ではない。したがって、検知する第2電極12及び第3電極13を小さくするために、上述したように、高調波発生により周波数を1~10MHz程度、好ましくは2MHz程度まで高くして第2電極12及び第3電極13で検知できるように調整する。
【0037】
第2電極12や第3電極13で検出された信号は、それぞれ第1同期検波部14や第2同期検波部15にて発振器10aで生成された乱数パルスと同期検波されるため、電波生成部10から発振された電波の反射波を確実に取得すると共に、ノイズなどを排除することが可能となる。すなわち、エレベータのボタンのように複数のボタンが近い距離で併設されるような場合には、各ボタンごとに異なる乱数パルスを発生させることで信号の混信状態をなくし、正確なボタン押下の動作を検知することが可能になる。
【0038】
なお、複数の非接触タッチセンサ1を併設する場合には、
図9の構成で各ボタン(非接触タッチセンサ1)をそのまま併設してもよいし、1つの共通した発振器10aで各ボタンごとに複数の異なる乱数パルスを発生させ、高調波発生部10b以降の構成を各ボタンごとに用意するようにしてもよい。
【0039】
(本発明の第3の実施形態)
本実施形態に係る非接触タッチセンサについて、
図10を用いて説明する。本実施形態に係る非接触タッチセンサは、加算部16及び差動部17において出力信号Aと出力信号Bとの加算や減算の処理を正確に行うために、それぞれの出力信号A及びBの大きさを一定に調整するものである。
【0040】
図10は、本実施形態に係る非接触タッチセンサの構成を示す機能ブロック図である。第1の実施形態における
図1や第2の実施形態における
図9の場合と異なるのは、加算部16及び差動部17の前段に出力信号Aを増幅して出力信号A1とするオペアンプ20aと出力信号Bを可変増幅して出力信号B1とする可変ゲインアンプ20bとを有し、それぞれの出力信号A1及び出力信号B1を入力とする差動積分回路19を設け、その出力を可変ゲインアンプ20bに戻すことで出力信号A1と出力信号B1の大きさを一定にしていることである。このような構成にすることで、出力信号A1と出力信号B1の大きさが一定となり、後段側の加算部16、差動部17及び検出部18の処理を正確に行うことが可能になる。
【0041】
なお、本発明において第1電極11及び第2電極12の形状は円環状に限定されるものではなく、帯状で周回するように形成されれば形状は何でもよい。また、第3電極13についても、第2電極12の内側に絶縁状態で配置されるものであれば形状は何でもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 非接触タッチセンサ
10 電波生成部
10a 発振器
10b 高調波発生部
10c バンドパスフィルタ
11 第1電極
12 第2電極
13 第3電極
14 第1同期検波部
15 第2同期検波部
16 加算部
17 差動部
18 検出部
19 差動積分回路
20a オペアンプ
20b 可変ゲインアンプ
21 第1増幅器
22 第2増幅器
23 第3増幅器
24 第4増幅器