(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022118154
(43)【公開日】2022-08-12
(54)【発明の名称】接着性樹脂組成物及び積層体
(51)【国際特許分類】
C09J 123/26 20060101AFI20220804BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20220804BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20220804BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
C09J123/26
C09J163/00
C09J11/06
C09J175/04
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099825
(22)【出願日】2022-06-21
(62)【分割の表示】P 2017160386の分割
【原出願日】2017-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 宏和
(72)【発明者】
【氏名】武井 邦浩
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 潤
(57)【要約】
【課題】接着性が高く、耐酸性強度が高い接着性樹脂組成物、及びこれを用いた積層体の提供。
【解決手段】重量平均分子量が30000以上150000以下の酸変性ポリオレフィン樹脂成分(A)と、エポキシ基を分子内に持つ樹脂成分(B)と、分子の末端にアミノ基を有する樹脂成分(C)と、溶剤(S)と、を含む接着性樹脂組成物であって、前記変性ポリオレフィン樹脂成分(A)100質量部に対する、前記樹脂成分(B)の含有量が1質量部以上30質量部以下であり、前記変性ポリオレフィン樹脂成分(A)100質量部に対する、前記樹脂成分(C)の含有量が0.5質量部以上15質量部以下であることを特徴とする、接着性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量が30000以上150000以下の酸変性ポリオレフィン樹脂成分(A)と、エポキシ基を分子内に持つ樹脂成分(B)と、分子の末端にアミノ基を有する樹脂成分(C)と、溶剤(S)と、を含む接着性樹脂組成物であって、
前記変性ポリオレフィン樹脂成分(A)100質量部に対する、前記樹脂成分(B)の含有量が1質量部以上30質量部以下であり、
前記変性ポリオレフィン樹脂成分(A)100質量部に対する、前記樹脂成分(C)の含有量が0.5質量部以上15質量部以下であることを特徴とする、接着性樹脂組成物。
【請求項2】
前記酸変性ポリオレフィン樹脂成分(A)の酸付加量が、0.5質量%以上3.0質量%以下である、請求項1に記載の接着性樹脂組成物。
【請求項3】
前記酸変性ポリオレフィン樹脂成分(A)の融点が、50℃以上85℃以下である、請求項1又は2に記載の接着性樹脂組成物。
【請求項4】
前記樹脂成分(C)が、分子の末端をアミノ基変性したオレフィン樹脂、ポリアミン樹脂、分子の末端をアミノ基変性したポリアミド樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂からなる群より選択される1種以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の接着性樹脂組成物。
【請求項5】
前記樹脂成分(C)の重量平均分子量が2000以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の接着性樹脂組成物。
【請求項6】
さらに、イソシアネート化合物(D)を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の接着性樹脂組成物。
【請求項7】
前記樹脂成分(B)がノボラック変性エポキシ樹脂である、請求項1~6のいずれか1項に記載の接着性樹脂組成物。
【請求項8】
前記樹脂成分(B)が分子内にビスフェノールA構造を持つ化合物を含有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の接着性樹脂組成物。
【請求項9】
被着体と、前記被着体の一面に積層された接着性樹脂層とを有し、前記接着性樹脂層は、請求項1~8のいずれか1項に記載の接着性樹脂組成物から形成された積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着性樹脂組成物及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器、電池等の工業製品や、食品、飲料、化粧品、医薬品等の日用品の外装、包装等に使用される外装体、包装体の分野では、ポリエチレンやポリプロピレン等の樹脂材料と、アルミニウム箔等の金属材料を組み合わせて積層した積層体が使用される。
樹脂材料と金属材料との接着性を向上させるため、これらを接着させる接着剤組成物について種々の検討がされている。
【0003】
例えば特許文献1には、溶融混連タイプの接着性樹脂組成物であって、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)とをグラフト重合させて得られる樹脂(C)を、さらに、エポキシ基を1分子中に2つ以上有するエポキシ基含有樹脂(D)とグラフト重合させて得られる、グラフト共重合体(G)を含有し、前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)と前記ポリアミド樹脂(B)と前記エポキシ基含有樹脂(D)との合計を100質量%とするうち、前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)が85~98質量%、前記ポリアミド樹脂(B)が1~9質量%、前記エポキシ基含有樹脂(D)が1~14質量%の範囲内で含まれることを特徴とする接着性樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えばリチウム二次電池、水素燃料電池、太陽電池等の電池外装体内部に使用される接着性樹脂組成物は、酸性の電解液に接触する場面が想定される。このため接着性樹脂組成物には、高い接着性に加えて、耐酸性強度が高いことが求められる。本明細書において、「耐酸性強度が高い」とは、酸に接触した場合にも接着強度が低下しないことを意味する。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、接着性が高く、耐酸性強度が高い接着性樹脂組成物、及びこれを用いた積層体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は以下の構成を採用した。
[1]重量平均分子量が30000以上150000以下の酸変性ポリオレフィン樹脂成分(A)と、エポキシ基を分子内に持つ樹脂成分(B)と、分子の末端にアミノ基を有する樹脂成分(C)と、溶剤(S)と、を含む接着性樹脂組成物であって、前記変性ポリオレフィン樹脂成分(A)100質量部に対する、前記樹脂成分(B)の含有量が1質量部以上30質量部以下であり、前記変性ポリオレフィン樹脂成分(A)100質量部に対する、前記樹脂成分(C)の含有量が0.5質量部以上15質量部以下であることを特徴とする、接着性樹脂組成物。
[2]前記酸変性ポリオレフィン樹脂成分(A)の酸付加量が、0.5質量%以上3.0質量%以下である、[1]に記載の接着性樹脂組成物。
[3]前記酸変性ポリオレフィン樹脂成分(A)の融点が、50℃以上85℃以下である、[1]又は[2]に記載の接着性樹脂組成物。
[4]前記樹脂成分(C)が、分子の末端をアミノ基変性したオレフィン樹脂、ポリアミン樹脂、分子の末端をアミノ基変性したポリアミド樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂からなる群より選択される1種以上である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の接着性樹脂組成物。
[5]前記樹脂成分(C)の重量平均分子量が2000以上である、[1]~[4]のいずれか1つに記載の接着性樹脂組成物。
[6]さらに、イソシアネート化合物(D)を含む、[1]~[5]のいずれか1つに記載の接着性樹脂組成物。
[7]前記樹脂成分(B)がノボラック変性エポキシ樹脂である、[1]~[6]のいずれか1つに記載の接着性樹脂組成物。
[8]前記樹脂成分(B)が分子内にビスフェノールA構造を持つ化合物を含有する、[1]~[7]のいずれか1つに記載の接着性樹脂組成物。
[9]被着体と、前記被着体の一面に積層された接着性樹脂層とを有し、前記接着性樹脂層は、[1]~[8]のいずれか1つに記載の接着性樹脂組成物から形成された積層体。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、接着性が高く、耐酸性強度が高い接着性樹脂組成物、及びこれを用いた積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】剥離試験に用いる試験片の積層状態を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において、重合体の分子量としては、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の重量平均分子量を用いるものとする。
以下、好適な実施の形態に基づき、本発明を説明する。
【0010】
<接着性樹脂組成物>
本発明は、重量平均分子量が30000以上150000以下の酸変性ポリオレフィン樹脂成分(A)と、エポキシ基を分子内に持つ樹脂成分(B)と、分子の末端にアミノ基を有する樹脂成分(C)と、溶剤(S)と、を含む接着性樹脂組成物である。本発明の接着性樹脂組成物は、液状である。このため、被着体に塗布し、乾燥することにより接着膜を形成することができる。
本発明の接着性樹脂組成物は、高い接着性に加え、耐酸性が高いという効果を奏する。このため、酸性の電解液との接触が想定される、リチウム二次電池、水素燃料電池、太陽電池等の電池外装体内部に好適に使用することができる。
以下、本発明の接着性樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
【0011】
≪(A)成分≫
本実施形態の接着性樹脂組成物は、重量平均分子量が30000以上150000以下の酸変性ポリオレフィン樹脂成分(以下、「(A)成分」と記載する)を含有する。
本実施形態において(A)成分としては、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィン系樹脂であって、ポリオレフィン系樹脂中に、カルボキシ基や無水カルボン酸基等の酸官能基を有するものである。カルボキシ基や無水カルボン酸基等の酸官能基は被着体の表面と相互作用するため、(A)成分は接着性に寄与する成分である。
【0012】
(A)成分は、不飽和カルボン酸またはその誘導体によるポリオレフィン系樹脂の変性や、酸官能基含有モノマーとオレフィン類との共重合等により得られる。なかでも(A)成分としては、ポリオレフィン系樹脂を酸変性して得られた材料が好ましい。酸変性方法としては、有機過酸化物や脂肪族アゾ化合物等のラジカル重合開始剤の存在下で、ポリオレフィン樹脂と酸官能基含有モノマーとを溶融混練するグラフト変性が挙げられる。
【0013】
前記ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、ポリイソブチレン、プロピレンとエチレンとの共重合体、プロピレンとオレフィン系モノマーとの共重合体等が挙げられる。
共重合する場合の前記オレフィン系モノマーとしては、1-ブテン、イソブチレン、1-ヘキセン等が挙げられる。
【0014】
なかでも(A)成分としては、接着性、耐久性等の観点から、無水マレイン酸変性ポリプロピレンが好ましい。
【0015】
・重量平均分子量
本実施形態において、(A)成分の重量平均分子量が30000以上150000以下である。(A)成分の重量平均分子量は、40000以上が好ましく、50000以上がより好ましく、60000以上が特に好ましい。また、140000以下がより好ましく、130000以下がより好ましく、120000以下が特に好ましい。上記上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
【0016】
・酸付加量
変性に用いる不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、ナジック酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、ソルビン酸、メサコン酸、アンゲリカ酸などが挙げられる。またその誘導体としては、酸無水物、エステル、アミド、イミド、金属塩などが挙げられ、具体的には、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水ナジック酸、アクリル酸メチル、メタクル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、マレイン酸モノエチルエステル、アクリルアミド、マレイン酸モノアミド、マレイミド、N - ブチルマレイミド、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウムなどが挙げられる。これらの中でも、不飽和ジカルボン酸、およびその誘導体が好ましく、特に無水マレイン酸または無水フタル酸が好適である。 本実施形態において、(A)成分のカルボン酸付加量が、0.5質量%以上3.0質量%以下であることが好ましい。
【0017】
・融点
本実施形態において、(A)成分の融点は、50℃以上が好ましく、55℃以上がより好ましく。60℃以上が特に好ましい。また融点の上限値は、90℃以下が好ましく、85℃以下がより好ましく、83℃以下が特に好ましい。上記上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。本実施形態においては、50℃以上85℃以下であることがより好ましい。
【0018】
≪(B)成分≫
本実施形態の接着性樹脂組成物は、エポキシ基を分子内に持つ樹脂成分(以下、「(B)成分」と記載する)を含有する。エポキシ基は被着体の表面と相互作用するため、(B)成分は接着性に寄与する成分である。
(B)成分としては、エポキシ基含有ビニルモノマーの共重合体、ビスフェノール類とエピクロルヒドリンより合成されるフェノキシ樹脂、各種のエポキシ樹脂などが挙げられる。
また(B)成分として、グリシジルメタクリレート(GMA)やグリシジルアクリレート等のグリシジルエステル類、アリルグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類、エポキシブテン等のエポキシアルケン類などを用いてもよい。
【0019】
また、エポキシ基含有ビニルモノマーの共重合体において、エポキシ基含有ビニルモノマーと共重合される、他のモノマーとしては、エチレンやプロピレン等のオレフィン類、(メタ)アクリル酸エステル等のアクリル系モノマー、酢酸ビニル等が挙げられる。
エポキシ基含有ビニルモノマーの共重合体としては、エチレン―グリシジルメタクリレート(E-GMA)共重合体などが挙げられる。
【0020】
フェノキシ樹脂としては、両末端にエポキシ基を有するものが用いられ、そのビスフェノール類としては、ビスフェノールA、ビスフェノールFやそれらの共重合型などが挙げられる。
(B)成分としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂などが挙げられる。本実施形態において、(B)成分はノボラック変性エポキシ樹脂であることが好ましい。また、本実施形態において、(B)成分は分子内にビスフェノールA構造を持つ化合物を含有することが好ましい。
【0021】
(B)成分は接着時の架橋強度を向上させる観点から、重量平均分子量(Mw)が、5,000以上100,000以下の範囲内であることが好ましい。
【0022】
・含有量
本実施形態においては、前記変性ポリオレフィン樹脂成分(A)100質量部に対する、前記樹脂成分(B)の含有量が1質量部以上であり、5質量部以上が好ましく、10質量部以上が、より好ましい。また、30質量部以下であり、25質量部以下が好ましく、22質量部以下がより好ましい。
上記上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。含有量を上記の範囲とすることで、接着性や耐久性の高い接着剤樹脂組成物とすることができる。
【0023】
≪(C)成分≫
本実施形態の接着性樹脂組成物は、分子の末端にアミノ基を有する樹脂成分(以下、「(C)成分」と記載する)を含有する。(C)成分が有するアミノ基は、例えば電解液から生じるフッ酸を中和する。このため、本実施形態の接着性樹脂組成物は、高い耐酸性を発揮できる。すなわち、(C)成分は耐酸性に寄与する成分である。
【0024】
(C)成分は分子の末端をアミノ基変性したオレフィン樹脂、ポリアミン樹脂、分子の末端をアミノ基変性したポリアミド樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂からなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
【0025】
より具体的に(C)成分としては、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、分子の末端をアミノ基変性したアミン変性水添スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリエチレンイミン、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12などが挙げられる。
【0026】
本実施形態において、(C)成分の重量平均分子量は、接着時の架橋強度を向上させる観点から2000以上であることが好ましく、さらには5000以上であることが好ましい。上限値は特に限定されず、一例を挙げると1000000以下、500000以下、200000以下とすることができる。
【0027】
・含有量
前記変性ポリオレフィン樹脂成分(A)100質量部に対する、前記樹脂成分(C)の含有量が0.5質量部以上であり、1質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、6質量部以上が特に好ましい。また、15質量部以下であり、14質量部以下が好ましく、13質量部以下がより好ましく、12質量部以下が特に好ましい。上記の範囲の添加量とすることで、フッ酸に対する中和効果が高く維持したまま、接着強度を十分に保つことができる。
上記上限値及び下限値は任意に組わせることができる。
【0028】
上記(A)成分中のカルボキシ基や無水カルボン酸基等の酸官能基は、上記(C)成分の末端アミノ基と相互作用又は結合することができる。また、上記(A)成分中のカルボキシ基や無水カルボン酸基等の酸官能基は、上記(B)成分のエポキシ基と相互作用又は結合することができる。このため、本実施形態の必須成分である(A)成分、(B)成分、及び(C)成分は相溶しやすく、接着性樹脂組成物を製造した際の塗工性を良好なものとすることができる。
【0029】
≪(S)成分≫
本実施形態の接着性樹脂組成物は液状のため、溶剤成分を含有する。
溶剤(以下、「(S)成分」と記載する)の具体例としては、トルエン、キシレン、アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、シメン、メシチレン等の芳香族系溶媒;n-ヘキサン等の脂肪族系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチル-n-ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2-ヘプタノンなどのケトン系溶剤;乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどのアルコール系溶剤等が挙げられる。
【0030】
≪任意成分≫
本実施形態の接着性樹脂組成物は、イソシアネート化合物(D)(以下、「(D)成分」と記載する)を含むことが好ましい。
(D)成分としては、2官能または3官能以上のイソシアネート化合物、2官能または3官能以上のエポキシ化合物、2官能または3官能以上のアクリレート化合物、金属キレート化合物などが挙げられる。なかでも、ポリイソシアネート化合物(2官能または3官能以上のイソシアネート化合物)が好ましく、3官能以上のイソシアネート化合物がより好ましい。
(D)成分を含有する場合には、前記(A)成分の100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下含有することが好ましい。
【0031】
3官能以上のイソシアネート化合物としては、1分子中に少なくとも3個以上のイソシアネート(NCO)基を有するポリイソシアネート化合物であればよい。ポリイソシアネート化合物には、脂肪族系イソシアネート、芳香族系イソシアネート、非環式系イソシアネート、脂環式系イソシアネートなどの分類があるが、いずれでもよい。ポリイソシアネート化合物の具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)等の脂肪族系イソシアネート化合物や、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添キシリレンジイソシアネート(H6XDI)、ジメチルジフェニレンジイソシアネート(TOID)、トリレンジイソシアネート(TDI)等の芳香族系イソシアネート化合物が挙げられる。
【0032】
3官能以上のイソシアネート化合物としては、ジイソシアネート類(1分子中に2個のNCO基を有する化合物)のビュレット変性体やイソシアヌレート変性体、トリメチロールプロパン(TMP)やグリセリン等の3価以上のポリオール(1分子中に少なくとも3個以上のOH基を有する化合物)とのアダクト体(ポリオール変性体)などが挙げられる。
【0033】
本実施形態の接着性樹脂組成物は、固形分濃度は5質量%以上が好ましく、6質量%以上がより好ましく、7質量%以上が特に好ましい。また、20質量%以下であることが好ましく、18質量%以下がより好ましく、16質量%以下が特に好ましい。上記固形分濃度の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。上記のような固形分濃度とすることで、濡れ性がよく、塗布性のよい接着剤樹脂組成物とすることができる。
【0034】
<積層体>
本発明の積層体は、基材の少なくとも片面に、本発明の接着性樹脂組成物からなる接着性樹脂層が積層されてなるものである。前記接着性樹脂層が、基材の片面または両面に設けられることにより、前記接着性樹脂層を用いて、被着体と接着することができる。基材としては、基材自体に接着性を有する必要はなく、前記接着性樹脂層と接着可能なものが好ましい。金属、ガラス、プラスチックなどの各種の基材が挙げられる。本実施形態においては、接着性樹脂組成物を被着体上に塗布し、乾燥することにより接着性樹脂層を形成する。
【実施例0035】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0036】
<耐酸性試験>
耐酸性試験について、
図1を用いて説明する。
まず、
図2に示す積層体を試験片とした。
厚さ(L
6)100μm、長さ(L
4)50mm×幅(L
5)10mmのポリエチレンテレフタレートフィルム32に、各実施例および比較例の接着性樹脂組成物30を10mm(L
7)×10mm(L
8)×3μm(L
9)の形状に塗布し、110℃で1分間乾燥させ、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に接着剤膜を形成した。
その後、接着剤膜形成面に、厚さ(L
3)50μm、長さ(L
1)50mm×幅(L
2)10mmのポリプロピレンフィルム31を、130℃で2kgの荷重をかけて貼り合せ、接着させた。積層の態様は、
図2に示すように一端を揃えて積層した。
【0037】
この積層体を、500ppmのフッ化水素を含有するpH2の酸溶液(符号36)に1000時間浸漬し、ポリエチレンテレフタレートフィルム32を引張側になるように、接着剤層30の端部の位置でポリエチレンテレフタレートフィルム32及びポリプロピレンフィルム31をそれぞれ屈曲させ、把持具33で把持し、ポリエチレンテレフタレートフィルム32を把持具34で把持して固定し、ポリエチレンテレフタレートフィルム32を、前記記載の水槽中で、符号35に示す引張方向に引張、剥離強度を測定した。
引張速度は50mm/分で測定した。このときの剥離強度(N/mm2)を測定し、下記の評価基準に沿って評価した結果を表1~2に記載する。
【0038】
[評価基準]
下記の4段階で評価し、△以上を合格とした。
◎:1N/mm2以上。
○:0.5N/mm2以上1N/mm2未満。
△:0.2N/mm2以上0.5N/mm2未満。
×:0.2N/mm2未満。
【0039】
<接着性試験>
上記<耐酸性試験>で用いた試験片と同様の積層体を試験片とした。
得られた積層体を、80℃、湿度95%の高温サーモ機の中に、1000時間投入した。
その後、23℃、湿度50%の条件で、1時間乾燥させた。
ポリプロピレンフィルムを引張側になるように、接着剤層の端部の位置でポリエチレンテレフタレートフィルム及びポリプロピレンフィルムをそれぞれ屈曲させた。ポリプロピレンフィルムを把持具で把持し、ポリエチレンテレフタレートフィルムを把持具で把持して固定し、ポリプロピレンフィルムを、引張、剥離強度を測定した。
引張速度は50mm/分で測定した。このときの剥離強度(N/mm2)を測定し、下記の評価基準に沿って評価した結果を下記表に記載する。
【0040】
[評価基準]
下記の4段階で評価し、△以上を合格とした。
◎:0.7N/mm2以上。
○:0.5N/mm2以上0.7N/mm2未満。
△:0.3N/mm2以上0.5N/mm2未満。
×:0.3N/mm2未満。
【0041】
<均一塗工性試験>
得られた接着性樹脂組成物を、アプリケーターによりPETフィルム上に塗布し、100℃で1分乾燥後、20cm×30cmの大きさのサンプルを製造し、塗布ムラの有無について目視確認を行い、下記の基準に従って評価した。下記の4段階で評価し、△以上を合格とした。
◎:塗布ムラが全くない。
○:細かい塗布ムラがある。
△:樹脂成分と溶剤成分とが分離している。
×:樹脂成分が析出している。
【0042】
<接着性樹脂組成物の製造>
下記表1、2に示す(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(S)成分を混合し、実施例1~8、比較例1~5の接着性樹脂組成物を得た。
溶剤成分である(S)成分は重量比でトルエンを80、メチルシクロヘキサン10、メチルエチルケトンを10の割合とした溶液を用い、固形分量が10%となるように調製を行った。 なお、比較例4に関しては、(S)成分を用いずに、溶融混練によって接着性樹脂組成物を得た。
下記表1~2中、[ ]内に示す数値は配合量(質量部)である。各接着性樹脂組成物の固形分濃度は10質量%とした。
比較例4は各成分を溶融混練してペレットを製造し、得られたペレットを押し出し成形することにより接着層を製造したが、著しく平面性が悪く評価が出来なかった。
比較例5は各成分を混合した際に、(A)成分が高分子量であるため溶解せず、接着剤組成物を製造することができなかった。
【0043】
【0044】
【0045】
上記表中、各記号は以下の材料を意味する。
・(A)-1:マレイン酸変性ポリプロピレン-1、分子量:90000、酸付加:1.1質量%、融点:80℃。
・(A)-2:マレイン酸変性ポリプロピレン-2、分子量:110000、酸付加:0.5質量%、融点:90℃。
・(A)-3:マレイン酸変性ポリプロピレン-3、分子量:30000、酸付加:2.0質量%、融点:55℃。
・(A)-4:マレイン酸変性ポリプロピレン-4、分子量:190000、酸付加:1.1質量%、融点:130℃。
・(B)-1::特殊ノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200、軟化点70℃)、分子内にビスフェノールA骨格を含み、ノボラック構造のエポキシ基を含む。
・(B)-2:フェノキシ樹脂、分子内にビスフェノールA骨格を含み、分子末端にエポキシ基を含む。
・(C)-1:アミン変性水添スチレン系熱可塑性エラストマー。
・(C)-2:ナイロン樹脂(末端置換基としてアミノ基を有する)。
・(C)-3:メラミン樹脂(末端置換基としてアミノ基を有する)。
・(C)-4:尿素樹脂(末端置換基としてアミノ基を有する)。
・(C)-5:ポリアミン樹脂(末端置換基としてアミノ基を有する)。
・(C)-6:N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン(分子量:360)。
【0046】
上記結果に示したとおり、実施例1~8の接着性樹脂組成物を用いた場合には、いずれも耐酸性が良好であり、接着性と均一塗工性も良好であった。
これに対し、(C)成分を添加しなかった比較例1は耐酸性が低い結果であった。(B)成分を添加しない比較例2は、接着性が良好ではなく、耐酸性も低かった。また、分子の末端にアミノ基を有さないアミン成分を添加した比較例3は、耐酸性が低い結果であった。