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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022118523
(43)【公開日】2022-08-15
(54)【発明の名称】有機EL素子及び有機EL照明装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/02 20060101AFI20220805BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220805BHJP
   H05B 33/04 20060101ALI20220805BHJP
【FI】
H05B33/02
H05B33/14 A
H05B33/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021015098
(22)【出願日】2021-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】304036754
【氏名又は名称】国立大学法人山形大学
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100129148
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 淳也
(72)【発明者】
【氏名】古川 忠宏
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 博司
(72)【発明者】
【氏名】中塚 淳
【テーマコード(参考)】
3K107
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB02
3K107CC41
3K107DD12
3K107EE49
3K107EE61
3K107FF15
(57)【要約】
【課題】有機EL素子に使用されるガラス基板の損傷を防止する。
【解決手段】有機EL素子1は、ガラス基板3と、ガラス基板3上に設けられた透明な第一電極層4と、第一電極層4上に設けられた有機層5と、有機層5上に設けられた第二電極層6と、第一電極層4、有機層5、及び、第二電極層6を封止する封止層7と、封止層7上に設けられた金属箔2と、を備える。金属箔2は、ガラス基板3よりも大きな面積を有する。金属箔2の端面2cは、ガラス基板3の端面3cよりも外方に突出している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板と、
前記ガラス基板上に設けられた透明な第一電極層と、
前記第一電極層上に設けられた有機層と、
前記有機層上に設けられた第二電極層と、
前記第一電極層、前記有機層、及び、前記第二電極層を封止する封止層と、
前記封止層上に設けられた金属箔と、を備える、有機EL素子であって、
前記金属箔は、前記ガラス基板よりも大きな面積を有しており、
前記金属箔の端面は、前記ガラス基板の端面よりも外方に突出していることを特徴とする有機EL素子。
【請求項2】
前記ガラス基板は、厚さ300μm以下のガラスであることを特徴とする請求項1に記載の有機EL素子。
【請求項3】
前記金属箔は、厚さ100μm以下のステンレス箔であることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機EL素子。
【請求項4】
前記封止層は、封止レジンであることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の有機EL素子。
【請求項5】
前記金属箔の前記端面が前記ガラス基板の前記端面から外方に突出する長さは、0.2mmを超え、10mm以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の有機EL素子。
【請求項6】
前記封止層の端面は、前記ガラス基板の前記端面よりも外方に突出していることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の有機EL素子。
【請求項7】
前記封止層の前記端面が前記ガラス基板の前記端面から外方に突出する長さは、0mmを超え、0.3mm以下であることを特徴とする請求項6に記載の有機EL素子。
【請求項8】
前記第一電極層に電気配線を接続するための第一接続部と、
前記第二電極層に電気配線を接続するための第二接続部と、を備え、
前記第一接続部及び前記第二接続部は、前記金属箔に形成される第一切欠き部又は第一の孔を備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の有機EL素子。
【請求項9】
前記第一接続部及び前記第二接続部は、前記封止層に形成される第二切欠き部又は第二の孔を備え、
前記第二切欠き部の縁部又は前記第二の孔の縁部は、前記第一切欠き部の縁部又は前記第一の孔の縁部よりも突出していることを特徴とする請求項8に記載の有機EL素子。
【請求項10】
前記第二切欠き部の前記縁部又は前記第二の孔の前記縁部が、前記第一切欠き部の前記縁部又は前記第一の孔の前記縁部から突出する長さは、0.1mm以上、1.0mm以下であることを特徴とする請求項9に記載の有機EL素子。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の有機EL素子を備えることを特徴とする有機EL照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL素子、及び有機EL素子を備える有機EL照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)は、一対の電極層とその間に配置される有機化合物層とを有する発光素子である。有機EL素子は、面発光特性、軽量、視認性の他、フレキシブル性にも優れることから、近年では有機EL素子によるフレキシブルパネルを備えたディスプレイや照明装置の実用化が進められている。
【0003】
例えば特許文献1には、透光性基板上に設けられた透光性電極層を含む一対の電極層と、一対の電極層間に挟持された、発光層を含む少なくとも一層の有機層と、透光性電極層上にその一部に接触して設けられた補助電極と、を備えてなる有機EL素子が開示されている。
【0004】
この有機EL素子に係る透光性基板としては、例えば透明なガラス基板が好適に使用される。有機EL素子を備えるディスプレイや照明装置のフレキシブル性を考慮する場合、ガラス基板の厚さを可能な限り薄くすることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-91667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
薄板状のガラス基板を使用して従来の有機EL素子を構成した場合、例えば有機EL素子を照明装置等に組み付ける工程において、そのハンドリングに注意を要する。すなわち、有機EL素子の端部が他の部品等の物体に接触すると、ガラス基板の端部がこの物体に接触することとなる。この場合において、ガラス基板の端部に強い衝撃が加わると、この端部にクラックが発生し、ガラス基板の損傷を招くおそれがあった。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、有機EL素子に使用されるガラス基板の損傷を防止することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、ガラス基板と、前記ガラス基板上に設けられた透明な第一電極層と、前記第一電極層上に設けられた有機層と、前記有機層上に設けられた第二電極層と、前記第一電極層、前記有機層、及び、前記第二電極層を封止する封止層と、前記封止層上に設けられた金属箔と、を備える、有機EL素子であって、前記金属箔は、前記ガラス基板よりも大きな面積を有しており、前記金属箔の端面は、前記ガラス基板の端面よりも外方に突出していることを特徴とする。
【0009】
かかる構成によれば、金属箔の端面をガラス基板の端面よりも外方に突出させることで、ガラス基板の端面を好適に保護することが可能となる。すなわち、有機EL素子の側方から物体が有機EL素子に衝突したとしても、先に金属箔の端面にこの物体が衝突することとなる。したがって、ガラス基板の端面に物体が衝突することを回避することができる。よって、ガラス基板における端面の破損を防止することが可能となる。
【0010】
前記ガラス基板は、厚さ300μm以下のガラスであってもよい。これにより、ガラス基板の破損を防止し、かつ有機EL素子のフレキシブル性を好適に確保することができる。
【0011】
前記金属箔は、厚さ100μm以下のステンレス箔であってもよい。これにより、金属箔における錆の発生を防止でき、かつ、有機EL素子を曲げたとしても、金属箔に曲げ癖が残存することがなく、元の平板状に戻すことができる。
【0012】
前記封止層は、封止レジンであってもよい。このように、封止層を封止レジンとすることで、有機層の封止を好適に行いつつ、金属箔を容易に封止層の上に接着することができる。
【0013】
前記金属箔の前記端面が前記ガラス基板の前記端面から外方に突出する長さは、0.2mmを超え、10mm以下であってもよい。これにより、金属箔は、ガラス基板の端面を好適に保護することができる。
【0014】
また、前記封止層の端面は、前記ガラス基板の前記端面よりも外方に突出してもよい。このように、封止層の端面をガラス基板の端面から突出させることで、封止層の端面によっても、ガラス基板の端面を保護することができる。
【0015】
前記封止層の前記端面が前記ガラス基板の前記端面から突出する長さは、0mmを超え、0.3mm以下であってもよい。これにより、封止層は、ガラス基板の端面を好適に保護することができる。また、封止層の使用量を好適に設定することができる。
【0016】
また、有機EL素子は、前記第一電極層に電気配線を接続するための第一接続部と、前記第二電極層に電気配線を接続するための第二接続部と、を備え、前記第一接続部及び前記第二接続部は、前記金属箔に形成される第一切欠き部又は第一の孔を備えてもよい。このように、金属箔に第一切欠き部又は第一の孔を形成することで、各電極層に対して電気配線を容易に接続することができる。
【0017】
前記第一接続部及び前記第二接続部は、前記封止層に形成される第二切欠き部又は第二の孔を備え、前記第二切欠き部の縁部又は前記第二の孔の縁部は、前記第一切欠き部の縁部又は前記第一の孔の縁部よりも突出してもよい。これにより、金属箔とガラス基板との接触によるガラス基板の破損を回避することができる。加えて、電極層と金属箔とが短絡することを防止することができる。
【0018】
前記第二切欠き部の前記縁部又は前記第二の孔の前記縁部が、前記第一切欠き部の前記縁部又は前記第一の孔の前記縁部から突出する長さは、0.1mm以上、1.0mm以下であってもよい。
【0019】
かかる構成によれば、第一切欠き部又は第一の孔と、第二切欠き部又は第二の孔とが重なる開口範囲を好適に確保することができる。したがって、この開口範囲内において、各電極層に電気配線を接続するための空間を確保することができる。
【0020】
本発明に係る有機EL照明装置は、上記構成の有機EL素子を備えることで、ガラス基板の破損を防止するとともに、フレキシブル性に優れたものとなる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、有機EL素子に使用されるガラス基板の損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第一実施形態に係る有機EL素子を概念的に示す断面図である。
図2】有機EL素子の平面図である。
図3】有機EL素子の第一接続部を示す平面図である。
図4】有機EL素子の第二接続部を示す平面図である。
図5】有機EL素子の製造方法の一工程を示す側面図である。
図6】第二実施形態に係る有機EL素子の平面図である。
図7】有機EL素子の第一接続部を示す平面図である。
図8】有機EL素子の第二接続部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。図1乃至図5は、本発明に係る有機EL素子の第一実施形態を示す。
【0024】
図1及び図2に示すように、有機EL素子1は、金属箔2と、透明なガラス基板3と、ガラス基板3上に設けられた透明な第一電極層4と、第一電極層4上に設けられた有機層5と、有機層5上に設けられた第二電極層6と、第一電極層4、有機層5、及び、第二電極層6を封止する封止層7と、第一電極層4及び第二電極層6に電気配線8を接続するための接続部9,10と、を主に備える。
【0025】
金属箔2は、矩形状に構成されるが、この形状に限定されるものではない。金属箔2は、封止層7に接触する第一主面2aと、第一主面2aとは反対側に位置する第二主面2bと、金属箔2の各辺を構成する端面2cと、を有する。金属箔2の平滑性と絶縁性を確保するために、第一主面2a及び第二主面2bに絶縁被膜を形成してもよい。
【0026】
金属箔2の厚さは、100μm以下であり、好ましくは10μm以上、100μm以下であり、より好ましく30μm以上、80μm以下である。
【0027】
金属箔2の端面2cは、接続部9,10の一部を構成する切欠き部11を有する。金属箔2には、その各辺に一個ずつ、合計四個の切欠き部11が形成されている。切欠き部11の詳細については後述する。
【0028】
金属箔2は、例えばステンレス鋼により構成される箔(ステンレス箔)である。ステンレス鋼は、オーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系に分類される。オーステナイト系ステンレスとしては、例えばSUS301、SUS304、SUS316、SUS310、SUS309、SUS317、SUS321、SUS347等を用いることができる。フェライト系ステンレスとしては、例えばSUS409、SUS430、SUS405、SUS410、SUS436、SUS444等を用いることができる。マルテンサイト系ステンレスとしては、例えばSUS403、SUS440、SUS420、SUS410等を用いることができる。
【0029】
金属箔2に用いられる材料は、ステンレス鋼に限らず、アルミニウムその他の金属であってもよい。
【0030】
ガラス基板3は、矩形状に構成されるが、この形状に限定されるものではない。ガラス基板3は、第一電極層4及び封止層7に接触する第一主面3aと、第一主面3aの反対側に位置する第二主面3bと、ガラス基板3の各辺を構成する端面3cと、を有する。
【0031】
ガラス基板3は、厚さが300μm以下のガラスである。ガラス基板3の厚さは、好ましくは10μm以上、300μm以下であり、より好ましくは30μm以上、100μm以下である。
【0032】
ガラス基板3の材料としては、特に限定されず、例えば、ケイ酸塩ガラス、シリカガラス、ホウ珪酸ガラス、ソーダライムガラス、アルミノ珪酸塩ガラス、化学強化ガラス、無アルカリガラス等を用いることができる。ガラス基板3の材料としては、好ましくはホウ珪酸ガラス、ソーダライムガラス、アルミノ珪酸塩ガラス、化学強化ガラス、無アルカリガラスを用いることができ、より好ましくは無アルカリガラスを用いることができる。なお、無アルカリガラスとは、アルカリ成分(アルカリ金属酸化物)が実質的に含まれていないガラスのことをいう。具体的には、アルカリ成分の重量比が3000ppm以下のガラスのことである。アルカリ成分の重量比は、好ましくは1000ppm以下であり、より好ましくは500ppm以下であり、さらに好ましくは300ppm以下である。
【0033】
ガラス基板3は、例えば、公知のフロート法、ロールアウト法、スロットダウンドロー法、リドロー法等により成形して得ることができる。なかでも、オーバーフローダウンドロー法によって成形されたガラスリボンを所定の寸法に切断することで、ガラス基板3を製造することが望ましい。
【0034】
金属箔2の面積(第一主面2a又は第二主面2bの面積)は、ガラス基板3の面積(第一主面3a又は第二主面3bの面積)よりも大きい。このため、金属箔2の端面2cは、ガラス基板3の端面3cよりも外方(側方)に突出している。金属箔2の端面2cがガラス基板3の端面3cから外方に突出する長さL1は、0.2mmを超え、10mm以下とされることが好ましく、より好ましくは0.2mmを超え、5mm以下である。
【0035】
第一電極層4は、例えば陽極層として構成される。第一電極層4は、光透過率の高い材料からなることが好ましい。第一電極層4は、例えば、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化インジウムスズ(ITO)等の薄膜層として形成することができる。
【0036】
第一電極層4の厚さは、特に限定されないが、好ましくは30nm以上、500nm以下、より好ましくは50nm以上、300nm以下、さらに好ましくは50nm以上、200nm以下である。
【0037】
有機層5は発光層を含み、公知の構造を適用することができる。すなわち、有機層5は、発光層以外に、正孔輸送層や電子輸送層、正孔注入層、電子注入層等が積層された構造とすることができる。これらの各層の構成材料は、特に限定されるものではなく、公知のものから適宜選択して用いることができ、低分子系又は高分子系のいずれであってもよい。
【0038】
有機層5の各構成層の厚さは、各層同士の適応性や求められる全体の層厚さ等を考慮して、適宜状況に応じて定められる。例えば、各構成層の厚さは、例えば0.5nm以上、1μm以下の範囲内で適宜設定される。
【0039】
第二電極層6は、例えば陰極層として構成される。図2に示すように、第二電極層6は、第一の層6aと、第二の層6bとを有する。第一の層6aと第二の層6bは、その一部同士が相互に重なるように積層されている。第一の層6aは、外部への引き出し電極部分であり、第一電極層4と同一材料で同時に形成されていても良い。一方、第一の層6aは、第二の層6bと同一材料で形成されていても良く、第一の層6aと第二の層6bとが連続的な形状で形成されていても良い。第二の層6bは、例えば、アルミニウム、銀等の薄膜層として形成することができる。
【0040】
第二電極層6の第二の層6bの厚さは、特に限定されないが、好ましくは30nm以上、500nm以下、より好ましくは50nm以上、300nm以下、さらに好ましくは50nm以上、200nm以下である。
【0041】
封止層7は、例えば封止レジンにより構成される。封止層7は、例えばシート状又はフィルム状に構成されるが、この形態に限定されない。封止層7は、封止レジンを含む粘着テープにより構成されてもよい。
【0042】
図2に示すように、封止層7は、矩形状に構成されるが、この形状に限定されるものではない。封止層7は、金属箔2の第一主面2aに接触する第一主面7aと、ガラス基板3の第一主面3aに接触する第二主面7bと、封止層7の各辺を構成する端面7cと、を有する。
【0043】
封止層7の厚さは、好ましくは20μm以上、200μm以下であり、より好ましくは25μm以上、50μm以下である。
【0044】
封止層7の端面7cは、その各辺の中途部に、接続部9,10の一部を構成する切欠き部12を有する。封止層7には、その各辺に一個ずつ、合計四個の切欠き部12が形成されている。切欠き部12の詳細については後述する。
【0045】
封止層7の面積(第一主面7a又は第二主面7bの面積)は、ガラス基板3の面積よりも大きく、金属箔2の面積よりも小さい。封止層7の端面7cは、ガラス基板3の端面3cよりも外方(側方)に突出している。また、封止層7の端面7cは、金属箔2の端面2cよりも内方側に位置している。換言すると、金属箔2の端面2cは、封止層7の端面7cよりも外方に突出している。
【0046】
封止層7の端面7cがガラス基板3の端面3cから外方に突出する長さL2は、0mmを超え、0.3mm以下であることが好ましい。金属箔2の端面2cが封止層7の端面7cから突出する長さL3は、0.2mm以上、5mm以下であることが好ましい。
【0047】
接続部9,10は、第一電極層4(陽極層)と電気配線8とを接続するための第一接続部9と、第二電極層6(陰極層)と電気配線8とを接続するための第二接続部10と、を含む。
【0048】
各接続部9,10は、金属箔2の一部を切除してなる上記の切欠き部(以下「第一切欠き部」という)11と、この第一切欠き部11に対応するように、封止層7の一部を切除してなる上記の切欠き部(以下「第二切欠き部」という)12と、を含む。
【0049】
図3及び図4に示すように、第一切欠き部11は、第二切欠き部12よりも大きい。ガラス基板3の端面3cからの第一切欠き部11の深さ(ガラス基板3の端面3cから第一切欠き部11の底部までの距離)D1,D3は、例えば2mm以上、10mm以下であることが好ましい。第一切欠き部11は、金属箔2の各辺(端面2c)から内側に向かって離れるにつれて徐々にその幅が狭くなるように構成される。第一切欠き部11の最大幅W1,W3は、3mm以上、8mm以下であることが好ましい。第一切欠き部11の縁部は、平面視において曲線状(例えば凹曲線状)に構成される。
【0050】
第二切欠き部12の深さ(封止層7の端面7cから第二切欠き部12の底部までの距離)D2,D4は、0.5mm以上、2mm以下であることが好ましい。第二切欠き部12は、封止層7の各辺(端面7c)から内側に向かって離れるにつれて徐々にその幅が狭くなるように構成される。第二切欠き部12の最大幅W2,W4は、1mm以上、10mm以下であることが好ましい。第二切欠き部12の縁部は、平面視において曲線状(例えば凹曲線状)に構成される。
【0051】
第二切欠き部12の縁部は、第一切欠き部11の縁部よりも突出している。換言すると、第二切欠き部12の縁部は、その全体が金属箔2の第一主面2aに覆われることなく、第一切欠き部11の開口範囲内に位置している。第一接続部9及び第二接続部10に係る第二切欠き部12の縁部が第一切欠き部11の縁部から突出する長さL4,L5は、0.1mm以上、1.0mm以下であることが好ましい。
【0052】
以下、上記構成の有機EL素子1を製造する方法について説明する。
【0053】
本方法は、ガラス基板3に第一電極層4、有機層5及び第二電極層6を形成する成膜工程と、金属箔2とガラス基板3とを接合する接合工程と、各接続部9,10において電気配線8を各電極層4,6に接続する接続工程と、を主に備える。
【0054】
成膜工程では、ガラス基板3の第一主面3aに対して、第一電極層4、有機層5、及び第二電極層6が、この順番にて積層される。
【0055】
上記各層4~6の形成方法は、蒸着法、スパッタリング法等などのドライプロセスでもよいが、可能な場合には、スピンコート法、インクジェット法、キャスティング法、ディップコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法、ナノパーティクル分散液を用いる方法等のウェットプロセスを適用すれば、より簡便で効率的に積層することができるため好ましい。
【0056】
接合工程では、第一切欠き部11が形成されている金属箔2に対して、封止層7としての粘着テープが貼り付けられる。粘着テープとしては、例えばテサテープ株式会社製のバリアテープが好適に使用される。この場合において、金属箔2の端面2cが封止層7の端面7cから外方に突出するように、封止層(粘着テープ)7の第一主面7aを金属箔2の第一主面2aに接触させる。
【0057】
封止層7の第二切欠き部12は、金属箔2に貼り付けられる前に、粘着テープの一部を切除することによって形成され得る。あるいは、第二切欠き部12は、粘着テープを金属箔2に貼り付けた後に、粘着テープの一部を切除することによって形成されてもよい。
【0058】
図5に示すように、接合工程において、封止層7上に設けられた金属箔2は、その第一主面2aをガラス基板3の第一主面3aに対向させた状態で、ガラス基板3に重ねられる。封止層7の第二主面7bがガラス基板3の第一主面3aに接触することで、金属箔2とガラス基板3とが粘着テープによって接合(接着)されてなる接合体を得る。
【0059】
この接合体において、第一接続部9の第一切欠き部11及び第二切欠き部12を通じて、第一電極層4の一部が露出した状態となる。また、第二接続部10の第一切欠き部11及び第二切欠き部12を通じて、第二電極層6に係る第一の層6aの一部が露出した状態となる。
【0060】
接続工程では、各接続部9,10において、電気配線8が各電極層4,6に接続される。電気配線8は、各接続部9,10において露出している、第一電極層4の一部及び第二電極層6(第一の層6a)の一部に接続される。
【0061】
これに限らず、第一電極層4の一部及び第二電極層6(第一の層6a)の一部には電極パッドが形成されてもよい。電気配線8は、第一切欠き部11及び第二切欠き部12を介して、この電極パッドに接続されてもよい。接続が完了すると、絶縁材料からなる封止材によって、各接続部9,10に係る第一切欠き部11及び第二切欠き部12が気密に封止される。
【0062】
以上により、フレキシブル性を有する有機EL素子1が完成する。この有機EL素子1は、電気配線8を電源に接続することにより、有機EL照明装置や有機ELディスプレイとして使用することができる。
【0063】
以上説明した本実施形態に係る有機EL素子1によれば、ガラス基板3よりも大きな面積を有する金属箔2によってガラス基板3の端面3cを保護することができる。すなわち、金属箔2の端面2cをガラス基板3の端面3cから外方に突出させることで、有機EL素子1の取り扱い時において、部品や工具等の物体がガラス基板3の端面3cに接触することを防止することが可能となる。これにより、ガラス基板3の破損を効果的に防止することができる。
【0064】
図6乃至図8は、有機EL素子の第二実施形態を示す。本実施形態では、有機EL素子1における接続部9,10の構成が第一実施形態と異なる。
【0065】
第一接続部9及び第二接続部10は、第一実施形態における第一切欠き部11及び第二切欠き部12に替えて、金属箔2を貫通する第一の孔13と、封止層7を貫通する第二の孔14とを有する。各孔13,14は、円形に構成されるが、この形状に限定されるものではない。
【0066】
第一の孔13の直径(又は最大寸法)は、第二の孔14の直径(又は最大寸法)よりも大きい。第一の孔13と第二の孔14は、同心状に配されている。第一の孔13の直径は、3mm以上、10mm以下とされることが好ましい。第二の孔14の直径は、2mm以上、8mm以下とされることが好ましい。
【0067】
第二の孔14の縁部は、第一の孔13の縁部よりも内側に突出している。すなわち、第二の孔14の縁部は、その全体が第一の孔13の開口範囲内に位置している。第二の孔14の縁部が、第一の孔13の縁部から突出する長さL6,L7は、0.1mm以上、1.0mm以下であることが好ましい。
【0068】
本実施形態に係る有機EL素子1は、第一実施形態と同様に、成膜工程、接合工程及び接続工程によって製造される。接続工程において、電気配線8が各電極層4,6に接続されると、第一の孔13及び第二の孔は、絶縁材料によって気密に封止される。
【0069】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0070】
上記の第一実施形態では、接続部9,10を切欠き部11,12により構成した例を示し、第二実施形態では、接続部9,10を孔13,14により構成した例を示したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。有機EL素子1における複数の接続部9,10は、切欠き部11,12と孔13,14とを適宜組み合わせることによって構成されてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 有機EL素子
2 金属箔
2c 金属箔の端面
3 ガラス基板
3c ガラス基板の端面
4 第一電極層
5 有機層
6 第二電極層
7 封止層
9 第一接続部
10 第二接続部
11 第一切欠き部
12 第二切欠き部
13 第一の孔
14 第二の孔
L1 金属箔の端面がガラス基板の端面から突出する長さ
L2 封止層の端面がガラス基板の端面から突出する長さ
L4 第二切欠き部の縁部が第一切欠き部の縁部から突出する長さ
L5 第二切欠き部の縁部が第一切欠き部の縁部から突出する長さ
L6 第二の孔の縁部が第一の孔の縁部から突出する長さ
L7 第二の孔の縁部が第一の孔の縁部から突出する長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8