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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022118524
(43)【公開日】2022-08-15
(54)【発明の名称】有機EL照明素子
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/02 20060101AFI20220805BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220805BHJP
   H05B 33/28 20060101ALI20220805BHJP
   H05B 33/04 20060101ALI20220805BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20220805BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20220805BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20220805BHJP
   B60Q 3/20 20170101ALN20220805BHJP
   F21Y 115/15 20160101ALN20220805BHJP
【FI】
H05B33/02
H05B33/14 A
H05B33/28
H05B33/04
H05B33/12 B
H05B33/22 Z
H05B33/22 B
H05B33/22 D
F21S2/00 670
B60Q3/20
F21Y115:15
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021015099
(22)【出願日】2021-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】304036754
【氏名又は名称】国立大学法人山形大学
(71)【出願人】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100129148
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 淳也
(72)【発明者】
【氏名】古川 忠宏
(72)【発明者】
【氏名】中塚 淳
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 博司
【テーマコード(参考)】
3K040
3K107
【Fターム(参考)】
3K040AA02
3K040CA04
3K107AA01
3K107BB02
3K107BB06
3K107BB08
3K107CC23
3K107DD04
3K107DD12
3K107DD17
3K107DD22
3K107DD27
3K107DD72
3K107DD75
3K107DD89
3K107DD91
3K107EE45
3K107EE61
3K107FF06
3K107FF15
(57)【要約】
【課題】有機EL照明素子の意匠性を向上させる。
【解決手段】有機EL照明素子1は、透明基板2と、透明な第一電極層3と、発光層を含む透明な有機層5と、透過性又は半透過性を有する第二電極層6と、透明な封止層7と、装飾部材8と、を備える。装飾部材8は、透明基板2、第一電極層3、有機層5及び第二電極層6に重なるように配置される装飾面8aを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板と、
前記透明基板上に設けられた透明な第一電極層と、
前記第一電極層上に設けられるとともに発光層を含む透明な有機層と、
前記有機層上に設けられるとともに透過性又は半透過性を有する第二電極層と、
前記第一電極層、前記有機層、及び前記第二電極層を封止する透明な封止層と、
前記封止層上に設けられた装飾部材と、を備える、有機EL照明素子であって、
前記装飾部材は、前記透明基板、前記第一電極層、前記有機層及び前記第二電極層に重なるように配置された装飾面を有することを特徴とする有機EL照明素子。
【請求項2】
前記有機層に重なるように前記第一電極層上に設けられた絶縁層を備えることを特徴とする請求項1に記載の有機EL照明素子。
【請求項3】
前記装飾部材は、金属箔であることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機EL照明素子。
【請求項4】
前記金属箔の前記装飾面の拡散反射率は、20%以上であることを特徴とする請求項3に記載の有機EL照明素子。
【請求項5】
前記金属箔は、厚さ10μm以上100μm以下のステンレス箔であることを特徴とする請求項3又は4に記載の有機EL照明素子。
【請求項6】
前記透明基板は、厚さ300μm以下のガラスであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の有機EL照明素子。
【請求項7】
ホール注入層、ホール輸送層、電子輸送層、及び電子注入層のうち、少なくとも一つの層が前記発光層に積層されることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の有機EL照明素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL照明素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL照明素子(有機エレクトロルミネッセンス照明素子)は、一対の電極層とその間に配置される有機化合物層とを有する発光素子である。有機EL照明素子は、面発光特性、軽量、視認性、フレキシブル性等に優れることから、近年では多様な用途及び技術範囲での製品化が推進されている。
【0003】
一例として、特許文献1には、透光性基板上に設けられた透光性電極層を含む一対の電極層と、一対の電極層間に挟持された、発光層を含む少なくとも一層の有機層と、透光性電極層上にその一部に接触して設けられた補助電極と、を備えてなる有機EL照明素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-91667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
有機EL照明素子としては、照明としての機能以外に、様々な機能が求められている。例えば、自動車の室内で使用される有機EL照明素子では、内装デザインに調和するように、意匠性が重視される。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、有機EL照明素子の意匠性を向上させることを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、透明基板と、前記透明基板上に設けられた透明な第一電極層と、前記第一電極層上に設けられるとともに発光層を含む透明な有機層と、前記有機層上に設けられるとともに透過性又は半透過性を有する第二電極層と、前記第一電極層、前記有機層、及び前記第二電極層を封止する透明な封止層と、前記封止層上に設けられた装飾部材と、を備える、有機EL照明素子であって、前記装飾部材は、前記透明基板、前記第一電極層、前記有機層及び前記第二電極層に重なるように配置された装飾面を有することを特徴とする。
【0008】
かかる構成によれば、有機EL照明素子は、有機層の発光層で発生した光を、透明基板を通じて外部に射出することができる。一方、有機EL発光素子における装飾部材の装飾面は、非発光時においてもガラス基板を通じて視認することができる。この装飾面に、金属調や木目調の装飾を施すことによって、特に非発光時における有機EL照明素子の意匠性を向上させることが可能になる。
【0009】
本発明に係る有機EL照明素子は、上記の構成に加え、前記有機層に重なるように前記第一電極層上に設けられた絶縁層を備えてもよい。
【0010】
有機層においてこの絶縁層と重なる部分では、発光層の発光が妨げられる。この絶縁層を文字や図形といった装飾を表すように第一電極層上に形成すれば、有機EL照明素子の発光時において絶縁層による文字や図形等の装飾を表示することが可能となる。
【0011】
前記装飾部材は、金属箔により構成されてもよい。ガラス基板に重なるように配置される金属箔の一方の面を装飾面とすることで、有機EL照明素子において、金属調の装飾を表示させることが可能となる。
【0012】
前記金属箔の前記装飾面の拡散反射率は、20%以上であってもよい。拡散反射率が20%未満であると、非発光時において金属箔の表面が鏡面として映り、外観を損なうため、好ましくない。
【0013】
前記金属箔は、厚さ10μm以上100μm以下のステンレス箔であってもよい。これにより、金属箔における錆の発生を防止でき、かつ、有機EL照明素子を曲げたとしても、金属箔に曲げ癖が残存することがなく、元の平板状に戻すことができる。
【0014】
前記透明基板は、厚さ300μm以下のガラスであってもよい。これにより、透明基板にガスバリア性を付与しつつ、透明基板の破損を防止し、かつ有機EL照明素子のフレキシブル性を好適に確保することができる。
【0015】
また、本発明に係る有機EL照明素子において、ホール注入層、ホール輸送層、電子輸送層、及び電子注入層のうち、少なくとも一つの層が前記発光層に積層されてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、有機EL照明素子の意匠性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第一実施形態に係る有機EL照明素子を概念的に示す断面図である。
図2】有機EL照明素子の製造方法の一工程を示す側面図である。
図3】第二実施形態に係る有機EL照明素子を概念的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。図1及び図2は、本発明に係る有機EL照明素子の第一実施形態を示す。
【0019】
図1に示すように、有機EL照明素子1は、透明基板2と、透明基板2上に設けられた透明な第一電極層3と、第一電極層3上に設けられた絶縁層4と、第一電極層3上に設けられるとともに発光層を含む透明な有機層5と、有機層5上に設けられた第二電極層6と、第一電極層3、絶縁層4、有機層5及び第二電極層6を封止する透明な封止層7と、封止層7上に設けられた装飾部材8と、を主に備える。
【0020】
透明基板2は、矩形状に構成されるが、この形状に限定されるものではない。透明基板2は、第一電極層3及び封止層7に接触する第一主面2aと、第一主面2aの反対側に位置する第二主面2bと、を有する。
【0021】
透明基板2としては、ポリエチレンテレフタレート、アクリル、ポリカーボネート等の樹脂基板や、ガラス基板等を使用することができる。透明基板2のガスバリア性の観点から、ガラス基板を使用することが好ましい。一方、透明基板2として樹脂基板を使用する場合は、樹脂基板2の主面にガスバリア処理を行うことが好ましい。本実施形態に係る透明基板2において、波長400~700nmの光の透過率は、80%以上であることが好ましい。
【0022】
透明基板2は、厚さが300μm以下の透明なガラスであることが好ましい。透明基板2としてガラスを使用する場合、その厚さは、好ましくは10μm以上、300μm以下であり、より好ましくは30μm以上、100μm以下である。
【0023】
ガラスの材料としては、特に限定されず、例えば、ケイ酸塩ガラス、シリカガラス、ホウ珪酸ガラス、ソーダライムガラス、アルミノ珪酸塩ガラス、化学強化ガラス、無アルカリガラス等を用いることができる。ガラスの材料としては、好ましくはホウ珪酸ガラス、ソーダライムガラス、アルミノ珪酸塩ガラス、化学強化ガラス、無アルカリガラスを用いることができ、より好ましくは無アルカリガラスを用いることができる。なお、無アルカリガラスとは、アルカリ成分(アルカリ金属酸化物)が実質的に含まれていないガラスのことをいう。具体的には、アルカリ成分の重量比が3000ppm以下のガラスのことである。アルカリ成分の重量比は、好ましくは1000ppm以下であり、より好ましくは500ppm以下であり、さらに好ましくは300ppm以下である。
【0024】
ガラスは、例えば、公知のフロート法、ロールアウト法、スロットダウンドロー法、リドロー法等により成形して得ることができる。なかでも、オーバーフローダウンドロー法によって成形されたガラスリボンを所定の寸法に切断することで、ガラスを製造することが望ましい。
【0025】
第一電極層3は、例えば陽極層として構成される。第一電極層3は、光透過率の高い材料からなることが好ましい。第一電極層3は、例えば、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化インジウムスズ(ITO)等の透明導電膜として形成することができる。本実施形態に係る第一電極層3において、波長400~700nmの光の平均透過率は、80%以上であることが好ましい。
【0026】
第一電極層3の厚さは、特に限定されないが、好ましくは30nm以上、500nm以下、より好ましくは50nm以上、300nm以下、さらに好ましくは50nm以上、200nm以下である。
【0027】
絶縁層4は、有機層5と一部重なるように、第一電極層3上に形成されている。絶縁層4が形成されている部位では有機層5の発光層が発光しない。このため、絶縁層4を、文字や図形、模様を表すように第一電極層3上に形成することで、有機EL照明素子1は、発光時に文字等の装飾を表示することが可能となる。絶縁層4は、例えば、二酸化珪素等の無機絶縁材料や、アクリル系樹脂やエポキシ系樹脂等の有機樹脂によって形成される。
【0028】
有機層5は、発光層の他、正孔輸送層や電子輸送層、正孔注入層及び電子注入層等が積層された構造とすることができる。この構成に限らず、有機層は、正孔輸送層や電子輸送層、正孔注入層、及び電子注入層のすくなくとも1つの層が発光層に積層された構造であってもよい。これらの各層の構成材料は、特に限定されるものではなく、低分子系又は高分子系のいずれであってもよい。
【0029】
発光層に用いられる発光材料は、正孔及び電子を利用した発光に直接又は間接に寄与し、蛍光及び/又は燐光による発光を生じる。発光層は、通常、発光層に注入された正孔及び電子を輸送する機能を有するホスト材料、及び、輸送された正孔及び電子を再結合することにより得られるエネルギーを利用して発光する機能を有するドーパント材料を含む。発光材料がホスト材料及びドーパント材料を含んでいてもよい。
【0030】
ホスト材料のうち、高分子ホスト材料としては、ポリ(9-ビニルカルバゾール)(PVK)、ポリフルオレン(PF)、ポリフェニレンビニレン(PPV)及びこれらのモノマー単位を含む共重合体等が挙げられる。低分子ホスト材料としては、4,4’-ビス(9H-カルバゾール-9-イル)ビフェニル(CBP)、ビス(2-メチル-8-キノリノレート)-4-(フェニルフェノラト)アルミニウム(BAlq)、トリス(8-キノリラート)アルミニウム(Alq3)、9,9’-(p-tert-ブチルフェニル)-1,3-ビスカルバゾール等が挙げられる。
【0031】
ドーパント材料のうち、高分子ドーパント材料としては、ポリフェニレンビオレン(PPV)、シアノポリフェニレンビニレン(CN-PPV)、ポリ(フルオレニレンエチニレン)(PFE)、ポリフルオレン(PFO)、ポリチオフェンポリマー、ポリピリジン及びこれらのモノマー単位を含む共重合体等が挙げられる。低分子ドーパント材料としては、蛍光発光材料、燐光発光材料等が挙げられる。
【0032】
蛍光発光材料としては、ナフタレン、ペリレン、ピレン、クリセン、アントラセン、クマリン、p-ビス(2-フェニルエテニル)ベンゼン、キナクリドン、クマリン、Al(C96NO)3等のアルミニウム錯体等、ルブレン、ペリミドン、ジシアノメチレン-2-メチル-6-(p-ジメチルアミノスチルリル)-4H-ピラン(DCM)、ベンゾピラン、ローダミン、ベンゾチオキサンテン、アザベンゾチオキサンテン及びこれらの誘導体等が挙げられる。
【0033】
燐光発光材料としては、トリス(2-フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy)3)、トリス(2-フェニルピリジン)ルテニウム、トリス(2-フェニルピリジン)パラジウム、ビス(2-フェニルピリジン)白金、トリス(2-フェニルピリジン)オスミウム、トリス(2-フェニルピリジン)レニウム、トリス[2-(p-トリル)ピリジン]イリジウム(Ir(mppy)3)、トリス[2-(p-トリル)ピリジン]ルテニウム、トリス[2-(p-トリル)ピリジン]パラジウム、トリス[2-(p-トリル)ピリジン]白金、トリス[2-(p-トリル)ピリジン]オスミウム、トリス[2-(p-トリル)ピリジン]レニウム、オクタエチル白金ポルフィリン、オクタフェニル白金ポルフィリン、オクタエチルパラジウムポルフィリン、オクタフェニルパラジウムポルフィリン等が挙げられる。
【0034】
正孔注入層に用いられる材料としては、銅フタロシアニン等のフタロシアニンバッファ層;酸化バナジウム等の酸化物バッファ層;アモルファスカーボンバッファ層;ポリアニリン(エメラルディン)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT-PSS)等の高分子バッファ層等が挙げられる。
【0035】
正孔輸送層に用いられる材料としては、TPD(N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(3-メチルフェニル)-1,1’-ビフェニル-4,4’ジアミン)、α-NPD(4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル)、m-MTDATA(4、4’,4’’-トリス(3-メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン)等の低分子トリフェニルアミン誘導体;ポリビニルカルバゾール;トリフェニルアミン誘導体に重合性置換基を導入して重合した高分子化合物等が挙げられる。
【0036】
電子輸送層に用いられる材料としては、Alq3、トリス(4-メチル-8-キノリノラート)アルミニウム(Almq3)、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)ベリリウム(BeBq2)、BAlq、ビス(8-キノリノラート)亜鉛(Znq)等のキノリン骨格又はベンゾキノリン骨格を有する金属錯体;ビス[2-(2’-ヒドロキシフェニル)ベンズオキサゾラート]亜鉛(Zn(BOX)2)等のベンズオキサゾリン骨格を有する金属錯体;ビス[2-(2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラート]亜鉛(Zn(BTZ)2)ベンゾチアゾリン骨格を有する金属錯体;2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(PBD)、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール(TAZ)、1,3-ビス[5-(p-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン(OXD-7)、9-[4-(5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)フェニル]カルバゾール(CO11)、2,2’,2’’-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス(1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール)(TPBI)、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール(mDBTBIm-II)等のポリアゾール誘導体;ベンゾイミダゾール誘導体;キノリン誘導体;ペリレン誘導体;ピリジン誘導体;ピリミジン誘導体;キノキサリン誘導体;ジフェニルキノン誘導体;ニトロ置換フルオレン誘導体等が挙げられる。
【0037】
電子注入層に用いられる材料としては、ストロンチウム、アルミニウム等の金属バッファ層;フッ化リチウム等のアルカリ金属化合物バッファ層;フッ化マグネシウム等のアルカリ土類金属化合物バッファ層;酸化アルミニウム等の酸化物バッファ層等が挙げられる。
【0038】
有機層5の各構成層の厚さは、各層同士の適応性や求められる全体の層厚さ等を考慮して、適宜状況に応じて定められる。例えば、各構成層の厚さは、例えば0.5nm以上、1μm以下の範囲内で適宜設定される。
【0039】
第二電極層6は、例えば陰極層として構成される。第二電極層6は、銀、銅、又はアルミニウム等の金属による薄膜層として形成することができる。第二電極層6は、透過性又は半透過性を有する。本発明において、「透過性」とは、波長400~700nmの光の透過率が70%以上であることをいう。また、「半透過性」とは、波長400~700nmの光の透過率が25%以上70%未満であることをいう。
【0040】
第二電極層6の厚さは、特に限定されないが、好ましくは5nm以上、60nm以下、より好ましくは8nm以上、50nm以下、さらに好ましくは10nm以上、30nm以下である。
【0041】
封止層7は、例えば封止レジンにより構成される。封止層7は、例えばシート状又はフィルム状に構成されるが、この形態に限定されない。封止層7は、封止レジンを含む粘着テープにより構成されてもよい。本実施形態に係る封止層7において、波長400~800nmの光の透過率は、80%以上であることが好ましい。
【0042】
封止層7は、透明基板2の形状に対応するように、例えば矩形状に構成されるが、この形状に限定されるものではない。封止層7は、装飾部材8に接触する第一主面7aと、透明基板2の第一主面2aに接触する第二主面7bと、を有する。
【0043】
封止層7の厚さは、好ましくは20μm以上、200μm以下であり、より好ましくは25μm以上、50μm以下である。
【0044】
装飾部材8は、例えば金属箔により構成される。装飾部材8は、矩形状に構成されるが、この形状に限定されるものではない。装飾部材8は、封止層7の第一主面7aに接触する第一主面8aと、第一主面8aとは反対側に位置する第二主面8bと、を有する。
【0045】
装飾部材の第一主面8aは、透明基板2、第一電極層3、絶縁層4、有機層5、第二電極層6及び封止層7に重なるように配置される。この第一主面8aは、非発光時の有機EL照明素子1において、透明基板2の第二主面2b側に金属調の装飾が現れるようにするための装飾面として機能する。金属調の装飾が現れるようにするために、第一主面8aの拡散反射率は、20%以上であることが好ましい。拡散反射率が20%未満の場合には、非発光時において第一主面8aが鏡面としてガラス基板2に映るため、好ましくない。拡散反射率は、例えば島津製作所製の分光光度計UV-3600Plus(積分球装置ISR-603を含む)によって測定することができる。
【0046】
装飾部材8の厚さは、100μm以下であり、好ましくは10μm以上、100μm以下であり、より好ましく30μm以上、80μm以下である。また、第一主面8aの表面粗さ(算術平均粗さ)Raは、0.03μm以上、0.6μm以下とされることが好ましい。
【0047】
金属箔としては、例えばステンレス鋼により構成されるステンレス箔を用いることができる。ステンレス鋼は、オーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系に分類される。オーステナイト系ステンレスとしては、例えばSUS301、SUS304、SUS316、SUS310、SUS309、SUS317、SUS321、SUS347等を用いることができる。フェライト系ステンレスとしては、例えばSUS409、SUS430、SUS405、SUS410、SUS436、SUS444等を用いることができる。マルテンサイト系ステンレスとしては、例えばSUS403、SUS440、SUS420、SUS410等を用いることができる。
【0048】
装飾部材8に用いられる材料は、ステンレス鋼に限らず、アルミニウムその他の金属であってもよい。
【0049】
以下、上記構成の有機EL照明素子1を製造する方法について説明する。本方法は、透明基板2に第一電極層3、絶縁層4、有機層5及び第二電極層6を形成する成膜工程と、装飾部材8と透明基板2とを接合する接合工程と、を主に備える。
【0050】
成膜工程では、透明基板2の第一主面2aに対して、第一電極層3、絶縁層4、有機層5、及び第二電極層6が、この順番にて積層される。
【0051】
上記各層3~6の形成方法は、蒸着法、スパッタリング法等などのドライプロセスでもよいが、可能な場合には、スピンコート法、インクジェット法、キャスティング法、ディップコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法、ナノパーティクル分散液を用いる方法等のウェットプロセスを適用すれば、より簡便で効率的に積層することができるため好ましい。
【0052】
接合工程では、装飾部材8に対して、封止層7としての粘着テープが貼り付けられる。粘着テープとしては、例えばテサテープ株式会社製のバリアテープが好適に使用される。この場合において、封止層(粘着テープ)7の第一主面7aを装飾部材8の第一主面8aに接触させる。
【0053】
図2に示すように、接合工程において、封止層7上に設けられた装飾部材8は、その第一主面8aを透明基板2の第一主面2aに対向させた状態で、透明基板2、第一電極層3、絶縁層4、有機層5及び第二電極層6に重ねられる。封止層7の第二主面7bが透明基板2の第一主面2aに接触することで、装飾部材8と透明基板2とが粘着テープによって接合(接着)されてなる接合体として有機EL照明素子1を得る。
【0054】
以上説明した本実施形態に係る有機EL照明素子1によれば、透明基板2、第一電極層3、有機層5及び封止層7を透明に構成し、かつ透過性又は半透過性を有する第二電極層6を採用することにより、装飾部材8の第一主面8a(装飾面)における色調(金属色調)を透明基板2の第二主面2b側に表示させることができる。この有機EL照明素子1を例えば自動車の室内に使用することで、その周囲の装飾と調和し、高級感を伴う装飾を実現することが可能となる。
【0055】
図3は、有機EL照明素子の第二実施形態を示す。本実施形態では、有機EL照明素子における装飾部材の構成が第一実施形態と異なる。
【0056】
装飾部材8は、第一装飾部材8Aと、第二装飾部材8Bとを含む。第一装飾部材8Aは、透明な基板、例えばガラス基板により構成される。本実施形態に係る第一装飾部材8Aにおいて、波長400~700nmの光の透過率は、80%以上であることが好ましい。第二装飾部材8Bは、金属箔以外の材料、例えば、樹脂フィルム、紙、皮、木材等の種々の化粧部材により構成される。
【0057】
第一装飾部材8Aは、封止層7の第一主面7aに接触する第一主面8Aaと、第二装飾部材8Bに接触する第二主面8Abとを有する。第二装飾部材8Bは、第一装飾部材8Aの第二主面8Abに接触する第一主面8Baと、第一主面8Baの反対側に位置する第二主面8Bbとを有する。第二装飾部材8Bの第一主面8Baは、有機EL照明素子1の透明基板2側に装飾を表示させるための装飾面となっている。装飾面は、金属色調、木目色調その他の各種色調を呈するように構成されている。
【0058】
本実施形態に係る有機EL照明素子1を製造するには、第一実施形態と同様に、透明基板2に第一電極層3、絶縁層4、有機層5及び第二電極層6を形成する(成膜工程)。また、第一装飾部材8Aの第一主面8Aaに、封止層7としての粘着テープを貼り付ける。さらに、第一装飾部材8Aの第二主面8Abに第二装飾部材8Bを固定する。具体的には、例えば透明な接着剤を介して第二装飾部材8Bの第一主面8Baを第一装飾部材8Aの第二主面8Abに貼り付ける。これにより、第一装飾部材8A、第二装飾部材8B及び封止層7が一体化された積層体が構成される。
【0059】
その後、この積層体における封止層7の第二主面7bを、成膜工程後の透明基板2に重ねる(接合工程)。封止層7の第二主面7bが透明基板2の第一主面8aに接触することで、その接合体である有機EL照明素子1が完成する。
【0060】
上記の方法に限らず、例えば、封止層7としての粘着テープが貼り付けられた第一装飾部材8Aをガラス基板2に固定した後に、第二装飾部材8Bを第一装飾部材8Aに固定してもよい。
【0061】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0062】
上記の実施形態では、装飾部材8を金属箔とした例、及び装飾部材8を二つの部材(第一装飾部材8A及び第二装飾部材8B)により構成した例を示したが、本発明はこれらの構成に限定されない。例えば装飾部材を透明な基板により構成し、その第一主面又は第二主面に、文字、図形、模様その他の装飾を印刷により形成してもよい。この場合、装飾が印刷された主面が装飾面となる。
【0063】
本発明者らは、有機EL照明素子に使用される装飾部材の外観と拡散反射率との関係を確認する試験を行った。この試験では、装飾部材として、SUS304のステンレス箔を試験例1~4として用意した。また、他の試験例として、アルミ箔鏡面側(試験例5)、アルミ蒸着フィルム(試験例6)、鏡面仕上げステンレス(試験例7)を用意した。
【0064】
透明な粘着テープを介して透明なガラスを各試験例の表面に貼り付け、各試験例の表面の拡散反射率をガラス側から測定した。ガラスの厚さは50μmであり、透過率は92%(550nm)である。
【0065】
また、ガラスを貼り付ける前の各試験例の拡散反射率と、ガラスを貼り付けた後の各試験例の拡散反射率とを比較した。拡散反射率は、島津製作所製の分光光度計UV-3600Plus(積分球装置ISR-603を含む)によって測定した。
【0066】
さらに、ガラスが貼り付けられた各試験例の外観を観察した。具体的には、ガラスが貼り付けられた各試験例の表面における金属色調の有無について、目視で確認した。
【0067】
試験結果を表1及び表2に示す。
【表1】
【表2】
【0068】
表1に示すように、拡散反射率が20%以上の場合において、試験例1~4に係るステンレス箔の表面における金属色調をガラス側から目視で確認することができた。このステンレス箔を有機EL照明素子の装飾部材として用いることで、有機EL照明素子の意匠性を高めることが可能となる。
【符号の説明】
【0069】
1 有機EL照明素子
2 透明基板
3 第一電極層
4 有機層
5 絶縁層
6 第二電極層
7 封止層
8 装飾部材
8A 第一装飾部材
8B 第二装飾部材
8a 装飾部材の第一主面(装飾面)
8Ba 第一装飾部材の第一主面(装飾面)
図1
図2
図3