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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022118875
(43)【公開日】2022-08-16
(54)【発明の名称】焼成食品
(51)【国際特許分類】
   A21D 2/08 20060101AFI20220808BHJP
   A21D 2/18 20060101ALI20220808BHJP
   A21D 2/16 20060101ALI20220808BHJP
   A21D 13/45 20170101ALI20220808BHJP
   A21D 13/40 20170101ALI20220808BHJP
   A21D 13/80 20170101ALI20220808BHJP
【FI】
A21D2/08
A21D2/18
A21D2/16
A21D13/45
A21D13/40
A21D13/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021015668
(22)【出願日】2021-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】713011603
【氏名又は名称】ハウス食品株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】306019030
【氏名又は名称】ハウスウェルネスフーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】野平 友美
(72)【発明者】
【氏名】笹子 浩史
(72)【発明者】
【氏名】朝武 宗明
【テーマコード(参考)】
4B032
【Fターム(参考)】
4B032DB21
4B032DB26
4B032DB27
4B032DB28
4B032DB29
4B032DK12
4B032DK14
4B032DK15
4B032DK16
4B032DK17
4B032DK18
4B032DP08
4B032DP40
(57)【要約】
【課題】本発明は、乳、卵、小麦等のタンパク質を実質的に含むことなく、風味や食感の良好な焼成食品を提供することを目的とする。
【解決手段】水、油脂、澱粉、サイクロデキストリン、及び、所定の水溶性ゲル化剤を含み、タンパク質を実質的に含まない、焼成食品用生地、ならびにそれを焼成して得られる焼成食品。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、油脂、澱粉、サイクロデキストリン、ならびに、カルボキシメチルセルロース(CMC)、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガム、グルコマンナン、κ-カラギーナン、ι-カラギーナン、λ-カラギーナン、タマリンドガム、及びジェランガムからなる群から選択される少なくとも一つの水溶性ゲル化剤を含み、タンパク質を実質的に含まない、焼成食品用生地。
【請求項2】
油脂がキャノーラ油、菜種白絞油、大豆油、コーン油、綿実油、落花生油、ゴマ油、米油、米糠油、ツバキ油、ベニバナ油、オリーブ油、アマニ油、シソ油、エゴマ油、ヒマワリ油、ヤシ油、パーム油、ココナッツ油、茶油、アボガド油、ククイナッツ油、グレープシード油、ココアバター、小麦胚芽油、アーモンド油、月見草油、ひまし油、ヘーゼルナッツ油、マカダミアナッツ油、ローズヒップ油、及びブドウ油からなる群から選択される一又は複数である、請求項1に記載の焼成食品用生地。
【請求項3】
サイクロデキストリンがα-サイクロデキストリンである、請求項1又は2に記載の焼成食品用生地。
【請求項4】
澱粉が、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、甘薯澱粉、タロイモ澱粉、米澱粉、コーン澱粉、ワキシーコーン澱粉、ハイアミロースコーン澱粉、緑豆澱粉、クズ澱粉、カタクリ澱粉、ワラビ澱粉、サゴ澱粉、レンコン澱粉、ならびにそれらの加工澱粉及びデキストリンからなる群から選択される一又は複数である、請求項1~3のいずれか一項に記載の焼成食品用生地。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の焼成食品用生地が焼成されてなる焼成食品。
【請求項6】
冷菓用コーン、モナカ皮、ウエハース、瓦せんべい、南部せんべい、クッキー、サブレ、ビスケット、クラッカー、スコーン、ゴーフル、又は可食容器である、請求項5に記載の焼成食品。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか一項に記載の焼成食品用生地を焼成することを含む、焼成食品の製造方法。
【請求項8】
請求項1~4のいずれか一項に記載の焼成食品用生地を製造するためのキットであって、油脂、澱粉、サイクロデキストリン、ならびに、カルボキシメチルセルロース(CMC)、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガム、グルコマンナン、κ-カラギーナン、ι-カラギーナン、λ-カラギーナン、タマリンドガム、及びジェランガムからなる群から選択される少なくとも一つの水溶性ゲル化剤を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水、油脂、澱粉、サイクロデキストリン、及び、所定の水溶性ゲル化剤を含み、タンパク質を実質的に含まない、焼成食品用生地、ならびにそれを焼成して得られる焼成食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
焼成食品は、乳、卵、小麦粉等の原料を攪拌・混合して調製された生地を、オーブン等で焼成してなる食品であり(例えば、クッキー、ビスケット、クラッカー、ケーキ類、パン、冷菓用コーン、マカロン、ウエハース等)、老若男女問わず人気を博している。
【0003】
これまでに良好な風味や食感を有する焼成食品の製造方法が開発・報告されている。例えば、特許文献1には、全粉乳、トレハロース、加工澱粉、植物性油脂、シクロデキストリン及びレシチンを含有することを特徴とする油脂性菓子が開示されている。
【0004】
特許文献2には、卵、砂糖、小麦粉及び油脂類を同時に混合し、含気させ、その後焼成するスポンジケーキの製造方法において、小麦粉としてタンパク含量が5重量%以下になるよう配合した小麦粉及び/又はデンプンを使用し、且つ油脂類として油脂30~80重量%、水15~60重量%、サイクロデキストリン1~10重量%を主成分とする混合捏和物を用いることを特徴とするスポンジケーキの製造方法が開示されている。
【0005】
特許文献3には、油脂、乳化剤、水、脱脂粉乳等を含む第1原料をホモジナイザーで均質化して、均質化混合物を得る工程;当該均質化混合物に小麦粉、コーンスターチ、高度分岐環状デキストリン、デキストリン等を含む第2原料を添加して混合して水種生地を得る工程;ならびに当該水種生地を焼成する工程を包含する、モナカ皮等の焼成食品の製造方法が開示されている。
【0006】
特許文献4には、油脂、乳化剤、還元デキストリン、分岐デキストリン、サイクロデキストリンを含む生地練り込み用水中油型乳化油脂組成物と、小麦粉、全卵、牛乳等を含むホットケーキが開示されている。
【0007】
特許文献5には、乾燥卵白、サイクロデキストリン及び増粘多糖類を配合することを特徴とするマカロン用粉体混合物が開示されている。
【0008】
また、一般的な焼成食品には、乳、卵、小麦粉が含まれるために、これらの原料に対しアレルギーを有する人は焼成食品を食すことができない。そのため、乳、卵、小麦に対しアレルギーを有する人でも食すことが可能な、これらを原料に含まない焼成食品の製造方法が開発・報告されている。例えば、特許文献6には、グルテンや卵、乳製品などのアレルギー物質を使用せず、米粉と増粘剤、イースト、油脂、砂糖、塩、水を混練した生地を発酵した後に焼成する米粉パンの製造方法において、前記増粘剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いることを特徴とする米粉パンの製造方法が開示されている。
【0009】
特許文献7には、小麦、乳、卵を含まないケーキ類の製造方法であって、チョコレート、サラダ油、及び低脂肪豆乳を混合して混合物Aを調製する工程と、前記混合物Aに米粉、ココアパウダー、及びベーキングパウダーを加えて混合物Bを調整する工程と、前記混合物Bに乳化油脂を加えて起泡させてケーキ生地を調整する工程と、前記生地を焼成する工程とを含む、ケーキ類の製造方法が開示されている。
【0010】
特許文献8には、小麦、乳、卵を含まない菓子生地であって、大豆蛋白、小麦を除く澱粉含有物及び油脂を含むことを特徴とする大豆蛋白含有菓子生地が開示されている。
【0011】
特許文献9には、全脂大豆粉、植物性蛋白、乳化剤、及びマスキング剤を含む全脂大豆粉含有組成物が開示されている。
【0012】
一方、乳、卵、小麦粉等の原料は、焼成食品の生地において、乳化剤として機能し生地に良好な物性を付与しており、ひいては焼成後の良好な風味や食感に貢献している。このため、これらの原料を使用しない生地においては乳化安定性が不十分であったり、焼成して得られる焼成食品の風味や食感、形成性が満足のいくものではない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2000-189057号公報
【特許文献2】特開昭59-166030号公報
【特許文献3】特開2004-089028号公報
【特許文献4】特開2001-095489号公報
【特許文献5】特開2011-055771号公報
【特許文献6】特開2008-278827号公報
【特許文献7】特開2017-176120号公報
【特許文献8】特開2006-061029号公報
【特許文献9】WO2009/113655公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、乳、卵、小麦等のタンパク質を実質的に含むことなく、風味や食感、形成性の良好な焼成食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、水、油脂、澱粉、サイクロデキストリン、及び所定の水溶性ゲル化剤を含む乳化組成物を生地として、これを焼成することにより、乳、卵、小麦等のタンパク質を実質的に含むことなく、風味や食感、形成性の良好な焼成食品が得られることを見出した。
本発明は、これらの新規知見に基づくものであり、以下の発明を包含する。
[1] 水、油脂、澱粉、サイクロデキストリン、ならびに、カルボキシメチルセルロース(CMC)、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガム、グルコマンナン、κ-カラギーナン、ι-カラギーナン、λ-カラギーナン、タマリンドガム、及びジェランガムからなる群から選択される少なくとも一つの水溶性ゲル化剤を含み、タンパク質を実質的に含まない、焼成食品用生地。
[2] 油脂がキャノーラ油、菜種白絞油、大豆油、コーン油、綿実油、落花生油、ゴマ油、米油、米糠油、ツバキ油、ベニバナ油、オリーブ油、アマニ油、シソ油、エゴマ油、ヒマワリ油、ヤシ油、パーム油、ココナッツ油、茶油、アボガド油、ククイナッツ油、グレープシード油、ココアバター、小麦胚芽油、アーモンド油、月見草油、ひまし油、ヘーゼルナッツ油、マカダミアナッツ油、ローズヒップ油、及びブドウ油からなる群から選択される一又は複数である、[1]の焼成食品用生地。
[3] サイクロデキストリンがα-サイクロデキストリンである、[1]又は[2]の焼成食品用生地。
[4] 澱粉が、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、甘薯澱粉、タロイモ澱粉、米澱粉、コーン澱粉、ワキシーコーン澱粉、ハイアミロースコーン澱粉、緑豆澱粉、クズ澱粉、カタクリ澱粉、ワラビ澱粉、サゴ澱粉、レンコン澱粉、ならびにそれらの加工澱粉及びデキストリンからなる群から選択される一又は複数である、[1]~[3]のいずれかの焼成食品用生地。
[5] [1]~[4]のいずれかの焼成食品用生地が焼成されてなる焼成食品。
[6] 冷菓用コーン、モナカ皮、ウエハース、瓦せんべい、南部せんべい、クッキー、サブレ、ビスケット、クラッカー、スコーン、ゴーフル、又は可食容器である、[5]の焼成食品。
[7] [1]~[4]のいずれかの焼成食品用生地を焼成することを含む、焼成食品の製造方法。
[8] [1]~[4]のいずれかの焼成食品用生地を製造するためのキットであって、油脂、澱粉、サイクロデキストリン、及び、カルボキシメチルセルロース(CMC)、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガム、グルコマンナン、κ-カラギーナン、ι-カラギーナン、λ-カラギーナン、タマリンドガム、及びジェランガムからなる群から選択される少なくとも一つの水溶性ゲル化剤を含む、キット。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、乳、卵、小麦等のタンパク質を実質的に含むことなく、風味や食感、形成性の良好な焼成食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、水、油脂、澱粉、サイクロデキストリン、及び、所定の水溶性ゲル化剤を含み、タンパク質を実質的に含まない、焼成食品用生地、ならびに、それを焼成して得られる焼成食品に関するものである。
【0018】
本発明において「焼成食品用生地」とは、焼成食品を製造するための乳化組成物を意味する。本発明の焼成食品用生地は、一般的な焼成食品用生地とは異なり、原材料に乳、卵、小麦等に由来するタンパク質を含まないものの、油脂を水中油滴型に乳化してなるものであり、優れた乳化安定性と、柔らかで滑らかな物性を有し、焼成工程に容易に付すことが可能であり、焼成して風味や食感、形成性の良好な焼成食品を得ることができる。
【0019】
本発明において「焼成食品」とは、前記焼成食品用生地をオーブン等を用いて焼成した食品や焼き菓子を意味し、例えば、クッキー、サブレ、ビスケット、クラッカー、スコーン、ゴーフル、パウンドケーキ、スポンジケーキ、バターケーキ、ホットケーキ、パン、マカロン、タルト(台)、ワッフル、小麦粉系スナック菓子、冷菓用コーン(アイスクリームコーン、シュガーコーン、ワッフルコーン、ソフトクリームコーン等)、モナカ皮、ウエハース、可食容器、瓦せんべい、南部せんべい、せんべい、ボーロ、まんじゅう、カステラ等が挙げられるがこれらに限定されない。好ましくは本発明において「焼成食品」とは、冷菓用コーン、モナカ皮、ウエハース、瓦せんべい、南部せんべい、クッキー、サブレ、ビスケット、クラッカー、スコーン、ゴーフル、又は可食容器である。なお、本発明の焼成食品は、原材料に乳、卵、小麦等に由来するタンパク質を含まない点で、従来公知の上記焼成食品とは厳密には異なるものであるが、従来公知の焼成食品と同等又は類似した物性、形状、食感、及び/又は風味を有するものである。
【0020】
本発明において「タンパク質を実質的に含まない」とは、本発明の焼成食品用生地においてタンパク質が乳化作用を発揮する態様で含まれないことを意味し、あらゆるタンパク質が一切含まれないことを必ずしも意味するものではない。タンパク質は一般的に、疎水性アミノ酸残基と親水性アミノ酸残基とから構成され、その両親媒性の特性から乳化作用を有する。そのため、多くの乳化食品(焼成食品用生地を含む)において、タンパク質は乳化剤としての機能を果たしている。一般的な焼成食品用生地では、原料として含まれる乳や卵に含まれるタンパク質がこの機能を果たしている。一方、本発明の焼成食品用生地は、水、油脂、澱粉、サイクロデキストリン、及び、所定の水溶性ゲル化剤を含む水中油型エマルジョンよりなり、乳化剤として機能するタンパク質を実質的に含まないものとすることができる。好ましくは本発明において「タンパク質を実質的に含まない」とは、卵、乳、小麦をはじめとする特定原材料(アレルギー物質)等由来のタンパク質を実質的に含まないことを意味する。より好ましくは本発明において「タンパク質を実質的に含まない」とは、本発明の焼成食品用生地1g当たりにおいて、卵、乳、小麦をはじめとする特定原材料(アレルギー物質)等由来のタンパク質含量が10μg未満であることを意味し、さらに好ましくは本発明の焼成食品用生地において、卵、乳、小麦をはじめとするアレルギー物質(例えば、特定原材料7品目及び特定原材料に準ずるもの21品目より選択される一又は複数の物質)となるタンパク質が一切含まれないことを意味する。
【0021】
本発明において「油脂」とは、食用に供される動植物性油脂(食用油とも呼ばれる場合がある)を意味し、このような油脂としては、10℃における固体脂含有量(SFC)が0%~35%、好ましくは0%~30%、より好ましくは0%~25%のものである。当該油脂は、好ましくは20℃におけるSFCが0%~25%、好ましくは0%~20%、より好ましくは0%~15%のものである。また、当該油脂は、融点が20℃以上、23℃以上、25℃以上、27℃以上、30℃以上、又は35℃以上の範囲にあるものが好ましい。融点の上限は特に限定されないが、例えば、50℃以下、45℃以下、又は40℃以下とすることができる。あるいは、当該油脂は、凝固点が12℃以下、6℃以下、4℃以下、0℃以下、-3℃以下、-5℃以下、-7℃以下、-10℃以下、又は-15℃以下の範囲にあるものが好ましい。凝固点の下限は特に限定されないが、例えば、-25℃以上、又は-20℃以上とすることができる。
【0022】
本発明において利用可能な油脂としては、食用植物油脂が好ましく、より具体的には例えば、キャノーラ油、菜種白絞油、大豆油、コーン油、綿実油、落花生油、ゴマ油、米油、米糠油、ツバキ油、ベニバナ油、オリーブ油、アマニ油、シソ油、エゴマ油、ヒマワリ油、ヤシ油(例えば、パーム油、ココナッツ油)、茶油、アボガド油、ククイナッツ油、グレープシード油、ココアバター、小麦胚芽油、アーモンド油、月見草油、ひまし油、ヘーゼルナッツ油、マカダミアナッツ油、ローズヒップ油、ブドウ油等を挙げることができる(これらに限定はされない)。また、食用動物油脂としては、アレルギー物質(例えば、特定原材料7品目及び特定原材料に準ずるもの21品目より選択される一又は複数の物質)が含まれていないものや、除去されたものが好ましい。油脂はいずれか単独で用いてもよいし、異なる油脂を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
本発明の焼成食品用生地は、油脂を50重量%以下、例えば、45重量%以下、40重量%以下、35重量%以下、30重量%以下、25重量%以下、又は20重量%以下の量で含む。油脂の含量の下限は特に限定されないが、5重量%以上、例えば、8重量%以上、10重量%以上、又は15重量%以上の量にて含めることができる。本発明の焼成食品用生地における油脂の含量の範囲は前記上限及び下限の数値よりそれぞれ選択される2つの数値を用いて表すことができ、例えば、当該油脂の含量は、生地全体の5重量%~50重量%、8重量%~45重量%、10重量%~40重量%、10重量%~35重量%、10重量%~30重量%、15重量%~25重量%、又は15重量%~20重量%の範囲である。本発明の焼成食品用生地における油脂の含量は、焼成食品に応じて、上記量より適宜選択することができる。
【0024】
本発明の焼成食品用生地において、油脂を50重量%以下に調整することによって、優れた乳化安定性と、柔らかで滑らかな物性を有する生地を達成できる。一方、油脂の量が50重量%よりも多い場合にはべたつきやぬるつき、粘り気等の油感が高く、生地として好ましい物性を有さない場合があり、また、焼成して得られる焼成食品の風味や食感、形成性を損なう場合がある。また、油脂の量が5重量%よりも少ない場合には、乳化が不十分となり生地として好ましい物性を有さない場合があり、また、焼成して得られる焼成食品の風味や食感、形成性を損なう場合がある。
【0025】
本発明の焼成食品用生地において、水は油脂を乳化して他の成分と共に水中油型エマルジョン形成することが可能な任意の量で含むことができる。例えば、本発明の焼成食品用生地中には水を、5重量%以上、例えば、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、又は30重量%以上の量で含み、その上限は特に限定されないが、50重量%以下、例えば、45重量%以下、40重量%以下、35重量%以下、30重量%以下、25重量%以下、又は20重量%以下の量で含むことができる。本発明の焼成食品用生地における水の含量の範囲は前記上限及び下限の数値よりそれぞれ選択される2つの数値を用いて表すことができ、例えば、当該水の含量は、生地全体の5重量%~50重量%、5重量%~40重量%、5重量%~30重量%、5重量%~20重量%、10重量%~20重量%、又は15重量%~20重量%の範囲である。本発明の焼成食品用生地における水の含量は、焼成食品に応じて、上記量より適宜選択することができる。本発明の焼成食品用生地に含まれる水の量を上記範囲にて調節することによって、生地として好ましい物性を得ることができる。一方、本発明の焼成食品用生地に含まれる水の量が上記範囲よりも少ない場合、及び多い場合のいずれにおいても油脂の不十分な乳化を生じ、生地として好ましい物性を有さない場合があり、また、焼成して得られる焼成食品の風味や食感、形成性を損なう場合がある。
【0026】
本発明において利用可能な「澱粉」としては、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、甘薯澱粉、タロイモ澱粉、米澱粉、コーン澱粉、ワキシーコーン澱粉、ハイアミロースコーン澱粉、緑豆澱粉、クズ澱粉、カタクリ澱粉、ワラビ澱粉、サゴ澱粉、レンコン澱粉、小麦澱粉、ならびにそれらの加工澱粉及びデキストリンを挙げることができる。本発明において小麦澱粉及びその加工澱粉は利用可能であるが、アレルゲンフリーの観点から、グルテン等のアレルゲンタンパク質が除去された小麦澱粉及びその加工澱粉を使用する。好ましくは、本発明において「澱粉」は小麦澱粉以外のものである。「加工澱粉」としては、澱粉を塩酸や硫酸等の酸で処理して得られる酸処理澱粉;澱粉を加熱焙焼して得られる焙焼澱粉;澱粉をアミラーゼ、グルコアミラーゼ、イソアミラーゼ、プルラナーゼ等の酵素で処理して得られる酵素処理澱粉;澱粉を次亜塩素酸塩等の酸化剤で酸化処理して得られる酸化澱粉(例えば、アセチル化酸化澱粉);澱粉を無水酢酸、オクテニルコハク酸、リン酸塩等で処理して得られるエステル化澱粉(例えば、アセチル化澱粉、オクテニルコハク酸化澱粉、リン酸モノエステル化澱粉等);澱粉にエーテル結合で官能基を付加して得られるエーテル化澱粉(例えば、カルボキシメチル化澱粉、カルボキシエチル化澱粉、ヒドロキシプロピル化澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉等);澱粉に導入されたリン酸基やアジピン酸基等の官能基で分子間架橋又は分子内架橋して得られる架橋澱粉(例えば、リン酸架橋澱粉、アジピン酸架橋澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、アセチル化アジピン酸架橋澱粉等)が挙げられる。さらに、これら澱粉をα化して得られるα化澱粉も本発明において利用することができる。「デキストリン」は、上記澱粉を酵素、酸、又は加熱処理により部分的に加水分解して得られる多糖類である。本発明において利用可能なデキストリンはデキストロース当量値(DE値)が20以下、例えば18以下のものである。澱粉はこれらのいずれかを単独で用いてもよいし、異なる澱粉を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
本発明の焼成食品用生地中には澱粉を、5重量%以上、例えば、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上、又は35重量%以上の量で含み、その上限は特に限定されないが、60重量%以下、例えば、55重量%以下、50重量%以下、45重量%以下、40重量%以下の量で含むことができる。本発明の焼成食品用生地における澱粉の含量の範囲は前記上限及び下限の数値よりそれぞれ選択される2つの数値を用いて表すことができ、例えば、当該澱粉の含量は、生地全体の5重量%~60重量%、5重量%~50重量%、5重量%~40重量%、5重量%~30重量%、5重量%~25重量%、又は10重量%~25重量%の範囲である。本発明の焼成食品用生地における澱粉の含量は、焼成食品に応じて、上記量より適宜選択することができる。本発明の焼成食品用生地に含まれる澱粉の量を上記範囲にて調節することによって、生地として好ましい物性を得ることができる。一方、本発明の焼成食品用生地に含まれる澱粉の量が上記範囲よりも少ない場合、及び多い場合のいずれにおいても、生地として好ましい物性を有さない場合があり、また、焼成して得られる焼成食品の風味や食感、形成性を損なう場合がある。
【0028】
「サイクロデキストリン」は、ブドウ糖を構成単位とする環状無還元マルトオリゴ糖を意味し、ブドウ糖の数が6つのα-サイクロデキストリン、7つのβ-サイクロデキストリン、8つのγ-サイクロデキストリンが挙げられる。本発明においては、α-、β-、γ-サイクロデキストリン、及びそれらの誘導体、ならびにそれらの任意の組み合わせを用いることができる。サイクロデキストリンの誘導体としては、例えば、エチルサイクロデキストリン、メチルサイクロデキストリン、ヒドロキシエチルサイクロデキストリン、ヒドロキシプロピルサイクロデキストリン、メチルアミノサイクロデキストリン、アミノサイクロデキストリン、カルボキシエチルサイクロデキストリン、カルボキシメチルサイクロデキストリン、スルフォキシエチルサイクロデキストリン、スルフォキシルサイクロデキストリン、アセチルサイクロデキストリン、分岐サイクロデキストリン、サイクロデキストリン脂肪酸エステル、グルコシルサイクロデキストリン、マルトシルサイクロデキストリン等が挙げられるが、これらに限定はされない。好ましくはα-サイクロデキストリンを使用する。α-サイクロデキストリンは水への溶解性が高く、柔らかで滑らかな物性を有する生地を達成できる。
【0029】
本発明の焼成食品用生地において、サイクロデキストリンは、下記に詳述する所定の水溶性ゲル化剤と共に当該焼成食品用生地に乳化安定性を付与することが可能な量で含めることができる。例えば、本発明の焼成食品用生地にはサイクロデキストリンを、0.05重量%以上、例えば、0.1重量%以上、0.5重量%以上、0.7重量%以上、又は1重量%以上の量で含み、その上限は特に限定されないが、3重量%以下、例えば、2.5重量%以下、2重量%以下、1.5重量%以下、又は1重量%以下の量で含むことができる。本発明の焼成食品用生地におけるサイクロデキストリンの含量の範囲は前記上限及び下限の数値よりそれぞれ選択される2つの数値を用いて表すことができ、例えば、当該サイクロデキストリンの含量は、生地全体の0.05重量%~3重量%、例えば、0.1重量%~2重量%、例えば、0.1重量%~1重量%の範囲である。本発明の焼成食品用生地におけるサイクロデキストリンの含量は、焼成食品に応じて、上記量より適宜選択することができる。本発明の焼成食品用生地に含まれるサイクロデキストリンの量を上記範囲にて調節することによって、当該焼成食品用生地に乳化安定性を付与し、生地として好ましい物性を得ることができる。一方、本発明の焼成食品用生地に含まれるサイクロデキストリンの量が上記範囲よりも少ない場合、焼成食品用生地の乳化安定性が不十分となる場合があり、また、焼成して得られる焼成食品の風味や食感、形成性を損なう場合がある。また、本発明の焼成食品用生地に含まれるサイクロデキストリンの量が上記範囲よりも多い場合には、焼成食品用生地の粘性が高くなりすぎたり、柔らかさや滑らかさが低下して生地として好ましい物性を有さない場合があり、また、焼成して得られる焼成食品の風味や食感、形成性を損なう場合がある。
【0030】
本発明において「水溶性ゲル化剤」とは、一般的に、水に溶解し、粘性を付与する物質(増粘剤、増粘安定剤、糊料等とも呼ばれる場合がある)を意味する。本発明において利用可能な水溶性ゲル化剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガム、グルコマンナン、κ-カラギーナン、ι-カラギーナン、λ-カラギーナン、タマリンドガム、及びジェランガムを挙げることができる。水溶性ゲル化剤はこれらのいずれかを単独で用いてもよいし、異なる水溶性ゲル化剤を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
本発明の焼成食品用生地において、水溶性ゲル化剤はサイクロデキストリンと共に当該焼成食品用生地に乳化安定性を付与することが可能な量で含めることができる。例えば、本発明の焼成食品用生地には水溶性ゲル化剤を、0.01重量%以上、例えば、0.05重量%以上、0.1重量%以上、0.15重量%以上、0.2重量%以上、0.25重量%以上の量で含み、その上限は特に限定されないが、3重量%以下、例えば、2重量%以下、1重量%以下、0.8重量%以下、又は0.5重量%以下の量で含むことができる。本発明の焼成食品用生地における水溶性ゲル化剤の含量の範囲は前記上限及び下限の数値よりそれぞれ選択される2つの数値を用いて表すことができ、例えば、当該水溶性ゲル化剤の含量は、生地全体の0.01重量%~3重量%、例えば、0.05重量%~2重量%、例えば、0.1重量%~1重量%、0.1重量%~0.8重量%、又は0.15重量%~0.5重量%の範囲である。本発明の焼成食品用生地における水溶性ゲル化剤の含量は、焼成食品に応じて、上記量より適宜選択することができる。本発明の焼成食品用生地に含まれる水溶性ゲル化剤の量を上記範囲に調節することによって、当該焼成食品用生地に乳化安定性を付与し、生地として好ましい物性を得ることができる。一方、本発明の焼成食品用生地に含まれる水溶性ゲル化剤の量が上記範囲よりも少ない場合、焼成食品用生地の乳化安定性が不十分となる場合があり、また、焼成して得られる焼成食品の風味や食感、形成性を損なう場合がある。また、本発明の焼成食品用生地に含まれる水溶性ゲル化剤の量が上記範囲よりも多い場合には、焼成食品用生地の粘性が高くなりすぎたり、柔らかさや滑らかさが低下して生地として好ましい物性を有さない場合があり、また、焼成して得られる焼成食品の風味や食感、形成性を損なう場合がある。
【0032】
本発明の焼成食品用生地は、上記サイクロデキストリンと水溶性ゲル化剤の併用により水中油型エマルジョンに高い乳化安定性を付与することができるため、これらに加えて、従来、飲食品(特に焼成食品用生地)において一般的に利用されている乳化剤を実質的に含まないものとしてもよい(乳化剤が含まれることを排除しない)。好ましくは、本発明の焼成食品用生地は、乳化剤を実質的に含まない。このような乳化剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン(例えば、大豆レシチン、菜種レシチン、ヒマワリレシチン、綿実レシチン、トウモロコシレシチン、落花生レシチン、パームレシチン、ゴマレシチン、コメレシチン、エゴマレシチン、アマニレシチン、卵黄レシチン、ならびにそれらの酵素分解レシチン、水素添加レシチン等)が挙げられる。本発明において「乳化剤を実質的に含まない」とは、本発明の焼成食品用生地において、乳化剤が乳化作用を発揮する態様で含まれないことを意味し、乳化剤が一切含まれないことを意図するものではない。本発明の焼成食品用生地は、乳化剤を実質的に含まないことにより、より高い乳化安定性を得て、生地として好ましい物性を得ることができ、また、焼成して風味や食感、形成性の良好な焼成食品を得ることができる。
【0033】
本発明の焼成食品用生地には、上記成分に加えて、必要に応じてさらに、飲食品の製造において通常用いられている保存剤、防腐剤、酸化防止剤、着色剤、溶剤、溶解補助剤、等張化剤、矯味矯臭剤、pH調整剤、香料、無機塩類、糖類・甘味料(例えば、グルコース、フルクトース、マルトース、トレハロース、アラビノース、キシロース、ガラクトース、砂糖、乳糖、麦芽糖、黒糖等)、風味・呈味成分、酸味料、ビタミン類、イースト、膨張剤等のその他の成分を配合することができる。これらその他の成分の配合量は、本発明において所望される焼成食品用生地の物性が妨げられない範囲で、適宜選択することができる。
【0034】
本発明の焼成食品用生地は、水、油脂、澱粉、サイクロデキストリン、及び、所定の水溶性ゲル化剤、ならびに必要に応じて、その他の成分をそれぞれ上記の配合量にて、混和、攪拌することにより製造することができる。各成分は全て一緒に混和、攪拌してもよいし、各成分を別々にもしくは任意の組み合わせで順次添加して(順序は問わない)混和、攪拌してもよい。得られた焼成食品用生地は、適当な容器に充填・密封され、加熱殺菌処理等に付された後、提供することができる。
【0035】
本発明の焼成食品用生地はまた、焼成食品用生地を製造するためのキットの形態で提供することができる。焼成食品用生地を製造するためのキットには、油脂、澱粉、サイクロデキストリン、及び、所定の水溶性ゲル化剤、ならびに、その他の成分、必要に応じてさらに水、がそれぞれ上記所定の配合量又は当該配合割合にて含まれ、それらは個別に別々の容器に、又は任意の組み合わせで別々の容器に収容することができる。
【0036】
キットに含まれる、油脂、澱粉、サイクロデキストリン、及び、水溶性ゲル化剤、ならびに、その他の成分は、粉末や顆粒等の固形の形態としてもよいし(必要に応じて賦形剤(デキストリン等)等を利用してもよい)、水溶液や分散液等の液体の形態としてもよい。各成分はその形態に応じて、容器に収容される前、又は収容された後に加熱殺菌処理等に付され、キットの構成要素とすることができる。
【0037】
キットは上述の本発明の焼成食品用生地の製造方法にしたがって利用することができ、ボール等の容器に、所定量の水(キットのいずれかの成分が液体の形態である場合、それに含まれる水を利用することができる)、油脂、澱粉、サイクロデキストリン、及び、水溶性ゲル化剤、ならびに、その他の成分を加えて、ミキサーやブレンダー等を用いて混合、攪拌することによって、本発明の焼成食品用生地を得ることができる。
【0038】
本発明の焼成食品用生地は、水と油脂が分離しづらい、好ましくは分離しない優れた乳化安定性を有する。また、本発明の焼成食品用生地は、柔らかで滑らかな物性を有するため、生地の製造工程及び焼成食品の製造工程において優れた操作容易性(取り扱い容易性)を有する。また、本発明の焼成食品用生地は、油分離が少ないもしくは油分離がなく、風味や食感、形成性の良好な焼成食品を製造することができる。
【0039】
本発明の焼成食品用生地は、所望の焼成食品の製造方法に応じて、所定の型枠に入れ、又はプレート上に広げて、160℃~250℃、例えば180℃~190℃にて、1分間~60分間、例えば2分間~3分間、オーブンにて焼成することにより焼成食品を製造することができる。得られた焼成食品はさらに、成形工程に付すことができる。一態様においては例えば、得られた焼成食品を熱いうちに型に押し当て、冷ましながら固化させることで所望の形状(例えば、カップ状、皿状等)に成形することができる。
【0040】
以下、本発明を実施例により、更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例0041】
1.実験方法
(1)焼成食品(冷菓用コーン)の作製
以下の表1-1、表1-2に記載の代表的な組成にしたがって、実施例1~12及び比較例1-7の焼成食品(冷菓用コーン)を、従来公知の冷菓用コーンの製造方法に準じて作製した。油脂はパーム油を用いた。各成分の混合は、ホモジナイザーを用いて2,000rpmにて3分間攪拌して乳化状態とし、得られた生地20gを、プレス式のワッフルコーンメーカーのプレートに円形に薄く広げ、上からプレスしながら180℃で2分間焼成して、円錐型を用いコーン形状に形成し、およそ2~3mm程度の厚さを有する焼成食品を作製した。なお、表中の各成分の量はg量にて示される。
【0042】
(2)焼成食品の評価
上記のとおり作製された生地及び焼成後の焼成品について、「生地の油分離」、「焼成後の油分離」、「焼成後の穴あき、形成性」、「焼成品のサクッとした食感」について、5:良い、4:やや良い、3:許容できる、2:やや悪い、1:悪いの5段階で評価した。焼成後の重量は平均値(n=2)にて示される。なお、「形成性」とは、意図した焼成食品の形状を形成する性質を意味する。すなわち、形成性が「良い」とは、焼成食品が意図した形状を有することを意味し、形成性が「悪い」とは、焼成食品が意図した形状を有さないこと(例えば、穴あき、割れ、崩れ、いびつな形状等)を意味する。
【0043】
2.結果
焼成食品の評価結果を以下の表1-1、表1-2に併記する。
油脂、水、キサンタンガム、α-サイクロデキストリン、馬鈴薯澱粉、コーンスターチを含む実施例1,2においては、生地及び焼成後の焼成品のいずれにおいても良好な結果が得られた。また、いずれにおいても、焼成後の熱いうちに平たく焼きあがった焼成品を円錐形の型に巻き付けることにより、冷菓用コーンに一般的な形状に成形することができた。
【0044】
また、油脂の量を増量した実施例3においては、焼成後に一部の油分の分離が認められたものの、生地及び焼成品はそれぞれ良好なものが得られた。
【0045】
また、水溶性ゲル化剤としてキサンタンガムに代えて、CMC、グアーガム、グルコマンナン、ローカストビーンガム、タマリンドガム、ジェランガム、κ-カラギーナン、ι-カラギーナン、λ-カラギーナンをそれぞれ含む実施例4-12においても、生地及び焼成後の焼成品のいずれにおいても良好な結果が得られた。
【0046】
一方、キサンタンガム及びα-サイクロデキストリンを含まない比較例1においては、水と油脂が分離し生地を形成することができず、焼成を行うことができなかった。キサンタンガムを含まない比較例2においては、水と油脂が分離し生地を形成することができず、焼成品についても良好な結果は得られなかった。α-サイクロデキストリンを含まない比較例3は、形成された生地は短時間で水と油脂の分離が認められる安定性に乏しいものであり、焼成後に油分の分離が認められた。
【0047】
乳化剤(モノグリセリド(サンソフトNo,8070V)、グリセリン脂肪酸エステル(リョートーポリグリエステルSWA-10D))をさらに添加した比較例4,5においては、生地が固くなり円形に薄く広げづらく、また水と油脂の分離が認められた。また、焼成後に油分の分離が認められた。これらの結果は乳化剤がα-サイクロデキストリンによるピッカリング乳化を阻害するためと考えられる。
【0048】
キサンタンガムに代えて、アラビアガム、ペクチンを含む比較例6,7においては、生地及び焼成後に油分の分離が認められ、また焼成品について良好な結果は得られなかった。
【0049】
【表1-1】
【0050】
【表1-2】
【0051】
以上の結果より、水、油脂、澱粉、サイクロデキストリン、及び、キサンタンガム等の水溶性ゲル化剤の組み合わせによれば、乳や卵等のタンパク質や乳化剤を実質的に含むことなく、優れた乳化安定性と柔らかで滑らかな物性を有する焼成食品用生地を形成でき、それを焼成して風味や食感、形成性の良好な焼成食品が得られることが確認された。
【0052】
3.焼成食品(クッキー)の作製
以下の表2に記載の代表的な組成にしたがって、実施例13の焼成食品(クッキー)を、従来公知のクッキーの製造方法に準じて作製した。油脂はパーム油を用いた。油脂とグラニュー糖、ならびに、水、α-サイクロデキストリンとキサンタンガムを、それぞれホモジナイザーを用いて撹拌混合した後、両者を合わせて混合、乳化した。得られた混合物に馬鈴薯澱粉、及びコーンスターチを加えて混合し、得られた生地を直径1.5cm程度の棒状に成形して、冷蔵庫で30分間冷やした。次いで、8mm程度の厚さに切り出した生地をオーブン用のパットに並べて、余熱済みのオーブンに入れ170℃で15分間焼成して、焼成食品(クッキー)を作製した。
実施例13においては、生地及び焼成後の焼成品のいずれにおいても良好な結果が得られた。生地は、優れた乳化安定性を有し油分の分離は認められず、また、クッキー生地として良好な保形性を有するものであった。また、焼成後の焼成品は、油分離が認められず、クッキーとして良好な風味や食感、形成性を有するものであった。
【0053】
【表2】