IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新日本無線株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-電子ボリウム 図1
  • 特開-電子ボリウム 図2
  • 特開-電子ボリウム 図3
  • 特開-電子ボリウム 図4
  • 特開-電子ボリウム 図5
  • 特開-電子ボリウム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022011911
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】電子ボリウム
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
H04R3/00 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020113335
(22)【出願日】2020-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】新日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 征幸
【テーマコード(参考)】
5D220
【Fターム(参考)】
5D220AA22
5D220AB08
(57)【要約】
【課題】電子ボリウムにおいて、補間ボリウムの減衰精度を高め、クリックノイズを抑制した電子ボリウムを提供すること。
【解決手段】入力電気信号を第1減衰量で段階的に変化させる第1ボリウムと、前記第1減衰量よりも小さい第2減衰量で変化させ、前記第1ボリウムの前記第1減衰量を補間する第2ボリウムと、前記第1ボリウムおよび前記第2ボリウムそれぞれにおける減衰量を制御する制御回路と、前記第2ボリウムと連動して前記第2ボリウムにおける減衰量と略同じ割合の減衰量で変化する第3ボリウムと、前記第1減衰量に対応する基準量と前記第3ボリウムの減衰量とを比較する比較器と、を備え、前記制御回路は、前記比較器の出力が反転した場合に前記第1ボリウムにおける減衰量を一段階変化させる、電子ボリウム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電気信号を第1減衰量で段階的に変化させる第1ボリウムと、
前記第1減衰量よりも小さい第2減衰量で段階的に変化させ、前記第1ボリウムを補間する第2ボリウムと、
前記第2ボリウムと連動して動作し、前記第2ボリウムにおける減衰量と略同じ割合で減衰する第3ボリウムと、
前記第1減衰量に対応する基準量と前記第3ボリウムの減衰量とを比較する比較器と、
前記第1ボリウムおよび前記第2ボリウムそれぞれにおける減衰量を制御する制御回路とを備え、
前記制御回路は、前記比較器の出力が反転した場合に前記第1ボリウムにおける減衰量を一段階変化させる、電子ボリウム。
【請求項2】
前記基準量を出力する基準器をさらに備える、請求項1記載の電子ボリウム。
【請求項3】
前記制御回路は、前記比較器の比較する二つの量の大小関係が反転するときに、前記第1ボリウムにおける減衰量を一段階変化させると共に、前記第2ボリウムにおける減衰量を所定の初期値にリセットする、請求項1または2記載の電子ボリウム。
【請求項4】
前記第2ボリウムおよび前記第3ボリウムが、それぞれVCA回路で構成されている請求項1~3のいずれか1項に記載の電子ボリウム。
【請求項5】
前記第2ボリウムおよび前記第3ボリウムが、それぞれ抵抗およびMOSトランジスタを含み、前記第2ボリウムおよび前記第3ボリウムのそれぞれにおいて、
前記抵抗の一端が前記第2ボリウムおよび前記第3ボリウムの入力端子に接続されると共に、他端が前記第2ボリウムおよび前記第3ボリウムの出力端子と前記MOSトランジスタのドレインに接続され、
前記MOSトランジスタのソースが所定の基準電位に接続され、
前記MOSトランジスタのゲートに前記制御回路からの制御信号が入力される、請求項1~3のいずれか1項に記載の電子ボリウム。
【請求項6】
前記基準量は、前記第1減衰量よりも小さく、前記基準量と前記第1減衰量との差は、前記第2減衰量以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の電子ボリウム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ボリウムの減衰量の設定値間を分割した減衰量とした補間ボリウムを備えた電子ボリウムに関する。
【背景技術】
【0002】
オーディオ機器には、通常、オーディオ信号の音量、すなわち振幅を調整するためのボリウム制御装置が備えられている。ボリウム制御装置は、マイコンからの指示に基づいてボリウム値を設定・変更する。このボリウム値の変更をする際に、ボツ音などのジッパーノイズが発生する場合がある。従来のジッパーノイズの改善手法として、ゼロクロス検出時で切り替える手法や、特許文献1に記載されているような、設定値に向けて段階的にボリウム値を切り替える手法などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-311361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子ボリウムを使用する場合、段階的にボリウム値を切り替える際にクリックノイズが発生するが、このクリックノイズを抑制するために、例えば、隣り合った2つの減衰量の設定値の間にN分割した減衰量とした補間ボリウムを追加する方式がある。この補間ボリウムは、抵抗ラダー形式の構成が一般的であるが、クリックノイズを抑制するためには、分割数Nを十分に大きくする必要があり、ラダー形式ではICのチップ面積が大きくなりすぎるという問題が生じる。そのため、可変抵抗体を使用することが考えられる。
【0005】
この可変抵抗体としては、VCA(電圧制御増幅器)、MOSトランジスタなどで構成され得る。しかしながら、これらの素子は、製造プロセスによってしきい値電圧などの素子特性のばらつきや温度変化により、減衰量がターゲットとする値からずれることがあるという問題がある。このため、電子ボリウム(メインボリウム)の設定値からの次の設定値の減衰量に対して補間ボリウムの減衰量が少なすぎたり、多すぎたりする場合が生じる。減衰量が所定の値より少なくなりすぎた場合、次の設定値までの偏差が大きくなり、クリックノイズが抑制できない可能性がある。また、減衰量が所定の値よりも多くなり過ぎた場合、補間ボリウムによる減衰量が本来のボリウムの次の設定値よりも大きくなり、次の設定値への移行時にボリウム設定値の増減方向が反転する可能性がある。したがって、可変抵抗体を用いた補間ボリウムではクリックノイズの抑制不足や、線形性の問題などが生じ得る。
【0006】
そこで、本発明は、補間ボリウムの減衰精度を高め、クリックノイズを抑制した電子ボリウムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電子ボリウムは、入力電気信号を第1減衰量で段階的に変化させる第1ボリウムと、上記第1減衰量よりも小さい第2減衰量で変化させ、上記第1ボリウムの上記第1減衰量を補間する第2ボリウムと、上記第1ボリウムおよび上記第2ボリウムそれぞれにおける上記入力電気信号の減衰量を制御する制御回路と、上記第2ボリウムと連動して上記第2ボリウムにおける減衰量と略同じ割合で減衰する第3ボリウムと、上記第1減衰量に対応する基準量と上記第3ボリウムの減衰量とを比較する比較器と、を備え、上記制御回路は、上記比較器の出力が反転した場合に上記第1ボリウムにおける減衰量を一段階変化させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電子ボリウムによれば、第2ボリウム(補間ボリウム)とほぼ同じ特性を有する第3ボリウムと、第1ボリウム(メインボリウム)の第1減衰量に対応する基準量を導入して、第3ボリウムの減衰量と基準量とを比較して、ほぼ等しくなった時点で第1ボリウムの減衰量を一段階変化させるので、第1ボリウムの減衰量を変化させるときの第2ボリウム(補間ボリウム)の減衰量の過不足が生じない。その結果、クリック音が発生することなく、スムーズに入力電気信号を変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の電子ボリウムの一実施態様の原理を説明するためのブロック図である。
図2】本発明の電子ボリウムの一実施態様における比較器の動作を説明するためのフローチャートである。
図3】本発明の電子ボリウムの一実施態様における制御回路の動作を説明するためのフローチャートである。
図4】本発明の電子ボリウムの一実施態様における第2ボリウムの回路図である。
図5】本発明の電子ボリウムの一実施態様における第1ボリウムの回路図である。
図6】第2ボリウムの減衰態様を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
つぎに、図面を参照しながら本発明の電子ボリウムの一実施形態を説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0011】
図1に示すように、本発明の電子ボリウムの一実施形態は、入力電気信号量を第1減衰量の間隔で段階的に変化させる第1ボリウム1と、第1減衰変化量よりも小さい第2減衰量の間隔で段階的に変化させ、第1ボリウム1の第1減衰量を補間する第2ボリウム2と、第2ボリウム2と連動して動作し、第2ボリウム2における減衰量と略同じで減衰する第3ボリウム3と、第1減衰量に対応する基準量と第3ボリウム3の減衰量とを比較する比較器5と、第1ボリウム1および第2ボリウム2のそれぞれにおける減衰量を制御する制御回路6と、を備え、制御回路6は、比較器5の出力が反転した場合に第1ボリウム1における減衰量を一段階変化させる構成になっている。
【0012】
すなわち、本実施形態では、電子ボリウムの出力が急激に変化すると、その切り替えの際にクリック音が発生するので、そのクリック音の発生を抑制するため、メインボリウム(第1ボリウム)1の第1減衰量を補間する補間ボリウム(第2ボリウム)2を備えている。この場合、補間ボリウム2の細分化の程度をより一層細かくしようとすると、第2ボリウム2を構成する抵抗器の数が増え大型になるため、前述のように、VCAまたはMOSFETなどの可変抵抗型素子を用いることが好ましい。このMOSFETなどは、製造プロセスによるしきい値電圧のばらつきなど、または使用時の雰囲気温度などによってその特性がばらつきやすい。そのため、メインボリウム1のレンジが一段階変化するときに第2ボリウム2と第1ボリウム1との間でずれが生じやすく、クリック音が発生しやすくなる。そこで、本実施形態では、補間ボリウム2と同じ特性を有する第3ボリウム3を形成し、第3ボリウム3の出力と、第1ボリウム1の第1減衰量に対応する基準量とを比較し、第3ボリウム3の出力が基準量とほぼ一致したとき(比較器5で第3ボリウムの出力と基準量との差の正負が反転したとき)に、第1ボリウム1のレンジを一段階変化させる構成にしたことに特徴がある。第1ボリウム1のレンジを一段階変化させるときに、第2ボリウム2の動作(減衰量)がリセットされてもよい。
【0013】
第1ボリウム1は、入力電気信号を所望のデータに合せるためのボリウムであり、本明細書において、メインボリウム1とも称する。この第1ボリウム1はかなり広い範囲の抵抗値をカバーする必要があるため、抵抗値の切り替えは粗くなる場合がある。この第1ボリウム1は、例えば図5に示されるようなラダー型抵抗器が使用され得る。この第1ボリウム1は、例えば図5に示されるように、入力端INに一定の抵抗値(第1減衰量)R0の減衰器(抵抗器)が直列に接続され、隣接する抵抗器同士の接続ノードが、スイッチSWを介して出力端OUTに接続されている。例えば上からM番目のスイッチSWがオンにされ、他のスイッチSWが全てオフにされることによって、入力電気信号に対して、M段の抵抗値(M・R0)に応じた減衰量で減衰された電気信号が出力される。
【0014】
第2ボリウム2は、第1ボリウム1の第1減衰量R0よりも小さい第2減衰量で変化させ、第1ボリウム1の第1減衰量R0の間を細分化(補間)する。本明細書においては、補間ボリウム2とも称する。第2ボリウム2は、例えば、VCA回路で構成されていてもよく、また図4に示されるような、抵抗およびMOSトランジスタ(FET)によって構成されてもよい。図4の例では、抵抗R1の一端が第2ボリウム2の入力端子INに接続され、他端が第2ボリウム2の出力端子OUTに接続されている。抵抗R1の他端(第2ボリウム2の出力端子OUT)は抵抗R2を介してMOSFETのドレインに接続されている。MOSFETのソースは所定の基準電位に接続される。MOSFETのゲートに制御回路からの制御信号が入力されると、その信号の大きさ(電位)に応じてドレイン・ソース間の抵抗値が変化する。それに伴って(抵抗R1の抵抗値)と(抵抗R2の抵抗値+ドレイン・ソース間の抵抗値)との比率が変化するため、第2ボリウム2の出力端子における電気信号(例えば音声信号の振幅)の大きさが変化する。すなわち、第2ボリウム2による減衰量を、MOSFETのゲートに入力する制御信号によって制御することができる。なお、基準電位とは、電源電圧の中間の電位を意味し、プラスマイナスの両電源の場合は、グランド電位(GND)になる。
【0015】
抵抗R1および抵抗R2は、MOSFETと共に、第2ボリウム2による減衰量の決定要素として機能する。なお抵抗R2が設けられず、抵抗R1の前述の他端および第2ボリウム2の出力端子とMOSFETのドレインとが接続されていてもよい。しかし、図4の例のように抵抗R2を配置することによって、MOSFETのドレイン・ソース間に加わる電圧を、MOSFETが適切に動作し得る範囲内に制限できることがある。例えば、抵抗R2の配置によって、第2ボリウム2による信号の歪み、および/または、過電圧の印加によるMOSFETの破壊を防ぎ得ることがある。
【0016】
第3ボリウム3は、第2ボリウム2と連動して第2ボリウムにおける減衰量と略同じ割合の減衰量で変化する。また、第3ボリウム3は、基準量の生成に用いられる基準電圧源と同じ基準電圧源より入力される電気信号を第2ボリウムと同様に、同じ割合の減衰量で変化させる。従って、第2ボリウム2にMOSFETが用いられれば、第3ボリウム3も同じタイプのMOSFETが用いられる。例えば、第3ボリウム3は、第2ボリウム2と同じ材料および製造プロセスを用いて形成され、第2ボリウム2と同じ構造を有していてもよい。
【0017】
第3ボリウム3を設ける理由は、前述したように、MOSFETなどの能動素子は、製造プロセスなどによってその特性にばらつきが生じやすく、第2ボリウム2において所望の減衰量が得られない場合があるため、その補正をするためである。例えば図6に示されるように、第2ボリウム2による電気信号の減衰が段階的に変化し、正常であれば同図(a)のように、所定のN段で所望の減衰量、例えば図5の一段階の減衰量(抵抗R0)になるが、製造プロセスなどによりばらつきが生じると、例えば同図(b)に示されるように、第2ボリウムの第2減衰量が小さくなった場合などには、N段進んでも、所望の減衰量(抵抗R0の値)に達しないで減衰不足になったり、同図(c)に示されるように、N段進むと所望の減衰量(抵抗R0の値)を超えてしまったりするという問題が発生する。
【0018】
そこで、本実施形態では、第2ボリウム2が予め定められたN段進んだときではなく、基準量、例えばR0による減衰量と比較して、R0による減衰量とほぼ等しくなったところ、すなわち第3ボリウムの出力と基準量との大小関係が逆転したときに、第2ボリウム2をリセットし得るように、第3ボリウム3を形成して、第3ボリウム3で基準量と比較するようにしている。この第3ボリウム3は、第2ボリウム2と連動するように形成されており、第3ボリウム3の出力は第2ボリウム2の出力と同じ変化割合になっている。なお、第2ボリウム2で直接基準量と比較しないのは、実際に第2ボリウム2から出力される信号の大きさは、電子ボリウムに現に入力される信号の大きさに応じて広範に変化するため、基準量との単純な比較が困難であるからである。
【0019】
この第3ボリウム3は、第2ボリウム2と全く同じ大きさに形成する必要はない。すなわち、第2ボリウム2と第3ボリウム3との変化割合が同じであれば、全く同じ大きさにする必要はない。従って、第3ボリウム3は第2ボリウム2よりも小さい面積で形成し得る。要するに、第2ボリウム2と同じ変化割合で第3ボリウム3を動作させられれば良い。その結果、第3ボリウム3を作り込んでも、ICのチップ面積をそれほど大きくする必要はない。
【0020】
基準量は、基準器4により出力することができる。基準器4としては抵抗器などの減衰器を用いることができ、上述したように第3ボリウム3と同じ基準電圧源から供給される電気信号を、第1のボリウム1における第1減衰量で減衰させ、基準量として出力する。第1減衰量に対応するとは、第1減衰量(例えば抵抗R0による減衰量)と全く同じでなくてもほぼ等しい値であればよいという趣旨である。この場合、全く同じよりも、むしろ基準量が第1減衰量(抵抗R0による減衰量)よりも若干(第2ボリウム2の第2減衰量より小さい量)小さい方が好ましい。第2ボリウム2の出力が第1減衰量を超えると、第1ボリウム1の減衰量を1段階変化させるときに減衰量の増減方向が反転し、例えば音量についてユーザに違和感を与えかねないからである。この基準量は、基準器が作り込まれなくても、外部から導入することもできる。
【0021】
比較器5は、第3ボリウム3における出力と基準量、すなわち第1減衰量とを比較するためのものである。換言すると、第2および第3のボリウム2、3の出力は前述のように段階的に減少または増加する。そのため、段階的に変化した各段において、第2および第3のボリウム2、3の出力におけるそれまでの変化が、基準となる電気信号(基準量)に達したか否かを判断するものである。すなわち、例えば電気信号の変化を減衰量と考え、基準量を第1ボリウム1の第1減衰量R0とし、第2および第3のボリウム2、3の階段状の一段の減衰量(第2減衰量)をr0とすると、比較器5においては、第3ボリウム3におけるN段の減衰量(N・r0)が基準量R0よりも大きいか小さいかを判断する。
【0022】
この状態をフローチャートで示すと、図2のようになる。すなわち、図2において、第2および第3のボリウム2、3がN段目の場合には、減衰量(N・r0)と基準量R0とが比較される(S1)。ステップS1でN・r0がR0より小さい場合、すなわちステップS1でイエス(YES)の場合、第3ボリウム3の減衰量が基準量R0に達していないことを意味しているため、段数を一段上げて(N=N+1)(S2)、第2および第3のボリウム2、3の減衰量を一段分増加させる(S2)。そして、ステップS1に戻り、ステップS1の比較、すなわち、一段分増加された第3ボリウム3の減衰量(N・r0)が基準量R0と比較される。
【0023】
ステップS1で、ノー(NO)の場合、すなわちN・r0がR0以上の場合、換言すると、第3ボリウム3の減衰量がR0以上になったとき、第1ボリウム1の段数Mを1上昇させ(S3)、同時に、第2および第3のボリウム3の段数N(例えば後述するカウンタ回路64のカウント数)を所定の初期値N0にリセットする(S4)。その後、同様にステップS1に戻り、第1ボリウム1が所望の減衰量になるまで続ける(図2では省略されているが、段数Mの上昇毎に、所望の減衰量と、上昇後の段数Mによって示される第1ボリウム1の減衰量との比較が行われる)。なお、今までの説明は第1ボリウム1の減衰量を大きくする例であったが、第1ボリウム1の減衰量を小さくする場合には、その逆を行えばよい。すなわち、N・r0がR0より小さい場合、第2および第3のボリウム2、3の段数が1ずつ変えられ、N・r0がR0以上に達したら、第1ボリウム1の段数Mを1減少させると共に第2および第3のボリウム2、3の段数が所定の初期値N0にリセットされる。
【0024】
図1に示されるように、制御回路6は、データ入力信号を記録する第1ボリウムのレジスタA(以下、単にレジスタAともいう)61と、第1ボリウム1に入力されるデータを記録する第1ボリウムのレジスタB(以下、単にレジスタBともいう)62とを備えている。制御回路6は、レジスタA61の記憶値とレジスタB62の記憶値とを分析器63で比較することによって、第1ボリウム1の減衰量を変化させるべき方向(増加または減少)を得ることができる。また、制御回路6は、カウンタ回路64を有している。カウンタ回路64は、第2および第3のボリウム2、3の減衰量を、前述した「所定の初期値」から変化させた回数をカウントするように構成される。すなわちカウンタ回路64は、第2および第3のボリウム2、3による減衰量を示す数値(例えば前述の第2および第3のボリウム2、3の「段数」)を1ずつ増加または減少させると共にその数値を保持している。従って、前述した比較器5の出力で大小関係が変わらない場合には、第2および第3のボリウム2、3の段数を示すカウント数Nを1だけ増減させる。
【0025】
そして、比較器5の出力が反転したときには、前述したように、第1ボリウム1の段数Mが増減されると共に、第2および第3のボリウム2、3のカウント数Nを初期値にリセットする。さらに、制御回路6は、カウンタ回路64のカウント値が書き込まれる補間ボリウムレジスタ(HVR)65を有している。制御回路6は、補間ボリウムレジスタ(HVR)65の記憶値に基づいて、第2および第3のボリウム2、3の減衰量を示す制御信号を、第2および第3のボリウム2、3それぞれに出力する。これら両ボリウムは、制御回路6からの制御信号に基づいてそれぞれの減衰量を変化させ、第2および第3のボリウム2、3における変化後の減衰量が、比較器5によって基準量R0と比較される。この制御回路6の動作の一例については図1のブロック図に加えて図3のフローチャートを参照して以下に説明される。
【0026】
まず、目的とする減衰量の大きさを示すデータD1がレジスタA61に入力され(S11)、レジスタA61にデータD1が書き込まれる(S12)。次に、レジスタA61と、第1ボリウム1に現に設定されている減衰量が記録されたレジスタB62のデータD2とが等しいか否かが分析器63によって調べられる(S13)。レジスタA61のデータD1とレジスタB62のデータD2とが等しければ(S13でイエス(YES))、制御動作は終了する。
【0027】
D1とD2とが等しくない場合には、第1ボリウム1の減衰量がD1に応じた減衰量となるように、D2を再設定する必要がある。
【0028】
まず、第2および第3のボリウム2、3の減衰量が基準量である基準の減衰量R0に対してどういう状態にあるか(基準の減衰量R0に達しているか否か)を調べるため、比較器5で第2および第3のボリウム2、3の減衰量と基準の減衰量R0とを比較する。例えば第2および第3のボリウム2、3の一段での減衰量(前述の第2減衰量)r0と初期値N0との差分を示すパラメータNdとの積が基準の減衰量R0よりも小さいか否かが調べられる(S14)。これは、前述の図2で説明した第1ボリウム1の段数を一段増加または減少するのに適した時期に、レジスタB62の減衰量のデータD2を変える必要があるからである。
【0029】
ステップS14でYESの場合、D1>D2か否かが調べられる(S15)。減衰量D2が減衰量D1よりも小さい場合、電子ボリウムの減衰量を大きくする必要があり、逆に減衰量D2が減衰量D1よりも大きい場合は電子ボリウムの減衰量を小さくする必要があるため、どちらが大きいかを調べる。なお、S15のステップは、前述したS13で同時に行われて結果が記憶され、その記憶内容が参照されることによって行われてもよい。D1>D2(S15でYES)の場合は、最終目的はレジスタB62によって示される第1ボリウム1の減衰量を大きくすることであるため、先ず第2および第3のボリウム2、3の減衰量を増やす必要がある。そのため、第2および第3のボリウム2、3の初期値N0に対する段数Nを増加方向に1だけ増やし、N=N+1とする(S16)。すなわち、前述したパラメータNdも1増加する。そして、その段数N=N+1は補間ボリウムレジスタ(HVR)65に書き込まれ(S17)、この補間ボリウムレジスタ(HVR)65の記憶値に基づいて、制御回路6によって第2および第3のボリウム2、3の新たな減衰量を示す制御信号が、第2および第3のボリウム2、3それぞれに出力される。その上で、ステップS14に戻り、比較器5での比較がされ、以下同様にそれまでのステップが繰り返される。
【0030】
また、ステップS15でノー(NO)の場合、すなわちD1<D2の場合、換言するとレジスタB62によって示される第1ボリウム1の減衰量を減少させる必要がある場合、第2および第3のボリウム2、3の減衰量を小さくする必要がある。そこで、第2および第3のボリウム2、3の初期値N0に対する段数Nを減少方向に1だけ増やし、N=N-1とする(S18)。この場合も、初期値N0からの段数の差分を示すパラメータNdは1増加する。その段数Nは、補間ボリウムレジスタ(HVR)65に書き込まれ(S17)前述の例と同様にステップS14に戻り、各ステップが繰り返される。
【0031】
次に、ステップS14で、NOの場合、すなわち基準量R0と第3ボリウム3の減衰量との大小関係が反転した場合も、先ずはD1>D2か否かが調べられる(S21)。前述と同様に、この大小関係によって、第2および第3のボリウム2、3の減衰量を大きくするか小さくするかが分れるからである。D1>D2の場合、すなわち、ステップS21でYESの場合、第1ボリウム1の段数Mが一段アップしてM=M+1とされ(S22)、レジスタB62に、M=M+1が書き込まれる(S23)。すなわち、ステップS14でNOということは、第2および第3のボリウム2、3の減衰量が基準量R0に達したことを示しているので、第1ボリウム1の段数が一段階変化するのであるが、D1>D2であるため、レジスタB62の減衰量を大きくする必要があるから、一段階プラス、すなわちMはM+1になる(S22)。同時に第2および第3のボリウム2、3のカウント数は初期値N0にリセットされると共に、そのことは補間ボリウムレジスタ(HVR)65に記録される(S24)。そして、ステップS13に戻り、D1とD2の大きさが等しいか否かが判断され、D1=D2となるまで同様のステップが繰り返される。
【0032】
ステップS21でNOの場合、すなわちD1<D2の場合には、D2を小さくする、すなわち第1ボリウム1の減衰量を小さくする必要があるので、第1ボリウム1の段数を1だけ減ずる、すなわちM=M-1にする(S25)。そして、ステップS21でYESの場合と同様に制御はS23およびS24を経てS13に戻り、D1=D2になるまで繰り返される。
【0033】
本発明の一実施形態の電子ボリウムは、入力電気信号を第1減衰量の間隔で段階的に変化させる第1ボリウムと、上記第1減衰量よりも小さい第2減衰量の間隔で段階的に変化させ、上記第1ボリウムを補間する第2ボリウムと、上記第2ボリウムと連動して動作し、上記第2ボリウムにおける減衰量と略同じ割合で減衰する第3ボリウムと、上記第1減衰量に対応する基準量と上記第3ボリウムの減衰量とを比較する比較器と、上記第1ボリウムおよび上記第2ボリウムそれぞれにおける減衰量を制御する制御回路とを備え、上記制御回路は、上記比較器の出力が反転した場合に前記第1ボリウムにおける減衰量を一段階変化させる。
【0034】
本実施形態によれば、電子ボリウムの第1ボリウムの設定値間を補間する第2ボリウムと同じ構造の第3ボリウムが設けられているので、VCRやMOSFETなどの半導体素子を用いている場合に製造プロセスなどによるばらつきが第2ボリウムに生じても、第2ボリウムと同じ構造を有する第3ボリウムを用いて校正することができる。その結果、第2ボリウムとして、半導体素子を用いることによって、ラダー型抵抗器を用いる場合と比べて、非常に小さな面積で一段の変化量を非常に小さくし得る。換言すると、製造プロセスなどのばらつきによって、例えば第2および第3のボリウムの所望の段数による電気信号と第1ボリウムの第1減衰量に対応する基準量とが一致しない場合があるが、この両者を比較して、ほぼ等しくなった時点で第1ボリウムの電気信号を一段階変化させることができるので、メインボリウムの減衰量を変化させるときの第2ボリウム(補間ボリウム)による減衰量の過不足が生じない。その結果、クリック音(ジッパーノイズ、ボツ音)が発生することなく、スムーズに入力電気信号を変化させることができる。
【0035】
上記基準量を出力する基準器をさらに備えることができる。すなわち、例として抵抗器によって構成され得る基準器を、例えば半導体装置として具現化される電子ボリウム内に形成してもよい。しかし、この基準量を外部から供給し得るように、外部端子として比較器の入力端子のみが形成されてもよい。
【0036】
上記制御回路は、前記比較器の比較する二つの量の大小関係が反転するときに、上記第1ボリウムにおける減衰量を一段階変化させると共に、前記第2ボリウムにおける減衰量を所定の初期値にリセットすることができる。
【0037】
上記第2および第3のボリウムが、それぞれVCA回路で構成され得る。VCAが用いられることによって、第2減衰量の微小化が容易になると共に、第3ボリウムの具備に伴うサイズの拡大を抑制し得るという利点がある。
【0038】
また、上記第2および第3のボリウムが、それぞれ抵抗およびMOSトランジスタを含み、上記第2ボリウムおよび上記第3ボリウムのそれぞれにおいて、上記抵抗の一端が上記第2ボリウムおよび上記第3ボリウムの入力端子に接続されると共に、他端が上記第2ボリウムおよび上記第3ボリウムの出力端子と前記MOSトランジスタのドレインに接続され、上記MOSトランジスタのソースが所定の基準電位に接続され、上記MOSトランジスタのゲートに上記制御回路からの制御信号が入力される構成にし得る。この構成にすれば、第2減衰量の微小化が容易になると共に、第3ボリウムの具備に伴うサイズの拡大を抑制し得るという利点がある。
【0039】
また、上記基準量は、上記第1減衰量よりも小さく、上記基準量と上記第1減衰量との差は、上記第2減衰量以下であることが好ましい。この構成によれば、第1ボリウム1の減衰量を1段階変化させるときに減衰量の増減方向に反転が生じるのを防ぐことができ、さらに、減衰不足量も抑えることができ、音量についてユーザに違和感を与えるのを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0040】
1 第1ボリウム(メインボリウム)
2 第2ボリウム(補間ボリウム)
3 第3ボリウム
4 基準器
5 比較器
6 制御回路
61 第1ボリウムレジスタA(レジスタA)
62 第1ボリウムレジスタB(レジスタB)
63 分析器
64 カウンタ回路
65 補間ボリウムレジスタ(HVR)
図1
図2
図3
図4
図5
図6