(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119446
(43)【公開日】2022-08-17
(54)【発明の名称】電子聴診器
(51)【国際特許分類】
A61B 7/02 20060101AFI20220809BHJP
A61B 7/04 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
A61B7/02 G
A61B7/02 H
A61B7/04 J
A61B7/04 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021016571
(22)【出願日】2021-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177493
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 修
(72)【発明者】
【氏名】竹本 香菜子
(72)【発明者】
【氏名】坂田 大輔
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ダイヤフラムの急激な変形を抑制し、容量型マイクロフォンにより生体音を生体音信号に変換することができる電子聴診器を提供する。
【解決手段】集音部1の内壁に一端を固定し、他端をダイヤフラム2に接触するよう変形制限部材4を配置する。チェストピース10が聴診対象の体表面20に接触すると、変形制限部材4の他端が集音部1側に変形するダイヤフラム2の一部の変形を制限し、集音部1内の急激な圧力変化を抑制する。変形制限部材4に接触しないダイヤフラム2が振動することで生体音を聴診することが可能となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集音部の開口に伸展性を有するダイヤフラムを備えたチェストピースと、前記ダイヤフラムが生体音により振動することで生じる前記集音部内の圧力変化から前記生体音を生体音信号に変換する容量型マイクロフォンと、を備えた電子聴診器において、
前記集音部の内壁に一端を固定し、他端を前記ダイヤフラムに接触するように配置した変形制限部材を備え、
前記チェストピースが聴診対象に接触して前記ダイヤフラムに圧力が加わったとき、前記変形制限部材の他端が前記集音部側に変形する前記ダイヤフラムの一部の変形を制限して前記集音部内の圧力変化を抑制するとともに、
前記変形制限部材に接触しない前記ダイヤフラムが振動することで生じる前記集音部内の圧力変化から、前記生体音を前記生体音信号に変換することを特徴とする電子聴診器。
【請求項2】
請求項1記載の電子聴診器において、
前記変形制限部材は、前記集音部内の圧力変化が前記容量型マイクロフォンの正常動作が可能な圧力変化より小さくなるように前記ダイヤフラムの変形を制限していることを特徴とする電子聴診器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の電子聴診器において、
前記変形制限部材は、該変形制限部材によって囲まれた空間を連通する切り欠き部を備えていることを特徴とする電子聴診器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容量型マイクロフォンを備えた電子聴診器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子聴診器は、集音部の内部に配置したマイクロフォンにより生体音を生体音信号に変換し、所望の信号処理を行いイヤーチップ等に出力する。マイクロフォンとして容量型マイクロフォンを用いた場合、集音部内の圧力変化に対応した容量型マイクロフォンの容量変化を生体音信号として出力することになる。この種の電子聴診器は、例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
従来の電子聴診器の一部断面図を
図6に示す。
図6に示すようにチェストピース10の集音部1の開口は、伸展性を有するダイヤフラム2で覆われている。聴診時に聴診対象の体表面にダイヤフラム2が接触させると、聴診対象の生体音に応じてダイヤフラム2が振動し、集音部1内の圧力が変化する。この圧力変化を容量型マイクロフォン3で容量変化として検知することで、生体音を生体音信号に変換することができる。容量型マイクロフォン3から出力される生体音信号は、図示しない信号処理部により所望の信号処理が施され、イヤーピース等に出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところでこの種の容量型マイクロフォンを備えた電子聴診器を用いて乳幼児を聴診する場合、チェストピース10を動く乳幼児の体表面に適切な圧力で押し当てることは非常に難しい。柔らかい乳幼児の体表面(聴診対象の体表面20)にチェストピース10を強く押し当てた場合、
図7に示すように集音部1内にダイヤフラム2が大きく入り込んでしまう。特に乳幼児が急に動き出し短時間にダイヤフラム2が変形すると、集音部1内の圧力が急激に変化し、容量型マイクロフォン3から出力される生体音信号は飽和してしまい、正確な聴診ができなくなる場合がある。本発明はこのような実状に鑑み、ダイヤフラム2の急激な変形を抑制し、容量型マイクロフォン3により生体音を生体音信号に変換することができる電子聴診器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本願請求項1に係る発明は、集音部の開口に伸展性を有するダイヤフラムを備えたチェストピースと、前記ダイヤフラムが生体音により振動することで生じる前記集音部内の圧力変化から前記生体音を生体音信号に変換する容量型マイクロフォンと、を備えた電子聴診器において、前記集音部の内壁に一端を固定し、他端を前記ダイヤフラムに接触するように配置した変形制限部材を備え、前記チェストピースが聴診対象に接触して前記ダイヤフラムに圧力が加わったとき、前記変形制限部材の他端が前記集音部側に変形する前記ダイヤフラムの一部の変形を制限して前記集音部内の圧力変化を抑制するとともに、前記変形制限部材に接触しない前記ダイヤフラムが振動することで生じる前記集音部内の圧力変化から、前記生体音を前記生体音信号に変換することを特徴とする。
【0007】
本願請求項2に係る発明は、請求項1記載の電子聴診器において、前記変形制限部材は、前記集音部内の圧力変化が前記容量型マイクロフォンの正常動作が可能な圧力変化より小さくなるように前記ダイヤフラムの変形を制限していることを特徴とする。
【0008】
本願請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2記載の電子聴診器において、前記変形制限部材は、該変形制限部材によって囲まれた空間を連通する切り欠き部を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電子聴診器は、変形制限部材を備えることで、ダイヤフラムの一部の変形を抑制し、集音部内の急激な圧力変化をなくすことができ、また広い振動領域を確保することができるので正確な聴診が可能となる。
【0010】
変形制限部材により集音部内の空間が区画される場合には、切り欠き部を備えることで、区画された空間が連通し、集音された生体音を効率的に生体音信号に変換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施例の電子聴診器の説明図である。
【
図2】本発明の第1の実施例の電子聴診器の説明図である。
【
図3】本発明の第2の実施例の電子聴診器の説明図である。
【
図4】本発明の第3の実施例の電子聴診器の説明図である。
【
図5】本発明の第4の実施例の電子聴診器の説明図である。
【
図7】従来の電子聴診器を聴診対象の体表面に接触させた状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の容量型マイクロフォンを備えた電子聴診器は、集音部内に変形制限部材を配置することで、ダイヤフラムの一部の変形を抑制して集音部内の急激な圧力変化をなくすとともに、広い振動領域を確保し、正確な聴診を可能としている。以下、本発明の実施例について詳細に説明する。
【実施例0013】
本発明の第1の実施例について
図1および
図2を用いて説明する。
図1は直交するように配置した変形制限部材4のうち一方に延出する変形制限部材4の中央を通る断面図で、チェストピース10を聴診対象の体表面20に接触させた状態を示しており、
図7で説明した場合と同様に柔らかい乳幼児の体表面にチェストピース10が強く押し当てられた状態を示している。また、
図2は集音部1の開口を覆うダイヤフラム2と変形制限部材4の他端とが接触する位置を説明する図である。
【0014】
変形制限部材4は、その一端が集音部1の内壁に固定され、チェストピース10が聴診対象に接触しない状態において、その他端がダイヤフラム2に接触あるいはわずかな間隙を保ち対向するように配置されている。聴診対象の体表面20にチェストピース10が強く押し当てられると、
図1に示すように変形制限部材4の他端がダイヤフラム2と接触し、この接触部分のダイヤフラム2の変形を抑制する。この接触により変形制限部材4は変形しないのが好ましい。
【0015】
ダイヤフラム2と変形制限部材4とが接触した状態となると、変形制限部材4とダイヤフラム2との接触部分以外のダイヤフラム2が、聴診対象の生体音に応じて振動する振動領域5となる。振動領域5の振動が集音部1内に伝搬して集音部1内の圧力が変化する。
【0016】
特に
図2に示すように、ダイヤフラム2に強い圧力が加わったとき最も大きく変形するダイヤフラム2の中心部の変形を制限するように変形制限部材4を配置することで、集音部1内の急激な圧力変化を小さくすることができる。また、広い振動領域5を確保することができる。その結果、容量型マイクロフォン3から出力される生体音信号が飽和することはない。十字形状の変形制限部材4は、聴診対象の体表面20と強く接触した場合でも、聴診対象に不快な痛み等を与えることもない。
【0017】
なお
図1に示す例では、集音部1内の空間が変形制限部材4で囲まれて区画される構造となっている。そのため振動領域5の振動により発生する集音部1内の圧力変化を容量型マイクロフォン3で検知できるように、変形制限部材4の一部に切り欠き部6を形成している。この切り欠き部6によって、変形制限部材4で囲まれた空間を連通させることができ、容量型マイクロフォン3で集音部1内の圧力変化を効率的に検知することができる。
【0018】
集音部1内の圧力変化は、通常の電子聴診器同様、容量型マイクロフォン3で容量変化として検知され、生体音信号として出力される。この容量型マイクロフォン3から出力される生体音信号は、図示しない信号処理部により所望の信号処理が施され、イヤーピース等を介して聴診者が聞くことができる。
なお1個の容量型マイクロフォン3は、1個のトランスデューサで構成されることに限定するものではなく、複数のトランスデューサにより1個の容量型マイクロフォンを構成することができる。本実施例では、1個のトランスデューサからなる容量型マイクロフォン、あるいは複数のトランスデューサからなる容量型マイクロフォンを複数備える構成としている。