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▶ 日清製粉株式会社の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119515
(43)【公開日】2022-08-17
(54)【発明の名称】即席麺類の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/109 20160101AFI20220809BHJP
【FI】
A23L7/109 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021016699
(22)【出願日】2021-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】301049777
【氏名又は名称】日清製粉株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩井 克機
(72)【発明者】
【氏名】宮田 敦行
(72)【発明者】
【氏名】大森 彬史
(72)【発明者】
【氏名】小田 健司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 勝義
(72)【発明者】
【氏名】松岡 芳宏
【テーマコード(参考)】
4B046
【Fターム(参考)】
4B046LA05
4B046LB06
4B046LC01
4B046LC12
4B046LE06
4B046LE20
4B046LG02
4B046LG04
4B046LG09
4B046LG11
4B046LG16
4B046LG29
4B046LP01
4B046LP10
4B046LP12
4B046LP14
4B046LP38
4B046LP40
4B046LQ03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】湯戻りがよく、良好な食感を有する即席麺類の製造方法の提供。
【解決手段】pH6.0以上の生地から調製した外層麺帯と、pH3.5~5.5の生地から調製した内層麺帯とを積層して、2つの外層の間に内層が配置された積層構造を有する多層麺類を調製すること、該多層麺類をα化し、次いで油揚げ又は乾燥させて即席麺類を製造すること、を含む方法。好ましくは、内層麺帯の生地が、原料粉と水分をpH3.5~5.5で混捏することで調製されたものである、方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
即席麺類の製造方法であって、
pH6.0以上の生地から調製した外層麺帯と、pH3.5~5.5の生地から調製した内層麺帯とを積層して、2つの外層の間に内層が配置された積層構造を有する多層麺類を調製すること、
該多層麺類をα化し、次いで油揚げ又は乾燥させて即席麺類を製造すること、
を含む、方法。
【請求項2】
前記内層麺帯の生地が、原料粉と水分をpH3.5~5.5で混捏することで調製されたものである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記内層が油脂を含有する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記外層及び内層の原料粉が澱粉類を10質量%以上含有する、請求項1~3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記外層及び内層の原料粉が小麦粉を50質量%以上含有する、請求項1~4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記多層麺類が三層麺類である、請求項1~5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記2つの外層の厚みが、それぞれ、前記多層麺類の全厚に対して16~40%である、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記即席麺類がフライ即席麺類である、請求項1~7のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、即席麺類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
麺生地のpHを調整することで麺類の品質を向上させる技術が開示されている。特許文献1には、pH4.0~5.5の弱酸性のA層とpH8.5~11.5の弱アルカリ性のB層とを含み、かつA層が最外層を構成する多層麺が記載されている。特許文献2には、pHが7.2~9.4となる量のかん水を含む内層とpHが4.0~7.0の外層とからなる多層麺が記載されている。特許文献3には、A層及びB層を含む多層構造を有し、最外層であるA層が、小麦粉を50質量以上含む原料粉と、pH5.6~6.0の水溶液から調製されており、該pH5.6~6.0の水溶液は、有機酸、有機酸塩、リン酸、及びリン酸塩からなる群より選択される1種以上を該原料粉100質量部あたりの合計量で0.0001~0.1質量部含有し、該B層用の麺生地はpH7.0以上である、多層麺の製造方法が記載されている。特許文献4には、炭酸ソーダ、食塩、アルギン酸を含む練水と小麦粉、澱粉とを混錬してpH7.4の外層用麺生地を調製し、一方、食塩、緩衝乳酸を含む練水と小麦粉、澱粉とを混錬してpH4.9の内層用麺生地を調製し、次いでそれらを用いて外層/内層/外層からなる麺線を製造した後、蒸煮してカットし、乳酸溶液中で15分茹でた後、パウチに封入し、加熱殺菌して、ほぐれの良いロングライフ(LL)麺を製造したことが記載されている。特許文献5には、ロングライフ(LL)麺を製造するにあたり、pHが異なる2枚の麺帯を貼り合わせるのではなく、接合面に酸成分を施与した同一組成の2枚の麺帯を接合一体化することで、酸成分が施与した内層から外層にむかって浸透するに従い、麺帯内層はpHが低く外層に向かって徐々に高まるpH勾配が生じること、この麺帯をα化すると、pHの勾配に従って澱粉膨潤度の勾配が固定化でき、その結果、麺類全体のpHが低く調整されていても、腰と粘弾性を有し、しかも喫食中に茹で伸びが生じない麺類が得られることが記載されている。
【0003】
即席麺類は、生麺類をα化処理した後、油で揚げるか、又は熱風、マイクロ波加熱、凍結乾燥等の方法により乾燥させることで製造され、熱湯を注いで数分間放置することにより喫食可能に復元される麺類である。即席麺類は、長期保存性に優れるだけでなく、簡単な調理で喫食可能な利便性の高い食品である。特許文献6には、原料粉にアルギン酸及び/又はアルギン酸塩、アルカリ剤を加えて調製したほぼ中性~弱アルカリ性のpHの麺生地を任意の層に含むように、多層麺線を製造し、該麺線をα化処理の後、酸液処理して麺線pHを酸性域に調整し、次いでフライ、熱風乾燥、凍結乾燥等の常法により即席麺とすることにより、コシ、粘弾性、滑らかさがあり、湯のびの少ない即席麺類が製造できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-154725号公報
【特許文献2】特開平5-049425号公報
【特許文献3】特許第6600436号公報
【特許文献4】特開平6-217722号公報
【特許文献5】特開平7-322842号公報
【特許文献6】特開平6-292528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、本発明は、湯戻りがよく、良好な食感を有する即席麺類を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、即席麺類の製造方法であって、
pH6.0以上の生地から調製した外層麺帯と、pH3.5~5.5の生地から調製した内層麺帯とを積層して、2つの外層の間に内層が配置された積層構造を有する多層麺類を調製すること、
該多層麺類をα化し、次いで油揚げ又は乾燥させて即席麺類を製造すること、
を含む方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明により製造された即席麺類は、湯戻りがよく、粘弾性のある良好な食感を有する。また本発明の即席麺類の麺生地は、二次加工性に優れており、圧延、成形が容易であるため、製麺が容易かつ製麺中の生地のロスを低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の即席麺類は、多層構造を有する多層麺類から製造される即席麺類である。本発明の即席麺類は、多層麺類の生麺を、通常の即席麺類の製造手順に従ってα化、及び油揚げ又は乾燥させることによって製造される。
【0009】
本発明で製造される即席麺類の種類としては、中華麺、うどん、日本そば、パスタなどの麺線類を挙げることができるが、これらに限定されない。本発明で製造される即席麺類は、その形状は特に限定されず、例えば麺線であっても麺皮であってもよいが、好ましくは麺線である。
【0010】
本発明で用いられる多層麺類は、内層及び外層用の生地から公知の方法によって製造され得る。好ましくは、該多層麺類は、内層麺帯と外層麺帯とを積層して多層麺帯を作製し、次いで該多層麺帯を圧延し、製麺することによって製造される。より詳細には、内層用生地から内層麺帯を作製し、別途、外層用生地から外層麺帯を作製する。該内層麺帯は、一層であってもよく、又は組成の異なる生地から調製された複数の層を有していてもよい。次いで、該内層麺帯を該外層麺帯で両側から挟み込んで、多層麺帯を作製する。該多層麺帯を圧延し、製麺することにより、2つの外層(最外層)とその間に配置された内層とを含む積層構造を有する多層麺類を製造することができる。
【0011】
本発明で用いられる多層麺類の外層及び内層の原料粉は、好ましくは穀粉類を含有する。該穀粉類の例としては、小麦粉、米粉、大麦粉、モチ大麦粉、そば粉、大豆粉、コーンフラワー、オーツ麦粉、ライ麦粉、ふすま粉などが挙げられ、好ましくは小麦粉、米粉、大麦粉、モチ大麦粉、及びそば粉が挙げられる。これらの穀粉類は、いずれか単独又は2種以上の組み合わせで使用することができる。該穀粉類は、α化穀粉等の熱処理粉を含んでいてもよいが、好ましくは非熱処理粉である。該外層及び内層の原料粉は、その全量中に、該穀粉類を、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上含有する。
【0012】
好ましくは、該外層及び内層の原料粉は小麦粉を含む。好ましくは、該外層及び内層の原料粉は、その全量中に、小麦粉を50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上含有する。また好ましくは、該外層及び内層の原料粉に使用される穀粉類の80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは100質量%が小麦粉である。該小麦粉は、麺類の製造に一般に使用されるものであればよく、例えば、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム粉、全粒粉などが挙げられるが、好ましくは強力粉、準強力粉、中力粉、及びデュラム粉が挙げられる。これらの小麦粉は、いずれか単独又は2種以上の組み合わせで使用することができる。該小麦粉は、その粒径は特に限定されず、例えばセモリナであってもよい。
【0013】
該外層及び内層の原料粉は、必要に応じて澱粉類を含有していてもよい。該澱粉類の例としては、特に限定されず、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、米澱粉などの未加工澱粉、及びそれらを加工(例えば、架橋化、リン酸化、アセチル化、エーテル化、酸化、α化など)した加工澱粉が挙げられる。本発明において、これら未加工澱粉及び加工澱粉は、いずれか単独又は2種以上の組み合わせで使用することができる。好ましくは、該澱粉類は馬鈴薯澱粉又はタピオカ澱粉である。また好ましくは、該澱粉類は加工澱粉である。より好ましくは、該澱粉類は加工馬鈴薯澱粉又は加工タピオカ澱粉であり、さらに好ましくは、酸化、アセチル化、エーテル化及び架橋化からなる群より選択される1種以上の加工を行った加工馬鈴薯澱粉又は加工タピオカ澱粉である。該外層及び内層の原料粉が澱粉類を含有する場合、該澱粉類の含有量は、該原料粉の全量中、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、かつ好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下である。
【0014】
該外層及び内層の原料粉は、穀粉類、澱粉類に加えて、麺類の製造に従来用いられる他の成分をさらに含有していてもよい。当該他の成分としては、小麦蛋白質(グルテン)、大豆蛋白質、乳蛋白質、卵黄粉、卵白粉、全卵粉、脱脂粉乳等の蛋白質素材、ならびに、油脂類、かんすい、焼成カルシウム、食物繊維、食塩、糖類、甘味料、香辛料、調味料、ビタミン、ミネラル、栄養強化剤、色素、香料、デキストリン(難消化性含む)、膨張剤、増粘剤、乳化剤、保水剤、保存剤、酵素剤、pH調整剤、酸化還元剤などが挙げられる。本発明で用いる原料粉は、麺のほぐれ性改善成分を含有していてもよい。該ほぐれ性改善成分としては、卵白、アルギン酸エステル、アルギン酸、アルギン酸塩、乳化剤、乳化油脂、植物性油脂、大豆分解物、食物繊維などが挙げられる。一方、本発明において、好ましくは内層の原料粉は、アルギン酸エステル、アルギン酸、及びアルギン酸塩を含まず、より好ましくは外層及び内層の原料粉は、アルギン酸エステル、アルギン酸、及びアルギン酸塩を含まない。該外層及び内層の原料粉における該他の成分の合計含有量は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは0~15質量%である。該原料粉中における該他の成分の各々の含有量は、目的とする麺類の種類に応じて適宜決定することができる。
【0015】
該外層及び内層の原料粉の組成は、同じであっても異なっていてもよい。例えば、該外層及び内層の原料粉に含まれる穀粉類、澱粉類及び他の材料の種類や量は、同じであっても異なっていてもよい。
【0016】
該外層及び内層の原料粉のそれぞれに、常法に従って水分を添加し、混捏することにより外層用生地及び内層用生地を調製することができる。該外層用生地及び内層用生地の調製に用いられる水分としては、麺生地の製造に通常用いられる練水、例えば水、塩水、かん水、酸性水溶液などを用いることができる。該外層用生地及び内層用生地から多層麺類が製造される。より詳細には、該多層麺類は、その最外層の両側が該外層用生地から構成され、該最外層の内側の層が該内層用生地から構成されている。
【0017】
本発明で用いられる外層用生地は、即席麺類の食感向上の観点から、pH6.0以上、好ましくはpH7.0~11.5、より好ましくはpH8.0~11.5の麺生地である。該外層用生地のpHは、アルカリ剤を用いて調整することができる。該アルカリ剤としては、例えば、かんすい、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ピロリン酸四カリウム、ピロリン酸二水素二ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム、ポリリン酸カリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、メタリン酸ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三ナトリウム等が挙げられ、好ましくは、かんすい、炭酸カリウム、及び炭酸ナトリウムが挙げられる。これらのアルカリ剤は、いずれか1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。該アルカリ剤は、粉体、水溶液等の任意の形態で該外層用生地の調製に使用されればよい。好ましくは、該外層用生地は、該アルカリ剤を含む水溶液を練水として該外層の原料粉に添加し、混捏することで調製される。得られた該外層用生地が上記所望の範囲のpHになるように、該アルカリ剤の使用量を適宜調整すればよい。該外層用生地の調製に用いられる練水の量は、練水の水分量として、原料粉100質量部あたり、好ましくは25~50質量部、より好ましくは25~35質量部である。
【0018】
一方、本発明で用いられる内層用生地は、即席麺類の湯戻り性及び食感向上の観点から、pH3.5~5.5、好ましくはpH3.5~5.0、より好ましくはpH4.0~4.5の麺生地である。該内層用生地は、上述したように、原料粉と水、塩水、酸性水溶液などの練水とを混捏することで調製することができる。あるいは、該内層用生地のpHは、有機酸、有機酸塩、リン酸、及びリン酸塩などのpH調整剤を用いて調整することができる。該pH調整剤は、粉体、水溶液等の任意の形態で該内層用生地の調製に使用されればよい。得られた該内層用生地が上記所望の範囲のpHになるように、該pH調整剤の使用量を適宜調整すればよい。該内層用生地は、pHが上記範囲になることで、グルテンをはじめとする生地内ネットワークが弱まり、それにより即席麺とした際に内層部の吸水性が向上し、湯戻りが早くなると考えられる。好ましくは、該内層用生地が上記範囲のpHになるように原料粉、水、及びpH調整剤を混捏する。そうすることで、得られた即席麺の湯戻り性がより向上する。該内層用生地の調製に用いられる練水の量は、練水の水分量として、原料粉100質量部あたり、好ましくは25~50質量部、より好ましくは30~45質量部である。
【0019】
好ましくは、該内層用生地は、上述した原料粉と水分(練水)とをpH3.5~5.5で混捏することで調製される。例えば、上記のpH条件を達成できるように調製した酸性水溶液を、該内層の原料粉に添加し、混捏することで該内層用生地を調製することができる。すなわち、該酸性水溶液は、該内層用生地の調製用の練水として使用される。該酸性水溶液は、好ましくはpH2~5.5である。好ましくは、該酸性水溶液は、有機酸、有機酸塩、リン酸、及びリン酸塩からなる群より選択される1種以上を含有する。好ましくは、該酸性水溶液は、有機酸及び/又は有機酸塩の水溶液である。該酸性水溶液中に含まれる該有機酸、有機酸塩、リン酸及びリン酸塩の合計量(乾物換算)は、該内層の原料粉100質量部あたり、好ましくは0.03~3質量部であり、より好ましくは0.1~1質量部である。
【0020】
該有機酸の例としては、一価~三価の有機酸、例えばクエン酸、リンゴ酸、フマル酸、グルコン酸、コハク酸、アジピン酸、乳酸、酢酸、イタコン酸、フィチン酸及び酒石酸からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。該有機酸塩の例としては、クエン酸塩、リンゴ酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、コハク酸塩、アジピン酸塩、乳酸塩、酢酸塩、イタコン酸塩、フィチン酸塩及び酒石酸塩からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。該塩の種類としては、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などが挙げられる。該リン酸及びリン酸塩は、食用に用いられるものであればよく、該リン酸塩の例としては、リン酸三ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム等の単リン酸塩、及び、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩、メタリン酸塩等の重合又は縮合リン酸塩が挙げられる。
【0021】
該内層用生地の調製における該酸性水溶液の使用量は、上記で規定した、原料粉に対する有機酸、有機酸塩、リン酸及びリン酸塩の量、該水溶液のpHの範囲、原料粉の組成、所望される麺生地のpHや水分量などに従い適宜調整され得る。好ましくは、該酸性水溶液の使用量は、上述したとおり、該水溶液の水分量として、内層の原料粉100質量部あたり、好ましくは25~50質量部、より好ましくは30~45質量部である。
【0022】
本明細書において、水溶液のpHは、温度25℃でのpH値を表す。また本明細書において、麺生地のpHとは、麺生地(調製後、加熱調理又は乾燥していないもの)1gを水10mLに懸濁させた懸濁液のpH(25℃)をいう。また本明細書において、原料粉のpHとは、原料粉1gを水10mLに懸濁させた懸濁液のpH(25℃)をいう。
【0023】
好ましくは、該内層用生地は油脂を含有する。内層用生地に油脂を添加することで、即席麺類の湯戻り性及び食感が向上する。該油脂としては、通常使用される食用油脂であればよく、例えばバター、牛脂、豚脂等の動物性油脂;サラダ油、コーン油、菜種油、大豆油、紅花油、パーム油、綿実油、ひまわり油、米ぬか油、ゴマ油、オリーブ油等の植物性油脂;これらの硬化油脂;これらの混合油脂;及び、香味油としてオリーブ油、焙煎ゴマ油、焙煎大豆油、焙煎菜種油、アーモンド油、クルミ油、ピーナッツ油、ヘーゼルナッツ油、マカダミアナッツ油、ネギ油、ガーリック油、ラー油、バターフレーバー油、などが挙げられる。これらの油脂は、いずれか単独又は2種以上の組み合わせで使用することができる。これらの油脂は、粉末油脂として原料粉に含まれてもよく、又は生地調製の際に原料粉に添加されてもよい。該内層用生地における該油脂の量は、原料粉に含まれる穀粉と澱粉の合計量100質量部あたり、好ましくは1~15質量部である。
【0024】
得られた外層用生地及び内層用生地をそれぞれ圧延すれば、外層麺帯及び内層麺帯を得ることができる。該内層麺帯を該外層麺帯で両側から挟み込んで、多層麺帯を作製し、圧延し、製麺することにより、多層麺類を製造することができる。本発明で用いる多層麺類は、その最外層の両側を該外層用生地から作製し、該最外層の内側の層を該内層用生地から作製すること以外は、従来の多層麺類の製造方法と同様の手順で製造することができる。例えば、圧延と製麺の手段としては、押出し、ロールによる圧延と切出し、などが挙げられるが、特に限定されない。
【0025】
本発明で用いられる多層麺類は、2つの外層(最外層)の間に一層以上の内層を含む三層以上の層構造を有していればよい。例えば、該多層麺類は、2つの外層と1つの内層を含む三層麺類であってもよいが、2つの外層と二層以上の内層とを有する四層以上の麺類であってもよい。好ましくは、該多層麺類は三層麺類である。該内層が二層以上である場合、各々の層は、上述した内層生地の組成及びpHの範囲内において、異なる生地から調製されていてもよい。
【0026】
該多層麺類における該2つの外層のそれぞれの厚みは、該多層麺類の全厚に対して、好ましくは16~40%、より好ましくは25~35%である。外層が薄すぎたり厚くなりすぎると、即席麺類の食感が充分向上しないことがある。好ましくは、該多層麺類は、生麺の状態での厚みが、好ましくは0.5~2.5mm、より好ましくは0.7~1.8mm、さらに好ましくは1~1.5mmの麺線である。なお麺線の厚みとは、麺線の断面(長軸方向に直交する面)の最長の辺の長さ又は長径をいう。
【0027】
本発明による即席麺類の製造方法においては、得られた多層麺類の生麺を茹で、蒸し等の常法に従ってα化処理する。得られたα化麺類を、常法に従って油で揚げることで、フライ即席麺類が製造される。一方、得られたα化麺類を、常法に従って熱風、マイクロ波加熱、凍結乾燥等の方法により乾燥させることで、ノンフライ即席麺類が製造される。好ましくは、本発明で製造される即席麺類はフライ即席麺類である。例えば、α化処理した麺類を、個食に分け、140~150℃で1分~3分間の油揚げをすることによりフライ即席麺類を製造することができる。また例えば、α化処理した麺類を、個食に分け、70~150℃で1~120分間熱風乾燥することによりノンフライ即席麺類を製造することができる。
【0028】
得られた即席麺類は、熱湯に接触(好ましくは浸漬)させることによって喫食可能に復元することができる。麺類の復元のための熱湯の温度は、好ましくは65℃以上、より好ましくは85℃以上であり、さらに好ましくは90℃以上である。例えば、沸騰水中で即席麺類を茹でればよい。または、容器に入れた即席麺類に熱湯を注いて静置すればよい。あるいは、容器に入れた即席麺類に水又は湯を注いで電子レンジで加熱すればよい。麺類の復元のための熱湯との接触時間は、麺類の種類、形状、量、喫食者の嗜好等に応じて適宜設定すればよい。
【実施例0029】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0030】
〔原料〕
小麦粉(準強力粉、日清製粉)
加工澱粉(酸化馬鈴薯澱粉:スタビローズ1000、松谷化学)
【0031】
〔試験1〕ノンフライ即席中華麺
1)単層麺の製造
表1に示す組成で原料粉に練水を加え、製麺用ミキサーで混捏して生地を調製した。得られた生地を製麺ロールで圧延及び複合して麺帯を作製し、切り刃(♯16角)で切り出して麺線を製造した(麺厚1.5mm)。
【0032】
2)多層麺の製造
外層:表1に示す組成で原料粉に練水を加え、製麺用ミキサーで混捏して生地を調製した。得られた生地を圧延して厚さ1.65mmの外層用麺帯を得た。
内層:表1に示す組成で原料粉に練水を加え、製麺用ミキサーで混捏して生地を調製した。得られた生地を圧延して厚さ3.3mmの内層用麺帯を得た。
2枚の外層用麺帯の間に内層用麺帯を配置して積層し、圧延して、外層と内層の厚比が1/2/1の三層麺帯を作製した。得られた麺帯を切り刃(♯16角)で切り出して三層麺線を製造した(麺厚1.5mm)。
【0033】
3)即席麺類の製造
1)又は2)で得られた麺線を3分間蒸し処理(蒸圧約3kPa)し、次いで個食に分け、90℃の熱風で20分間乾燥してノンフライ即席中華麺を製造した。
【0034】
4)評価
3)で得られたノンフライ即席麺(麺質量:65g)を容器に入れ、ここに温水(90℃)約330mL注ぎ、蓋をして3分間復元させた。復元した麺の湯戻り(芯の残り、ぼそつき感)、及び食感(粘弾性)を、訓練されたパネラー10人により下記評価基準で官能評価し、その平均点を求めた。対照として比較例1-1の麺類を用いた。麺生地の二次加工性は、パネラー10人のうち8人以上が麺生地を問題なく圧延できると判断した場合を○、7人以下の場合を×として評価した。結果を表1に示す。
<評価基準>
(湯戻り性:芯の残り、ぼそつき感)
5点:対照と比べて非常に優れる。
4点:対照と比べて優れる。
3点:対照と比べてやや優れる。
2点:対照と同等である(芯が残り、ややボソボソである)。
1点:対照と比べて劣る。
(食感:粘弾性)
5点:対照と比べて非常に良好な粘弾性を有する。
4点:対照と比べて良好な粘弾性を有する。
3点:対照と比べてやや良好な粘弾性を有する。
2点:対照と同等である(粘弾性にやや劣る)。
1点:対照と比べて粘弾性に劣る。
【0035】
【表1】
【0036】
〔試験2〕ノンフライ即席中華麺
試験1と同様の手順で、ただし外層と内層の厚比を表2のとおりに変えて三層麺線を製造し(麺厚1.5mm)、それを用いてノンフライ即席中華麺を製造し、復元した麺の湯戻りと食感を官能評価した。対照には比較例1-1を用いた。結果を表2に示す。なお麺生地の二次加工性には問題はなかった。
【0037】
【表2】
【0038】
〔試験3〕ノンフライ即席中華麺
表3に示す組成で、試験1と同様の手順により単層麺線及び三層麺線(厚比1/2/1)を製造した(いずれも麺厚1.5mm)。得られた麺線を用いてノンフライ即席中華麺を製造し、復元した麺の湯戻りと食感を官能評価した。対照には比較例3-1を用いた。また麺生地の二次加工性を試験1と同様に評価した。結果を表3に示す。
【0039】
【表3】
【0040】
〔試験4〕フライ即席中華麺
表4に示す組成で、試験1と同様の手順により単層麺線及び三層麺線(厚比1/2/1)を製造した(いずれも麺厚1.5mm)。得られた麺線を2.5分間蒸し処理(蒸圧5~8kPa)し、次いで個食に分け、2分間フライ処理(150℃)して、フライ即席中華麺を製造した。試験1と同様の手順で、復元した麺の湯戻りと食感を官能評価した。対照には比較例4-1を用いた。結果を表4に示す。なお麺生地の二次加工性には問題はなかった。
【0041】
【表4】