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特開2022-119564放射線撮影システム、放射線撮影装置、情報処理装置、及び情報処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022119564
(43)【公開日】2022-08-17
(54)【発明の名称】放射線撮影システム、放射線撮影装置、情報処理装置、及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/04 20060101AFI20220809BHJP
   A61B 6/00 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
A61B6/04 309B
A61B6/00 330Z
A61B6/00 390B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021016788
(22)【出願日】2021-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 順也
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA07
4C093CA16
4C093CA35
4C093DA06
4C093ED21
4C093EE16
4C093EE19
(57)【要約】
【課題】圧迫板の傾き又はたわみによる影響を考慮して乳房の厚みを精度良く測定することを可能とする放射線撮影システム、放射線撮影装置、情報処理装置、及び情報処理方法を提供する。
【解決手段】放射線撮影システムは、被検者の乳房が載置される撮影台と、撮影台に載置された乳房を圧迫する圧迫板と、圧迫板に設けられた2次元パターンを有するマーカと、圧迫された乳房に対して放射線を照射する放射線源と、マーカを含む可視光画像を撮影するカメラと、可視光画像に写ったマーカを示すマーカ像に基づいて、撮影台に対する圧迫板の高さ情報を導出する高さ情報導出部とを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の乳房が載置される撮影台と、
前記撮影台に載置された前記乳房を圧迫する圧迫板と、
前記圧迫板に設けられた2次元パターンを有するマーカと、
圧迫された前記乳房に対して放射線を照射する放射線源と、
前記マーカを含む可視光画像を撮影するカメラと、
前記可視光画像に写った前記マーカを示すマーカ像に基づいて、前記撮影台に対する前記圧迫板の高さ情報を導出する高さ情報導出部と、
を備える放射線撮影システム。
【請求項2】
前記高さ情報導出部は、前記圧迫板の高さに応じた前記マーカ像の長さの変化率に基づいて、前記高さ情報を導出する、
請求項1に記載の放射線撮影システム。
【請求項3】
前記カメラから前記撮影台までの距離をS、前記撮影台に対する前記圧迫板の高さがHの場合における前記マーカ像の一方向への長さをL(H)とした場合において、
前記高さ情報導出部は、H=S×(1-L(0)/L(H))の関係式に基づいて、前記高さ情報を導出する、
請求項2に記載の放射線撮影システム。
【請求項4】
前記高さ情報には、前記圧迫板の複数の位置における高さが含まれる、
請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載の放射線撮影システム。
【請求項5】
前記2次元パターンは、枠状、格子状、ドット状、及びクロス状のうちのいずれか1つ又はそれらの組み合わせである、
請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載の放射線撮影システム。
【請求項6】
前記マーカは、前記圧迫板とは異なる色を有する、
請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載の放射線撮影システム。
【請求項7】
前記マーカは、前記圧迫板に、部材を貼り付けることにより形成されている、
請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載の放射線撮影システム。
【請求項8】
前記マーカは、放射線透過性を有する、
請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載の放射線撮影システム。
【請求項9】
前記マーカは、少なくとも一部が、前記乳房に重なる位置に配置されている、
請求項8に記載の放射線撮影システム。
【請求項10】
前記カメラは、放射線源を保持する保持部に設けられている、
請求項1から請求項9のうちいずれか1項に記載の放射線撮影システム。
【請求項11】
前記撮影台、前記圧迫板、前記マーカ、及び前記カメラは、放射線撮影装置に設けられており、
前記高さ情報導出部は、前記放射線撮影装置に接続された情報処理装置に設けられている、
請求項1から請求項10のうちいずれか1項に記載の放射線撮影システム。
【請求項12】
被検者の乳房が載置される撮影台と、
前記撮影台に載置された前記乳房を圧迫する圧迫板と、
前記圧迫板に設けられた2次元パターンを有するマーカと、
圧迫された前記乳房に対して放射線を照射する放射線源と、
前記マーカを含む可視光画像を撮影するカメラと、
を備える放射線撮影装置。
【請求項13】
被検者の乳房が載置される撮影台と、前記撮影台に載置された前記乳房を圧迫する圧迫板と、前記圧迫板に設けられた2次元パターンを有するマーカと、圧迫された前記乳房に対して放射線を照射する放射線源と、前記マーカを含む可視光画像を撮影するカメラと、を備える放射線撮影装置に接続された情報処理装置であって、
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、前記可視光画像に写った前記マーカを示すマーカ像に基づいて、前記撮影台に対する前記圧迫板の高さ情報を導出する、
情報処理装置。
【請求項14】
被検者の乳房が載置される撮影台と、前記撮影台に載置された前記乳房を圧迫する圧迫板と、前記圧迫板に設けられた2次元パターンを有するマーカと、圧迫された前記乳房に対して放射線を照射する放射線源と、前記マーカを含む可視光画像を撮影するカメラと、を備える放射線撮影装置の情報処理方法であって、
前記可視光画像に写った前記マーカを示すマーカ像に基づいて、前記撮影台に対する前記圧迫板の高さ情報を導出する、
を備える情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、放射線撮影システム、放射線撮影装置、情報処理装置、及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被検者の乳房を、放射線を用いて撮影するマンモグラフィ装置が知られている。マンモグラフィ装置には、放射線検出器を内蔵した撮影台に対して近接する方向及び離間する方向に移動可能に構成された圧迫板が設けられている。マンモグラフィ撮影では、被検者の乳房を広げて固定するために、撮影台と圧迫板との間に乳房を挟んで圧迫することが行われている。乳房を薄く広げて圧迫することで、乳腺の重なりが少なくなり、病変が見つけやすくなる。また、乳房を薄くすることで撮影に必要な放射線量を少なくすることが可能となる。
【0003】
マンモグラフィ撮影において、圧迫された乳房の厚み、すなわち撮影台に対する圧迫板の高さは、撮影条件を決めたり、各種の画像条件を決めたりするうえで重要な情報である。圧迫乳房厚の測定方法として、種々の方法が知られている。例えば、特許文献1には、圧迫板に放射線を吸収するマーカを設け、放射線画像に写り込んだマーカ像に基づいて、圧迫板の高さを測定することが記載されている。また、特許文献2には、光学カメラにより、圧迫板により圧迫された状態の乳房の側面の画像を取得することにより、圧迫板の高さを計測することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-177884号公報
【特許文献2】特開2017-225634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、放射線画像にマーカ像が写り込むので、乳房の像とマーカ像とが重なることがある。このように、乳房の像とマーカ像とが重なった場合には、マーカ像は乳房の診断の邪魔になる。乳房の像とマーカ像とが重ならないようにするためには、マーカを圧迫板の端部に配置せざるを得ない。したがって、特許文献1に記載の技術では、圧迫板の端部の高さが測定される。
【0006】
特許文献2に記載の技術では、乳房の側面の画像に基づいて圧迫板の高さが計測されるので、特許文献1に記載の技術と同様に、計測される高さは、圧迫板の端部の高さである。
【0007】
圧迫板には、傾き又はたわみが生じる可能性がある。圧迫板に傾き又はたわみが生じた場合には、乳房の厚みを精度よく計測することはできない。特許文献1及び特許文献2に記載の技術は、いずれも圧迫板の端部の高さを計測するものであるので、圧迫板の傾き又はたわみによる影響を考慮して乳房の厚みを精度良く測定することはできない。
【0008】
本開示の技術は、圧迫板の傾き又はたわみによる影響を考慮して乳房の厚みを精度良く測定することを可能とする放射線撮影システム、放射線撮影装置、情報処理装置、及び情報処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本開示の放射線撮影システムは、被検者の乳房が載置される撮影台と、撮影台に載置された乳房を圧迫する圧迫板と、圧迫板に設けられた2次元パターンを有するマーカと、圧迫された乳房に対して放射線を照射する放射線源と、マーカを含む可視光画像を撮影するカメラと、可視光画像に写ったマーカを示すマーカ像に基づいて、撮影台に対する圧迫板の高さ情報を導出する高さ情報導出部と、を備える。
【0010】
高さ情報導出部は、圧迫板の高さに応じたマーカ像の長さの変化率に基づいて、高さ情報を導出することが好ましい。
【0011】
カメラから撮影台までの距離をS、撮影台に対する圧迫板の高さがHの場合におけるマーカ像の一方向への長さをL(H)とした場合において、高さ情報導出部は、H=S×(1-L(0)/L(H))の関係式に基づいて、高さ情報を導出することが好ましい。
【0012】
高さ情報には、圧迫板の複数の位置における高さが含まれることが好ましい。
【0013】
2次元パターンは、枠状、格子状、ドット状、及びクロス状のうちのいずれか1つ又はそれらの組み合わせであることが好ましい。
【0014】
マーカは、圧迫板とは異なる色を有することが好ましい。
【0015】
マーカは、圧迫板に、部材を貼り付けることにより形成されていることが好ましい。
【0016】
マーカは、放射線透過性を有することが好ましい。
【0017】
マーカは、少なくとも一部が、乳房に重なる位置に配置されていることが好ましい。
【0018】
カメラは、放射線源を保持する保持部に設けられていることが好ましい。
【0019】
撮影台、圧迫板、マーカ、及びカメラは、放射線撮影装置に設けられており、高さ情報導出部は、放射線撮影装置に接続された情報処理装置に設けられていることが好ましい。
【0020】
本開示の放射線撮影装置は、被検者の乳房が載置される撮影台と、撮影台に載置された乳房を圧迫する圧迫板と、圧迫板に設けられた2次元パターンを有するマーカと、圧迫された乳房に対して放射線を照射する放射線源と、マーカを含む可視光画像を撮影するカメラとを備える。
【0021】
本開示の情報処理装置は、被検者の乳房が載置される撮影台と、撮影台に載置された乳房を圧迫する圧迫板と、圧迫板に設けられた2次元パターンを有するマーカと、圧迫された乳房に対して放射線を照射する放射線源と、マーカを含む可視光画像を撮影するカメラと、を備える放射線撮影装置に接続された情報処理装置であって、プロセッサを備え、プロセッサは、可視光画像に写ったマーカを示すマーカ像に基づいて、撮影台に対する圧迫板の高さ情報を導出する。
【0022】
本開示の情報処理方法は、被検者の乳房が載置される撮影台と、撮影台に載置された乳房を圧迫する圧迫板と、圧迫板に設けられた2次元パターンを有するマーカと、圧迫された乳房に対して放射線を照射する放射線源と、マーカを含む可視光画像を撮影するカメラと、を備える放射線撮影装置の情報処理方法であって、可視光画像に写ったマーカを示すマーカ像に基づいて、撮影台に対する圧迫板の高さ情報を導出する。
【発明の効果】
【0023】
本開示の技術によれば、圧迫板の傾き又はたわみによる影響を考慮して乳房の厚みを精度良く測定することを可能とする放射線撮影システム、放射線撮影装置、情報処理装置、及び情報処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】放射線撮影システムの構成の一例を示す模式図である。
図2】放射線撮影システムのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図3】圧迫板に設けられたマーカの一例を示す斜視図である。
図4】圧迫板の高さに応じた可視光画像の変化の一例を説明する図である。
図5】圧迫板に傾斜が生じた場合における可視光画像の変化の一例を説明する図である。
図6】マンモグラフィ装置及びコンソールに構成される機能構成の一例を示すブロック図である。
図7】高さ情報の導出処理の一例を説明する図である。
図8】高さ情報の一例を示す図である。
図9】平滑化処理の一例を説明する図である。
図10】撮影条件決定処理の一例を説明する図である。
図11】放射線撮影システムの作用の一例を示すフローチャートである。
図12】圧迫板で乳房を圧迫した状態の一例を示す図である。
図13】マーカの第1変形例を示す図である。
図14】マーカの第2変形例を示す図である。
図15】マーカの第3変形例を示す図である。
図16】複数の断層画像に基づいて合成2次元画像を生成する例を示す図である。
図17】マーカの他の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本開示の技術に係る実施形態を説明する。
【0026】
まず、一実施形態に係る放射線撮影システムの構成について説明する。図1は、本実施形態の放射線撮影システム2の構成を示す。
【0027】
図1に示すように、放射線撮影システム2は、コンソール20を介して外部のシステム(例えば、RIS:Radiology Information System)から入力された情報(例えば、撮影メニュー)に基づいて、医師又は放射線技師等のユーザの操作により放射線画像の撮影を行う機能を有する。
【0028】
放射線撮影システム2は、マンモグラフィ装置10及びコンソール20により構成される。マンモグラフィ装置10は、本開示の技術に係る「放射線撮影装置」の一例である。コンソール20は、開示の技術に係る「情報処理装置」の一例である。
【0029】
マンモグラフィ装置10は、被検者の乳房を撮影対象として放射線撮影を行う放射線撮影装置である。なお、マンモグラフィ装置10は、被検者が起立している状態のみならず、被検者が椅子等に座った座位状態において、被検者の乳房を撮影する装置であってもよく、少なくとも被検者の左右の乳房が別個に撮影可能な放射線撮影装置であればよい。
【0030】
マンモグラフィ装置10は、アーム部11と、基台12とを備えている。アーム部11は、軸部13を介して基台12に連結されている。アーム部11は、基台12によって、上下方向(Z軸方向)に移動可能に保持されている。また、アーム部11は、軸部13を回転軸として、基台12に回転可能に取り付けられている。アーム部11は、本開示の技術に係る「放射線源を保持する保持部」の一例である。
【0031】
アーム部11の下部には、撮影台14が設けられている。また、アーム部11の上部には、放射線源15が設けられている。放射線源15は、撮影台14の撮影面14Aに対応する位置に配置されている。撮影面14Aは、Z軸方向に直交するX軸方向及びY軸方向を含む平面である。撮影面14Aには、被検者の乳房が載置される。
【0032】
また、アーム部11には、Z軸方向に移動可能に圧迫板16が取り付けられている。圧迫板16は、撮影台14に対して近接する方向及び離間する方向に移動可能である。すなわち、圧迫板16は、撮影面14Aに対する高さが可変である。圧迫板16は、板状の圧迫部材であり、撮影面14Aに平行な上面16A及び下面16Bを有する。圧迫板16は、撮影面14Aに載置された乳房を、下面16Bで下側に押圧することにより、乳房を圧迫する。
【0033】
アーム部11の内部には、圧迫板16を移動させる移動機構17が設けられている。移動機構17は、ボールネジ17A及びモータ17Bを含んで構成されたリニアアクチュエータである。圧迫板16は、支持部18を介してボールネジ17Aに接続されている。圧迫板16は、モータ17Bが駆動することにより、撮影台14と放射線源15との間でスライド移動する。
【0034】
圧迫板16には、放射線源15が出射する放射線Rを透過する材料で形成されている。本実施形態の圧迫板16は、例えば、樹脂材料である熱可塑性プラスチック(例えば、ポリエチレンテレフタレート)により形成されている。なお、圧迫板16を形成する材料はこれに限らず、ポリカーボネート、アクリル、又はポリプロピレン等を用いることが可能である。また、圧迫板16は、可視光を透過させる透明な材料で形成されていることが好ましい。
【0035】
圧迫板16は、乳房全体を圧迫する形態に限らず、乳房の一部を圧迫する形態であってもよい。すなわち、圧迫板16は、乳房よりも小さくてもよい。また、圧迫板16は、乳房に接触する底部が壁部により囲まれた、断面形状が凹型の圧迫板であってもよい。また、本開示では、便宜上「圧迫板」と称しているが、圧迫板16は、板状の部材を用いたものに限定されず、例えば、フィルム状の部材を用いたものであってもよい。
【0036】
放射線源15は、放射線Rを出射する放射線管15Aと、放射線Rの照射野を限定するコリメータ15Bとを含んで構成されている。放射線源15は、圧迫板16により圧迫された乳房に対して放射線Rを照射する。放射線Rは、例えばX線である。
【0037】
撮影台14の内部には、放射線検出器19が設けられている。放射線検出器19は、放射線Rを検出する検出面が撮影面14Aと平行となるように配置されている。
【0038】
放射線検出器19は、放射線源15から出射され、圧迫板16及び乳房を透過した放射線Rを検出する。放射線検出器19は、いわゆるフラットパネルディテクタである。放射線検出器19は、2次元配列された放射線検出画素を有しており、放射線検出画素ごとに入射した放射線Rの線量を検出することにより、放射線画像を生成する。
【0039】
放射線検出器19は、例えば、放射線Rを可視光に変換し、変換した可視光を電荷に変換する間接変換方式の放射線検出器である。なお、放射線検出器19は、放射線Rを直接電荷に変換する直接変換方式の放射線検出器であってもよい。
【0040】
また、アーム部11の上部には、可視光画像を撮影するカメラ30が設けられている。カメラ30は、可視光VLを受光し、受光した可視光VLに基づいて可視光画像を生成する。カメラ30は、例えば、放射線源15の近傍に設けられている。カメラ30は、圧迫板16の上面16Aを含む領域を撮影するように画角θが設定されている。詳しくは後述するが、圧迫板16の上面16Aには、2次元パターンを有するマーカが設けられており、カメラ30は、少なくともマーカを含む領域を撮影する。カメラ30により生成された可視光画像は、コンソール20において、撮影台14に対する圧迫板16の高さ情報の導出に用いられる。
【0041】
本実施形態では、マンモグラフィ装置10の放射線検出器19により生成された放射線画像、及びカメラ30により生成された可視光画像は、コンソール20に送信される。コンソール20は、マンモグラフィ装置10の動作を制御する制御機能を有する。コンソール20は、無線通信LAN(Local Area Network)等を介して外部システム等から取得した撮影メニュー又は各種情報等を用いて、マンモグラフィ装置10の制御を行う。
【0042】
コンソール20は、コンピュータにより構成されている。コンソール20は、各種情報を表示する表示部21を有する。表示部21は、液晶ディスプレイ又は有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等のディスプレイ装置である。
【0043】
図2は、放射線撮影システム2のハードウェア構成の一例を示す。マンモグラフィ装置10は、放射線源15、圧迫板16、移動機構17、放射線検出器19、制御部40、記憶部41、I/F部42、及び操作パネル43を備えている。放射線源15、移動機構17、放射線検出器19、制御部40、記憶部41、I/F(Inter Face)部42、及び操作パネル43は、バス44を介して相互に各種情報の授受が可能に接続されている。
【0044】
制御部40は、例えば、CPU(Central Processing Unit)40A、RAM(Random Access Memory)40B、及びROM(Read Only Memory)40Cにより構成されている。ROM40Cには、CPU40Aで実行されるプログラム45を含む各種データが予め記憶されている。RAM40Cは、各種データを一時的に記憶する機能を有する。
【0045】
記憶部41は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等により構成されている。記憶部41には、放射線検出器19により生成された放射線画像、及びカメラ30により生成された可視光画像が記憶される。
【0046】
I/F部42は、無線通信又は有線通信により、コンソール20との間で各種情報の通信を行う機能を有する。
【0047】
操作パネル43は、例えば、タッチパネルディスプレイにより構成されており、ユーザにより入力される情報を受け付け、及び情報の表示を行う。ユーザは、操作パネル43を介して、撮影条件の確認、及び撮影開始指示などを行うことができる。制御部40は、操作パネル43を介して入力された指示に基づいて、マンモグラフィ装置10の各種制御を行う。
【0048】
コンソール20は、制御部50、記憶部52、I/F部54、表示制御部55、表示部21、操作入力検出部56、及び操作部57を備えている。制御部50、記憶部52、I/F部54、表示制御部55、及び操作入力検出部56は、バス58を介して相互に各種情報の授受が可能に接続されている。
【0049】
制御部50は、例えば、CPU50A、RAM50B、及びROM50Cにより構成されている。ROM50Cには、CPU50Aで実行されるプログラム59を含む各種データが予め記憶されている。RAM50Cは、各種データを一時的に記憶する機能を有する。
【0050】
I/F部54は、無線通信または有線通信により、マンモグラフィ装置10及び外部装置(図示せず)との間で各種情報の通信を行う機能を有する。外部装置は、例えば、RIS(Radiology Information System)である。
【0051】
表示制御部55は、上述の表示部21への各種情報の表示を制御する機能を有する。
【0052】
操作部57は、キーボード、マウス、タッチパネル、タッチペン等により構成されている。操作部57は、放射線画像の撮影等に関する指示、又は各種情報等を、ユーザが入力するため際に用いられる。なお、操作部57をタッチパネルとする場合は、操作部57を表示部21と一体化することが可能である。操作入力検出部56は、操作部57に対するユーザの操作を検出する機能を有する。
【0053】
図3は、圧迫板16に設けられた2次元パターンを有するマーカMの一例を示す。図3に示すマーカMは、スクリーン印刷等の方法により、圧迫板16の上面16Aにインクを塗布することにより形成されている。マーカMは、印刷形成に限られず、色付けされた樹脂製のフィルム等の部材を貼り付けることにより形成されていてもよい。
【0054】
本例では、マーカMは、2次元格子状に配置された複数のドットDにより構成されている。ドットDは、X軸方向及びY軸方向に等間隔に配列されている。ドットDのX軸方向への間隔及びY軸方向への間隔をそれぞれWとする。
【0055】
マーカMは、圧迫板16とは異なる色を有する。例えば、圧迫板16は透明であり、マーカMは黒色である。マーカM及び圧迫板16の色はこれに限定されず、他の色であってもよい。
【0056】
また、本例では、マーカMは、少なくとも一部が、撮影台14に載置された乳房に重なる位置に配置されている。仮にマーカMが放射線吸収性を有すると、放射線検出器19により生成される放射線画像にマーカ像が写り込むことにより、乳房の診断に支障をきたす。このため、本例では、マーカMは、放射線画像に写り込まないように、放射線透過性を有する材料により形成されている。なお、マーカMの放射線透過率は、100%に限られず、100%未満であってもよい。マーカMの放射線透過率は、放射線画像において視認されない程度の透過率であればよい。また、マーカMの放射線透過率は、圧迫板16の放射線透過率と同程度であればよい。マーカMと圧迫板16との放射線透過率が同程度であれば、放射線透過率が100%未満であっても、放射線画像においてマーカMの像が視認されることはない。
【0057】
カメラ30は、圧迫板16の上方から、マーカMが形成された上面16Aを撮像することにより可視光画像を生成する。可視光画像に写るマーカMの像の大きさは、撮影台14に対する圧迫板16の高さHに応じて変化する。
【0058】
図4は、圧迫板16の高さHに応じた可視光画像の変化を説明する。図4(A)は、H=0の場合にカメラ30により撮影される可視光画像PVの一例を示す。H=0は、圧迫板16の下面16Bを撮影台14の撮影面14Aに接触させることにより、圧迫板16と撮影台14との間隔を0とした状態である。この場合に、可視光画像PVに写ったマーカMの像(以下、マーカ像という。)MIに含まれるドットDの像(以下、ドット像という。)DIの間隔をL(0)とする。間隔L(0)は、X軸方向及びY軸方向に関して同一の値である。
【0059】
図4(B)は、H>0の場合にカメラ30により撮影される可視光画像PVの一例を示す。H>0は、圧迫板16の下面16Bを撮影台14の撮影面14Aから離間させることにより、圧迫板16と撮影台14との間隔を0より大きくした状態である。この場合に、可視光画像PVに写ったマーカ像MIに含まれるドット像DIの間隔をL(H)とする。圧迫板16が平坦であり、かつ撮影台14の撮影面14Aに平行である場合、すなわち、圧迫板16に傾き又はたわみが生じていない場合には、隣接する2つのドット像DIの間隔L(H)は、X軸方向及びY軸方向に関して一定の値を取る。なお、ドット像DIの間隔L(H)は、本開示の技術に係る「マーカ像の一方向への長さ」の一例である。
【0060】
H>0の場合は、H=0の場合よりもマーカMの位置がカメラ30に近づくことにより、可視光画像PVに写るマーカ像MIが拡大されるため、間隔L(H)は、間隔L(0)よりも大きくなる。詳しくは後述するが、間隔L(0)に対する間隔L(H)の割合が圧迫板16の高さHに依存するので、間隔L(0)及び間隔L(H)に基づいて高さHを導出することができる。
【0061】
図5は、圧迫板16に傾斜が生じた場合にカメラ30により撮影される可視光画像PVの一例を示す。図5に示すように、圧迫板16に傾斜が生じた場合には、可視光画像PVに写ったマーカ像MIに含まれるドット像DIの間隔L(H)が変化する。本例では、間隔L(H)は、Y軸方向に関する位置に応じて変化している。マーカ像MIに含まれるドット像DIの各々について、隣接するドット像DIとの間隔L(H)を求めることにより、圧迫板16の高さHの2次元分布を導出することができる。圧迫板16にたわみが生じた場合についても同様の手法により、圧迫板16の高さHの2次元分布を導出することができる。以下、圧迫板16の高さHの2次元分布を、高さ情報HIという。高さ情報HIには、圧迫板16の複数の位置における高さHが含まれる。
【0062】
図6は、マンモグラフィ装置10及びコンソール20に構成される機能構成の一例を示す。図6に示すように、マンモグラフィ装置10では、前述の制御部40(図2参照)が、放射線源15及び放射線検出器19を制御して放射線撮影させる放射線撮影制御部60として機能する。コンソール20では、前述の制御部50(図2参照)が、可視光画像PVに基づいて高さ情報HIを導出する高さ情報導出部61と、放射線撮影の撮影条件を決定する撮影条件決定部62として機能する。
【0063】
放射線撮影制御部60は、撮影条件決定部62により決定される撮影条件に基づき、放射線源15に含まれる放射線管15A(図1参照)の管電圧及び管電流と、放射線Rの照射時間とを制御する。管電圧、管電流、及び照射時間により、撮影対象としての乳房の被ばく線量が決まる。また、放射線撮影制御部60は、カメラ30を制御し、放射線のプレ撮影時に撮影を行わせる。
【0064】
高さ情報導出部61は、カメラ30により撮影される可視光画像PVに基づき、高さ情報HIを導出する。具体的には、高さ情報導出部61は、圧迫板の高さHに応じたマーカ像MIの長さの変化率に基づいて、高さ情報HIを導出する。撮影条件決定部62は、高さ情報導出部61により導出された高さ情報HIと、プレ撮影により得られたプレ撮影画像PXに基づいて、本撮影を行うための撮影条件を決定する。プレ撮影とは、撮影条件を決定するために、本撮影を行う前に低線量で行う放射線撮影である。
【0065】
図7は、高さ情報導出部61による高さ情報HIの導出処理の一例を説明する。カメラ30は、撮像素子31とレンズ32とを含む。撮像素子31は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型イメージセンサ等の2次元イメージセンサである。レンズ32は、1又は複数の光学レンズにより構成されている。撮像素子31は、レンズ32により撮像面31Aに結像された可視光VLの光学像を光電変換することにより可視光画像PVを生成する。
【0066】
図7において、fはカメラ30の焦点距離を表しており、Sはカメラ30から撮影台14までの距離を表している。より詳細には、fはレンズ32の主点から撮像素子31の撮像面31Aまでの距離であり、Sはレンズ32の主点から撮影台14の撮影面14Aまでの距離である。なお、図7では、説明の簡略化のために、圧迫板16の厚みを0として、圧迫板16の高さHに対応する位置にマーカMを示している。
【0067】
図7に示すように、圧迫板16の高さHが変化してもマーカMに含まれるドットDの間隔Wは変化せず一定である。このことから、幾何学的に以下の関係式(1)及び(2)が得られる。
L(0)/f=W/S ・・・(1)
L(H)/f=W/(S-H) ・・・(2)
【0068】
上記関係式(1)及び(2)をまとめて整理すると、以下の関係式(3)が得られる。
H=S(1-L(0)/L(H)) ・・・(3)
【0069】
高さ情報導出部61は、可視光画像PVに写ったドット像DIの各々について、隣接するドット像DIとの間隔L(H)を求め、求めた間隔L(H)を上記関係式(3)に代入することにより、高さHの2次元分布である高さ情報HIを導出する。なお、L(0)は、H=0とした状態においてカメラ30でマーカMを撮影することにより得られたドット像DIの間隔である。また、距離Sは設計値である。高さ情報導出部61は、間隔L(0)及び距離Sの値を予め保持している。
【0070】
なお、高さ情報導出部61は、関係式(3)で表される高さHと間隔L(H)との関係が記録されたLUT(Look Up Table)を参照することにより、高さ情報HIを導出してもよい。
【0071】
また、可視光画像PVに基づいた間隔L(H)の計測精度を高めるためには、ドット像DIの中心位置を精度よく求める必要がある。本実施形態では、ドットDは円形であるので、圧迫板16に傾き又はたわみが生じた場合には、ドット像DIは楕円に近い形状となる。このため、高さ情報導出部61は、ドット像DIを楕円近似することによりドット像DIの中心位置を求めたうえで、間隔L(H)を計測することが好ましい。
【0072】
図8は、高さ情報導出部61により導出される高さ情報HIの一例を示す。高さ情報HIは、高さHの2次元分布を表す3次元データである。高さ情報導出部61は、高さ情報HIを導出する際に、圧迫板16の複数の位置における高さHを表す離散的なデータに対して平滑化処理及び補完処理を行うことが好ましい。図9は、平滑化処理の一例を示している。平滑化処理を行うことにより、高さHの導出時に生じ得るノイズの影響を除去することができる。平滑化処理として、移動平均又はガウシアン等のフィルタ処理が用いられる。
【0073】
乳房を圧迫板16により圧迫した状態で高さ情報導出部61により導出される高さ情報HIにより、放射線撮影時において圧迫された乳房の厚み(以下、圧迫乳房厚という。)を正確に検出することができる。
【0074】
図10は、撮影条件決定部62による撮影条件決定処理の一例を説明する。図10に示すように、撮影条件決定部62は、プレ撮影画像PXに基づき、乳房像が写った領域70から、乳腺の含有率が一定値以上である領域(以下、高乳腺領域という。)71を特定する。
【0075】
具体的には、撮影条件決定部62は、乳腺組織及び脂肪組織に対する放射線Rの減弱係数に基づき、プレ撮影画像PXの各画素について乳腺含有率を求める。撮影条件決定部62は、画素ごとに乳腺含有率を求める際に、高さ情報HIに基づき画素ごとに圧迫乳房厚を求める。プレ撮影画像PXの画素値は、放射線源15からの放射線Rの到達線量に対応する。撮影条件決定部62は、画素値、減弱係数、及び圧迫乳房厚に基づいて乳腺含有率を算出する。この乳腺含有率の算出方法は、例えば、特開2020-000368号公報により知られている。本開示の技術によれば、高さ情報HIに基づき画素ごとに圧迫乳房厚を導出することが可能となるので、乳腺含有率を精度よく算出することができる。
【0076】
撮影条件決定部62は、高乳腺領域71の圧迫乳房厚及び乳腺含有率を求め、求めた圧迫乳房厚及び乳腺含有率に基づいて撮影条件を決定する。撮影条件には、管電圧、管電流、及び照射時間が含まれる。
【0077】
高乳腺領域71では、病変が乳腺内に隠れて見えにくいことが多いため、撮影条件を高乳腺領域71に対して最適な値とすることが好ましい。本開示の技術によれば、高乳腺領域71における圧迫乳房厚を正確に導出することができ、かつ乳腺含有率を精度よく導出することができるので、精度よく最適な撮影条件を決定することができる。
【0078】
次に、上記構成による作用について、図11に示すフローチャートを参照して説明する。まず、例えば、放射線技師は、撮影準備として、コンソール20の操作部57(図2参照)を操作することにより、撮影方法及びプレ撮影条件の設定を行う(ステップS10)。また、ステップS10において、放射線技師は、図12に示すように、マンモグラフィ装置10の撮影台14に載置された被検者80の乳房81を位置決めしたうえで、操作パネル43を操作することにより、圧迫板16で乳房81を圧迫する。このとき、圧迫板16には、傾き又はたわみが生じる可能性がある。
【0079】
次に、放射線撮影制御部60(図6参照)は、放射線技師が操作パネル43を用いて撮影開始操作を行ったか否かを判定する(ステップS11)。放射線撮影制御部60は、撮影開始操作が行われたと判定した場合には(ステップS11:YES)、カメラ30に、圧迫板16に形成されたマーカMを含む可視光画像PVの撮影を行わせる(ステップS12)。カメラ30により撮影された可視光画像PVは、コンソール20に送信される。
【0080】
コンソール20では、可視光画像PVに基づいて、高さ情報導出部61により高さ情報HIが導出される(ステップS13)。
【0081】
マンモグラフィ装置10では、放射線撮影制御部60は、放射線源15及び放射線検出器19を制御することにより、プレ撮影を実行させる(ステップS14)。放射線検出器19により生成されたプレ撮影画像PXは、コンソール20に送信される。
【0082】
コンソール20では、高さ情報HI及びプレ撮影画像PXに基づいて、撮影条件決定部62により撮影条件が決定される(ステップS15)。撮影条件決定部62により決定された撮影条件は、マンモグラフィ装置10に送信される。
【0083】
マンモグラフィ装置10では、放射線撮影制御部60は、コンソール20から受信した撮影条件に基づいて放射線源15及び放射線検出器19を制御することにより、本撮影(放射線本撮影)を実行させる(ステップS16)。本撮影において放射線検出器19により生成された放射線画像は、コンソール20に送信され、表示部21に表示される。
【0084】
以上のように、本開示の技術によれば、高さ情報導出部61は、可視光画像PVに写った2次元パターンを有するマーカMを示すマーカ像MIに基づいて圧迫板16の高さ情報HIを導出する。これにより、圧迫板16の傾き又はたわみによる影響を考慮して乳房の厚みを精度良く測定することができる。
【0085】
[変形例]
次に、上記実施形態の各種変形例について説明する。
【0086】
上記実施形態では、マーカMを複数のドットDからなるドット状としているが、マーカMは、少なくとも2方向への長さが測定可能な2次元パターンであればよい。マーカMの2次元パターンは、種々の変形が可能である。
【0087】
図13図15は、マーカMの変形例を示す。図13は、マーカMを構成する2次元パターンを格子状とした例である。本例では、例えば、X軸方向及びY軸方向への格子間隔をそれぞれWとし、可視光画像PVにおいて格子間隔Wに対応するマーカ像MIの長さをL(H)として計測すればよい。
【0088】
図14は、マーカMを構成する2次元パターンをクロス状とした例である。マーカMは、複数のクロス形状Cを含む。本例では、例えば、X軸方向及びY軸方向へのクロス形状Cの長さをWとし、可視光画像PVにおいて長さWに対応するマーカ像MIの長さをL(H)として計測すればよい。なお、クロス形状Cの長さに限られず、2つのクロス形状C間の距離をWとしてもよい。
【0089】
図15は、マーカMを構成する2次元パターンを枠状とした例である。本例では、例えば、X軸方向及びY軸方向への枠の辺の長さをWとし、可視光画像PVにおいて長さWに対応するマーカ像MIの長さをL(H)として計測すればよい。なお、本例では、マーカMは、大部分が乳房の外側に位置するので、マーカMは、放射線透過性を有するものでなくてもよい。すなわち、マーカMは、放射線吸収性を有する材料で形成されていてもよい。
【0090】
なお、図14及び図15に示す例では、圧迫板16において高さHが計測される位置が少ないため、補完処理を行うことにより、圧迫板16の全面について高さ情報HIを生成することが好ましい。
【0091】
上記実施形態では、マーカMを圧迫板16の上面16Aに形成しているが、圧迫板16が透明である場合には、マーカMを圧迫板16の下面16Bに形成してもよい。また、印刷又は部材の貼り付けによりマーカを形成することなく、圧迫板16の外周のエッジ部をマーカと捉え、可視光画像PVに写った圧迫板16のエッジ部の長さに基づいて高さ情報HIを導出してもよい。
【0092】
上記実施形態では、高さ情報HIを乳腺含有率の算出に用いることで乳腺含有率の精度を向上させている。さらに、高さ情報HIを、エネルギーサブトラクション画像を生成するためのエネルギーサブトラクション処理に適用することも可能である。エネルギーサブトラクションとは、エネルギー分布が異なる2種類の放射線を被写体に照射することにより得られた2枚の放射線画像の一方に適当な重み係数を乗算した上で減算(サブトラクト)することにより、特定の構造物が抽出された画像を取得する方法である(例えば、特許6667462号参照)。
【0093】
特許6667462号によれば、重み係数は、乳腺組織及び脂肪組織の放射線吸収係数に基づいて決定される。放射線吸収係数は、放射線のエネルギー、圧迫乳房厚、及び乳腺含有率に依存する。したがって、高さ情報HIに基づいて圧迫乳房厚及び乳腺含有率を精度よく導出することにより、エネルギーサブトラクション処理による物質(乳腺組織及び脂肪組織)の分離精度が向上する。この結果、乳腺組織が精度よく抽出された高画質のエネルギーサブトラクション画像が生成される。
【0094】
また、高さ情報HIを、トモシンセシス撮影において生成される複数の断層画像に基づいて合成2次元画像を生成する合成2次元画像生成処理に適用することも可能である。トモシンセシス撮影とは、複数の線源位置で放射線源から被写体に放射線を照射することにより得られた複数の投影画像を再構成することにより、複数の断層画像からなる3次元画像を生成する。合成2次元画像生成処理は、複数の断層画像を合成することにより、投影画像に相当する合成2次元画像を生成する。
【0095】
トモシンセシス撮影では、一例として図16に示すように、断層画像SPが撮影対象としての乳房81の範囲を含むように上下方向(Z軸方向)に余分に生成される。すなわち、複数の断層画像SPのうち一部は、圧迫板16又は撮影台14に交わる。これらの断層画像SPをすべて選択して合成すると合成2次元画像に写る乳房の画質が低下してしまう。特に、圧迫板16に傾き又はたわみが生じている場合には、圧迫板16に交わる断層画像SPを選択する可能性が高まる。これに対して、高さ情報HIを用いることにより、乳房81にのみ交わる断層画像SPを精度よく選択することができる。この結果、合成2次元画像に写る乳房の画質が向上する。
【0096】
また、上記実施形態及び変形例では、2次元パターンを有するマーカMを圧迫板16に形成しているが、所定の形状を有する1つのマーカMを圧迫板16に形成してもよい。一例として図17に示すように、圧迫板16において、撮影台14に載置された乳房81に重なる位置にマーカMを配置する。本例では、マーカMは、クロス形状を有する。可視光画像PVに写ったマーカ像に基づいて、マーカMが配置された位置における圧迫板16の高さ(すなわち圧迫乳房厚)を求めることができる。
【0097】
本例では、マーカMは、放射線透過性を有することが好ましい。本例では、マーカMは、放射線画像に写り込まないように、放射線透過性を有する材料により形成されている。なお、マーカMの放射線透過率は、100%に限られず、100%未満であってもよい。マーカMの放射線透過率は、放射線画像において視認されない程度の透過率であればよい。また、マーカMの放射線透過率は、圧迫板16の放射線透過率と同程度であればよい。マーカMと圧迫板16との放射線透過率が同程度であれば、放射線透過率が100%未満であっても、放射線画像においてマーカMの像が視認されることはない。
【0098】
上記の記載から、以下の付記項1~4に記載の技術を把握することができる。
[付記項1]
被検者の乳房が載置される撮影台と、
前記撮影台に載置された前記乳房を圧迫する圧迫板と、
前記圧迫板に設けられた放射線透過性を有するマーカと、
圧迫された前記乳房に対して放射線を照射する放射線源と、
前記マーカを含む可視光画像を撮影するカメラと、
前記可視光画像に写った前記マーカを示すマーカ像に基づいて、前記撮影台に対する前記圧迫板の高さ情報を導出する高さ情報導出部と、
を備える放射線撮影システム。
[付記項2]
被検者の乳房が載置される撮影台と、
前記撮影台に載置された前記乳房を圧迫する圧迫板と、
前記圧迫板に設けられた放射線透過性を有するマーカと、
圧迫された前記乳房に対して放射線を照射する放射線源と、
前記マーカを含む可視光画像を撮影するカメラと、
を備える放射線撮影装置。
[付記項3]
被検者の乳房が載置される撮影台と、前記撮影台に載置された前記乳房を圧迫する圧迫板と、前記圧迫板に設けられた放射線透過性を有するマーカと、圧迫された前記乳房に対して放射線を照射する放射線源と、前記マーカを含む可視光画像を撮影するカメラと、を備える放射線撮影装置に接続された情報処理装置であって、
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、前記可視光画像に写った前記マーカを示すマーカ像に基づいて、前記撮影台に対する前記圧迫板の高さ情報を導出する、
情報処理装置。
[付記項4]
被検者の乳房が載置される撮影台と、前記撮影台に載置された前記乳房を圧迫する圧迫板と、前記圧迫板に設けられた放射線透過性を有するマーカと、圧迫された前記乳房に対して放射線を照射する放射線源と、前記マーカを含む可視光画像を撮影するカメラと、を備える放射線撮影装置の情報処理方法であって、
前記可視光画像に写った前記マーカを示すマーカ像に基づいて、前記撮影台に対する前記圧迫板の高さ情報を導出する、
を備える情報処理方法。
【0099】
上記実施形態において、例えば、放射線撮影制御部60、高さ情報導出部61、及び撮影条件決定部62といった各種の処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造は、次に示すような各種のプロセッサ(processor)である。
【0100】
各種のプロセッサには、CPU、プログラマブルロジックデバイス(PLD:Programmable Logic Device)、専用電気回路等が含まれる。CPUは、周知のとおりソフトウェア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサである。PLDは、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の、製造後に回路構成を変更可能なプロセッサである。専用電気回路は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである。
【0101】
1つの処理部は、これら各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合せ(例えば、複数のFPGAや、CPUとFPGAの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成
してもよい。複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(SoC:System On Chip)等に代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのICチップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサを1つ以上用いて構成される。
【0102】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)である。
【0103】
本発明は、上記実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない限り種々の構成を採用し得ることはもちろんである。さらに、本発明は、プログラムに加えて、プログラムを非一時的に記憶する、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体にもおよぶ。
【符号の説明】
【0104】
2 放射線撮影システム
10 マンモグラフィ装置
11 アーム部
12 基台
13 軸部
14 撮影台
14A 撮影面
15 放射線源
15A 放射線管
15B コリメータ
16 圧迫板
16A 上面
16B 下面
17 移動機構
17A ボールネジ
17B モータ
18 支持部
19 放射線検出器
20 コンソール
21 表示部
30 カメラ
31 撮像素子
31A 撮像面
32 レンズ
40 制御部
40A CPU
40B RAM
40C ROM
41 記憶部
42 I/F部
43 操作パネル
44 バス
45 プログラム
50 制御部
50A CPU
50B RAM
50C ROM
52 記憶部
54 I/F部
55 表示制御部
56 操作入力検出部
57 操作部
58 バス
59 プログラム
60 放射線撮影制御部
61 高さ情報導出部
62 撮影条件決定部
70 乳房像が写った領域
71 高乳腺領域
80 被検者
81 乳房
θ 画角
C クロス形状
D ドット
DI ドット像
HI 高さ情報
M マーカ
MI マーカ像
PV 可視光画像
PX プレ撮影画像
R 放射線
SP 断層画像
VL 可視光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17