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特開2022-120220炭化水素を含酸素化合物に酸化する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022120220
(43)【公開日】2022-08-18
(54)【発明の名称】炭化水素を含酸素化合物に酸化する方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 41/01 20060101AFI20220810BHJP
   C07C 43/04 20060101ALI20220810BHJP
   B01J 23/63 20060101ALI20220810BHJP
   B01J 23/42 20060101ALI20220810BHJP
   B01J 23/656 20060101ALI20220810BHJP
   B01J 23/44 20060101ALI20220810BHJP
   B01J 23/72 20060101ALI20220810BHJP
   B01J 23/89 20060101ALI20220810BHJP
   B01J 27/185 20060101ALI20220810BHJP
   B01J 23/46 20060101ALI20220810BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220810BHJP
【FI】
C07C41/01
C07C43/04 D
B01J23/63 Z
B01J23/42 Z
B01J23/656 Z
B01J23/44 Z
B01J23/72 Z
B01J23/89 Z
B01J27/185 Z
B01J23/46 301Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019125057
(22)【出願日】2019-07-04
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業、研究領域「多様な天然炭素資源の活用に資する革新的触媒と創出技術」、研究課題「酸素原子シャトルによるメタン選択酸化反応プロセス開発」、研究題目「新規メタン選択酸化反応用触媒および膜システムの開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受けるもの
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(71)【出願人】
【識別番号】506060258
【氏名又は名称】公立大学法人北九州市立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【弁理士】
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】大山 茂生
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルギース,ヴィビン
(72)【発明者】
【氏名】ギャンプソン,アイザック・タイローン
(72)【発明者】
【氏名】尹 光男
(72)【発明者】
【氏名】櫛田 啓文
(72)【発明者】
【氏名】小林 靖和
(72)【発明者】
【氏名】高垣 敦
(72)【発明者】
【氏名】黎 暁紅
(72)【発明者】
【氏名】宋 揚
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA08
4G169BA01A
4G169BA02A
4G169BA02B
4G169BA04A
4G169BA04B
4G169BA05A
4G169BA05B
4G169BA06A
4G169BA06B
4G169BA07A
4G169BA08A
4G169BA09A
4G169BA10A
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BC09B
4G169BC10B
4G169BC13B
4G169BC17B
4G169BC21A
4G169BC22A
4G169BC26A
4G169BC31A
4G169BC31B
4G169BC32A
4G169BC33A
4G169BC35A
4G169BC37A
4G169BC39A
4G169BC40A
4G169BC40B
4G169BC43A
4G169BC43B
4G169BC50A
4G169BC50B
4G169BC51A
4G169BC51B
4G169BC52A
4G169BC54A
4G169BC55A
4G169BC56A
4G169BC58A
4G169BC59A
4G169BC60A
4G169BC62A
4G169BC62B
4G169BC63A
4G169BC64A
4G169BC66A
4G169BC67A
4G169BC68A
4G169BC70A
4G169BC70B
4G169BC71A
4G169BC72A
4G169BC72B
4G169BC73A
4G169BC74A
4G169BC75A
4G169BC75B
4G169CB07
4G169CB71
4G169DA06
4G169EA02Y
4G169EB18Y
4G169FB30
4H006AA02
4H006AC43
4H006BA05
4H006BA25
4H006BA26
4H006BA55
4H006BA60
4H006BB61
4H006BB62
4H006BC10
4H006BC11
4H006BC18
4H006BC37
4H006BE30
4H006BE44
4H006GN08
4H006GP01
4H006GP30
4H039CA61
4H039CC30
(57)【要約】      (修正有)
【課題】簡便かつ比較的温和な条件において、メタン等の炭化水素を気相において酸化し、ジメチルエーテル等の含酸素化合物を得るための新規手法の提供。
【解決手段】炭化水素を含酸素化合物に酸化する方法であって、触媒の存在下において、前記炭化水素をNOガス、NOガス及びOガスを含む混合ガスと接触させる工程を含む、該方法。好ましくは、係る接触工程が、NOガス又はNOガスがNに還元されない条件において行われる、該方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素を含酸素化合物に酸化する方法であって、触媒の存在下において、前記炭化水素をNOガス、NOガス及びOガスを含む混合ガスと接触させる工程を含む、該方法。
【請求項2】
前記接触工程が、NO又はNOがNに還元されない条件において行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記混合ガスが、Oガスの供給源として空気を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記混合ガスが、不活性ガス及び/又は水蒸気をさらに含む、請求項1~3のいずれ1に記載の方法。
【請求項5】
前記炭化水素が、メタン、エタン、プロパン、又はブタンである、請求項1~4のいずれか1に記載の方法。
【請求項6】
前記含酸素化合物が、エーテル化合物である、請求項1~5のいずれか1に記載の方法。
【請求項7】
前記炭化水素がメタンであり、前記含酸素化合物がジメチルエーテルである、請求項1~6のいずれか1に記載の方法。
【請求項8】
前記接触工程における気体成分の全体に対して、前記炭化水素が1~50モル%、前記NOガスが0.1~10モル%、前記Oガスが1~50モル%である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
その他の成分として、NOガスが0~10モル%、不活性ガスが1~70モル%、水蒸気が0~20モル%である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記NOガスが、HNO又はHNOの添加又は分解によって供給される、請求項1~9のいずれか1に記載の方法。
【請求項11】
前記接触工程が、200~430℃の範囲の温度において行われる、請求項1~10のいずれか1に記載の方法。
【請求項12】
前記接触工程が、1~100atmの範囲の圧力において行われる、請求項1~11のいずれか1に記載の方法。
【請求項13】
前記含酸素化合物の生成量が、1~200μmol・g-1・h-1以上である、請求項1~12のいずれか1に記載の方法。
【請求項14】
前記触媒が、担体上に支持された貴金属又は卑金属;担体上に支持された貴金属-貴金属の組み合わせ;担体上に支持された卑金属-卑金属の組み合わせ;又は、担体上に支持された貴金属-卑金属の組み合わせを含む、請求項1~13のいずれか1に記載の方法。
【請求項15】
前記貴金属が、Tc、Ru、 Rh、Pd、Ag、Os、 Ir、 Pt、 Au及びそれらの任意の組み合わせよりなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記卑金属が、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Hf、Ta、W、Re、Hg、Pb、Sn、Sb及びそれらの任意の組み合わせよりなる群から選択される、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記担体が、シリカ、アルミナ、チタニア、酸化亜鉛、トリア、イットリア、セリア、ジルコニア、カーボン、カーボンナノチューブ、マグネシア、カオリン、ベントナイト、珪藻土、シリカライト、ゼオライト、それらの任意の組み合わせよりなる群から選択される材料である、請求項14~16のいずれか1に記載の方法。
【請求項18】
前記触媒中に含まれる貴金属が、0.1~100モル%である、請求項14~17のいずれか1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化剤としてのOを用いてメタン等の炭化水素を気相において酸化し、ジメチルエーテル等の含酸素化合物を得る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新しい地質学的分野の発見やシェール鉱床からガスを抽出する方法の開発等により、天然ガスの利用可能性が増加している。天然ガスは、一般に、70~90%のメタンを含み、その高いH/C比のために石油又は石炭よりもクリーンな燃料であると考えられている。しかしながら、天然ガスは、採取源が遠隔地にあるものもあり、その場合には莫大な輸送費用を要する。輸送の際に用いられる極低温液化は、メタンの沸点が低い(-109℃)ために経済的に不利であり、一方で、パイプライン輸送は圧縮とインフラのコストが高いために非常に高価な方法である。したがって、天然ガス中のメタンを、メタノールやホルムアルデヒド、ジメチルエーテルのような高密度・高価値の液体生成物に直接変換することは、これらの問題を解決する手段として有効である。
【0003】
メタンは比較的非反応性であり、酸化には高温が必要であるため、メタンの含酸素化合物への部分酸化は容易ではない。そのため、メタンについて、様々な形質転換プロセスが研究されてきたが、これまで手法は、メタンから液体含酸素化合物への変換を間接的な反応経路により行うものがほとんどであった。
【0004】
例えば、従来の手法としては、1100K程度の高温において酸化アルミニウム担持ニッケル触媒上で水蒸気改質することにより、メタンを合成ガス(CO + H)への変換し、続いて、Cu/ZnO/Al触媒上で合成ガスからメタノールへ変換するという間接的な工程を用いるものがある(非特許文献1、2)。しかしなら、メタンの水蒸気改質プロセスは大量のエネルギーを消費し、高い資本コストおよび運転コストを伴うという課題が存在する。また、その他、不均一触媒を用いたメタンの気相酸化の従来手法では、いずれも反応条件として、430℃以上の高温条件や、30atmの高圧条件を必要とするものであり、或いは、活性酸化剤として金属酸化物を用いるものであった(例えば、非特許文献3、特許文献1、2)。また、これら従来法では、生成物である含酸素化合物はメタノールとホルムアルデヒドが主であり、エーテル類を得ることができる手法は報告はなされていない。
【0005】
また、メタンは非常に強いC-H結合を持つ対称分子であるため、メタンを変換するには強力な酸化剤を使用する必要がある。これまで検討されてきたH、NO、O、カルボン酸のような酸化剤は非常に高価な酸化剤であることに加え、高温の反応条件を必要とし、高温で酸化を制御することは困難であるため過酸化によってCOが発生するという問題があった。
【0006】
プロセスコストを有意に下げ、環境に有害な副生成物の形成を減少させるという観点から、液体含酸素化合物へのメタンの直接酸化を行い得る手法が求められているが、簡便かつ比較的温和な条件を用いてかかるメタンの直接酸化を行い用いる手法は、未だ開発されていないのが現状である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】J. P. Van Hook, Methane steam reforming, Catal. Rev. Sci. Eng. 21 (1980) 1-51.
【非特許文献2】K. G. Chanchlani, R. R. Hudgins, P. L. Silveston, Methanol synthesis from H2, CO, and CO2over Cu/ZnO catalysts, J. Catal. 136 (1992) 59-75.
【非特許文献3】D. A. Dowden, G. T. Walker, Oxygenated hydrocarbons production, Aug. 25, 1971, To Imperial Chemical Industries, Ltd.
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,414,195号
【特許文献2】米国特許第7,705,059号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、簡便かつ比較的温和な条件において、メタン等の炭化水素を気相において酸化し、ジメチルエーテル等の含酸素化合物を得るための新規手法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った結果、メタン等の炭化水素をNOガス、NOガス及びOガスを含む混合ガスと接触させることで、Oを最終的な酸化剤として炭化水素を含酸素化合物に選択的に変換することができることを見出した。さらに、かかる酸化反応が、比較的温和な温度及び気圧の条件で、かつ高い生成速度で行うことができることを見出した。これらの知見により、本発明を完成するに至ったものである。
【0011】
すなわち、本発明は、
<1>炭化水素を含酸素化合物に酸化する方法であって、触媒の存在下において、前記炭化水素をNOガス、NOガス及びOガスを含む混合ガスと接触させる工程を含む、該方法
を提供するものである。
【0012】
好ましい態様において、本発明は、
<2>前記接触工程が、NO又はNOがNに還元されない条件において行われる、上記<1>に記載の方法;
<3>前記混合ガスが、Oガスの供給源として空気を含む、上記<1>又は<2>に記載の方法;
<4>前記混合ガスが、不活性ガス及び/又は水蒸気をさらに含む、上記<1>~<3>のいずれ1に記載の方法;
<5>前記炭化水素が、メタン、エタン、プロパン、又はブタンである、上記<1>~<4>のいずれか1に記載の方法;
<6>前記含酸素化合物が、エーテル化合物である、上記<1>~<5>のいずれか1に記載の方法;
<7>前記炭化水素がメタンであり、前記含酸素化合物がジメチルエーテルである、上記<1>~<6>のいずれか1に記載の方法;
<8>前記接触工程における気体成分の全体に対して、前記炭化水素が1~50モル%、前記NOガスが0.1~10モル%、前記Oガスが1~50モル%である、上記<1>に記載の方法;
<9>その他の成分として、NOガスが0~10モル%、不活性ガスが1~70モル%、水蒸気が0~20モル%である、上記<8>に記載の方法;
<10>前記NOガスが、HNO又はHNOの添加又は分解によって供給される、上記<1>~<9>のいずれか1に記載の方法;
<11>前記接触工程が、200~430℃の範囲の温度において行われる、上記<1>~<10>のいずれか1に記載の方法;
<12>前記接触工程が、1~100atmの範囲の圧力において行われる、上記<1>~<11>のいずれか1に記載の方法;
<13>前記含酸素化合物の生成量が、1~200μmol・g-1・h-1以上である、上記<1>~<14>のいずれか1に記載の方法;
<14>前記触媒が、担体上に支持された貴金属又は卑金属;担体上に支持された貴金属-貴金属の組み合わせ;担体上に支持された卑金属-卑金属の組み合わせ;又は、担体上に支持された貴金属-卑金属の組み合わせを含む、上記<1>~<13>のいずれか1に記載の方法;
<15>前記貴金属が、Tc、Ru、 Rh、Pd、Ag、Os、 Ir、 Pt、 Au及びそれらの任意の組み合わせよりなる群から選択される、上記<14>に記載の方法;
<16>前記卑金属が、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Hf、Ta、W、Re、Hg、Pb、Sn、Sb及びそれらの任意の組み合わせよりなる群から選択される、上記<14>又は<15>に記載の方法;
<17>前記担体が、シリカ、アルミナ、チタニア、酸化亜鉛、トリア、イットリア、セリア、ジルコニア、カーボン、カーボンナノチューブ、マグネシア、カオリン、ベントナイト、珪藻土、シリカライト、ゼオライト、それらの任意の組み合わせよりなる群から選択される材料である、上記<14>~<16>のいずれか1に記載の方法;及び
<18>前記触媒中に含まれる貴金属が、0.1~100モル%である、上記<14>~<17>のいずれか1に記載の方法
を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、触媒の存在下において炭化水素をNOガス、NOガス及びOガスを含む混合ガスと接触させるという新規な手法を用いることで、Oを最終的な酸化剤としてメタン等の炭化水素を、高密度・高価値の液体生成物であるジメチルエーテル等の含酸素化合物に選択的に変換することができる。また、かかる酸化反応が、従来のように高温又は高圧下の条件を用いずとも、比較的温和な条件で行うことができ、かつ高い生成速度が得られるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、酸化剤としてNO/O(CH:NO:O=20:1:1)及びO(CH:O=20:1)、触媒としてPt/Yを用いて行ったメタン酸化の転化率を示すグラフである(圧力:1atm、空間速度6,000 L kgcat-1h-1)。
図2図2は、1)Pt/Y上のNO/O(CH:NO:O=20:1:1)、2)Y上のNO/O(CH:NO:O=20:1:1)、3)Pt/Y上のOのみの各種条件における含酸素生成物の選択性を示すグラフである(圧力:1atm、空間速度6,000 L kgcat-1h-1)。
図3図3は、Pt/SiO上のNO/O(CH:NO:O=20:1:1)における酸素及びNOの転換率を示すグラフである(圧力:1atm、空間速度6,000 L kgcat-1h-1)。
図4図4は、NOからNOへの転化反応についての熱力学的平衡曲線を示すグラフである。
図5図5は、Pt/Y触媒を用いた反応系において、反応ガスの接触時間に依存したDMEの選択性を示すグラフである。
図6図6は、Pt/Y触媒を用いた反応系において、メタン転化率とDMEの選択性におけるNO分圧の依存性を示すグラフである。
図7図7は、触媒の非存在下におけるメタン転化率を示すグラフである。
図8図8は、触媒の非存在下における酸素及びNOの転換率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施することができる。
【0016】
本発明は、炭化水素を含酸素化合物に酸化する新規な方法であり、触媒の存在下において、前記炭化水素をNOガス、NOガス及びOガスを含む混合ガスと接触させる工程(以下、「接触工程」という場合がある。)を含むことを特徴とする。
【0017】
混合ガス中のNOとOは、容易に反応してNOを形成し、当該生成したNOは困難なメタンの酸化反応における強力な酸化剤となり得る。本発明の方法では、酸化剤としてOとNOを用いる点で、従来には無い特徴を有するものである。当該NOの生成は、以下の可逆反応により表すことができる。
【数1】
【0018】
一般に、メタン等の炭化水素は反応性が乏しく、転化反応のためには高温が必要とされるため、メタンをメタノール、ホルムアルデヒド、ジメチルエーテルなどの含酸素化合物に選択的に酸化することは困難である。これに対し、本発明では、混合ガス中のNOとOから生じる強力な酸化剤NOを使用することによって、高温条件を回避し、低温条件下でも炭化水素の酸化が可能となることを見出したものである。そして、NOは触媒と相互作用し、炭化水素の酸化に使用される酸素源を提供する。本発明では、気相または触媒のいずれかにおいて、混合ガス中にOによりNOに酸化される可能性のあるNOの形成も生じる。それゆえ、反応全体としては、NOは消費されない。
【0019】
メタン等の炭化水素を官能化するために必要とされるタイプの酸化における大きな課題は、O分子中の両方の酸素原子の使用である。すなわち、Oは対称的な分子に見えるが、一方の酸素原子が消費された後、残りの酸素原子は比較的反応性を有しない。これを還元するためには還元剤を必要とする。かかる還元剤としてはNADH(ニコチンアミドジヌクレオチド)等があるが、高価な試薬であり用いることは実用的ではない。酸素を酸化剤として用いる場合、一般的に使用される形態としては、H、NO、O、カルボン酸があるが、これらは一酸素原子の酸化剤であり、高価で実用的ではなく、また、反応後は、HO、N、O、又はアルコールなどの複製生物が生じるという問題がある。
【0020】
これに対し、本発明では、NO及びNOは少量で使用され、そして閉サイクルで反応し、望ましくないNは生じない。NO及びNOは上述のように可逆反応に関与しているため、反応系における最終的な酸化剤は分子状酸素(O)である。このような酸化反応系は、従来報告はなされておらず、本発明はメタン等の炭化水素を酸化するための新規かつ経済的な手段を提供するものであるといえる。
【0021】
好ましい態様において、本発明における接触工程は、NO又はNOがNに還元されない条件において行われる。当該条件は、後述のように適切な反応温度や圧力、触媒の種類等によって調節することができ、これにより副生成物としてのNの生成を抑制することができる。
【0022】
混合溶液中のNOガスは、気体のNOをそのまま添加してもよいし、硝酸(HNO)や亜硝酸(HNO)の添加又は分解によって供給されることもできる。上述のように、NOはOによってNOに酸化され、当該変換は可逆反応であるので、これら3つの種のうちの任意の2つを加えることで第3の種が生じる。
【0023】
本発明において用いられる炭化水素としては、広く直鎖又は分岐の飽和炭化水素又は不飽和炭化水素を用いることができる。炭化水素の例としては、メタン、エタン、エチレン、プロパン、プロピレン、ブタン、ブチレン、シクロヘキサン、又はベンゼンなどの化合物を挙げることができる。好ましくは、炭化水素はアルカンであり、より好ましくは、炭素数1~10のアルカンである。そのようなアルカンとしては、メタン、エタン、プロパン、又はブタンであることができる。好ましくは、本発明において用いられる炭化水素は、メタン又はプロパンである。
【0024】
本発明によって得られる含酸素化合物は、原料となる炭化水素の酸化(部分酸化)によって分子構造中に酸素原子を有する化合物であれば特に限定されない。好ましくは、含酸素化合物はエーテル化合物である。例えば、炭化水素がメタンである場合、その部分酸化によって得られる含酸素化合物がジメチルエーテルであることが好ましい。ジメチルエーテルは、ZSM5触媒等を使用してオレフィンを形成するために使用される有用な中間体であり、また、ディーゼル燃料の代わりとしてそれ自体で使用可能である。上述のように、メタンの酸化によりジメチルエーテルを直接得る手法は従来知られておらず、本発明により初めて達成されたものである。
【0025】
また、混合溶液中のOガスは、特定量の酸素分子(O)を含むものであれば特に制限されない。Oガスは空気中の酸素であることでき、この場合、混合ガスは、Oガスの供給源として空気を含む。
【0026】
また、場合により、混合ガスが、不活性ガス及び/又は水蒸気をさらに含むことができる。不活性ガスを用いることにより、混合ガス中のNO等の各成分の濃度を適宜調節することができる。水蒸気を用いることで、反応温度を一定に保つのが容易とすることができ、また、反応中に触媒表面上に生成する炭素質残留物の除去に有効に働くためである。そのような不活性ガスとしては、Ar、He、N2などを用いることができる。
【0027】
本発明の接触工程における気体成分に比率は、対象とする炭化水素や所望の反応速度等に応じて適宜設定することができるが、例えば、気体成分全体に対して、炭化水素が1~50モル%;NOガスが0.1~10モル%;Oガスが1~50モル%の範囲であることができる。また、その他の成分として、NOガスが0~10モル%;不活性ガスが1~70モル%、水蒸気が0~20モル%の範囲であることができる。より好ましくは、炭化水素が10~50モル%;NOガスが0.1~5モル%;O2ガスが1~20モル%の範囲であることができる。また、その他の成分として、NOガスが0~10モル%;不活性ガスが1~50モル%、水蒸気が0~10モル%の範囲であることができる。
【0028】
上記接触工程は、好ましくは、200~430℃の範囲の温度、より好ましくは、200~400℃の範囲の温度において行われる。すなわち、本発明の方法は、従来よりも低温領域において炭化水素の酸化を行うことができる。
【0029】
また、上記接触工程は、好ましくは、1~100atmの範囲の圧力、より好ましくは1~10atmの範囲の圧力において行われる。特に好ましくは、上記接触工程は、1atmの常圧条件下で行うことができる。すなわち、本発明の方法は、従来のように高圧条件を用いずに、炭化水素の酸化を行うことができる。
【0030】
本発明の接触工程において用いられる触媒は、典型的には、金属種を含む触媒である。好ましくは、担体上に支持された金属種を含む触媒である。そのような触媒の例としては、担体上に支持された貴金属又は卑金属;担体上に支持された貴金属-貴金属の組み合わせ;担体上に支持された卑金属-卑金属の組み合わせ;又は、担体上に支持された貴金属-卑金属の組み合わせを挙げることができる。これら貴金属又は卑金属は、2種類以上を用いることができる。
【0031】
ここで、本明細書中において、卑金属(M)は、貴金属(M)よりも低い標準還元電位(E )を有するものを意味する。卑金属(M)は、典型的には、+0.4V未満、好ましくは負の標準還元電位を有し、貴金属(M)は、典型的には、正の標準還元電位、好ましくは+0.4v以上の標準還元電位を有する。別の観点から、卑金属(M)と前記貴金属(M)の総還元電位(ΔE Total)が0Vより大きいことが好ましい。
【0032】
本発明において用いられる貴金属(M)は、好ましくは、Tc、Ru、 Rh、Pd、Ag、Os、 Ir、 Pt、 Au及びそれらの任意の組み合わせよりなる群から選択される遷移金属である。より好ましくは、Rh、Pd、Ir、 Pt、及びそれらの任意の組み合わせよりなる群から選択される。さらに好ましくは、Pd、Pt、Ru、及びそれらの任意の組み合わせよりなる群から選択される。最も好ましくは、貴金属は、Ptである。
【0033】
本発明において、卑金属(M)は、好ましくは、Ce、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Hf、Ta、W、Re、Hg、Pb、Sn、Sb及びそれらの任意の組み合わせよりなる群から選択される遷移金属である。より好ましくは、Ce、Ti、Y、Zr、及びそれらの任意の組み合わせよりなる群から選択される。
【0034】
担体上に支持される複数の金属種の比率は適宜調製することが可能であるが、例えば、上記触媒が「担体上に支持された貴金属-卑金属の組み合わせ」である場合、[M[M1 - xの式で表されるバイメタル合金であることができる。当該式において、好ましくは、xが0.01~0.99の範囲である。より好ましくは、xが0.05~0.95の範囲である。さらに好ましくは、xが0.10~0.90の範囲である。かかる範囲内とすることでバイメタル合金の触媒活性を制御することができる。
【0035】
本発明の接触工程において用いられる触媒が担体上に支持された金属種を含む態様である場合、好ましくは、担体上の金属種の担持量が0.1~80重量%である。より好ましくは、担体上の金属種の担持量が、0.5~40重量%である。さらに好ましくは、担体上の担体上に支持された貴金属の担持量が、1~20重量%である。かかる範囲内とすることで触媒活性と溶液中での分散性のバランスを調整することができる。
【0036】
担体上に担持される金属種は、粒子又は表面相の形態であることができる。例えば、金属種が粒子である場合、0.5nm~5μmの粒子サイズを有することができる。このように担体上に担持することにより、担体表面上に金属種が効率的に分散され、バルク形態の金属と比較して表面性を増加させることができ、より優れた触媒性能を提供することが可能となる。
【0037】
上記触媒中の担体は、好ましくは、高表面積を有する材料であり、ここで「高表面積」とは、典型的には、10m/g、好ましくは20m/g以上の表面積を意味する。かかる担体の具体例としては、シリカ、アルミナ、チタニア、酸化亜鉛、トリア、イットリア、セリア、ジルコニア、カーボン、カーボンナノチューブ、マグネシア、カオリン、ベントナイト、珪藻土、シリカライト、ゼオライト、それらの任意の組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
好ましくは、担体は、シリカ含有材料であることができ、かかるシリカ含有材料の例としては、シリカ-アルミナ、シリカ-チタニア、シリカ-マグネシア、又はシリカ-ジルコニアを挙げることができる。また、シリカ又はシリカ含有材料は、火炎加水分解、ゾル-ゲル法、沈殿、又は縮合によって調製された材料であることができる。
【0039】
また、本発明の接触工程において用いられる触媒の活性、選択性、または安定性を向上させるために触媒に1つ以上の促進剤を添加することができることも当業者には明らかであろう。例えば、触媒の活性や選択性、安定性等を向上されるための促進剤が当該技術分野において公知であり、かかる促進剤を添加することもできる。例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン化物、ならびにホウ素、炭素、窒素、アルミニウム、硫黄、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、スズ、アンチモン、ビスマス、セレン、そしてテルルなどの元素を含む化合物を挙げることができる。
【実施例0040】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0041】
以下に示す実施例では、直接メタン酸化における触媒の反応性を、CHと、OとNOとの様々な組み合わせとの混合物、及び不活性ガスを含むフィードガスを使用して充填床反応器(packed-bed flow reactor)を用いて検証した。反応条件では、平衡反応[2NO +O⇔NO]が作用し、それは右辺のNO生成側に有利であるので、供給された酸素の一部はこの反応によって消費される。爆発限界を回避するためにメタンに富むガス組成が使用され、そして酸化剤量が制限されたことにより、最大メタン転化率の結果が低いものとなっている点に留意すべきである。例えば、[CH:O3:NO:不活性ガス=1:0.05:0.05:3.9]の反応物比では、利用可能なOの半分を使用してNOが酸化され、残り半分のOによりCHが酸化されることとなるため、CHの最大転化率は0.05×1/2×2/1.0=5%であった(なお、式中の2は、Oが2つの酸素原子で構成されていることによる)。以下の実施例に示すCH転化率は、このように反応物組成の制限により、見かけ上、低く示されている。
【0042】
実施例において、反応の生成物は、並列に接続された2つのガスクロマトグラフ(GC)及び1つのフーリエ変換赤外(FTIR)分光計の組み合わせによって分析された。液体の凝縮を防ぐために反応器出口を100℃に加熱した。出口ラインにおける生成物の過剰酸化を減少させるために、100ml/分のアルゴン流を使用して反応器から生成ガスを排出させた。
【0043】
クロマトグラフは、生成物の酸化を最小限に抑えるために可能な最短の接続距離を使用してT型コネクタを使用して反応器出口から等距離(30cm)に配置した。二酸化炭素、ホルムアルデヒド、ジメチルエーテルについて分析するために、バリア放電イオン化検出器(BID)およびRestekキャピラリーカラム(直径30m×0.32mm内径×10μmフィルム)を備えた1つのクロマトグラフ(Shimadzu GC-2010)を使用した。また、メタノール、水、ニトロメタン、ニトロソメタン、亜硝酸メチル、ギ酸および酢酸。一酸化炭素、窒素、水素、酸素およびメタンの定量には、熱伝導率検出器(TCD)及びモレキュラーシーブ5A(3m×3mm内径)カラムを備えた別のクロマトグラフ(Shimadzu GC - 8A)を使用した。
【0044】
NO、NO及び亜酸化窒素の検出には、4000~1000cm-1の領域において4cm-1の分解能を有するMCT検出器及び長さ15cmのガスセルを備えたFTIR分光計(JASCO FT / IR - 6100)を用いた。標準ガス混合物および認証ガス混合物を用いて機器を較正した。
【0045】
「全メタン(CH)転化率」は、観察された全生成物中における炭素原子のモル数を、供給されたメタンの初期モル数で割ることによって計算した。「全酸素転化率」は、供給された酸素のモル数に対する反応した酸素のモル数の比として計算した。「全一酸化窒素転化率」は、反応したNOのモル数から計算した。「COxおよびNOx化合物への酸素転化率」は、これらの生成物のモル数を初期酸素モル数で割って計算した。炭素、酸素および窒素の収支は100±5%に近いものであった。
【0046】
実施例1.Pt/Y触媒の調製
10gのY(日本イットリウム(株)、99.9%、SBET=180m-1)支持体上に、0.54gのHPtCl・6HO(和光、98.5%)水溶液を含浸させることによって、酸化イットリウム上に担持された白金を含む触媒を調製した。Pt担持量は、2重量%(0.10mmol/g担持体)であった。含浸後、サンプルを100℃で一晩乾燥させ、その後、空気下において3時間400℃(10℃/分)で焼成した。次いで、触媒をペレット化し、650~1180μmの大きさに篩い分けした。
【0047】
実施例2.メタンの直接部分酸化における反応性の検証
長さ27.5cmの管状石英反応器(外径1.0cm/内径0.75cm)を用いて、大気圧で275~400℃の温度範囲において、メタンの直接部分酸化の活性を測定した。反応ガスは、メタン(99.9%)、ヘリウム中20%酸素(認定混合物グレード)、12%一酸化窒素(認定混合物グレード)、及びアルゴン(99.9%)(バランスガス)である。当該反応ガスを、100 ml(NTP)min-1(68 μmols-1)の速度で反応器に供給した。全てのガスは東京高圧山崎株式会社から購入した。
【0048】
活性試験の前に、1.0gの触媒を石英ウール栓上に担持することにより反応器の中央の2cm部分に装填した。次に、触媒を水素下で400℃で2時間前処理した。PCH4=20kPa、PO2=1~3kPa、PNO=1kPa、PHe=13.5kPa(内部標準)、およびPAr=65.5kPa(バランスガス)の分圧を有する反応ガスを、反応器に供給する前にマニホールド中で混合した。反応ガス比は、CH:O:NO:不活性ガス=[1:0.05:0.05:3.9]又は[1:0.05:0:3.9]であり、空間速度は6000Lkg-1-1(床容積に基づいて5900h-1)であった。触媒は、反応ガスの流通下で400℃で4~5時間安定化した。反応温度は以下の順序で変化させた:400℃、325℃、275℃、300℃、350℃及び375℃。
【0049】
まず、実施例1で得たPt/Y触媒を用いて、メタンの部分酸化を行った。活性試験は、酸化剤として[NO/O]及び[O(NO無)]を使用した。図1は、酸化剤としてNO/O及びOを使用したメタン転化率を、温度の関数として示したグラフである。温度順に従った滑らかな変換曲線は、触媒の安定性および測定の過程において失活が生じていないことを示している。図1及び後述の表1に示すように、メタン転化率は、NO/OよりもOの方が高かった。なお、図1中の[Y(w NO)]は、Ptを用いない触媒を用いた比較例である。
【0050】
【表1】
【0051】
図2は、図1の条件における生成物ジメチルエーテル(DME)選択性を示すグラフである。生成物DMEは、Pt/Y触媒を用い、酸化剤としてNO/O混合物を使用した場合のみ得られた。一方、Ptを含まないY触媒単独の場合にはDMEが生成しなかった。また、NOを添加しない場合(酸化剤がOのみ)にもDMEも得られなかった。これらの結果は、NO/Oと同様に、Ptの存在がDMEの生成に好適であることを示している。加えて、
図1図2を見ると、酸化剤をNO/OとするPt/Y触媒の場合には、メタン転化率は温度とともに増加するが、DME選択性は温度とともに低下することが分かった。
【0052】
図3は、図1の条件におけるPt/Y上でのメタン酸化について、温度の関数として、OとNOの転化率、ならびにその生成物であるNOとNの選択率を示す。転化率は点記号(×、+、*、★)、選択性は塗りつぶし記号(●、▲)で表している。
【0053】
図3に示すように、全酸素転化率は50%近くで始まり、温度が上昇してもそれほど変化しない。これは、温度が上昇するにつれて、NOへの酸素変換が減少し、一方、含酸素化合物への酸素変換が増加し、そして2つが互いに相殺するためである。NO転化率は88%近くで始まりそして温度の上昇と共に減少する。これは熱力学的に予測に従うものである。また、NO反応における選択性は、もっぱらNOに対してであり、Nは生成しなかった。これは、NO及びNOがOとの平衡反応を通して循環しており、Nを形成するためのいかなる化学量論的反応においても酸化剤として作用していないことを示している。
【0054】
実施例3.Pt/CeO触媒の調製及び活性試験
実施例1と同じ方法を用いて、2重量%のPt担持量(0.10mmol /g担持)で、CeO(第一稀元素化学工業社製、SBET=92m-1)上に担持された白金を含む触媒を調製した。
【0055】
実施例2で用いた反応器システム、反応ガスおよび反応ガス組成(CH:O:NO:不活性ガス=1:0.05:0.05:3.9)を使用して、Pt/CeO上のメタンの直接部分酸化に関する活性試験を行った。活性試験の前に、0.3gのPt/CeO触媒をウールプラグ上に担持することによって反応器の中心に装填し、触媒を石英砂と均一に混合して触媒床高さ2cmとした。次に、触媒を水素下で400℃で2時間前処理し、前処理後に触媒をアルゴン流下で375℃に冷却した。触媒は、反応ガスの流通下、375℃で4~5時間安定化されました。反応温度は、375℃、325℃、275℃、300℃、350℃の順で変化させた。
【0056】
Pt/CeO上におけるメタンの直接部分酸化の活性試験は、325℃以下でDMEを生成し、275℃でDMEの最大生産性を与えた(67μmolh-1-1)(表2を参照)。325℃以下では、NO反応の選択性はもっぱらNOになり、Nは生成しなかった。これは、NO及びNOがOとの平衡反応を通して循環しており、Nを形成するためのいかなる化学量論的反応においても酸化剤として作用していないことを示している。この結果は、実施例2と同様である。
【0057】
実施例4.Pt/ZrO触媒の調製及び活性試験
実施例1と同じ方法を用いて、2重量%のPt担持量(0.10mmol /g担持)で、ZrO(第一稀元素化学工業社製、SBET=100m-1)上に担持された白金を含む触媒を調製した。
【0058】
実施例3で用いた反応器システム、反応ガスおよび反応条件を用いて、Pt/ZrO上のメタンの直接部分酸化に関する活性試験を行った。Pt/ZrO上におけるメタンの直接部分酸化の活性試験は、325℃以下でDMEを生成し、275℃でDMEの最大生産性を与えた(90μmolh-1-1)(表2を参照)。325℃以下では、NO反応の選択性はもっぱらNOになり、Nは生成しなかった。これは、NO及びNOがOとの平衡反応を通して循環しており、Nを形成するためのいかなる化学量論的反応においても酸化剤として作用していないことを示している。この結果は、実施例2と同様である。
【0059】
実施例5.Pt/TiO触媒の調製及び活性試験
実施例1と同じ方法を用いて、2重量%のPt担持量(0.10mmol /g担持)で、TiO(第一稀元素化学工業社製、SBET=300m-1)上に担持された白金を含む触媒を調製した。
【0060】
実施例3で用いた反応器システム、反応ガスおよび反応条件を用いて、Pt/TiO上のメタンの直接部分酸化に関する活性試験を行った。Pt/TiO上におけるメタンの直接部分酸化の活性試験は、325℃以下でDMEを生成し、275℃でDMEの最大生産性を与えた(16μmolh-1-1)(表2を参照)。325℃以下では、NO反応の選択性はもっぱらNOになり、Nは生成しなかった。これは、NO及びNOがOとの平衡反応を通して循環しており、Nを形成するためのいかなる化学量論的反応においても酸化剤として作用していないことを示している。
【0061】
実施例6.Pt/Y-ZrO触媒の調製及び活性試験
実施例1と同じ方法を用いて、2重量%のPt担持量(0.10mmol /g担持)で、14%Y-ZrO(第一稀元素化学工業社製)上に担持された白金を含む触媒を調製した。
【0062】
実施例3で用いた反応器システム、反応ガスおよび反応条件を用いて、Pt/Y-ZrO上のメタンの直接部分酸化に関する活性試験を行った。Pt/Y-ZrO上におけるメタンの直接部分酸化の活性試験は、325℃以下でDMEを生成し、275℃でDMEの最大生産性を与えた(53μmolh-1-1)(表2を参照)。325℃以下では、NO反応の選択性はもっぱらNOになり、Nは生成しなかった。これは、NO及びNOがOとの平衡反応を通して循環しており、Nを形成するためのいかなる化学量論的反応においても酸化剤として作用していないことを示している。
【0063】
実施例7.Pt/PO-ZrO触媒の調製及び活性試験
実施例1と同じ方法を用いて、2重量%のPt担持量(0.10mmol /g担持)で、8%PO-ZrO(第一稀元素化学工業社製)上に担持された白金を含む触媒を調製した。
【0064】
実施例3で用いた反応器システム、反応ガスおよび反応条件を用いて、Pt/PO-ZrO上のメタンの直接部分酸化に関する活性試験を行った。Pt/PO-ZrO上におけるメタンの直接部分酸化の活性試験は、325℃以下でDMEを生成し、275℃でDMEの最大生産性を与えた(15μmolh-1-1)(表2を参照)。325℃以下では、NO反応の選択性はもっぱらNOになり、Nは生成しなかった。これは、NO及びNOがOとの平衡反応を通して循環しており、Nを形成するためのいかなる化学量論的反応においても酸化剤として作用していないことを示している。
【0065】
実施例8.PtMgO/CeO触媒の調製及び活性試験
5gのCeO支持体上に、0.27gのHPtCl・6HO及びMg(NO)・6HO(シグマ・アルドリッチ、98%)水溶液を含浸させることによって、酸化イットリウム上に担持された白金及びマグネシム(添加剤)を含む触媒を調製した。Pt担持量は2重量%(0.10mmol/g担持体)、Mg担持量は0.40mmol/g担持体であった。含浸後、サンプルを100℃で一晩乾燥させ、その後、空気下において3時間400℃(10℃/分)で焼成した。次いで、触媒をペレット化し、650~1180μmの大きさに篩い分けした。
【0066】
実施例3で用いた反応器システム、反応ガスおよび反応条件を用いて、PtMgO/CeO上のメタンの直接部分酸化に関する活性試験を行った。PtMgO/CeO上におけるメタンの直接部分酸化の活性試験は、350℃以下でDMEを生成し、325℃でDMEの最大生産性を与えた(65μmolh-1-1)(表2を参照)。350℃以下では、NO反応の選択性はもっぱらNOになり、Nは生成しなかった。これは、NO及びNOがOとの平衡反応を通して循環しており、Nを形成するためのいかなる化学量論的反応においても酸化剤として作用していないことを示している。
【0067】
実施例9.PtCaO/CeO触媒の調製及び活性試験
実施例8と同様のモル添加量の金属及び添加剤を用いる方法を用いて、カルシウム前駆体としてCa(NO・4H2O(シグマ・アルドリッチ、99%)をCeOに担持した白金およびカルシウム(添加剤)を含む触媒を調製した。
【0068】
実施例3で用いた反応器システム、反応ガスおよび反応条件を用いて、PtCaO/CeO上のメタンの直接部分酸化に関する活性試験を行った。PtCaO/CeO上におけるメタンの直接部分酸化の活性試験は、375℃以下でDMEを生成し、325℃でDMEの最大生産性を与えた(145μmolh-1-1)(表2を参照)。375℃以下では、NO反応の選択性はもっぱらNOになり、Nは生成しなかった。これは、NO及びNOがOとの平衡反応を通して循環しており、Nを形成するためのいかなる化学量論的反応においても酸化剤として作用していないことを示している。
【0069】
実施例10.PtMnO/CeO触媒の調製及び活性試験
実施例8と同様のモル添加量の金属及び添加剤を用いる方法を用いて、マンガン前駆体としてMnCl・4H2O(シグマ・アルドリッチ、99%)をCeOに担持した白金およびマンガン(添加剤)を含む触媒を調製した。
【0070】
実施例3で用いた反応器システム、反応ガスおよび反応条件を用いて、PtMnO/CeO上のメタンの直接部分酸化に関する活性試験を行った。PtMnO/CeO上におけるメタンの直接部分酸化の活性試験は、350℃以下でDMEを生成し、325℃でDMEの最大生産性を与えた(72μmolh-1-1)(表2を参照)。350℃以下では、NO反応の選択性はもっぱらNOになり、Nは生成しなかった。これは、NO及びNOがOとの平衡反応を通して循環しており、Nを形成するためのいかなる化学量論的反応においても酸化剤として作用していないことを示している。
【0071】
実施例11.PtGaO/CeO触媒の調製及び活性試験
実施例8と同様のモル添加量の金属及び添加剤を用いる方法を用いて、ガリウム前駆体としてGaCl・4H2O(シグマ・アルドリッチ、99.99%)をCeOに担持した白金およびガリウム(添加剤)を含む触媒を調製した。
【0072】
実施例3で用いた反応器システム、反応ガスおよび反応条件を用いて、PtGaO/CeO上のメタンの直接部分酸化に関する活性試験を行った。PtGaO/CeO上におけるメタンの直接部分酸化の活性試験は、350℃以下でDMEを生成し、325℃でDMEの最大生産性を与えた(59μmolh-1-1)(表2を参照)。375℃以下では、NO反応の選択性はもっぱらNOになり、Nは生成しなかった。これは、NO及びNOがOとの平衡反応を通して循環しており、Nを形成するためのいかなる化学量論的反応においても酸化剤として作用していないことを示している。
【0073】
実施例12.PtBaO/CeO触媒の調製及び活性試験
実施例8と同様のモル添加量の金属及び添加剤を用いる方法を用いて、バリウム前駆体としてBa(NO・4H2O(和光純薬、99.99%)をCeOに担持した白金およびバリウム(添加剤)を含む触媒を調製した。
【0074】
実施例3で用いた反応器システム、反応ガスおよび反応条件を用いて、PtBaO/CeO上のメタンの直接部分酸化に関する活性試験を行った。PtBaO/CeO上におけるメタンの直接部分酸化の活性試験は、375℃以下でDMEを生成し、325℃でDMEの最大生産性を与えた(64μmolh-1-1)(表2を参照)。375℃以下では、NO反応の選択性はもっぱらNOになり、Nは生成しなかった。これは、NO及びNOがOとの平衡反応を通して循環しており、Nを形成するためのいかなる化学量論的反応においても酸化剤として作用していないことを示している。
【0075】
実施例13.PtCu/CeO触媒の調製及び活性試験
酸化セリウム上に担持された白金および銅を含む触媒を、2重量%のPt(0.10mmol/g担持体)に相当する総金属モル担持量で、0.05mmmol/g担持のPtモル担持量および0.05mmol/g担持Cuモル担持量で調製した。当該触媒は、5gのCeO支持体上に、0.14gのHPtCl・6HO(和光純薬、98.5%)及びCuCl・2HO(シグマ・アルドリッチ、99.99%)水溶液を含浸させることによって調製した。含浸後、サンプルを100℃で一晩乾燥させ、その後、空気下において3時間400℃(10℃/分)で焼成した。次いで、触媒をペレット化し、650~1180μmの大きさに篩い分けした。
【0076】
実施例3で用いた反応器システム、反応ガスおよび反応条件を用いて、PtCu/CeO上のメタンの直接部分酸化に関する活性試験を行った。PtCu/CeO上におけるメタンの直接部分酸化の活性試験は、375℃以下でDMEを生成し、300℃でDMEの最大生産性を与えた(50μmolh-1-1)(表2を参照)。375℃以下では、NO反応の選択性はもっぱらNOになり、Nは生成しなかった。これは、NO及びNOがOとの平衡反応を通して循環しており、Nを形成するためのいかなる化学量論的反応においても酸化剤として作用していないことを示している。
【0077】
実施例14.Pd/ZrO触媒の調製及び活性試験
実施例1と同じ方法により、パラジウム前駆体としてPd(NHCl・HO(シグマ・アルドリッチ、99.99%)を用いて、ZrO(第一稀元素化学工業社製、SBET=100m-1)支持体上に担持されたパラジウムを含む触媒を調製した。Pd担持量は、0.10mmol/g担持体(2重量%)であった。
【0078】
実施例2で用いた反応器システム及び反応ガスを使用して、Pd/ZrO上のメタンの直接部分酸化に関する活性試験を行った。反応ガス組成は、CH:O:NO:不活性ガス=1:0.15:0.05:3.8とし、空間速度は床容積に基づいて5900h-1であった。触媒の前処理及び反応温度は、実施例3と同様にした。
【0079】
Pd/ZrO上におけるメタンの直接部分酸化の活性試験は、375℃以下でDMEを生成し、325℃でDMEの最大生産性を与えた(105μmolh-1-1)(表2を参照)。375℃以下では、NO反応の選択性はもっぱらNOになり、Nは生成しなかった。これは、NO及びNOがOとの平衡反応を通して循環しており、Nを形成するためのいかなる化学量論的反応においても酸化剤として作用していないことを示している。
【0080】
実施例15.Pd/Y-ZrO触媒の調製及び活性試験
実施例14と同じ方法を用いて、0.10mmol /g担持のPd担持量で、14%Y-ZrO(第一稀元素化学工業社製)上に担持されたパラジウムを含む触媒を調製した。
【0081】
実施例14で用いた反応器システム、反応ガスおよび反応条件を用いて、Pd/Y-ZrO上のメタンの直接部分酸化に関する活性試験を行った。Pd/Y-ZrO上におけるメタンの直接部分酸化の活性試験は、375℃以下でDMEを生成し、325℃でDMEの最大生産性を与えた(78μmolh-1-1)(表2を参照)。375℃以下では、NO反応の選択性はもっぱらNOになり、Nは生成しなかった。これは、NO及びNOがOとの平衡反応を通して循環しており、Nを形成するためのいかなる化学量論的反応においても酸化剤として作用していないことを示している。
【0082】
実施例16.Pd/CeO-ZrO触媒の調製及び活性試験
実施例14と同じ方法を用いて、0.10mmol /g担持のPd担持量で、50%CeO-ZrO(第一稀元素化学工業社製)上に担持されたパラジウムを含む触媒を調製した。
【0083】
実施例14で用いた反応器システム、反応ガスおよび反応条件を用いて、Pd/CeO-ZrO上のメタンの直接部分酸化に関する活性試験を行った。Pd/CeO-ZrO上におけるメタンの直接部分酸化の活性試験は、375℃以下でDMEを生成し、300℃でDMEの最大生産性を与えた(24μmolh-1-1)(表2を参照)。375℃以下では、NO反応の選択性はもっぱらNOになり、Nは生成しなかった。これは、NO及びNOがOとの平衡反応を通して循環しており、Nを形成するためのいかなる化学量論的反応においても酸化剤として作用していないことを示している。
【0084】
実施例17.PdCu/ZrO触媒の調製及び活性試験
2重量%のPtに相当する総金属モル担持量(0.10mmol/g担持体)で、0.05mmmol/g担持のPdモル担持量および0.05mmol/g担持Cuモル担持量でZrO上に担持されたパラジウムおよび銅を含む触媒を調製した。Pd前駆体としてPd(NHCl・HO(シグマ・アルドリッチ、99.99%)、Cu前駆体としてCu(NO・3HO(和光純薬、99.9%)を用いた。触媒の前処理は、実施例13と同様にした。
【0085】
実施例14で用いた反応器システム、反応ガスおよび反応条件を用いて、PdCu/ZrO上のメタンの直接部分酸化に関する活性試験を行った。PdCu/ZrO上におけるメタンの直接部分酸化の活性試験は、375℃以下でDMEを生成し、325℃でDMEの最大生産性を与えた(54μmolh-1-1)(表2を参照)。375℃以下では、NO反応の選択性はもっぱらNOになり、Nは生成しなかった。これは、NO及びNOがOとの平衡反応を通して循環しており、Nを形成するためのいかなる化学量論的反応においても酸化剤として作用していないことを示している。
【0086】
実施例18.Cu/ZrO触媒の調製及び活性試験
Cu前駆体としてCu(NO・3HO(和光純薬、99.9%)を用い、2重量%のPtに相当する総金属モル担持量(0.10mmol/g担持体)で、0.10mmol/g担持Cuモル担持量で、ZrO上に担持された銅を含む触媒を調製した。触媒の前処理は、実施例13と同様にした。
【0087】
実施例14で用いた反応器システム、反応ガスおよび反応条件を用いて、Cu/ZrO上のメタンの直接部分酸化に関する活性試験を行った。Cu/ZrO上におけるメタンの直接部分酸化の活性試験は、375℃以下でDMEを生成し、350℃でDMEの最大生産性を与えた(4.4μmolh-1-1)(表2を参照)。375℃以下では、NO反応の選択性はもっぱらNOになり、Nは生成しなかった。これは、NO及びNOがOとの平衡反応を通して循環しており、Nを形成するためのいかなる化学量論的反応においても酸化剤として作用していないことを示している。
【0088】
実施例19.Ru/Mg-SiO触媒の調製及び活性試験(比較例)
SiO支持体上にMg(NO・6HO水溶液を含浸させることによって調製したMg-SiO支持体を調製した。さらに、当該Mg-SiO支持体上にRu(NHCl水溶液を含浸させることによって、Ru/Mg-SiO触媒を調製した。重量比MgO:SiOは、30:70又は40:60であった。含浸後、サンプルを110℃で一晩乾燥させ、その後、空気下において3時間400℃(10℃/分)で焼成した。次いで、触媒をペレット化し、650~1100μmの大きさに篩い分けした。
【0089】
実施例3で用いた反応器システム、反応ガスおよび反応条件を用いて、Ru/Mg-SiO上のメタンの直接部分酸化に関する活性試験を行った。Ru/Mg-SiO上におけるメタンの直接部分酸化の活性試験は、400℃未満でDMEを生成し、400℃でDMEの最大生産性を与えた(38~47μmolh-1-1)(表2を参照)。400℃未満では、NO反応の選択性はもっぱらNOになり、Nは生成しなかった。これは、NO及びNOがOとの平衡反応を通して循環しており、Nを形成するためのいかなる化学量論的反応においても酸化剤として作用していないことを示している。
【0090】
実施例3~実施例19の結果を以下の表2にまとめる。
【表2】
【0091】
実施例20.NO/NOの反応シャトル
の反応について、各温度領域におけるNOからNOへの転化率を図4に示す。この熱力学的平衡曲線により、NOは低温で容易に変換され、NOとNOが200~400℃の範囲で共存しており、Nは発生しないことが分かる。これは、メタンなどの炭化水素が系に存在する場合にのみNが生成され得ることを示す。
【0092】
実施例21.接触時間とNO分圧の影響についての検討
実施例1で得たPt/Y触媒を用いて、実施例2に用いた反応条件に基づき、DMEの選択性に与える反応ガスの接触時間の影響を検討した。反応条件は、1g触媒、275℃、0.1MPa、50~200ml/min、CH:20%、O:1%、NO:1%である。ここで、接触時間は以下の式で表される。
接触時間(s)=[CO消費(μmol/g)x触媒重量(g)]/メタンのモル流速(μmol/s)
【0093】
結果を図5に示す。反応生成物としては、DMEとCOのみが観測されたが、DMEの選択性は低い接触時間ではほぼ100%であることが分かった。これは、メタノールが中間体ではないことを裏付けるものである。したがって、Pt/YはメタンからのDMEの製造に有効であることを示している。
【0094】
実施例2に相当するPt/Y触媒を用いた反応について、メタン転化率とDMEの選択性におけるNO分圧の影響を検討した。反応条件は、1g触媒、325℃、300ml/min、CH:20%、O:1%、NO:1%(HeとArを添加)である。結果を図6に示す。その結果、NOから生成するNOはDMEを分解すること、及びNOは酸化剤としては機能していないことが分かった。したがって、この例は、メタンをDMEに酸化するためにNOとOの両方が一緒に存在しなければならないことを示している。
【0095】
実施例22. ブランク試験
比較のため、触媒を含まない反応器における反応を観測した。図7及び図8に示すように、触媒非存在下では、NOからNOへの転化は生じるものの、メタンの転化反応は進行しないことが分かった。したがって、この例は、メタンからDMEへの変換に触媒が不可欠であることを示している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8