(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022120306
(43)【公開日】2022-08-18
(54)【発明の名称】同軸ケーブル
(51)【国際特許分類】
H01B 11/18 20060101AFI20220810BHJP
H01B 11/00 20060101ALI20220810BHJP
H01B 7/295 20060101ALI20220810BHJP
【FI】
H01B11/18 Z
H01B11/00 H
H01B7/295
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021017118
(22)【出願日】2021-02-05
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安部 和洋
【テーマコード(参考)】
5G315
5G319
【Fターム(参考)】
5G315CA03
5G315CB06
5G315CC08
5G315CD02
5G315CD07
5G319FA07
5G319FC03
5G319FC18
5G319FC20
5G319FC26
5G319FC37
(57)【要約】
【課題】同軸ケーブルの防水性を低下させることなく、難燃性を向上させる。
【解決手段】同軸ケーブル1Aは、内部導体10と、内部導体10の周囲に設けられる波付き管からなる外部導体20と、内部導体10と外部導体20との間に設けられる絶縁層30と、外部導体20を覆うシース40と、シース40を覆う金属保護層50とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部導体と、
前記内部導体の周囲に設けられる波付き管からなる外部導体と、
前記内部導体と前記外部導体との間に設けられる絶縁層と、
前記外部導体を覆う外皮と、
前記外皮を覆う金属保護層と、を有する同軸ケーブル。
【請求項2】
金属編組によって前記金属保護層が形成されている、請求項1に記載の同軸ケーブル。
【請求項3】
前記絶縁層は、前記内部導体に螺旋状に巻き付けられ、前記内部導体と前記外部導体との間に介在する絶縁体を含む、請求項1又は2に記載の同軸ケーブル。
【請求項4】
前記絶縁体には、前記外部導体の内周面に向かって突出する複数の突起が設けられている、請求項3に記載の同軸ケーブル。
【請求項5】
前記内部導体と前記外部導体との間に介在する発泡絶縁体によって前記絶縁層が形成されている、請求項1又は2に記載の同軸ケーブル。
【請求項6】
前記内部導体が管状である、請求項1~5のいずれか1項に記載の同軸ケーブル。
【請求項7】
前記内部導体が波付き管である、請求項6に記載の同軸ケーブル。
【請求項8】
前記内部導体が棒状である、請求項1~5のいずれか1項に記載の同軸ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同軸ケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、各種の同軸ケーブルが開発され、使用されている。それら同軸ケーブルには、想定される使用環境などに応じた耐久性や防水性などが求められるが、屋外の重要設備で使用される同軸ケーブルには、より高いレベルの耐久性や防水性が求められる。
【0003】
例えば、屋外の放送用設備に使用される同軸ケーブルについては、外皮(シース)が損傷を受けた場合に、損傷部分からケーブル内に水が浸入することで発生する通信障害の発生を未然に防ぐことが強く求められる。
【0004】
一方、放送用設備は、山中や高層ビルの屋上などに設置されることもある。この場合、同軸ケーブルは、温度変化が激しかったり、強風に晒されたりする厳しい環境下に置かれることになる。また、山中に設置されている放送用設備に使用される同軸ケーブルは、動物に噛まれてシースが損傷を受ける虞もある。
【0005】
そこで、従来は、管状の外部導体の継ぎ目を溶接して密閉構造を実現していた。さらに、外部導体とシースとの間にタール状の浸水防止材を充填して防水性の向上を図っていた。この浸水防止材は、「コンパウンド」と呼ばれることがある。よって、本明細書においても、防水性の向上を目的として同軸ケーブルの外部導体とシースとの間に充填される浸水防止材を「コンパウンド」と呼ぶ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
同軸ケーブルには、耐久性や防水性に加えて、難燃性も求められる。通常、同軸ケーブルに難燃性を与える場合、シースの材料に難燃材料が用いられる。
【0008】
一方、一部の同軸ケーブルでは、外部導体とシースとの間にコンパウンドが充填されていることは既述のとおりである。さらに、防水性向上を目的として外部導体とシースとの間に充填されるコンパウンドは油分を含んでいる。つまり、外部導体とシースとの間に、燃えやすい油性コンパウンドが充填されている。
【0009】
そこで、同軸ケーブルの難燃性をより高めるためには、シースの材料に難燃材料を用いるとともに、油性コンパウンドの使用を控えることが望ましい。
【0010】
しかし、油性コンパウンドは、同軸ケーブルにおいて難燃性と同じく重要な防水性を向上させるために用いられているものであり、油性コンパウンドの不使用は防水性の低下を招く。
【0011】
本発明の目的は、同軸ケーブルの防水性を低下させることなく、難燃性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の同軸ケーブルは、内部導体と、前記内部導体の周囲に設けられる波付き管からなる外部導体と、前記内部導体と前記外部導体との間に設けられる絶縁層と、前記外部導体を覆う外皮と、前記外皮を覆う金属保護層とを有する。
【0013】
本発明の一態様では、金属編組によって前記金属保護層が形成される。
【0014】
本発明の他の一態様では、前記絶縁層は、前記内部導体に螺旋状に巻き付けられ、前記内部導体と前記外部導体との間に介在する絶縁体を含む。
【0015】
本発明の他の一態様では、前記絶縁体に、前記外部導体の内周面に向かって突出する複数の突起が設けられる。
【0016】
本発明の他の一態様では、前記内部導体と前記外部導体との間に介在する発泡絶縁体によって前記絶縁層が形成される。
【0017】
本発明の他の一態様では、前記内部導体は管状である。
【0018】
本発明の他の一態様では、前記内部導体は波付き管である。
【0019】
本発明の他の一態様では、前記内部導体は棒状である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、同軸ケーブルの防水性を低下させることなく、難燃性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施形態1に係る同軸ケーブルの断面図である。
【
図2】実施形態2に係る同軸ケーブルの断面図である。
【
図3】実施形態3に係る同軸ケーブルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態の一例について図面を参照しながら詳細に説明する。尚、実施形態を説明するための全図において、同一または実質的に同一の機能を有する部材などには同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0023】
(実施形態1)
図1に示されている同軸ケーブル1Aは、内部導体10,外部導体20,絶縁層30,外皮(シース)40および金属保護層50を有する。同軸ケーブル1Aの直径(D1)は30.0mmであり、内部導体10の直径(D2)は9.0mmであり、外部導体20の直径(D3)は25.0mmである。
【0024】
同軸ケーブル1Aの芯線である内部導体10は、導電材料によって管状に形成されている。具体的には、内部導体10は、銅または銅合金によって円筒状に形成されている。つまり、同軸ケーブル1Aの内部導体10は、銅パイプである。
図1から明らかなように、内部導体10は、外部導体20の内側に挿通されている。言い換えれば、外部導体20は、内部導体10の周囲に設けられている。
【0025】
外部導体20は、導電材料によって管状に形成されている。具体的には、外部導体20は、銅または銅合金によって円筒状に形成されており、かつ、凹部20aと凸部20bとが長手方向に沿って一定間隔で交互に形成されている。つまり、同軸ケーブル1Aの外部導体20は、銅製の波付き管(コルゲート管)である。尚、外部導体20に波付き構造が採用されている主な理由は、外部導体20の剛性を高めるためである。
【0026】
もっとも、内部導体10や外部導体20の材料は銅や銅合金に限られない。内部導体10や外部導体20の材料の他の一例としては、アルミニウムやアルミニウム合金などが挙げられる。
【0027】
絶縁層30は、内部導体10と外部導体20との間に設けられ、これらを電気的に絶縁している。本実施形態では、内部導体10と外部導体20との間の空隙によって絶縁層30が形成されている。つまり、本実施形態の絶縁層30は、空気層である。
【0028】
さらに、絶縁層30は、内部導体10と外部導体20との間に介在する絶縁体31を含む。絶縁体31は、帯状であって、内部導体10に螺旋状に巻き付けられている。
【0029】
絶縁体31は、長方形の断面形状を有しており、対向する一対の短側面32,33を備えている。絶縁体31は、一方の短側面32が内部導体10の外周面に臨み、他方の短側面33が外部導体20の内周面に臨むように、内部導体10と外部導体20との間に配置されている。
【0030】
本実施形態の絶縁体31は、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体(PFA),テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロブロピレンの共重合体(FEP),テトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体(ETFE)の中から選ばれたフッ素樹脂によって形成されている。もっとも、絶縁体31の材料はフッ素樹脂に限られない。絶縁体31の他の材料の一例としては、ポリエチレン(PE),ポリスチレン(PS),ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0031】
シース40は、外部導体20の周囲に設けられ、外部導体20を覆っている。シース40は、外部導体20の周囲に押し出された難燃性樹脂によって形成されている。本実施形態のシース40は、難燃ポリオレフィンによって形成されている。もっとも、シース40を形成する難燃性樹脂は難燃ポリオレフィンに限られない。シース40を形成する難燃性樹脂の一例としては、難燃ポリエチレンや上記フッ素系樹脂などが挙げられる。
【0032】
金属保護層50は、シース40の周囲に設けられ、シース40を覆っている。本実施形態では、シース40の周囲に設けられた金属編組51によって金属保護層50形成されている。金属編組51は、網状に編まれた複数本の金属線または金属テープによって形成されている。本実施形態の金属編組51は、耐腐食性能に優れたステンレスによって形成されている。もっとも、金属編組51を形成する金属線はステンレス線に限られず、金属テープはステンレステープに限られない。金属編組51を形成する金属材料の他の一例としては、銅、アルミニウム、鉄などが挙げられる。また、腐食を防止するために、金属編組51に金属メッキを施すことが好ましい。
【0033】
同軸ケーブル1Aは、シース40を覆う金属保護層50を有している。つまり、同軸ケーブル1Aでは、難燃性樹脂によって形成されているシース40が金属保護層50によって被覆され、保護されている。よって、外力によるシース40の損傷が防止される。例えば、同軸ケーブル1Aが動物に噛まれたとしても、シース40に亀裂が生じたり、穴が空いたりすることがない。
【0034】
したがって、シース40の損傷に起因する浸水を防止するために、外部導体20とシース40との間に油性コンパウンドなどの浸水防止材を充填する必要はない。この結果、同軸ケーブル1Aでは、防水性を低下させることなく、難燃性を向上させることに成功している。
【0035】
さらに、金属保護層50が金属編組51によって形成されている同軸ケーブル1Aでは、金属保護層50によって可撓性が損なわれることもない。
【0036】
尚、本件発明者は、本件発明を完成させる過程で、従来の同軸ケーブルに用いられていた油性コンパウンドを難燃性コンパウンドや非油性コンパウンドなどの他のコンパウンドに置換することを試みた。
【0037】
しかし、好適な代替コンパウンドの発見には至らなかった。外部導体とシースとの間に充填されたコンパウンドによって同軸ケーブルの防水性向上を実現するためには、同軸ケーブルの全長に亘ってコンパウンドが均一に充填されている必要がある。さらに、外部導体とシースとの間に充填されたコンパウンドが恒久的にその場に止まる必要がある。何故なら、ケーブル両端の高低差によってコンパウンドが低所側に偏ると、高所側の防水性が低下したり、失われたりするからである。
【0038】
つまり、同軸ケーブルの防水性向上を目的として外部導体とシースとの間に充填されるコンパウンドには、適度な流動性と粘性とが求められる。しかし、本件発明者が知る限り、難燃性や非油性のコンパウンドであって、かつ、適度な流動性および粘性を備えたコンパウンドは現存しない。
【0039】
(実施形態2)
図2に示されている同軸ケーブル1Bは、
図1に示されている同軸ケーブル1Aと同一の基本構成を有する。そこで、同軸ケーブル1Aと同一または実質的に同一の構成についての説明は省略する。
【0040】
同軸ケーブル1Bの絶縁体31には、複数の突起34が設けられている。具体的には、絶縁体31には、外部導体20の内周面に向かって突出する複数の突起34が一体成形されている。それぞれの突起34は、外部導体20の内周面に臨む絶縁体31の短側面33から外部導体20に向かって突出している。
【0041】
絶縁層30に含まれる絶縁体31に複数の突起34が形成されている同軸ケーブル1Bでは、外部導体20と絶縁層30との接触面積が同軸ケーブル1A(
図1)よりも少なく、誘電率の低減が実現されている。
【0042】
(実施形態3)
図3に示されている同軸ケーブル1Cは、
図1に示されている同軸ケーブル1Aと同一の基本構成を有する。そこで、同軸ケーブル1Aと同一または実質的に同一の構成についての説明は省略する。
【0043】
同軸ケーブル1Cの絶縁層30は、内部導体10と外部導体20との間に介在する発泡絶縁体35によって形成されている。
【0044】
また、同軸ケーブル1Cの内部導体10は、外部導体20と同様の波付き管である。本実施形態では、波付き構造の採用により、内部導体10の剛性が向上している。別の見方をすると、波付き構造は、剛性が求められる大径の内部導体に適している。
【0045】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、内部導体10は、管状ではなく、棒状であってもよい。内部導体10を管状にするか、棒状にするかは、内部導体10のサイズ(直径)などに応じて適宜決定される。また、金属保護層50は金属編組51に限られない。例えば、可撓性を有する金属管(フレキシブルチューブなど)によって金属保護層50を形成してもよい。
【0046】
本明細書では、直径30.0mmの同軸ケーブルを例にとって本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明が適用される同軸ケーブルのサイズに特段の制限はない。本発明は、少なくとも直径が14.0mm~170.0mmの同軸ケーブルに適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1A,1B,1C 同軸ケーブル
10 内部導体
20 外部導体
20a 凹部
20b 凸部
30 絶縁層
31 絶縁体
32,33 短側面
34 突起
35 発泡絶縁体
40 外皮(シース)
50 金属保護層
51 金属編組