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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022012035
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】レギュレータ装置
(51)【国際特許分類】
   G05F 1/56 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
G05F1/56 320C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020113554
(22)【出願日】2020-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】新日本無線株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横田 猛昭
(72)【発明者】
【氏名】榎本 光浩
(72)【発明者】
【氏名】久米 正義
(72)【発明者】
【氏名】小宮 基樹
(72)【発明者】
【氏名】榎本 大舗
【テーマコード(参考)】
5H430
【Fターム(参考)】
5H430BB01
5H430BB09
5H430BB11
5H430EE03
5H430FF02
5H430FF08
5H430FF12
5H430FF13
5H430HH03
5H430LA07
(57)【要約】
【課題】出力素子が破壊される可能性を低減することを可能としたレギュレータ装置を提供する。
【解決手段】レギュレータと過電流保護回路と、を備えたレギュレータ装置であって、レギュレータは、前記電源端子からの電力が供給される出力素子と、前記出力素子からの出力および負荷抵抗が接続される出力端子と、出力端子における電圧を一定値に維持するように出力素子を制御する出力帰還部と、を備え、過電流保護回路は、電源端子から流れる電流に基づいて第1電圧を生成する第1電圧生成部と、内部を流れる電流の量に応じて変化する第2電圧を生成する第2電圧生成部と、第1電圧と前記第2電圧を比較して、前記第2電圧の低下に伴い前記出力素子を流れる電流を減少させる電流検出部と、出力端子の電圧の低下に伴って、出力素子を流れる電流を第1の減少率で減少させる第1状態と、出力素子を流れる電流を前記第1の減少率より小さい第2の減少率で減少させる第2状態と、を切り替える電圧監視部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源端子から供給された電力に基づいて所定の電力を負荷抵抗に供給するレギュレータと、前記負荷抵抗に流れる電流を制御する過電流保護回路と、を備えたレギュレータ装置であって、
前記レギュレータは、
前記電源端子からの電力が供給される出力素子と、
前記出力素子からの出力および前記負荷抵抗が接続される出力端子と、
前記出力端子における電圧を一定値に維持するように前記出力素子を制御する出力帰還部と、
を備え、
前記過電流保護回路は、
前記電源端子から流れる電流に基づいて第1電圧を生成する第1電圧生成部と、
内部を流れる電流の量に応じて変化する第2電圧を生成する第2電圧生成部と、
前記第1電圧と前記第2電圧を比較して、前記第2電圧の増減で前記出力素子を流れる電流を制御する電流検出部と、
前記出力端子の電圧の低下に伴って、前記出力素子を流れる電流を第1減少率で減少させる第1状態と、前記出力素子を流れる電流を前記第1減少率より小さい第2減少率で減少させる第2状態と、を切り替える電圧監視部と、
を備えたレギュレータ装置。
【請求項2】
前記電圧監視部は、前記出力端子の電圧に係る分圧がベース端子に印加されるとともに、コレクタ端子が前記電流検出部の入力端子に共通に接続され、かつエミッタフォロアに接続されたエミッタ電圧がそれぞれ異なる複数の出力電圧検出用トランジスタ、を備えた、
ことを特徴とする請求項1に記載のレギュレータ装置。
【請求項3】
前記出力素子は、出力トランジスタであり、
前記電流検出部は、前記第1電圧が第1入力端子に入力され、前記第2電圧が第2入力端子に入力され、出力電圧に応じて前記出力トランジスタに流れる電流を制御する過電流検出アンプ、を備えた、
ことを特徴とする請求項2に記載のレギュレータ装置。
【請求項4】
前記複数の出力電圧検出用トランジスタは、共通の端子からの前記出力端子の電圧に係る分圧をベース端子に印加する、
ことを特徴とする請求項3に記載のレギュレータ装置。
【請求項5】
前記第2電圧生成部は、前記電源端子に接続され、両端間に前記第2電圧を生成する過電流検出用基準抵抗と、前記過電流検出用基準抵抗とグランド端子間に接続され、前記過電流検出用基準抵抗に定電流を流して前記第2電圧を一定に保つ第1基準電流源をさらに備え、
前記過電流保護回路は、前記複数の出力電圧検出用トランジスタのすべてがオフした場合に、前記第1基準電流源のみに流れる一定の電流よって生じる前記第2電圧に基づいて、前記出力端子に流れる電流を一定に保つ、
ことを特徴とする請求項3または4のいずれか一に記載のレギュレータ装置。
【請求項6】
前記複数の出力電圧検出用トランジスタは、NPN型の第1トランジスタと第2トランジスタの2個のトランジスタであり、前記第2トランジスタのベース・エミッタ間電圧は前記第1トランジスタのベース・エミッタ間電圧より小さい、
請求項3乃至5のいずれか一に記載のレギュレータ装置。
【請求項7】
前記電圧監視部は、分圧された電圧がベース端子に印加されたPNP型の出力電圧検出用トランジスタである第3トランジスタをさらに備え、前記第1トランジスタと第2トランジスタは、それぞれのベース端子がともに前記第3トランジスタのエミッタ端子に接続されている、
ことを特徴とする請求項6に記載のレギュレータ装置。
【請求項8】
前記第1トランジスタと第2トランジスタのベース端子および前記第3トランジスタのエミッタ端子は、前記電源端子に接続された第2基準電流源に接続されている、
請求項7に記載のレギュレータ装置。
【請求項9】
前記出力トランジスタはPNP型トランジスタであり、
前記出力帰還部は、
前記出力端子における出力電圧を分圧する分圧回路と、第1入力端子に前記分圧回路による分圧が入力され、第2入力端子に基準電圧が入力されたエラーアンプと、を有し、当該エラーアンプの出力電圧を前記出力トランジスタの前記ベース端子に印加する帰還回路である、
請求項3乃至8のいずれか一に記載のレギュレータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、レギュレータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レギュレータ装置は、出力端子を備え、該出力端子に接続された負荷抵抗に対して電源電圧から安定した電力を出力トランジスタ(出力素子の1例)から供給するレギュレータを備える。しかしながら、抵抗の小さな負荷抵抗が出力端子に接続された場合、出力端子の電圧が低下する。このような場合、レギュレータは、例えば帰還回路のような出力帰還回路が機能して出力トランジスタを流れる電流を増加させることで、出力端子における負荷抵抗への出力電圧を一定に保っている。
【0003】
しかしながら、出力端子に接続される負荷抵抗がさらに小さな抵抗である場合、出力端子(即ち出力トランジスタ)から負荷抵抗に流れる電流がさらに増加する。そのため、レギュレータ装置は、出力トランジスタに流れる電流を減少させるための過電流保護回路を備える。過電流保護回路は、出力トランジスタを流れる電流を検出し、出力端子に過大な電流が流れた場合に出力トランジスタを流れる出力電流を減少させる。
【0004】
ところで、上記出力トランジスタは所定の許容損失を有しているが、レギュレータにおける出力電流のピークを上げるように過電流保護回路を設計した場合、出力トランジスタは、当該出力トランジスタが有する許容損失を超過した電流が流れる動作状態となる場合がある。このような場合、出力トランジスタは破壊され、レギュレータの出力電圧が正常に制御されないおそれがある。レギュレータの出力電圧が正常に制御されなくなると、負荷抵抗としての回路や素子が破壊されるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-350722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、過電流保護回路の設計によっては、出力素子が破壊される可能性があった。
【0007】
本発明は、出力素子が破壊される可能性を低減することを可能としたレギュレータ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のレギュレータ装置は、電源端子から供給された電力に基づいて所定の電力を負荷抵抗に供給するレギュレータと、前記負荷抵抗に流れる電流を制御する過電流保護回路と、を備えたレギュレータ装置であって、前記レギュレータは、前記電源端子からの電力が供給される出力素子と、前記出力素子からの出力および前記負荷抵抗が接続される出力端子と、前記出力端子における電圧を一定値に維持するように前記出力素子を制御する出力帰還部と、を備え、前記過電流保護回路は、前記電源端子から流れる電流に基づいて第1電圧を生成する第1電圧生成部と、内部を流れる電流の量に応じて変化する第2電圧を生成する第2電圧生成部と、前記第1電圧と前記第2電圧を比較して、前記第2電圧の低下に伴い前記出力素子を流れる電流を減少させる電流検出部と、前記出力端子の電圧の低下に伴って、前記出力素子を流れる電流を第1減少率で減少させる第1状態と、前記出力素子を流れる電流を前記第1減少率より小さい第2減少率で減少させる第2状態と、を切り替える電圧監視部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、レギュレータ装置の出力素子の許容損失特性に合わせた過電流保護回路の回路設計を行うことができるため、出力素子やレギュレータ装置の負荷として接続される回路や素子が破壊される可能性を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の概念を示す説明図である。
図2図2は、第1実施形態に係るレギュレータ装置の回路構成の一例を示す図である。
図3図3は、レギュレータからの出力における出力電圧・出力電流特性を示す図である。
図4図4は、出力電流ピーク値を上げて過電流保護特性を設計した場合の出力電圧・出力電流特性を示す図である。
図5図5は、従来のレギュレータ装置の回路構成の一例を示す図である。
図6図6は、第2実施形態に係るレギュレータ装置の回路構成の一例を示す図である。
図7図7は、第3実施形態に係るレギュレータ装置の回路構成の一例を示す図である。
図8図8は、レギュレータからの出力における出力電圧・出力電流特性を示す図である。
図9図9は、出力電流ピーク値を上げて過電流保護特性を設計した場合の出力電圧・出力電流特性を示す図である。
図10図10は、第4実施形態に係るレギュレータ装置を具現化した回路構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら、本発明に係る実施形態を詳細に説明する。
【0012】
(発明の概念)
まずは、本発明の概念について説明する。図1は、本発明のレギュレータ装置を概念的に示す説明図である。図1に示すように、本発明のレギュレータ装置1は、電源端子P1から供給された電力に基づいて所定の電力を負荷抵抗に供給するレギュレータ2と負荷抵抗RL1に流れる電流を制御する過電流保護回路3を備える。
【0013】
レギュレータ2は、電源端子P1から電力が供給される出力素子G1と、出力素子G1からの出力および負荷抵抗RL1が接続される出力端子P3と、出力端子P3における電圧を一定値に維持するように出力素子G1を制御する出力帰還部G2と、を備える。
【0014】
過電流保護回路3は、出力端子P3の電圧を監視し、出力端子P3の電圧の低下に伴い所定の電圧より低下した場合に内部に流れる電流が変化する電圧監視部G8と、電源端子P1から流れる電流を検知して第1電圧を生成する電流センシング部(第1電圧生成部)G7と、電圧監視部G8に流れる電流に応じた第2電圧を生成する第2電圧生成部G5と、第1電圧と第2電圧を比較して、第2電圧の低下に伴い出力素子G1に流れる電流を抑制する電流検出部G6と、を備える。
【0015】
ここで、電圧監視部G8は、出力端子P3の電圧の低下に伴い所定の電圧より低下した場合に、第1減少率で減少する電流が流れる第1状態とする出力端子P3の電圧を監視する電圧監視1部G3と、出力端子P3の電圧がさらに低下した場合に、第1減少率より小さい第2減少率で減少する電流が流れる第2状態とする出力端子P3の電圧を監視する電圧監視2部G4と、を備える。
【0016】
第2電圧生成部G5は、電圧監視部G8が第1状態の場合、第1低下率で低下する第2電圧を生成し、電圧監視部G8が第2状態の場合、第1低下率より低い第2低下率で低下する第2電圧を生成する。
【0017】
電流検出部G6は、第1電圧と第1状態あるいは第2状態の第2電圧とを比較して、出力素子G1を流れる電流を制御する。具体的には、電流検出部G6は、電圧監視部G8が第1状態であって、第2電圧が第1低下率で低下した場合に、出力素子G1に流れる電流を第1減少率で減少させ、電圧監視部G8が第2状態であって、第2電圧が第2低下率で低下した場合に出力素子G1に流れる電流を第1減少率より小さい第2減少率で減少させる。
【0018】
<定常動作>
負荷抵抗RL1の抵抗が比較的大きい定常動作の場合、レギュレータ2は、出力端子P3に出力される電圧を一定に保つよう出力帰還部G2が働く。即ち、出力端子P3の電圧が下がると、出力帰還部G2からの出力により出力素子G1に流れる電流が制御されることにより、出力端子P3の出力電圧を一定に保つ制御が行われる。
【0019】
<過電流保護動作>
負荷抵抗RL1が定常動作時より小さい抵抗値である場合には、出力素子G1に過大な電流が流れる。ここで電圧監視部G8は、出力端子P3の電圧を監視しており、出力端子P3における出力電圧が所定の電圧より低下した場合に、第1減少率で減少する電流が流れる第1状態となる。また、電圧監視部G8は、出力端子P3における出力電圧がさらに低下した場合に、第1減少率より低い第2減少率で減少する電流が流れる第2状態に切り替わる。
【0020】
第2電圧生成部G5は、電圧監視部G8が第1状態である場合に、第1減少率に相当する減少率で減少する電流に伴って第2電圧を生成する。また、第2電圧生成部G5は、電圧監視部G8が第2状態である場合に、第1の減少率より小さい第2減少率に相当する減少率で減少する電流に伴って第2電圧を生成する。
【0021】
電流検出部G6は、電流センシング部G7の両端間の第1電圧と第2電圧生成部G5が生成した第2電圧(基準電圧)を入力して比較する。そして、第2電圧が第1低下率で低下した場合に、出力素子G1の電流を第1減少率で減少させる。また第2電圧が第2低下率で低下した場合に、出力素子G1の電流を第1減少率より小さい第2減少率で減少させる。
【0022】
このように、電圧監視部G8が第1状態と第2状態に切り替わるため、出力素子G1に流れる電流が、第1減少率で減少する状態と第1減少率より小さい第2減少率で減少する状態となる。そのため、出力素子G1における出力電圧と出力電流の特性が出力素子G1の許容損失特性を超えない構成とすることができる。これは、第1減少率で減少する第1状態のみで第2状態がなく、出力電圧と出力電流の特性が出力素子G1の許容損失特性を超えない構成とすることが難しい従来のレギュレータ装置と比較して、本発明の優れた特性といえる。即ち、本発明のレギュレータ装置は、出力素子G1の過電流を起因とする破壊に対し、安全な回路設計が可能となる。そのため、出力素子G1や負荷抵抗RL1として出力端子P3に接続される他回路や素子が破壊される可能性を低減することが可能となる。
【0023】
(第1実施形態)
次に、本発明の第1実施形態について説明する。図2は、第1実施形態に係るレギュレータ装置1の回路構成の一例を示す図である。図2に示すように、第1実施形態に係るレギュレータ装置1は、電源端子P1、出力端子P3、接地されたGND端子P2、レギュレータ2と過電流保護回路3とを備える。電源端子P1とGND端子P2間には、レギュレータ装置1を駆動するための入力電源(図示せず)が接続される。電源端子P1には、入力電源に基づいて電源電圧が印加される。出力端子P3はレギュレータ2の出力端子であり、例えばマイコンIC等の負荷回路が負荷抵抗RL1として接続される。マイコンICは、多くの演算をしている場合は消費電流が増加し、等価的に負荷抵抗RL1が小さくなり、動作はしているが演算の少ない場合は消費電流が減少し負荷抵抗RL1が大きくなる(以下定常動作という)。また、システムスタンバイ時には更に消費電流が減少し、負荷抵抗RL1がより大きくなる。
【0024】
レギュレータ2は、出力素子G1と出力帰還部G2を備える。出力素子G1は、出力トランジスタPNP1である。出力帰還部G2は、帰還抵抗RD1、帰還抵抗RD2、帰還抵抗RD3、エラーアンプAMP2(以降「アンプAMP2」という)、基準電圧源VREF1を備える。アンプAMP2は、帰還抵抗RD2と帰還抵抗RD3の接続点23が非反転入力端子に接続され、基準電圧源VREF1が反転入力端子に接続される。即ち、アンプAMP2の反転入力端子には、基準電圧源VREF1に基づいた定電圧である基準電圧が印加され、非反転入力端子には、接続点23における出力端子P3の分圧電圧が印加される。
【0025】
またレギュレータ2には、過電流保護回路3が接続される。過電流保護回路3は、過電流時に出力トランジスタPNP1を流れる電流を減少させて、出力トランジスタPNP1を破壊から保護する。過電流保護回路3は、電流検出抵抗R1(電流センシング部G7)、過電流検出用基準抵抗R2(以降「基準抵抗R2」という)、第1基準電流源である過電流検出用基準定電流源IREF1(以降「基準定電流源IREF1」という)、第1電流生成部D1、第2電流生成部D2、電流検出部G6である過電流検出アンプAMP1(以降「アンプAMP1」という)、を備える。基準抵抗R2と基準定電流源IREF1が第2電圧生成部G5を構成する。電流検出抵抗R1は、一端が電源端子P1に接続され、他端が出力トランジスタPNP1のエミッタ端子とアンプAMP1の第1入力端子に接続されている。電流検出抵抗R1の両端間に発生する電圧が第1電圧である。即ち、電流検出抵抗R1は、電源電圧に基づいた第1電圧を生成し、アンプAMP1の第1入力端子には、第1電圧が印加される。なお、帰還抵抗RD1、第1電流生成部D1、第2電流生成部D2が電圧監視部G8を構成する。
【0026】
第1電流生成部D1は、基準抵抗R2と接続され、接続点12における出力端子P3の分圧電圧の変動に対応した第1電流を基準抵抗R2に流す。第1電流生成部D1は、第1トランジスタであるNPN型の出力電圧検出用トランジスタNPN1(以降「トランジスタNPN1」という)と過電流検出用調整抵抗R3(以降「調整抵抗R3」という)が直列に接続されて構成される。トランジスタNPN1のベース端子は接続点12と接続される。トランジスタNPN1のコレクタ端子は基準抵抗R2に接続される。トランジスタNPN1のエミッタ端子は、調整抵抗R3を介してGND端子P2に接続される。第1電流生成部D1は、トランジスタNPN1のベース・エミッタ間電圧に対応したトランジスタNPN1のコレクタ電流を基準抵抗R2に流す。
【0027】
第2電流生成部D2は、基準抵抗R2と接続され、接続点12における出力端子P3の分圧電圧の変動に対応した第2電流を基準抵抗R2に流す。第2電流生成部D2は、第2トランジスタであるNPN型の出力電圧検出用トランジスタNPN2(以降「トランジスタNPN2」という)と過電流検出用調整抵抗R4(以降「調整抵抗R4」という)と基準電圧源VREF2が直列に接続されて構成される。トランジスタNPN2のベース端子は接続点12と接続される。トランジスタNPN2のコレクタ端子は基準抵抗R2に接続される。トランジスタNPN2のエミッタ端子は、調整抵抗R4と基準電圧源VREF2を介してGND端子P2に接続される。第2電流生成部D2は、トランジスタNPN2のベース・エミッタ間電圧に対応したトランジスタNPN2のコレクタ電流を基準抵抗R2に流す。
【0028】
基準抵抗R2は、一端が電源端子P1に接続され、他端がアンプAMP1の第2入力端子に接続される。基準定電流源IREF1は、アンプAMP1の第2入力端子に接続され、内部に一定電流が流れるため、基準抵抗R2の両端間に一定の電圧降下を生じさせる。即ち、基準定電流源IREF1に一定の電流が流れることで、アンプAMP1の第2入力端子には、基準抵抗R2の両端間に発生する第2電圧が印加される。第2電圧が過電流検出基準電圧(以降「基準電圧」という)である。
【0029】
また、アンプAMP1の出力端子は、出力トランジスタPNP1のベース端子に接続される。
【0030】
第1実施形態では、トランジスタNPN1とトランジスタNPN2は、同一の特性を有する。トランジスタNPN1とトランジスタNPN2は、ベース・エミッタ間電圧が所定の電圧である電圧VBE以上の場合はオンし、ベース・エミッタ間電圧が電圧VBE未満の場合にはオフする。
【0031】
トランジスタNPN1のベース端子およびトランジスタNPN2のベース端子は、共に帰還抵抗RD1と帰還抵抗RD2の間の接続点12に接続され、出力端子P3の分圧電圧が印加される。トランジスタNPN1とトランジスタNPN2は、ともにコレクタ端子が基準抵抗R2に接続され、基準抵抗R2にトランジスタNPN1とトランジスタNPN2のコレクタ電流が流れる。トランジスタNPN1とトランジスタNPN2のコレクタ端子と基準抵抗R2の接続点がアンプAMP1の第2入力端子に接続される。
【0032】
また、トランジスタNPN1は、エミッタ端子が調整抵抗R3を介してGND端子P2に接続されている。トランジスタNPN2は、エミッタ端子が、直列に接続された調整抵抗R4および基準電圧源VREF2を介してGND端子P2に接続されている。基準電圧源VREF2は一定の電圧を発生させるため、基準電圧源VREF2が接続されているトランジスタNPN2のエミッタ電圧は、トランジスタNPN1のエミッタ電圧より高い。そのため、トランジスタNPN2のベース・エミッタ間電圧は、トランジスタNPN1のベース・エミッタ間電圧より小さい。なお、トランジスタNPN1のエミッタ電圧およびトランジスタNPN2のエミッタ電圧は、ベース端子の電圧に追従するエミッタフォロア動作であり、出力電圧変化と同等に変化する。
【0033】
出力端子P3の電圧が下がってくると、接続点12の電圧、即ちトランジスタNPN1とトランジスタNPN2のベース電圧が下がる。まだこの状態ではトランジスタNPN1とトランジスタNPN2はともにオン状態である(この状態が電圧監視部G8の第1状態である)。さらに接続点12の電圧が下がってきて、トランジスタNPN2のベース・エミッタ間電圧が電圧VBEより小さくなると、トランジスタNPN2がトランジスタNPN1より先にオフする(この状態が電圧監視部G8の第2状態である)。このように、トランジスタNPN1とトランジスタNPN2は、オフするタイミングがそれぞれ異なる。
【0034】
<定常動作>
次に、負荷抵抗RL1の抵抗が比較的大きい定常動作時、即ち負荷であるマイコンICが演算し定常動作している場合のレギュレータ2の動作を説明する。レギュレータ2は、出力帰還部G2である帰還抵抗RD1、帰還抵抗RD2、帰還抵抗RD3、アンプAMP2、基準電圧源VREF1を含む。定常動作時、帰還抵抗RD1、帰還抵抗RD2、帰還抵抗RD3により、接続点23における出力端子P3の分圧電圧と基準電圧源VREF1の電圧がアンプAMP2により比較・増幅され、アンプAMP2の出力により出力トランジスタPNP1のベース電流が制御されることにより、出力端子P3の出力電圧を一定に保つ制御が行われる。
【0035】
仮に出力端子P3に接続されるマイコンICの演算が多くなり、負荷抵抗RL1の抵抗が小さく、レギュレータ2の出力電流(負荷電流)が急峻に増加し、レギュレータ2の出力電圧が一時的に低下した場合、出力電圧の分圧点、即ち帰還抵抗RD2と帰還抵抗RD3の接続点23に接続されたアンプAMP2の非反転入力端子の入力電圧が低下する。一方、アンプAMP2の反転入力端子には基準電圧源VREF1から一定電圧が供給されており、非反転入力端子の電圧低下はアンプAMP2により増幅され、アンプAMP2の出力電圧が低下する。アンプAMP2の出力電圧は出力トランジスタPNP1のベース電圧として印加されており、アンプAMP2の出力電圧低下により出力トランジスタPNP1のコレクタ電流が増加し、出力端子P3の出力電圧、即ちレギュレータ2の出力電圧が上昇する。以上のアンプAMP2の動作により、レギュレータ2における出力電圧の低下を補正する方向で負帰還制御がかかり、レギュレータ2の出力電圧は一定値を維持する。
【0036】
このときのレギュレータ2の出力電圧と、出力電流、即ち出力トランジスタPNP1のコレクタ電流の関係を図3のグラフT1に示す。グラフT1は、出力端子P3におけるレギュレータ2の出力電圧と出力電流の特性を示すグラフであり、所謂「フ」の字特性を示す。また、グラフT2は、出力トランジスタPNP1の許容損失特性を示すグラフである。ここで、出力トランジスタPNP1の許容損失特性とは、出力トランジスタPNP1におけるコレクタ・エミッタ間電圧とコレクタ電流との積で求められる電力である。通常はこの電力を超えないようにコレクタ・エミッタ間電圧またはコレクタ電流を制限した設計がされる。即ち、図3に示すように、グラフT1の特性線がグラフT2の特性線より左側に位置する状態である。
【0037】
図3のグラフT1の領域(1)は、出力端子P3において過電流は検出されず、出力帰還部G2により出力トランジスタPNP1の出力が定電圧出力制御されており、レギュレータ2として定常動作している。電流検出抵抗R1での電圧降下は小さく、アンプAMP1はレギュレータ2の動作(一定電圧出力)に作用していない状態である。
【0038】
<過電流保護動作>
次に、過電流保護時のレギュレータ装置1における過電流保護回路3の動作を説明する。負荷抵抗RL1が定常動作時より小さい抵抗値である場合には、出力トランジスタPNP1に過大なコレクタ電流が流れる。コレクタ電流は、エミッタ側に接続された電流検出抵抗R1によりI/V変換され、変換された第1電圧はアンプAMP1の第1入力端子へ直接印加される。一方、アンプAMP1の第2入力端子には基準抵抗R2が接続される。
このように接続することでアンプAMP1には、電源端子P1の電源電圧を基準に、電流検出抵抗R1と基準抵抗R2での電圧降下の電圧が差動入力される。基準抵抗R2の両端間の第2電圧は、基準定電流源IREF1の出力電流、第1電流生成部が生成したトランジスタNPN1のコレクタ電流(第1電流)、第2電流生成部が生成したトランジスタNPN2のコレクタ電流(第2電流)の和により生成され、アンプAMP1は、基準抵抗R2の両端間の第2電圧を参照し、電流検出抵抗R1の電圧降下を検知・増幅する。そしてアンプAMP1の出力は、出力トランジスタPNP1のベース電流を制御する。
【0039】
ここで、出力トランジスタPNP1に過大なコレクタ電流が流れているため、出力トランジスタPNP1のエミッタ電流も同様に過大であり、電流検出抵抗R1における電圧降下が大きくなる。電流検出抵抗R1の電圧降下により、アンプAMP1の第1入力端子に印加される電圧は同様に低下、第2入力端子に印加される第2電圧は変化しない為、アンプAMP1の出力電圧、即ち出力トランジスタPNP1のベース電圧は上昇する。その結果、出力トランジスタPNP1のコレクタ電流(即ち、出力端子P3に流れる出力電流)は減少する。
【0040】
上記のように過電流保護回路3が動作することにより、出力トランジスタPNP1のコレクタ電流の増加は抑えられ、更に負荷抵抗RL1の抵抗が小さくなった場合、出力端子P3の出力電圧は低下し、帰還抵抗RD1、帰還抵抗RD2、帰還抵抗RD3により分圧された接続点12の電圧、即ちトランジスタNPN1およびトランジスタNPN2のベース電圧も低下する。トランジスタNPN1およびトランジスタNPN2のベース電圧が低下すると、各トランジスタのコレクタ電流は減少し、基準抵抗R2に流れる電流が減少し、基準抵抗R2の両端間の第2電圧が低下する。
【0041】
このとき、トランジスタNPN1およびトランジスタNPN2それぞれのエミッタ側の回路構成が異なることにより、各トランジスタのコレクタ電流が異なる。具体的には、トランジスタNPN1のコレクタ電流は、ベース・エミッタ間電圧が保持されている範囲においては、調整抵抗R3を流れるエミッタ電流とほぼ同等であり、調整抵抗R3の電圧は上記エミッタフォロア動作により出力電圧と同様に変化する為、この結果トランジスタNPN1のコレクタ電流は、出力電圧変化範囲全てにおいて出力電圧変化と同等に変化する。
【0042】
一方、トランジスタNPN2のエミッタ側には調整抵抗R4および基準電圧源VREF2が接続されている。そのため、トランジスタNPN2のエミッタ電圧は一定の電圧がバイアスされた状態となる。トランジスタNPN2のコレクタ電流は、ベース・エミッタ間電圧が保持されている範囲においては、エミッタフォロア動作により出力電圧変化と同様に変化する。しかしトランジスタNPN2のエミッタ電圧が所定電圧にバイアスされているため、トランジスタNPN2のベース・エミッタ間電圧は早期に電圧VBE未満となり、トランジスタNPN1より先にオフ状態になる。即ちトランジスタNPN1およびトランジスタNPN2は共通のベース電圧が印加されているため、出力端子P3の出力電圧が低下していった際、トランジスタNPN2のベース・エミッタ間電圧の低下が著しく、トランジスタNPN2が先にオフ状態に転じる。つまり、トランジスタNPN1とトランジスタNPN2がともにオン状態の場合、電圧監視部G8は第1状態であり、電圧監視部G8に流れる電流は第1減少率で減少する。またトランジスタNPN1がオンでトランジスタNPN2がオフ状態の場合、電圧監視部G8は第2状態であり、電圧監視部G8に流れる電流は第1減少率より小さい第2減少率で減少する。
【0043】
トランジスタNPN1およびトランジスタNPN2のコレクタ端子は、ともに基準抵抗R2に接続され第2電圧を生成している為、トランジスタNPN1およびトランジスタNPN2がともにオン状態(第1状態)の場合とトランジスタNPN2が先にオフした状態(第2状態)とで、レギュレータ2の出力電圧低下の過程において、レギュレータ2の出力電圧に対するアンプAMP1の第2電圧低下の低下率(傾斜)が変化することとなる。具体的には、第1状態では、基準抵抗R2に流れる電流は第1減少率で減少する。また、第2状態では、トランジスタNPN2がオフしているため、基準抵抗R2に流れる電流は第1減少率より小さい第2減少率で減少する。
【0044】
このような第1実施形態において、電圧監視部G8が第1状態と第2状態に切り替わるため、出力トランジスタPNP1に流れる電流が、第1減少率で減少する状態と第1減少率より小さい第2減少率で減少する状態となる。即ち、電圧監視部G8が第1状態の場合は、第1電流生成部D1が生成した第1電流、および第2電流生成部D2が生成した第2電流が基準抵抗R2に流れるため、出力トランジスタPNP1に流れる電流が、第1減少率で減少し、電圧監視部G8が第2状態の場合は、第1電流生成部D1が生成した第1電流のみが基準抵抗R2に流れるため、出力トランジスタPNP1に流れる電流が、第1減少率より小さい第2減少率で減少する。
【0045】
このように、電圧監視部G8が2つの減少率で変化する構成とすることによって、レギュレータ装置1の出力端子P3における過電流保護特性は、より大きな最大出力電流に対応できる回路設計が可能となる。即ち、出力トランジスタPNP1の過電流を起因とする破壊に対し、より安全な回路設計が可能となる。この結果、出力トランジスタPNP1や負荷抵抗RL1として出力端子P3に接続される他回路や素子の破壊を防止できる。
【0046】
次に、第1実施形態の作用効果を、図5に示した従来のレギュレータ装置1と対比させてより詳細に説明する。図5に示す従来のレギュレータ装置1は、図2に示す第1実施形態と次の構成の違いがある。即ち、従来のレギュレータ装置1は、第1実施形態と比べトランジスタNPN2、調整抵抗R4、基準電圧源VREF2が存在しない。そのため、従来のレギュレータ装置1は、帰還抵抗RD1、調整抵抗R3、トランジスタNPN1で電圧監視部G8が構成される。このような従来のレギュレータ装置1は、上述の第1実施形態で説明した第1状態と第2状態に変化せず、一方の状態のみとなる。そのため、電圧監視部G8は、出力端子P3の電流が増加した場合に、トランジスタNPN1がオン状態の場合にはアンプAMP1に入力される第2電圧を出力端子P3の出力電圧低下に対し線形的に減少させ、アンプAMP1は、出力トランジスタPNP1のコレクタ電流を線形的に減少させる。
【0047】
第1実施形態のレギュレータ2の出力電圧と出力電流(即ち出力トランジスタPNP1のコレクタ電流)の関係を図3の実線の領域(1)~(5)に示す。図中、実線(T1)がレギュレータ2の出力電圧と出力電流に係る特性線、破線(T2)が出力トランジスタPNP1の許容損失特性である。出力トランジスタPNP1の許容損失特性は、出力トランジスタPNP1の仕様であらかじめ定められている許容損失を示している。なお、図3のグラフT1の領域(1)は、過電流は検出されず、定電圧出力制御されている領域を示している。
【0048】
領域(2)は、レギュレータ2の出力電流が増加し、最大出力電流が出力されている状態である。即ち、レギュレータ2の出力に接続される負荷抵抗RL1が小さく、出力端子P3の出力電流が過大になる異常状態である。本領域では電流検出抵抗R1の電圧降下と基準抵抗R2の電圧降下が等しく、アンプAMP1によってレギュレータ2からの出力電流が一定に制御されている(定電圧出力制御から定電流出力制御に切り替わった状態)。
【0049】
この領域(2)を設けない特性とした場合、レギュレータ2の負荷電流のわずかな変化等で出力電圧が低下することで、直ちに後述する領域(3)に入ってしまい、出力電流の低下と出力電圧の低下が同時に生じ、定常動作時の出力電圧となる領域(1)に復帰できなくなる。そのため、実用上、多少出力電流が多くても出力電流を低下させない領域(2)を意図的に作り、上記問題が起こらない特性としている。
【0050】
領域(3)は、領域(2)の状態より更に負荷抵抗RL1が小さい場合の、出力端子P3における出力電圧と出力電流の特性の状態を示す。領域(2)と同様、レギュレータ2は出力トランジスタPNP1からの出力電流の制御状態を継続するが、基準抵抗R2の両端間の第2電圧がレギュレータ2の出力電圧に比例して低下する。即ち、トランジスタNPN1及びトランジスタNPN2におけるベース・エミッタ間電圧の減少によって、第1電流生成部におけるトランジスタNPN1のコレクタ電流(第1電流)が線形に減少し、かつ第2電流生成部におけるトランジスタNPN2のコレクタ電流(第2電流)が線形に減少し、これにつれて、基準抵抗R2の両端間の第2電圧がレギュレータ2の出力電圧に対し第1低下率で線形に低下する。すると、アンプAMP1の出力、即ち出力トランジスタPNP1のベース電圧が上昇するため、出力トランジスタPNP1のコレクタ電流(出力端子P3を流れる電流)は第1減少率で線形に減少する。なお、領域(3)では、トランジスタNPN1およびトランジスタNPN2は、ともにオン状態であり、電圧監視部G8は第1状態である。
【0051】
領域(4)は、負荷抵抗RL1の抵抗がさらに小さくなり、領域(3)から更にレギュレータ2の出力電圧が低下し、トランジスタNPN2におけるベース・エミッタ間電圧が電圧VBE未満となる領域における、出力端子P3における出力電圧と出力電流の特性を示す。即ち、領域(4)では、トランジスタNPN1はオン状態、トランジスタNPN2はオフ状態(電圧監視部G8が第2状態)である。即ち第1電流生成部におけるトランジスタNPN1のコレクタ電流(第1電流)が減少し、また、第2電流生成部におけるトランジスタNPN2のコレクタ電流が流れないため、トランジスタNPN1のエミッタ電圧低下及びベース・エミッタ間電圧の減少によって第2減少率で線形に減少し、これにつれて、基準抵抗R2の両端間の第2電圧が第1低下率より小さい第2低下率で線形に低下する。すると、アンプAMP1からの出力、即ち出力トランジスタPNP1のベース電圧が上昇するため、出力トランジスタPNP1のコレクタ電流(出力端子P3を流れる電流)は第1減少率より小さい第2減少率で線形に減少する。
【0052】
このように、領域(4)ではトランジスタNPN2がオフしているため、出力端子P3における出力電流が減少する減少率は、領域(3)に比べて小さくなっている。即ち、領域(3)の出力端子P3における電圧電流特性と領域(4)の出力端子P3における出力電圧と出力電流の特性のグラフT1は、「く」の字状となる。
【0053】
上述したように従来のレギュレータ装置1では、電圧監視部G8が第1状態のみとなっているため、出力端子P3における出力電圧と出力電流の特性において領域(3)と領域(4)の状態となることがなく、本発明の「く」の字状の特性とは相違している。
【0054】
出力電流増加によって領域(4)から更にレギュレータ2の出力電圧が低下し、トランジスタNPN1のベース端子の電圧が低下し、トランジスタNPN1におけるベース・エミッタ間電圧が電圧VBE未満となると、トランジスタNPN1もオフし領域(5)の状態となる。
【0055】
この領域(5)は、トランジスタNPN1およびトランジスタNPN2はともにコレクタ電流が流れず即ち、基準抵抗R2には第1電流も第2電流も流れず、基準抵抗R2には基準定電流源IREF1の定電流のみが流れるため、基準抵抗R2の両端間の第2電圧は変化せず、レギュレータ2の出力電流は変化しない。このときの第2電圧は基準定電流源IREF1を流れる定電流により設定される。
【0056】
図3において、実線で示すグラフT1は、出力端子P3における出力電流に対する出力電流の特性線を示すグラフである。グラフT1における領域(4)は、出力電圧に対して出力電流の変化率が小さい領域であり、領域(3)は、出力電圧に対して出力電流の変化率が大きい領域である。一方、図3において、破線で示すグラフT2は、出力トランジスタPNP1におけるコレクタ・エミッタ間の電圧におけるコレクタ電流の許容損失特性を示すグラフである。グラフT2に示す特性は、レギュレータ2の出力電圧が増加、即ち出力トランジスタPNP1のコレクタ・エミッタ間電圧が減少するにつれて許容する電流が曲線状に増加することを示す。出力トランジスタPNP1の許容損失特性は、出力トランジスタPNP1の仕様であらかじめ定められている。
【0057】
出力トランジスタPNP1の出力電流が許容損失特性線より小さい場合(グラフT1がグラフT2の左側に位置する場合)は、出力トランジスタPNP1は出力トランジスタPNP1の許容損失特性を超えない。しかしながら、出力トランジスタPNP1の出力電流の特性線が許容損失特性線より大きい場合(グラフT1がグラフT2の右側に位置する場合)は、出力トランジスタPNP1に流れるコレクタ電流は出力トランジスタPNP1の許容損失特性線を超えることとなる。
【0058】
即ち、許容損失特性線より出力電流が大きい領域では、出力トランジスタPNP1はその許容損失を超えることとなる。このような状態の場合、出力トランジスタPNP1は破損する恐れがある。また、出力トランジスタPNP1が破損すると、レギュレータ2は一定電圧を出力する機能を喪失する為、負荷抵抗RL1として出力端子P3に接続される他回路や素子が破壊される恐れがある。
【0059】
第1実施形態によれば、レギュレータ2の出力電流ピーク値を上げて過電流保護特性を設計した場合、図4に示すように、グラフT1は領域(1)が長くなり、グラフT1が図3の状態より右側に突出する。しかしながら、出力特性は、領域(3)と領域(4)において「く」の字の特性を有することから、グラフT2が曲線を示す特性を有していてもグラフT1がグラフT2と交差することはない。従来のレギュレータ装置1は、出力特性が「く」の字の特性ではないため、グラフT1がグラフT2と交差する可能性が高く、本発明の第1実施形態では、上記のように優れた特性を得ることができる。
【0060】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。図6は第2実施形態の回路構成を示す図である。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同じ構成については同じ参照符号を付し、説明を簡略化または省略する。第2実施形態では、出力帰還部G2において、帰還抵抗RD2と帰還抵抗RD3の間に帰還抵抗RD2-2が接続される。また、トランジスタNPN1のベース端子は、帰還抵抗RD1と帰還抵抗RD2の間の接続点121に接続される。トランジスタNPN2のベース端子は、帰還抵抗RD2と帰還抵抗RD2-2の間の接続点122に接続される。このように接続することで、トランジスタNPN1のベース端子には、接続点121における出力端子P3の分圧電圧が印加され、トランジスタNPN2のベース端子には、接続点122における出力端子P3の分圧電圧が印加される。トランジスタNPN1とトランジスタNPN2は、ともにコレクタ端子がAMP1の第2入力端子に接続される。なお、第2実施形態において、トランジスタNPN1と調整抵抗R3が第1電流生成部D1に相当する。また、トランジスタNPN2と調整抵抗R4が第2電流生成部D2に相当する。
【0061】
このような第2実施形態では、トランジスタNPN1のベース電圧とトランジスタNPN2のベース電圧が異なり、トランジスタNPN1のベース電圧はトランジスタNPN2のベース電圧より高くなっている。つまり、トランジスタNPN1のベース・エミッタ間電圧はトランジスタNPN2のベース・エミッタ間電圧と異なる。
【0062】
また、トランジスタNPN2のエミッタ端子は、調整抵抗R4を介してGND端子P2に接続される。第2実施形態において、帰還抵抗RD1、帰還抵抗RD2、調整抵抗R3、調整抵抗R4、トランジスタNPN1、トランジスタNPN2が電圧監視部G8である。そして、トランジスタNPN1とトランジスタNPN2がともにオンしている状態が、電圧監視部G8が第1状態であり、トランジスタNPN1がオン状態でトランジスタNPN2がオフしている状態が、電圧監視部G8が第2状態である。なお、調整抵抗R3と調整抵抗R4は、同じ抵抗値であっても異なる抵抗値であってもよい。
【0063】
このような第2実施形態において、電圧監視部G8が第1状態と第2状態に切り替わるため、出力トランジスタPNP1に流れるコレクタ電流が、第1減少率で減少する状態と第1減少率より小さい第2減少率で減少する状態となる。即ち、電圧監視部G8が第1状態の場合は、第1電流生成部D1が生成した第1電流、および第2電流生成部D2が生成した第2電流が基準抵抗R2に流れるため、出力トランジスタPNP1に流れるコレクタ電流が、第1減少率で減少する状態となり、電圧監視部G8が第2状態の場合は、第1電流生成部D1が生成した第1電流のみが基準抵抗R2に流れるため、出力トランジスタPNP1に流れるコレクタ電流が、第1減少率より小さい第2減少率で減少する状態となる。そのため、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0064】
第2実施形態に係るレギュレータ装置1は、定常動作時には、出力帰還部G2の帰還動作によって一定の出力電圧が維持される(図3および図4の領域(1)の状態)。
【0065】
そして、レギュレータ2の出力電圧が低下した場合、トランジスタNPN1とトランジスタNPN2がともにオン状態(第1状態)では、出力電圧低下に対し第2電圧生成部G5に流れる電流が第1減少率で減少して、生成する第2電圧が第1低下率で線形に低下することで、領域(2)を経て領域(3)のように出力トランジスタPNP1のコレクタ電流が第1減少率で線形に減少する。また、さらにレギュレータ2の出力電圧が低下し、トランジスタNPN1がオン状態でありトランジスタNPN2がオフしている状態(第2状態)では、出力電圧低下に対し第2電圧生成部G5に流れる電流が第1減少率より小さい第2減少率で減少して、生成する第2電圧が第1低下率より小さい第2低下率で線形に低下することで領域(4)のように出力トランジスタPNP1のコレクタ電流が第1減少率より小さい第2減少率で線形に減少する。即ち、第2実施形態においても、出力電圧と出力電流の特性を示すグラフT1において、領域(3)と領域(4)の間で「く」の字状となる。そのため、第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0066】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。図7は、第3実施形態を示す回路図である。第3実施形態は、第1実施形態の変形例である。なお、第3実施形態において、第1実施形態と同一の構成については、第1実施形態と同一符号を付し、説明を簡略化または省略する。
【0067】
第3実施形態では、接続点12に、第3トランジスタである出力電圧検出用トランジスタPNP2(以降「トランジスタPNP2」という)のベース端子を接続する。そして、トランジスタPNP2のエミッタ端子に、トランジスタNPN1のベース端子とトランジスタNPN2のベース端子を接続する。また、トランジスタPNP2のエミッタ端子と電源端子P1間に、第2基準電流源である基準定電流源IREF2を接続する。基準定電流源IREF2は、トランジスタPNP2に一定のエミッタ電流を流す。また、トランジスタPNP2のコレクタ端子は、GND端子P2に接続される。トランジスタPNP2のベース端子は、帰還抵抗RD1と、帰還抵抗RD2および帰還抵抗RD3の間の接続点12に接続され、出力端子P3の分圧電圧が印加され、トランジスタPNP2のエミッタフォロワ回路構成によってトランジスタNPN1のベース端子とトランジスタNPN2のベース端子にベース電圧を印加する。即ち、第3実施形態では、トランジスタNPN1のベース端子とトランジスタNPN2のベース端子には、接続点12における出力端子P3の分圧電圧にトランジスタPNP2のベース・エミッタ間電圧が加算されたベース電圧が印加される。
【0068】
なお、第3実施形態において、帰還抵抗RD1、調整抵抗R3、調整抵抗R4、基準電圧源VREF2、トランジスタPNP2、トランジスタNPN1、トランジスタNPN2、基準定電流源IREF2が電圧監視部G8である。なお、第3実施形態において、トランジスタNPN1と調整抵抗R3が第1電流生成部D1に相当する。また、トランジスタNPN2と調整抵抗R4と基準電圧源VREF2が第2電流生成部D2に相当する。
【0069】
このような第3実施形態において、電圧監視部G8が第1状態と第2状態に切り替わるため、出力トランジスタPNP1に流れるコレクタ電流が、第1減少率で減少する状態と第1減少率より小さい第2減少率で減少する状態となる。即ち、電圧監視部G8が第1状態の場合は、第1電流生成部D1が生成した第1電流および第2電流生成部D2が生成した第2電流が基準抵抗R2に流れるため、出力トランジスタPNP1に流れるコレクタ電流が、第1減少率で減少する状態となり、電圧監視部G8が第2状態の場合は、第1電流生成部D1が生成した第1電流のみが基準抵抗R2に流れるため、出力トランジスタPNP1に流れるコレクタ電流が、第1減少率より小さい第2減少率で減少する状態となる。そのため、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0070】
第3実施形態に係るレギュレータ装置1は、定常動作時は第1実施形態と同じ動作を行う。過電流保護動作時は、出力端子P3における出力電圧変化はトランジスタPNP2を通じて、トランジスタNPN1およびトランジスタNPN2に伝達される。過電流保護回路3が動作したことによりレギュレータ2の出力電圧が低下した際、トランジスタPNP2のベース電圧及びエミッタ電圧が低下し、トランジスタNPN1のベース電圧およびトランジスタNPN2のベース電圧も同様に低下する。すると、第1実施形態と同様に、基準抵抗R2における過電流検出用の第2電圧が低下し、出力電圧変化に応じて出力トランジスタPNP1のコレクタ電流(レギュレータ2の出力電流)が減少する過電流保護特性となる。
【0071】
レギュレータ2の出力電圧が低下した場合、トランジスタNPN1とトランジスタNPN2がともにオン状態である第1状態では、出力電圧低下に対し第2電圧生成部G5に流れる電流が第1減少率で減少して、生成する第2電圧が第1低下率で線形に低下することで出力トランジスタPNP1には第1減少率で線形に減少したコレクタ電流が流れる。また、さらにレギュレータ2の出力電圧が低下し、トランジスタNPN1がオン状態でありトランジスタNPN2がオフしている状態である第2状態では、出力電圧低下に対し第2電圧生成部G5に流れる電流が第1減少率より小さい第2減少率で減少して、生成する第2電圧が第1低下率より小さい第2低下率で線形に低下することで出力トランジスタPNP1には第1減少率より小さい第2減少率で線形に減少したコレクタ電流が流れる。
【0072】
この状態における出力端子P3における出力電圧と出力電流との特性を図8の領域(1)~領域(4)に示す。この領域(1)~領域(4)に示す特性の変化は、第1実施形態と同様である。なお、領域(3)は電圧監視部G8が第1状態の時のグラフであり、領域(4)は電圧監視部G8が第2状態の時のグラフである。
【0073】
第3実施形態では、接続点12における出力端子P3の出力分圧電圧にトランジスタPNP2のベース・エミッタ間電圧が加算され、トランジスタNPN1、トランジスタNPN2のベース電圧となる。即ち、トランジスタNPN1のベース電圧およびトランジスタNPN2のベース電圧が、トランジスタPNP2におけるベース・エミッタ間電圧分高くなる。そのため、出力電圧が低下する過程でトランジスタNPN2はオフするが、トランジスタNPN1はオフしない。そのため、接続点12の電圧がより低い値まで、出力電圧検出動作を行うことができる。即ち、第3実施形態における出力端子P3の出力電圧と出力電流の特性には、図3および図4における領域(5)の特性が生じない。
【0074】
このような第3実施形態において、レギュレータ2の出力電流ピーク値を上げて過電流保護特性を設計した場合、図9に示すように、グラフT1は領域(1)が長くなり、グラフT1が図8の状態より右側に突出する。しかしながら、領域(3)と領域(4)が「く」の字状となることから、グラフT1がグラフT2と交差しない。そのため、第3実施形態では、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0075】
また第3実施形態では、第1実施形態における効果に加え、レギュレータ2の出力電圧に対する過電流保護特性の傾斜をより広い範囲(領域(3)および領域(4)の範囲)にわたって調整することができ、出力トランジスタPNP1の許容損失特性に合わせた回路設計が幅広く可能となり、設計の自由度、安全性をより上げることができる。
【0076】
また第3実施形態では、接続点12がトランジスタNPN1のベース端子およびトランジスタNPN2のベース端子に直接接続されていない。これは第1実施形態で説明した、接続点12がトランジスタNPN1のベース端子およびトランジスタNPN2のベース端子に直接接続されている構成と異なる。
【0077】
このように第3実施形態では、接続点12にはトランジスタPNP2のベース端子のみが接続されていることにより、接続点12からはトランジスタPNP2のベース電流のみが流れる。一般的にベース電流はコレクタ電流÷電流増幅率で表され、通常、コレクタ電流に比べ十分小さい値であるため、帰還抵抗RD1、帰還抵抗RD2、帰還抵抗RD3による分圧の精度(接続点23の電圧)は誤差が少ない。そのため、出力帰還部G2に及ぼす影響は小さい。
【0078】
また、通常トランジスタのベース・エミッタ間電圧は負の温度係数である。そこで第3実施形態では、上記の構成とすることで、トランジスタNPN1およびトランジスタNPN2のベース・エミッタ間電圧の温度による変動分は、トランジスタPNP2のベース・エミッタ間電圧の温度による変動分により相殺され、温度による影響が少なく、トランジスタNPN1及びトランジスタNPN2による過電流検出用基準電流の生成が温度依存の小さい状態で行われる。
【0079】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。図10は、第4実施形態を示す回路図である。第4実施形態において、第3実施形態と同じ構成については同一の参照符号を付し、説明を簡略化または省略する。
【0080】
第4実施形態は、第3実施形態の構成において、アンプAMP1を、アンプAMP11とトランジスタMP1で構成している。アンプAMP11は、非反転入力端子が電流検出抵抗R1と出力トランジスタPNP1のエミッタ端子に接続されている。一方、反転入力端子が基準抵抗R2とトランジスタNPN1とトランジスタNPN2のコレクタ端子に接続されている。
【0081】
また、アンプAMP11の出力端子にはトランジスタMP1のゲート端子が接続される。トランジスタMP1のソース端子は、出力トランジスタPNP1のエミッタ端子(即ち、アンプAMP11の非反転入力端子)に接続され、トランジスタMP1のドレイン端子は、出力トランジスタPNP1のベース端子に接続される。
【0082】
また、トランジスタNPN2のエミッタ端子には、直列接続の調整抵抗R4と調整抵抗R5が接続されており、調整抵抗R5はGND端子P2に接続されている。そして、電源端子P1と調整抵抗R4と調整抵抗R5の間の接続点45には、第3基準電流源である基準定電流源IREF3が接続されている。そして、基準定電流源IREF3から接続点45を介して調整抵抗R5に定電流が流れることで、トランジスタNPN2のエミッタ電圧はトランジスタNPN1のエミッタ電圧より高くなる。
【0083】
また、第4実施形態において、帰還抵抗RD1、調整抵抗R3、調整抵抗R4、調整抵抗R5、トランジスタPNP2、トランジスタNPN1、トランジスタNPN2、基準定電流源IREF2、基準定電流源IREF3が電圧監視部G8である。また、アンプAMP11とトランジスタMP1が電流検出部G6である。
【0084】
このような第4実施形態において、電圧監視部G8が第1状態と第2状態に切り替わるため、出力トランジスタPNP1に流れる電流が、第1減少率で減少する状態と第1減少率より小さい第2減少率で減少する状態となる。即ち、電圧監視部G8が第1状態の場合は、第1電流生成部D1に流れる第1電流および第2電流生成部D2が生成した第2電流が基準抵抗R2に流れるため、出力電圧低下に対し出力トランジスタPNP1に流れるコレクタ電流が、第1減少率で減少する状態となり、電圧監視部G8が第2状態の場合は、第1電流生成部D1が生成した第1電流のみが基準抵抗R2に流れるため、出力電圧低下に対し出力トランジスタPNP1に流れるコレクタ電流が、第1減少率より小さい第2減少率で減少する状態となる。そのため、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0085】
第4実施形態のレギュレータ装置1においてレギュレータ2の出力電圧が低下した場合、トランジスタNPN1とトランジスタNPN2がともにオン状態である第1状態では、第2電圧生成部G5に流れる電流が第1減少率で減少して、生成する第2電圧が第1低下率で線形に低下する。するとアンプAMP11の出力電圧は低下し、トランジスタMP1はそのゲート電圧が低下する為、トランジスタMP1のドレイン電流が増加し出力トランジスタPNP1のベース電圧は上昇する。その結果、出力電圧低下に対し出力トランジスタPNP1に流れる電流(即ち、出力端子P3に流れる出力電流)は第1減少率で線形に減少する。また、さらにレギュレータ2の出力電圧が低下し、トランジスタNPN1がオン状態でありトランジスタNPN2がオフしている状態である第2状態では、出力電圧低下に対し第2電圧生成部G5に流れる電流が第1減少率より小さい第2減少率で減少して、生成する第2電圧が第1低下率より小さい第2低下率で線形に低下することでアンプAMP11とトランジスタMP1は同様の動作を行い、出力トランジスタPNP1には第1減少率より小さい第2減少率で線形に減少したコレクタ電流が流れる。
【0086】
そして、第4実施形態においても、出力端子P3における出力電圧と出力電流の特性は、図8図9における領域(1)~領域(4)の状態となる。即ち、領域(3)と領域(4)が「く」の字状となることから、グラフT1がグラフT2と交差しない。そのため、第4実施形態では、第1実施形態および第3実施形態と同様の様々な効果を奏する。
【0087】
なお、第1実施形態および第3実施形態では、出力電圧検出用トランジスタをトランジスタNPN1、トランジスタNPN2の2つのトランジスタで構成したが、ベース及びコレクタをそれぞれトランジスタNPN1、NPN2と共通に接続した出力電圧検出用トランジスタNPN3(図示せず)を追加し、出力電圧検出用トランジスタNPN3のエミッタ側に調整抵抗R4-2、基準電圧源VREF2-2(いずれも図示せず)を追加し構成することも可能である。この場合、出力電圧検出用NPNトランジスタが計3つとなり、図3の出力電圧・電流特性グラフT1における領域(3)に新たな特性変曲点を追加生成することができる。即ち、追加したトランジスタNPN3のエミッタ側バイアス電圧は基準電圧源VREF2-2により設定されるが、このバイアス電圧をトランジスタNPN2のバイアス電圧より高い値に設定すれば、出力電圧が低下していく過程において、出力電圧検出用トランジスタが全てオンの状態からトランジスタNPN3→トランジスタNPN2の順にオフし、出力電圧変化に対する出力電流の減少率を大→中→小の順に変化させることができる。これにより、出力電圧・電流特性グラフT1は出力トランジスタPNP1の許容損失グラフT2の特性形状へより近い形状となる。
【0088】
このように、出力電圧検出トランジスタの数は2つに限定されること無く、3つ以上に増やし構成することもでき、それぞれの出力電圧検出トランジスタのエミッタ側バイアスを適切に設定すれば、図3における出力電圧・電流特性グラフT1を出力トランジスタPNP1の許容損失グラフT2の特性形状へより最適に合わせ込むことができ、レギュレータ装置1の更に安全な回路設計が可能となる。
【0089】
また、第1実施形態~第4実施形態において、トランジスタNPN1とトランジスタNPN2は同一の特性としたが、トランジスタNPN1とトランジスタNPN2は異なる特性を有するトランジスタであってもよい。このように、トランジスタNPN1及びトランジスタNPN2は、如何なる接続、素子特性によって構成した場合においても、トランジスタNPN1のベース端子とトランジスタNPN2のベース端子の電圧低下時に、トランジスタNPN2がトランジスタNPN1より早くオフするようにそれぞれのトランジスタのベース・エミッタ間電圧を調整すればよい。
【0090】
また、第1実施形態および第3実施形態では、トランジスタNPN2のエミッタ電圧を調整抵抗R4及び基準電圧源VREF2により生成しているが、第4実施形態のように、調整抵抗R4と調整抵抗R5を直列に接続し、調整抵抗R4と調整抵抗R5間に基準定電流源IREF3を接続した場合も同様の動作特性を実現できる。この場合、調整抵抗R5の抵抗値及び調整抵抗R5を流れる電流値によってトランジスタNPN2のエミッタ電圧を調整可能である。
【0091】
また、第4実施形態においても、出力電圧検出を行うトランジスタNPN1、トランジスタNPN2の数は3つ以上に増やして構成することが可能で、この場合においてもレギュレータ2の出力電圧(出力端子P3の電圧)に及ぼす影響を低く抑えることができる。出力電圧検出トランジスタの数を増やした場合、接続点12から各トランジスタのベース端子に流れ込む電流もトランジスタ数に比例して増加する為、帰還抵抗RD1、帰還抵抗RD2、帰還抵抗RD3による分圧の誤差も増大する。第4実施形態では、出力電圧検出用のトランジスタ数を増やした場合においても、接続点12に流れるベース電流はトランジスタPNP2の1つ分のベース電流である為、帰還抵抗RD1、帰還抵抗RD2、帰還抵抗RD3による分圧の誤差を低く抑えることができる。なお、基準定電流源IREF2の電流値は、出力電圧検出用トランジスタ(トランジスタNPN1、トランジスタNPN2)のベース端子へ流れ込む電流の総和に対し十分大きな値に設定する。
【0092】
なお、上記の第1実施形態~第4実施形態では、次のようなメリットもある。
【0093】
レギュレータ2や過電流保護回路3を構成する各素子は、IC(Integrated Circuit)で構成されることもあるが、電流検出抵抗R1をICの外に設ければ、電流検出抵抗R1を可変することでユーザが出力端子P3における出力電流の検出値を変更することができる。
【0094】
また、電流検出抵抗R1に流れる電流に応じた電圧を直接アンプAMP1に入力するため、電流検出抵抗R1の抵抗特性、即ち抵抗値精度や温度特性が良質な抵抗素子を選べば、電流検出抵抗R1に流れる電流をより精度良く検出することができる。
【0095】
また、出力トランジスタPNP1を、レギュレータ2や過電流保護回路3を構成するICの外に設ければ、出力端子P3に流れる電流、即ちレギュレータ2の出力電流を大電流化することが可能である。
【0096】
以上説明したように、第1実施形態~第4実施形態のレギュレータ装置1は、電源端子P1から供給された電力に基づいて所定の電力を負荷抵抗RL1に供給するレギュレータ2と、負荷抵抗RL1に流れる電流を制御する過電流保護回路3と、を備えたレギュレータ装置1であって、レギュレータ2は、電源端子P1からの電力が供給される出力素子G1と、出力素子G1からの出力および負荷抵抗RL1が接続される出力端子P3と、出力端子P3における電圧を一定値に維持するように出力素子G1を制御する出力帰還部G2と、を備え、過電流保護回路3は、電源端子P1から流れる電流に基づいて第1電圧を生成する電流センシング部G7と、内部を流れる電流の量に応じて変化する第2電圧を生成する第2電圧生成部G5と、第1電圧と前記第2電圧を比較して、第2電圧の低下に伴い、出力素子G1を流れる電流を減少させる電流検出部G6と、出力端子P3の電圧の低下に伴って、出力素子G1を流れる電流を第1減少率で減少させる第1状態と、出力素子G1を流れる電流を第1減少率より小さい第2減少率で減少させる第2状態と、を切り替える電圧監視部G8と、を備える。
【0097】
このようなレギュレータ装置1は、電圧監視部G8が、出力端子P3の電圧の低下に伴って、出力素子G1を流れる電流を第1減少率で減少させる第1状態と、出力素子G1を流れる電流を第1減少率より小さい第2減少率で減少させる第2状態と、を切り替える。そのため、レギュレータ装置1の出力素子G1の許容損失特性に合わせた過電流保護回路の回路設計を行うことができるため、出力素子G1やレギュレータ装置1の負荷として接続される回路や素子が破壊される可能性を低減することが可能となる。
【0098】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0099】
1 レギュレータ装置
2 レギュレータ
3 過電流保護回路
AMP1 過電流検出アンプ
AMP2 エラーアンプ
AMP11 過電流検出アンプ
IREF1 過電流検出用基準定電流源
IREF2 過電流検出用基準定電流源
IREF3 基準定電流源
MP1 過電流検出出力トランジスタ
NPN1 出力電圧検出用トランジスタ
NPN2 出力電圧検出用トランジスタ
P1 電源端子
P2 GND端子
P3 出力端子
PNP1 出力トランジスタ
PNP2 出力電圧検出用トランジスタ
R1 電流検出抵抗
R2 過電流検出用基準抵抗
R3 過電流検出用調整抵抗
R4 過電流検出用調整抵抗
R5 過電流検出用調整抵抗
RD1 帰還抵抗
RD2 帰還抵抗
RD2-2 帰還抵抗
RD3 帰還抵抗
RL1 負荷抵抗
VREF1 基準電圧源
G1 出力素子
G2 出力帰還部
G3 電圧監視1部
G4 電圧監視2部
G5 第2電圧生成部
G6 電流検出部
G7 電流センシング部
G8 電圧監視部
D1 第1電流生成部
D2 第2電流生成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10