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特開2022-120560パイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022120560
(43)【公開日】2022-08-18
(54)【発明の名称】パイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物
(51)【国際特許分類】
   A23D 7/00 20060101AFI20220810BHJP
   A21D 2/16 20060101ALI20220810BHJP
   A21D 13/31 20170101ALI20220810BHJP
   A21D 13/14 20170101ALI20220810BHJP
【FI】
A23D7/00 506
A21D2/16
A21D13/31
A21D13/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021017527
(22)【出願日】2021-02-05
(71)【出願人】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 文子
(72)【発明者】
【氏名】兼子 健太郎
【テーマコード(参考)】
4B026
4B032
【Fターム(参考)】
4B026DC01
4B026DC06
4B026DG02
4B026DH01
4B026DH05
4B026DL02
4B026DL03
4B026DL04
4B026DL07
4B026DP01
4B026DX04
4B032DB13
4B032DE05
4B032DG02
4B032DK07
4B032DK12
4B032DK14
4B032DK15
4B032DK18
4B032DK21
4B032DK49
4B032DK70
4B032DL05
4B032DP08
4B032DP23
4B032DP30
4B032DP40
(57)【要約】
【課題】良好な浮き、内相、呈味、食感を有する甘味パイ製品を得ることができる、パイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物を提供すること。
【解決手段】融点が38℃以上であるエステル交換油脂を含有するパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物。パイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物は、油相の油脂融点が38℃以上であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点が38℃以上であるエステル交換油脂を含有することを特徴とするパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物。
【請求項2】
油相の油脂の融点が38℃以上である請求項1に記載のパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物。
【請求項3】
油分の含有量が30~60質量%である請求項1又は2に記載のパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載のパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物を含有するパイ生地。
【請求項5】
請求項4に記載のパイ生地の焼成品である甘味パイ製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ロールイン油脂を使用することで層状の内相を呈するベーカリー製品は、一般的にパイとデニッシュに大別される。
【0003】
前者は、生地に甘味成分を含まず、また、発酵工程を有さない点において菓子に分類されるのに対し、後者は生地に甘味成分を含み、発酵工程を有するため、パンに分類される。
【0004】
しかし、最近は、この両者の境界があいまいであり、イーストを含有するが発酵工程をとくにとらないイースト菓子や、糖分を含有する生地を発酵工程をとらずに使用する甘味パイなども多くみられるようになってきている。
【0005】
ここで、後者の甘味パイにおいては、糖分の多い生地を使用すると、浮きが落ちてしまう問題があった。
【0006】
もちろん、ロールイン油脂の折りこみ量を増やしたり、折数を少なくしたりすることによって若干の浮きを改良することは可能であるが、その場合、油性感の強い食感になってしまったり、浮きが不均一になり安定的な外観の甘味パイ製品を安定的に得ることが不可能になってしまう。
【0007】
そのため、糖類を生地に添加するかわりにロールイン油脂に含有させる方法が考えられ、油中水型加糖ロールイン油脂を使用する方法が行われてきたが、単に糖類を水相に入れただけでは得られるパイ製品の浮きが著しく低下してしまうため、油脂の硬さを調整する必要があり、使用油脂を高融点化することが行われている(例えば特許文献1参照)。しかし、この方法であっても良好な浮きを得ることは困難であった。また、これらの方法では、ロールイン油脂中に含有可能な糖の量が少なく、甘味が不足する問題があり、また、得られるパイ製品も浮きが不足するため、かえって油性感の強いパイ製品になってしまう問題があった。
【0008】
そこで、糖類を乳化させることを行わずに、糖を含むロールイン油脂と糖を含有しないロールイン油脂を併用する方法(例えば特許文献2参照)や、糖類含有呈味成分をヘテロの形態で含むロールイン油脂(例えば特許文献3参照)も開発されたが、この方法では均質な浮きを得ることが困難であった。
【0009】
また、加糖ロールイン油脂を使用する代わりに、クッキー生地を使用する方法も考えられた(特許文献4、5参照)が、この方法では食感が硬くなりすぎ、また十分な浮きが得られないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平04-248948号公報
【特許文献2】特開2002-017236号公報
【特許文献3】特開2006-000066号公報
【特許文献4】特開昭62-259540号公報
【特許文献5】特開平11-75675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の課題は、良好な浮き、内相、呈味、食感を有する甘味パイ製品を得ることができる、パイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、上記課題を解決すべく種々検討した結果、パイ生地用加糖ロールイン油脂について、従来の層状ベーカリー製品に使用しているような油中水型ではなく水中油型とし、該油相に高融点のエステル交換油脂を使用することで、上記課題を解決することが可能であることを知見した。
【0013】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、融点が38℃以上であるエステル交換油脂を含有するパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物である。
【発明の効果】
【0014】
本発明のパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物を使用することにより、良好な浮き、内相、呈味、食感を有する甘味パイ製品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0016】
まず、本発明で使用するエステル交換油脂について述べる。該エステル交換油脂は、油脂をエステル交換して得られるものである。エステル交換油脂は、その融点が38℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは43℃以上、更に好ましくは45℃以上、最も好ましくは50℃以上である。融点が38℃未満のエステル交換油脂を使用すると本発明の効果が得られない。融点の上限値については特に制限はないが、好ましくは60℃以下、より好ましくは58℃以下である。
【0017】
本発明における融点は上昇融点である。エステル交換油脂の融点は、例えば、「日本油化学会制定 基準油脂分析試験法 2.2.4.2(1996)1996年版」に準じて測定することができる(以下、融点の測定について同様である。)。以下、本明細書において融点と記載する場合、上昇融点を意味し、その測定方法は上述のとおりである。
【0018】
融点が38℃以上であるエステル交換油脂(以下、「エステル交換油脂A」ともいう。)の製造に使用される油脂としては、食用に使用可能な食用油脂であれば特に制限なく使用することができる。該食用油脂の具体例としては、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、オリーブ油、落花生油、米油、べに花油及びひまわり油等の常温で液体の油脂、パーム油、パーム核油、ヤシ油、サル脂、マンゴ脂、乳脂、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油及び鯨油等の常温で固体の油脂、並びにこれらの油脂に水素添加、分別及びエステル交換等の物理的又は化学的処理の1種又は2種以上の処理を施した油脂を使用することができる。本発明においては、上記食用油脂の1種を単独で使用してもよく、或いは2種以上を含有する油脂配合物を使用してもよい。
【0019】
エステル交換反応は、常法に従って行うことができ、化学的触媒によるエステル交換反応でもよく、酵素によるエステル交換反応でもよい。また、位置選択性のエステル交換反応であっても、ランダムエステル交換反応であってもよいが、ランダムエステル交換反応が好ましい。
【0020】
化学的触媒によるエステル交換反応を行う場合、使用できる化学的触媒としては、例えば、ナトリウムメチラート等のアルカリ金属系触媒が挙げられる。
【0021】
酵素によるエステル交換反応を行う場合、使用できる酵素としては、位置選択性のない酵素、例えば、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、リゾープス(Rhizopus)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ムコール(Mucor)属、ペニシリウム(Penicillium)属等に由来するリパーゼが挙げられる。なお、該リパーゼは、イオン交換樹脂或いはケイ藻土及びセラミック等の担体に固定化して、固定化リパーゼとして用いることができ、粉末の形態で用いることもできる。
【0022】
本発明において、エステル交換油脂Aは油相に含まれる。本発明のパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物におけるエステル交換油脂Aの含有量は、ロールイン時に良好な延展性を示すこと、及び、得られる甘味パイ製品がより良好な浮きとなる点、更に、甘味発現性が良好である点から、油相の全油脂量の30%質量以上であることが好ましく、より好ましくは40~100質量%、更に好ましくは50~100質量%である。
【0023】
本発明では、エステル交換油脂Aがパーム系油脂のランダムエステル交換油脂を含有することが好ましい。また、エステル交換油脂Aがパーム系油脂のランダムエステル交換油脂のみからなることも好ましい。上記パーム系油脂としては、パーム油、及び、パーム油に対し水素添加、分別及びエステル交換等の物理的又は化学的処理の1種又は2種以上の処理を施した油脂が挙げられる。エステル交換油脂Aに占める上記パーム系油脂のランダムエステル交換油脂の含有量は、好ましくは40~100質量%、更に好ましくは50~100質量%である。
【0024】
本発明では、上記パーム系油脂のランダムエステル交換油脂として、口溶けの点で、パームオレインをランダムエステル交換して得られたエステル交換油脂を使用することが好ましい。本発明のパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物が、上記パームオレインをランダムエステル交換して得られたエステル交換油脂を含む場合、該エステル交換油脂を油脂中40~100質量%、より好ましくは50~100質量%含有することが好ましい。
【0025】
本発明では、上記パーム系油脂のランダムエステル交換油脂が以下の(1)~(3)の何れかを含有することが、層の浮きがよりよく、層がより明瞭である甘味パイ製品を得ることができることから好ましい。
【0026】
(1)パーム油とパーム極度硬化油とを含有する油脂配合物のランダムエステル交換油脂
ランダムエステル交換油脂(1)の製造に使用できるパーム分別油としては、パームステアリン、パームオレイン及びパーム分別中融点部が挙げられる。上記油脂配合物におけるパーム油とパーム極度硬化油との配合比(質量比)は、20:80~80:20であることが好ましく、51:49~80:20であることがより好ましい。上記油脂配合物におけるパーム極度硬化油の配合比が80質量%以下であると、得られるパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物の低温での延展性が良好となり、得られる甘味パイ製品の口溶けが良好となる。また、パーム極度硬化油の配合比が20質量%以上であると、得られる甘味パイ製品の浮きが良好となる。
【0027】
(2)パーム分別油とパーム極度硬化油とを含有する油脂配合物のランダムエステル交換油脂
ランダムエステル交換油脂(2)の製造に使用できるパーム分別油としては、上述のものが挙げられる。上記油脂配合物におけるパーム分別油とパーム極度硬化油との配合比(質量比)は、20:80~80:20であることが好ましく、51:49~80:20であることがより好ましい。上記油脂配合物におけるパーム極度硬化油の配合比が80質量%以下であると、得られるパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物の低温での延展性が良好となり、得られる甘味パイ製品の口溶けが良好となる。また、パーム極度硬化油の配合比が20質量%以上であると、得られる甘味パイ製品の浮きが良好となる。
【0028】
(3)パーム油とパーム分別油とパーム極度硬化油とを含有する油脂配合物のランダムエステル交換油脂
ランダムエステル交換油脂(3)の製造に使用できるパーム分別油としては、上述のものが挙げられる。上記油脂配合物におけるパーム油及びパーム分別油と、パーム極度硬化油との配合比(質量比)は、20:80~80:20であることが好ましく、51:49~80:20がより好ましい。上記油脂配合物におけるパーム極度硬化油の配合比が80質量%以下であると、得られるパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物の低温での延展性が良好となり、得られる甘味パイ製品の口溶けが良好となる。また、パーム極度硬化油の配合比が20質量%以上であると、得られる甘味パイ製品の浮きが良好となる。
【0029】
本発明のパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物が上記ランダムエステル交換油脂(1)~(3)の何れかを含有する場合、油脂中に合計で5~70質量%含有することが好ましく、10~49質量%含有することがより好ましい。
【0030】
本発明のパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物が、エステル交換油脂Aとしてパーム系油脂のランダムエステル交換油脂を含有する場合、該パーム系油脂のランダムエステル交換油脂は、パームオレインをランダムエステル交換して得られたエステル交換油脂と、ランダムエステル交換油脂(1)~(3)から選択されるエステル交換油脂の1種以上とを含有することが好ましい。パームオレインをランダムエステル交換して得られたエステル交換油脂とランダムエステル交換油脂(1)~(3)との配合比(質量比)は、前者:後者で、50~95:5~50であることが好ましく、70~90:10~30であることが好ましい。
【0031】
本発明のパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物は、エステル交換油脂A以外のその他の油脂を含有してもよい。その他の油脂の具体例としては、上述の食用油脂が挙げられる。当該食用油脂の1種を単独で用いることもでき、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0032】
また、本発明のパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物は、トランス酸を実質的に含有しないことが好ましい。ここでいう「トランス酸を実質的に含有しない」とは、トランス酸の含有量が、本発明のパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物に含まれている油脂の全構成脂肪酸中、好ましくは10質量%未満、更に好ましくは5質量%未満、最も好ましくは2質量%未満であることを意味する。トランス酸の含有量は、例えば、「日本油化学会制定 基準油脂分析試験法 2.4.4.3-2013」により測定することができる。
【0033】
水素添加は油脂の融点を上昇させる典型的な方法であるが、これによって得られる水素添加油脂は、完全水素添加油脂を除いて、通常構成脂肪酸中にトランス酸が10~50質量%程度含まれている。一方、天然油脂中にはトランス酸が殆ど存在せず、反芻動物由来の油脂に10質量%未満含まれているにすぎない。近年、化学的な処理、特に水素添加に付されていない油脂組成物、即ち実質的にトランス酸を含まない油脂組成物であって、適切なコンシステンシーを有するものが要求されている。
【0034】
本発明では、上記油脂配合物に使用する油脂、及び上記その他の油脂(上記融点が38℃以上であるエステル交換油脂以外の油脂)として、それぞれ実質的にトランス酸を含有しない油脂を使用することで、水素添加油脂を使用せずとも良好なコンシステンシーを有し、トランス酸を実質的に含有しないパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物を簡単に得ることができる。
【0035】
本発明のパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物は、良好な浮き、内相、呈味、食感を有する甘味パイ製品を得ることができる点で、油相の油脂の融点が38℃以上であることが好ましく、40℃以上であることがより好ましい。油相の油脂の融点の上限値は、口溶けの点で、好ましくは55℃、より好ましくは50℃、更に好ましくは45℃である。
【0036】
本発明のパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物は、その油分の含有量が、好ましくは30~60質量%、より好ましくは35~60質量%、特に好ましくは40~60質量%である。油分の含有量が30質量%以上であると、ロールイン時に生地に練り込まれにくくなり、明瞭な層状構造が得られる。また、60質量%以下であると、安定して水中油型乳化が得られ、また、甘味発現性が良好になることに加え、油性感が弱い食感となる。なお、パイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物の油分の含有量は、直接配合する油脂以外に、油脂分を含有する食品素材や食品添加物を使用した場合には、それらに含まれる油脂分をあわせて算出するものとする。パイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物における油分の含有量は、例えば、レーゼゴットリーブ法によって測定することができる。
【0037】
本発明のパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物における水分の含有量は、好ましくは30~70質量%、より好ましくは35~60質量%、特に好ましくは40~60質量%である。水分の含有量が30質量%以上であると、ロールイン時に油脂組成物が割れにくくなる。また、70質量%以下であると、ロールイン時に生地に練り込まれにくくなり、より明瞭な層状構造が得られる。なお、パイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物の水分の含有量は、直接配合する水以外に、水分を含有する食品素材や食品添加物を使用した場合には、それらに含まれる水分をあわせて算出するものとする。
【0038】
本発明のパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物は、その乳化型が水中油型乳化型であることが必要である。乳化型が油中水型であると、甘味発現性が大きく低下することに加え、延展性が悪化し、その結果内相が不均一で浮きも悪い甘味パイ製品となってしまう。
【0039】
なお、本発明において水中油型乳化という場合は、水中油中水型などの外相が水相である乳化物を含むものとする。
【0040】
本発明のパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物は糖類及び/又は高甘味度甘味料を含有した加糖ロールイン油脂組成物である。
【0041】
本発明で使用することのできる糖類としては、上白糖、グラニュー糖、粉糖、ショ糖、液糖、はちみつ、ブドウ糖、果糖、黒糖、麦芽糖、乳糖、シクロデキストリン、酵素糖化水飴、酸糖化水飴、還元澱粉糖化物、還元糖、ポリデキストロース、還元乳糖、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、異性化液糖、ショ糖結合水飴、キャラメル、かえで糖、オリゴ糖、キシロース、トレハロース、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、アラビノース、パラチノースオリゴ糖、アガロオリゴ糖、キチンオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ヘミセルロース、モラセス、イソマルトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、カップリングシュガー、ラフィノース、ラクチュロース、テアンデオリゴ糖及びゲンチオリゴ糖等が挙げられる。
【0042】
本発明のロールイン油脂における上記糖類の含有量は、糖類のみを使用し高甘味度甘味料を使用しない場合、固形分として、好ましくは10~30質量%、より好ましくは10~25質量%である。なお、該糖類の含有量には、他の風味成分や下記のその他の成分に含まれる糖分もあわせて算出するものとする。パイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物における糖類の含有量は、例えば、HPLCにより測定することができる。
【0043】
また、本発明で使用することのできる高甘味度甘味料としては、アセスルファムカリウム、スクラロース、ステビア、アスパルテーム、サッカリン、ネオテーム、甘草、羅漢果等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。通常、ステビア、甘草及び羅漢果は、適宜、抽出物として用いられ、サッカリンはナトリウム塩として用いられる。
【0044】
なお、甘味度とは、甘味の強さを示す尺度のことであり、通常、基準にショ糖溶液を用い、ショ糖の甘味を1として、ショ糖以外の甘味料の甘さの強さをショ糖の甘さの強さに対する倍率で示したものである。本発明において「高甘味度」とは、甘味を示す化合物又は組成物について、その甘味の強さがショ糖の甘味の強さの50倍程度及びそれ以上であることを意味する。
【0045】
なお、本発明では、上記高甘味度甘味料として、アセスルファムカリウム又はスクラロースを用いることが好ましく、アセスルファムカリウムとスクラロースとを併用することがさらに好ましい。
【0046】
本発明のロールイン油脂における上記高甘味度甘味料の含有量は、高甘味度甘味料のみを使用し糖類を含有しない場合、固形分として、好ましくは0.0005~0.5質量%、さらに好ましくは0.0015~0.1質量%、最も好ましくは0.01~0.1質量%である。
【0047】
ここで、糖類と高甘味度甘味料を併用する場合は、求める甘味度に応じその配合比を調整すればよい。
【0048】
本発明のパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物は、上記以外のその他の成分を含有することができる。該成分としては、乳化剤、安定剤、調味料、食塩、乳や乳製品、卵や卵製品、酸味料、着色料、保存料、酸化防止剤、pH調整剤、カカオ製品、コーヒー、茶類、豆類、堅果類、果物類等の、その他の成分を、必要に応じ任意に配合してもよい。このその他の成分の配合量は、本発明の効果を阻害しない範囲において、通常の使用量の範囲で使用することができる。
【0049】
上記乳化剤としては、特に限定されないが、例えば、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド等が挙げられる。これらの乳化剤は単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。乳化剤を使用する場合、本発明のパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物中の乳化剤の含有量は0.1~2質量%とすることが好ましい。
【0050】
上記安定剤としては、リン酸塩(ヘキサメタリン酸、第2リン酸、第1リン酸)、クエン酸のアルカリ金属塩(カリウム、ナトリウム等)や、グアーガム、キサンタンガム、タマリンドガム、カラギーナン、アルギン酸塩、ファーセルラン、ローカストビーンガム、ペクチン、カードラン、澱粉、化工澱粉、結晶セルロース、ゼラチン、デキストリン、寒天、デキストラン等の増粘安定剤等が挙げられる。これらの安定剤は、単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。安定剤を使用する場合、本発明のパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物中の安定剤の含有量は0.01~3質量%とすることが好ましい。
【0051】
次に、本発明のパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物の製造方法を説明する。
【0052】
本発明のパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物は、その製造方法が特に制限されるものではなく、融点が38℃以上であるエステル交換油脂に、必要によりその他の油脂や油溶性物質を添加し、油相を調製する。一方、糖類及び/又は高甘味度甘味料、必要により水溶性物質を水に添加し、水相を調製する。増粘安定剤など、水溶性の物質であっても水相中で継粉になりやすい原材料については油相中に分散してもよい。
【0053】
次に、上記水相に上記油相を添加して混合物を得、該混合物を水中油型に乳化し乳化物を得る。そして、必要により乳化物に殺菌処理を行う。殺菌方法は、タンクでのバッチ式でも、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続式でも構わない。
【0054】
次に、乳化物を容器に入れ、冷却固化しパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物を得る。また、本発明のパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物を製造する際の何れかの製造工程で、窒素、空気等を含気させても、含気させなくても構わない。
【0055】
このようにして得られた本発明のパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物は、調温後(0~30℃)、シート状、ブロック状、円柱状等の形状に加工してもよい。各々の形状についての好ましいサイズは以下のとおりである。
シート状:縦40~1000mm、横40~1000mm、厚さ1~50mm
ブロック状:縦4~1000mm、横4~1000mm、厚さ4~500mm
円柱状:直径1~40mm、長さ5~100mm
【0056】
本発明のパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物は、甘味パイの製造にロールイン用として好適に用いられる。
【0057】
次に、本発明のパイ生地について説明する。
【0058】
本発明のパイ生地は上記本発明のパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物を含有するものであり、例えば、澱粉類主体のドウに対し、上記パイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物をロールインすることによって得られるものである。
【0059】
上記澱粉類としては、例えば、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム粉及び全粒粉等の小麦粉類、ライ麦粉、大麦粉及び米粉等のその他の穀粉類、アーモンド粉、へーゼルナッツ粉、カシュ―ナッツ粉、オーナッツ粉及び松実粉等の堅果粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦澱粉、甘藷澱粉、サゴ澱粉及び米澱粉等の澱粉並びにこれらの澱粉に酵素処理、α化処理、分解処理、エーテル化処理、エステル化処理、架橋処理及びグラフト化処理から選択される1以上の処理を施した化工澱粉等が挙げられる。上記澱粉類は、小麦粉類を好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、最も好ましくは100質量%含有することが望ましい。
【0060】
上記澱粉類主体のドウとは、澱粉類及び水を基本とし、必要に応じ油脂、卵、粉乳、食塩、糖類、呈味剤、及び膨張剤等を加えて練り上げたものである。
【0061】
本発明のパイ生地における本発明のパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物のロールイン量は、上記澱粉類主体のドウに含まれる澱粉類100質量部に対し、好ましくは50~200質量部、より好ましくは50~100質量部である。
【0062】
本発明のパイ生地の好ましい層数は8~256層、より好ましくは12~144層である。層数が3層以上であると、得られる甘味パイ製品の層状構造部分が堅く、損壊しにくくなり、また、油っぽい食感とならず、且つ焼成時に油脂漏れが発生しにくくなる。また層数が512層以下であると、得られる甘味パイ製品が確実に層状構造を有するものとなる。
【0063】
本発明のパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物をドウにロールインする方法としては、シート状のパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物を使用した折パイ方式であってもよく、小片状のパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物を使用した練りパイ方式であってもよいが、より良好な食感と均質な層状構造を有する甘味パイ製品が得られる点で、シート状のパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物を使用した折パイ方式が好ましい。折パイ方式で使用するシート状のパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物とは、厚さ2~30mmのもので、成形済みのものでもよいし、ブロック状のパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物をバターポンプ等で送りだし、連続的に生地上にシート状に合わせていく方法によるものでもよい。
【0064】
次に、本発明の甘味パイ製品について述べる。
【0065】
本発明の甘味パイ製品は、上記の本発明のパイ生地を、適宜、分割、成形し、必要に応じ、リタード、レストをとった後、焼成することにより得ることができる。焼成の条件については特に制限はなく、公知の条件を採用することができる。
【0066】
上記成形は、どのような形状に成形してもよく、型詰めを行っても構わない。成形は、手作業で行っても、連続ラインを用いて全自動で行っても構わない。
【0067】
また、得られた本発明の甘味パイ製品を、冷蔵、冷凍保存したり、該保存後に電子レンジ加熱することも可能である。
【実施例0068】
次に、実施例及び比較例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、これらは本発明を何等制限するものではない。なお、以下の実施例等における「%」は、特に記載がない限り「質量%」である。
【0069】
<エステル交換油脂の調製>
(エステル交換油脂a)
ヨウ素価52のパーム油65質量部及びヨウ素価0.8のパーム油の極度硬化油脂35質量部を70℃にて混合溶解して得られた油脂配合物を、ナトリウムメチラートを触媒として、ランダムエステル交換反応を行った後、漂白(白土3%、85℃、0.93kPa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、0.4kPa以下の減圧下)を行い、トランス脂肪酸の含有量が0.5%であり、融点が51℃であるエステル交換油脂aを得た。
【0070】
(エステル交換油脂b)
ヨウ素価52のパーム油50質量部及びヨウ素価0.8のパーム油の極度硬化油脂50質量部を70℃にて混合溶解して得た油脂配合物を、ナトリウムメチラートを触媒として、ランダムエステル交換反応を行った後、漂白(白土3%、85℃、0.93kPa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、0.4kPa以下の減圧下)を行い、トランス脂肪酸の含有量が0.5%であり、融点が53℃であるエステル交換油脂bを得た。
【0071】
(エステル交換油脂c)
パーム油をドライ分別して得られた低融点部であるヨウ素価55のパームオレインを、ナトリウムメチラートを触媒として、ランダムエステル交換反応を行った後、漂白(白土3%、85℃、0.93kPa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き
込み量5%、0.4kPa以下の減圧下)を行い、トランス脂肪酸の含有量が1.0%であり、融点が39℃であるエステル交換油脂cを得た。
【0072】
(エステル交換油脂d)
パーム油をドライ分別して得られた低融点部であるヨウ素価60のパームオレインを、ナトリウムメチラートを触媒として、ランダムエステル交換反応を行った後、漂白(白土3%、85℃、0.93kPa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、0.4kPa以下の減圧下)を行い、トランス脂肪酸の含有量が1.0%であり、融点が34℃であるエステル交換油脂dを得た。
【0073】
<パイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物の調製>
〔実施例1〕
エステル交換油脂aを25%及びエステル交換油脂cを75%含む配合油脂44質量部に、寒天0.2質量部、キサンタンガム0.1質量部及びローカストビーンガム0.1質量部を添加・分散し、油相とした。油相の油脂の融点は42℃であった。
水30.35質量部、糊化リン酸架橋澱粉2質量部、ゼラチン0.7質量部、上白糖5質量部、砂糖混合果糖ブドウ糖液糖(固形分75%)15質量部、WPC2質量部、乾燥卵白0.2質量部、ゼラチン0.7質量部、50%発酵乳酸0.15質量部及び香料0.2質量部を混合し、水相とした。
この油相と水相とを混合、乳化、均質化した後、加熱殺菌し、次いで、22℃まで冷却した後、長さ400mm、幅200mm、厚さ8mmのシート状に成形し、シート状のパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物Aを得た。
【0074】
〔実施例2〕
エステル交換油脂aをエステル交換油脂bに変更した以外は、実施例1の配合及び製法により、チョコレート風味を有し、且つシート状のパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物Bを得た。なお、油相の油脂の融点は42.5℃であった。
【0075】
〔実施例3〕
配合油脂の量を19質量部に変更し、水の量を33.35質量部に、糊化リン酸架橋澱粉の量を4質量部に、上白糖の量を10質量部に、砂糖混合果糖ブドウ糖液糖の量を30質量部に変更した以外は、実施例1の配合及び製法により、チョコレート風味を有し、且つシート状のパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物Cを得た。なお、油相の油脂の融点は42℃であった。
【0076】
〔実施例4〕
エステル交換油脂aをエステル交換油脂bに変更し、配合油脂の量を19質量部に変更し、水の量を33.35質量部に、糊化リン酸架橋澱粉の量を4質量部に、上白糖の量を10質量部に、砂糖混合果糖ブドウ糖液糖の量を30質量部に変更した以外は、実施例1の配合及び製法により、チョコレート風味を有し、且つシート状のパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物Dを得た。なお、油相の油脂の融点は42.5℃であった。
【0077】
〔実施例5〕
エステル交換油脂aを25%及びエステル交換油脂cを75%含む配合油脂を、エステル交換油脂c100%からなる油脂に変更した以外は、実施例1の配合及び製法により、チョコレート風味を有し、且つシート状のパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物Eを得た。なお、油相の油脂の融点は39℃であった。
【0078】
〔比較例1〕
エステル交換油脂aを25%及びエステル交換油脂cを75%含む配合油脂を、エステル交換油脂dを90%及びヨウ素価0.8のパーム油の極度硬化油脂を10%含む配合油脂に変更した以外は、実施例1の配合及び製法により、比較例である、チョコレート風味を有し、且つシート状のパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物Fを得た。なお、油相の油脂の融点は37℃であった。
【0079】
〔比較例2〕
エステル交換油脂aを25%及びエステル交換油脂cを75%含む配合油脂を、エステル交換油脂dを90%及びヨウ素価0.8のパーム油の極度硬化油脂を10%含む配合油脂に変更し、且つ配合油脂の量を19質量部に変更し、水の量を33.35質量部に、糊化リン酸架橋澱粉の量を4質量部に、上白糖の量を10質量部に、砂糖混合果糖ブドウ糖液糖の量を30質量部に変更した以外は、実施例1の配合及び製法により、比較例である、チョコレート風味を有し、且つシート状のパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物Gを得た。なお、油相の油脂の融点は37℃であった。
【0080】
〔比較例3〕
エステル交換油脂aを25%及びエステル交換油脂cを75%含む配合油脂を、エステル交換油脂dを99.5%及びヨウ素価0.8のパーム油の極度硬化油脂を0.5%含む配合油脂に変更し、且つ配合油脂の量を19質量部に変更し、水の量を33.35質量部に、糊化リン酸架橋澱粉の量を4質量部に、上白糖の量を10質量部に、砂糖混合果糖ブドウ糖液糖の量を30質量部に変更した以外は、実施例1の配合及び製法により、比較例である、チョコレート風味を有し、且つシート状のパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物Hを得た。なお、油相の油脂の融点は34℃であった。
【0081】
<パイ生地及び甘味パイ製品の製造>
〔実施例6〕
強力粉80質量部、薄力粉20質量部、上白糖2質量部、食塩1.5質量部、ショートニング5質量部、及び水52質量部をミキサーボウルに投入し、たて型ミキサーにて低速3分、中速5分ミキシングし、小麦粉主体のドウ(1)を得た。捏上げ温度は20℃であった。この小麦粉主体のドウ(1)を5℃の冷蔵庫内で生地温度が2℃になるまでリタードした。
ロールイン油脂として、上記パイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物Aをドウに含まれる小麦粉100質量部に対し60質量部となる量を積置し、リバースシーターを用いて常法によりロールイン(4つ折り3回)し、層数が64層であるパイ生地(1)を得た。パイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物Aのロールイン時の延展性は良好であった。
上記パイ生地(1)をリバースシーターを用いて厚さ4mmまで最終圧延を行い、生地重量:70gの六角形の生地を切り出し、中心にチョコチップ7gを散布後、2つ折り成形し、これを展板上に並べ、ラックタイムを20分とった後210℃に設定した固定オーブンで17分焼成し、本発明の甘味パイ製品(1)を得た。
得られた甘味パイ製品(1)は、良好な浮きを示し、内相は明瞭な層状構造を示し、甘味発現性が良好であり、油性感のない良好な口溶けであった。
【0082】
〔実施例7〕
パイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物Aをパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物Bに変更した以外は、実施例6と同様の配合及び製法で、パイ生地(2)及び甘味パイ製品(2)を得た。パイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物Bのロールイン時の延展性は良好であった。
得られた甘味パイ製品(2)は、良好な浮きを示し、内相は明瞭な層状構造を示し、甘味発現性が良好であり、油性感のない良好な口溶けであった。
【0083】
〔実施例8〕
パイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物Aをパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物Cに変更した以外は、実施例6と同様の配合及び製法で、パイ生地(3)及び甘味パイ製品(3)を得た。パイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物Cのロールイン時の延展性は良好であった。
得られた甘味パイ製品(3)は、甘味パイ製品(1)に比べやや劣るものの良好な浮きを示し、内相は明瞭な層状構造を示し、甘味発現性が良好であり、油性感のない良好な口溶けであった。
【0084】
〔実施例9〕
パイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物Aをパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物Dに変更した以外は、実施例6と同様の配合及び製法で、パイ生地(4)及び甘味パイ製品(4)を得た。パイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物Dのロールイン時の延展性は良好であった。
得られた甘味パイ製品(4)は、甘味パイ製品(1)に比べやや劣るものの良好な浮きを示し、内相は明瞭な層状構造を示し、甘味発現性が良好であり、油性感のない良好な口溶けであった。
【0085】
〔実施例10〕
パイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物Aをパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物Eに変更した以外は、実施例6と同様の配合及び製法で、パイ生地(5)及び甘味パイ製品(5)を得た。パイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物Eのロールイン時の延展性は良好であった。
得られた甘味パイ製品(5)は、甘味パイ製品(1)に比べやや劣るものの良好な浮きを示し、内相は甘味パイ製品(1)に比べやや劣るものの明瞭な層状構造を示し、甘味発現性が良好であり、油性感のない良好な口溶けであった。
【0086】
〔比較例4〕
パイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物Aをパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物Fに変更した以外は、実施例6と同様の配合及び製法で、パイ生地(6)及び甘味パイ製品(6)を得た。パイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物Fのロールイン時の延展性は良好であった。
得られた甘味パイ製品(6)は、甘味パイ製品(1)に比べ浮きが悪く、内相は層状構造がほとんど見られず、また、油性感が強く口溶けも悪く、甘味発現性が悪かった。
【0087】
〔比較例5〕
パイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物Aをパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物Gに変更した以外は、実施例6と同様の配合及び製法で、パイ生地(7)及び甘味パイ製品(7)を得た。パイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物Gのロールイン時の延展性は良好であった。
得られた甘味パイ製品(7)は、甘味パイ製品(1)に比べ浮きが悪く、内相は層状構造がほとんど見られず、油性感がやや強く口溶けも悪く、甘味発現性が悪かった。
【0088】
〔比較例6〕
パイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物Aをパイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物Hに変更した以外は、実施例6と同様の配合及び製法で、パイ生地(8)及び甘味パイ製品(8)を得た。パイ生地用水中油型加糖ロールイン油脂組成物Hのロールイン時の延展性は良好であった。
得られた甘味パイ製品(8)は、甘味パイ製品(1)に比べ浮きが悪く、内相は層状構造がほとんど見られなかった。なお、油性感のない良好な口溶けであるが、甘味発現性が悪かった。