(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022120621
(43)【公開日】2022-08-18
(54)【発明の名称】ひよこ豆含有レトルト食品及びひよこ豆含有レトルト食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 11/00 20210101AFI20220810BHJP
A23L 3/00 20060101ALI20220810BHJP
【FI】
A23L11/00 F
A23L3/00 101C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021017637
(22)【出願日】2021-02-05
(71)【出願人】
【識別番号】000116297
【氏名又は名称】ヱスビー食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100186060
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100145458
【弁理士】
【氏名又は名称】秋元 正哉
(72)【発明者】
【氏名】岩本 隆史
(72)【発明者】
【氏名】須田 和希
(72)【発明者】
【氏名】片浦 幸也
【テーマコード(参考)】
4B020
4B021
【Fターム(参考)】
4B020LC04
4B020LG09
4B020LP04
4B020LP25
4B020LP30
4B021LA05
4B021LP01
4B021LP07
4B021LW10
(57)【要約】
【課題】 本発明は、レトルト食品の良好な品位を担保しつつ、より多くのひよこ豆を含むことが可能なひよこ豆含有レトルト食品及びひよこ豆含有レトルト食品の製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】 本発明に係るひよこ豆含有レトルト食品は、ひよこ豆細断物を含む。また、ひよこ豆細断物の含有量が、63重量%以下であることが好ましく、乾燥換算重量におけるひよこ豆細断物の含有量が、20重量%から35重量%であることが好ましい。また、本発明に係るひよこ豆含有レトルト食品は、ひよこ豆細断物の重量と、乾燥ひよこ豆の重量に換算されたひよこ豆細断物の重量との比が、1.5から1.8であることが好ましい。更に、本発明に係るひよこ豆含有レトルト食品は、目開き8mmの篩をパスし目開き5mmの篩にオンするひよこ豆細断物を40重量%以上含むことが好ましい。また、本発明に係るひよこ豆含有レトルト食品の製造方法は、乾燥ひよこ豆を吸水させる工程と、吸水したひよこ豆を細断し、ひよこ豆細断物を得る工程を含む。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ひよこ豆細断物を含む、ひよこ豆含有レトルト食品。
【請求項2】
ひよこ豆細断物の含有量が、63重量%以下である、
請求項1に記載のひよこ豆含有レトルト食品。
【請求項3】
乾燥換算重量におけるひよこ豆細断物の含有量が、20重量%から35重量%である、
請求項1又は2に記載のひよこ豆含有レトルト食品。
【請求項4】
ひよこ豆細断物の重量と前記乾燥換算重量との比(対換算重量比)が、1.5から1.8である、
請求項1から3のいずれか一項に記載のひよこ豆含有レトルト食品。
【請求項5】
目開き8mmの篩をパスし目開き5mmの篩にオンするひよこ豆細断物を40重量%以上含む、
請求項1から4のいずれか一項に記載のひよこ豆含有レトルト食品。
【請求項6】
乾燥ひよこ豆の吸水工程と、
吸水されたひよこ豆を細断し、ひよこ豆細断物を得る工程と、
を含む、ひよこ豆含有レトルト食品の製造方法。
【請求項7】
ひよこ豆細断物の含有量が63重量%以下となるよう、ひよこ豆細断物を添加する、
請求項6に記載のひよこ豆含有レトルト食品の製造方法。
【請求項8】
乾燥換算重量におけるひよこ豆細断物の含有量が20重量%から35重量%となるよう、ひよこ豆細断物を添加する、
請求項6又は7に記載のひよこ豆含有レトルト食品の製造方法。
【請求項9】
ひよこ豆細断物の重量と前記乾燥換算重量との比(対換算重量比)が、1.5から1.8となるよう、乾燥ひよこ豆に水分を吸水させる、
請求項6から8のいずれか一項に記載のひよこ豆含有レトルト食品の製造方法。
【請求項10】
目開き8mmの篩をパスし目開き5mmの篩にオンする粒度を有するひよこ豆細断物を40重量%以上含むよう、ひよこ豆を細断する
請求項6から9のいずれか一項に記載のひよこ豆含有レトルト食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ひよこ豆含有レトルト食品及びひよこ豆含有レトルト食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の健康志向の高まりと相まって、タンパク質、ビタミン類(主に、ビタミンB)、ミネラル、食物繊維等の成分を豊富に含むひよこ豆が注目さている。また、ひよこ豆は、グルテン等のアレルゲンを含まないことから、小麦や大豆等に代替可能な食材としても注目され、種々の食品に利用されている。このような、ひよこ豆を含むレトルト食品が、下記特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の発明は、ひよこ豆ペーストと、25質量%以下の油脂を含むソース部とを含有すると共に、レトルト処理されることで、パウチに充填される際の粘度より増粘するレトルト食品(例えば、レトルト用のカレーソース、シチューソース、ハヤシソース)に関する。
【0005】
ところで、特許文献1に開示の発明は、ペースト状のひよこ豆(前述のひよこ豆ペースト)を含む。特許文献1によれば、ひよこ豆ペーストは、乾燥ひよこ豆への吸水工程と粉砕工程を経て得られる。このとき、適正な性状(物性)のペーストを生成するため、乾燥ひよこ豆に多くの水分を吸水させる必要があった。
【0006】
これに対して、レトルト食品における所望の品位(食味・食感(物性)・風味等)を担保するため、レトルト食品全体の含水量が調整される。それに伴い、レトルト食品に添加されたひよこ豆ペースト由来の水分量(添加された全てのひよこ豆ペーストの合計含水量)が制限される。すなわち、ひよこ豆ペーストの合計含水量が制限値を超える場合、レトルト食品に含有させることができるひよこ豆ペースト量が少なくなる。
【0007】
前述のように、ひよこ豆ペーストは、比較的多くの水分を含む。そのため、特許文献1のレトルト食品中、具材を除いた部分におけるひよこ豆ペーストの含有量が、40質量%(乾燥ひよこ豆の重量に換算する場合、20質量%)以下に制限される。その結果、特許文献1のレトルト食品は、前記含有量を超えてひよこ豆を含ませたい旨の要望に適切に応えることができない。
【0008】
前述の課題に鑑み、本発明は、レトルト食品の良好な品位を担保しつつ、より多くのひよこ豆を含むことが可能なひよこ豆含有レトルト食品及びひよこ豆含有レトルト食品の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の課題を解決するため、本発明に係るひよこ豆含有レトルト食品は、以下の特徴を有する。
[1] 本発明に係るひよこ豆含有レトルト食品は、ひよこ豆細断物を含む。
[2] 前記[1]のひよこ豆含有レトルト食品において、ひよこ豆細断物の含有量が、63重量%以下であることが好ましい。
[3] 前記[1]又は[2]のひよこ豆含有レトルト食品において、乾燥換算重量におけるひよこ豆細断物の含有量が、20重量%から35重量%であることが好ましい。
[4] 前記[1]から[3]のいずれかのひよこ豆含有レトルト食品において、ひよこ豆細断物の重量と前記乾燥換算重量との比(対換算重量比)が、1.5から1.8であることが好ましい。
[5] 前記[1]から[4]のいずれかのひよこ豆含有レトルト食品は、目開き8mmの篩をパスし目開き5mmの篩にオンするひよこ豆細断物を40重量%以上含むことが好ましい。
【0010】
また、本発明に係るひよこ豆含有レトルト食品の製造方法は、以下の特徴を有する。
[6] 本発明に係るひよこ豆含有レトルト食品の製造方法は、
乾燥ひよこ豆の吸水工程と、
吸水されたひよこ豆を細断し、ひよこ豆細断物を得る工程と、
を含む。
[7] 前記[6]のひよこ豆含有レトルト食品の製造方法において、ひよこ豆細断物の含有量が63重量%以下となるよう、ひよこ豆細断物を添加することが好ましい。
[8] 前記[6]又は[7]のひよこ豆含有レトルト食品の製造方法において、乾燥換算重量におけるひよこ豆細断物の含有量が20重量%から35重量%となるよう、ひよこ豆細断物を添加することが好ましい。
[9] 前記[6]から[8]のいずれかのひよこ豆含有レトルト食品の製造方法において、ひよこ豆細断物の重量と前記乾燥換算重量との比(対換算重量比)が、1.5から1.8となるよう、乾燥ひよこ豆に水分を吸水させることが好ましい。
[10] 前記[6]から[9]のいずれかのひよこ豆含有レトルト食品の製造方法において、目開き8mmの篩をパスし目開き5mmの篩にオンする粒度を有するひよこ豆細断物を40重量%以上含むよう、ひよこ豆を細断することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、細断されたひよこ豆(ひよこ豆細断物)を用いることで、ペースト状のひよこ豆(ひよこ豆ペースト)に比べて、ひよこ豆の含水量が少なくても、レトルト食品の良好な品位を担保することができる。すなわち、レトルト食品の品位を担保するために必要な水分制限量に達するまで、より多くのひよこ豆細断物を添加することができる。そのため、本発明によれば、レトルト食品の良好な品位を担保しつつ、より多くのひよこ豆を添加することができる。
【0012】
また、本発明によれば、乾燥ひよこ豆の吸水工程を経て、吸水されたひよこ豆を細断することで、所望の物性を備えたひよこ豆細断物を得ることができる。そのため、レトルト食品の良好な品位を担保しつつ、より多くのひよこ豆を含むことが可能なひよこ豆含有レトルト食品の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[ひよこ豆含有レトルト食品]
以下、本発明の一実施形態に係るひよこ豆含有レトルト食品(以下、「レトルト食品」と言う場合がある)を説明する。本実施形態のひよこ豆含有レトルト食品は、ひよこ豆細断物を含む。ここで、ひよこ豆細断物に用いられるひよこ豆は、学名Cicer arietinum(別名ガルバンゾー等)と称される、マメ科ヒヨコマメ属に属する自殖作物である。
【0014】
本実施形態におけるひよこ豆は、カーブリ種、デーシー種のいずれであってもよい。また、本実施形態におけるひよこ豆は、生のものでもよいが、乾燥させたもの(以下、「乾燥ひよこ豆」と言う場合がある)であることが好ましい。乾燥ひよこ豆の含水量は、例えば、10%以下である。ただし、これに限定されない。
【0015】
本実施形態におけるひよこ豆細断物は、乾燥ひよこ豆に水分を吸水させ、これを細断して得られる。ただし、ひよこ豆細断物を得る方法は、これに限られない。ここで、ひよこ豆細断物の含有量の上限は、63重量%以下であることが好ましく、56重量%以下であることがより好ましく、48重量%以下であることが更に好ましい。ただし、これに限定されない。これに対して、ひよこ豆細断物の重量が63重量%を上回る場合、レトルト食品の品位(例えば、口溶け感等の物性)を損なう可能性がある点で好ましくない。
【0016】
また、ひよこ豆細断物の重量を乾燥ひよこ豆の重量に換算した場合(換算した重量を以下、「乾燥換算重量」と言う)、乾燥換算重量におけるひよこ豆細断物の含有量が、20重量%から35重量%に調整されることが好ましい。乾燥換算重量におけるひよこ豆細断物の含有量の範囲が、前記範囲に調整されることで、レトルト食品の品位を担保しつつ、より多くのひよこ豆細断物をレトルト食品に含ませることができる。特に、レトルト食品において、[ひよこ豆細断物の全量から水分を除いた量/ひよこ豆細断物の全量]で表される、単位重量あたりのひよこ豆量を増やすことができる。
【0017】
また、乾燥換算重量におけるひよこ豆細断物の含有量の下限は、20重量%を上回ることがより好ましく、23重量%以上であることが更に好ましく、25重量%以上であることが更に好ましい。これに対して、乾燥換算重量におけるひよこ豆細断物の含有量の上限は、35重量%以下であることがより好ましく、33重量%以下であることがより好ましく、30重量%以下であることが更に好ましい。
【0018】
なお、ひよこ豆細断物の重量から乾燥換算重量を引いた値は、ひよこ豆細断物の含水量(吸水量)に対応する。また、ひよこ豆細断物の乾燥換算重量の測定方法として、吸水前のひよこ豆(乾燥ひよこ豆)の重量と、吸水後(例えば、乾燥ひよこ豆をボイルし、蒸し、又は水に浸漬して、流水にさらした後、ザル等で水切りした後の状態等)のひよこ豆の重量とを測定し、吸水後のひよこ豆の重量から乾燥ひよこ豆の重量を差し引くなどの方法が挙げられる。ただし、これに限られない。
【0019】
次に、本実施形態のひよこ豆細断物において、ひよこ豆細断物の重量と、その乾燥換算重量との比(以下、「対換算重量比」と言う)が、1.5から1.8であることが好ましい。これに対して、特許文献1に開示のレトルト食品において、水分制限量に達するまでひよこ豆ペーストを添加した場合の対換算重量比は、2である(40質量%(ひよこ豆ペーストの重量)/20質量%(その乾燥換算重量)=2)。
【0020】
このように、ひよこ豆細断物の対換算重量比が1.5から1.8に調整される場合、ひよこ豆細断物の含水量をひよこ豆ペーストのそれより少なくすることができる。その結果、より多くのひよこ豆細断物をレトルト食品に含ませることができる。特に、レトルト食品において、単位重量あたりのひよこ豆量を増やすことができる。
【0021】
次に、本実施形態のひよこ豆細断物は、目開き8mmの篩をパスし目開き5mmの篩にオンするひよこ豆細断物を含むことが好ましい。このような粒度を有するひよこ豆細断物を含むことにより、ひよこ豆細断物の含水量が、例えば、ひよこ豆ペーストのそれより少なくても、レトルト食品における所望の品位を担保することができる。ただし、ひよこ豆細断物の粒度は、これに限定されない。
【0022】
また、本実施形態のひよこ豆細断物は、例えば、目開き8mmの篩をパスし目開き5mmの篩にオンするひよこ豆細断物をひよこ豆細断物の全量に対して40重量%以上含むことが好ましく、50重量%以上含むことがより好ましく、60重量%以上含むことが更に好ましい。
【0023】
目開き8mmの篩をパスし目開き5mmの篩にオンするひよこ豆細断物の含有量が、ひよこ豆細断物の全量に対して40重量%以上に調整される場合、ひよこ豆の食味を適度に残しつつ、ポテトサラダのように、滑らかで口残りの少ない食感(以下、この食感を「口溶け感」と言う場合がある)のひよこ豆細断物を得ることができる。これに対して、目開き8mmの篩をパスし目開き5mmの篩にオンするひよこ豆細断物の含有量が40重量%を下回る場合、粒度が細かくひよこ豆ペーストに近いひよこ豆細断物の占める割合が多くなる。その結果、特に、レトルト食品中のひよこ豆細断物の含有量が増える程、レトルト食品における所望の食感(例えば、良好な口溶け感)が得られなくなる可能性が高まるため好ましくない。
【0024】
次に、本実施形態のひよこ豆含有レトルト食品は、ひよこ豆細断物に含まれる水分以外の水分に加え、野菜類等の具材;食塩、砂糖等の調味料;油脂;澱粉系原料;香辛料;pH調整剤;香料等を含んでもよい。
【0025】
[ひよこ豆含有レトルト食品の製造方法]
次に、本実施形態に係るひよこ豆含有レトルト食品(前述のレトルト食品)の製造方法を説明する。本実施形態のひよこ豆含有レトルト食品の製造方法は、乾燥ひよこ豆の吸水工程と、吸水されたひよこ豆を細断し、ひよこ豆細断物を得る工程とを含む。また、本実施形態のひよこ豆含有レトルト食品の製造方法は、ひよこ豆細断物を含む原料にレトルト処理を施す工程を更に含む。
【0026】
乾燥ひよこ豆の吸水工程とは、乾燥ひよこ豆に水分を吸わせ、ひよこ豆細断物の重量と、乾燥ひよこ豆の重量との比(前述の「対換算重量比」に対応する比)を1.5から1.8に調整する工程である。ここで、ひよこ豆細断物の重量から乾燥ひよこ豆の重量を引いた値は、吸水工程によってひよこ豆に吸水された吸水量に対応する。この範囲の吸水量は、同量の乾燥ひよこ豆からひよこ豆ペーストを得る際のひよこ豆ペーストの吸水量より少ない。その結果、レトルト食品に含まれる、単位重量あたりのひよこ豆量を増やすことができる。
【0027】
一例として、所定量の乾燥ひよこ豆を熱湯(例えば、沸騰している湯)に投入し、所定時間ボイルする態様が挙げられる。ひよこ豆のボイル時間は、特に限定されないが、乾燥ひよこ豆の投入によって冷えた熱湯が再び沸騰してから(再沸騰)5分から40分であることが好ましく、8分から35分であることがより好ましく、10分から30分であることが更に好ましい。
【0028】
これに対して、乾燥ひよこ豆のボイル時間が再沸騰から5分を下回ると、ボイル後のひよこ豆の含水量(吸水量)が少ないため固く、目的の粒度に細断が行えないなどの点で好ましくない。また、乾燥ひよこ豆のボイル時間が40分を上回ると、ボイル後のひよこ豆に想定以上の水分が吸水されるため、レトルト食品において、ひよこ豆に由来する水分が制限量を超えて含まれる。そのため、レトルト食品における所望の品位を損ない得る点で好ましくない。
【0029】
ただし乾燥ひよこ豆の吸水工程は、これに限定されない。その他の吸水工程の例として、乾燥ひよこ豆を蒸す態様、乾燥ひよこ豆を水に浸漬させる態様、これらを組み合わる態様等が挙げられる。吸水工程として例示された、乾燥ひよこ豆をボイルする態様や乾燥ひよこ豆を蒸す態様は、乾燥ひよこ豆を水に浸漬させる態様に比べて処理時間(例えば、ボイルする時間又は蒸す時間)を短くすることができる。
【0030】
次に、吸水処理されたひよこ豆を細断し、ひよこ豆細断物を得る工程において、例えば、目開き8mmの篩をパスし目開き5mmの篩にオンするひよこ豆細断物を含むよう、ひよこ豆を任意の手段(例えば、コミトロール、サイレントカッター、ミートチョッパー、カッターミル、マスコロイダー等)で細断する。このような粒度を有するひよこ豆細断物が得られることで、ひよこ豆細断物の含水量が、例えば、ひよこ豆ペーストのそれより少なくても(単位重量あたりのひよこ豆量が多くても)、所望の品位が担保されたレトルト食品を製造することができる。ただし、ひよこ豆細断物の粒度は、これに限定されない。
【0031】
このとき、例えば、目開き8mmの篩をパスし目開き5mmの篩にオンするひよこ豆細断物を40重量%以上含むよう、ひよこ豆を細断することが好ましく、50重量%以上含むよう、ひよこ豆を細断することがより好ましく、60重量%以上含むよう、ひよこ豆を細断することが更に好ましい。
【0032】
なお、吸水工程の態様として、特に乾燥ひよこ豆をボイルする場合や乾燥ひよこ豆を蒸す場合、加熱されたひよこ豆を所定時間流水にさらし、その後、ひよこ豆を細断することが好ましい。これにより、加熱されたひよこ豆を十分冷却し、且つひよこ豆表面の不純物を取り除いた状態で、ひよこ豆を細断することができる。ただし、この態様に限られず、乾燥ひよこ豆を吸水工程で加熱した直後にひよこ豆を細断してもよい。
【0033】
次に、ひよこ豆細断物を含む原料にレトルト処理を施す工程において、ひよこ豆細断物を含む原料(更に、ひよこ豆細断物に含まれる水分以外の水分、具材、調味料、油脂、澱粉系原料、香辛料、pH調整剤、香料等を含んでいてもよい。)をレトルトパウチ等の包装体に充填し、レトルト処理を施す。レトルト処理の条件として、包装体に充填された原料の中心温度が120℃に達した状態で4分間加熱する等の条件が挙げられる。ただし、これに限定されない。
【実施例0034】
以上説明したひよこ豆含有レトルト食品において、具体的な実施の例を以下に示す。ただし、本発明は、下記の実施例により限定及び制限されるものではない。
【0035】
下表1に示される実施例1から実施例5と比較例1から比較例4を以下のように作製し、レトルト処理後の物性(口溶け感)を評価した。なお、実施例1から5は、ひよこ豆細断物と水(ひよこ豆細断物に含まれる水分以外のもの)から成る。また、比較例1から比較例4は、ひよこ豆ペーストと水(ひよこ豆ペーストに含まれる水分以外のもの)から成る。
【0036】
まず、実施例1から実施例5の作製手順を説明する。初めに、乾燥ひよこ豆500gを沸騰している湯に投入し、再沸騰後15分間ボイルした。ボイル後、ひよこ豆を湯切りし、流水に20分間さらした後、水切りし、ひよこ豆800gを得た。
【0037】
続いて、水切り後のひよこ豆を細断し、ひよこ豆細断物を得た。このとき、目開き8mmの篩をパスし目開き5mmの篩にオンするひよこ豆細断物が、ひよこ豆細断物の全量に対して約40重量%程度含まれるよう調整した。最後に、ひよこ豆細断物と水とを混合し、120℃30分間レトルト処理を行った。これにより、実施例1から実施例5を作製した。
【0038】
次に、比較例1から比較例4の作製手順を説明する。初めに、乾燥ひよこ豆500gを5℃の水の水面下に16時間浸漬する。その後、ひよこ豆を水切りし、更に15℃の新たな水の水面下に浸漬させ、85℃15分間加温した。加温を終えた後、水温が55℃になった段階で、ひよこ豆の浸漬を終えた。このとき、ひよこ豆の重量は1000gであった。
【0039】
続いて、ひよこ豆を目開き3mmの篩をパスするよう粉砕し、ひよこ豆ペーストを得た。最後に、ひよこ豆ペーストと水とを混合し、120℃30分間レトルト処理を行った。これにより、比較例1から比較例4を作製した。
【0040】
作製された試料(実施例1から実施例5及び比較例1から比較例4)に関し、口溶け感の評価を行った。評価は、5名のパネラーにより行われ、下記指標に基づく各パネラーの評価点(平均点)に基づく。なお、評価点が下がる程、ボソボソした食感(固まり状のものを感じる食感)の試料に対応し、評価点が上がる程、滑らかな食感の試料に対応する。
【0041】
・1点:対照品(実施例1)より口溶け感が著しく劣る。
・2点:対照品より口溶け感が劣る。
・3点:対照品より少し口溶け感が劣る。
・4点:対照品より僅かに口溶け感が劣る。
・5点:対照品の口溶け感と同等又は対照品の口溶け感を上回る。
【0042】
下表1に示されるように、平均点が1点の試料を「×」と評価付け、平均点が1点を上回り3点未満の試料を「△」と評価付け、平均点が3点以上の試料を「〇」と評価付けた。
【0043】
【0044】
表1に示されるように、同じ乾燥換算重量を有する実施例と比較例とを比べると、ひよこ豆細断物を含む実施例の評価の方が高い。例えば、乾燥換算重量が20重量%の実施例1の評価点が5.0であるのに対し、同じ乾燥換算重量の比較例1の評価点は4.0であった。また、乾燥換算重量が25重量%の実施例2の評価点が3.8であるのに対し、同じ乾燥換算重量の比較例2の評価点は2.8であった。同様に、乾燥換算重量が30重量%の実施例3の評価点が3.0であるのに対し、同じ乾燥換算重量の比較例3の評価点は2.0であった。
【0045】
このことから、ひよこ豆細断物を含むレトルト食品によれば、より多くのひよこ豆を含んでも、レトルト食品の品位を担保可能であることが示唆された。特に、各試料の乾燥ひよこ豆自体に含まれる水分量が同じと仮定すれば、ひよこ豆細断物を含む試料は、単位重量あたりのひよこ豆量が多く、且つ良好な口溶け感を呈することが示された。
【0046】
次に、前述の手順で作製されたひよこ豆細断物と水に加え、他の具材や成分を含む実施例6から実施例9を以下のように作製した。まず、下表2に示される原料を混練機(ニーダー)に投入し、90℃の温度下で原料を混合した。続いて、得られた混合体を包装体(レトルトパウチ)に充填し、約120℃の温度帯で30分間レトルト処理を施した。得られた実施例6から実施例9は、いずれも物性・風味ともに良好であった。
【0047】
【0048】
以上、本発明の実施形態を詳細に説明した。ただし、前述の説明は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定する趣旨で記載されたものではない。本発明には、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るものを含み得る。また、本発明にはその等価物が含まれる。