(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022120757
(43)【公開日】2022-08-18
(54)【発明の名称】路上走行試験評価方法、車両試験システム及び路上走行試験評価用プログラム
(51)【国際特許分類】
G01M 17/007 20060101AFI20220810BHJP
G01M 15/10 20060101ALI20220810BHJP
【FI】
G01M17/007 A
G01M15/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021071733
(22)【出願日】2021-04-21
(31)【優先権主張番号】P 2021017557
(32)【優先日】2021-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(72)【発明者】
【氏名】ロバーツ フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】田畑 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】ウィーラン スティーブ
(72)【発明者】
【氏名】ヘッドリー アーロン
【テーマコード(参考)】
2G087
【Fターム(参考)】
2G087BB28
2G087CC19
(57)【要約】
【課題】RDE等の法規に適合した路上走行試験の評価をフロントローディングすることにより、路上走行試験に準拠した自動車開発の効率化を図る。
【解決手段】実車両又はその一部である供試体を台上試験することにより、法規に適合した路上走行試験を評価する路上走行試験評価方法であって、走行環境をモデル化した走行環境モデル、運転態様をモデル化した運転態様モデル、及び前記実車両をモデル化した車両モデルを用いて、路上走行試験をシミュレーションするバーチャル評価ステップと、実車両の一部又は全部と、車両モデルの一部又は全部と、走行環境モデルの一部又は全部及び運転態様モデルの一部又は全部とを組み合わせて、実車両の一部又は全部を台上試験することにより、路上走行試験を模擬する台上試験評価ステップと、現実の走行環境において、実車両に対して路上走行試験を実施する路上走行試験評価ステップとを備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実車両又はその一部である供試体を台上試験することにより、法規に適合した路上走行試験を評価する路上走行試験評価方法であって、
走行環境をモデル化した走行環境モデル、運転態様をモデル化した運転態様モデル、及び前記実車両をモデル化した車両モデルを用いて、前記路上走行試験をシミュレーションするバーチャル評価ステップと、
前記実車両の一部又は全部と、前記車両モデルの一部又は全部と、前記走行環境モデルの一部又は全部及び前記運転態様モデルの一部又は全部とを組み合わせて、前記実車両の一部又は全部を台上試験することにより、前記路上走行試験を模擬する台上試験評価ステップと、
現実の走行環境において、前記実車両に対して前記路上走行試験を実施する路上走行試験評価ステップとを備える、路上走行試験評価方法。
【請求項2】
前記台上試験評価ステップは、前記実車両のエンジンを含む一部と、前記車両モデルの一部又は全部と、前記走行環境モデルの一部又は全部及び前記運転態様モデルの一部又は全部とを組み合わせて、前記実車両のエンジンを含む一部を台上試験することにより、前記路上走行試験を模擬する第1台上試験評価ステップを備える、請求項1に記載の路上走行試験評価方法。
【請求項3】
前記台上試験評価ステップは、前記第1台上試験評価ステップ及び前記路上走行試験評価ステップの間において、前記実車両と、前記走行環境モデル一部又は全部及び前記運転態様モデル一部又は全部とを組み合わせて、前記実車両を台上試験することにより、前記路上走行試験を模擬する第2台上試験評価ステップをさらに備える、請求項2に記載の路上走行試験評価方法。
【請求項4】
前記第1台上試験評価ステップにおける前記実車両のエンジンを含む一部の評価結果と、前記バーチャル評価ステップにおける前記車両モデルの評価結果とを比較する第1比較ステップと、
前記第2台上試験評価ステップにおける前記実車両の評価結果と、前記第1台上試験評価ステップにおける前記車両のエンジンを含む一部の評価結果とを比較する第2比較ステップと、
前記路上走行試験評価ステップにおける前記実車両の評価結果と、前記第2台上試験評価ステップにおける前記実車両の評価結果とを比較する第3比較ステップとの少なくとも1つのステップを備える、請求項3に記載の路上走行試験評価方法。
【請求項5】
前記バーチャル評価ステップにおける前記車両モデルの評価結果が、前記第1台上試験評価ステップにおける前記実車両のエンジンを含む一部の評価結果と合致するように、前記バーチャル評価ステップにフィードバックする第1フィードバックステップと、
前記第1台上試験評価ステップにおける前記実車両のエンジンを含む一部の評価結果が、前記第2台上試験評価ステップにおける前記実車両の評価結果と合致するように、前記第1台上試験評価ステップにフィードバックする第2フィードバックステップと、
前記第2台上試験評価ステップにおける前記実車両の評価結果が、前記路上走行試験評価ステップにおける前記実車両の評価結果と合致するように、前記第2台上試験評価ステップにフィードバックする第3フィードバックステップとの少なくとも1つのステップを備える、請求項3又は4に記載の路上走行試験評価方法。
【請求項6】
前記路上走行試験評価ステップは車載型の排ガス分析装置を用いて行い、
前記第2台上試験評価ステップは据え置き型又は車載型の排ガス分析装置を用いて行う、請求項3乃至5の何れか一項に記載の路上走行試験評価方法。
【請求項7】
前記第2台上試験評価ステップは据え置き型の排ガス分析装置を用いて行い、
前記据え置き型の排ガス分析装置の固体粒子数計測部の検出効率は、前記車載型の排ガス分析装置の固体粒子数計測部の検出効率と同じとしてある、請求項6に記載の路上走行試験評価方法。
【請求項8】
前記第1台上試験評価ステップ、前記第2台上試験評価ステップ及び前記路上走行試験評価ステップの少なくとも何れか2つにおける排ガス試験結果を比較し、当該排ガス試験結果の比較に用いられる測定成分は、二酸化炭素(CO2)、一酸化炭素(CO)、粒子状物質(PM)、粒子状物質数(PN)、アンモニア(NH3)、一酸化二窒素(N2O)、窒素酸化物(NOx)、又はトータルハイドロカーボン(THC)の少なくとも1つである、請求項6又は7に記載の路上走行試験評価方法。
【請求項9】
前記台上試験評価ステップは、前記バーチャル評価ステップで用いられた前記運転態様モデルに基づいて、前記実車両の一部又は全部を運転するものである、請求項1乃至8の何れか一項に記載の路上走行試験評価方法。
【請求項10】
前記第1台上試験評価ステップで再現した運転態様に基づいて、前記第2台上試験評価ステップの運転態様を再現し、
前記第2台上試験評価ステップは、前記第1台上試験評価ステップで用いられた前記運転態様モデルに基づいて、前記実車両を運転手が運転する、又は、前記実車両を自動運転ロボットが運転する、請求項3又は請求項3を引用する請求項4乃至9の何れか一項に記載の路上走行試験評価方法。
【請求項11】
前記第1台上試験評価ステップ又は前記第2台上試験評価ステップの走行環境モデルは、エンジンの吸気側及び排気側に配管を接続し、当該配管を介して圧力制御することにより再現される、請求項3乃至10の何れか一項に記載の路上走行試験評価方法。
【請求項12】
前記バーチャル評価ステップにおいて、前記運転態様モデルを構成するパラメータの組み合わせは、法規に適合した路上走行試験に準拠するように、RPA (Relative Positive Acceleration)又はvapos_[95] (Relative Positive Acceleration 95th percentile)の少なくとも一方と対応付けられる、請求項1乃至11の何れか一項に記載の路上走行試験評価方法。
【請求項13】
前記供試体は、先進運転支援システム(ADAS)を有するものであり、
前記バーチャル評価ステップは、前記走行環境モデル、前記運転態様モデル及び前記車両モデルに加えて、ADASに必要なセンサをモデル化したセンサモデル又は前記ADASを数値化したADASモデルの少なくとも一方を用いて、前記路上走行試験をシミュレーションする、請求項1乃至12の何れか一項に記載の路上走行試験評価方法。
【請求項14】
前記供試体は、エンジンとバッテリとが連携して動作するものであり、
前記バーチャル評価ステップは、前記走行環境モデル、前記運転態様モデル及び前記車両モデルに加えて、前記バッテリをモデル化したバッテリモデルを用いて、前記路上走行試験をシミュレーションする、請求項1乃至13の何れか一項に記載の路上走行試験評価方法。
【請求項15】
実車両又はその一部である供試体を台上試験することにより、法規に適合した路上走行試験を評価する車両試験システムであって、
走行環境をモデル化した走行環境モデル、運転態様をモデル化した運転態様モデル、及び前記実車両をモデル化した車両モデルを用いて、前記路上走行試験をシミュレーションするシミュレーション装置と、
前記実車両のエンジンを含む一部と、前記車両モデルの一部又は全部と、前記走行環境モデルの一部又は全部及び前記運転態様モデルの一部又は全部とを組み合わせて、前記実車両のエンジンを含む一部を台上試験することにより、前記路上走行試験を模擬する第1台上試験装置と、
前記実車両と、前記走行環境モデルの一部又は全部及び前記運転態様モデルの一部又は全部とを組み合わせて、前記実車両を台上試験することにより、前記路上走行試験を模擬する第2台上試験装置とを備える、車両試験システム。
【請求項16】
実車両又はその一部である供試体を台上試験することにより、法規に適合した路上走行試験を評価する路上走行試験評価用プログラムであって、
走行環境をモデル化した走行環境モデル、運転態様をモデル化した運転態様モデル、及び前記実車両をモデル化した車両モデルを用いて、コンピュータに前記路上走行試験をシミュレーションさせ、
前記実車両の一部又は全部と、前記車両モデルの一部又は全部と、前記走行環境モデルの一部又は全部及び前記運転態様モデルの一部又は全部とを組み合わせて、前記実車両の一部又は全部を台上試験装置により台上試験させることにより、前記路上走行試験を模擬させる、路上走行試験評価用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RDE(Real Driving Emission)試験など法規に適合した路上走行試験を評価するための路上走行試験評価方法及び車両試験システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、例えばRDE試験など法規に適合した路上走行試験が行われている。そして、この路上走行試験に準拠した自動車を開発するために、エンジン試験ベンチ、駆動系試験ベンチ又は車両試験ベンチなどの台上試験装置を用いて路上走行試験を模擬することにより、路上走行試験に準拠した自動車開発の効率化を図ることが行われている。
【0003】
ところで、上記の台上試験装置を用いて路上走行試験を模擬するためには、法規に適合したルートモデル、走行環境モデル、及び、運転態様モデル(ドライバーモデル)などの設定が必要となる。このため、市販されているモデル作成ソフトを用いて、ルートモデル、走行環境モデル、ドライバーモデルを作成することが行われている。なお、特許文献1に示すように、路上排ガス認証試験において、試験条件を満たす走行を簡単に行うために、試験条件を満たすためのアクセルワーク、ブレーキワーク又はシフトワークのいずれか1つを少なくとも含んだ運転操作スタイルをドライバに提示するものが考えられている。
【0004】
しかしながら、従来のモデル作成ソフトでは、モデルを作成するための複数のインプットパラメータが路上走行試験用のモデル作成のために最適化されていなため、どのパラメータをどれくらいの値に設定すれば路上走行試験に準拠したモデルになるかは、モデル作成者の経験やスキルによるところが大きく、最適な路上走行試験に準拠したモデルを作成するために多くの労力を要している。
【0005】
また、上記では、エンジン試験ベンチ、駆動系試験ベンチ又は車両試験ベンチなどの台上試験装置を用いて路上走行試験を模擬することに留まっており、それらの試験結果と実際の路上走行試験の試験結果とを総合的に判断することはなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は上記問題点を解決すべくなされたものであり、RDE試験等の法規に適合した路上走行試験の評価をフロントローディングすることにより、路上走行試験に準拠した自動車開発の効率化を図ることをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係る路上走行試験評価方法は、実車両又はその一部である供試体を台上試験することにより、法規に適合した路上走行試験を評価する路上走行試験評価方法であって、走行環境をモデル化した走行環境モデル、運転態様をモデル化した運転態様モデル、及び前記実車両をモデル化した車両モデルを用いて、前記路上走行試験をシミュレーションするバーチャル評価ステップと、前記実車両の一部又は全部と、前記車両モデル一部又は全部と、前記走行環境モデル一部又は全部及び前記運転態様モデル一部又は全部とを組み合わせて、前記実車両の一部又は全部を台上試験することにより、前記路上走行試験を模擬する台上試験評価ステップと、現実の走行環境において、前記実車両に対して前記路上走行試験を実施する路上走行試験評価ステップとを備えることを特徴とする。
【0009】
このようなものであれば、バーチャル評価ステップと台上試験評価ステップと路上走行試験評価ステップとの少なくとも3つのステップを行うので、バーチャル評価ステップにおいて用いる走行環境モデル、運転態様モデル及び車両モデルの妥当性を台上試験評価ステップの評価結果を用いて検証することができ、モデル作成者の経験やスキルに関わらず、路上走行試験に準拠したモデルを作成することができる。また、バーチャル評価ステップ及び台上試験評価ステップを行うことにより、RDE試験等の法規に適合した路上走行試験の評価をフロントローディングすることができる。その結果、路上走行試験に準拠した自動車開発の効率化を図ることができる。また、バーチャル評価ステップ及び台上試験評価ステップに加えて路上走行試験評価ステップを行うことにより、バーチャル評価ステップ及び台上試験評価ステップの妥当性を検証することもできる。
【0010】
前記台上試験評価ステップは、前記実車両のエンジンを含む一部と、前記車両モデルの一部又は全部と、前記走行環境モデルの一部又は全部及び前記運転態様モデルの一部又は全部とを組み合わせて、前記実車両のエンジンを含む一部を台上試験することにより、前記路上走行試験を模擬する第1台上試験評価ステップを備えることが望ましい。
【0011】
さらに路上走行試験に準拠した自動車開発のより一層の効率化を図るためには、前記台上試験評価ステップは、前記第1台上試験評価ステップ及び前記路上走行試験評価ステップの間において、前記実車両と、前記走行環境モデル一部又は全部及び前記運転態様モデル一部又は全部とを組み合わせて、前記実車両を台上試験することにより、前記路上走行試験を模擬する第2台上試験評価ステップをさらに備えることが望ましい。
【0012】
本発明の具体的な実施の態様としては、前記第1台上試験評価ステップにおける前記実車両のエンジンを含む一部の評価結果と、前記バーチャル評価ステップにおける前記車両モデルの評価結果とを比較する第1比較ステップと、前記第2台上試験評価ステップにおける前記実車両の評価結果と、前記第1台上試験評価ステップにおける前記車両のエンジンを含む一部の評価結果とを比較する第2比較ステップと、前記路上走行試験評価ステップにおける前記実車両の評価結果と、前記第2台上試験評価ステップにおける前記実車両の評価結果とを比較する第3比較ステップとの少なくとも1つのステップを備えることが望ましい。
【0013】
評価結果を活用してRDE試験等の法規に適合した路上走行試験の評価をフロントローディングするためには、前記バーチャル評価ステップにおける前記車両モデルの評価結果が、前記第1台上試験評価ステップにおける前記実車両のエンジンを含む一部の評価結果と合致するように、前記バーチャル評価ステップにフィードバックする第1フィードバックステップと、前記第1台上試験評価ステップにおける前記実車両のエンジンを含む一部の評価結果が、前記第2台上試験評価ステップにおける前記実車両の評価結果と合致するように、前記第1台上試験評価ステップにフィードバックする第2フィードバックステップと、前記第2台上試験評価ステップにおける前記実車両の評価結果が、前記路上走行試験評価ステップにおける前記実車両の評価結果と合致するように、前記第2台上試験評価ステップにフィードバックする第3フィードバックステップとの少なくとも1つのステップを備えることが望ましい。
【0014】
本発明の路上走行試験評価方法おいて、定量的な評価を行うために具体的な実施の態様としては、前記路上走行試験評価ステップは車載型排ガス分析装置を用いて行い、前記第2台上試験評価ステップは据え置き型又は車載型の排ガス分析装置を用いて行うことが望ましい。
【0015】
据え置き型の排ガス分析装置における固体粒子数計測部の検出効率と車載型の排ガス分析装置における固体粒子数計測部の検出効率とは互いに異なっている。このため、
RDE試験等の法規に適合した路上走行試験の評価を正確にフロントローディングするためには、前記第2台上試験評価ステップには車載型の排ガス分析装置を用いることが考えられる。
ところが、車載型の排ガス分析装置をわざわざ試験ベンチ(試験室)に移動させて試験を行うことは手間となる。
この問題を解決するためには、前記第2台上試験評価ステップは据え置き型の排ガス分析装置を用いて行い、前記据え置き型の排ガス分析装置の固体粒子数計測部の検出効率は、前記車載型の排ガス分析装置の固体粒子数計測部の検出効率と同じとしてあることが望ましい。
【0016】
また、本発明の路上走行試験評価方法おいて、定量的な評価を行うために具体的な実施の態様としては、前記第1台上試験評価ステップ、前記第2台上試験評価ステップ及び前記路上走行試験評価ステップの少なくとも何れか2つにおける排ガス試験結果を比較し、当該排ガス試験結果の比較に用いられる測定成分は、二酸化炭素(CO2)、一酸化炭素(CO)、粒子状物質(PM)、粒子状物質数(PN)、アンモニア(NH3)、一酸化二窒素(N2O)、窒素酸化物(NOx)、又はトータルハイドロカーボン(THC)の少なくとも1つであることが望ましい。
【0017】
前記台上試験評価ステップの運転態様としては、前記台上試験評価ステップは、前記バーチャル評価ステップで用いられた前記運転態様モデルに基づいて、前記実車両の一部又は全部を運転するものであることが望ましい。
【0018】
前記第2台上試験評価ステップの運転態様としては、前記第1台上試験評価ステップで再現した運転態様に基づいて、前記第2台上試験評価ステップの運転態様を再現し、前記第2台上試験評価ステップは、前記第1台上試験評価ステップで用いられた前記運転態様モデルに基づいて、前記実車両を運転手が運転する、又は、前記実車両を自動運転ロボットが運転することが望ましい。
【0019】
前記第1台上試験評価ステップ又は前記第2台上試験評価ステップにおける走行環境モデルの実現態様としては、前記第1台上試験評価ステップ又は前記第2台上試験評価ステップの走行環境モデルは、エンジンの吸気側及び排気側に配管を接続し、当該配管を介して圧力制御することにより再現されることが望ましい。
【0020】
前記運転態様モデルの具体的な実施の態様としては、前記バーチャル評価ステップにおいて、前記運転態様モデルを構成するパラメータの組み合わせは、法規に適合した路上走行試験に準拠するように、RPA (Relative Positive Acceleration)又はvapos_[95] (Relative Positive Acceleration 95th percentile)の少なくとも一方と対応付けられることが望ましい。
【0021】
前記供試体としては、先進運転支援システム(ADAS)を有するものも考えられる。このADASを有する供試体において、RDE試験等の法規に適合した路上走行試験の評価をフロントローディングするためには、前記バーチャル評価ステップは、前記走行環境モデル、前記運転態様モデル及び前記車両モデルに加えて、ADASに必要なセンサをモデル化したセンサモデル又は前記ADASを数値化したADASモデルの少なくとも一方を用いて、前記路上走行試験をシミュレーションすることが望ましい。
【0022】
前記供試体としては、エンジンとバッテリとが連携して動作するハイブリッド車両が考えられる。このハイブリッド車両において、RDE試験等の法規に適合した路上走行試験の評価をフロントローディングするためには、前記バーチャル評価ステップは、前記走行環境モデル、前記運転態様モデル及び前記車両モデルに加えて、前記バッテリをモデル化したバッテリモデルを用いて、前記路上走行試験をシミュレーションすることが望ましい。
【0023】
また、本発明に係る車両試験システムは、実車両又はその一部である供試体を台上試験することにより、法規に適合した路上走行試験を評価する車両試験システムであって、走行環境をモデル化した走行環境モデル、運転態様をモデル化した運転態様モデル、及び前記実車両をモデル化した車両モデルを用いて、前記路上走行試験をシミュレーションするシミュレーション装置と、前記実車両のエンジンを含む一部と、前記車両モデルの一部又は全部と、前記走行環境モデルの一部又は全部及び前記運転態様モデルの一部又は全部とを組み合わせて、前記実車両のエンジンを含む一部を台上試験することにより、前記路上走行試験を模擬する第1台上試験装置と、前記実車両と、前記走行環境モデルの一部又は全部及び前記運転態様モデルの一部又は全部とを組み合わせて、前記実車両を台上試験することにより、前記路上走行試験を模擬する第2台上試験装置とを備えることを特徴とする。
【0024】
また、本発明に係る路上走行試験評価用プログラムは、実車両又はその一部である供試体を台上試験することにより、法規に適合した路上走行試験を評価する路上走行試験評価用プログラムであって、走行環境をモデル化した走行環境モデル、運転態様をモデル化した運転態様モデル、及び前記実車両をモデル化した車両モデルを用いて、コンピュータに前記路上走行試験をシミュレーションさせ、前記実車両の一部又は全部と、前記車両モデルの一部又は全部と、前記走行環境モデルの一部又は全部及び前記運転態様モデルの一部又は全部とを組み合わせて、前記実車両の一部又は全部を台上試験装置により台上試験させることにより、前記路上走行試験を模擬させる、路上走行試験評価用プログラム。
【発明の効果】
【0025】
以上に述べた本発明によれば、RDE試験等の法規に適合した路上走行試験の評価をフロントローディングすることにより、路上走行試験に準拠した自動車開発の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両試験システムの構成を模式的に示す図。
【
図2】同実施形態のシミュレーション装置の構成を模式的に示す図。
【
図3】同実施形態の第1台上試験装置の構成を模式的に示す図。
【
図4】同実施形態の第2台上試験装置の構成を模式的に示す図。
【
図5】同実施形態の走行試験評価方法のフローチャートを示す図。
【
図6】変形実施形態のシミュレーション装置の構成を模式的に示す図。
【
図7】変形実施形態のシミュレーション装置の構成を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態に係る車両試験システム及び路上走行試験評価方法について、図面を参照しながら説明する。
【0028】
<車両試験システムの装置構成>
本実施形態の車両試験システム100は、実車両又はその一部である供試体を台上試験することにより、法規に適合した路上走行試験を評価するものである。ここで、法規に適合した路上走行試験は、例えば欧州等の各国で導入されている路上走行排出ガス試験(RDE(Real Driving Emission)試験)である。
【0029】
具体的に車両試験システム100は、
図1に示すように、路上走行試験をシミュレーションするシミュレーション装置2と、実車両のエンジンを含む一部を台上試験することにより、路上走行試験を模擬する第1台上試験装置3と、実車両を台上試験することにより、路上走行試験を模擬する第2台上試験装置4と、シミュレーション装置2、第1台上試験装置3及び第2台上試験装置4を統合管理する上位管理装置5とを備えている。
【0030】
シミュレーション装置2は、走行環境をモデル化した走行環境モデル、運転態様をモデル化した運転態様モデル、及び実車両をモデル化した車両モデルを用いて、路上走行試験をシミュレーションするものであり、CPU、内部メモリ、入出力インターフェース、キーボード等の入力手段、ディスプレイなどの出力手段、通信手段等を備えるコンピュータである。
【0031】
このシミュレーション装置2は、各モデルを格納する関係データ格納部21と、RDE試験に準拠した走行をシミュレーションするシミュレーション部22とを備えている。
【0032】
関係データ格納部21に格納される走行環境モデルは、走行ルート、走行ルートの路面抵抗、標識、気温及び湿度、走行ルートの標高、走行ルートの渋滞度合い(交通量)などを数値化したモデルである。
【0033】
また、関係データ格納部21に格納される運転態様モデルは、Dynamics(仕事量)、Energy Efficiency(エネルギー効率)、及び、Nervousness(緊張度)を数値化したモデルである。
【0034】
具体的には、運転態様モデルは、例えばIPG Automotive株式会社のソフトウエア「CarMaker」に列挙されている以下のパラメータを含む。
Dynamicsのパラメータ:Crusing speed[km/h], Corner cutting coefficient[-], dt Change of pedals[s], Max. Long Acceleration[m/s2], Max. Long Dceleration[m/s2], Max. Lat Acceleration[m/s2], Exponent of g-g Diagram[-], Time of Shifting[s], Engine Speeds min/mas[rpm], Engine Speeds idle up/acc. Down[rpm], Long Smooth Throttle Limit[-]
Energy Efficiencyのパラメータ:Min. dt Accel/Decel[s], Long Drag Torque Braking[-], Long Drive Cycle Tol[-], Long drive Cycle Coef[-]
Nervousnessのパラメータ:Long SDV Random[-], Long SDV Random f[-]
【0035】
さらに、関係データ格納部21に格納される車両モデルは、少なくともエンジンを数値化したエンジンモデルを有するものであり、実車両の種類(トラック、乗用車など)、重量、トランスミッション種別(MT、AT、CVTなど)、タイヤ径、変速比、エンジン特性(スロットル開度及び回転数と出力トルクとの関係等)、ECUの制御特性(アクセル開度とスロットル開度との関係など)、TCUの制御特性(変速比の変更条件やそのタイミングなど)、又はBCUの制御特性(各車輪に対するブレーキ力の分配など)等の車両情報をモデル化したものである。これらの各モデルは、予め関係データ格納部21に格納されている。
【0036】
シミュレーション部22は、関係データ格納部21に格納された各モデルに基づいて、RDE試験に準拠した路上走行試験として、MAW(Moving Averaging Window)法又はPower Bining法におけるエミッションの試験結果が所定の範囲内に入る走行をシミュレーションするものである。
【0037】
また、シミュレーション部22は、上記のシミュレーションにおいて、運転態様モデルに含まれる複数の運転特性をインプットパラメータとして、RDE試験に準拠した走行をした場合のRPA(Relative Positive Acceleration)又はvapos_[95](Relative Positive Acceleration 95th percentile)を求める。
【0038】
ここで、シミュレーション部22は、実験計画法(DoE(Design of experiments))により複数の運転特性のインプットパラメータの組み合わせを作成し、その作成した組み合わせパターンを用いて、RDE試験に準拠した路上走行試験のシミュレーションを実行する。そして、シミュレーション部22は、そのシミュレーション結果から、RPA(Relative Positive Acceleration)又はvapos_[95](Relative Positive Acceleration 95th percentile)を求める。
【0039】
さらに、シミュレーション部は、インプットパラメータの組み合わせパターンとそれぞれに対応したRPA又はvapos_[95]とを対応させて関係データ格納部21に格納する。これにより、RPA又はvapos_[95]を選択することによって、当該RPA又はvapos_[95]に対応したインプットパラメータの組み合わせパターン(運転態様モデル)を決定することができる。この決定された運転態様モデルは、後述する第1台上試験装置3又は第2台上試験装置4に送信されて、各試験装置3、4を用いた試験に用いられる。
【0040】
第1台上試験装置3は、
図3に示すように、実車両のエンジンEを含む一部と、当該エンジンEを含む一部を除いた車両モデルと、走行環境モデル及び/又は運転態様モデルとを組み合わせて、実車両のエンジンEを含む一部を台上試験することにより、路上走行試験を模擬するものである。ここでは、第1台上試験装置3は、エンジンEを供試体とするエンジンベンチ(エンジンダイナモメータ)である。なお、実車両のエンジンを含む一部は、エンジンに加えてトランスミッションを含む駆動系であってもよく、この場合の台上試験装置は、駆動系の駆動軸に連結されるダイナモメータを用いて構成される。
【0041】
この第1台上試験装置3は、エンジンEに負荷を与えるエンジンダイナモメータ31と、エンジンダイナモメータ31を制御する制御装置32と、エンジンEから排出される排ガスを分析する例えば据え置き型の排ガス分析装置33とを備えている。
【0042】
制御装置32は、エンジンを含む一部を除いた車両モデルと、走行環境モデル及び運転態様モデルとに基づいてエンジンダイナモメータ31を制御するものである。また、制御装置32は、上記のシミュレーション部22により生成された運転態様モデルに基づいて、エンジンEを運転する。
【0043】
さらに、第1台上試験装置3には、走行環境を再現するために、エンジンの吸気側及び排気側に配管が接続されており、当該配管を介してエンジン内部に圧力を調整する例えば可搬型の圧力調整機器(環境再現装置)34が設けられている。この圧力調整機器34は、制御装置32により、走行環境モデルに基づいて制御される。なお、温度、湿度又は圧力を調整可能な環境試験室に第1台上試験装置3を設置することにより、走行環境を再現する構成としても良い。
【0044】
排ガス分析装置33は、エンジンEから排出される排ガス中の二酸化炭素(CO2)、一酸化炭素(CO)、粒子状物質(PM)、粒子状物質数(PN)、アンモニア(NH3)、一酸化二窒素(N2O)、窒素酸化物(NOx)、又はトータルハイドロカーボン(THC)の少なくとも1つを分析するものである。この排ガス分析装置33により測定された排ガス測定結果は、上位管理装置5又は制御装置32に送信される。
【0045】
第2台上試験装置4は、
図4に示すように、実車両Vと、走行環境モデル及び運転態様モデルとを組み合わせて、実車両Vを台上試験することにより、路上走行試験を模擬するものである。
【0046】
この第2台上試験装置4は、実車両Vが搭載されるシャシダイナモメータ(シャシベンチ)41と、シャシダイナモメータ41を制御する制御装置42と、エンジンEから排出される排ガスを分析する例えば据え置き型又は車載型の排ガス分析装置43とを備えている。
【0047】
制御装置42は、走行環境モデル及び運転態様モデルに基づいてシャシダイナモメータ41を制御するものである。また、制御装置42は、第1台上試験装置3で用いられた運転態様モデルに基づいて自動運転ロボット44を制御し、これにより、自動運転ロボット44が実車両Vを運転する。
【0048】
さらに、第2台上試験装置4には、走行環境を再現するために、エンジンEの吸気側及び排気側に配管が接続されており、当該配管を介してエンジン内部に圧力を調整する例えば可搬型の圧力調整機器(環境再現装置)45が設けられている。この圧力調整機器45は、制御装置42により、走行環境モデルに基づいて制御される。なお、第2台上試験装置4の圧力調整機器45及び第1台上試験装置3の圧力調整機器34は互いに兼用しても良いし、それぞれ設けられていてもよい。なお、温度、湿度又は圧力を調整可能な環境試験室に第2台上試験装置4を設置することにより、走行環境を再現する構成としても良い。
【0049】
排ガス分析装置43は、エンジンから排出される排ガス中の二酸化炭素(CO2)、一酸化炭素(CO)、粒子状物質(PM)、粒子状物質数(PN)、アンモニア(NH3)、一酸化二窒素(N2O)、窒素酸化物(NOx)、又はトータルハイドロカーボン(THC)の少なくとも1つを分析するものである。この排ガス分析装置43により測定された排ガス測定結果は、上位管理装置5又は制御装置32に送信される。なお、第2台上試験装置4の排ガス分析装置43及び第1台上試験装置3の排ガス分析装置33は互いに兼用しても良いし、それぞれ設けられていても良い。
【0050】
上位管理装置5は、
図2などに示すように、シミュレーション装置2、第1台上試験装置3及び第2台上試験装置4との間でデータの送受信を行うことにより、以下の路上走行試験方法のスケジューリング及び各種データの管理を行うものであり、CPU、内部メモリ、入出力インターフェース、キーボード等の入力手段、ディスプレイなどの出力手段、通信手段等を備えるコンピュータである。この上位管理装置5には、シミュレーション装置2により得られたシミュレーション評価結果、第1台上試験装置3により得られた第1台上試験評価結果、第2台上試験装置4により得られた第2台上試験評価結果、路上走行試験により得られた路上走行試験評価結果が格納される。なお、路上走行試験評価結果は、通信又は記録媒体を介して、上位管理装置5に格納される。
【0051】
<路上走行試験評価方法>
次に、本実施形態の車両試験システムを用いた路上走行試験評価方法について説明する。
本実施形態の路上走行試験評価方法は、
図5に示すように、路上走行試験をシミュレーションするバーチャル評価ステップ(RDE+VIRTUAL)と、実車両のエンジンを含む一部を台上試験することにより、路上走行試験を模擬する第1台上試験評価ステップ(RDE+POWER)と、実車両を台上試験することにより、路上走行試験を模擬する第2台上試験評価ステップ(RDE+CHASSIS)と、現実の走行環境において、実車両に対して路上走行試験を実施する路上走行試験評価ステップ(RDE+ROAD)とを備えている。
【0052】
バーチャル評価ステップは、前記シミュレーション装置2のシミュレーション部22により実施されるものであり、走行環境モデル、運転態様モデル、及び車両モデルを用いて、法規に適合した路上走行試験をシミュレーションする。このバーチャル評価ステップにおいて、複数の運転特性のインプットパラメータの組み合わせを作成し、その作成した組み合わせパターンを用いて、RDE試験に準拠した路上走行試験のシミュレーションを実行する。そして、そのシミュレーション結果から、RPA(Relative Positive Acceleration)又はvapos_[95](Relative Positive Acceleration 95th percentile)を求め、インプットパラメータの組み合わせパターンに対応させて関係データ格納部21に格納される。これにより、RPA又はvapos_[95]を選択することによって、当該RPA又はvapos_[95]に対応したインプットパラメータの組み合わせパターン(運転態様モデル)を決定することができる。
【0053】
第1台上試験評価ステップは、前記第1台上試験装置3を用いて実施されるものであり、前記シミュレーション装置2により得られたシミュレーション結果を用いて、エンジンEを運転するとともにエンジンダイナモメータ31を制御して、その時に排出される排ガスを排ガス分析装置33により分析する。
【0054】
ここで、第1台上試験評価ステップでは、RPA又はvapos_[95]を選択することによって、当該RPA又はvapos_[95]に対応したインプットパラメータの組み合わせパターン(運転態様モデル)を決定し、当該決定された運転態様モデルに基づいて、エンジンEを運転する。そして、この第1台上試験評価ステップにおいて、MAW法又はPower Bining法におけるエミッションの試験結果が所定の範囲内に入るか否かを評価する。その他、第1台上試験評価ステップにおいて、排ガス分析装置33により計測される排ガス中の測定成分の排出量を評価しても良い。
【0055】
第2台上試験評価ステップは、前記第2台上試験装置4を用いて実施されるものであり、第1台上試験装置3で用いられた運転態様モデルに基づいて、実車両Vを運転するとともにシャシダイナモメータ41を制御して、その時に排出される排ガスを排ガス分析装置43により分析する。そして、この第2台上試験評価ステップにおいて、MAW法又はPower Bining法におけるエミッションの試験結果が所定の範囲内に入るか否かを評価する。その他、第2台上試験評価ステップにおいて、排ガス分析装置43により計測される排ガス中の測定成分の排出量を評価しても良い。
【0056】
路上走行試験評価ステップは、現実の走行環境(つまり実路)において、実車両Vに対して路上走行試験を行うことにより実施されるものであり、実路を走行する実車両Vから排出される排ガスを車載型排ガス分析装置により分析する。そして、この路上走行試験評価ステップにおいて、MAW法又はPower Bining法におけるエミッションの試験結果が所定の範囲内に入るか否かを評価する。その他、路上走行試験評価ステップにおいて、車載型排ガス分析装置により計測される排ガス中の測定成分の排出量を評価しても良い。なお、車載型排ガス分析装置は、エンジンから排出される排ガス中の二酸化炭素(CO2)、一酸化炭素(CO)、粒子状物質(PM)、粒子状物質数(PN)、アンモニア(NH3)、一酸化二窒素(N2O)、窒素酸化物(NOx)、又はトータルハイドロカーボン(THC)の少なくとも1つを分析するものである。この排ガス分析装置43により測定された排ガス測定結果は、上位管理装置5に送信される。
【0057】
上記の各評価ステップにおいて得られた評価結果は、相互に比較することができる。
具体的には、第1台上試験評価ステップにおける実車両VのエンジンEを含む一部の評価結果と、バーチャル評価ステップにおける車両モデルの評価結果とを比較する第1比較ステップを行うことができる。そして、この第1比較ステップの比較結果に基づいて、バーチャル評価ステップにおける車両モデルの評価結果が、第1台上試験評価ステップにおける実車両のエンジンを含む一部の評価結果と合致するように、バーチャル評価ステップにおいて例えば車両モデルを変更する等によりフィードバックする第1フィードバックステップを行うことができる。
【0058】
また、第2台上試験評価ステップにおける実車両の評価結果と、第1台上試験評価ステップにおける車両のエンジンを含む一部の評価結果とを比較する第2比較ステップを行うことができる。そして、第1台上試験評価ステップにおける実車両のエンジンを含む一部の評価結果が、第2台上試験評価ステップにおける実車両の評価結果と合致するように、第1台上試験評価ステップにおいて例えば車両モデルを変更する等によりフィードバックする第2フィードバックステップを行うことができる。なお、第2台上試験評価ステップの評価結果に基づいて、バーチャル評価ステップにおいて例えば車両モデルを変更する等によりフィードバックしてもよい。
【0059】
さらに、路上走行試験評価ステップにおける実車両の評価結果と、第2台上試験評価ステップにおける実車両の評価結果とを比較する第3比較ステップを行うことができる。そして、第2台上試験評価ステップにおける実車両の評価結果が、路上走行試験評価ステップにおける実車両の評価結果と合致するように、第2台上試験評価ステップにフィードバックする第3フィードバックステップを行うことができる。なお、第2台上試験評価ステップの評価結果に基づいて、バーチャル評価ステップ又は第1台上試験評価ステップにおいて例えば車両モデルを変更する等によりフィードバックしてもよい。
【0060】
<本実施形態の効果>
本実施形態の路上走行試験評価方法によれば、バーチャル評価ステップと第1台上試験評価ステップと路上走行試験評価ステップとの少なくとも3つのステップを行うので、バーチャル評価ステップにおいて用いる走行環境モデル、運転態様モデル及び車両モデルの妥当性を第1台上試験評価ステップの評価結果を用いて検証することができ、モデル作成者の経験やスキルに関わらず、路上走行試験に準拠したモデルを作成することができる。また、バーチャル評価ステップ及び第1台上試験評価ステップを行うことにより、RDE等の法規に適合した路上走行試験の評価をフロントローディングすることができる。その結果、路上走行試験に準拠した自動車開発の効率化を図ることができる。また、バーチャル評価ステップ及び第1台上試験評価ステップに加えて路上走行試験評価ステップを行うことにより、バーチャル評価ステップ及び第1台上試験評価ステップの妥当性を検証することもできる。
【0061】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0062】
例えば、前記実施形態の路上走行試験評価方法は、第2台上試験評価ステップを有する方法であったが、第2台上試験評価ステップを有さない方法としてもよい。
【0063】
また、前記実施形態の路上走行試験評価方法において、バーチャル評価ステップ及び路上走行試験評価ステップの間に、第1台上試験評価ステップ又は第2台上試験評価ステップの何れか一方を有する方法としてもよい。
【0064】
前記実施形態において固体粒子数(PN)を計測する場合には、据え置き型の排ガス分析装置及び車載型の排ガス分析装置はともに固体粒子数計測部を有することになる。ここで、据え置き型の排ガス分析装置と、車載型の排ガス分析装置とでは、PN計数効率が異なる場合がある。例えば、据え置き型の固体粒子数計測部のPN検出効率は、車載型の固体粒子数計測部のPN検出効率よりも小さな粒径の粒子を測定できるように設定されている場合がある。なお、固体粒子数計測部には、例えば、レーザ散乱式凝縮粒子カウンタ(CPC)が用いられる。なお、一般にPN検出効率とは、所定の粒径(例えば23nm、10nm等に設定される)の粒子数を50%の検出効率で測定できるように定められたものである。
【0065】
第1台上試験評価ステップ(第1台上試験装置3)又は第2台上試験評価ステップ(第2台上試験装置4)において、車載型の固体粒子数計測部と同等のPN検出効率に校正された据え置き型の固体粒子数計測部を用いることが望ましい。
上述した例では、第1台上試験評価ステップ(第1台上試験装置3)又は第2台上試験評価ステップ(第2台上試験装置4)において、据え置き型の排ガス分析装置を用いる例を示したが、車載型の排ガス分析装置を用いてもよい。
【0066】
なお、据え置き型の固体粒子数計測部を、車載型の固体粒子数計測部のPN検出効率よりも小さな粒径の粒子を測定できるように設定されたPN検出効率と、車載型の固体粒子数計測部と同等のPN検出効率とを切替可能に構成しておき、シャシダイナモメータ上での試験(例えばWLTC)と、路上走行試験を模擬した試験とで切替可能にしても良い。
【0067】
また、前記実施形態の供試体は、先進運転支援システム(ADAS)を有するものであっても良い。この場合、
図6に示すように、先進運転支援システム(ADAS)に必要な各種センサ(例えばレーダー、ライダー、又はカメラ等)を数値化した各種センサモデル又はADASシステムを数値化したADASモデルの少なくとも一方を関係データ格納部21に格納しておく。また、走行環境モデルには、他の車両の有無や、前方車両との速度差などを数値化したモデルを含めておく。そして、走行環境モデルに基づいた走行シナリオに基づいて、運転態様モデル、センサモデル及びADASモデルを協調させて、前記実施形態の路上走行試験評価方法を行っても良い。この構成であれば、ADASを有する供試体の路上走行試験を評価することができる。特に、ドライバの運転から自動運転に切り替わる際の車両の挙動や自動運転からドライバの運転に切り替わる際の車両の挙動を評価することができる。
【0068】
さらに、前記実施形態の供試体は、エンジン車であったが、エンジンとバッテリとが連携して動作するハイブリッド車であってもよい。この場合、
図7に示すように、ハイブリッド車のバッテリの充電率(SOC)に応じて走行態様が変化して、排ガスのエミッションも変化する。このため、ハイブリッド車のバッテリの各種パラメータを数値化したバッテリモデルを関係データ格納部21に格納しておき、前記実施形態の各モデルに加えてバッテリモデルを用いて、前記実施形態の路上走行試験評価方法を行っても良い。なお、本発明は、エンジン車又はハイブリッド車に限らず、電気自動車(EV)又は燃料電池車(FCV)に適用することも可能である。
【0069】
加えて、前記実施形態において、
図1のシミュレーション装置2と第1台上試験装置3だけを用いて、供試体であるエンジンに対して、RDE試験等の法規に適合した路上走行試験の評価をフロントローディングすることもできる。また、
図1のシミュレーション装置2と第2台上試験4だけを用いて、供試体であるパワートレイン等の車両駆動系に対して、RDE試験等の法規に適合した路上走行試験の評価をフロントローディングすることもできる。
【0070】
上述したセンサモデル、ADASモデル、又はバッテリモデルは、車両モデルの一部として車両モデルに含まれても良い。
【0071】
また、台上評価試験ステップにおいては、実車両の一部又は全部と、車両モデルの一部又は全部とを組み合わせて試験する際に、実車両の一部又は全部と車両モデルの一部又は全部とが一部重複しても良いし、実車両の一部又は車両モデルの一部を省略しても良い。さらに台上評価試験ステップにおいては、走行環境モデルの全部又は一部を用いても良いし、運転態様モデルの全部又は一部を用いても良い。
【0072】
その上、シミュレーション装置2において、更に排ガスのエミッションモデルを用いて、シミュレーションしてもよい。
【0073】
加えて、路上走行試験評価方法において、燃料消費量を評価項目に加えてもよい。
【0074】
法規に適合した路上走行試験は、RDEに限られず、各国の法律又は規則で定められた各種路上走行試験であってもよい。
【0075】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形や組み合わせを行っても構わない。
【符号の説明】
【0076】
100・・・車両試験システム
2 ・・・シミュレーション装置
3 ・・・第1台上試験装置
4 ・・・第2台上試験装置