(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022121457
(43)【公開日】2022-08-19
(54)【発明の名称】補助方法及び補助装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20220812BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20220812BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20220812BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
H01L21/78 C
B24B41/06 L
B24B49/12
B23Q17/00 A
B23Q17/00 E
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092927
(22)【出願日】2022-06-08
(62)【分割の表示】P 2018090027の分割
【原出願日】2018-05-08
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】清水 翼
(57)【要約】
【課題】回転軸と撮影光軸との位置合わせを高精度に行うための位置合わせの補助方法及び補助装置を提供する。
【解決手段】回転軸を中心として回転するワーク保持用のテーブルと、テーブルのワーク保持面に対向する位置に配置された撮影部と、を回転軸に対して垂直方向に相対移動させて、テーブルの回転軸と撮影部の撮影光軸とを位置合わせする位置合わせ作業を補助する補助方法において、撮影部によるワーク保持面の動画撮影を実行させる撮影制御ステップと、撮影部により得られたワーク保持面の動画像を、表示部に表示させる表示ステップと、表示部に表示される動画像に対して、撮影光軸を示す指標を重畳表示させる表示制御ステップと、撮影部による動画撮影に合わせて、回転軸を中心としてテーブルを連続回転させる回転ステップと、を有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を中心として回転するワーク保持用のテーブルと、前記テーブルのワーク保持面に対向する位置に配置された撮影部と、を前記回転軸に対して垂直方向に相対移動させて、前記テーブルの前記回転軸と前記撮影部の撮影光軸とを位置合わせする位置合わせ作業を補助する補助方法において、
前記撮影部による前記ワーク保持面の動画撮影を実行させる撮影制御ステップと、
前記撮影部により得られた前記ワーク保持面の動画像を、表示部に表示させる表示ステップと、
前記表示部に表示される前記動画像に対して、前記撮影光軸を示す指標を重畳表示させる表示制御ステップと、
前記撮影部による前記動画撮影に合わせて、前記回転軸を中心として前記テーブルを連続回転させる回転ステップと、
を有する補助方法。
【請求項2】
回転軸を中心として回転するワーク保持用のテーブルと、前記テーブルのワーク保持面に対向する位置に配置された撮影部と、を前記回転軸に対して垂直方向に相対移動させて、前記テーブルの前記回転軸と前記撮影部の撮影光軸とを位置合わせする位置合わせ作業を補助する補助装置において、
前記撮影部による前記ワーク保持面の動画撮影を実行させる撮影制御部と、
前記撮影部により得られた前記ワーク保持面の動画像を表示する表示部と、
前記表示部に表示される前記動画像に対して、前記撮影光軸を示す指標を重畳表示させる表示制御部と、
前記撮影部による前記動画撮影に合わせて、前記回転軸を中心として前記テーブルを連続回転させる回転制御部と、
を備える補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク保持用のテーブルの回転軸と撮影部の撮影光軸との位置合わせを補助する補助方法及び補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハ等のワークを切削加工するダイシング装置が良く知られている。このダイシング装置は、ワークを切削するブレードと、ブレードを高速回転させるスピンドルと、ワークを保持し且つ回転軸を中心として回転するワークテーブルと、ワークの切削予定ラインのアライメント及びカーフチェック等に用いられる顕微鏡と、を備える。ワークテーブル及び顕微鏡は、消耗又は不具合などが原因で交換されることがある。そして、この交換後には、ワークテーブルの回転軸と顕微鏡の撮影光軸とを位置合わせする位置合わせ作業(回転中心調整作業ともいう)が行われる(特許文献1参照)。
【0003】
この位置合わせ作業では、ワークテーブルの回転軸の位置(回転中心位置ともいう)を各種方法で検出して、この回転軸の位置に顕微鏡の撮影光軸を位置合わせする。ワークテーブルの回転軸の位置の検出方法としては、目視で検出する方法が一般的である。
【0004】
また、上記特許文献1には、ワークテーブルの回転軸の位置を自動検出する方法が開示されている。具体的には、ワークテーブルを所定角度だけ回転させる工程と、ワークテーブルの回転前後において顕微鏡によりワークテーブル又はワークを撮影する工程と、ワークテーブルの回転前後での撮影画像を解析して、この回転前後におけるワークテーブル上又はワーク上の基準パターンの位置座標を検出する工程と、を実行する。これにより、ワークテーブルの回転前後の基準パターンの位置座標とワークテーブルの回転角度とに基づき、ワークテーブルの回転軸の位置を自動的に検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図12は、ワークテーブルの回転軸の位置を目視で検出する場合の課題を説明するための説明図である。
図12の符号102は、ダイシング装置の顕微鏡により撮影されたワークテーブルのワーク保持面(上面)の撮影画像である。なお、ここでは、ワーク保持面がポーラス状(多孔質状)に形成されているものとする。また、
図12の符号104は、顕微鏡の撮影光軸を電子ラインで表わした視標である。
【0007】
図12の符号100Aから符号100Cに示すように、ワークテーブルの回転軸の位置を目視で検出する場合、オペレータは、ワークテーブルをその回転軸を中心として約0.5秒で90°回転させる。なお、符号100Aは、ワークテーブルの回転開始前(すなわち、角度0°)の状態において得られた撮影画像102を示し、符号100Bは、ワークテーブルの回転中に得られた撮影画像102を示し、符号100Cは、ワークテーブルの回転完了後(すなわち、角度90°)の状態において得られた撮影画像102を示す。
【0008】
オペレータは、ワークテーブルの回転中に得られる撮影画像102(符号100B参照)から回転軸の位置を目視で検出してその位置を記憶する。そして、オペレータは、ワークテーブルの回転後(符号100C参照)に、先に記憶した回転軸の位置(矢印106参照)が視標104で示される撮影光軸に一致するように、ワークテーブル及び顕微鏡の位置調整を行う。以下、オペレータは、上述の作業を繰り返し行うことにより、ワークテーブルの回転軸と顕微鏡の撮影光軸とを一致させる。
【0009】
このようなワークテーブルの回転軸の位置を目視で検出する方法では、オペレータの記憶を頼りとして、ワークテーブルの回転軸と顕微鏡の撮影光軸との位置合わせを行うため、位置合わせに時間が掛かると共に、位置合わせの精度が低下してしまう。また、ワーク保持面がポーラス状に形成されていると、ワークテーブルの回転軸の位置がポーラスの空孔に一致する場合がある。この場合、撮影画像102内ではポーラスの空孔は暗部となるため、撮影画像102内には回転軸の目印となるものが存在しない。その結果、回転軸の位置が正しいか否かをオペレータが判断し難いという問題も生じる。
【0010】
一方、上記特許文献1に記載の方法によりワークテーブルの回転軸の位置を自動検出する場合、ワークテーブルの回転前後で顕微鏡の視野範囲内に基準パターンが存在する必要がある。また、ワークテーブルと位置合わせされる顕微鏡としては、高倍率のものが用いられるため、顕微鏡の視野範囲は非常に狭くなる。その結果、ワークテーブルの回転前後で基準パターンが顕微鏡の視野範囲内に存在するように、この基準パターンを小さく形成する必要がある。このため、基準パターンの検出結果等から得られる回転軸の位置検出の誤差が大きくなるという問題が発生する。
【0011】
図13は、ワークテーブル108の回転軸Cの位置検出を自動で行う場合の課題を説明するための説明図である。
【0012】
図13に示すように、ワークテーブル108のワーク保持面がポーラス状に形成されている場合、顕微鏡の光源としては、LED(light emitting diode)等の複数の点光源110で構成され、且つワークテーブル108を斜方照明するリング照明光源112を用いるのが通常である。このため、ワークテーブル108の回転前後において各点光源110と基準パターン114との位置関係が変化することにより、ワークテーブル108の回転前後で撮影画像102内の基準パターン114の形状が変化する。この場合、ワークテーブル108の回転前後の撮影画像102から基準パターン114を高精度に検出することが困難となる。その結果、回転軸Cの位置の検出精度が低下して、ワークテーブル108の回転軸Cと顕微鏡の撮影光軸との位置合わせ精度が低下するおそれがある。
【0013】
このようにワークテーブルの回転軸と顕微鏡の撮影光軸との位置合わせ精度が低下すると、ワークの切削加工時にワークテーブルを回転させた場合に、ワーク上の所望のパターン(アライメントパターン及び加工ライン等)の位置ずれ誤差が大きくなり、このパターンの検出に失敗するおそれがある。このため、ワークテーブルの回転軸と顕微鏡の撮影光軸との位置合わせを高精度化することが求められている。
【0014】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、回転軸と撮影光軸との位置合わせを高精度に行うための位置合わせの補助方法及び補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の目的を達成するための補助方法は、回転軸を中心として回転するワーク保持用のテーブルと、テーブルのワーク保持面に対向する位置に配置された撮影部と、を回転軸に対して垂直方向に相対移動させて、テーブルの回転軸と撮影部の撮影光軸とを位置合わせする位置合わせ作業を補助する補助方法において、撮影部によるワーク保持面の動画撮影を実行させる撮影制御ステップと、撮影部により得られたワーク保持面の動画像を、表示部に表示させる表示ステップと、表示部に表示される動画像に対して、撮影光軸を中心とする1又は複数の円周に沿って配置された第1指標を重畳表示させる表示制御ステップと、撮影部による動画撮影に合わせて、回転軸を中心としてテーブルを連続回転させる回転ステップと、を有する。
【0016】
この補助方法によれば、テーブルの回転軸の位置をオペレータが記憶したり或いは回転軸の位置を機械的に演算(検出)したりすることなく、撮影部の撮影光軸とテーブルの回転軸との位置合わせを行うことができる。
【0017】
本発明の他の態様に係る補助方法において、表示制御ステップでは、表示部に表示される動画像に対して、第1指標と、撮影光軸を示す第2指標とを重畳表示させる。これにより、第1指標及び第2指標の双方を基準として撮影光軸と回転軸との位置合わせを行うことができる。
【0018】
本発明の他の態様に係る補助方法において、第1指標が、撮影光軸を基準とする同心円状に形成されている。これにより、撮影部の撮影光軸とテーブルの回転軸との位置合わせをより容易に行うことができる。
【0019】
本発明の他の態様に係る補助方法において、撮影制御ステップにおいて撮影部が、ポーラス状のワーク保持面の動画撮影を実行する。
【0020】
本発明の他の態様に係る補助方法において、撮影部が、撮影倍率の異なる複数のカメラを備え、複数のカメラの中から動画撮影に用いるカメラを選択する選択ステップを有し、撮影制御ステップでは、選択ステップで選択されたカメラにより動画撮影を実行する。これにより、複数のカメラのいずれの撮影光軸に対しても回転軸の位置合わせを行うことができる。
【0021】
本発明の他の態様に係る補助方法において、撮影部が、第1カメラと、第1カメラよりも撮影倍率の低い第2カメラとを備え、選択ステップでは、第1カメラを選択する。
【0022】
本発明の他の態様に係る補助方法において、撮影部が、第1カメラと、第1カメラよりも撮影倍率の低い第2カメラとを備え、選択ステップで第2カメラが選択された場合に、第2カメラの撮影光軸に対する第1カメラの撮影光軸の相対位置を示す相対位置情報を取得する情報取得ステップと、第2カメラの撮影光軸と回転軸との位置合わせ作業の完了後に、情報取得ステップで取得した相対位置情報に基づき、撮影部とテーブルとを相対移動させることにより、第1カメラの撮影光軸を、回転軸に対して位置合わせされた第2カメラの撮影光軸の位置まで移動させる移動ステップと、移動ステップの完了後に、第1カメラを選択する選択ステップと、撮影制御ステップと、表示ステップと、表示制御ステップと、回転ステップと、を繰り返し実行させる繰り返し制御ステップと、を有する。これにより、第1カメラの撮影光軸とテーブルの回転軸との間の距離が大きい場合でも、第1カメラの撮影光軸とテーブルの回転軸との位置合わせを簡単且つ高精度に行うことができる。
【0023】
本発明の目的を達成するための補助装置は、回転軸を中心として回転するワーク保持用のテーブルと、テーブルのワーク保持面に対向する位置に配置された撮影部と、を回転軸に対して垂直方向に相対移動させて、テーブルの回転軸と撮影部の撮影光軸とを位置合わせする位置合わせ作業を補助する補助装置において、撮影部によるワーク保持面の動画撮影を実行させる撮影制御部と、撮影部により得られたワーク保持面の動画像を表示する表示部と、表示部に表示される動画像に対して、撮影光軸を中心とする1又は複数の円周に沿って配置された第1指標を重畳表示させる表示制御部と、撮影部による動画撮影に合わせて、回転軸を中心としてテーブルを連続回転させる回転制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、テーブルの回転軸と撮影部の撮影光軸との位置合わせを高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】ワークを切削加工するダイシング装置の斜視図である。
【
図3】スピンドル、撮影部、及びワークテーブルの概略図である。
【
図4】ダイシング装置の統括制御部の機能ブロック図である。
【
図5】表示部に表示される補助画面の一例を示した説明図である。
【
図6】回転ユニットの回転中に表示部に表示される補助画面の拡大図である。
【
図7】撮影光軸と回転軸との位置合わせ後の補助画面の拡大図である。
【
図8】ダイシング装置における高倍率顕微鏡の撮影光軸とワークテーブルの回転軸との位置合わせ作業の流れを示すフローチャートである。
【
図9】変形例1の第1指標を説明するための説明図である。
【
図10】変形例2の第1指標を説明するための説明図である。
【
図11】変形例3の第1指標を説明するための説明図である。
【
図12】ワークテーブルの回転軸の位置を目視で検出する場合の課題を説明するための説明図である。
【
図13】ワークテーブルの回転軸の位置検出を自動で行う場合の課題を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[ダイシング装置の構成]
図1は、半導体ウェハ等のワークWを切削加工するダイシング装置10の斜視図である。なお、図中のXYZ軸は互いに直交する軸であり、XY軸が水平方向に平行な軸であり、Z軸が水平方向に直交する軸である。
【0027】
ダイシング装置10は、ロードポート12と、搬送機構14と、加工部16と、洗浄部18とを備える。ロードポート12には、フレームFにマウントされたワークWを多数枚収納したカセットが載置される。搬送機構14はワークWを搬送する。加工部16はワークWのダイシング加工を行う。洗浄部18は、切削加工済みのワークWをスピン洗浄する。また、ダイシング装置10の筐体10Aの内部には、ダイシング装置10の各部の動作を制御する統括制御部60(
図4参照)等が設けられている。
【0028】
ロードポート12に載置されたカセット内に収納されている未加工のワークWは、搬送機構14により加工部16に搬送され、個々のチップに分断するために加工部16にて切断あるいは溝入れ加工等の切削加工が施される。そして、加工部16による加工済みのワークWは搬送機構14により洗浄部18に搬送され、洗浄部18により洗浄された後、搬送機構14によりロードポート12に搬送されてカセット内に収納される。
【0029】
図2は、加工部16の外観斜視図である。
図2及び既述の
図1に示すように、加工部16は、一対のブレード21及びブレードカバー(不図示)と、一対のスピンドル22と、一対の撮影部23と、ワーク保持用のワークテーブル31(本発明のテーブルに相当)とを備える。一対のブレード21は、Y軸方向において対向配置されており、それぞれY軸方向に平行なブレード回転軸を中心として回転自在にスピンドル22に保持されている。一対のスピンドル22は、高周波モータを内蔵しており、ブレード回転軸を中心としてブレード21を高速回転させる。
【0030】
撮影部23は、各スピンドル22の近傍に1個ずつ設けられており、ワークWの表面及びブレード21の先端部を撮影する。なお、
図2では、図面の煩雑化を防止するため、2つのスピンドル22の一方の近傍に設けられている撮影部23のみを図示し、他方の近傍に設けられている撮影部23については図示を省略している。
【0031】
また、各スピンドル22及び各撮影部23は、後述のYキャリッジ43及びZキャリッジ44等を介して、Y軸方向とZ軸方向とに移動自在に保持されている。
【0032】
ワークテーブル31は、その上面であるワーク保持面31aにおいてワークWを吸着保持する。このワーク保持面31aは、ワークWを保持するために、ポーラス状(多孔質状)に形成されている。なお、ワークテーブル31は、後述のXキャリッジ36によりX軸方向に移動自在に保持され、且つ後述の回転ユニット37により回転軸Cを中心として回転自在に保持されている。
【0033】
加工部16には、Xベース32と、Xガイド34と、X駆動部35と、Xキャリッジ36と、回転ユニット37とが設けられている。Xベース32は、X軸方向に延びた平板形状を有しており、且つそのZ軸方向の上面にはXガイド34が設けられている。Xガイド34は、X軸方向に延びた形状を有し、Xキャリッジ36をX軸方向に沿ってガイドする。X駆動部35は、例えばリニアモータ等が用いられ、Xガイド34に沿ってXキャリッジ36をX軸方向に移動(駆動)する。
【0034】
回転ユニット37は、Xキャリッジ36の上面に設けられている。また、回転ユニット37の上面には、ワークテーブル31が設けられている。回転ユニット37は、モータ及びギヤ等により構成される回転駆動部38(
図4参照)によって回転駆動されることにより、ワークテーブル31をその回転軸Cを中心としてθ方向に回転させる。
【0035】
搬送機構14によりロードポート12から搬送されたワークWは、ワークテーブル31により吸着保持されることで、ワークテーブル31と一体に移動及び回転する。これにより、ワークテーブル31等を介して、切削加工前のアライメント時におけるワークWのθ方向の回転、及びワークWの切削加工時におけるワークWのX方向への切削送り等が行われる。
【0036】
また、加工部16には、Yベース41と、Yガイド42と、一対のYキャリッジ43と、一対のZキャリッジ44と、が設けられている。Yベース41は、Y軸方向においてXベース32を跨ぐような門型形状を有している。このYベース41のX軸方向の側面には、Yガイド42が設けられている。Yガイド42は、Y軸方向に延びた形状を有し、一対のYキャリッジ43をそれぞれY軸方向に沿ってガイドする。一対のYキャリッジ43は、ステッピングモータ及びボールスクリュー等により構成されるY駆動部46(
図4参照)により、Yガイド42に沿って独立して駆動される。
【0037】
一対のYキャリッジ43の各々には、ステッピングモータ等により構成されるZ駆動部48(
図4参照)を介して、Zキャリッジ44がZ軸方向に移動自在に設けられている。そして、各Zキャリッジ44には、既述のスピンドル22が取り付けられている。これにより、ワークWの切削加工時には、ワークテーブル31に吸着保持されたワークWに対して、ブレード21がY軸方向にインデックス送りされると共にZ軸方向に切込み送りされる。
【0038】
なお、スピンドル22、撮影部23、Yキャリッジ43、及びZキャリッジ44は、左右に対向して2組設けられているが、同様の構成、作用を有するため、以下において一方(右側)のみに着目して説明する。
【0039】
図3は、スピンドル22、撮影部23、及びワークテーブル31の概略図である。
図3及び既述の
図2に示すように、撮影部23は、スピンドル22と共にZキャリッジ44に固定される。これにより、撮影部23は、スピンドル22(ブレード21)に対する相対的な位置が固定され、且つYキャリッジ43及びZキャリッジ44の駆動によりスピンドル22と共にY方向及びZ方向に移動する。
【0040】
また、撮影部23は、本発明の複数のカメラとして、高倍率顕微鏡23A(本発明の第1カメラに相当)と、低倍率顕微鏡23B(本発明の第2カメラに相当)と、を備える。各顕微鏡23A,23Bは、図示は省略するが、それぞれ撮影光学系と撮像素子とを有している。そして、各顕微鏡23A,23Bは、ワークWの切削加工時にワークWの表面を撮影する。なお、高倍率顕微鏡23Aによる撮影と、低倍率顕微鏡23Bによる撮影とは選択的に実行される。
【0041】
高倍率顕微鏡23Aの撮影倍率は、低倍率顕微鏡23Bの撮影倍率よりも高く設定されている。換言すると低倍率顕微鏡23Bの撮影倍率は、高倍率顕微鏡23Aの撮影倍率よりも低く設定されている。
【0042】
また、撮影部23及びスピンドル22は共にZキャリッジ44に固定されているため、高倍率顕微鏡23Aの撮影光軸OAの位置座標(x,y)或いは低倍率顕微鏡23Bの撮影光軸OBの位置座標(x,y)のいずれか一方から、他方の位置座標(x,y)と、ブレード21の刃先の最下点の位置座標(x,y)と、を検出可能である。ここで撮影光軸OA,OBには、高倍率顕微鏡23A及び低倍率顕微鏡23Bの視野中心(X軸方向及びY軸方向の中心)が含まれる。
【0043】
ダイシング装置10では、撮影部23(高倍率顕微鏡23A等)及びワークテーブル31の少なくとも一方の交換時、或いは定期的なタイミングにおいて、高倍率顕微鏡23Aの撮影光軸OAと、ワークテーブル31の回転軸Cとを位置合わせする位置合わせ作業が実行される。この位置合わせ作業は、撮影光軸OAのY軸方向の延長線と回転軸CのX軸方向の延長線との交点である回転中心G上において実行される。換言すると、回転中心G上において撮影光軸OAと回転軸Cとが一致するように位置合わせ作業が実行される。
【0044】
位置合わせ作業は、オペレータによる手動操作によって、撮影部23とワークテーブル31とを回転軸Cに対して垂直方向、すなわちX軸方向及びY軸方向の各方向に相対移動させることにより実行される。このため、ダイシング装置10は、オペレータによる位置合わせ作業を補助する補助機能を有している。従って、ダイシング装置10は本発明の補助装置として機能する。
【0045】
なお、詳しくは後述するが、撮影光軸OA(高倍率顕微鏡23A)と回転軸Cとの位置合わせ作業を行う代わりに、撮影光軸OB(低倍率顕微鏡23B)と回転軸Cとの位置合わせ作業を行う場合もある。
【0046】
図4は、ダイシング装置10の統括制御部60の機能ブロック図である。
図4に示すように、統括制御部60は、例えばCPU(Central Processing Unit)或いはFPGA(field-programmable gate array)含む各種の演算部、処理部、及びメモリ等により構成されており、ダイシング装置10の各部の動作を統括制御する。なお、
図4では、統括制御部60の複数の機能の中で、特に位置合わせ作業の補助に係る機能を図示し、ワークWの切削加工等のダイシング装置10の他の制御に係る機能は公知技術であるので図示は省略する。
【0047】
統括制御部60には、既述の撮影部23(高倍率顕微鏡23A及び低倍率顕微鏡23B)とX駆動部35と回転駆動部38とY駆動部46とZ駆動部48との他に、操作部62、記憶部64、及び表示部66等が接続されている。
【0048】
操作部62は、キーボード、マウス、操作パネル、及び操作ボタン等が用いられ、オペレータによる各種操作を受け付ける。位置合わせ作業に係る操作には、例えば、移動操作及び撮影開始操作などが含まれる。移動操作は、撮影部23のY軸方向の移動と、ワークテーブル31のX軸方向の移動とを行うための操作である。撮影開始操作は、高倍率顕微鏡23Aによる撮影と、低倍率顕微鏡23Bによる撮影とのいずれかを開始させるための選択操作である。
【0049】
記憶部64には、ダイシング装置10の制御プログラム(図示は省略)が記憶されている。また、記憶部64には、位置合わせ後の撮影部23及びワークテーブル31の位置座標(x,y)が記憶される。さらに記憶部64には、相対位置情報64aが記憶されている。
【0050】
相対位置情報64aは、低倍率顕微鏡23Bの撮影光軸OBに対する高倍率顕微鏡23Aの撮影光軸OAの相対位置を示す情報(例えば撮影光軸OA,OB間の位置ずれ量及び位置ずれ方向)である。この相対位置情報64aは、詳しくは後述するが、低倍率顕微鏡23Bの撮影光軸OBと、ワークテーブル31の回転軸Cとの位置合わせ作業を行う場合に用いられる。
【0051】
なお、相対位置情報64aは、例えば、ワークテーブル31に保持されているワークW内の所定の基準パターン(不図示)を高倍率顕微鏡23A及び低倍率顕微鏡23Bでそれぞれ認識(撮影)して、各々の認識時における撮影部23及びワークテーブル31の位置座標(x,y)を検出した結果から求められる。また、詳しくは後述する方法により、撮影光軸OA及び回転軸Cの位置合わせと、撮影光軸OB及び回転軸Cの位置合わせとをそれぞれ行い、各位置合わせ時における撮影部23及びワークテーブル31の位置座標(x,y)を検出した結果から相対位置情報64aが求められる。この場合には、ワークテーブル31上にワークWを配置することなく、相対位置情報64aが求められる。
【0052】
表示部66は、例えば液晶ディスプレイ等の公知の各種モニタが用いられる。この表示部66は、位置合わせ作業時には、統括制御部60の制御の下、オペレータによる位置合わせ作業を補助するための補助画面68の表示を行う。
【0053】
統括制御部60は、記憶部64に記憶されている不図示の制御プログラムを実行することにより、位置合わせ作業時には撮影制御部70、表示制御部72、回転制御部74、及び移動制御部76として機能する。以下、撮影光軸OAと回転軸Cとの位置合わせ作業における各部の動作ついて最初に説明を行う。
【0054】
撮影制御部70は、高倍率顕微鏡23A及び低倍率顕微鏡23Bによる撮影を制御する。撮影制御部70は、位置合わせ作業時においては、操作部62での撮影開始操作に応じて高倍率顕微鏡23Aを制御して、高倍率顕微鏡23Aによるワークテーブル31のワーク保持面31aの動画撮影を実行させる。これにより、高倍率顕微鏡23Aから統括制御部60(後述の表示制御部72)に向けてワーク保持面31aの動画像80の画像データが出力される。なお、本発明の動画撮影には、連続撮影及び間欠撮影(インターバル撮影)等の所定時間間隔ごとの撮影が含まれる。
【0055】
表示制御部72は、表示部66の画像表示を制御する。この表示制御部72は、位置合わせ作業時においては、高倍率顕微鏡23Aから入力される動画像80の画像データに基づき、オペレータによる位置合わせ作業を補助するための補助画面68を生成して、この補助画面68を表示部66に表示させる。
【0056】
図5は、表示部66に表示される補助画面68の一例を示した説明図である。
図5に示すように、補助画面68は、ワーク保持面31aの動画像80と、電子ラインで描画された第1指標84及び第2指標86と、を含む。
【0057】
第1指標84は、高倍率顕微鏡23Aの撮影光軸OA(低倍率顕微鏡23Bの撮影光軸OBも同様)を中心とする複数の円周に沿って配置されたマーク(換言すると複数の円周を示す形状を有するマーク)である。より具体的には、第1指標84は、撮影光軸OAを中心とする同心円状のマークである。なお、同心円の数は
図5に示した4つに限定されるものではなく適宜増減してよい。
【0058】
ここで、高倍率顕微鏡23Aの撮像素子(不図示)の各画素の中で撮影光軸OAと一致する特定画素は既知であるため、表示制御部72は、動画像80内で撮影光軸OAに対応する対応位置を容易に判別することができる。このため、表示制御部72は、表示部66に表示される補助画面68に対して第1指標84を重畳表示させることができる。
【0059】
第2指標86は、例えば略クロス状のマークであり、高倍率顕微鏡23Aの撮影光軸OA(低倍率顕微鏡23Bの撮影光軸OBも同様)を示す。既述の通り、表示制御部72は、動画像80内で撮影光軸OAに対応する対応位置を容易に判別することができるので、補助画面68に対して第2指標86を重畳表示させることができる。
【0060】
このように表示制御部72は、高倍率顕微鏡23Aから逐次入力される動画像80の画像データに基づき、動画像80に第1指標84及び第2指標86を重畳表示させた補助画面68を表示部66に表示させることができる。
【0061】
図6は、回転ユニット37の回転中に表示部66に表示される補助画面68の拡大図である。
図6及び既述の
図4に示すように、位置合わせ作業時に回転制御部74は、高倍率顕微鏡23Aによるワーク保持面31aの動画撮影に合わせて、回転駆動部38を駆動して回転ユニット37を連続回転させる。これにより、ワークテーブル31がその回転軸Cを中心として連続回転される。
【0062】
なお、回転制御部74は、ワークテーブル31(回転ユニット37)の回転範囲が一定範囲に規制されている場合、この一定範囲内でワークテーブル31を連続的に往復回転させる。
【0063】
既述の通り、ワーク保持面31aはポーラス状に形成されている。このため、表示部66に表示される補助画面68(動画像80)内において、ワーク保持面31aは、ランダムに配置された明部と暗部とを含むポーラスパターン像として表示される。従って、高倍率顕微鏡23Aによる動画撮影中にワークテーブル31を連続回転させると、補助画面68内のポーラスパターン像が回転軸Cを中心として回転することにより、ポーラスパターン像の明部が回転軸Cを中心とする円周状の軌跡を描く。これにより、オペレータは、ポーラスパターン像(明部)の軌跡が同心円状の第1指標84に沿っているか否かに基づき、撮影光軸OAが回転軸Cに位置合わせされているか否かを判断することができる。
【0064】
また、本実施形態では、第1指標84が同心円状に形成されているため、ワークテーブル31ごとにポーラスパターン像の軌跡の半径が変わる場合でも、この軌跡の近傍に第1指標84の同心円のいずれかが配置される。これにより、オペレータは、撮影光軸OAが回転軸Cに位置合わせされているか否かを確実に判断することができる。
【0065】
図7は、撮影光軸OAと回転軸Cとの位置合わせ後の補助画面68の拡大図である。
図7及び既述の
図4に示すように、位置合わせ作業時において移動制御部76は、オペレータによる操作部62での移動操作に応じて、X駆動部35を駆動してXキャリッジ36をX軸方向に移動させたり、Y駆動部46を駆動してYキャリッジ43をY軸方向に移動させたりする。これにより、オペレータによる操作部62への移動操作(手動操作)によって、高倍率顕微鏡23Aとワークテーブル31とをX軸方向及びY軸方向に相対移動させることができる。
【0066】
従って、位置合わせ作業時には、オペレータが補助画面68を参照しながらポーラスパターン像の軌跡が第1指標84に沿うように(重なるように)、操作部62にて移動操作を行う。これにより、移動制御部76が、X駆動部35及びY駆動部46を駆動して、高倍率顕微鏡23Aとワークテーブル31とをX軸方向及びY軸方向に相対移動させることで、ポーラスパターン像の軌跡を第1指標84に沿わせることができる。その結果、第1指標84の中心に相当する撮影光軸OAと、ポーラスパターン像の中心に相当する回転軸Cとが位置合わせされる。
【0067】
次に、低倍率顕微鏡23Bの撮影光軸OBとワークテーブル31の回転軸Cとの位置合わせを行う場合について説明する。既述の
図5から
図7では、ワークテーブル31の回転に応じて補助画面68内のポーラスパターン像の軌跡が円周を描いているが、撮影光軸OAと回転軸Cとの間の距離が大きくなると、補助画面68内(高倍率顕微鏡23Aの視野内)でのポーラスパターン像の軌跡が直線に近似されてしまう。この場合には、ポーラスパターン像の軌跡が第1指標84に沿うように高倍率顕微鏡23Aとワークテーブル31とを相対移動させることが困難になるので、撮影光軸OAと回転軸Cとを位置合わせすることができない。
【0068】
そこで、撮影光軸OAと回転軸Cとの間の距離が大きくなる場合には、最初に、低倍率顕微鏡23Bの撮影光軸OBとワークテーブル31の回転軸Cとの位置合わせを行い(概略調整)、次いで、高倍率顕微鏡23Aの撮影光軸OAとワークテーブル31の回転軸Cとの位置合わせを行う(詳細調整)。
【0069】
低倍率顕微鏡23Bの撮影光軸OBとワークテーブル31の回転軸Cとの位置合わせを行う場合、オペレータは、低倍率顕微鏡23B(撮影光軸OB)及びワークテーブル31の双方がそれぞれ回転中心G(
図3参照)の近傍まで移動するように、操作部62にて移動操作を行う。これにより、移動制御部76がX駆動部35及びY駆動部46をそれぞれ駆動して、低倍率顕微鏡23B及びワークテーブル31の双方をそれぞれ回転中心Gの近傍まで移動させる。また、オペレータは、低倍率顕微鏡23Bよる撮影を開始する撮影開始操作を操作部62にて行う。
【0070】
この撮影開始操作に応じて、撮影制御部70は、低倍率顕微鏡23Bを制御して、低倍率顕微鏡23Bによるワーク保持面31aの動画撮影を実行させる。これにより、低倍率顕微鏡23Bから表示制御部72へ動画像80の画像データが出力される。表示制御部72は、低倍率顕微鏡23Bから入力される動画像80の画像データに基づき、既述の
図5等に示した補助画面68を生成して、この補助画面68を表示部66に表示させる。
【0071】
以下、高倍率顕微鏡23Aによる撮影時と同様に、オペレータが補助画面68を参照しながら操作部62にて移動操作を行うことで、ポーラスパターン像の軌跡が第1指標84に沿うように低倍率顕微鏡23Bとワークテーブル31とを相対移動させる。これにより、低倍率顕微鏡23Bの撮影光軸OBと、ワークテーブル31の回転軸Cとが位置合わせされる。
【0072】
移動制御部76は、例えば操作部62にて低倍率顕微鏡23Bの撮影開始操作が入力された場合、或いは撮影光軸OBと回転軸Cとの位置合わせ作業の完了操作が入力された場合、記憶部64から既述の相対位置情報64a(
図4参照)を取得する。低倍率顕微鏡23Bの撮影光軸OBに対する高倍率顕微鏡23Aの撮影光軸OAの位置関係は一定であるので、移動制御部76は、相対位置情報64aに基づき、撮影光軸OBに対する撮影光軸OAの位置ずれ量及び位置ずれ方向を判別することができる。
【0073】
そして、移動制御部76は、相対位置情報64aに基づき、撮影光軸OBと回転軸Cとの位置合わせ作業の完了後にX駆動部35及びY駆動部46を駆動して、高倍率顕微鏡23Aとワークテーブル31とをX軸方向及びY軸方向に相対移動させる。これにより、高倍率顕微鏡23Aの撮影光軸OAが、回転軸Cに対して位置合わせされた低倍率顕微鏡23Bの撮影光軸OBの位置まで移動される。
【0074】
なお、撮影光軸OAの移動を自動で行う代わりに、この移動を、オペレータによる操作部62への移動操作(手動操作)により行ってもよい。この場合、表示制御部72は、記憶部64から相対位置情報64aを取得して、この相対位置情報64a(撮影光軸OBに対する撮影光軸OAの位置ずれ量及び位置ずれ方向)を表示部66に表示させる。これにより、オペレータは、表示部66に表示される相対位置情報64aを参照しながら操作部62にて移動操作を行うことにより、高倍率顕微鏡23Aの撮影光軸OAを、回転軸Cに対して位置合わせされた低倍率顕微鏡23Bの撮影光軸OBの位置まで移動させることができる。
【0075】
この移動完了後、既述の高倍率顕微鏡23Aによる動画撮影と、補助画面68の表示と、ワークテーブル31の回転とが繰り返し実行される。以下同様に、オペレータによる位置合わせ操作によって、高倍率顕微鏡23Aの撮影光軸OAと、ワークテーブル31の回転軸Cとが位置合わせされる。
【0076】
[ダイシング装置の作用]
図8は、ダイシング装置10における高倍率顕微鏡23Aの撮影光軸OAとワークテーブル31の回転軸Cとの位置合わせ作業の流れを示すフローチャートである。
図8に示すように、オペレータは、撮影部23及びワークテーブル31の少なくとも一方の交換時、或いは定期的なタイミングにおいて位置合わせ作業を開始する。
【0077】
最初にオペレータは、高倍率顕微鏡23A及び低倍率顕微鏡23Bのいずれか一方と、ワークテーブル31とがそれぞれ回転中心Gの近傍まで移動するように、操作部62にて移動操作を行う(ステップS1)。なお、ここでは高倍率顕微鏡23Aを回転中心Gの近傍まで移動させるものとする。
【0078】
そして、移動制御部76が上述の移動操作に応じて、X駆動部35及びY駆動部46をそれぞれ駆動して、高倍率顕微鏡23Aとワークテーブル31とをそれぞれ回転中心Gの近傍まで移動させる。これにより、高倍率顕微鏡23Aの撮影範囲(視野範囲)内に、ワーク保持面31a(回転軸C)が移動される。
【0079】
次いで、オペレータが操作部62にて高倍率顕微鏡23Aの撮影開始操作を行う(ステップS2、本発明の選択ステップに相当)。この撮影開始操作を受けて撮影制御部70は、高倍率顕微鏡23Aによるワーク保持面31aの動画撮影を開始させる(ステップS3、本発明の撮影制御ステップに相当)。これにより、高倍率顕微鏡23Aから表示制御部72へワーク保持面31aの動画像80の画像データが出力される。
【0080】
また、撮影開始操作を受けて、回転制御部74は、回転駆動部38を駆動して回転ユニット37を連続回転させる(ステップS4、本発明の回転ステップに相当)。これにより、高倍率顕微鏡23Aによるワーク保持面31aの動画撮影に合わせて、ワークテーブル31が回転軸Cを中心として連続回転される。
【0081】
高倍率顕微鏡23Aから動画像80の画像データの入力を受けた表示制御部72は、この動画像80の画像データに基づき、既述の
図5等に示したような補助画面68を生成し、この補助画面68を表示部66に表示させる。これにより、表示部66において、回転軸Cを中心として回転するワーク保持面31aの動画像80が表示されると共に(ステップS5、本発明の表示ステップに相当)、この動画像80に対して第1指標84及び第2指標86が重畳表示される(ステップS6、本発明の重畳表示制御ステップに相当)。なお、ステップS3からステップS6までが本発明の補助方法に相当する。
【0082】
オペレータは、表示部66に表示された補助画面68を参照しながら、ポーラスパターン像の軌跡が第1指標84に沿うように(重なるように)、操作部62にて移動操作を行う。そして、この移動操作に応じて移動制御部76が、X駆動部35及びY駆動部46を駆動して、高倍率顕微鏡23Aとワークテーブル31とをX軸方向及びY軸方向に相対移動させる。これにより、ポーラスパターン像の軌跡が第1指標84に沿うように高倍率顕微鏡23Aとワークテーブル31とが位置調整される。その結果、撮影光軸OAと回転軸Cとが位置合わせされる(ステップS7)。
【0083】
このように本実施形態では、オペレータが補助画面68を参照しながらポーラスパターン像の軌跡が第1指標84に沿うように操作部62にて移動操作を行うだけで、撮影光軸OAと回転軸Cとが位置合わせされる。その結果、既述の
図12に示したように、オペレータの記憶を頼りとした位置合わせを行う必要が無くなるので、位置合わせに要する時間を短くし、且つ位置合わせを高精度に行うことができる。また、仮にワーク保持面31a内の回転軸Cに対応する位置がポーラスの空孔に一致したとしても、本実施形態ではポーラスパターン像の軌跡及び第1指標84を目印として位置合わせを行うため、位置合わせを高精度に行うことができる。
【0084】
また、本実施形態では、既述の
図13に示したような基準パターン114の検出を行うことなく、撮影光軸OAと回転軸Cとの位置合わせを行うことができる。既述の通り、基準パターン114を検出する方法では、基準パターン114を小さく形成したり、照明との位置関係が変化したりする等の理由で高精度な位置合わせが困難となる。これに対して、本実施形態では、補助画面68内のポーラスパターン像の軌跡と第1指標84とを目印にすることにより、位置合わせを高精度に行うことができる。
【0085】
さらに、本実施形態では、補助画面68内の動画像80に第2指標86を重畳表示させているので、オペレータは、ワークテーブル31の回転に応じて補助画面68(動画像80)内で回転するワーク保持面31aの像の中心位置(回転軸Cの位置)と、第2指標86とを目印として、撮影光軸OAと回転軸Cとの位置合わせを行うこともできる。その結果、位置合わせをより高精度に行うことができる。
【0086】
一方、既述のステップS1において低倍率顕微鏡23Bが回転中心Gの近傍まで移動され、且つ既述のステップS2からステップS7を経て低倍率顕微鏡23Bの撮影光軸OBとワークテーブル31の回転軸Cとの位置合わせが完了した場合(ステップS8でNO)、オペレータは操作部62にて位置合わせの完了操作を行う(ステップS9)。
【0087】
この完了操作を受けて移動制御部76は、記憶部64から相対位置情報64aを取得する(ステップS10、本発明の情報取得ステップに相当)。なお、移動制御部76による相対位置情報64aの取得は、低倍率顕微鏡23Bの撮影開始操作に応じて実行してもよい。そして、この相対位置情報64aに基づき、移動制御部76による制御の下、或いはオペレータによる操作部62での移動操作に応じて、X駆動部35及びY駆動部46が駆動されることにより、高倍率顕微鏡23Aとワークテーブル31とがX軸方向及びY軸方向に相対移動される。これにより、高倍率顕微鏡23Aの撮影光軸OAが、回転軸Cに対して位置合わせされた低倍率顕微鏡23Bの撮影光軸OBの位置、すなわち回転軸Cの近傍位置まで移動される(ステップS11、本発明の移動ステップに相当)。
【0088】
そして、撮影光軸OAの移動完了後、既述の高倍率顕微鏡23Aの撮影開始操作(ステップS2)と、高倍率顕微鏡23Aによる動画撮影(ステップS3)と、ワークテーブル31の回転(ステップS4)と、補助画面68の表示(ステップS5,S6)とが繰り返し実行される(ステップS12、本発明の繰り返し制御ステップに相当)。以下同様に、オペレータによる操作部62での移動操作によって、撮影光軸OAと回転軸Cとが位置合わせされる(ステップS13)。
【0089】
移動制御部76は、撮影光軸OAと回転軸Cとの位置合わせが完了すると(例えば操作部62にて位置合わせ作業の終了操作がなされると)、撮影光軸OA及び回転軸Cの位置座標(x、y)を記憶部64に記憶させる(ステップS14)。以上で撮影光軸OAと回転軸Cとの位置合わせ作業が完了する。
【0090】
[本実施形態の効果]
以上のように本実施形態では、表示部66に表示される補助画面68内のポーラスパターン像の軌跡と第1指標84とを目印として、オペレータが撮影光軸OA,OBと回転軸Cとの位置合わせ操作を行うことができるので、回転軸Cの位置をオペレータが記憶したり或いは回転軸Cの位置を機械的に演算したりすることなく、撮影光軸OA,OBと回転軸Cとの位置合わせを行うことができる。その結果、撮影光軸OA、OBと回転軸Cとの位置合わせを高精度に行うことができる。
【0091】
[第1指標及び第2指標の変形例]
図9は、変形例1の第1指標84Aを説明するための説明図である。
図10は、変形例2の第1指標84Bを説明するための説明図である。
図11は、変形例3の第1指標84Cを説明するための説明図である。
【0092】
上記実施形態では、第1指標84として同心円状のマークを例に挙げて説明したが、撮影光軸OA,OBを中心とする1又は複数の円周に沿って配置された形状(1又は複数の円周を示す形状)であれば特に限定されるものではない。例えば、
図9に示す第1指標84Aのような1つの円周を示すマークを用いたり、
図10に示す第1指標84Bのような破線状(点線、一点鎖線、又は二点鎖線などでも可)のマークを用いたり、
図11に示す第1指標84Cのようなドットパターン状のマークを用いたりしてもよい。また、図示は省略するが、撮影光軸OA,OBを中心とする1又は複数の円周に沿って配置された形状であれば、任意の線及び曲線等から構成される任意の形状のマークを用いてもよい。
【0093】
上記実施形態では、第2指標86として略クロス状のマークを例に挙げて説明したが、撮影光軸OA,OBを示すものであれば特にその形状は限定されるものではなく、例えば、点、複数の線分の交点、及び塗り分けられた領域の境などであってもよい。さらに、第1指標84と第2指標86とが一体化されていてもよい。
【0094】
[その他]
上記実施形態では、動画像80に対して第1指標84及び第2指標86を重畳表示させたものを補助画面68として用いているが、動画像80に対して第1指標84のみを重畳表示させたものを補助画面68として用いてもよい。なお、これとは逆に動画像80に対して第2指標86のみを重畳表示させたものを補助画面68として用いてもよい。この場合、オペレータは、補助画面68内で回転するワーク保持面31aの像の中心位置(回転軸Cの位置)と、第2指標86とを目印として、撮影光軸OAと回転軸Cとの位置合わせを行う。
【0095】
上記実施形態では、ワークテーブル31のワーク保持面31aがポーラス状に形成されているが、このワーク保持面31aに任意形状の基準パターン(不図示)或いはそれに類するもの(マーク、模様、及び部材等)が形成されている場合にはワーク保持面31aが鏡面状に形成されていてもよい。この場合にオペレータは、基準パターンの軌跡が第1指標84に沿うように操作部62にて移動操作を行う。
【0096】
上記実施形態では、撮影部23が高倍率顕微鏡23A及び低倍率顕微鏡23Bを有しているが、撮影部23が1つの顕微鏡(カメラ)又は撮影倍率の異なる3以上の顕微鏡(カメラ)を有する場合にも本発明を適用することができる。
【0097】
上記実施形態では、ダイシング装置10における撮影部23の撮影光軸OA,OBと、ワークテーブル31の回転軸Cとの位置合わせの補助を例に挙げて説明したが、ダイシング装置10以外の各種装置において各種撮影部の撮影光軸と各種テーブルの回転軸Cとの位置合わせを行う場合にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0098】
10…ダイシング装置,
23…撮影部,
23A…高倍率顕微鏡,
23B…低倍率顕微鏡,
31…ワークテーブル,
31a…ワーク保持面,
66…表示部,
68…補助画面,
70…撮影制御部,
72…表示制御部,
74…回転制御部,
76…移動制御部,
80…動画像,
84,84A~84C…第1指標,
86…第2指標