(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122370
(43)【公開日】2022-08-23
(54)【発明の名称】分析装置用部材
(51)【国際特許分類】
G01N 35/08 20060101AFI20220816BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
G01N35/08 A
G01N37/00 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021019552
(22)【出願日】2021-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000225359
【氏名又は名称】内山工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
(71)【出願人】
【識別番号】506087705
【氏名又は名称】学校法人産業医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 伸光
(72)【発明者】
【氏名】牧野 耕治
(72)【発明者】
【氏名】坂本 憲児
(72)【発明者】
【氏名】大野 宏毅
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058DA07
(57)【要約】
【課題】試験液を供給口に集め易い分析装置用部材を提供する。
【解決手段】試験液を分析する分析装置用部材1であって、上向きに開口し前記試験液が投入される投入開口部11aを有する有底凹状の液溜部11と、平面視において前記液溜部に対して交差する方向に延出して設けられた前記試験液が流通する流通流路20とを有する本体部10を備え、前記液溜部は、前記液溜部の底部11c側に前記流通流路に通じるように設けられ前記流通流路へ前記試験液を供給する供給口21を有するとともに、深さ方向に直交する前記投入開口部側の横断面積より深さ方向に直交する前記供給口側の横断面積が小さく形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験液を分析する分析装置用部材であって、
上向きに開口し前記試験液が投入される投入開口部を有する有底凹状の液溜部と、平面視において前記液溜部に対して交差する方向に延出して設けられた前記試験液が流通する流通流路とを有する本体部を備え、
前記液溜部は、前記液溜部の底部側に前記流通流路に通じるように設けられ前記流通流路へ前記試験液を供給する供給口を有するとともに、深さ方向に直交する前記投入開口部側の横断面積より深さ方向に直交する前記供給口側の横断面積が小さく形成されていることを特徴とする分析装置用部材。
【請求項2】
請求項1において、
前記液溜部は、前記投入開口部側に設けられる第1凹部と、前記供給口側に設けられるとともに前記第1凹部よりも容積が小さい第2凹部と、を有していることを特徴とする分析装置用部材。
【請求項3】
請求項2において、
前記第1凹部の底部は、前記供給口の上端部よりも高い位置に設けられていることを 特徴とする分析装置用部材。
【請求項4】
請求項2または請求項3において、
前記供給口は、前記第2凹部の側面に設けられ、
前記第1凹部の底面は、前記供給口に向って次第に傾斜する傾斜面を有していることを特徴とする分析装置用部材。
【請求項5】
請求項4において、
前記供給口は、その上端部が前記第1凹部の前記傾斜面における前記供給口に向う仮想延長線よりも上方に設けられていることを特徴とする分析装置用部材。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1項において、
前記流通流路は、断面積が毛細管現象を発生させる大きさに形成されたガラス管によって構成されていることを特徴とする分析装置用部材。
【請求項7】
請求項1~請求項6に記載のいずれか1項において、
前記液溜部は、前記流通流路の容積よりも大きく且つ、前記試験液分析中における前記試験液の液面高さが常に前記供給口の上端部より上の位置で推移する容積を有していることを特徴とする分析装置用部材。
【請求項8】
請求項2~請求項7に記載のいずれか1項において、
前記第2凹部における前記供給口の上端部より上側の容積は、前記流通流路における前記試験液の分析対象範囲の容積よりも大きいことを特徴とする分析装置用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験液の粘性等を分析する分析装置用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば液体の粘性を測定する分析装置用部材としては、下記特許文献1,2が挙げられる。
下記特許文献1には、基板に、液体を導入する導入口と、導入口と連通するインレットと、リザーバと連通する流路と、流路と連通するアウトレットが設けられたマイクロ流路チップが開示されている。また下記特許文献2には、流路に沿って複数の検出部が配置され、流路を流れる体液の粘性を測定する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-32233号公報
【特許文献2】特開2020-8342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような装置においては、試験液の量が微量であっても精度よく分析できるものが求められる。そこで特許文献1では、試験液を導入口となる第1室と、筒状領域と外周領域とを有する第2室とを備え、流路へ試験液を導入する前に毛細現象が発生する外周領域を通じさせ気泡の発生を防いでいる。そして、特許文献1に記載のマイクロ流路チップには、試験液が外周領域全体へ行き渡るような形状のインレットが望まれている。特許文献2は、有底で円筒形状の液溜部を備えたものが開示されているが、試験液をスムーズに流路へ供給するための構造としては十分ではない。
【0005】
本発明は、前記実情に鑑みなされたもので、試験液を供給口に集め易い分析装置用部材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明に係る分析装置用部材は、試験液を分析する分析装置用部材であって、上向きに開口し前記試験液が投入される投入開口部を有する有底凹状の液溜部と、平面視において前記液溜部に対して交差する方向に延出して設けられた前記試験液が流通する流通流路とを有する本体部を備え、前記液溜部は、前記液溜部の底部側に前記流通流路に通じるように設けられ前記流通流路へ前記試験液を供給する供給口を有するとともに、深さ方向に直交する前記投入開口部側の横断面積より深さ方向に直交する前記供給口側の横断面積が小さく形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る分析装置用部材は、上述のような構成としたことで、試験液を供給口に集め易い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る分析装置用部材の一例を模式的に示した概略斜視図である。
【
図2】同分析装置用部材が用いられる分析装置を説明するための図であり、当該分析装置のブロック図である。
【
図3】(a)は、同分析装置用部材の本体部の要部を模式的に示した拡大斜視図であり、(b)は
図1のX-X’線断面斜視図、(c)は
図1のY-Y’線断面図である。
【
図4】(a)、(b)は、それぞれ他の実施形態に係る分析装置用部材の一例を模式的に示した縦断面図であり、
図1のX-X’線断面図に相当する図である。
【
図5】(a)は、他の実施形態に係る分析装置用部材の本体部の要部を模式的に示した拡大斜視図、(b)は、
図1のY-Y’線に相当する(a)の概略的縦断面図、(c)は、(a)の分析装置用部材の変形例であり、
図1のX-X’線に相当する縦断面図である。
【
図6】(a)は、他の実施形態に係る分析装置用部材の本体部の要部を模式的に示した拡大斜視図、(b)は、
図1のY-Y’線に相当する(a)の概略的縦断面図である。
【
図7】(a)は、他の実施形態に係る分析装置用部材の本体部の要部を模式的に示した拡大斜視図、(b)は、
図1のY-Y’線に相当する(a)の概略的縦断面図である。
【
図8】(a)は、他の実施形態に係る分析装置用部材の本体部の要部を模式的に示した拡大斜視図、(b)は、
図1のY-Y’線に相当する(a)の概略的縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、一部の図では、他図に付している詳細な符号の一部を省略している。また
図3~
図8では基板30、台座部40等の図示を省略している。
【0010】
<第1実施形態>
本実施形態に係る分析装置用部材1は、試験液を分析する分析装置100に用いられる。分析装置用部材1は、上向きに開口し試験液が投入される投入開口部11aを有する有底凹状の液溜部11と、平面視において液溜部11に対して交差する方向に延出して設けられた試験液が流通する流通流路20とを有する本体部10を備える。液溜部11は、液溜部11の底部11c側に流通流路20に通じるように設けられ流通流路20へ試験液を供給する供給口21を有する。さらに液溜部11は、深さ方向に直交する投入開口部11a側の横断面積より深さ方向に直交する供給口21側の横断面積が小さく形成されている。以下、詳述する。
【0011】
まず
図1~
図3を参照しながら、第1実施形態に係る分析装置用部材を説明する。
ここに示す分析装置用部材1は、流通流路20を流動する試験液を分析する分析装置100に用いられる。分析装置100は、センサ部2と、回路部3と、演算部4と、表示部5と、分析装置用部材1とを備える。分析装置用部材1は、流通流路20を収容する本体部10と、光センサが取り付けられる基板30と、本体部10及び基板30が収容される台座部40とを備えている。この分析装置100は、毛細管現象の作用によって流通流路20内を流動する試験液の移動距離及び移動時間に基づいて回帰分析し、試験液の粘性を導くように構成されている。よって、ここに示す流通流路20は、毛細管現象を発生させるような小さな断面積の中空細長状に形成されている。センサ部2は、流通流路20の長手方向に沿って配された複数の光センサ(不図示)で構成されている。光センサは、発光素子及び受光素子を有し、基板30上に間隔を空けて取り付けられ、発光素子から流通流路20に対して光を照射し、受光素子で受光する光の強度の変化によって試験液の到達を検出する。回路部3は、センサ部2を駆動させるとともにセンサ部2で検出された信号を演算部4に伝達するため、送受信回路、増幅回路、駆動回路等を備えている。回路部3では、センサ部2から出力されるアナログ信号を増幅し、デジタル信号に変換して演算部4にデジタル信号を送信する機能部としての役割を担っている。演算部4は、回路部3から送信される情報に基づき、試験の粘性を分析するソフトウェアがインストールされたコンピュータによって構成されている。演算部4は、試験液の粘性を算出するために例えば、CPU、ROM、RAM等のハードウェアを備えており、試験液の粘性を算出するためのプログラムが記憶され実行できるように構成されている。表示部5は、演算部4での算出結果やセンサ部2の駆動状態等を表示するため、液晶ディスプレイ等で構成されている。
【0012】
図1及び
図3に示すように分析装置用部材1においては、略方形状の台座部40に形成された第1収容部41及び第2収容部42に、本体部10が嵌合されている。具体的には、台座部40の第1収容部41には、本体部10の一方端部10aが嵌合され、第2収容部42には、本体部10の他方端部10bが嵌合される。また、台座部40には、方形状の板体からなる基板30が収容される第3収容部43が設けられている。流通流路20は、開口断面積が毛細管現象を発生させる大きさに形成されたガラス管によって構成されている。これにより、液溜部11に貯留された試験液を、毛細管現象による力の作用によって円滑に流通流路20に浸入させることができ、試験液の測定効率を向上させることができる。そして、流通流路20はガラス管なので、毛細管現象を発生させるような小さな断面積の流路を製作し易い。また流通流路20を透明な素材で形成すれば、試験液の流動を上方から視認し易い。また、流通流路20を樹脂材から構成する場合に比べて流通流路20に対して照射された光が透過し易く、光を減衰及び散乱させることなく試験液に照射させることができる。流通流路20の一方端部20a側の開口部が、液溜部11の供給口21となっている。
【0013】
本体部10は、略長方形の平板体で樹脂材等からなり、台座部40に脱着自在に設けられている。本体部10の略中央部位には、流通流路20の長さ方向に沿って流通流路20の長さに応じて形成される空間部14が設けられている。そして、流通流路20は、第1収容空所部12、空間部14、第2収容空所部17内に収容されている。台座部40には、このように本体部10及び基板30が位置決めされた状態で配備されるので、分析装置100での分析精度の向上に寄与できる。
【0014】
図1及び
図3(a)に示すように本体部10は、液溜部11と、第1収容空所部12とを有している。液溜部11は本体部10の一方端部10aに設けられるとともに、平面視において真円形状に形成されている。液溜部11は、本体部10の一方端部10aにおいて、本体部10の幅方向略中央に設けられている。液溜部11には、上方に開口した投入開口部11aと、有底凹状とされ平坦面に形成された底部11cと、を有している。さらに、液溜部11は、投入開口部11a側に設けられる第1凹部11dと、供給口21側に設けられるとともに第1凹部11dよりも容積が小さい第2凹部11eと、を有している。第1凹部11d及び第2凹部11eは、平面視して略真円形状に形成され、第1凹部11dの第1収容部12側(下流側)の端縁11daと第2凹部11eの第1収容部12側(下流側)の端縁11eaとが深さ方向に重なるように形成されている。第1凹部11d及び第2凹部11eは、第1収容空所部12と連通している。第2凹部11eは、液溜部11の底部11cの外周縁から起立する側面11ebを有している。第1凹部11dは、投入開口部11aの外周縁に沿って下方に延びた側面11dbと、側面11dbから第2凹部11eの側面11ebの上端部との間に形成された底部11dcとを有している。
図3(c)に示すように、第1凹部11dの底部11dcは、供給口21に向って次第に傾斜する傾斜面に形成され、且つ供給口21の上端部21aよりも高い位置に設けられている。
【0015】
液溜部11の投入開口部11aが上向きに開口しているため、試験液を液溜部11に投入しやすくなる。また、液溜部11の供給口21側の横断面積が投入開口部11a側よりも小さく形成されているため、試験液を供給口21に集めやすくなっている。この投入開口部11aは、第1凹部11dの開口部でもある。平面視して第1凹部11dの面積が第2凹部11eの面積よりも大きく形成されているので、試験液をこぼすことなく液溜部11に投入しやすくなっている。なお、本実施形態において、第1凹部11dの横断面積は、側面11dbに交わる横断面においては一定であり、底部11dcに交わる横断面においては、底部11c側に向うにつれて小さくなる。また、第2凹部11eの横断面積は、深さ方向のどの箇所においても一定である。本実施形態では、第1凹部11dのうち、側面11dbで区画される箇所における径は一定であるとともに、底部11dcで区画される箇所における径は底部11c側に向うにつれて小さくなる。また、第2凹部11eは、深さ方向の全体において径が一定である。
【0016】
第1凹部11dの底部11dcは、供給口21に向かって次第に傾斜する傾斜面に形成されている。そのため、第1凹部11dに溜まった試験液が供給口21側に向かうように流れを制御することができる。したがって、より効率よく、試験液を供給口21側に集めることができ、その結果、分析するために必要な試験液の量を低減することができる。さらに、第1凹部11dの底部11dcは、供給口21の上端部21aよりも高い位置に設けられている。そのため、試験液が流通流路20内に供給される際に空気を含ませることなく、供給口21から流入させ易い。試験液に空気が含まれにくいため、流通流路20での試験液の分析精度が向上しやすくなる。
【0017】
そして、第2凹部11eは、第1凹部11dよりも容積が小さく形成されている。そのため、第2凹部11eに溜まる試験液がスムーズに供給口21を通じて流通流路20へ供給しやすい構造となる。
【0018】
液溜部11の投入開口部11aより分析対象となる試験液が投入され、液溜部11に試験液が貯留されるとともに液溜部11内には試験液の供給口21となる流通流路20の一方端部20aが臨んで配置される。
図3(a)に示す例では、流通流路20の一方端部20aが液溜部11に突出して配置されている。液溜部11の深さ寸法は、毛細管現象が発生し且つ流通流路20内へ試験液がスムーズに且つ空気を含むことなく供給できる寸法に形成されている。具体的には、液溜部11の深さ寸法は、流通流路20の径寸法よりも大きい深さ寸法に設定される。よって液溜部11に試験液が満充填された状態では、貯留された試験液の液面は流通流路20の内周面20cにおける上端部20cbより上方位置になるように貯留される。
【0019】
さらに、流通流路20の供給口21は、
図3(b)に示すように、その上端部21aが第1凹部11dの傾斜した底部11dcにおける供給口21に向かう二点鎖線の矢印で示した仮想延長線Aよりも上方に設けられている。これにより、第1凹部11dに留まろうとする試験液が円滑に供給口21側へ流れ、第2凹部11eに流入するようになる。
【0020】
第1収容空所部12は、液溜部11に隣接して設けられるとともに液溜部11に連通して形成されている。
図3に示すとおり、第1収容空所部12は流通流路20の一方端部20a側を固定した状態で保持し収容可能な形状及び寸法に形成されている。すなわち、第1収容空所部12は、流通流路20の形状や寸法に応じた形状や寸法で形成されている。第1収容空所部12は、上方が開口した開口部12aを有している。
【0021】
第2収容空所部17は、空間部14に隣接して設けられるとともに空間部14に連通して形成されている。
図1に示す通り、第2収容空所部17は流通流路20の他方端部20d側を固定した状態で保持し収容可能な形状及び寸法に形成されている。すなわち、第2収容空所部17は、流通流路20の形状や寸法に応じた形状や寸法で形成されている。流通流路20は、一方端部20a側が第1収容空所部12に保持され、他方端部20d側が第2収容空所部17に保持されることで、安定した状態で本体部10に保持される。
【0022】
<第1実施形態の変形例>
次に、
図4(a)を参照しながら、第1実施形態の変形例である分析装置用部材1’について説明する。なお、第1実施形態の分析装置用部材1と共通する部分の説明は省略する。
図4(a)に示すように、分析装置用部材1’の液溜部11は、流通流路20の容積よりも大きく且つ、試験液分析中における試験液の液面高さが常に供給口21の上端部21aより上の位置で推移する容積を有している。これにより、液溜部11に溜められた試験液に気泡を発生させることなくスムーズに流通流路20内へ供給することができる。
【0023】
液溜部11は、第1凹部11dと第2凹部11eとを有している。第1凹部11dの側面11dbは、第1凹部11dの底部11dcに向けて傾斜して形成されている。そして、第1凹部11dの底部11dcは、供給口21に向かって傾斜し、且つ供給口21の上端部21aよりも高い位置に設けられている。そして、第2凹部11eの側面11ebは、底部11cに向けて傾斜して形成されている。第1凹部11d、第2凹部11eは上述のように形成されているので、投入開口部11aに投入された試験液が第1凹部11dに溜まることなくスムーズに第2凹部11eを通じて供給口21に到達して流通流路20へ供給される。
【0024】
図4(a)に示すように、第1収容空所部12は、第1実施形態のものとは異なり上方が開口した開口部12aを有しておらず、貫通孔として形成されている。流通流路20は、この第1収容空所部12に差し込まれて固定され支持されている。そして、一方端部20a側の流通流路20の下方には、流量センサ2aが本体部10の凹所18に埋め込まれている。この流量センサ2aがセンサ部2として機能するため、分析装置用部材1’は、
図1に示すような基板30を有していてもよいが、基板30がなくても流量センサ2aによって試験液の特性を測定することができる。
【0025】
<第1実施形態の他の変形例>
次に、
図4(b)を参照しながら、第1実施形態の他の変形例である分析装置用部材1’’について説明する。なお、上記実施形態と共通する部分には、可能な限り同一の符号を付し、その構成及び効果の説明は省略し、主に異なる点を説明する。
図4(b)に示すように、分析装置用部材1’’は、第2凹部11eにおける供給口21の上端部21aより上側の容積は、流通流路20における試験液の分析対象範囲の容積よりも大きく形成されている。そのため、少なくとも第2凹部11eが充足されるように試験液が投入されれば、流通流路20の分析対象範囲には確実に試験液を充足することができる。なお、本実施形態における分析対象範囲とは、流量センサ2aの上に存在する流通流路20の領域のことを意味する。
【0026】
液溜部11は、第1凹部11dと第2凹部11eとを有している。
図4(b)に示す第1凹部11dは、
図1~
図3に示す第1実施形態及び
図4(a)に示すものとは異なり、第2凹部11eよりも容積が小さく形成されている。第1凹部11dの側面11dbは、第1凹部11dの底部11dcに向けて傾斜して形成されている。そして、第1凹部11dの底部11dcは、供給口21に向かって傾斜し、且つ供給口21の上端部21aよりも高い位置に設けられている。そして、第2凹部11eの側面11ebは、底部11cに向けて傾斜して形成されている。第1凹部11d及び第2凹部11eは上述のように形成されているので、投入開口部11aに投入された試験液が第1凹部11dに溜まることなくスムーズに第2凹部11eを通じて供給口21に到達して流通流路20へ供給される。
図4(b)に示す供給口21は、液溜部11内に流通流路20の一方端部20aが突出して配置されておらず、貫通孔として形成された第1収容空所部12内に収まっている。
図4(b)に示すように供給口21は、その先端面が第2凹部11eの側面11ebと略面一になるように配置されている。このようなものであっても、供給口21を通じて流通流路20内に試験液がスムーズに供給される。
【0027】
<第2実施形態>
次に
図5を参照しながら、第2実施形態に係る分析装置用部材1Aについて説明する。なお、上記実施形態と共通する部分には、可能な限り同一の符号を付し、その構成及び効果の説明は省略し、主に異なる点を説明する。
図5(a)に示す分析装置用部材1Aは、液溜部11が第1凹部11d及び第2凹部11eを有していない点で異なる。
図5(b)に示すように、液溜部11は、底部11cから上方へ次第に液溜部11の横断面積が大きくなるように傾斜したテーパ状の周壁部11bを有している。液溜部11は、投入開口部11a側から底部11eに向うにつれて径が小さくなるように形成されており、具体的には、すり鉢状の凹部として形成されている。第1凹部11d及び第2凹部11eを有していないこのような液溜部11であっても、投入開口部11a側の横断面積より供給口21側の横断面積のほうが小さく形成されているので、試験液を供給口21に集めやすくなっている。
【0028】
図5(a)(b)に示すように、流通流路20は、供給口21が液溜部11の底部11cの上に位置するように配置されているがこれに限定されることはない。たとえば、
図5(c)に示すように、流通流路20の内周面20cの下端部20caが、液溜部11の底部11cと略面一になるように本体部10の凹所18に沿って流通流路20が配置されてもよい。凹所18は、液溜部11の底部11cの他方端部側の一部から第2収容空所部17まで延びて形成されている。そのため、流通流路20の一方端部20aの一部が、凹所18の本体部10の長手方向の一方端部18aに当接するように流通流路20を配置すれば、容易に流通流路20の位置決めができる。また、流通流路20が凹所18内に配置されれば、流通流路20の内周面20cの下端部20caが、液溜部11の底部11cと略面一になるので、試験液が少ない投入量で流通流路20内に供給される。
【0029】
<第3実施形態>
次に
図6を参照しながら、第3実施形態に係る分析装置用部材1Bについて説明する。なお、上記実施形態と共通する部分には、可能な限り同一の符号を付し、その構成及び効果の説明は省略し、主に異なる点を説明する。
図6(a)に示す分析装置用部材1Bは、液溜部11が上方から順に第1凹部11d、第2凹部11e、第3凹部11fを有している。第1凹部11dが最も横断面積が大きく、第3凹部11fが最も横断面積が小さい。第2凹部11eは、第1凹部11dと第3凹部11fの間の大きさの横断面積を有する。第1凹部11は、投入開口部11aに沿った側面11dbと底部11dcとを有する。第2凹部11eは、第1凹部11dの底部11dcの内周縁に沿った側面11ebと底部11ecとを有する。第2凹部11eの底部11ecは、供給口21の上端部21aよりも高い位置に設けられている。第3凹部11fは、液溜部11の底部11cと底部11cの外周縁に沿った側面11fbとを有する。
図6(b)に示すように、第1凹部11dの底部11dc及び第2凹部11eの底部11ecは、傾斜して形成されておらず、液溜部11の底部11c(第3凹部11fの底部)と略平行の平坦面に形成されている。液溜部11は、第1凹部11d、第2凹部11e、第3凹部11fにより階段状に形成され、第1凹部11dの底部11dc及び第2凹部11eの底部11ecの面積が小さく形成されている。そのため、第1凹部11dの底部11dc及び第2凹部11eの底部11ecが傾斜面でなくても、投入開口部11aから投入された試験液がスムーズに供給口21を通して流通流路20内に供給される。
【0030】
<第4実施形態>
次に
図7を参照しながら、第4実施形態に係る分析装置用部材1Cについて説明する。なお、上記実施形態と共通する部分には、可能な限り同一の符号を付し、その構成及び効果の説明は省略し、主に異なる点を説明する。
図7(a)(b)に示す分析装置用部材1Cは、液溜部11の第1凹部11dの底部11dcが、供給口21の上端部21aよりも低い位置に設けられている点で第1実施形態と異なっており、それ以外の部分は第1実施形態と略同様である。このような構成であっても、第1凹部11dの底部11dcは、供給口21側を向いた傾斜面になっているので、第1凹部11dに溜まろうとする試験液が円滑に供給口21側へ流れ、第2凹部11eに流入し、流通流路20内に試験液が供給される。
【0031】
<第5実施形態>
次に
図8を参照しながら、第5実施形態に係る分析装置用部材1Dについて説明する。なお、上記実施形態と共通する部分には、可能な限り同一の符号を付し、その構成及び効果の説明は省略し、主に異なる点を説明する。
図8(a)(b)に示す分析装置用部材1Dは、第1凹部11dの底部11dcが、液溜部11の底部11cに対して略平行の平坦面である点で第1実施形態のものと異なる。さらに、分析装置用部材1Dは、第1凹部11dの側面11dbが第1凹部11dの底部11dcに向けて傾斜した傾斜面である点、第2凹部11eの側面11ebが液溜部11の底部11cに向けて傾斜した傾斜面である点で第1実施形態のものと異なる。第1凹部11dの底部11dcは、供給口21の上端部21aよりも高い位置に形成されている。第1凹部11dの底部11dcが傾斜していなくても、試験液が底部11dcの内方の縁に到達すれば、第2凹部11eの側面11ebに沿って試験液が供給口21側に流れる。
【0032】
上記実施形態では、試験液の粘性を分析する分析装置100に用いられる分析装置用部材1,1’,1’’,1A,1B,1C,1Dについて説明したが、この構成に限定されず、粘性の他、種々特性を分析する装置に適用可能である。試験液は毛細管現象が生じる液体であれば血液や唾液等の体液の他、有機溶剤、薬品等の水溶液、水道水や河川の水、海水、飲料等であってもよい。また流通流路20はガラス管に限定されず、例えば樹脂管や金属管でもよい。さらに流通流路20は本体部10に流路を形成する構成であってもよい。また流通流路20の一方端部20aの液溜部11への突出程度は図例に限定されるものではない。また分析装置100の構成は一例であって、センサ部2の構成は光センサに限定されず、表示部5の構成は、プラズマディスプレイ、CRTディスプレイ等でもよい。また分析装置100は表示部5で分析結果を表示するものではなく、外部印刷する構成であってもよい。液溜部11は図例の円形状に限定されず、楕円形状、方形状、多角形状でもよく、周壁部11bの構成も図例に限定されない。また液溜部11の底部11cの形状は平坦面に限定されず、湾曲形状であってよい。さらに液溜部11の寸法やそれぞれの容積の関係は図例に限定されるものではない。台座部40の形状も図例に限定されず、金属や樹脂等製で形成されたものを適用することができる。また、上述の各実施形態は、第1収容空所部12が上方に開口した開口部12aを有していてもよく、開口部12aを有さず、第1収容空所部12が貫通孔として形成されてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1,1’,1’’,1A,1B,1C,1D 分析装置用部材
10 本体部
11 液溜部
11a 投入開口部
11c 底部
11d 第1凹部
11dc 底部
11e 第2凹部
11eb 側面
20 流通流路
21 供給口
21a 上端部
100 分析装置