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特開2022-122542マレイミド樹脂組成物、プリプレグ、樹脂フィルム、積層板、多層プリント配線板及び半導体パッケージ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122542
(43)【公開日】2022-08-23
(54)【発明の名称】マレイミド樹脂組成物、プリプレグ、樹脂フィルム、積層板、多層プリント配線板及び半導体パッケージ
(51)【国際特許分類】
   C08F 287/00 20060101AFI20220816BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20220816BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20220816BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
C08F287/00
C08F2/44 C
C08J5/24 CER
C08J5/24 CEZ
H05K1/03 610J
H05K1/03 610N
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021019847
(22)【出願日】2021-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 崇之
(72)【発明者】
【氏名】小竹 智彦
【テーマコード(参考)】
4F072
4J011
4J026
【Fターム(参考)】
4F072AA07
4F072AD02
4F072AD52
4F072AE02
4F072AE12
4F072AF06
4F072AF14
4F072AF15
4F072AF17
4F072AF23
4F072AF24
4F072AF28
4F072AF29
4F072AG03
4F072AG19
4F072AH44
4F072AJ22
4F072AK14
4F072AL13
4J011AA05
4J011PA13
4J011PA64
4J011PA65
4J011PA76
4J011PA79
4J011PA88
4J011PA95
4J011PA96
4J011PA99
4J011PB12
4J011PB22
4J011PC02
4J026AA11
4J026AA17
4J026AA67
4J026AA68
4J026AA69
4J026AB02
4J026AB07
4J026AB28
4J026AB44
4J026AC11
4J026AC16
4J026BA07
4J026BA38
4J026BA40
4J026BA43
4J026BB03
4J026CA07
4J026DB06
4J026DB15
4J026FA05
4J026GA07
(57)【要約】
【課題】10GHz帯以上の高周波数帯においてより一層の低誘電正接を達成し得るマレイミド樹脂組成物、該マレイミド樹脂組成物を用いたプリプレグ、樹脂フィルム、積層板、多層プリント配線板及び半導体パッケージを提供すること。
【解決手段】(A)N-置換マレイミド基を1個以上有するマレイミド化合物及びその誘導体からなる群から選択される1種以上と、(B)熱可塑性エラストマーと、(C)ジビニル化合物と、を含有してなる、マレイミド樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)N-置換マレイミド基を1個以上有するマレイミド化合物及びその誘導体からなる群から選択される1種以上と、
(B)熱可塑性エラストマーと、
(C)ジビニル化合物と、を含有してなる、マレイミド樹脂組成物。
【請求項2】
前記(C)成分の分子量が500以下である、請求項1に記載のマレイミド樹脂組成物。
【請求項3】
前記(C)成分が、芳香族環又は珪素原子を有する、請求項1又は2に記載のマレイミド樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B)成分が、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アクリル系エラストマー、シリコーン系エラストマー及びこれらの誘導体からなる群から選択される1種以上を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のマレイミド樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のマレイミド樹脂組成物を含有してなるプリプレグ。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載のマレイミド樹脂組成物を含有してなる樹脂フィルム。
【請求項7】
請求項5に記載のプリプレグ又は請求項6に記載の樹脂フィルムを含有してなる積層板。
【請求項8】
請求項7に記載の積層板を含有してなる多層プリント配線板。
【請求項9】
請求項8に記載の多層プリント配線板と、半導体素子とを含有する、半導体パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マレイミド樹脂組成物、プリプレグ、樹脂フィルム、積層板、多層プリント配線板及び半導体パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話に代表される移動体通信機器、その基地局装置、サーバー、ルーター等のネットワークインフラ機器、大型コンピュータなどでは、使用する信号の高速化及び大容量化が年々進んでいる。これに伴い、これらの電子機器に搭載されるプリント配線板には高周波化対応が必要となり、伝送損失の低減を可能とする高周波数帯における誘電特性に優れる、つまり比誘電率及び誘電正接の小さい基板材料が求められている。近年、このような高周波信号を扱うアプリケーションとして、上述した電子機器のほかに、自動車及び交通システム関連等のITS分野並びに室内の近距離通信分野でも高周波無線信号を扱う新規システムの実用化又は実用計画が進んでいる。今後は、これらの機器に搭載するプリント配線板に対しても、低伝送損失基板材料がさらに要求されると予想される。
【0003】
従来、低伝送損失が要求されるプリント配線板には、高周波数帯における誘電特性に優れる熱可塑性ポリマーが使用されてきた。熱可塑性ポリマーが配合されたマレイミド樹脂組成物としては、例えば、N-置換マレイミド基を少なくとも2個有するマレイミド化合物及びその誘導体からなる群から選択される1種以上(A)と、ポリフェニレンエーテル及びその誘導体からなる群から選択される1種以上(B)と、スチレン系化合物由来の構造単位、無水マレイン酸由来の構造単位及びN-置換マレイミド由来の構造単位を有する共重合体(C)と、を含有する樹脂組成物等が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-169276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、基板材料は、6GHzを超える周波数帯の電波が使用される第五世代移動通信システム(通称;5G)アンテナ及び30~300GHzの周波数帯の電波が使用されるミリ波レーダーへの適用が要求されている。そのためには、10GHz帯以上における誘電特性がより一層改善された樹脂組成物の開発が必要である。ここで、本発明者等の検討によると、特許文献1に記載の樹脂組成物には誘電正接(Df)の点でさらなる改善の余地があることが判明した。
【0006】
本開示は、このような現状に鑑み、10GHz帯以上の高周波数帯においてより一層の低誘電正接を達成し得るマレイミド樹脂組成物、該マレイミド樹脂組成物を用いたプリプレグ、樹脂フィルム、積層板、多層プリント配線板及び半導体パッケージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は上記目的を達成すべく検討を進めた結果、本実施形態により当該目的を達成できることを見出した。
本実施形態は、下記[1]~[9]を含む。
[1](A)N-置換マレイミド基を1個以上有するマレイミド化合物及びその誘導体からなる群から選択される1種以上と、
(B)熱可塑性エラストマーと、
(C)ジビニル化合物と、を含有してなる、マレイミド樹脂組成物。
[2]前記(C)成分の分子量が500以下である、上記[1]に記載のマレイミド樹脂組成物。
[3]前記(C)成分が、芳香族環又は珪素原子を有する、上記[1]又は[2]に記載のマレイミド樹脂組成物。
[4]前記(B)成分が、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アクリル系エラストマー、シリコーン系エラストマー及びこれらの誘導体からなる群から選択される1種以上を含む、上記[1]~[3]のいずれかに記載のマレイミド樹脂組成物。
[5]上記[1]~[4]のいずれかに記載のマレイミド樹脂組成物を含有してなるプリプレグ。
[6]上記[1]~[4]のいずれかに記載のマレイミド樹脂組成物を含有してなる樹脂フィルム。
[7]上記[5]に記載のプリプレグ又は上記[6]に記載の樹脂フィルムを含有してなる積層板。
[8]上記[7]に記載の積層板を含有してなる多層プリント配線板。
[9]上記[8]に記載の多層プリント配線板と、半導体素子とを含有する、半導体パッケージ。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、10GHz帯以上の高周波数帯においてより一層の低誘電正接を達成し得るマレイミド樹脂組成物、該マレイミド樹脂組成物を用いたプリプレグ、樹脂フィルム、積層板、多層プリント配線板及び半導体パッケージを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。また、数値範囲の下限値及び上限値は、それぞれ他の数値範囲の下限値又は上限値と任意に組み合わせられる。数値範囲「AA~BB」という表記においては、両端の数値AA及びBBがそれぞれ下限値及び上限値として数値範囲に含まれる。
本明細書において、例えば、「10以上」という記載は、10及び10を超える数値を意味し、数値が異なる場合もこれに準ずる。また、例えば、「10以下」という記載は、10及び10未満の数値を意味し、数値が異なる場合もこれに準ずる。
また、本明細書に例示する各成分及び材料は、特に断らない限り、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本明細書において、組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0010】
本明細書において、「環形成炭素数」とは、環を形成するのに必要な炭素原子の数であり、環が有する置換基の炭素原子の数は含まれない。例えば、シクロヘキサン骨格及びメチルシクロヘキサン骨格のいずれも、環形成炭素数は6である。
本明細書において、「樹脂成分」とは、樹脂組成物を構成する固形分のうち、後述する無機充填材等の無機化合物並びに難燃剤及び難燃助剤を除く、すべての成分と定義する。
本明細書において、「固形分」とは、水分、後述する溶媒等の揮発する物質以外の樹脂組成物中の成分のことをいう。すなわち、固形分は、25℃付近で液状、水飴状又はワックス状のものも含み、必ずしも固体であることを意味するものではない。
本明細書における記載事項を任意に組み合わせた態様も本開示及び本実施形態に含まれる。
【0011】
[マレイミド樹脂組成物]
本実施形態のマレイミド樹脂組成物[以下、単に樹脂組成物と略称することがある。]は、以下のとおりである。
(A)N-置換マレイミド基を1個以上有するマレイミド化合物及びその誘導体からなる群から選択される1種以上[以下、単にマレイミド化合物(A)又は(A)成分と略称することがある。]と、
(B)熱可塑性エラストマー[以下、熱可塑性エラストマー(B)又は(B)成分と略称することがある。]と、
(C)ジビニル化合物[以下、ジビニル化合物(C)又は(C)成分と略称することがある。]と、を含有してなる、マレイミド樹脂組成物。
【0012】
本実施形態のマレイミド樹脂組成物が、10GHz帯以上の高周波数帯においてより一層の低誘電正接を達成し得る理由については次のように推測される。
まず、ジビニル化合物(C)を含有させる分、マレイミド化合物(A)の含有量を低減できるため、マレイミド化合物(A)が持つ極性基の影響による誘電正接(Df)の増加を抑制することができる。さらに、ジビニル化合物(C)が2官能性であるがゆえに架橋密度が高まり過ぎないことで、架橋反応後の分子の自由体積が大きく維持されて誘電正接(Df)が小さくなるものと考える。
以下、本実施形態のマレイミド樹脂組成物が含有し得る各成分について順に詳述する。
【0013】
<マレイミド化合物(A)>
マレイミド化合物(A)は、N-置換マレイミド基を1個以上有するマレイミド化合物及びその誘導体からなる群から選択される1種以上である。
上記「N-置換マレイミド基を1個以上有するマレイミド化合物の誘導体」としては、上記N-置換マレイミド基を1個以上有するマレイミド化合物と、後述するジアミン化合物(a2)等のアミン化合物との付加反応物などが挙げられる。
(A)成分は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0014】
マレイミド化合物(A)としては、他の樹脂との相容性、導体との接着性及び誘電特性の観点から、
N-置換マレイミド基を1個以上有するマレイミド化合物、及び
マレイミド化合物由来の構造単位とジアミン化合物由来の構造単位とを有するアミノマレイミド化合物、
からなる群から選択される1種以上が好ましい。
上記N-置換マレイミド基を1個以上有するマレイミド化合物としては、N-フェニルマレイミド、N-(2-メチルフェニル)マレイミド、N-(4-メチルフェニル)マレイミド、N-(2,6-ジメチルフェニル)マレイミド、N-(2,6-ジエチルフェニル)マレイミド、N-(2-メトキシフェニル)マレイミド、N-ベンジルマレイミド、N-ドデシルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド及びN-シクロヘキシルマレイミド等の分子内に1つのN-置換マレイミド基を有する芳香族マレイミド化合物;ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(4-マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4-マレイミドフェニル)スルホン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン等の分子内に2つのN-置換マレイミド基を有する芳香族ビスマレイミド化合物;ポリフェニルメタンマレイミド、ビフェニルアラルキル型マレイミド等の分子内に3つ以上のN-置換マレイミド基を有する芳香族ポリマレイミド化合物;1,6-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン、ピロリロン酸バインダ型長鎖アルキルビスマレイミド等の脂肪族マレイミド化合物などが挙げられる。
上記アミノマレイミド化合物が有するマレイミド化合物由来の構造単位としては、上記N-置換マレイミド基を1個以上有するマレイミド化合物由来の構造単位が挙げられる。
上記アミノマレイミド化合物が有するジアミン化合物由来の構造単位は、後述のジアミン化合物(a2)由来の構造単位と同じである。
【0015】
なお、本実施態様では、誘電特性及び導体接着性の観点から、マレイミド化合物(A)としては、下記(i)及び(ii)からなる群から選択される1種以上の化合物であることがより好ましいが、特にこれらに限定されるものではない。
(i)分子構造中に芳香族環と脂肪族環との縮合環を含み、N-置換マレイミド基を2個以上有するマレイミド化合物(a1)[以下、「マレイミド化合物(a1)」又は「(a1)成分」と称する場合がある。]
(ii)マレイミド化合物(a1)由来の構造単位とジアミン化合物(a2)由来の構造単位とを有するアミノマレイミド化合物[以下、「アミノマレイミド化合物(A1)」又は「(A1)成分」と称する場合がある。]
以下、上記(i)及び(ii)からなる群から選択される1種以上の化合物について詳述する。
【0016】
(マレイミド化合物(a1))
(a1)成分としては、誘電特性、導体接着性及び耐熱性の観点から、分子構造中に芳香族環と脂肪族環との縮合環を含み、芳香族環に直接結合するN-置換マレイミド基を2個以上有する芳香族マレイミド化合物が好ましく、分子構造中に芳香族環と脂肪族環との縮合環を含み、芳香族環に直接結合するN-置換マレイミド基を2個有する芳香族ビスマレイミド化合物がより好ましい。
【0017】
(a1)成分が含む縮合環は、誘電特性、導体接着性及び製造容易性の観点から、縮合二環式構造を有するものが好ましく、インダン環であることがより好ましい。
なお、本明細書中、インダン環とは芳香族6員環と飽和脂肪族5員環の縮合二環式構造を意味する。インダン環を形成する環形成炭素原子のうち少なくとも1個の炭素原子は、(a1)成分を構成する他の基に結合するための結合基を有する。該結合基を有する環形成炭素原子及びその他の環形成炭素原子は上記結合基以外に、結合基、置換基等を有していてもよく、有していなくてもよい。
(a1)成分において、インダン環は、下記一般式(a1-1)で表される2価の基として含まれることが好ましい。
【0018】
【化1】

(式中、Ra1は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルキルオキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数6~10のアリール基、炭素数6~10のアリールオキシ基、炭素数6~10のアリールチオ基、炭素数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基又はメルカプト基であり、n1は0~3の整数である。Ra2~Ra4は、各々独立に、炭素数1~10のアルキル基である。*は結合部位を表す。)
【0019】
上記一般式(a1-1)中のRa1で表される炭素数1~10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基等が挙げられる。これらのアルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状のいずれであってもよい。
a1で表される炭素数1~10のアルキルオキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基に含まれるアルキル基としては、上記炭素数1~10のアルキル基と同じものが挙げられる。
a1で表される炭素数6~10のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
a1で表される炭素数6~10のアリールオキシ基、炭素数6~10のアリールチオ基に含まれるアリール基としては、上記炭素数6~10のアリール基と同じものが挙げられる。
a1で表される炭素数3~10のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基等が挙げられる。
上記一般式(a1-1)中のn1が1~3である場合、Ra1は、溶媒溶解性及び反応性の観点から、炭素数1~4のアルキル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、炭素数6~10のアリール基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましい。
【0020】
a2~Ra4で表される炭素数1~10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基等が挙げられる。これらのアルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状のいずれであってもよい。これらの中でも、Ra2~Ra4は、炭素数1~4のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
上記一般式(a1-1)中のn1は、0~3の整数であり、n1が2又は3である場合、複数のRa1同士は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0021】
以上の中でも、上記一般式(a1-1)で表される2価の基は、製造容易性の観点から、n1が0であり、Ra2~Ra4がメチル基である、下記式(a1-1’)で表される2価の基が好ましく、下記式(a1-1’’)で表される2価の基及び下記式(a1-1’’’)で表される2価からなる群から選択される1種以上を含むことがより好ましい。
【0022】
【化2】

(式中、*は結合部位を表す。)
【0023】
上記一般式(a1-1)で表される2価の基を含む(a1)成分としては、誘電特性、導体接着性、耐熱性及び製造容易性の観点から、下記一般式(a1-2)で表されるものが好ましい。
【0024】
【化3】

(式中、Ra1~Ra4及びn1は、上記一般式(a1-1)中のものと同じである。Ra5は、各々独立に、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルキルオキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数6~10のアリール基、炭素数6~10のアリールオキシ基、炭素数6~10のアリールチオ基、炭素数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基又はメルカプト基であり、n2は0~4の整数であり、n3は、0.95~10.0の数である。)
【0025】
上記一般式(a1-2)中、複数のRa1同士、複数のn1同士、複数のRa5同士、複数のn2同士は、各々について、同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、n3が1を超える場合、複数のRa2同士、複数のRa3同士及び複数のRa4同士は、各々について、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0026】
上記一般式(a1-2)中のRa5が表す炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルキルオキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数6~10のアリール基、炭素数6~10のアリールオキシ基、炭素数6~10のアリールチオ基、炭素数3~10のシクロアルキル基についての説明は、上記Ra1が表す炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルキルオキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数6~10のアリール基、炭素数6~10のアリールオキシ基、炭素数6~10のアリールチオ基、炭素数3~10のシクロアルキル基についての説明と同じである。
これらの中でも、Ra5は、溶媒溶解性及び製造容易性の観点から、炭素数1~4のアルキル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、炭素数6~10のアリール基が好ましく、炭素数1~3のアルキル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
【0027】
上記一般式(a1-2)中のn2は、0~4の整数であり、他の樹脂との相容性、誘電特性、導体と接着性及び製造容易性の観点から、好ましくは1~3の整数、より好ましくは2又は3、さらに好ましくは2である。
なお、n2が1以上であることにより、ベンゼン環とN-置換マレイミド基とがねじれた配座を有するものになり、分子間のスタッキング抑制によって溶媒溶解性がより向上する傾向にある。分子間のスタッキングを抑制するという観点から、n2が1以上である場合、Ra5の置換位置は、N-置換マレイミド基に対してオルト位であることが好ましい。
上記一般式(a1-2)中のn3は、誘電特性、導体接着性、溶媒溶解性、ハンドリング性及び耐熱性の観点から、好ましくは0.98~8.0の数、より好ましくは1.0~7.0の数、さらに好ましくは1.1~6.0の数である。
【0028】
上記一般式(a1-2)で表される(a1)成分は、誘電特性、導体接着性、溶媒溶解性及び製造容易性の観点から、下記一般式(a1-3)で表されるものがより好ましい。
【0029】
【化4】

(式中、Ra1~Ra5、n1及びn3は、上記一般式(a1-2)中のものと同じである。)
【0030】
(a1)成分の数平均分子量は、特に限定されないが、他の樹脂との相容性、導体接着性及び耐熱性の観点から、好ましくは200~3,000、より好ましくは400~2,000、さらに好ましくは500~1,000である。なお、本明細書において、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定を行い、標準ポリスチレンを用いて作製した検量線により換算したものである。
【0031】
(a1)成分は、例えば、芳香族環と脂肪族環との縮合環を含む中間体アミン化合物[以下、単に「中間体アミン化合物」と略称することがある。]と無水マレイン酸とを反応[以下、「マレイミド化反応」と称する場合がある。]させる方法によって製造することができる。
【0032】
以下、芳香族環と脂肪族環との縮合環としてインダン環を含むマレイミド化合物を例に、(a1)成分の製造方法を説明する。
インダン環を含むマレイミド化合物の中間体アミン化合物は、例えば、下記一般式(a1-4)で表される化合物[以下、「化合物A」と称する場合がある。]と、下記一般式(a1-5)で表される化合物[以下、「化合物B」と称する場合がある。]とを、酸触媒存在下で反応[以下、「環化反応」と称する場合がある。]させることにより、下記一般式(a1-6)で表される化合物として得ることができる。
【0033】
【化5】

(式中、Ra1及びn1は、上記一般式(a1-1)中のものと同じである。Ra6は、各々独立に、上記式(a1-4-1)又は上記式(a1-4-2)で表される基であり、2つのRa6の少なくとも一方のRa6のオルト位が水素原子である。)
【0034】
【化6】

(式中、Ra5及びn2は、上記一般式(a1-2)中のものと同じである。但し、アミノ基のオルト位及びパラ位のうち、少なくとも1つは水素原子である。)
【0035】
【化7】
(式中、Ra1、Ra5、n1~n3は、上記一般式(a1-2)中のものと同じである。)
【0036】
化合物Aとしては、p-又はm-ジイソプロペニルベンゼン、p-又はm-ビス(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、1-(α-ヒドロキシイソプロピル)-3-イソプロペニルベンゼン、1-(α-ヒドロキシイソプロピル)-4-イソプロペニルベンゼン、これらの混合物、これらの化合物の核アルキル基置換体、これらの化合物の核ハロゲン置換体等が挙げられる。
上記核アルキル基置換体としては、ジイソプロペニルトルエン、ビス(α-ヒドロキシイソプロピル)トルエン等が挙げられる。
上記核ハロゲン置換体としては、クロロジイソプロペニルベンゼン、クロロビス(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン等が挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
化合物Bとしては、アニリン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン、ジイソプロピルアニリン、エチルメチルアニリン、シクロブチルアニリン、シクロペンチルアニリン、シクロヘキシルアニリン、クロロアニリン、ジクロロアニリン、トルイジン、キシリジン、フェニルアニリン、ニトロアニリン、アミノフェノール、シクロヘキシルアニリン、メトキシアニリン、エトキシアニリン、フェノキシアニリン、ナフトキシアニリン、アミノチオール、メチルチオアニリン、エチルチオアニリン、フェニルチオアニリン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
環化反応は、例えば、化合物A及び化合物Bを、両者のモル比(化合物B/化合物A)が、好ましくは0.1~2.0、より好ましくは0.15~1.5、さらに好ましくは0.2~1.0となる比率で仕込み、1段階目の反応を行う。
次いで、さらに追加する化合物Bを、先に加えた化合物Aに対するモル比(追加する化合物B/化合物A)で、好ましくは0.5~20、より好ましくは0.6~10、さらに好ましくは0.7~5となる比率で加え、2段階目の反応を行うことが好ましい。
【0039】
環化反応に用いる酸触媒としては、リン酸、塩酸、硫酸等の無機酸;シュウ酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、フルオロメタンスルホン酸等の有機酸;活性白土、酸性白土、シリカアルミナ、ゼオライト、強酸性イオン交換樹脂等の固体酸;ヘテロポリ塩酸などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
酸触媒の配合量は、反応速度及び反応均一性の観点から、最初に仕込む化合物A及び化合物Bの総量100質量部に対して、好ましくは5~40質量部、より好ましくは5~35質量部、さらに好ましくは5~30質量部である。
【0040】
環化反応の反応温度は、反応速度及び反応均一性の観点から、好ましくは100~300℃、より好ましくは130~250℃、さらに好ましくは150~230℃である。
環化反応の反応時間は、生産性及び十分に反応を進行させる観点から、好ましくは2~24時間、より好ましくは4~16時間、さらに好ましくは8~12時間である。
但し、これらの反応条件は、使用する原料の種類等に応じて適宜調整することができ、特に限定されない。
なお、環化反応の際、必要に応じて、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の溶媒を用いてもよい。また、環化反応の際、副生成物として水が生成する場合は、共沸脱水可能な溶媒を使用することによって、脱水反応を促進させてもよい。
【0041】
次に、上記で得られた中間体アミン化合物を、無水マレイン酸と有機溶媒中で反応させることによって、中間体アミン化合物が有するアミノ基をマレイミド基とするマレイミド化反応を行う。これによって(a1)成分を得ることができる。
マレイミド化反応における中間体アミン化合物の第1級アミノ基当量に対する無水マレイン酸の当量比(無水マレイン酸/第1級アミノ基)は、特に限定されないが、未反応の第1級アミノ基及び無水マレイン酸を低減する観点から、好ましくは1.0~1.5、より好ましくは1.05~1.3、さらに好ましくは1.1~1.2である。
マレイミド化反応における有機溶媒の使用量は、特に限定されないが、反応速度及び反応均一性の観点から、中間体アミン化合物と無水マレイン酸の総量100質量部に対して、好ましくは50~5,000質量部、より好ましくは70~2,000質量部、さらに好ましくは100~500質量部である。
【0042】
マレイミド化反応は、中間体アミン化合物と無水マレイン酸とを2段階で反応させることが好ましい。
1段階目の反応における反応温度は、好ましくは10~100℃、より好ましくは20~70℃、さらに好ましくは30~50℃である。
1段階目の反応における反応時間は、好ましくは0.5~12時間、より好ましくは0.7~8時間、さらに好ましくは1~4時間である。
2段階目の反応は、1段階目の反応終了後、トルエンスルホン酸等の触媒を加えてから実施することが好ましい。
2段階目の反応における反応温度は、好ましくは90~130℃、より好ましくは100~125℃、さらに好ましくは105~120℃である。
2段階目の反応における反応時間は、好ましくは2~24時間、より好ましくは4~10時間、さらに好ましくは6~10時間である。
但し、上記の反応条件は、使用する原料の種類等に応じて適宜調整することができ、特に限定されない。
反応後、必要に応じて、水洗等により未反応の原料、他の不純物等を除去してもよい。
【0043】
(アミノマレイミド化合物(A1))
アミノマレイミド化合物(A1)は、マレイミド化合物(a1)由来の構造単位とジアミン化合物(a2)由来の構造単位とを有するアミノマレイミド化合物である。(A1)成分はマレイミド化合物(a1)の誘導体に相当する。
(A1)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
〔マレイミド化合物(a1)由来の構造単位〕
(a1)成分由来の構造単位としては、例えば、(a1)成分が有するN-置換マレイミド基のうち、少なくとも1つのN-置換マレイミド基が、ジアミン化合物(a2)が有するアミノ基とマイケル付加反応してなる構造単位が挙げられる。
(A1)成分中に含まれる(a1)成分由来の構造単位は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0045】
アミノマレイミド化合物(A1)中における(a1)成分由来の構造単位の含有量は、特に限定されないが、好ましくは5~95質量%、より好ましくは30~93質量%、さらに好ましくは60~90質量%である。(A1)成分中における(a1)成分由来の構造単位の含有量が上記範囲内であると、誘電特性及びフィルムハンドリング性がより良好になる傾向にある。
【0046】
〔ジアミン化合物(a2)由来の構造単位〕
(a2)成分由来の構造単位としては、例えば、(a2)成分が有する2個のアミノ基のうち、一方又は両方のアミノ基が、マレイミド化合物(a1)が有するN-置換マレイミド基とマイケル付加反応してなる構造単位が挙げられる。
(A1)成分中に含まれる(a2)成分由来の構造単位は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0047】
(a2)成分が有するアミノ基は第1級アミノ基であることが好ましい。
第1級アミノ基を2個有するジアミン化合物由来の構造単位としては、例えば、下記一般式(a2-1)で表される基、下記一般式(a2-2)で表される基等が挙げられる。
【0048】
【化8】

(式中、Xa1は2価の有機基であり、*は他の構造への結合位置を示す。)
【0049】
上記一般式(a2-1)及び(a2-2)中のXa1は2価の有機基であり、(a2)成分から2個のアミノ基を除いた2価の基に相当する。
【0050】
上記一般式(a2-1)及び上記一般式(a2-2)中のXa1は、下記一般式(a2-3)で表される2価の基であることが好ましい。
【0051】
【化9】

(式中、Ra11及びRa12は、各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基、炭素数1~5のアルコキシ基、水酸基又はハロゲン原子である。Xa2は、炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、カルボニルオキシ基、ケト基、フルオレニレン基、単結合、又は下記一般式(a2-3-1)若しくは(a2-3-2)で表される2価の基である。p1及びp2は、各々独立に、0~4の整数である。*は結合部位を表す。)
【0052】
【化10】

(式中、Ra13及びRa14は、各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。Xa3は炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基、m-フェニレンジイソプロピリデン基、p-フェニレンジイソプロピリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、カルボニルオキシ基、ケト基又は単結合である。p3及びp4は、各々独立に、0~4の整数である。*は結合部位を表す。)
【0053】
【化11】

(式中、Ra15は、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。Xa4及びXa5は、各々独立に、炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、カルボニルオキシ基、ケト基又は単結合である。p5は0~4の整数である。*は結合部位を表す。)
【0054】
上記一般式(a2-3)、上記一般式(a2-3-1)及び上記一般式(a2-3-2)中のRa11、Ra12、Ra13、Ra14及びRa15が表す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。該脂肪族炭化水素基としては、炭素数1~3の脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数1~3のアルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基がさらに好ましい。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0055】
上記一般式(a2-3)中のXa2、上記一般式(a2-3-1)中のXa3並びに上記一般式(a2-3-2)中のXa4及びXa5が表す炭素数1~5のアルキレン基としては、メチレン基、1,2-ジメチレン基、1,3-トリメチレン基、1,4-テトラメチレン基、1,5-ペンタメチレン基等が挙げられる。該アルキレン基としては、炭素数1~3のアルキレン基が好ましく、炭素数1又は2のアルキレン基がより好ましく、メチレン基がさらに好ましい。
【0056】
上記一般式(a2-3)中のXa2、上記一般式(a2-3-1)中のXa3並びに上記一般式(a2-3-2)中のXa4及びXa5が表す炭素数2~5のアルキリデン基としては、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、イソブチリデン基、ペンチリデン基、イソペンチリデン基等が挙げられる。これらの中でも、炭素数2~4のアルキリデン基が好ましく、炭素数2又は3のアルキリデン基がより好ましく、イソプロピリデン基がさらに好ましい。
【0057】
上記一般式(a2-3)中のp1及びp2は、各々独立に、0~4の整数であり、入手容易性の観点から、いずれも、好ましくは0~3の整数、より好ましくは0~2の整数、さらに好ましくは0又は2である。
p1又はp2が2以上の整数である場合、複数のRa11同士又はRa12同士は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
上記一般式(a2-3-1)中のp3及びp4は、各々独立に、0~4の整数であり、入手容易性の観点から、いずれも、好ましくは0~2の整数、より好ましくは0又は1、さらに好ましくは0である。p3又はp4が2以上の整数である場合、複数のRa13同士又はRa14同士は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
上記一般式(a2-3-2)中のp5は、0~4の整数であり、入手容易性の観点から、好ましくは0~2の整数、より好ましくは0又は1、さらに好ましくは0である。p5が2以上の整数である場合、複数のRa15同士は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0058】
アミノマレイミド化合物(A1)中における(a2)成分由来の構造単位の含有量は、特に限定されないが、好ましくは5~95質量%、より好ましくは7~70質量%、さらに好ましくは10~40質量%である。(A1)成分中における(a2)成分由来の構造単位の含有量が上記範囲内であると、誘電特性、耐熱性、難燃性及びガラス転移温度がより良好になる傾向にある。
【0059】
(a2)成分としては、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチルジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルケトン、4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、1,3-ビス〔1-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1-メチルエチル〕ベンゼン、1,4-ビス〔1-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1-メチルエチル〕ベンゼン、4,4’-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4’-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、3,3’-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン等が挙げられる。
【0060】
これらの中でも、(a2)成分としては、有機溶媒への溶解性、マレイミド化合物(a1)との反応性及び耐熱性に優れるという観点から、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチルジフェニルメタン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、及び4,4’-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリンが好ましい。また、(a2)成分は、誘電特性及び低吸水性に優れるという観点からは、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタンが好ましい。また、(a2)成分は、導体との高接着性、伸び、破断強度等の機械特性に優れるという観点からは、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンが好ましい。さらに、(a2)成分は、有機溶媒への溶解性、合成時の反応性、耐熱性、導体との高接着性に優れることに加えて、誘電特性及び低吸湿性に優れるという観点からは、4,4’-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4’-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリンが好ましい。
【0061】
アミノマレイミド化合物(A1)中における、ジアミン化合物(a2)の-NH基由来の基(-NHも含む)の合計当量(Ta2)と、マレイミド化合物(a1)のN-置換マレイミド基由来の基(N-置換マレイミド基も含む)の合計当量(Ta1)との当量比(Ta2/Ta1)は、特に限定されないが、誘電特性、耐熱性、難燃性及びガラス転移温度の観点から、好ましくは0.05~10、より好ましくは0.5~7、さらに好ましくは1~5である。
【0062】
アミノマレイミド化合物(A1)の数平均分子量は、特に限定されないが、取り扱い性及び成形性の観点から、好ましくは400~10,000、より好ましくは500~5,000、さらに好ましくは600~2,000である。
【0063】
(アミノマレイミド化合物(A1)の製造方法)
(A1)成分は、例えば、マレイミド化合物(a1)とジアミン化合物(a2)とを有機溶媒中で反応させることで製造することができる。
マレイミド化合物(a1)とジアミン化合物(a2)とを反応させることで、マレイミド化合物(a1)とジアミン化合物(a2)とがマイケル付加反応してなるアミノマレイミド化合物(A1)が得られる。
【0064】
マレイミド化合物(a1)とジアミン化合物(a2)とを反応させる際には、必要に応じて反応触媒を使用してもよい。
反応触媒としては、p-トルエンスルホン酸等の酸性触媒;トリエチルアミン、ピリジン、トリブチルアミン等のアミン類;メチルイミダゾール、フェニルイミダゾール等のイミダゾール類;トリフェニルホスフィン等のリン系触媒などが挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
反応触媒の配合量は、特に限定されないが、反応速度及び反応均一性の観点から、マレイミド化合物(a1)及びジアミン化合物(a2)の合計量100質量部に対して、好ましくは0.01~5質量部、より好ましくは0.05~3質量部、さらに好ましくは0.1~2質量部である。
【0065】
マイケル付加反応の反応温度は、反応速度等の作業性、反応中のゲル化抑制などの観点から、好ましくは50~160℃、より好ましくは60~150℃、さらに好ましくは70~140℃である。
マイケル付加反応の反応時間は、生産性及び十分に反応を進行させる観点から、好ましくは0.5~10時間、より好ましくは1~8時間、さらに好ましくは2~6時間である。
但し、これらの反応条件は、使用する原料の種類等に応じて適宜調整することができ、特に限定されない。
【0066】
マイケル付加反応では有機溶剤を追加又は濃縮することにより、反応溶液の固形分濃度及び溶液粘度を調整してもよい。反応溶液の固形分濃度は、特に限定されないが、好ましくは10~90質量%、より好ましくは15~85質量%、さらに好ましくは20~80質量%である。反応原料の固形分濃度が上記下限値以上であると、良好な反応速度が得られ、生産性がより良好になる傾向にある。また、反応原料の固形分濃度が上記上限値以下であると、より良好な溶解性が得られ、撹拌効率が向上し、ゲル化をより抑制できる傾向にある。
【0067】
((A)成分の含有量)
マレイミド樹脂組成物中の(A)成分の含有量は、特に限定されないが、(A)~(C)成分の総和100質量部に対して、30~70質量部が好ましく、35~60質量部がより好ましく、40~55質量部がさらに好ましい。(A)成分の含有量が前記下限値以上であると、低熱膨張性、耐熱性及び導体との接着性が良好となる傾向にあり、前記上限値以下であると、誘電正接を低く抑えられる傾向にある。
【0068】
<熱可塑性エラストマー(B)>
(B)成分としては、特に限定されないが、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アクリル系エラストマー、シリコーン系エラストマー及びこれらの誘導体からなる群から選択される1種以上を含むことが好ましい。(B)成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0069】
また、(B)成分としては、分子末端又は分子鎖中に反応性官能基を有するものを用いることができる。反応性官能基としては、エポキシ基、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、アミド基、イソシアナート基、アクリル基、メタクリル基、ビニル基等が挙げられる。これらの反応性官能基を分子末端又は分子鎖中に有することにより、相溶性が向上し、熱硬化性樹脂組成物の硬化時に発生する内部応力をより効果的に低減することができ、基板の反りを低減することが可能となる。
これらの反応性官能基の中でも、金属箔との密着性の観点から、エポキシ基、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、アミド基を有することが好ましく、耐熱性及び絶縁信頼性の観点から、エポキシ基、水酸基、アミノ基を有することがより好ましい。
【0070】
スチレン系エラストマーとしては、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー等のスチレン-ブタジエン共重合体;スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー等のスチレン-イソプレン共重合体;スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマーなどが挙げられる。スチレン系エラストマーの原料モノマーとしては、スチレンの他に、α-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン等のスチレン誘導体を用いることができる。これらの中でも、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体が好ましく、これらの共重合体の二重結合部分を水素添加した水添スチレン-ブタジエン共重合樹脂、水添スチレン-イソプレン共重合樹脂等の水添スチレン系熱可塑性エラストマーがより好ましい。
スチレン系エラストマーとしては、市販品を用いてもよく、市販品としては、「タフプレン(登録商標)」、「アサプレン(登録商標)T」、「タフテック(登録商標)H1043」、「タフテック(登録商標)MP10」、「タフテック(登録商標)M1911」、「タフテック(登録商標)M1913」(以上、旭化成ケミカルズ株式会社製)、「エポフレンド(登録商標)AT501」、「エポフレンド(登録商標)CT310」(以上、株式会社ダイセル製)、「セプトン(登録商標)2063」(株式会社クラレ製)等が挙げられる。
【0071】
オレフィン系エラストマーとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン等の炭素数2~20のα-オレフィンの共重合体;前記α-オレフィンと、ジシクロペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、シクロオクタンジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン、ブタジエン、イソプレン等の炭素数2~20の非共役ジエンとの共重合体;ブタジエン-アクニロニトリル共重合体にメタクリル酸を共重合したカルボキシ変性ブタジエン-アクニロニトリルゴムなどが挙げられる。
α-オレフィンの共重合体としては、エチレン-プロピレン共重合体(EPR)、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDM)等が挙げられる。
オレフィン系エラストマーとしては、市販品を用いてもよい。
【0072】
ウレタン系エラストマーとしては、低分子(短鎖)ジオールとジイソシアネートからなるハードセグメントと、高分子(長鎖)ジオールとジイソシアネートからなるソフトセグメントを有するものが挙げられる。
低分子(短鎖)ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ビスフェノールA等が挙げられる。低分子(短鎖)ジオールの数平均分子量は、48~500が好ましい。
高分子(長鎖)ジオールとしては、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンオキサイド、ポリ(1,4-ブチレンアジペート)、ポリ(エチレン・1,4-ブチレンアジペート)、ポリカプロラクトン、ポリ(1,6-ヘキシレンカーボネート)、ポリ(1,6-へキシレン・ネオペンチレンアジペート)等が挙げられる。高分子(長鎖)ジオールの数平均分子量は、500~10,000が好ましい。
ウレタン系エラストマーとしては、市販品を用いてもよい。
【0073】
ポリエステル系エラストマーとしては、ジカルボン酸又はその誘導体とジオール化合物又はその誘導体とを重縮合して得られるものが挙げられる。
ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;これらの芳香族ジカルボン酸の芳香核の水素原子がメチル基、エチル基、フェニル基等で置換された芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の炭素数2~20の脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸などが挙げられる。ジカルボン酸は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ジオール化合物としては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオール等の脂肪族ジオール;1,4-シクロヘキサンジオール等の脂環式ジオール;ビスフェノールA、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、レゾルシン等の芳香族ジオールなどが挙げられる。ジオール化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、芳香族ポリエステル(例えば、ポリブチレンテレフタレート)部分をハードセグメント成分に、脂肪族ポリエステル(例えば、ポリテトラメチレングリコール)部分をソフトセグメント成分にしたマルチブロック共重合体を用いてもよい。該マルチブロック共重合体としては、ハードセグメントとソフトセグメントの種類、比率、分子量の違いにより様々なグレードの市販品があり、具体的には、「ハイトレル(登録商標)」(東レ・デュポン株式会社製)、「ペルプレン(登録商標)」(東洋紡株式会社製)、「エスペル(登録商標)」(昭和電工マテリアルズ株式会社製)等が挙げられる。
【0074】
ポリアミド系エラストマーとしては、ポリアミドをハードセグメント成分、ポリブタジエン、ブタジエン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、エチレンプロピレン共重合体、ポリエーテル、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリウレタン、シリコーンゴム等をソフトセグメント成分としたブロック共重合体が挙げられる。
ポリアミド系エラストマーとしては、市販品を用いてもよい。
【0075】
アクリル系エラストマーとしては、アクリル酸エステルを主成分とする原料モノマーを重合してなるポリマーが挙げられる。アクリル酸エステルとしては、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート等が挙げられる。また、架橋点モノマーとして、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等を原料として用いたものであってもよく、さらに、アクリロニトリル、エチレン等を共重合したものであってもよい。具体的には、アクリロニトリル-ブチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル-ブチルアクリレート-エチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル-ブチルアクリレート-グリシジルメタクリレート共重合体等が挙げられる。
【0076】
シリコーン系エラストマーは、オルガノポリシロキサンを主成分とするものであり、その骨格の構造により、ポリジメチルシロキサン系、ポリメチルフェニルシロキサン系、ポリジフェニルシロキサン系等に分類される。
シリコーン系エラストマーとしては、市販品を用いてもよい。
【0077】
これらの(B)成分の中でも、耐熱性及び絶縁信頼性の観点から、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、シリコーン系エラストマーが好ましく、誘電特性の観点から、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマーがより好ましく、水添スチレン系熱可塑性エラストマーがさらに好ましい。
【0078】
(B)成分の重量平均分子量(Mw)は、1,000~300,000が好ましく、2,000~150,000がより好ましい。(B)成分の重量平均分子量(Mw)が前記下限値以上であると低熱膨張性に優れ、前記上限値以下であると、相容性に優れる傾向にある。
なお、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定を行い、標準ポリスチレンを用いて作製した検量線により換算したものである。
【0079】
((B)成分の含有量)
マレイミド樹脂組成物中の(B)成分の含有量は、特に限定されないが、(A)~(C)成分の総和100質量部に対して、5~50質量部が好ましく、10~45質量部がより好ましく、20~45質量部がさらに好ましく、25~45質量部が特に好ましい。(B)成分の含有量が前記下限値以上であると、低誘電率化の効果が十分得られる傾向にあり、前記上限値以下であると、(B)成分が相容化することで樹脂中に十分に分散し、耐熱性の大きな低下を抑制し、かつピール強度に優れる傾向にある。
【0080】
<ジビニル化合物(C)>
(C)成分が有するビニル基が2つである、つまり架橋性官能基が2つであることにより、高まり過ぎない程度の良好な架橋密度となり、その結果、分子の自由体積が大きくなるため、誘電正接(Df)を小さく抑えることができる。つまり、(C)成分の代わりにトリビニル化合物を使用すると、架橋密度が高まり過ぎることで自由体積が小さくなり、それが原因となって誘電正接(Df)が上昇する傾向にある(比較例2参照)。さらに、反応性のある(C)成分は、熱硬化性樹脂である(A)成分の一部の代わりとして使用されるため、極性基を有する(A)成分の含有量が低減されること自体も誘電正接(Df)の低減に寄与すると考えられる。
また、(C)成分が有する官能基2つがいずれもビニル基であることによって(A)成分との反応性が良好なものとなり、その結果、耐熱性が向上し易くなる傾向があると考えられる。例えば、(C)成分の代わりにジアリル化合物を使用すると、樹脂組成物の硬化後に未反応のジアリル化合物が残存するため、耐熱性が低下する(比較例4参照)。
【0081】
本実施形態において、(C)成分はエラストマーではない。
(C)成分の分子量は、(A)成分との反応性の観点から、好ましくは500以下、より好ましくは400以下、さらに好ましくは300以下、特に好ましくは200以下である。(C)成分の分子量の下限値の設定には技術的な意味が乏しいため、設定する必要性はないが、例えば、100以上であってもよく、110以上であってもよく、120以上であってもよい。
【0082】
(C)成分としては、特に限定されないが、例えば、芳香族環又は珪素原子を有するジビニル化合物が挙げられる。
芳香族環の環形成炭素数は、好ましくは6~20であり、6~12であってもよい。芳香族環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環等が挙げられる。これらの中でも、芳香族環としてはベンゼン環が好ましい。芳香族環は置換基を有していてもよい。当該置換基は(A)成分との反応性を有さない置換基であって、例えば、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシル基、ハロゲン原子等が挙げられる。
(C)成分が芳香族環を有する場合、その数は特に限定されるものではないが、好ましくは1~3つ、より好ましくは1つ又は2つであり、1つであってもよい。芳香族環を有するジビニル化合物の具体例としては、例えば、ジビニルベンゼン等が挙げられる。ジビニルベンゼンとしては、m-ジビニルベンゼン、p-ジビニルベンゼン等が挙げられ、m-ジビニルベンゼンとp-ジビニルベンゼンの混合物であってもよい。
【0083】
また、(C)成分が珪素原子を有するジビニル化合物である場合、珪素原子の数は、好ましくは1~6、より好ましくは1~3、さらに好ましくは2である。また、(C)成分としては、珪素原子にビニル基が結合している態様が好ましい。
珪素原子を有するジビニル化合物としては、例えば、下記構造式で表されるジビニル化合物等が挙げられる。
【化12】

(上記式中、RC1~RC4は、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基を表す。)
C1~RC4が表す炭素数1~6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。当該アルキル基としては、炭素数1~3のアルキル基であってもよく、メチル基であってもよい。
【0084】
(C)成分としては、耐熱性を大きく向上させるという観点から、芳香族環を有するジビニル化合物が好ましい。芳香族環を有するジビニル化合物について、より好ましい態様は前述のとおりである。(C)成分が芳香族環を有する場合には、マレイミド化合物(A)との架橋反応後の分子が剛直となり、それによって樹脂組成物の耐熱性が大幅に高まるものと考えられる。
熱可塑性エラストマーを含有するマレイミド樹脂組成物は、一般的に、誘電正接(Df)が小さくなる一方で耐熱性を向上させ難い傾向があるため、誘電正接(Df)を小さく維持したまま耐熱性を大幅改善することができることは非常に有益である。
【0085】
((C)成分の含有量)
マレイミド樹脂組成物中の(C)成分の含有量は、特に限定されないが、(A)~(C)成分の総和100質量部に対して、3~30質量部が好ましく、5~25質量部がより好ましく、10~25質量部がさらに好ましく、13~22質量部が特に好ましい。(C)成分の含有量が前記下限値以上であると、低誘電率化の効果及び耐熱性の改善効果が十分に得られる傾向、及びワニスが低粘度化して作業性が向上する傾向にある。また、(C)成分の含有量が前記上限値以下であると、(A)成分に由来する耐熱性を維持できる傾向及びマレイミド樹脂組成物の粘度が低下し過ぎることを抑制できる傾向にある。
【0086】
<その他の成分>
本実施形態の樹脂組成物は、さらにその他の成分を含有してなるものであってもよい。その他の成分としては、例えば、無機充填材(D)[以下、(D)成分と略称することがある。]及び硬化促進剤(E)[以下、(E)成分と略称することがある。]からなる群から選択される1種以上が挙げられる。これらを含有させることにより、積層板とした際の諸特性をさらに向上させることができる。
以下、これらその他の成分について詳述する。
【0087】
(無機充填材(D))
本実施形態の樹脂組成物に無機充填材(D)を含有させることで、熱膨張係数、弾性率、耐熱性及び難燃性を向上させることができる傾向にある。
(D)成分としては、特に限定されないが、シリカ、アルミナ、酸化チタン、マイカ、ベリリア、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、炭酸アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、焼成クレー等のクレー、タルク、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、熱膨張係数、弾性率、耐熱性及び難燃性の観点から、シリカ、アルミナ、マイカ、タルクが好ましく、シリカ、アルミナがより好ましく、シリカがさらに好ましい。シリカとしては、例えば、湿式法で製造され含水率の高い沈降シリカと、乾式法で製造され結合水等をほとんど含まない乾式法シリカが挙げられ、乾式法シリカとしては、さらに、製造法の違いにより、破砕シリカ、フュームドシリカ、溶融シリカ(溶融球状シリカ)等が挙げられる。
無機充填材(D)の形状及び粒径は、特に限定されないが、例えば、粒径は、好ましくは0.01~20μm、より好ましくは0.1~10μm、さらに好ましく0.2~1μm、特に好ましくは0.3~0.8μmである。ここで、粒径とは、平均粒子径を指し、粒子の全体積を100%として粒子径による累積度数分布曲線を求めたとき、体積50%に相当する点の粒子径のことである。無機充填材(D)の粒径は、レーザ回折散乱法を用いた粒度分布測定装置等で測定することができる。
【0088】
((D)成分の含有量)
本実施形態の樹脂組成物が(D)成分を含有する場合、樹脂組成物中における(D)成分の含有量は、特に限定されないが、熱膨張係数、弾性率、耐熱性及び難燃性の観点から、好ましくは5~70質量%、より好ましくは15~65質量%、さらに好ましくは20~60質量%であり、25~55質量%であってもよく、25~45質量%であってもよく、30~40体積%であってもよい。
【0089】
また、(D)成分を用いる場合、(D)成分の分散性及び(D)成分と樹脂組成物中の有機成分との密着性を向上させる目的で、必要に応じ、カップリング剤を併用してもよい。該カップリング剤としては特に限定されるものではなく、例えば、シランカップリング剤又はチタネートカップリング剤を適宜選択して用いることができる。カップリング剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、カップリング剤の使用量も特に限定されるものではなく、例えば、(D)成分100質量部に対して0.1~5質量部としてもよく、0.5~3質量部としてもよい。この範囲であれば、諸特性の低下が少なく、上記の(D)成分の使用による特長を効果的に発揮できる傾向にある。
なお、カップリング剤を用いる場合、樹脂組成物中に(D)成分を配合した後、カップリング剤を添加する、いわゆるインテグラルブレンド処理方式であってもよいが、予め無機充填材にカップリング剤を乾式又は湿式で表面処理した無機充填材を使用する方式が好ましい。この方法を採用することで、より効果的に(D)成分の特長を発現できる。
【0090】
本実施形態において(D)成分を用いる場合、(D)成分の樹脂組成物への分散性を向上させる目的で、必要に応じ、(D)成分を予め有機溶媒中に分散させたスラリーとして用いることができる。(D)成分をスラリー化する際に使用される有機溶媒は、特に限定されないが、例えば、上述した(A1)成分の製造工程で例示した有機溶媒が適用できる。これらの中でも、分散性の観点から、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが好ましい。また、スラリーの固形分(不揮発分)濃度は、特に限定されないが、無機充填材(D)の沈降性及び分散性の観点から、例えば、50~80質量%であり、60~80質量%であってもよい。
【0091】
(硬化促進剤(E))
本実施形態の樹脂組成物に硬化促進剤(E)を含有させることで、樹脂組成物の硬化性を向上させ、誘電特性、耐熱性、導体との接着性、弾性率及びガラス転移温度を向上させることができる傾向にある。
(E)成分としては、p-トルエンスルホン酸等の酸性触媒;トリエチルアミン、ピリジン、トリブチルアミン等のアミン化合物;メチルイミダゾール、フェニルイミダゾール、イソシアネートマスクイミダゾール(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート樹脂と2-エチル-4-メチルイミダゾールの付加反応物等)等のイミダゾール化合物;第3級アミン化合物;第4級アンモニウム化合物;トリフェニルホスフィン等のリン系化合物;ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン等の有機過酸化物;マンガン、コバルト、亜鉛等のカルボン酸塩などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、耐熱性、ガラス転移温度及び保存安定性の観点から、イミダゾール化合物、有機過酸化物、カルボン酸塩であってもよく、耐熱性、ガラス転移温度、弾性率及び熱膨張係数の観点から、イミダゾール化合物と、有機過酸化物又はカルボン酸塩とを併用してもよい。また、イミダゾール化合物の中ではイソシアネートマスクイミダゾールを選択してもよく、有機過酸化物の中ではα,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼンを選択してもよい。
【0092】
((E)成分の含有量)
本実施形態の樹脂組成物が(E)成分を含有する場合、(E)成分の含有量は、特に限定されないが、例えば、樹脂組成物中の樹脂成分の総和100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.05~8質量部、さらに好ましくは0.1~6質量部、特に好ましくは0.5~5質量部である。(E)成分の含有量が上記範囲であると、より良好な耐熱性及び保存安定性が得られる傾向にある。
【0093】
本実施形態の樹脂組成物には、さらに必要に応じて、熱可塑性樹脂等の樹脂材料、難燃剤、難燃助剤、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤、滑剤等を適宜選択して含有させることができる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、これらの使用量は特に限定されるものではなく、本実施形態の効果を阻害しない範囲で使用すればよい。
【0094】
(有機溶媒)
本実施形態の樹脂組成物は、希釈することによって取り扱いを容易にするという観点及び後述するプリプレグを製造し易くする観点から、有機溶媒を含有していてもよい。有機溶媒を含有させた樹脂組成物は、一般的に、樹脂ワニス又はワニスと称されることがある。
該有機溶媒としては、特に限定されないが、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等の窒素原子含有溶媒;ジメチルスルホキシド等の硫黄原子含有溶媒;γ-ブチロラクトン等のエステル系溶媒などが挙げられる。
これらの中でも、溶解性の観点から、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、窒素原子含有溶媒が好ましく、ケトン系溶媒がより好ましく、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンがさらに好ましく、メチルエチルケトンが特に好ましい。
有機溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0095】
本実施形態の樹脂組成物が有機溶媒を含有する場合、ワニスの固形分濃度は、例えば、30~90質量%であり、35~80質量%であってもよく、40~60質量%であってもよい。固形分濃度が上記の範囲内である樹脂組成物を用いることで、取り扱い性が容易となり、さらに基材への含浸性及び製造されるプリプレグの外観が良好で、後述するプリプレグ中の樹脂の固形分濃度の調整が容易となり、所望の厚さを有するプリプレグの製造がより容易となる傾向にある。
【0096】
本実施形態の樹脂組成物は、(A)~(C)成分及び必要に応じて併用されるその他の成分を公知の方法で混合することで製造することができる。この際、各成分は撹拌しながら溶解又は分散させてもよい。混合順序、温度、時間等の条件は、特に限定されず、原料の種類等に応じて任意に設定すればよい。
【0097】
本実施形態の樹脂組成物の硬化物(つまり、ガラスクロス等の繊維基材を含まない積層体、及び樹脂フィルムの硬化物)の10GHzにおける誘電正接(Df)は、好ましくは0.0013以下、より好ましくは0.0012以下である。上記誘電正接(Df)は小さい程好ましいため、その下限値は、特に制限されるものではないが、他の物性とのバランスを考慮して、例えば、0.0010以上であってもよい。
なお、誘電正接(Df)は、空洞共振器摂動法に準拠した値であり、より詳細には、実施例に記載する方法によって測定された値である。
【0098】
[プリプレグ]
本実施形態のプリプレグは、本実施形態のマレイミド樹脂組成物を含有してなるプリプレグである。
本実施形態のプリプレグは、例えば、本実施形態の樹脂組成物とシート状繊維補強基材とを含有してなるものである。該プリプレグは、本実施形態の樹脂組成物とシート状繊維補強基材とを用いて形成され、例えば、本実施形態の樹脂組成物を、シート状繊維補強基材に含浸又は塗工し、乾燥させることによって得ることができる。より具体的には、例えば、80~200℃の温度で1~30分間加熱乾燥し、Bステージ化させることにより本実施形態のプリプレグを製造することができる。ここで、本明細書においてB-ステージ化とは、JIS K6900(1994年)にて定義されるB-ステージの状態にすることであり、半硬化とも称される。
樹脂組成物の使用量は、乾燥後のプリプレグ中の樹脂組成物由来の固形分濃度が30~90質量%となるように決定することができる。固形分濃度を上記範囲とすることで、積層板とした際により良好な成形性が得られる傾向にある。
【0099】
プリプレグのシート状繊維補強基材としては、各種の電気絶縁材料用積層板に用いられている公知のものが用いられる。シート状補強基材の材質としては、Eガラス、Dガラス、Sガラス、Qガラス等の無機物繊維;ポリイミド、ポリエステル、テトラフルオロエチレン等の有機繊維;これらの混合物などが挙げられる。これらのシート状補強基材は、織布、不織布、ロービンク、チョップドストランドマット、サーフェシングマット等の形状を有する。
シート状繊維補強基材の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.02~0.5mmのものを用いることができる。
また、シート状繊維補強基材は、樹脂組成物の含浸性、積層板とした際の耐熱性、耐吸湿性、及び加工性の観点から、カップリング剤等で表面処理したもの、及び機械的に開繊処理を施したものを使用できる。
【0100】
樹脂組成物をシート状補強基材に含浸又は塗工させる方法としては、次のホットメルト法又はソルベント法を採用できる。
ホットメルト法は、樹脂組成物に有機溶媒を含有させず、(1)該樹脂組成物との剥離性の良い塗工紙に一旦コーティングし、それをシート状補強基材にラミネートする方法、又は(2)ダイコーターによりシート状補強基材に直接塗工する方法である。
一方、ソルベント法は、樹脂組成物に有機溶媒を含有させ、得られた樹脂組成物にシート状補強基材を浸漬して、樹脂組成物をシート状補強基材に含浸させ、その後、乾燥させる方法である。
【0101】
[樹脂フィルム]
本実施形態の樹脂フィルムは、本実施形態の樹脂組成物を含有してなる樹脂フィルムである。樹脂フィルムには、後述の支持体が設けられていてもよい。
本実施形態の樹脂フィルムは、例えば、有機溶媒を含有する樹脂組成物、つまり樹脂ワニスを支持体へ塗工し、加熱乾燥させることによって製造することができる。
支持体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィンのフィルム;ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」ともいう)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルのフィルム;ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム等の各種プラスチックフィルムなどが挙げられる。また、支持体として、銅箔、アルミニウム箔等の金属箔、離型紙などを使用してもよい。支持体には、マット処理、コロナ処理等の表面処理が施してあってもよい。また、支持体には、シリコーン樹脂系離型剤、アルキッド樹脂系離型剤、フッ素樹脂系離型剤等による離型処理が施してあってもよい。
支持体の厚さは、特に限定されないが、好ましくは10~150μm、より好ましくは25~50μmである。
【0102】
支持体に樹脂ワニスを塗工する方法は、特に限定されず、コンマコーター、バーコーター、キスコーター、ロールコーター、グラビアコーター、ダイコーター等の当業者に公知の塗工装置を用いることができる。これらの塗工装置は、膜厚によって、適宜選択すればよい。
乾燥温度及び乾燥時間は、有機溶媒の使用量、及び使用する有機溶媒の沸点等に応じて適宜決定すればよいが、例えば、40~60質量%程度の有機溶媒を含有する樹脂ワニスの場合、50~150℃で3~10分間程度乾燥させることにより、樹脂フィルムを好適に形成することができる。
【0103】
[積層板]
本実施形態の積層板は、本実施形態のプリプレグ又は樹脂フィルムを含有してなる積層板である。
本実施形態の積層板は、例えば、本実施形態のプリプレグ1枚の片面もしくは両面に金属箔を配置するか、又は本実施形態のプリプレグ2枚以上を重ねて得られるプリプレグの片面もしくは両面に金属箔を配置し、次いで加熱加圧成形することによって製造することができる。金属箔を有する積層板は、金属張積層板と称されることもある。
別の金属張積層板の製造方法としては、本実施形態のプリプレグもしくはそれ以外のプリプレグの両面又は片面に本実施形態の樹脂フィルムを配置し、加熱加圧する方法が挙げられる。この場合、前記プリプレグとしては、プリプレグ1枚を用いてもよいし、プリプレグ2枚以上を積層して用いてもよい。プリプレグ2枚以上を積層して用いる場合、異なるプリプレグを組み合わせて積層してもよい。
金属箔の金属としては、電気絶縁材料用途で用いられるものであれば特に限定されないが、導電性の観点から、銅、金、銀、ニッケル、白金、モリブデン、ルテニウム、アルミニウム、タングステン、鉄、チタン、クロム、又はこれらの金属元素を1種以上含有する合金であってもよく、銅、アルミニウムが好ましく、銅がより好ましい。
加熱加圧成形の条件は、特に限定されないが、例えば、温度が100~300℃、圧力が0.2~10MPa、時間が0.1~5時間の範囲で実施することができる。また、加熱加圧成形は、真空プレス等を用いて真空状態を0.5~5時間保持する方法を採用できる。
【0104】
[多層プリント配線板]
本実施形態の多層プリント配線板は、本実施形態の積層板を含有してなるものである。本実施形態の多層プリント配線板は、片面又は両面に金属箔が設けられた本実施形態の積層板、つまり金属張積層板を用いて、公知の方法によって、穴開け加工、金属めっき加工、金属箔のエッチング等による回路形成加工及び多層化接着加工を行うことによって製造することができる。
【0105】
[半導体パッケージ]
本実施形態の半導体パッケージは、多層プリント配線板と、半導体素子と、を含有する半導体パッケージである。本実施形態の半導体パッケージは、本実施形態のプリント配線板の所定の位置に、半導体チップ、メモリ等の半導体素子を搭載し、封止樹脂等によって半導体素子を封止することによって製造することができる。
【0106】
本実施形態の樹脂組成物、プリプレグ、樹脂フィルム、積層板、多層プリント配線板及び半導体パッケージは、10GHz以上の高周波信号を扱う電子機器に好適に用いることができる。特に、多層プリント配線板は、ミリ波レーダー用多層プリント配線板として有用である。
【0107】
以上、好適な実施形態を説明したが、これらは本開示の説明のための例示であり、本開示の範囲をこれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本開示は、その要旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態とは異なる種々の態様で実施することも含む。
【実施例0108】
以下、実施例を挙げて、本実施形態を具体的に説明する。ただし、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。
【0109】
実施例1~2、比較例1~5
(マレイミド樹脂組成物の調製)
所定量の硬化促進剤と共に表1に記載の各成分を表1に記載の配合量に従って室温又は50~80℃で加熱しながら撹拌及び混合して、固形分濃度約50質量%の樹脂組成物を調製した。
(両面銅箔付き樹脂板の作製)
各例で得た樹脂組成物を、厚さ38μmのPETフィルム(帝人株式会社製、商品名:G2-38)に塗工した後、170℃で5分間加熱乾燥して、Bステージ状態の樹脂フィルムを作製した。この樹脂フィルムをPETフィルムから剥離した後、粉砕して樹脂粉末とした。次いで、厚さ1mm×長さ50mm×幅35mmのサイズに型抜きしたテフロン(登録商標)シートに上記の樹脂粉末を投入し、その上下に、厚さ18μmのロープロファイル銅箔(古河電気工業株式会社製、商品名:BF-ANP18)を、M面(マット面)が投入した樹脂粉末に接するように配置し、温度230℃、圧力2.0MPa、時間120分間の条件で加熱加圧成形して、樹脂組成物を硬化させて、両面銅箔付き樹脂板(樹脂板の厚さ:1mm)を作製した。
【0110】
[評価・測定方法]
上記実施例及び比較例で得られた両面銅箔付き樹脂板を用いて、下記方法に従って各測定及び評価を行った。結果を表2に示す。
【0111】
(1.誘電正接の測定)
各例で得た両面銅箔付き樹脂板を銅エッチング液である過硫酸アンモニウム(三菱ガス化学株式会社製)10質量%溶液に浸漬することにより銅箔を取り除いた評価基板から、2mm×50mmの評価基板を作製した。
該評価基板を空洞共振器摂動法に準拠して、10GHz帯で25℃にて誘電正接(Df)を測定した。
【0112】
(2.ガラス転移温度の測定)
ガラス転移温度(Tg)は、両面銅箔付き樹脂板の両面の銅箔をエッチングした5mm角の試験片を用いて、熱機械測定装置(TMA)[ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製、Q400(型番)]により、IPC(The Institute for Interconnecting and Packaging Electronic Circuits)規格に準拠して測定した。
【0113】
【表1】
【0114】
なお、表1における各材料は、以下のとおりである。
[(A)成分]
・ビスマレイミド化合物:下記構造を有する、インダン環を含む芳香族ビスマレイミド化合物
【化13】

(上記式中、n3は、0.95~10.0の数である。)
【0115】
[(B)成分]
・熱可塑性エラストマー:スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)、スチレン含有率42質量%、Mw=75,000
[(C)成分]
各化合物については、下記を参照できる。
【化14】
【0116】
[(C’)成分(比較用)]
各化合物については、下記を参照できる。
【化15】
【0117】
[(D)成分]
・球状シリカ:平均粒径0.5μm
[(E)成分]
・硬化促進剤1:α,α-ビス(t-ブチルペルオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン
・硬化促進剤2:イソシアネートマスクイミダゾール「G8009L」(商品名、第一工業製薬株式会社製)
【0118】
表1に示された結果から明らかなように、本実施形態の実施例1~2で得られた樹脂組成物においては、10GHz帯以上の高周波数帯においてより一層の低誘電正接を達成できた。また、実施例1では、低誘電正接を達成すると共に、耐熱性も大幅に向上した。
一方、比較例1~5は、実施例よりも10GHz帯での誘電正接が高くなった。特に、ジビニル化合物の代わりにトリビニル化合物を使用した比較例2でも、実施例に比べて10GHz帯での誘電正接が高くなった点は注目に値する。また、ジビニル化合物の代わりにジアリル化合物であるL-DAICを使用した比較例4では、耐熱性が不十分となった点も注目に値する。