(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022122814
(43)【公開日】2022-08-23
(54)【発明の名称】ポリウレタンウレア樹脂形成性組成物、接着剤及びイソシアネート用硬化剤
(51)【国際特許分類】
C08G 18/32 20060101AFI20220816BHJP
C08G 18/38 20060101ALI20220816BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20220816BHJP
C07C 217/84 20060101ALI20220816BHJP
C07C 211/50 20060101ALN20220816BHJP
【FI】
C08G18/32 037
C08G18/38 014
C08G18/38 089
C08G18/10
C07C217/84
C07C211/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021146379
(22)【出願日】2021-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2021020034
(32)【優先日】2021-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000173762
【氏名又は名称】公益財団法人相模中央化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100211018
【弁理士】
【氏名又は名称】財部 俊正
(72)【発明者】
【氏名】相澤 考宏
(72)【発明者】
【氏名】荒木 啓介
【テーマコード(参考)】
4H006
4J034
【Fターム(参考)】
4H006AA03
4H006AB46
4H006BJ50
4H006BM30
4H006BM71
4H006BM72
4H006BP30
4J034BA02
4J034BA08
4J034CA03
4J034CA04
4J034CA05
4J034CA15
4J034CB03
4J034CB04
4J034CB05
4J034CB07
4J034CC03
4J034CC12
4J034CC61
4J034CC67
4J034CC68
4J034CD04
4J034CD07
4J034CD12
4J034DA01
4J034DB04
4J034DC12
4J034DC35
4J034DC43
4J034DC50
4J034DF01
4J034DF02
4J034DF16
4J034DF20
4J034DG03
4J034DG04
4J034DG05
4J034DG14
4J034DG23
4J034DP12
4J034HA01
4J034HA07
4J034HA08
4J034HB12
4J034HC03
4J034HC09
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC22
4J034HC45
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC54
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA42
4J034KA01
4J034KB02
4J034KC08
4J034KC17
4J034KC23
4J034KD02
4J034KD12
4J034KE02
4J034QB13
4J034RA07
4J034RA08
(57)【要約】
【課題】MOCAと化学構造の異なるジアミンを硬化剤成分に使用したポリウレタンウレア樹脂形成性組成物であって、接着剤として適用した場合に実用上十分な接着特性を発揮する組成物を提供すること。
【解決手段】ポリイソシアネートを含有する主剤と硬化剤とを備えるポリウレタンウレア樹脂形成性組成物であって、前記硬化剤は、下記一般式(1)で表される化合物を含有する組成物。式中、R
2、R
3、R
5、R
6、R
2’、R
3’、R
5’及びR
6’は、ハロゲン原子等、R
11はメチレン等である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネートを含有する主剤と硬化剤とを備えるポリウレタンウレア樹脂形成性組成物であって、前記硬化剤は、下記一般式(1)で表される化合物を含有する組成物。
【化1】
[式中、
R
11は、下記一般式(i)で表される2価の基であり、
【化2】
R
12及びR
13は、それぞれ独立に、水素原子の少なくとも1つがハロゲン置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基、水素原子の少なくとも1つがハロゲン置換されていてもよい炭素数6~18のアリール基、又は水素原子であり、R
12及びR
13は一緒になって、これらが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよく、
R
2及びR
2’は、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1~3のアルコキシ基を示し、
(I)R
12、R
13、R
2及びR
2’が、全て水素原子である場合、
(I-1)R
3及びR
3’が塩素原子以外のハロゲン原子、且つR
5、R
5’、R
6及びR
6’が水素原子、
(I-2)R
3、R
3’、R
5及びR
5’がハロゲン原子、且つR
6及びR
6’が水素原子、又は
(I-3)R
3及びR
3’が、下記一般式(ii)で表される基、且つ、R
5、R
5’、R
6及びR
6’が水素原子であり、R
21及びR
22は、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基であり、
【化3】
(II)R
12及びR
13が水素原子であり、R
2及びR
2’が、ハロゲン原子又は炭素数1~3のアルコキシ基である場合、
(II-1)R
3、R
3’、R
5、R
5’、R
6及びR
6’が水素原子又はハロゲン原子、
(II-2)R
3及びR
3’がハロゲン原子、且つR
5、R
5’、R
6及びR
6’が水素原子、
(II-3)R
5及びR
5’がハロゲン原子、且つR
3、R
3’、R
6及びR
6’が水素原子、
(II-4)R
6及びR
6’がハロゲン原子、且つR
3、R
3’、R
5及びR
5’が水素原子、
(II-5)R
3、R
3’、R
5及びR
5’がハロゲン原子、且つR
6及びR
6’が水素原子、
(II-6)R
3、R
3’、R
6及びR
6’がハロゲン原子、且つR
5及びR
5’が水素原子、又は、
(II-7)R
5、R
5’、R
6及びR
6’がハロゲン原子、且つR
3及びR
3’が水素原子、であり、
(III)R
12及びR
13の少なくとも1つが水素原子ではない場合、
R
3、R
3’、R
6及びR
6’がハロゲン原子、且つR
2、R
2’、R
5及びR
5’が水素原子である。
なお、-R
11-を軸として、2つのベンゼン環の一方又は双方が180度回転した化学式で表される化合物も、前記一般式(1)で表される化合物に含まれる。]
【請求項2】
R2及びR2’、R3及びR3’、R5及びR5’、並びに、R6及びR6’は、それぞれ同一の原子又は官能基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
R12及びR13は、水素原子であり、
前記ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子から選ばれる同一又は異なるハロゲン原子であり、前記炭素数1~3のアルコキシ基は、メトキシ基である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
R12及びR13は、水素原子であり、
(IV-1)R3、R3’、R6及びR6’は水素原子、且つ、R2、R2’、R5及びR5’は、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子から選ばれる同一又は異なるハロゲン原子、又は、
(IV-2)R3、R3’、R6及びR6’は水素原子、R2及びR2’はメトキシ基、且つR5及びR5’は、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子から選ばれる同一又は異なるハロゲン原子である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
R12及びR13は、水素原子であり、
(V)R2、R2’、R3及びR3’は、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子から選ばれる同一又は異なるハロゲン原子であり、
(V-1)R5及びR5’の組、並びに、R6及びR6’の組は、一方の組が、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子から選ばれる同一又は異なるハロゲン原子であり、他方の組が、水素原子、
(V-2)R5、R5’、R6及びR6’が、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子から選ばれる同一又は異なるハロゲン原子、又は、
(V-3)R5、R5’、R6及びR6’が、水素原子である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項6】
R12及びR13は、水素原子であり、
(VI-1)R2及びR2’は、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子から選ばれる同一又は異なるハロゲン原子、且つ、R3、R3’、R5、R5’、R6及びR6’は水素原子、
(VI-2)R2、R2’、R6及びR6’は、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子から選ばれる同一又は異なるハロゲン原子、且つ、R3、R3’、R5及びR5’は水素原子、
(VI-3)R3及びR3’は、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子から選ばれる同一又は異なるハロゲン原子、且つ、R2、R2’、R5、R5’、R6及びR6’は水素原子、又は、
(VI-4)R3、R3’、R5及びR5’は、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子から選ばれる同一又は異なるハロゲン原子、且つ、R2、R2’、R6及びR6’は水素原子である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項7】
R12及びR13は、
一方が水素原子、
他方が、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子から選ばれる同一又は異なるハロゲン原子で水素原子が置換された炭素数1~3のアルキル基、又は、炭素数6~18のアリール基であり、
R3、R3’、R6及びR6’は、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子から選ばれる同一又は異なるハロゲン原子であり、
R2、R2’、R5及びR5’は、水素原子である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項8】
R12及びR13は水素原子であり、
R3及びR3’が、前記一般式(ii)で表される基、且つ、R2、R2’、R5、R5’、R6及びR6’が水素原子であり、R21及びR22が、炭素数1~3のアルキル基である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリイソシアネートは、ウレタンプレポリマーを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記ポリイソシアネートは、ウレタン結合を有さないポリイソシアネートを含み、前記硬化剤はポリオールを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記硬化剤は、水酸基数が3以上のポリオールを更に含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記硬化剤のイソシアネート反応性基の全量に対する、前記主剤のイソシアネート基の全量に比が、当量比で0.8~1.2である、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物を含む、接着剤。
【請求項14】
下記一般式(1)で表される、イソシアネート用硬化剤。
【化4】
[式中、
R
11は、下記一般式(i)で表される2価の基であり、
【化5】
R
12及びR
13は、それぞれ独立に、水素原子の少なくとも1つがハロゲン置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基、水素原子の少なくとも1つがハロゲン置換されていてもよい炭素数6~18のアリール基、又は水素原子であり、R
12及びR
13は一緒になって、これらが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよく、
R
2及びR
2’は、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1~3のアルコキシ基を示し、
(I)R
12、R
13、R
2及びR
2’が、全て水素原子である場合、
(I-1)R
3及びR
3’が塩素原子以外のハロゲン原子、且つR
5、R
5’、R
6及びR
6’が水素原子、
(I-2)R
3、R
3’、R
5及びR
5’がハロゲン原子、且つR
6及びR
6’が水素原子、又は
(I-3)R
3及びR
3’が、下記一般式(ii)で表される基、且つ、R
5、R
5’、R
6及びR
6’が水素原子であり、R
21及びR
22は、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基であり、
【化6】
(II)R
12及びR
13が水素原子であり、R
2及びR
2’が、ハロゲン原子又は炭素数1~3のアルコキシ基である場合、
(II-1)R
3、R
3’、R
5、R
5’、R
6及びR
6’が水素原子又はハロゲン原子、
(II-2)R
3及びR
3’がハロゲン原子、且つR
5、R
5’、R
6及びR
6’が水素原子、
(II-3)R
5及びR
5’がハロゲン原子、且つR
3、R
3’、R
6及びR
6’が水素原子、
(II-4)R
6及びR
6’がハロゲン原子、且つR
3、R
3’、R
5及びR
5’が水素原子、
(II-5)R
3、R
3’、R
5及びR
5’がハロゲン原子、且つR
6及びR
6’が水素原子、
(II-6)R
3、R
3’、R
6及びR
6’がハロゲン原子、且つR
5及びR
5’が水素原子、又は、
(II-7)R
5、R
5’、R
6及びR
6’がハロゲン原子、且つR
3及びR
3’が水素原子、であり、
(III)R
12及びR
13の少なくとも1つが水素原子ではない場合、
R
3、R
3’、R
6及びR
6’がハロゲン原子、且つR
2、R
2’、R
5及びR
5’が水素原子である。
なお、-R
11-を軸として、2つのベンゼン環の一方又は双方が180度回転した化学式で表される化合物も、前記一般式(1)で表される化合物に含まれる。]
【請求項15】
R2及びR2’、R3及びR3’、R5及びR5’、並びに、R6及びR6’は、それぞれ同一の原子又は官能基である、請求項14に記載の硬化剤。
【請求項16】
R12及びR13は、水素原子であり、
前記ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子から選ばれる同一又は異なるハロゲン原子であり、前記炭素数1~3のアルコキシ基は、メトキシ基である、請求項14又は15に記載の硬化剤。
【請求項17】
R12及びR13は、水素原子であり、
(IV-1)R3、R3’、R6及びR6’は水素原子、且つ、R2、R2’、R5及びR5’は、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子から選ばれる同一又は異なるハロゲン原子、又は、
(IV-2)R3、R3’、R6及びR6’は水素原子、R2及びR2’はメトキシ基、且つR5及びR5’は、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子から選ばれる同一又は異なるハロゲン原子である、請求項14又は15に記載の硬化剤。
【請求項18】
R12及びR13は、水素原子であり、
(V)R2、R2’、R3及びR3’は、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子から選ばれる同一又は異なるハロゲン原子であり、
(V-1)R5及びR5’の組、並びに、R6及びR6’の組は、一方の組が、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子から選ばれる同一又は異なるハロゲン原子であり、他方の組が、水素原子、
(V-2)R5、R5’、R6及びR6’が、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子から選ばれる同一又は異なるハロゲン原子、又は、
(V-3)R5、R5’、R6及びR6’が、水素原子である、請求項14又は15に記載の硬化剤。
【請求項19】
R12及びR13は、水素原子であり、
(VI-1)R2及びR2’は、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子から選ばれる同一又は異なるハロゲン原子、且つ、R3、R3’、R5、R5’、R6及びR6’は水素原子、
(VI-2)R2、R2’、R6及びR6’は、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子から選ばれる同一又は異なるハロゲン原子、且つ、R3、R3’、R5及びR5’は水素原子、
(VI-3)R3及びR3’は、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子から選ばれる同一又は異なるハロゲン原子、且つ、R2、R2’、R5、R5’、R6及びR6’は水素原子、又は、
(VI-4)R3、R3’、R5及びR5’は、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子から選ばれる同一又は異なるハロゲン原子、且つ、R2、R2’、R6及びR6’は水素原子である、請求項14又は15に記載の硬化剤。
【請求項20】
R12及びR13は、
一方が水素原子、
他方が、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子から選ばれる同一又は異なるハロゲン原子で水素原子が置換された炭素数1~3のアルキル基、又は、炭素数6~18のアリール基であり、
R3、R3’、R6及びR6’は、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子から選ばれる同一又は異なるハロゲン原子であり、
R2、R2’、R5及びR5’は、水素原子である、請求項14又は15に記載の硬化剤。
【請求項21】
R12及びR13は水素原子であり、
R3及びR3’が、前記一般式(ii)で表される基、且つ、R2、R2’、R5、R5’、R6及びR6’が水素原子であり、R21及びR22が、炭素数1~3のアルキル基である、請求項14又は15に記載の硬化剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンウレア樹脂形成性組成物、接着剤及びイソシアネート用硬化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンウレア樹脂は、ウレタン結合とウレア結合を導入可能な成分の反応により合成することができ、一般的には主剤にはポリイソシアネートを含有させ、硬化剤にポリアミンを含有させる。硬化剤の成分であるポリアミンとしては、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(以下、「MOCA」と呼ぶ。)が広く使用されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
MOCAを使用したポリウレタンウレア樹脂は、一般に、機械強度、耐久性、及び耐寒性に優れ、その用途は塗料、被覆材、印刷インキ用バインダー等、多岐に亘るが、接着剤に適用される場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-95996号公報
【特許文献2】特開平6-16765号公報
【特許文献3】特開2020-111717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようにMOCAは有用な化合物であるが、残念ながら変異原性試験(Ames試験)において陽性であり、MOCAと化学構造が相違するジアミン(MOCA代替品)が求められる。しかしながら、現在のところ、ジアミンがどのような化学構造を有していれば、MOCAを硬化剤として使用した場合と同等又はそれ以上の特性を発揮するポリウレタンウレア樹脂が得られるかの知見はない。
【0006】
そこで、本発明の目的は、MOCAと化学構造の異なるジアミンを硬化剤成分に使用したポリウレタンウレア樹脂形成性組成物であって、接着剤として適用した場合に実用上十分な接着特性を発揮する組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、硬化剤として使用するジアミンとして、4,4’-ジアミノジフェニルメタンの骨格を有するジアミンであって、3,3’位又は5,5’位のみが塩素置換された骨格ではなく、特定部位が所定の置換基で置換された構造を有する化合物を使用した場合に、上記目的が達成されることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、ポリイソシアネートを含有する主剤と硬化剤とを備えるポリウレタンウレア樹脂形成性組成物であって、上記硬化剤は、下記一般式(1)で表される化合物を含有する組成物を提供する。
【化1】
[式中、
R
11は、下記一般式(i)で表される2価の基であり、
【化2】
R
12及びR
13は、それぞれ独立に、水素原子の少なくとも1つがハロゲン置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基、水素原子の少なくとも1つがハロゲン置換されていてもよい炭素数6~18のアリール基、又は水素原子であり、R
12及びR
13は一緒になって、これらが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよく、
R
2及びR
2’は、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1~3のアルコキシ基を示し、
(I)R
12、R
13、R
2及びR
2’が、全て水素原子である場合、
(I-1)R
3及びR
3’が塩素原子以外のハロゲン原子、且つR
5、R
5’、R
6及びR
6’が水素原子、
(I-2)R
3、R
3’、R
5及びR
5’がハロゲン原子、且つR
6及びR
6’が水素原子、又は
(I-3)R
3及びR
3’が、下記一般式(ii)で表される基、且つ、R
5、R
5’、R
6及びR
6’が水素原子であり、R
21及びR
22は、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基であり、
【化3】
(II)R
12及びR
13が水素原子であり、R
2及びR
2’が、ハロゲン原子又は炭素数1~3のアルコキシ基である場合、
(II-1)R
3、R
3’、R
5、R
5’、R
6及びR
6’が水素原子又はハロゲン原子、
(II-2)R
3及びR
3’がハロゲン原子、且つR
5、R
5’、R
6及びR
6’が水素原子、
(II-3)R
5及びR
5’がハロゲン原子、且つR
3、R
3’、R
6及びR
6’が水素原子、
(II-4)R
6及びR
6’がハロゲン原子、且つR
3、R
3’、R
5及びR
5’が水素原子、
(II-5)R
3、R
3’、R
5及びR
5’がハロゲン原子、且つR
6及びR
6’が水素原子、
(II-6)R
3、R
3’、R
6及びR
6’がハロゲン原子、且つR
5及びR
5’が水素原子、又は、
(II-7)R
5、R
5’、R
6及びR
6’がハロゲン原子、且つR
3及びR
3’が水素原子、であり、
(III)R
12及びR
13の少なくとも1つが水素原子ではない場合、
R
3、R
3’、R
6及びR
6’がハロゲン原子、且つR
2、R
2’、R
5及びR
5’が水素原子である。
なお、-R
11-を軸として、2つのベンゼン環の一方又は双方が180度回転した化学式で表される化合物も、前記一般式(1)で表される化合物に含まれる。また、一般式における*は結合手を意味する。]
【0009】
なお、下記式(2a)で表される化合物は一般式(1)に含まれる化合物であるが、「-R
11-を軸として、2つのベンゼン環の一方又は双方が180度回転した化学式で表される化合物も、一般式(1)で表される化合物に含まれる」とは、下記式(2a)で化合物を表したとき、この化合物には、下記式(2a-1)、(2a-2)及び(2a-3)で表される化合物も含まれるとの意味である。
【化4】
【0010】
上記ポリウレタンウレア樹脂形成性組成物は、一般式(1)で表される化合物を硬化剤として含有しており、実用上十分な接着特性を発揮する。なお、硬化剤として含まれる一般式(1)で表される化合物は、4,4’-ジアミノジフェニルメタンの骨格を有しながら、3,3’位又は5,5’位のみが塩素置換された骨格ではなく、上記のような置換基を上記の部位に有する化合物である。したがって、MOCAとは化学構造が明白に相違する。
【0011】
本明細書中における「実用上十分な接着特性」とは、被着体としてアルミニウム板を用いた場合の引張りせん断強度が、23℃において10MPa以上、又は180℃において0.5MPa以上であることを意味する。可使時間(主剤と硬化剤を混合した後、混合物が接着剤として使用できる間の時間。ポットライフとも呼ばれる。)に関しては、接着剤の用途によって、短い方が好ましい場合と長い方が好ましい場合があるため、好ましい数値は一義的に決定できないが、使用する接着剤の量が多い場合や大型の部材を接着するような場合は、可使時間は長い方が好ましい。長い可使時間が求められる場合、その評価は、走査型振動針式硬化試験機(SVNC)を用いて計測される振幅値が、初期の10000から6000まで低下するのに要した時間で行うことができ、この時間が100秒以上であることが好ましい。
【0012】
現在、種々の代替MOCAの検討がなされているが、多くの代替MOCAは、得られるポリウレタンウレア樹脂の物性がMOCAを用いた場合よりも劣る場合が多い。また、MOCA硬化物と同等以上の物性を得るために、1,5-ナフタレンジイソシアネート変性体のプレポリマーを使用し、硬化剤にカルボキシ基を有するジアミンを使用した系が検討されているが(例えば、特許文献2)、1,5-ナフタレンジイソシアネートは高融点であり、取扱いが難しい。MOCAの毒性を考慮し、非MOCA系によるポリウレタンウレア樹脂形成性組成物を志向したもの(例えば、特許文献3)もあるが、MOCAの代替としては、得られる樹脂組成物の強度が十分でない。しかしながら、本発明によれば、一般式(1)で表される化合物をMOCA代替品として使用することにより、このような問題点が解消される。
【0013】
一般式(1)で表される化合物において、R2及びR2’、R3及びR3’、R5及びR5’、並びに、R6及びR6’は、それぞれ同一の原子又は官能基であることが好ましい。すなわち、メチレン基を中心に対称的な構造を有していることが好ましい。このような構造は一般式(1)で表される化合物を合成する上で有利である。
【0014】
一般式(1)で表される化合物における、ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子であり、炭素数1~3のアルコキシ基は、メトキシ基であることが好ましい。このような構造の化合物を含むポリウレタンウレア樹脂形成性組成物は、接着特性において特に優れる。なお、R2、R2’、R5、R5’、R6及びR6’が水素原子である場合は、R3及びR3’は塩素原子以外のハロゲン原子であるが、当該ハロゲン原子は、好適には、フッ素原子又は臭素原子から選ばれる。
【0015】
本発明の他の態様としては、以下が含まれる。なお、この態様の例としては、実施例5~10の組成物がある。
R12及びR13は、水素原子であり、
(IV-1)R3、R3’、R6及びR6’は水素原子、且つ、R2、R2’、R5及びR5’は、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子から選ばれる同一又は異なるハロゲン原子、又は、
(IV-2)R3、R3’、R6及びR6’は水素原子、R2及びR2’はメトキシ基、且つR5及びR5’は、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子から選ばれる同一又は異なるハロゲン原子である、上記組成物。
【0016】
本発明の他の態様としては、更に以下が含まれる。なお、この態様の例としては、実施例4、12~14の組成物がある。
R12及びR13は、水素原子であり、
(V)R2、R2’、R3及びR3’は、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子から選ばれる同一又は異なるハロゲン原子であり、
(V-1)R5及びR5’の組、並びに、R6及びR6’の組は、一方の組が、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子から選ばれる同一又は異なるハロゲン原子であり、他方の組が、水素原子、
(V-2)R5、R5’、R6及びR6’が、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子から選ばれる同一又は異なるハロゲン原子、又は、
(V-3)R5、R5’、R6及びR6’が、水素原子である、上記組成物。
【0017】
本発明の他の態様としては、更に以下が含まれる。なお、この態様の例としては、実施例1~3、11の組成物がある。
R12及びR13は、水素原子であり、
(VI-1)R2及びR2’は、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子から選ばれる同一又は異なるハロゲン原子、且つ、R3、R3’、R5、R5’、R6及びR6’は水素原子、
(VI-2)R2、R2’、R6及びR6’は、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子から選ばれる同一又は異なるハロゲン原子、且つ、R3、R3’、R5及びR5’は水素原子、
(VI-3)R3及びR3’は、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子から選ばれる同一又は異なるハロゲン原子、且つ、R2、R2’、R5、R5’、R6及びR6’は水素原子、又は、
(VI-4)R3、R3’、R5及びR5’は、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子から選ばれる同一又は異なるハロゲン原子、且つ、R2、R2’、R6及びR6’は水素原子である、上記組成物。
【0018】
本発明の他の態様としては、更に以下が含まれる。なお、この態様の例としては、実施例15~16の組成物がある。
R12及びR13は、
一方が水素原子、
他方が、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子から選ばれる同一又は異なるハロゲン原子で水素原子が置換された炭素数1~3のアルキル基、又は、炭素数6~18のアリール基であり、
R3、R3’、R6及びR6’は、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子から選ばれる同一又は異なるハロゲン原子であり、
R2、R2’、R5及びR5’は、水素原子である、上記組成物。
【0019】
本発明の他の態様としては、更に以下が含まれる。なお、この態様の例としては、実施例17~18の組成物がある。
R12及びR13は水素原子であり、
R3及びR3’が、一般式(ii)で表される基、且つ、R2、R2’、R5、R5’、R6及びR6’が水素原子であり、R21及びR22が、炭素数1~3のアルキル基である、上記組成物。
【0020】
上記態様のポリウレタンウレア樹脂形成性組成物は、MOCAを使用した組成物と同程度又はそれ以上の可使時間(SVNC6000到達時間)を示す。また、23℃及び/又は180℃における接着強度も実用上十分であり、23℃及び/又は180℃における凝集破壊率も高くすることが可能になる。
【0021】
ポリイソシアネートは、ウレタンプレポリマーを含んでいてもよい。また、ポリイソシアネートは、ウレタン結合を有さないポリイソシアネートを含んでいてもよく、この場合は、硬化剤にはポリオールを含有させる。ウレタンプレポリマーを構成するポリオールや、硬化剤に含まれるポリオールとしては、ポリエステル系、ポリエーテル系等の種々のタイプが適用可能であることから、上記構成により、最終用途に従って多様な分子設計が可能となる。
【0022】
硬化剤は、水酸基数が3以上のポリオールを更に含んでいてもよい。硬化剤が、水酸基数が3以上のポリオールを含むことで、得られるポリウレタンウレア樹脂の架橋密度が上昇するため、ポリウレタンウレア樹脂成形品の機械的強度が向上する。
【0023】
硬化剤のイソシアネート反応性基の全量に対する、主剤のイソシアネート基の全量の比が、当量比で0.8~1.2であることが好ましい。当量比がこの範囲内であれば、可使時間が長く、機械強度に優れるポリウレタンウレア樹脂形成性組成物が得られやすい。なお、イソシアネート反応性基とは、水酸基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基等のイソシアネート基と反応する活性水素を有する官能基をいう。
【0024】
本発明はまた、上記ポリウレタンウレア樹脂形成性組成物を含む接着剤を提供する。
【0025】
本発明は更に、下記一般式(1)で表される、イソシアネート用硬化剤を提供する。
【化5】
[式中、
R
11は、下記一般式(i)で表される2価の基であり、
【化6】
R
12及びR
13は、それぞれ独立に、水素原子の少なくとも1つがハロゲン置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基、水素原子の少なくとも1つがハロゲン置換されていてもよい炭素数6~18のアリール基、又は水素原子であり、R
12及びR
13は一緒になって、これらが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよく、
R
2及びR
2’は、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1~3のアルコキシ基を示し、
(I)R
12、R
13、R
2及びR
2’が、全て水素原子である場合、
(I-1)R
3及びR
3’が塩素原子以外のハロゲン原子、且つR
5、R
5’、R
6及びR
6’が水素原子、
(I-2)R
3、R
3’、R
5及びR
5’がハロゲン原子、且つR
6及びR
6’が水素原子、又は
(I-3)R
3及びR
3’が、下記一般式(ii)で表される基、且つ、R
5、R
5’、R
6及びR
6’が水素原子であり、R
21及びR
22は、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基であり、
【化7】
(II)R
12及びR
13が水素原子であり、R
2及びR
2’が、ハロゲン原子又は炭素数1~3のアルコキシ基である場合、
(II-1)R
3、R
3’、R
5、R
5’、R
6及びR
6’が水素原子又はハロゲン原子、
(II-2)R
3及びR
3’がハロゲン原子、且つR
5、R
5’、R
6及びR
6’が水素原子、
(II-3)R
5及びR
5’がハロゲン原子、且つR
3、R
3’、R
6及びR
6’が水素原子、
(II-4)R
6及びR
6’がハロゲン原子、且つR
3、R
3’、R
5及びR
5’が水素原子、
(II-5)R
3、R
3’、R
5及びR
5’がハロゲン原子、且つR
6及びR
6’が水素原子、
(II-6)R
3、R
3’、R
6及びR
6’がハロゲン原子、且つR
5及びR
5’が水素原子、又は、
(II-7)R
5、R
5’、R
6及びR
6’がハロゲン原子、且つR
3及びR
3’が水素原子、であり、
(III)R
12及びR
13の少なくとも1つが水素原子ではない場合、
R
3、R
3’、R
6及びR
6’がハロゲン原子、且つR
2、R
2’、R
5及びR
5’が水素原子である。
なお、-R
11-を軸として、2つのベンゼン環の一方又は双方が180度回転した化学式で表される化合物も、前記一般式(1)で表される化合物に含まれる。]
【0026】
上記一般式(1)で表される化合物は、MOCAに代わる硬化剤として、イソシアネート用の硬化剤に用いることができる。
【0027】
一般式(1)で表されるイソシアネート用硬化剤において、R2、R2’、R3、R3’、R5、R5’、R6、R6’、R11、R12、R13、R21、及びR22、並びに、ハロゲン原子及び炭素数1~3のアルコキシ基に関する好適例や好適な組み合わせは、上述のポリウレタンウレア樹脂形成性組成物において記載した通りであり、上記した効果が奏される。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、MOCAと化学構造の異なるジアミンを硬化剤成分に使用したポリウレタンウレア樹脂形成性組成物であって、接着剤として適用した場合に実用上十分な接着特性を発揮する組成物が提供可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
実施形態に係るポリウレタンウレア樹脂形成性組成物は、主剤と硬化剤からなる。
【0030】
主剤は、ポリイソシアネートを含む。ここで、ポリイソシアネートは、分子中に2以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物であればよい。
【0031】
ポリイソシアネートとしては、有機ポリイソシアネートを用いることができ、有機ポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族イソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、反応性や粘度の観点から、芳香族ポリイソシアネートを用いることが好ましい。
【0032】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート/2,6-トリレンジイソシアネート混合物、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート/4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート混合物、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート/4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート混合物、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート/2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート/4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート混合物、m-キシリレンジイソシアネート、p-キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、2-ニトロジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、2,2’-ジフェニルプロパン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、ナフチレン-1,4-ジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、3,3’-ジメトキシジフェニル-4,4’-ジイソシアネート等が挙げられる。
【0033】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリオキシエチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、2,2’-ジメチルペンタンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ブテンジイソシアネート、1,3-ブタジエン-1,4-ジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、1,8-ジイソシアネート-4-イソシアネートメチルオクタン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアネート-5-イソシアネートメチルオクタン、ビス(イソシアネートエチル)カーボネート、ビス(イソシアネートエチル)エーテル、1,4-ブチレングリコールジプロピルエーテル-α,α’-ジイソシアネート、リジンジイソシアネートメチルエステル、2-イソシアネートエチル-2,6-ジイソシアネートヘキサノエート、2-イソシアネートプロピル-2,6-ジイソシアネートヘキサノエート等が挙げられる。
【0034】
脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジメチルメタンジイソシアネート、2,2’-ジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ビス(4-イソシアネート-n-ブチリデン)ペンタエリスリトール、水素化された水添ダイマー酸ジイソシアネート、2-イソシアネートメチル-3-(3-イソシアネートプロピル)-5-イソシアネートメチル-ビシクロ〔2.2.1〕-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-3-(3-イソシアネートプロピル)-6-イソシアネートメチル-ビシクロ〔2.2.1〕-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-2-(3-イソシアネートプロピル)-5-イソシアネートメチル-ビシクロ〔2.2.1〕-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-2-(3-イソシアネートプロピル)-6-イソシアネートメチル-ビシクロ〔2.2.1〕-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-3-(3-イソシアネートプロピル)-5-(2-イソシアネートエチル)-ビシクロ-〔2.2.1〕-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-3-(3-イソシアネートプロピル)-6-(2-イソシアネートエチル)-ビシクロ-〔2.2.1〕-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-2-(3-イソシアネートプロピル)-5-(2-イソシアネートエチル)-ビシクロ-〔2.2.1〕-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-2-(3-イソシアネートプロピル)-6-(2-イソシアネートエチル)-ビシクロ-〔2.2.1〕-ヘプタン、2,5-ビス(イソシアネートメチル)-ビシクロ〔2.2.1〕-ヘプタン、水素化された水添ジフェニルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水素化された水添トリレンジイソシアネート、水素化された水添キシレンジイソシアネート、水素化された水添テトラメチルキシレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0035】
ポリイソシアネートは、これらの中の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
また、上記のポリイソシアネートは、イソシアネート基末端ウレタン化合物(ウレタンプレポリマー)であってもよい。主剤がウレタンプレポリマーを含む場合、分子内に様々な分子を組み込むことが可能であり、反応生成物であるポリウレタンウレア樹脂に対して、最終用途に適合した様々な性能を付与できる。ウレタンプレポリマーは、ポリイソシアネートとポリオールとを、ポリイソシアネートが過剰になるように反応して得ることができる。
【0037】
ウレタンプレポリマーに用いられるポリオールとしては、例えば、低分子ポリオール、ポリエステルポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオールが挙げられる。これらの中でも、得られるポリウレタンウレア樹脂の耐水性、耐薬品性又は耐久性を向上させる観点から、ポリエーテルポリオール又はポリカーボネートポリオールを用いることが好ましい。
【0038】
上記低分子ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-n-ヘキサデカン-1,2-エチレングリコール、2-n-エイコサン-1,2-エチレングリコール、2-n-オクタコサン-1,2-エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、水素添加ビスフェノールA、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、テトラメチロールメタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、D-ソルビトール、キシリトール、D-マンニトール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン等の分子量500未満のポリオールが挙げられる。
【0039】
上記ポリエステルポリオールとしては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、グルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,4-シクロヘキシルジカルボン酸、α-ハイドロムコン酸、β-ハイドロムコン酸、α-ブチル-α-エチルグルタル酸、α,β-ジエチルサクシン酸、マレイン酸、フマル酸等のジカルボン酸またはこれらの無水物等の1種類以上と;エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β-ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール等の1種類以上と;の縮重合反応から得られるものが挙げられる。
【0040】
上記ポリオレフィン系ポリオールとしては、例えば、水酸基末端ポリブタジエンやその水素添加物、水酸基含有塩素化ポリオレフィン等が挙げられる。
【0041】
上記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、低分子ポリオール1種類以上と、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のアルキレンカーボネート類、ジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジアントリルカーボネート、ジフェナントリルカーボネート、ジインダニルカーボネート等のカーボネート類の1種類以上との脱アルコール反応や脱フェノール反応から得られるものが挙げられる。
【0042】
上記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、低分子ポリオール又はエチレンジアミン、プロピレンジアミン、トルエンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、キシリレンジアミン等の低分子ポリアミン等のような活性水素基を2個有する化合物を開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のようなアルキレンオキサイド類を付加重合させることによって得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。また、ポリエーテルポリオールとしては、例えば、メチルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル類、フェニルグリシジルエーテル等のアリールグリシジルエーテル類、テトラヒドロフラン等の環状エーテルモノマーを開環重合することで得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。
【0043】
ポリオールは、これらの中の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
ウレタンプレポリマーに用いられるポリオールは、水酸基価が450KOHmg/g以下のものが好ましい。
【0045】
ウレタンプレポリマーは、例えば以下の製造方法により合成可能である。すなわち、撹拌容器内にポリイソシアネートを投入後、有機溶剤の存在下又は非存在下、容器内の温度を40~70℃に保ちながらポリオールを投入し撹拌する。続いて、撹拌容器内の温度を70~90℃に保ちながら、2~5時間程度ウレタン化反応を進める。ウレタン化反応の終了は、イソシアネート含量(NCO含量)を確認することで判断することができる。
【0046】
ポリオールの水酸基に対する、ポリイソシアネートのイソシアネート基の当量比は1.0を超えていればよい。当量比は、得られるウレタンプレポリマーのNCO含量が15~28%となるように適宜調整することができる。ウレタンプレポリマーのNCO含量が上記範囲内であれば、機械強度に優れるポリウレタンウレア樹脂を得られやすい。
【0047】
ウレタン化反応で使用できる有機溶剤としては、有機溶剤の存在下で反応に影響を与えない溶剤が適宜選ばれてよく、50~100℃まで昇温しても揮発しない有機溶剤が好ましい。有機溶剤としては、例えば、オクタン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネート等のグリコールエーテルエステル、ジオキサン等のエーテル、ヨウ化メチレン、モノクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホニルアミド等の極性非プロトン溶媒が挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
ウレタン化反応に際し、ウレタン化触媒を必要により使用してもよい。ウレタン化触媒としては、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ナフテン酸亜鉛、ビスマス化合物等の金属系触媒、トリエチレンジアミン、N-メチルモルホリン等のアミン系触媒等の通常の反応触媒が用いられてよく、これにより、反応速度を速くし反応温度を低くすることができる。
【0049】
主剤は、ポリイソシアネート以外にその他の成分を含んでいてもよく、その他の成分は、ポリイソシアネートと混合したときに、イソシアネート基と反応しないものであれば特に制限されない。その他成分としては、フィラー、酸化防止剤、安定剤、耐候剤、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、防腐剤、増量剤、着色剤等が挙げられる。なお、フィラーについては後述する。
【0050】
実施形態に係るポリウレタンウレア樹脂形成性組成物に含まれる硬化剤は、一般式(1)におけるR
12及びR
13が共に水素原子である場合において、下記一般式(1A)で表される化合物(イソシアネート用硬化剤に該当する。)を含む。
【化8】
【0051】
一般式(1A)において、R
2及びR
2’は、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1~3のアルコキシ基を示し、R
2及びR
2’が、水素原子である場合、他の置換基は、以下の(a)又は(b)のようになる。
(a):R
3及びR
3’が塩素原子以外のハロゲン原子又は下記一般式(ii)で表される基、且つR
5、R
5’、R
6及びR
6’が水素原子(上述のとおり、R
21及びR
22は、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基である。)
【化9】
(b):R
3、R
3’、R
5及びR
5’がハロゲン原子、且つR
6及びR
6’が水素原子
(a)の場合は、以下の一般式(2)で表される構造を有する化合物であり、(b)の場合は、以下の一般式(3)で表される構造を有する化合物である。
【化10】
【化11】
【0052】
一般式(2)において、R3及びR3’が塩素原子以外のハロゲン原子である場合、当該ハロゲン原子としては、フッ素原子、臭素原子が挙げられるが、いずれもフッ素原子であることが好ましい。一般式(3)において、R3、R3’、R5及びR5’は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が挙げられるが、いずれもフッ素原子であることが好ましい。
【0053】
一般式(2)の化合物の好適な態様として、例えば、下記式(2a)、(2b)及び(2c)で表される化合物が挙げられる。
【化12】
【化13】
【化14】
【0054】
一般式(3)の化合物の好適な態様として、例えば、下記式(3a)で表される化合物が挙げられる。
【化15】
【0055】
一般式(1)において、R2及びR2’が、ハロゲン原子又は炭素数1~3のアルコキシ基である場合、他の置換基は、以下の(c)~(j)のいずれかになる。
(c):R3、R3’、R5、R5’、R6及びR6’が水素原子、
(d):R3、R3’、R5、R5’、R6及びR6’がハロゲン原子、
(e):R3及びR3’がハロゲン原子、且つR5、R5’、R6及びR6’が水素原子、
(f):R5及びR5’がハロゲン原子、且つR3、R3’、R6及びR6’が水素原子、
(g):R6及びR6’がハロゲン原子、且つR3、R3’、R5及びR5’が水素原子、
(h):R3、R3’、R5及びR5’がハロゲン原子、且つR6及びR6’が水素原子、
(i):R3、R3’、R6及びR6’がハロゲン原子、且つR5及びR5’が水素原子、
(j):R5、R5’、R6及びR6’がハロゲン原子、且つR3及びR3’が水素原子。
【0056】
(c)の場合は、以下の一般式(4)で表される構造を有する化合物、(d)の場合は、以下の一般式(11)で表される構造を有する化合物、(e)の場合は、以下の一般式(5)で表される構造を有する化合物、(f)の場合は、以下の一般式(6)で表される構造を有する化合物、(g)の場合は、以下の一般式(8)で表される構造を有する化合物、(h)の場合は、以下の一般式(7)で表される構造を有する化合物、(i)の場合は、以下の一般式(9)で表される構造を有する化合物、(j)の場合は、以下の一般式(10)で表される構造を有する化合物、である。
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【0057】
一般式(4)~(11)におけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が挙げられる。一般式(4)~(11)における炭素数1~3のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基が挙げられ、メトキシ基、エトキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。
【0058】
一般式(4)の好適な態様として、例えば、下記式(4a)で表される化合物が挙げられる。
【化24】
【0059】
一般式(5)の好適な態様として、例えば、下記式(5a)で表される化合物が挙げられる。
【化25】
【0060】
一般式(6)の好適な態様として、例えば、下記式(6a)~(6f)で表される化合物が挙げられる。
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【0061】
一般式(7)の好適な態様として、例えば、下記式(7a)、(7b)で表される化合物が挙げられる。
【化32】
【化33】
【0062】
一般式(8)の好適な態様として、例えば、下記式(8a)で表される化合物が挙げられる。
【化34】
【0063】
一般式(9)の好適な態様として、例えば、下記式(9a)、(9b)で表される化合物が挙げられる。
【化35】
【化36】
【0064】
一般式(10)の好適な態様として、例えば、下記式(10a)で表される化合物が挙げられる。
【化37】
【0065】
一般式(11)の好適な態様として、例えば、下記式(11a)で表される化合物が挙げられる。
【化38】
【0066】
一般式(2)~(11)で表される化合物を使用したポリウレタンウレア樹脂形成性組成物は、実用上十分な接着特性を発揮する。なかでも、一般式(4)~(11)で表される化合物において、R2及びR2’が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はメトキシ基である場合、特には、フッ素原子又はメトキシ基である場合は、硬化性の点で、MOCAを使用したポリウレタンウレア樹脂形成性組成物と同等以上の特性を発揮する。
【0067】
ポリウレタンウレア樹脂形成性組成物のより好ましい態様としては、R2、R2’、R3、R3’、R5、R5’、R6及びR6’が以下の定義に従う、一般式(1)で表される化合物を硬化剤として含む組成物が挙げられる。
すなわち、
R2及びR2’は、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1~3のアルコキシ基を示し、
R2及びR2’が、水素原子である場合、
R3及びR3’が塩素原子以外のハロゲン原子、且つR5、R5’、R6及びR6’が水素原子、又は、
R3、R3’、R5及びR5’がハロゲン原子、且つR6及びR6’が水素原子であり、
R2及びR2’が、ハロゲン原子である場合、
R3、R3’、R5、R5’、R6及びR6’が水素原子又はハロゲン原子、
R3及びR3’がハロゲン原子、且つR5、R5’、R6及びR6’が水素原子、
R5及びR5’がハロゲン原子、且つR3、R3’、R6及びR6’が水素原子、
R6及びR6’がハロゲン原子、且つR3、R3’、R5及びR5’が水素原子、
R3、R3’、R5及びR5’がハロゲン原子、且つR6及びR6’が水素原子、又は、
R3、R3’、R6及びR6’がハロゲン原子、且つR5及びR5’が水素原子であり、
R2及びR2’が、炭素数1~3のアルコキシ基である場合、
R5及びR5’がハロゲン原子、且つR3、R3’、R6及びR6’が水素原子、である。
但し、複数存在するハロゲン原子及び炭素数1~3のアルコキシ基は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0068】
実施形態に係るポリウレタンウレア樹脂形成性組成物に含まれる硬化剤としては、一般式(1)におけるR
12及びR
13の少なくとも一方が水素原子でない場合において、下記一般式(1B)で表される化合物(イソシアネート用硬化剤に該当する。)を含む。R
12及びR
13は、それぞれ独立に、水素原子の少なくとも1つがハロゲン置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基、水素原子の少なくとも1つがハロゲン置換されていてもよい炭素数6~18のアリール基、又は水素原子であり、R
12及びR
13は一緒になって、これらが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよい。
【化39】
【0069】
R12及びR13としては、それぞれ独立に、水素原子の少なくとも1つがハロゲン置換されていてもよい炭素数1~3のアルキル基、水素原子の少なくとも1つがハロゲン置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基、又は水素原子、であることが好ましい。また、R12及びR13が一緒になって、これらが結合する炭素原子と共に環を形成する場合は、5員環又は6員環が形成されることが好ましい。なお、R2~R6については、一般式(1)におけるのと同義である。炭素数1~3のアルキル基については、水素原子が全てハロゲン置換(好ましくはフッ素置換)されていてもよい。炭素数6~12のアリール基は、ハロゲン置換がなくてもよい。炭素数1~3のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。また、炭素数6~12のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基が挙げられる。
【0070】
一般式(1B)で表される化合物の好適な態様としては、下記式(21)及び(22)で表されるものが挙げられる。
【化40】
【化41】
【0071】
一般式(1)で表される化合物は、例えば、下記式(12a)及び(12b)で表されるアニリン化合物と、ホルムアルデヒド又はCO(R
12)(R
13)で表される化合物とを塩酸等の酸触媒下にて反応させることで製造することができる。式(12a)及び(12b)における、R
2、R
3、R
5、R
6、R
2’、R
3’、R
5’、R
6’、R
12及びR
13は、一般式(1)と同様である。なお、R
2及びR
2’、R
3及びR
3’、R
5及びR
5’、R
6及びR
6’は、それぞれ同一種であることが好ましく、その場合は、式(12a)及び(12b)で表されるアニリン化合物は同一化合物となる。
【化42】
【0072】
一般式(1)で表される化合物において、R3及びR3’が一般式(ii)で表される基である場合、一般式(1)で表される化合物においてR3及びR3’がハロゲン原子、且つR5、R5’、R6、R6’、R12、R13、R2及びR2’が水素原子である化合物を原料として、例えばChemistry Letter,2009年,38巻,738-739頁で開示されている方法などを用いることで製造することができる。
【0073】
一般式(1)で表される化合物の同定は、1H-NMR、19F-NMR、マススペクトル(MS)、赤外線分光法(IR)、液体クロマトグラフ、ゲル浸透クロマトグラフ等により可能である。
【0074】
硬化剤は、主剤に含まれるポリイソシアネートがウレタン結合を有さない場合、少なくとも一般式(1)で表される化合物及びポリオールを含む。
【0075】
硬化剤に含まれるポリオールとしては、上記ウレタンプレポリマーの製造に用いることができるポリオールの例示と同様のものが挙げられる。
【0076】
硬化剤は、水酸基数が3以上のポリオールを更に含むことができる。硬化物が、水酸基数が3以上のポリオールを含むことで、該硬化物とポリイソシアネートとから得られるポリウレタンウレア樹脂の架橋密度が上昇するため、ポリウレタンウレア樹脂成形品の機械的強度の向上が期待される。
【0077】
水酸基数が3以上のポリオールとしては、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、テトラメチロールメタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、D-ソルビトール、キシリトール、D-マンニトール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ヘキソール等が挙げられ、特にトリメチロールプロパンが好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0078】
硬化剤は、一般式(1)で表される化合物及びポリオール以外にも活性水素含有化合物(以下、「任意成分としての活性水素含有化合物」という。)を含むことができる。
【0079】
任意成分としての活性水素含有化合物としては、例えば、チオール基、カルボキシル基等の官能基を有する化合物が挙げられる。これらは、1種のみ用いられても、2種以上組み合わせて用いられてもよい。
【0080】
硬化剤が、任意成分としての活性水素含有化合物を含む場合、この含有量は、硬化剤全質量に対して、例えば、0質量%超30質量%以下、0質量%超20質量%以下、0質量%超10質量%以下、又は0質量%超5質量%以下であってよい。
【0081】
硬化剤は、活性水素含有化合物以外のその他の成分を含んでいてもよい。その他成分としては、フィラー、酸化防止剤、安定剤、耐候剤、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、防腐剤、増量剤、着色剤等が挙げられる。なお、フィラーについては後述する。
【0082】
硬化剤が、一般式(1)で表される化合物以外の成分を含む場合、硬化剤は含有成分の混合により得ることができる。例えば、容器に一般式(1)で表される化合物以外の成分を入れ、窒素雰囲気下で、20~100℃の範囲から適宜選ばれた温度、より好ましくは40~80℃の範囲から適宜選ばれた温度に保ちながら、1~3時間程度撹拌したところに、融点以上で溶融した一般式(1)で表される化合物を添加して混合することにより得ることができる。
【0083】
硬化剤の水酸基価は、250~350KOHmg/gとすることができ、より好ましくは280~330KOHmg/gである。硬化剤の水酸基価が上記範囲内であれば、接着強度及び柔軟性に優れる接着剤の作製に資するポリウレタンウレア樹脂形成性組成物を得ることができる。
【0084】
実施形態に係るポリウレタンウレア樹脂形成性組成物は、上述した主剤と硬化剤を備えていればよく、両者が分かれて存在する2液タイプであっても、両者を混合した1液タイプであってもよい。主剤と硬化剤を混合するときの温度及び時間は、例えば、10~35℃で、1~60分間とすることができる。
【0085】
主剤と硬化剤を混合する方法は任意であり、例えば、手で混合してもよく、機械式回転ミキサー、スタティックミキサー等を用いて混合してもよい。
【0086】
混合する主剤と硬化剤との質量配合比(硬化剤/主剤)は、0.5~1.9とすることができ、より好ましくは0.7~1.3である。質量配合比(硬化剤/主剤)が上記範囲内であれば、可使時間が長く、機械強度に優れる接着剤の作製に資するポリウレタンウレア樹脂形成性組成物が得られやすい。
【0087】
硬化剤に含まれるイソシアネート反応性基の総量に対する、主剤のイソシアネート基の総量の比は、当量比で0.8~1.2であることが好ましく、より好ましくは0.9~1.1である。当量比が上記範囲内であれば、可使時間が長く、機械強度に優れる接着剤の作製に資するポリウレタンウレア樹脂形成性組成物が得られやすい。
【0088】
ポリウレタンウレア樹脂形成性組成物を硬化して得られる、ポリウレタンウレア樹脂のジアミン濃度(すなわち、一般式(1)で表される化合物の濃度)は、0.05~0.5mmоl/gであることが好ましく、より好ましくは0.1~0.4mmоl/gである。ポリウレタンウレア樹脂のジアミン基濃度が上記範囲内であると、接着特性及び硬化性(可使時間の長さ)の少なくとも一方が顕著に向上する。なお、ジアミン濃度は、ポリウレタンウレア樹脂形成性組成物の全量(g)における、一般式(1)で表される化合物の量(mmol)から求めることができる。
【0089】
ポリウレタンウレア樹脂形成性組成物を硬化して得られる、ポリウレタンウレア樹脂のウレタン基濃度は、2.0~5.0mmоl/gであることが好ましく、より好ましくは2.0~4.5mmоl/gである。ポリウレタンウレア樹脂のウレタン基濃度が上記範囲内であると、基材密着性が向上する。なお、ウレタン基濃度は、ポリウレタンウレア樹脂形成性組成物の全量(g)における、イソシアネート量(mmol。ポリイソシアネート1分子当たりのイソシアネート基数がnのときは、ポリイソシアネート量をn倍する。)から、ジアミン量(mmol)の2倍を差し引いた値から求めることができる。
【0090】
ポリウレタンウレア樹脂形成性組成物を硬化して得られる、ポリウレタンウレア樹脂の架橋密度は、0.05mmоl/g以上、0.10mmоl/g以上、0.15mmоl/g以上、又は0.20mmоl/g以上とすることができる。架橋密度の上限は用途にもよるが、例えば、1.0mmоl/gとすることができる。ポリウレタンウレア樹脂の架橋密度が上記範囲内であると、機械強度が向上する。なお、架橋密度は、ポリウレタンウレア樹脂形成性組成物の全量における、水酸基数が3以上のポリオールの量から求めることができる。
【0091】
主剤と硬化剤の少なくとも一方は、フィラーを更に含有してもよい。フィラーとしては、公知のフィラーが挙げられ、例えば、無機フィラー、有機フィラーが挙げられる。これらの中でも無機フィラーが好ましい。
【0092】
ポリウレタンウレア樹脂形成性組成物を用いた接着剤については、例えば、金属、プラスチック等の被着体の少なくとも一方に塗布して、貼り合わせ、その後、80~200℃又は100~150℃の条件下で、3~7時間硬化させ、接着を完了させることができる。
【実施例0093】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0094】
一般式(1)で表される化合物は、以下に述べる合成例記載の方法で合成したが、核磁気共鳴(NMR)スペクトルについては、以下の方法で取得した。
【0095】
(NMRスペクトル)
NMRスペクトルはAscendTM AVANCE III HD(400MHz,Bruker社製)又はUltraShieldTM Plus AVANCE III(400MHz,Bruker社製)で測定した。測定溶媒としては、重クロロホルム(CDCl3)を、内部標準物質としては、テトラメチルシラン(TMS)用いた。
【0096】
[一般式(1)で表される化合物(ジアミン)の合成]
(合成例1)
還流管を取り付けた500mLフラスコに2-フルオロアニリン(6.00g,62.6mmоl)及び水(158mL)を入れ、0℃に冷却した。続いて、濃塩酸(7.50mL,90.8mmоl)を入れ、室温にて2分間撹拌した。そこへ、37%ホルムアルデヒド水溶液(1.15mL,15.2mmоl)を入れ、加熱還流下にて6時間撹拌した。室温に放冷後、0℃に冷却した1.1M水酸化ナトリウム水溶液(180mL)に注ぎ入れた。室温にて30分間撹拌後、生じた沈殿物をろ取し、水で洗浄した。得られた固体を真空下60℃にて2時間乾燥し、得られた粗生成物をメタノール-水で再結晶することで、式(2a)の化合物である、3,3’-ジフルオロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(化合物1)の白橙色粉末を得た(3.08g,87%)。1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):6.80~6.67(m,6H),3.74(s,2H),3.61(brs,4H)。19F-NMR(376MHz,CDCl3)δ(ppm):-135.0(s,2F)。
【0097】
(合成例2)
還流管を取り付けた1Lフラスコに2,6-ジフルオロアニリン(12.0mL,119mmоl)及び水(300mL)を入れ、0℃に冷却した。続いて、濃塩酸(15.0mL,182mmоl)を入れ、室温にて10分間撹拌した。そこへ、37%ホルムアルデヒド水溶液(2.30mL,30.3mmоl)を入れ、加熱還流下にて6時間撹拌した。室温に放冷後、0℃に冷却し、0℃に冷却した1.0M水酸化ナトリウム水溶液(180mL)に注ぎ入れた。室温にて30分間撹拌後、生じた沈殿物をろ取し、水で洗浄した。得られた固体を真空下60℃にて6時間乾燥することで、式(3a)の化合物である、3,3’-5,5’-テトラフルオロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(化合物2)の白色粉末を得た(8.13g,99%)。1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):6.66~6.56(m,6H),3.71(brs,2H),3.62(brs,4H)。19F-NMR(376MHz,CDCl3)δ(ppm):-132.2(s,4F)。
【0098】
(合成例3)
還流管を取り付けた1Lフラスコに3-フルオロアニリン(25.1g,226mmоl)及び水(1.13L)を入れた。続いて、濃塩酸(28.0mL,339mmоl)を入れ、室温にて2分間撹拌した。そこへ、37%ホルムアルデヒド水溶液(8.20mL,113mmоl)を入れ、加熱還流下にて6時間撹拌した。室温に放冷後、0℃に冷却した1.0M水酸化ナトリウム水溶液(350mL)に注ぎ入れた。室温にて5時間撹拌後、水層をクロロホルム(1Lx3)で抽出し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた油状物を熱ヘキサンで洗浄後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製することで、式(4a)の化合物である、2,2’-ジフルオロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(化合物3)の黄色固体を得た(5.14g,19%)。1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):6.89(brdd,J=8.4,8.3Hz,2H),6.41~6.32(m,4H),3.77(s,2H),3.64(brs,4H)。19F-NMR(376MHz,CDCl3)δ(ppm):-117.8(s,2F)。
【0099】
(合成例4)
還流管を取り付けた1Lフラスコに2,3-ジフルオロアニリン(23.3g,181mmоl)及び水(150mL)を入れた。続いて、濃塩酸(22.0mL,266mmоl)を入れ、室温にて10分間撹拌した。そこへ、37%ホルムアルデヒド水溶液(1.15mL,15.2mmоl)を入れ、加熱還流下にて6時間撹拌した。室温に放冷後、0℃に冷却し、0℃に冷却した1.0M水酸化ナトリウム水溶液(250mL)に注ぎ入れた。室温にて2時間撹拌後、生じた沈殿物をろ取し、水で洗浄した。得られた固体を真空下60℃にて2時間乾燥し、得られた粗生成物をイソプロピルアルコールで再結晶することで、式(5a)の化合物である、2,2’,3,3’-テトラフルオロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(化合物4)の黄色固体を得た(2.30g,56%)。1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):6.67(brdd,J=8.2,8.2Hz,2H),6.45(ddd,J=8.2,8.2,1.6Hz,2H),3.82(s,2H),3.71(brs,4H)。19F-NMR(376MHz,CDCl3)δ(ppm):-143.4(d,J=20Hz,2F),-160.2(d,J=20Hz,2F)。
【0100】
(合成例5)
還流管を取り付けた1Lフラスコに2,5-ジフルオロアニリン(23.80g,184mmоl)及び水(460mL)を入れ、0℃に冷却した。続いて、濃塩酸(23.0mL,278mmоl)を入れ、室温にて10分間撹拌した。そこへ、37%ホルムアルデヒド水溶液(3.50mL,46.2mmоl)を入れ、加熱還流下にて6時間撹拌した。室温に放冷後、0℃に冷却し、0℃に冷却した1.0M水酸化ナトリウム水溶液(300mL)に注ぎ入れた。室温にて1時間撹拌後、生じた沈殿物をろ取し、水で洗浄した。得られた固体を真空下60℃にて2時間乾燥し、得られた粗生成物をイソプロピルアルコールで再結晶することで、式(6a)の化合物である、2,2’-5,5’-テトラフルオロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(化合物5)の褐色粉末を得た(7.54g,60%)。1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):6.73(dd,J=11.2,6.9Hz,2H),6.47(dd,J=10.5,7.5Hz,2H)3.73(s,2H),3.71(brs,4H)。19F-NMR(376MHz,CDCl3)δ(ppm):-123.4(d,J=15Hz,2F),-140.9(d,J=15Hz,2F)。
【0101】
(合成例6)
還流管を取り付けた1Lフラスコに5-クロロ-2-フルオロアニリン(25.41g,175mmоl)及び水(430mL)を入れ、0℃に冷却した。続いて、濃塩酸(21.5mL,260mmоl)及び37%ホルムアルデヒド水溶液(3.25mL,42.9mmоl)を入れ、加熱還流下にて6.5時間撹拌した。室温に放冷後、0℃に冷却し、0℃に冷却した1.0M水酸化ナトリウム水溶液(260mL)に注ぎ入れた。室温にて2時間撹拌後、生じた沈殿物をろ取し、水で洗浄した。得られた固体を真空下60℃にて2時間乾燥した。得られた粗生成物をヘキサンで洗浄し、真空下60℃にて2時間乾燥した。得られた粗生成物をヘキサン(200mL)に懸濁し、室温にて3時間撹拌した。生じた沈殿物をろ取し、真空下60℃にて1.5時間乾燥した。得られた固体をイソプロピルアルコールで再結晶することで、式(6b)の化合物である、2,2’-ジクロロ-5,5’-ジフルオロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(化合物6)の白桃色粉末を得た(5.78g,44%)。1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):6.82(d,J=8.2Hz,2H),6.67(d,J=11.5Hz,2H),3.91(s,2H),3.71(brs,4H)。19F-NMR(376MHz,CDCl3)δ(ppm):-136.9(s,2F)。
【0102】
(合成例7)
還流管を取り付けた1Lフラスコに2-クロロ-5-メトキシアニリン塩酸塩(25.23g,130mmоl)及び水(340mL)を入れ、0℃に冷却した。続いて、濃塩酸(5.35mL,64.7mmоl)を入れ、室温にて5分間撹拌した。そこへ、37%ホルムアルデヒド水溶液(2.45mL,32.3mmоl)を入れ、加熱還流下にて6時間撹拌した。室温に放冷後、0℃に冷却し、0℃に冷却した1.0M水酸化ナトリウム水溶液(200mL)に注ぎ入れた。室温にて2時間撹拌後、生じた沈殿物をろ取し、水及びヘキサンで洗浄した。得られた固体を真空下60℃にて6時間乾燥した。得られた粗生成物をイソプロピルアルコールで再結晶することで、式(6c)の化合物である、2,2’-ジメトキシ-5,5’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(化合物7)の薄褐色粉末を得た(7.02g,66%)。1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):6.86(s,2H),6.29(s,2H),3.92(brs,4H),3.75(s,6H),3.66(s,2H)。
【0103】
(合成例8)
還流管を取り付けた500mLフラスコに2-クロロ-5-フルオロアニリン(10.25g,33.8mmоl)及び水(170mL)を入れ、0℃に冷却した。続いて、濃塩酸(17.5mL,103mmоl)及び37%ホルムアルデヒド水溶液(1.30mL,17.1mmоl)を入れ、加熱還流下にて6時間撹拌した。室温に放冷後、0℃に冷却し、0℃に冷却した0.94M水酸化ナトリウム水溶液(120mL)に注ぎ入れた。室温にて2時間撹拌後、生じた沈殿物をろ取し、水及びヘキサンで洗浄した。得られた固体を真空下60℃にて2時間乾燥した、得られた粗生成物にヘキサン(100mL)を入れ、85℃に加熱後、固体をろ取した。得られた粗生成物を真空下60℃にて2時間乾燥することで、式(6d)の化合物である、2,2’-ジフルオロ-5,5’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(化合物8)の白色粉末を得た(4.08g,79%)。1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):6.98(d,J=8.0Hz,2H),6.47(d,J=10.9Hz,2H),4.04(s,2H),3.72(brs,4H)。19F-NMR(376MHz,CDCl3)δ(ppm):-119.3(s,2F)。
【0104】
(合成例9)
還流管を取り付けた1Lフラスコに5-ブロモ-2-フルオロアニリン(25.18g,133mmоl)及び水(330mL)を入れ、0℃に冷却した。続いて、濃塩酸(16.5mL,200mmоl)及び37%ホルムアルデヒド水溶液(2.50mL,33.0mmоl)を入れ、加熱還流下にて6時間撹拌した。室温に放冷後、0℃に冷却し、0℃に冷却した1.0M水酸化ナトリウム水溶液(200mL)に注ぎ入れた。室温にて1時間撹拌後、生じた沈殿物をろ取し、水及びヘキサンで洗浄した。得られた固体を真空下60℃にて2時間乾燥し、得られた粗生成物にヘキサン(150mL)を入れて85℃に加熱後、固体をろ取した。得られた粗生成物を真空下60℃にて30分間乾燥することで、式(6e)の化合物である、2,2’-ジブロモ-5,5’-ジフルオロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(化合物9)の白色粉末を得た(3.95g,31%)。1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):7.01(d,J=8.5Hz,2H),6.64(d,J=11.8Hz,2H),3.91(s,2H),3.71(brs,4H)。19F-NMR(376MHz,CDCl3)δ(ppm):-136.1(s,2F)。
【0105】
(合成例10)
還流管を取り付けた1Lフラスコに2-ブロモ-5-フルオロアニリン(25.20g,133mmоl)及び水(330mL)を入れ、0℃に冷却した。続いて、濃塩酸(16.5mL,200mmоl)及び37%ホルムアルデヒド水溶液(2.50mL,33.0mmоl)を入れ、加熱還流下にて6時間撹拌した。室温に放冷後、0℃に冷却し、0℃に冷却した1.0M水酸化ナトリウム水溶液(225mL)に注ぎ入れた。室温にて2時間撹拌後、生じた沈殿物をろ取し、水で洗浄した。得られた固体を真空下60℃にて2時間乾燥し、得られた粗生成物をイソプロピルアルコールで再結晶することで、式(6f)の化合物である、2,2’-ジフルオロ-5,5’-ジブロモ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(化合物10)の白色粉末を得た(3.32g,26%)。1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):7.14(d,J=8.2Hz,2H),6.27(d,J=11.4Hz,2H),4.08(brs,4H),3.72(s,2H)。19F-NMR(376MHz,CDCl3)δ(ppm):-118.6(s,2F)。
【0106】
(合成例11)
還流管を取り付けた2Lフラスコに3,5-ジフルオロアニリン(50.1g,388mmоl)及び水(323mL)を入れ、0℃に冷却した。続いて、濃塩酸(48.0mL,581mmоl)を入れ、室温にて10分間撹拌した。そこへ、37%ホルムアルデヒド水溶液(2.30mL,31.7mmоl)を入れ、加熱還流下にて6時間撹拌した。室温に放冷後、0℃に冷却し、0℃に冷却した1.0M水酸化ナトリウム水溶液(600mL)及びヘキサン(300mL)を注ぎ入れた。室温にて135分間撹拌後、生じた沈殿物をろ取し、水で洗浄した。得られた固体を真空下60℃にて4時間乾燥し、得られた粗生成物にヘキサン(300mL)を入れて加熱し、生じた沈殿物をろ取した。得られた固体をイソプロピルアルコールで再結晶することで、式(8a)の化合物である、2,2’,6,6’-テトラフルオロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(化合物11)の黄色粉末を得た(3.77g,44%)。1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):6.21-6.07(m,4H),3.77(s,2H),3.72(brs,4H)。19F-NMR(376MHz,CDCl3)δ(ppm):-115.2(s,4F)。
【0107】
(合成例12)
還流管を取り付けた1Lフラスコに2,3,5,6-テトラフルオロアニリン(25.7g,155mmоl)及びトリフルオロ酢酸(90.0mL,1.18mmоl)を入れ、0℃に冷却した。続いて、37%ホルムアルデヒド水溶液(3.50mL,46.2mmоl)を入れ、アルゴンで置換し、室温に昇温後、10分間撹拌した。得られた溶液を加熱還流下にて6時間撹拌した。室温に放冷後、氷水(180mL)に注ぎ入れた。生じた沈殿物をろ取し、飽和水酸化カリウムエタノール溶液(50mL)及び水(500mL)を加えた。生じた沈殿物をろ取し、水で洗浄した。得られた固体を真空下60℃にて2時間乾燥した。得られた粗生成物をエタノールで再結晶することで、式(11a)の化合物である、2,2’,3,3’,5,5’,6,6’-オクタフルオロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(化合物12)の黄色固体を得た(4.08g,18%)。1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):3.93(brs,2H),3.91(brs,4H)。19F-NMR(376MHz,CDCl3)δ(ppm):-146.0~-146.1(m,4F),-162.3~-162.4(m,4F)。
【0108】
(合成例13)
還流管を取り付けた500mLフラスコに2,3,6-トリフルオロアニリン(4.23g,28.8mmol)及び水(72mL)を入れ、0℃に冷却した。続いて、濃塩酸(3.60mL,43.1mmol)を入れ、2分間撹拌した。そこへ、37%ホルムアルデヒド水溶液(0.52mL,7.17mmol)を入れ、加熱還流下にて32時間撹拌した。室温に放冷後、0℃に冷却し、0℃に冷却した1.0Mの水酸化ナトリウム水溶液(45mL)に注ぎ入れた。ここにヘキサン(200mL)を加え、室温にて2時間撹拌後、生じた沈殿物をろ取し、水とヘキサンで洗浄した。得られた固体を真空下60℃にて2時間乾燥することで、、式(7a)の化合物である、2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサフルオロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(化合物13)の白色固体を得た(収量1.72g,収率78%)。1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):6.57(ddd,J=10.6,6.5,2.1Hz,2H),3.81(brs,2H),3.65(brs,4H).19F-NMR(376MHz,CDCl3)δ(ppm):-137.5(dd,J=13.6,9.6Hz,2F),-147.6(dd,J=19.2,13.6Hz,2F),-155.4(dd,J=19.1,9.6Hz,2F)。
【0109】
(合成例14)
還流管を取り付けた1Lフラスコに2,3,5-トリフルオロアニリン(24.82g,169mmol)及び水(420mL)を入れ、0℃に冷却した。続いて、濃塩酸(21.0mL,254mmol)を入れ、5分間撹拌した。そこへ、37%ホルムアルデヒド水溶液(3.10mL,41.6mmol)を入れ、加熱還流下にて8時間撹拌した。室温に放冷後、0℃に冷却し、0℃に冷却した1.1Mの水酸化ナトリウム水溶液(250mL)に注ぎ入れた。ここにヘキサン(200mL)を加え、室温にて2時間撹拌後、生じた沈殿物をろ取し、水とヘキサンで洗浄した。得られた固体を真空下60℃にて2時間乾燥した。得られた粗生成物をヘキサン/酢酸エチルで再結晶することで、式(9a)の化合物である、2,2’,3,3’,6,6’-ヘキサフルオロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(化合物14)の薄橙色固体を得た(収量4.30g,収率34%)。また、ろ液を濃縮後、生じた固体をヘキサン/酢酸エチルで再結晶することで、式(9a)の化合物である、2,2’,3,3’,6,6’-ヘキサフルオロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(化合物14)の薄橙色固体を第2晶として得た(収量1.37g,収率11%,総収量5.67g,総収率45%)。1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):6.29-6.20(m,2H),3.89-3.74(m,6H).19F-NMR(376MHz,CDCl3)δ(ppm):-120.9~-120.0(m,2F),-139.5~-139.7(m,2F),-165.2~-165.4(m,2F)。
【0110】
(合成例15)
還流管を取り付けた5Lフラスコに2-クロロアニリン(125mL,1.20mоl)及び水(1000mL)を入れた。続いて、濃塩酸(150mL,1.82mоl)を入れ、室温にて5分間撹拌した。そこへ、37%ホルムアルデヒド水溶液(7.60mL,100mmоl)を入れ、加熱還流下にて15時間撹拌した。室温に放冷後、0℃に冷却し、0℃に冷却した0.73M水酸化ナトリウム水溶液(2500mL)に注ぎ入れた。ヘキサン(1500mL)を入れて、室温にて2時間撹拌後、生じた沈殿物をろ取し、水及びヘキサンで洗浄した。得られた固体を真空下60℃にて5時間乾燥した。得られた粗生成物をメタノールで再結晶することで、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MOCA,化合物15)の白色粉末を得た(19.67g,74%)。1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):7.03(d,J=1.9Hz,2H),6.85(dd,J=8.1,1.9Hz,2H),6.68(d,J=8.1Hz,2H),3.93(brs,4H),3.71(s,2H)。
【0111】
(合成例16)
還流管を取り付けた200mLフラスコに2,5-ジフルオロアニリン(15.80g,122mmol)及びトリフルオロ酢酸(30.0mL,392mmol)を入れ、室温で5分間撹拌した。そこへ、トリフルオロアセトアルデヒドエチルへミアセタール(ca.10%エタノール含有,3.90mL,33.3mmol)を入れ、加熱還流下にて23時間撹拌した。室温に放冷後、0℃に冷却し、0℃に冷却した1.3Mの水酸化ナトリウム水溶液(200mL)に注ぎ入れた。室温で2時間撹拌後、水層をクロロホルム(300mLx3)で抽出し、併せた有機層を水(100mL)で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた油状物にメタノール(65mL)及び水(65mL)を入れ、ここに炭酸カリウム(3.03g,21.9mmol)を入れ、室温で14時間撹拌後、50℃で25.5時間撹拌した。さらに、炭酸カリウム(3.12g,22.6mmol)を入れ、50℃で4時間撹拌した。再び、炭酸カリウム(3.05g,22.1mmol)を入れ、50℃で3時間撹拌した。室温に放冷後、減圧濃縮し、水(40mL)を入れた。水層をクロロホルム(300mLx3)で抽出し、併せた有機層を水(100mL)で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)にて精製することで、式(21)の化合物である2,2’,5,5’-テトラフルオロ-1-トリフルオロメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(化合物16)の薄橙色固体を得た(収量7.29g,収率65%)。1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):7.04(dd,J=11.5,6.5Hz,2H),6.48(dd,J=10.9,7.7Hz,2H),5.19(q,J=9.6Hz,1H),3.06(brs,4H).19F-NMR(376MHz,CDCl3)δ(ppm):-139.8(d,J=15.0Hz,2F),-121.8(dq,J=15.0,2.8Hz,2F),-66.9(t,J=2.8Hz,3F)。
【0112】
(合成例17)
還流管を取り付けた500mLフラスコに2,5-ジフルオロアニリン(15.50g,120mmol)及び水(300mL)を入れ、続いて、濃塩酸(15.0mL,180mmol)を入れ、5分間撹拌した。そこへ、ベンズアルデヒド(3.05mL,30.0mmol)を入れ、加熱還流下にて17時間撹拌した。室温に放冷後、0℃に冷却し、0℃に冷却した1.0Mの水酸化ナトリウム水溶液(188mL)に注ぎ入れた。ここにヘキサン(200mL)を加え、室温にて2時間撹拌後、生じた沈殿物をろ取し、水とヘキサンで洗浄した。得られた固体を真空下60℃にて2時間乾燥した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)にて精製することで、式(22)の化合物である2,2’,5,5’-テトラフルオロ-1-フェニル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(化合物17)の薄橙色固体を得た(収量3.73g,収率37%)。1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):7.30~7.20(m,3H),7.08(brd,J=7.6Hz,2H),6.53~6.44(m,4H),5.78(s,1H),3.75(brs,4H).19F-NMR(376MHz,CDCl3)δ(ppm):-121.5(d,J=15.0Hz,2F),-140.5(d,J=15.0Hz,2F)。
【0113】
(合成例18)
還流管を取り付けた200mL枝付きフラスコにアルゴン雰囲気下、3,3’-ジブロモ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(4.12g,11.6mmol)、トリフェニルホスフィン(911mg,3.47mmol)、亜リン酸ジエチル(3.30mL,25.6mmol)、トリエチルアミン(4.92mL,35.2mmol)及びエタノール(47mL)を入れ、脱ガス操作した。ここに酢酸パラジウム(264mg,1.18mmol)を入れ、加熱還流下にて17時間撹拌した。室温に放冷後、セライトを敷いたグラスフィルタにてろ過し、残渣をエタノールで洗浄した。ろ液を減圧濃縮し、得られた固体にアセトンを入れ、不溶物を除去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル/アセトン)にて精製することで、式(2b)の化合物である4,4’-ジアミノジフェニルメタン-3,3’-ジホスホン酸ジエチル(化合物18)の桃色油状物を得た(収量4.08g,収率75%)。1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):7.25(dd,J=14.3,2.1Hz,2H),7.04(brd,J=8.3Hz,2H),6.58(dd,J=8.3,6.9Hz,2H),5.01(brs,4H),4.18~3.97(m,8H),3.73(s,2H),1.30(brt,J=7.0Hz,12H).31P-NMR(162MHz,CDCl3)δ(ppm):21.2(s)。
【0114】
(合成例19)
還流管を取り付けた200mL枝付きフラスコにアルゴン雰囲気下、3,3’-ジブロモ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(16.28g,45.7mmol)、亜リン酸ジイソプロピル(18.5mL,111mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(20.2mL,119mmol)及びN,N-ジメチルホルムアミド(170mL)を入れ、脱ガス操作した。ここにテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(5.31g,4.59mmol)を入れ、100℃にて24時間加熱撹拌した。室温に放冷後、さらに0℃に冷却し、水(340mL)を加え、水層をジエチルエーテル(500mLx1,400mLx3)で抽出した。併せた有機層を水(100mL)、飽和食塩水(100mL)で順次洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルム/酢酸エチル)にて精製することで、式(2c)の化合物である4,4’-ジアミノジフェニルメタン-3,3’-ジホスホン酸ジイソプロピル(化合物19)の薄黄色固体を得た(収量6.34g,収率26%)。1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):7.26(dd,J=14.6,2.2Hz,2H),7.02(brd,J=8.3Hz,2H),6.56(dd,J=8.3,6.9Hz,2H),5.01(brs,4H),4.68~4.56(m,4H),3.73(s,2H),1.36(d,J=6.2Hz,12H),1.20(d,J=6.2Hz,12H).31P-NMR(162MHz,CDCl3)δ(ppm):19.1(s)。
【0115】
[ポリウレタンウレア樹脂形成性組成物の調製]
以下の化合物を、表1又は表2に記載される配合量で混合し、ポリウレタンウレア樹脂形成性組成物を調製した。
・PCD♯500:KurarayPolyol C-590(クラレ社製、平均分子量500)
・TMP:トリメチロールプロパン(三菱ガス化学社製、平均分子量134)
・ミリオネートNM:2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートおよび4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートの混合物(東ソー社製、NCO含量=33.5%)
・PTMG850:ポリテトラメチレンエーテルグリコール(三菱ケミカル社製、平均分子量850)
【0116】
(実施例1)
[硬化剤の調製]
窒素を満たした撹拌容器内に、表1に示す添加量で、PCD♯500及びTMPを入れ、撹拌した。その後、撹拌容器内の温度を40~70℃に保ちながら、1~3時間程度、混合撹拌し、更に融点以上で溶融した化合物1を混合することで、硬化剤を得た。
【0117】
[主剤の調製]
窒素を満たした撹拌容器内に、表1に示す添加量で、ミリオネートNM及びPTMG850を入れ、撹拌した。その後、撹拌容器内の温度を70~90℃に保ちながら、2~5時間程度ウレタン化反応を進めることで、主剤を得た。この主剤のNCO含量は、20質量%であった。
【0118】
得られた硬化剤及び主剤を配合し、ステンレス鋼製のヘラで均一になるまで混合することで、ポリウレタンウレア樹脂形成性組成物(PU-1)を得た。
【0119】
(実施例2~18、比較例1)
化合物の添加量を表1~3に示す量に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、それぞれのポリウレタンウレア樹脂形成性組成物(PU-2~PU-13)を得た。
【0120】
[硬化性の評価]
走査型振動針式硬化試験機(SVNC)の予め(20~25℃)に加温したサンプルステージに、それぞれのポリウレタンウレア樹脂形成性組成物(PU-1)を0.5g投入し、振動針(カーボン製)を84Hzの周波数で励振して、振動針の振幅の経時変化を計測した。得られたSVNC曲線から、振幅値が初期の10000から6000まで低下するのに要した時間を測定した。測定結果を表4~6に示す。
【0121】
[接着強度の評価]
上記主剤の調製において、フィラーを樹脂総量に対して、タルク/ゼオライト=16.7(%)/16.7(%)となるように加え、公転自転撹拌機(商品名:カクハンター、写真化学社製)を使用して混合することで主剤を調製したこと以外は、実施例1~18、比較例1と同様の方法によって、実施例1~18、比較例1に対応したポリウレタンウレア樹脂形成性組成物を得た。すなわち、接着強度の評価用のポリウレタンウレア樹脂形成性組成物の組成は、上記フィラーを含むこと以外は、組成は実施例1~18、比較例1と同様である。
【0122】
[接着試験(23℃試験)]
2枚のアルミニウム板(縦100mm×横25mm×厚さ3mm;A6061、T-Zr処理品)の表面に、接着強度の評価用のポリウレタンウレア樹脂形成性組成物を塗布し、アルミニウム板の重なり領域が縦12.5mm×横25mmとなるように接着し、これを120℃の条件下、5時間放置して硬化させることにより、接着試験片を作製した。この際ガラスビーズを用いて、接着層の厚みを0.25mmに調整し、接着試験片を得た。得られた接着試験片について、引張試験機(商品名:オートコム万能試験機AC-10kN-C、株式会社ティー・エス・イー製)により、接着部の引張せん断強度を測定した。この測定は、JIS K6850:1999の接着剤の引張りせん断接着強さに準拠して行った。測定条件は、温度23℃、チャック間距離111.5mm、テストスピードは10mm/分とした。測定結果を表4~6に示す。
【0123】
[接着試験(180℃試験)]
2枚のアルミニウム板(縦100mm×横25mm×厚さ1mm;A6061、T-Zr処理品)の表面に、接着強度の評価用のポリウレタンウレア樹脂形成性組成物を塗布し、アルミニウム板の重なり領域が縦12.5mm×横25mmとなるように接着し、これを120℃の条件下、5時間放置して硬化させることにより、接着試験片を作製した。この際ガラスビーズを用いて、接着層の厚みを0.25mmに調整し、接着試験片を得た。得られた接着試験片を、180℃の条件下、20分間放置した後、引張試験機(商品名:オートコム万能試験機AC-10kN-C、株式会社ティー・エス・イー製)により、接着部の引張せん断強度を測定した。この測定は、JIS K6850:1999の接着剤の引張りせん断接着強さに準拠して行った。測定条件は、温度180℃、チャック間距離111.5mm、テストスピードは10mm/分とした。測定結果を表4~6に示す。
【0124】
[凝集破壊率(23℃試験及び180℃試験)]
23℃における接着試験、及び180℃における接着試験において、破断した接着試験片を、目視で観察し接着剤層の部分で破壊している面積割合により、凝集破壊率(%)を求めた。結果を表4~6に示す。
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】