(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022012295
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】車両用窓ガラス、及び車両用窓ガラスの製造方法
(51)【国際特許分類】
B60J 1/00 20060101AFI20220107BHJP
B60S 1/02 20060101ALI20220107BHJP
C03C 27/12 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
B60J1/00 G
B60S1/02 B
C03C27/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020114035
(22)【出願日】2020-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】越智 康浩
(72)【発明者】
【氏名】阿部 真也
(72)【発明者】
【氏名】北島 豊
(72)【発明者】
【氏名】森田 欣靖
(72)【発明者】
【氏名】若原 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】太田 進哉
【テーマコード(参考)】
3D025
4G061
【Fターム(参考)】
3D025AA03
3D025AB01
3D025AC10
4G061AA04
4G061BA02
4G061CB16
4G061CD03
4G061CD18
4G061DA02
(57)【要約】
【課題】ガラス板に割れや、局所的な変形が発生することを抑制できる車両用窓ガラス及び車両用窓ガラスの製造方法を提供する。
【解決手段】
車両用窓ガラスは、車外側ガラス及び車内側ガラスと車外側ガラスと車内側ガラスとの間に挟持された中間膜からなる合わせガラスを備える車両用窓ガラスであって、車内側ガラスは、車内下辺の縁部に車内側ガラスの板厚方向に貫通するように形成された切欠部を備え、車内下辺の長さをLとし、車内下辺の角部と角部に近い側の切欠部の切欠端との距離の中で短い方をSとしたとき、S/L<0.24を満たす。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車外側ガラス及び車内側ガラスと前記車外側ガラスと前記車内側ガラスとの間に挟持された中間膜からなる合わせガラスを備える車両用窓ガラスであって、
前記車内側ガラスは、車内下辺の縁部に前記車内側ガラスの板厚方向に貫通するように形成された切欠部を備え、
前記車内下辺の長さをLとし、前記車内下辺の角部と前記角部に近い側の前記切欠部の切欠端との長さの中で短い方をSとしたとき、S/L<0.24を満たす、
車両用窓ガラス。
【請求項2】
前記切欠部の前記切欠端の間の長さをWとしたとき、W/L<0.143を満たす、
請求項1に記載の車両用窓ガラス。
【請求項3】
前記車内下辺を基準に前記切欠部の内側に延びる最大深さDとしたとき、D/L<0.024を満たす、
請求項1又は2に記載の車両用窓ガラス。
【請求項4】
前記車内下辺の長さをLとし、前記車内下辺の角部と前記角部に近い側の前記切欠部の切欠端との距離の中で短い方をSとしたとき、S/L<0.10を満たす、
請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項5】
車外側ガラス及び車内側ガラスと前記車外側ガラスと前記車内側ガラスとの間に挟持された中間膜からなる合わせガラスを備える車両用窓ガラスの製造方法であって、
前記車内側ガラスの車内下辺縁部に、前記車内側ガラスの板厚方向に貫通するように切欠部を形成し、
前記車内側ガラスをリング状の下方成形型と上方成形型とにより挟持し、前記車内側ガラスを曲げ形状に成形する際、少なくとも、前記車内側ガラスにおいて前記切欠部の内側に延びる最大深さより内側を下方から支持部材で支持することを含む、
車両用窓ガラスの製造方法。
【請求項6】
前記支持部材は、前記下方成形型の一部である、請求項5に記載の車両用窓ガラスの製造方法。
【請求項7】
前記支持部材は、前記下方成形型の開口内部の一部に配置された部分パッドである、請求項5に記載の車両用窓ガラスの製造方法。
【請求項8】
前記支持部材は、前記下方成形型の開口内部の全体に配置された凹部型である、請求項5に記載の車両用窓ガラスの製造方法。
【請求項9】
前記支持部材は、前記下方成形型と前記車内側ガラスとの間に配置された昇降可能な部分パッドである、請求項5に記載の車両用窓ガラスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用窓ガラス、及び車両用窓ガラスの製造方法に関し、特に、切欠部を備える車両用窓ガラス、及び車両用窓ガラスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス板に付着した霜や雪、氷などを融かすための発熱装置を備えた車両用窓ガラスが知られている(例えば、特許文献1参照)。車両用窓ガラスは、ガラス板の面上に形成された導電体からなる導電体パターンを備える。その導電体パターンは、ガラス板の面上の発熱領域に形成された発熱線条と、その発熱線条に接続する給電用電極と、を有している。
【0003】
上述の車両用窓ガラスにおいて、給電用電極が露出するように、車内側ガラスの下辺の周縁には部分的に切欠部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、切欠部の形成されたガラス板を曲げ形状に成形する場合、切欠部に応力が集中し易いため、成形時にガラス板に割れや、局所的な変形が生じることがある。局所的な変形は、ガラス板を積層した後の中間膜に空気が侵入し、合わせガラス内に発泡が生じるという問題が発生する懸念がある。特に、切欠部が深い場合や、ガラスの曲がりが大きい場合、又はガラスの厚みが小さい場合に上記の問題は一層顕著に発生する。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、切欠部が形成されたガラス板において、ガラス板に割れや、局所的な変形が発生することを抑制できる、車両用窓ガラス、及び車両用窓ガラスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一態様の車両用窓ガラスは、車外側ガラス及び車内側ガラスと車外側ガラスと車内側ガラスとの間に挟持された中間膜からなる合わせガラスを備える車両用窓ガラスであって、車内側ガラスは、車内下辺の縁部に車内側ガラスの板厚方向に貫通するように形成された切欠部を備え、車内下辺の長さをLとし、車内下辺の角部と角部に近い側の切欠部の切欠端との距離の中で短い方をSとしたとき、S/L<0.24を満たす。
【0008】
第二態様の車両用窓ガラスの製造方法は、車外側ガラス及び車内側ガラスと車外側ガラスと車内側ガラスとの間に挟持された中間膜からなる合わせガラスを備える車両用窓ガラスの製造方法であって、車内側ガラスの車内下辺の縁部に、車内側ガラスの板厚方向に貫通するように切欠部を形成し、車内側ガラスをリング状の下方成形型と上方成形型とにより挟持し、車内側ガラスを曲げ形状に成形する際、少なくとも、車内側ガラスにおいて切欠部の内側に延びる最大深さより内側を下方から支持部材で支持することを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、切欠部が形成されたガラス板において、ガラス板に割れや、局所的な変形が発生することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は車両用窓ガラスの車内側から見た正面図である。
【
図3】
図3は車両用窓ガラスの切欠部の拡大図である。
【
図4】
図4は等分布荷重における発生応力を説明するための図である。
【
図5】
図5は切欠部における発生応力を説明するための図である。
【
図6】
図6は切欠部を備える車内側ガラスのシミュレーションモデルを説明するための図である。
【
図7】
図7はモデルN1の逸脱量の分布を示す図である。
【
図8】
図8はモデルN2の逸脱量の分布を示す図である。
【
図9】
図9はモデルN3の逸脱量の分布を示す図である。
【
図17】
図17は車両用窓ガラスの製造方法の概念を説明する図である。
【
図18】
図18は車両用窓ガラスの製造方法の第一態様を説明する図である。
【
図20】
図20は車両用窓ガラスの製造方法の第一態様の変形例を説明する図である。
【
図21】
図21はモデルN10の逸脱量の分布を示す図である。
【
図22】
図22はモデルN11の逸脱量の分布を示す図である。
【
図23】
図23は車両用窓ガラスの製造方法の第二態様を説明する図である。
【
図24】
図24はモデルN12の逸脱量の分布を示す図である。
【
図25】
図25はモデルN13の逸脱量の分布を示す図である。
【
図26】
図26は車両用窓ガラスの製造方法の第三態様を説明する図である。
【
図27】
図27はモデルN14の逸脱量の分布を示す図である。
【
図28】
図28は車両用窓ガラスの製造方法の第四態様を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、車両用窓ガラス、及び車両用窓ガラスの製造方法の好ましい実施形態について、ガラス板の面上に形成された導電体パターンを備える車両用窓ガラスを一例として説明する。ただし、以下の実施の形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の技術範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0012】
図1は、車両用窓ガラスの車内側から見た正面図を示す。
図2は、車両用窓ガラスの要部断面図を示す。なお、本明細書において、方向、位置を表わす「上(U)」、「下(D)」、「内(In)」、「外(Out)」、「右(R)」、「左(L)」は、車両用窓ガラスが車両に取り付けた際の「上(U)」、「下(D)」、「内(In)」、「外(Out)」、「右(R)」「左(L)」を意味する。
【0013】
図1に示されるように、車両用窓ガラス10は、車外側ガラス12と車内側ガラス14とを備える。
図2に示されるように、車両用窓ガラス10は、車外側ガラス12及び車内側ガラス14と、車外側ガラス12と車内側ガラス14との間に挟持された樹脂製の中間膜16からなる合わせガラス18で構成される。車外側ガラス12の外側面を第1面f
1と、車外側ガラス12の内側面を第2面f
2と、車内側ガラス14の内側面を第3面f
3と、車内側ガラス14の外側面を第4面f
4と称する。
【0014】
図1に示されるように、車外側ガラス12及び車内側ガラス14は、正面視において、略矩形形状を有している。車外側ガラス12及び車内側ガラス14は、それぞれ上辺と、上辺に対向する下辺と、上辺の端部と下辺の端部とのそれぞれを連結する2個の側辺とを有する。
【0015】
車両用窓ガラス10の周縁部には、黒色などの暗色不透明の遮蔽層(暗色セラミック層)20が全周にわたって帯状に形成されている。遮蔽層20は、車両用窓ガラス10を車体に接着保持するウレタンシーラントなどを紫外線による劣化から保護する機能を有している。遮蔽層20は、黒色顔料を含有する溶融性ガラスフリットを含むセラミックカラーペーストをガラス板上にスクリーン印刷等により塗布し、焼成することで形成できる。ガラス下辺側にある遮蔽層20の幅は、50~100mm程度であり、ガラス側辺側にある遮蔽層20の幅は、20~40mm程度である。遮蔽層20は、車外側ガラス12及び車内側ガラス14の車内側の面の両方に形成されていてもよいし、いずれか一方の車内側の面に形成されていてもよい。
【0016】
車両用窓ガラス10には、加熱が行われる発熱領域24が設けられる。発熱領域24は、車両用窓ガラス10において、発熱領域24が1つの領域に設けられていてもよいし、複数の領域に設けられていてもよい。
図1は、発熱領域24の一例を示す。発熱領域24は、車両用窓ガラス10の下辺に沿った領域に設けられる下辺発熱領域24Aと、車両用窓ガラス10の側辺に沿った領域に設けられる側辺発熱領域24Bと、を含む。下辺発熱領域24Aは、車両用窓ガラス10におけるワイパーの待機位置の領域に対応する。側辺発熱領域24Bは、車両用窓ガラス10におけるワイパーの稼動反転位置の領域に対応する。
【0017】
図1に示されるように、導電体からなる導電体パターン26が、車両用窓ガラス10に形成される。導電体パターン26は、発熱領域24を加熱する発熱線条28と、発熱線条28に接続する給電用電極30と、を有する。なお、発熱線条28は、発熱領域24ごとに対応して設けられており、下辺発熱領域24Aに形成された第1発熱線条28Aと、側辺発熱領域24Bに形成された第2発熱線条28Bと、を有している。給電用電極30から電力を給電されることで、第1発熱線条28A、及び第2発熱線条28Bはそれぞれ、給電により発熱可能であり、その発熱により車両用窓ガラス10の面上の発熱領域24に付着した氷や雪を融かすことが可能である。
【0018】
図2に示されるように、導電体パターン26は、導電体パターン26は、車外側ガラス12の車内面側(第2面f
2)に設けられる遮蔽層20の表層上に形成されており、中間膜16と車外側ガラス12とに挟持される。導電体パターン26は、車外側から透視されないように、車外側ガラス12の車内側面(第2面f
2)の側で遮蔽層20と重なる範囲内に配置される。導電体パターン26は、例えば導電性銀ペースト(抵抗率が0.5~9.0×10
-8Ω・mである材料)を印刷、又は塗布した後に焼成することにより形成される。
【0019】
遮蔽層20は、発熱線条28、給電用電極30を車外側から透視できないように意匠性を向上させる機能を有する。
【0020】
車両用窓ガラス10において、
図3に示されるように、車内側ガラス14の車内下辺縁部の一部には円弧状の切欠部40が設けられる。車内側ガラス14に設けられた切欠部40に対応する、車外側ガラス12の部位には、給電用電極30が形成されている。給電用電極30は、例えば、第1発熱線条28A、及び第2発熱線条28Bに給電するため、2個の正極32,34と、1個の負極36と、を備える。正極32、34及び負極36は、車外側ガラス12の車外下辺の縁部に接するように互いに僅かな距離だけ離間して形成される。第1発熱線条28Aは、正極32と負極36とを接続し、また、第2発熱線条28Bは、正極34と負極36とを接続する。但し、給電用電極30は、この構造に限定されず適宜変更できる。
【0021】
図2に示されるように、切欠部40は、車内下辺縁部に車内側ガラス14の板厚方向に貫通するように形成される。給電用電極30は、車外側ガラス12の車内側面(第2面f
2)上に形成されており、切欠部40において給電用電極30の一部が外部に露出する。給電用電極30の露出した正極32、34及び負極36には、図示しない半田付けされたターミナルを介して配線ケーブル(ワイヤハーネス)が、それぞれ接続される。給電用電極30は、配線ケーブルからの電流を発熱線条28に供給する機能を有する。
【0022】
なお、車両用窓ガラス10には上述した導電体パターン26の他に、車両用窓ガラス10の外部から電力の供給が必要な機能性部材が配置されていてもよい。その場合、車両用窓ガラス10に形成された切欠部40において、機能性部材と配線ケーブルとを接続することが出来る。機能性部材としては、例えばPET(Polyethylene terephthalate)などの透明樹脂フィルム上に、金、銀、銅、白金、アルミニウム、クロム、モリブデン、ニッケル、チタン、パラジウム、インジウム、タングステン、及び、これらの合金からなる細線パターンや、スズドープ酸化インジウム(ITO)膜、酸化スズ膜等の透明導電膜が形成されたた電熱部材や、SPD(Suspended Particle Device)、PDLC(高分子分散型液晶)、GHLC(ゲストホスト型液晶)、エレクトロクロミック、フォトクロミック、サーモクロミック等の調光部材、有機EL(Organic Electro-Luminescence)ディスプレイ、LED(発光ダイオード)ディスプレイ、液晶ディスプレイ等の表示部材、有機ELを用いた面発光フィルム、LEDを複数配置させた加飾発光フィルムや、衝突防止の警告等の情報を表示する発光部材などが挙げられる。
【0023】
車両用窓ガラス10に使用される、車外側ガラス12、及び車内側ガラス14としては、例えば、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等の無機ガラス、を用いることができる。車外側ガラス12は、耐傷付き性の観点から無機ガラスであることが好ましく、成形性の観点からソーダライムガラスであることが好ましい。車外側ガラス12、及び車内側ガラス14がソーダライムガラスである場合、クリアガラス、鉄成分を所定量以上含むグリーンガラス及びUVカットグリーンガラスが好適に使用できる。車外側ガラス12、及び車内側ガラス14が無機ガラスである場合、車外側ガラス12、及び車内側ガラス14は、例えばフロート法によって製造できる。
【0024】
車外側ガラス12の板厚は、1.1mm以上3mm以下であることが好ましい。車外側ガラス12の板厚が1.1mm以上の場合、耐飛び石性能等の強度を確保でき、3mm以下の場合、車両用窓ガラス10の軽量化が図られて車両の燃費が向上するので好ましい。車外側ガラス12の板厚は、最薄部において、より好ましくは1.8mm以上2.8mm以下であり、更に好ましくは1.8mm以上2.6mm以下であり、更に好ましくは1.8mm以上2.2mm以下であり、更に好ましくは1.8mm以上2.0mm以下である。
【0025】
車内側ガラス14の板厚は、好ましくは0.3mm以上2.3mm以下である。車内側ガラス14の板厚が0.3mm以上の場合、ハンドリング性がよく、2.3mm以下の場合、車両用窓ガラス10の軽量化が図られて車両の燃費が向上するので好ましい。
【0026】
車両用窓ガラス10の総厚は、好ましくは2.8mm以上10mm以下である。車両用窓ガラス10の総厚が2.8mm以上であれば、十分な剛性を確保できる。また、車両用窓ガラス10の総厚が10mm以下であれば、十分な透過率が得られると共にヘイズを低減できる。なお、車外側ガラス12、及び車内側ガラス14は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0027】
車外側ガラス12と車内側ガラス14とを接合する中間膜16としては、例えば、ポリビニルブチラール(PVB)又はチレンビニルアセテート(EVA)等が適用される。熱可塑性樹脂が多く用いられる。例えば、可塑化ポリビニルアセタール系樹脂、可塑化ポリ塩化ビニル系樹脂、飽和ポリエステル系樹脂、可塑化飽和ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、可塑化ポリウレタン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体系樹脂、エチレン-エチルアクリレート共重合体系樹脂、シクロオレフィンポリマー樹脂、アイオノマー樹脂等の従来からこの種の用途に用いられている熱可塑性樹脂が挙げられる。又、特許第6065221号に記載されている変性ブロック共重合体水素化物を含有する樹脂組成物も好適に使用できる。
【0028】
これらの中でも、透明性、耐候性、強度、接着力、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、耐湿性、遮熱性、及び遮音性等の諸性能のバランスに優れることから、可塑化ポリビニルアセタール系樹脂が好適に用いられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。上記可塑化ポリビニルアセタール系樹脂における「可塑化」とは、可塑剤の添加により可塑化されていることを意味する。その他の可塑化樹脂についても同様である。なお、中間膜16が可塑剤を含まない樹脂であってもよい。可塑剤を含まない樹脂としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体系樹脂等が挙げられる。
【0029】
ポリビニルアセタール系樹脂としては、ポリビニルアルコール(PVA)とホルムアルデヒドとを反応させて得られるポリビニルホルマール樹脂、PVAとアセトアルデヒドとを反応させて得られる狭義のポリビニルアセタール系樹脂、PVAとn-ブチルアルデヒドとを反応させて得られるポリビニルブチラール樹脂(PVB)等が挙げられ、特に、透明性、耐候性、強度、接着力、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、耐湿性、遮熱性、及び遮音性等の諸性能のバランスに優れることから、PVBが好適なものとして挙げられる。なお、これらのポリビニルアセタール系樹脂は、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0030】
但し、中間膜16を形成する材料は、熱可塑性樹脂には限定されない。又、中間膜16は、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、発光剤等の機能性粒子を含んでもよい。又、中間膜16は、シェードバンドと呼ばれる着色部を有してもよい。着色部を形成するために用いられる着色顔料としては、プラスチック用として使用できるものであって、着色部の可視光線透過率が40%以下となるものであれば良く、特に限定されるものではないが、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ペリレン系、ペリノン系、ジオキサジン系、アンスラキノン系、イソインドリノ系などの有機着色顔料や、酸化物、水酸化物、硫化物、クロム酸、硫酸塩、炭酸塩、珪酸塩、燐酸塩、砒酸塩、フェロシアン化物、炭素、金属粉などの無機着色顔料等が挙げられる。これらの着色顔料は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。着色顔料の添加量は、着色部の可視光線透過率が40%以下となるものであるかぎり、目的の色調に合わせて任意で良く、特に限定されるものではない。
【0031】
中間膜16の膜厚は、最薄部で0.5mm以上であることが好ましい。中間膜16の最薄部の膜厚が0.5mm以上であると合わせガラスとして必要な耐衝撃性が十分となる。又、中間膜16の膜厚は、最厚部で3mm以下であることが好ましい。中間膜16の最厚部の膜厚が3mm以下であると、合わせガラスの質量が大きくなり過ぎない。中間膜16の膜厚の最大値は2.8mm以下がより好ましく、2.6mm以下が更に好ましい。
【0032】
一般的に、車両用窓ガラス10は、車外側ガラス12及び車内側ガラス14は、車外側に向けて凸形状となるように、周縁部から中央部にかけて湾曲した形状に成形される。車外側ガラス12及び車内側ガラス14の形状としては、単一の方向に湾曲した単曲曲げ形状であってもよいし、直交する二つの方向に湾曲した複曲曲げ形状であってもよい。車外側ガラス12及び車内側ガラス14の曲げ成形後の曲率半径は、400mm以上100000mm以下であってよい。
【0033】
車外側ガラス12及び車内側ガラス14を所望の形状に曲げ成形する方法として、平板のガラス板を下方から支持するリング状の下型(リング型)を加熱炉に通すことで、ガラス板を加熱して軟化させ、重力によって曲げ形状に成形する重力成形方法と、平板のガラス板を、リング状の下方成形型と上方成形型との間に挟持させて曲げ形状に成形するプレス成形方法とが、知られている。
【0034】
しかしながら、いずれの成形方法においても、ガラスが曲げ形成されるとガラスに応力が発生することがある。特に、切欠部40の形成された車内側ガラス14を曲げ形成する際、応力が集中し易いため、成形時にガラス板に割れや、局所的な変形が生じることがある。局所的な変形は、ガラス板を積層した後の中間膜に空気が侵入し、発泡という問題を引き起こす場合がある。
【0035】
切欠部の位置と発生応力との関係について説明する。
図4は、ガラス板Gを単純梁の等分布荷重とした場合の応力発生のモデルを示す。ガラス板Gの曲げモーメントMは以下の式で求められる。
M=w
0 × x × (L-x)/2・・・(1)
最大曲げモーメントはx=L/2の場合であり、以下の式で求められる。
M
max=w
0 L
2/8・・・(2)
ここで、w
0は単位当たりの荷重であり、Lは支点間の距離であり、xは0からの距離である。
【0036】
発生応力(引張)σTは以下の式で求められる。
σT=M(t/2)/I・・・(3)
ここで、tはガラス板Gの厚みであり、Iは断面2次モーメントである。
【0037】
(3)式から、発生応力は長さ方向(L)の中心、すなわちガラスの曲がりの大きい領域で最大となることが理解できる。
【0038】
図5は、ガラス板の一部に切欠部を有する場合の応力発生のモデルを示す。切欠部の頂点部で発生する最大応力σ
yは以下の式で求められる。
σ
y≒σ(2(a/p)
1/2+1)・・・(4)
ここで、σは遠方引張応力であり、aは長軸半径であり、ρはx=aにおける曲率半径である。
【0039】
(4)式から、切欠部が深いほど(aが大きいほど)、発生応力が大きくなることが理解できる。
【0040】
(3)式、及び(4)式を考慮すると、長さ方向の中心に、深い切欠部が存在すると相乗的に発生応力が増加し、ガラス板に割れや、局所的な変形が生じる易くなる。
【0041】
そこで、発明者等は、車内側ガラス14の曲げ成形と切欠部40との関係について、鋭意検討した結果、車内側ガラス14に割れや、局所的な変形が生にくい切欠部40の位置、及び製造方法を見出し本発明に至っている。
【0042】
図6は、車内下辺縁部に切欠部40を備える車内側ガラス14に対する発生応力を評価するためのモデルを示す。車内側ガラス14は略矩形形状を有し、車内上辺14A、車内上辺14Aに対向する車内下辺14B、及び車内上辺14Aと車内下辺14Bとを繋ぐ2個の車内側辺14Cとを備える。
【0043】
Lは車内下辺14Bの長さを示し、Sは車内下辺14Bの角部Cと角部Cに近い側の切欠部40の切欠端Eとの長さの中で短い方の長さを示す。なお、S1は、は車内下辺14Bの角部Cと角部Cに近い側の切欠部40の切欠端Eとの長さの中で長い方の長さを示す。Wは切欠部40の2つの切欠端Eの間の長さ示す。Dは車内下辺14Bを基準に切欠部40の内側に延びる最大深さを示す。Dは2個の切欠端Eを結ぶ仮想の直線から最も遠い位置までの長さを意味する。
【0044】
角部Cは車内側辺14Cと車内下辺14Bとが交わる位置である。切欠端Eは、車内下辺14Bと切欠部40との交わる位置である。
【0045】
図6に示されるモデルを基準に、シミュレーションによる応力解析が実行される。シミュレーションに必要な、平板のガラス板および下型(リング型)あるいは上下成形型それぞれのCAD形状、成形過程における温度履歴、ガラスに負荷される荷重条件等の情報が準備される。シミュレーションは、汎用有限要素法解析ソフトウェア等を利用できる。
【0046】
図7から
図9は、S、W、及びDの値を変化させたモデルN1、N2及びN3のシミュレーションの結果を示す。
図7は、S/L=0.39、W/L=0.098、及びD/L=0.015としたモデルN1の場合の結果である。プレス成形方法により曲げ成形された車内側ガラス14と上方成形型との逸脱量を色の変化で示している。逸脱量が大きくなるほど、発生応力が大きくなると推測される。
【0047】
なお、図示される数値は、実際の長さではなく、Wの長さを1.0とし、Wに対する比が示されている。
図7に示される「1.8」は、逸脱量0.053での等高線の縦寸法を示し、「2.6」は逸脱量0.053での等高線の横寸法を示す。
図8、及び
図9のシミュレーションにおいても、
図7と同様の意味で数値を使用する。
【0048】
図8は、S/L=0.24、W/L=0.098、及びD/L=0.015とした場合のモデルN2のシミュレーション結果である。
図9は、S/L=0.07、W/L=0.098、及びD/L=0.015とした場合のモデルN3のシミュレーション結果である。
【0049】
表1は、モデルN1、N2及びN3の条件、及び結果を示す。S/Lの数値が小さいほど、切欠部40が、車内側ガラス14の角部Cに近いことを示す。最大値は逸脱量の最も大きな数値を示し、面積は縦寸法と横寸法とで囲まれた面積を示す。車内側ガラス14の曲げ成形後のひずみを抑制するためには、逸脱量の最大値と面積とを小さくすることが重要となる。
【0050】
【0051】
図10は、最大値を縦軸に示し、S/Lを横軸に示し、モデルN1、N2及びN3の各最大値をプロットしたグラフである。
図11は、最大値を縦軸に示し、S/Lを横軸に示し、モデルN1、N2及びN3の各最大値をプロットしたグラフである。
【0052】
図10によれば、逸脱量の最大値で見ると、S/L<0.24の範囲では、S/L≧0.24の範囲と比べ、S/Lの減少に対する減少率が大きいことが理解できる。
【0053】
図11によれば、逸脱量の面積で見ると、S/L=0.24の場合、S/L=0.39の場合と比較してほぼ半減されることが理解できる。
【0054】
したがって、
図10及び
図11によれば、S/L<0.24とすることにより、逸脱量の最大値と面積とを小さくすることが期待できる。より望ましくは、S/L<0.10とすることで更なる効果が期待できる。
【0055】
図12及び
図13は、S、W、及びDの値を変化させたモデルN4、及びN5のシミュレーションの結果を示す。
図12は、S/L=0.34、W/L=0.114、及びD/L=0.020とした場合のモデルN4のシミュレーション結果である。
図13は、S/L=0.03、W/L=0.114、及びD/L=0.020とした場合のモデルN5のシミュレーション結果である。表2は、モデルN4、及びN5の条件、及び結果を示す。
図12、及び
図13では、逸脱量0.025での等高線の縦寸法と横寸法とを示す。
【0056】
【0057】
逸脱量に関し、モデルN5(S/L=0.03)は、モデルN4(S/L=0.34)と比較すると、最大値で28%削減でき、面積で75%削減できる。
【0058】
図14は、S/L=0.39、W/L=0.094、及びD/L=0.010とした場合のモデルN6のシミュレーション結果である。
図14では、逸脱量0.053での等高線の縦寸法と横寸法とを示す。表3は、モデルN1、及びN6の条件、及び結果を示す。
【0059】
【0060】
逸脱量に関し、モデルN6(W/L=0.094、D/L=0.010)は、モデルN1(W/L=0.098、D/L=0.015)と比較すると、最大値で21%削減でき、面積で21%削減できる。したがって、切欠部の大きさ(D、及びW)が小さくなると最大値及び面積が小さくなることが理解できる。
【0061】
図15は、S/L=0.34、W/L=0.114、及びD/L=0.020とした場合のモデルN7のシミュレーション結果である。
図16は、S/L=0.34、W/L=0.114、及びD/L=0.011とした場合のモデルN8のシミュレーション結果である。
図15及び
図16では、逸脱量0.019での等高線の縦寸法と横寸法とを示す。表4は、モデルN7、及びN8の条件、及び結果を示す。
【0062】
【0063】
逸脱量に関し、モデルN8(D/L=0.011)は、モデルN7(W/L=0.098、D/L=0.015)と比較すると、最大値で47%削減でき、面積で46%削減できる。したがって、切欠部の最大深さDが小さくなると最大値及び面積が小さくなることが理解できる。
【0064】
図7から
図11によれば、車内側ガラス14の切欠部40が、角部Cに近い位置、S/L<0.24に設けられることにより、ガラス板に割れや、局所的な変形が発生することを抑制できる。
図12から
図16によれば、さらに切欠部40のW、Dを小さくすることにより、ガラス板に割れや、局所的な変形が発生することを効果的に抑制できる。
【0065】
なお、W/Lに関して、W/L<0.143が好ましく、W/L<0.110がより好ましい。D/Lに関し、D/L<0.024が好ましく、D/L<0.012がより好ましい。
【0066】
次に、ガラス板に割れや、局所的な変形が発生することを抑制できる車両用窓ガラスの製造方法を説明する。
【0067】
車両用窓ガラスの製造方法は、車外側ガラス及び車内側ガラスと車外側ガラスと車内側ガラスとの間に挟持された中間膜からなる合わせガラスを備える車両用窓ガラスの製造方法であって、車内側ガラスの車内下辺縁部に、車内側ガラスの板厚方向に貫通するように切欠部を形成し、車内側ガラスをリング状の下方成形型と上方成形型とにより挟持し、車内側ガラスを曲げ形状に成形する際、少なくとも、車内側ガラスにおいて切欠部の内側に延びる最大深さより内側を下方から支持部材で支持することを含む。
【0068】
図17は製造方法の概念図を示す。製造方法にいては、リング状の下方成形型50と、上方成形型52とが準備される。下方成形型50が、車内下辺14Bの縁部に切欠部40が形成された車内側ガラス14の全周の縁部を下方から支持する。
【0069】
上方成形型52の成形面52Aは、下方成形型50に向けて湾曲した曲面形状を有している。下方成形型50により車内側ガラス14を支持した状態で、下方成形型50と上方成形型52とを相対的に近づく方向に移動させる。
【0070】
下方成形型50と上方成形型52とで車内側ガラス14を挟持することにより、上方成形型52の成形面52Aが車内側ガラス14の略全面に押し付けられる。車内側ガラス14が曲げ形状に成形される。
【0071】
なお、上方成形型52により車内側ガラス14を押し付けた際、車内側ガラス14が下方に膨らみすぎることを抑制するため、下方成形型50の開口内部に部分的に凹部型(部分凹部型とも称する)が配置される。部分凹部型は下方に向けて深くなる窪みを有している。
【0072】
車内側ガラス14を曲げ形状に成形する際、少なくとも、車内側ガラス14において切欠部40の内側に延びる最大深さDより内側の領域Rが下方から支持部材(不図示)で支持される。支持部材が、車内側ガラス14の上方成形型52への追従性を高め、かつ発生応力を抑制できる。以下、好ましい支持部材の態様を説明する。
【0073】
<第一態様>
図18に基づいて、第一態様を説明する。
図18(A)は平面図であり、
図18(B)はB-B線に沿う断面図である。
図18に示されるように、第一態様では、支持部材が、下方成形型50の一部で構成される。下方成形型50と上方成形型52とにより車内側ガラス14をプレスした際、下方成形型50は、切欠部40の全体を下方から支持できる大きさの幅Tを持つよう構成され、切欠部40の最大深さDより内側の領域が下方から支持される。なお、下方成形型50は、全周において幅Tで構成される。
【0074】
下方成形型50が上述の幅Tを有するので、上方成形型52への追従性を高め、かつ発生応力を抑制できる。幅Tと最大深さDとの関係は、T/D>0.2が好ましく、T/D>1.0がより好ましく、T/D>1.77が更に好ましい。
【0075】
図19は、T/D=2.37、S/L=0.39、W/L=0.098、及びD/L=0.015とした場合のモデルN9のシミュレーション結果である。
図19では、モデルN1と同様に逸脱量0.053での等高線の縦寸法と横寸法とを示すが、いずれも0である。表5は、モデルN1、及びN9の条件、及び結果を示す。なお、モデルN1ではT/D=0.47の条件でプレスされている。
【0076】
【0077】
逸脱量に関し、モデルN9(T/D=2.37)は、モデルN1(T/D=0.47)と比較すると、最大値で89%削減でき、面積で100%削減できる。したがって、第一態様を適用することで最大値及び面積が小さくなることが理解できる。
【0078】
図20は第一態様の変形例である。変形例では、支持部材が、下方成形型50の一部で構成される。変形例では、下方成形型50において、切欠部40に対応する周辺部分50Aのみが幅Tを持つよう構成される。下方成形型50と上方成形型52とにより車内側ガラス14をプレスした際、下方成形型50の周辺部分50Aは、切欠部40の全体を下方から支持できる大きさの幅Tを持つよう構成されるので、切欠部40の最大深さDより内側の領域が下方から支持される。下方成形型50が上述の幅Tを有するので、上方成形型52への追従性を高め、かつ発生応力を抑制できる。
【0079】
図21は、T/D=0.35、S/L=0.36、W/L=0.109、及びD/L=0.019とした場合のモデルN10のシミュレーション結果である。
図22は、T/D=1.24、S/L=0.36、W/L=0.109、及びD/L=0.019とした場合のモデルN11のシミュレーション結果である。
図21及び
図22では、逸脱量0.046での等高線の縦寸法と横寸法とを示す。表6は、モデルN10、及びN11の条件、及び結果を示す。
【0080】
【0081】
逸脱量に関し、モデルN11(T/D=1.24)は、モデルN10(T/D=0.35)と比較すると、最大値で78%削減でき、面積で100%削減できる。したがって、第一態様を適用することで最大値及び面積が小さくなることが理解できる。
【0082】
<第二態様>
図23に基づいて、第二態様を説明する。
図23(A)は平面図であり、
図23(B)はB-B線に沿う断面図である。
図23に示されるように、第二態様では、支持部材が、下方成形型50と別部材の部分パッド54で構成される。部分パッド54は切欠部40の最大深さDより内側の位置に配される。下方成形型50と上方成形型52とにより車内側ガラス14をプレスした際、部分パッド54が車内側ガラス14の最大深さDより内側の領域を下方から支持する。部分パッド54を有するので、上方成形型52への追従性を高め、かつ発生応力を抑制できる。
【0083】
図24は、部分パッド:無し、S/L=0.34、W/L=0.114、及びD/L=0.020とした場合のモデルN12のシミュレーション結果である。
図25は、部分パッド:有り、S/L=0.34、W/L=0.114、及びD/L=0.020とした場合のモデルN13のシミュレーション結果である。
図24及び
図25では、逸脱量0.025での等高線の縦寸法と横寸法とを示す。表7は、モデルN12、及びN13の条件、及び結果を示す。
【0084】
【0085】
逸脱量に関し、モデルN13(部分パッド:有り)は、モデルN12(部分パッド:無し)と比較すると、最大値で58%削減でき、面積で100%削減できる。したがって、第二態様を適用することで最大値及び面積が小さくなることが理解できる。
【0086】
<第三態様>
図26に基づいて、第三態様を説明する。
図26(A)は平面図であり、
図26(B)はB-B線に沿う断面図である。
図26に示されるように、第三態様では、支持部材が、下方成形型50の開口内部の全体に配置された凹部型56で構成される。凹部型56は切欠部40の最大深さDより内側に位置する。下方成形型50と上方成形型52とにより車内側ガラス14をプレスした際、凹部型56が車内側ガラス14の切欠部40の最大深さDより内側の領域を下方から支持する。凹部型56を有するので、上方成形型52への追従性を高め、かつ発生応力を抑制できる。
【0087】
凹部型56は、部分凹部型を下方成形型50の開口内部の略全体を占める程度まで大きくすることにより構成できる。
【0088】
図27は、凹部型:有り、S/L=0.34、W/L=0.114、及びD/L=0.020とした場合のモデルN14のシミュレーション結果である。
図27では、N12と同様に逸脱量0.053での等高線の縦寸法と横寸法とを示すが、いずれも0である。表8は、モデルN12、及びN14の条件、及び結果を示す。
【0089】
【0090】
逸脱量に関し、モデルN14(凹部型:有り)は、モデルN12(凹部型:無し)と比較すると、最大値で54%削減でき、面積で100%削減できる。したがって、第三態様を適用することで最大値及び面積が小さくなることが理解できる。
【0091】
<第四態様>
図28に基づいて、第四態様を説明する。
図28(A)は車内側ガラス14を曲げ成形する場合を示す図であり、
図28(B)は車外側ガラス12を曲げ成形する場合を示す図である。
図28に示されるように、第四態様では、支持部材が、下方成形型50と別部材の昇降可能な部分パッド58で構成される。部分パッド58は、下方成形型50の上方に位置し、昇降装置60に連結される。部分パッド58は昇降装置60により昇降される。部分パッド58は、切欠部40の最大深さDより内側の位置に配される。
【0092】
図28(A)に示されるように、切欠部40を備える車内側ガラス14を曲げ形成する場合、下方成形型50に対して昇降装置60により部分パッド58を上昇させる。下方成形型50と上方成形型52とにより車内側ガラス14をプレスした際、部分パッド58が車内側ガラス14の切欠部40の周囲を強く押し付けることができ、切欠部40の最大深さDより内側の領域を下方から支持できる。これにより、上方成形型52への追従性を高め、かつ発生応力を抑制できる。
【0093】
図28(B)に示されるように、切欠部40を備えない車外側ガラス12を曲げ形成する場合、切欠部が存在しない車外側ガラス12を曲げ形成する場合、部分パッド58の高さを下方成形型50の高さと同じ水準に維持することにより、ガラス全周を均等に押し付けることができる。
【0094】
図28では、第一形態と同様の幅の広い下方成形型50が示されているが、第二形態と同様の幅の狭い下方成形型50においても、昇降可能な部分パッド58を適用できる。
【0095】
第四態様を適用することで、第一形態から第三形態と同様に、最大値及び面積を小さくできる。なお、モデルN1、N2、N3、N6、N9、N10及びN11は炉外でプレス成形されたモデルであり、モデルN4、N5、N7、N8、N12及びN13は炉内でプレス成形されたモデルである。
【符号の説明】
【0096】
10 車両用窓ガラス、12 車外側ガラス、14 車内側ガラス、14A 車内上辺、14B 車内下辺、14C 車内側辺、16 中間膜、18 合わせガラス、20 遮蔽層、24 発熱領域、24A 下辺発熱領域、24B 側辺発熱領域、26 導電体パターン、28 発熱線条、28A 第1発熱線条、28B 第2発熱線条、30 給電用電極、32 正極、34 正極、36 負極、40 切欠部、50 下方成形型、50A 周辺部分、52 上方成形型、52A 成形面、54 部分パッド、56 凹部型、58 部分パッド、60 昇降装置、C 角部、E 切欠端、f1 第1面、f2 第2面、f3 第3面、f4 第4面、G ガラス板