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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022123155
(43)【公開日】2022-08-24
(54)【発明の名称】強化ガラス板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 27/012 20060101AFI20220817BHJP
   C03C 3/083 20060101ALI20220817BHJP
   C03C 3/085 20060101ALI20220817BHJP
   C03C 3/087 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
C03B27/012
C03C3/083
C03C3/085
C03C3/087
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019120488
(22)【出願日】2019-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】510191919
【氏名又は名称】エージーシー グラス ユーロップ
【氏名又は名称原語表記】AGC GLASS EUROPE
【住所又は居所原語表記】Avenue Jean Monnet 4, 1348 Louvain-la-Neuve, Belgique
(71)【出願人】
【識別番号】507090421
【氏名又は名称】エージーシー フラット グラス ノース アメリカ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AGC FLAT GLASS NORTH AMERICA,INC.
【住所又は居所原語表記】11175 Cicero Dr. Suite 400, Alpharetta, GA 30022, U.S.A.
(71)【出願人】
【識別番号】516170945
【氏名又は名称】エージーシー ヴィドロ ド ブラジル リミターダ
【氏名又は名称原語表記】AGC Vidros do Brasil Ltda.
【住所又は居所原語表記】Estrada Municipal Doutor Jaime Eduardo Ribeiro Pereira, n 500, Jardim Vista Alegre, Guaratingueta, Sao Paulo, CEP 12523-671, Brasil
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 勲
(72)【発明者】
【氏名】加藤 保真
(72)【発明者】
【氏名】藤▲原▼ 卓磨
【テーマコード(参考)】
4G015
4G062
【Fターム(参考)】
4G015CA02
4G015CB01
4G062AA01
4G062BB01
4G062CC10
4G062DA06
4G062DA07
4G062DB01
4G062DB02
4G062DB03
4G062DB04
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4G062EC03
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4G062EE04
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4G062FJ01
4G062FK01
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4G062HH17
4G062JJ01
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4G062KK01
4G062KK03
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4G062KK07
4G062KK10
4G062MM01
4G062NN33
(57)【要約】
【課題】物理強化ガラスを用いることなく、端面強度が大きい強化ガラス板、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の強化ガラス板は、第1の主面、前記第1の主面に対向する第2の主面、および端面を有した強化ガラス板であって、前記端面に沿って前記端面と平行方向に平面圧縮応力が形成された強化部を備え、前記強化部の前記平面圧縮応力の最大値が1~120MPaであり、前記第1の主面の重心および前記第2の主面の重心における表面圧縮応力が3MPa以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主面、前記第1の主面に対向する第2の主面、および端面を有した強化ガラス板であって、
前記端面に沿って前記端面と平行方向に平面圧縮応力が形成された強化部を備え、
前記強化部の前記平面圧縮応力の最大値が1~120MPaであり、
前記第1の主面の重心および前記第2の主面の重心における表面圧縮応力が3MPa以下である、強化ガラス板。
【請求項2】
前記端面の法線方向における前記強化部の前記端面からの幅は、前記ガラス板の厚さの0.5倍以上である、請求項1に記載の強化ガラス板。
【請求項3】
酸化物基準のモル百分率表示で、Feを0.003~1.5%、SiOを56~75%、Alを0~20%、NaOを8~22%、KOを0~10%、MgOを0~14%、ZrOを0~5%、CaOを0~12%含有する、請求項1または2に記載の強化ガラス板。
【請求項4】
前記強化部が備えられた前記端面に、保護層を備えた、請求項1~3のいずれか1項に記載の強化ガラス板。
【請求項5】
前記端面の表面粗さRaが1μm以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の強化ガラス板。
【請求項6】
前記強化部は、隣り合う前記端面が接する角から前記強化ガラス板の厚さの1.0倍以上、10倍以下離れた位置の前記端面に形成される、請求項1~5のいずれか1項に記載の強化ガラス板。
【請求項7】
前記強化部の、前記端面と反対側に隣り合う位置に、前記端面と平行方向に平面引張応力が形成された、請求項1~6のいずれか1項に記載の強化ガラス板。
【請求項8】
前記強化ガラス板の全体の比重が均一である、請求項1~7のいずれか1項に記載の強化ガラス板。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の強化ガラス板を得る強化ガラス板の製造方法であって、
ガラス板を製造するガラス板製造工程と、
前記ガラス板の端面に沿って前記端面と平行方向に平面圧縮応力を形成する端面強化工程とを有し、
前記端面強化工程において、前記ガラス板の、前記端面の法線方向の前記端面からの長さが前記強化ガラス板の厚さと同距離である位置の温度T1が前記ガラス板の歪点以上であり、前記端面の温度T2が前記ガラス板の軟化点未満であり、かつ、T1>T2となるように前記ガラス板を加熱する、強化ガラス板の製造方法。
【請求項10】
前記端面強化工程において、レーザ光を照射することにより前記ガラス板の端面に平面圧縮応力を形成する、請求項9に記載の強化ガラス板の製造方法。
【請求項11】
前記ガラス板製造工程において、前記ガラス板はガラスを熱応力スクライブを用いた方法により切断することにより製造される、請求項9または10に記載の強化ガラス板の製造方法。
【請求項12】
前記端面強化工程の後に、前記端面に保護層を形成する、請求項8~11のいずれか1項に記載の強化ガラス板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強化ガラス板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス板がサッシに嵌められた窓ガラスが太陽光により温められると、ガラス板の端部と中央部との温度差が生じ、ガラス板が割れるおそれがある。そこで、ガラス板を割れにくくするために、ガラス板の端面強度の向上が求められている。
ガラス板を物理強化することにより、ガラス板の端面の平均強度が高くなることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-79769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ガラス板全体の強度を向上させた物理強化ガラスを用いる方法は、高温のガラス板を急冷する必要があり、エネルギー消費や製造コストの増大といった問題がある。
【0005】
本発明は、物理強化ガラスを用いることなく、端面の強度が高い強化ガラス板、およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の強化ガラス板は、第1の主面、前記第1の主面に対向する第2の主面、および端面を有した強化ガラス板であって、
前記端面に沿って前記端面と平行方向に平面圧縮応力が形成された強化部を備え、
前記強化部の前記平面圧縮応力の最大値が1~120MPaであり、
前記第1の主面の重心および前記第2の主面の重心における表面圧縮応力が3MPa以下である。
【0007】
本発明の強化ガラス板の製造方法は、上記強化ガラス板を得る強化ガラス板の製造方法であって、
ガラス板を製造するガラス板製造工程と、
前記ガラス板の端面に沿って前記端面と平行方向に平面圧縮応力を形成する端面強化工程とを有し、
前記端面強化工程において、前記ガラス板の、前記端面の法線方向の前記端面からの長さが前記強化ガラス板の厚さと同距離である位置の温度T1が前記ガラス板の歪点以上であり、前記端面の温度T2が前記ガラス板の軟化点未満であり、かつ、T1>T2となるように前記ガラス板を加熱する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の強化ガラス板は、物理強化ガラスを用いることなく、端面の強度が高いことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る強化ガラス板の斜視図を示す。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る強化ガラス板の平面図を示す。
図3図3(A)は、本発明の一実施形態に係る強化ガラス板の断面図、図3(B)は本発明の一実施形態に係る強化ガラス板の平面図、図3(C)は本発明の一実施形態に係る強化ガラス板における、端面からの距離と平行方向の平面圧縮応力との関係を示す。
図4図4は、端面強化工程におけるレーザ光照射時のガラス板の断面図を示す。
図5図5は、実施例による強化ガラス板の断面図を示す。
図6図6は、例1~例3のワイブルプロットを示す。
図7図7は、例4および例5のワイブルプロットを示す。
図8図8は、例6および例7のワイブルプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る強化ガラス板を詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る強化ガラス板の斜視図、図2は、本発明の一実施形態に係る強化ガラス板の平面図、図3(A)は本発明の一実施形態に係る強化ガラス板の断面図、図3(B)は本発明の一実施形態に係る強化ガラス板の平面図である。図3(C)は本発明の一実施形態に係る強化ガラス板における、端面からの距離と平面圧縮応力との関係を示す図である。
【0012】
本発明の一実施形態に係る強化ガラス板10は、第1の主面11a、第1の主面11aに対向する第2の主面11b、および端面12を有した強化ガラス板であって、端面12に沿って端面12と平行方向に平面圧縮応力が形成された強化部30を備え、強化部30の平面圧縮応力の最大値が1~120MPaであり、第1の主面11aの重心および第2の主面11bの重心におけるにおける表面圧縮応力が3MPa以下である。
【0013】
本発明の一実施形態に係る強化ガラス板10は、例えば、建築窓、外壁、手摺材、太陽電池カバーガラス、車両窓として好適に用いられる。建築窓としては、住宅、ビル等の窓が例示される。
【0014】
本発明の一実施形態に係る強化ガラス板10は、建築窓、外壁、手摺材、太陽電池カバーガラス、車両窓等の各種用途に単板のガラスとして使用できる。また、別の実施形態では、2枚以上のガラス板を中間層フィルムで貼り合わせた合わせガラスとして使用できる。
【0015】
さらに別の実施形態では、間隔を開けて2枚以上のガラス板を配置し、複層ガラスとして使用できる。さらに別の実施形態では、ガラス板表面にコーティングをして使用できる。
【0016】
合わせガラスや複層ガラスの構成では、少なくとも1枚以上に本発明の強化ガラス板を使用できる。
【0017】
本発明の一実施形態に係る強化ガラス板10は、第1の主面11aの重心および第2の主面11bの重心における表面圧縮応力が3MPa以下である。ガラス板を物理強化することにより形成される表面圧縮応力層の表面圧縮応力値(以下、CSともいう。)は、通常40MPa超となる。CSが大きいほどガラス板の面強度は大きくなるが、CSが3MPa超であるガラス板を製造するためには、高温のガラス板を急冷する必要があり、エネルギー消費や製造コストが増大するとともに製造時に割れによる破損のリスクが増加する。第1の主面11aの重心および第2の主面11bの重心におけるCSが3MPa以下であれば、ガラス板の急冷が不要となり、エネルギー消費や製造コストを低く抑えることができる。ここで、第1の主面11aの重心および第2の主面11bの重心とは、第1の主面11aおよび第2の主面11bが矩形や円等の点対称な形状である場合、第1の主面11aおよび第2の主面11bの中心を意味する。第1の主面11aの重心および第2の主面11bの重心におけるCSは、2MPa以下がより好ましく、1MPa以下がさらに好ましい。第1の主面11aの重心および第2の主面11bの重心におけるCSの下限は特に限定されないが、0MPa以上であってもよく、0.1MPa以上であってもよく、0.3MPa以上であってもよい。
【0018】
本発明の一実施形態に係る強化ガラス板10は、第1の主面11aおよび第2の主面11bのCSが3MPa以下であることが好ましい。第1の主面11aおよび第2の主面11bのCSが3MPa以下であれば、エネルギー消費や製造コストを低く抑えることができる。第1の主面11aおよび第2の主面11bのCSは、2MPa以下がより好ましく、1MPa以下がさらに好ましい。第1の主面11aおよび第2の主面11bのCSの下限は特に限定されないが、0MPa以上であってもよく、0.1MPa以上であってもよく、0.3MPa以上であってもよい。
【0019】
ここで、CSは、表面応力計(例えば、折原製作所製バビネ型表面応力計)により測定できる。
【0020】
端面12は、第1の主面11aとの境界部、および第2の主面11bとの境界部のそれぞれに面取部50を有してもよい。端面12の面取の種類は、C面取、R面取、R面取とC面取の組合せなどが挙げられる。端面12は、面取後に研磨がなされたものであってよい。研磨によって、面取時に生じる加工傷が除去できる。端面12は、ガラス板の切断時に発生するマイクロクラックが生じないように、レーザやガスバーナーによる熱応力スクライブ後にガラス板を割断することにより形成されたものであってもよい。また、端面12が研磨や熱応力スクライブ切断後の割断によって形成されることにより、後述するレーザ光の散乱が低減できる。
【0021】
本発明の一実施形態に係る強化ガラス板10は、端面12に沿って端面12と平行方向に平面圧縮応力が形成された強化部30を備える。端面12の法線方向における強化部30の端面12からの幅Cは、強化ガラス板の厚さTの0.5倍以上であることが好ましい。端面12に幅Cが強化ガラス板の厚さTの0.5倍以上である強化部30を備えることにより、強化ガラス板10に温度分布が生じたときに端面12に発生する引張応力に対して強くなり、端面12にクラック等の欠陥が生じにくく強化ガラス板10が割れにくい。
【0022】
強化部の幅Cは、強化ガラス板10の厚さTの0.7倍以上がより好ましく、1.0倍以上がさらに好ましく、1.5倍以上が特に好ましく、2.0倍以上が最も好ましい。また、強化部の幅Cの上限は特に限定されないが、強化部30の、端面12と反対側に隣り合う位置40に端面12と平行方向に発生する平面引張応力の影響を小さくするため、強化ガラス板10の厚さTの5.0倍以下であってもよく、4.0倍以下であってもよく、3.0倍以下であってもよい。
【0023】
ここで、複屈折2次元分布評価装置により、第1の主面11aおよび第2の主面11bの垂直方向に偏差応力が測定される。この偏差応力は平面応力であり、端面12と平行方向の偏差応力が圧縮方向であるときを平面圧縮応力、引張方向であるときを平面引張応力とする。また、強化部の幅Cは、強化ガラス板10の一方の主面11a、11bにおいて、主面11a、11bのエッジから測定される平面圧縮応力の値が0である位置までの最短距離を意味する。
【0024】
また、強化部30は、隣り合う端面12が接する角13には形成されなくてもよい。隣り合う端面12が接する角13から強化部30までの距離Gは、強化ガラス板10の厚さTの1.0倍以上、10倍以下でもよい。
【0025】
ここで、強化ガラス板10の角13が角落とし加工されていて角13がない場合、隣り合う端面12の仮想延長面が接する角から強化部30までの距離が、強化ガラス板10の厚さTの1.0倍以上、10倍以下でもよい。
【0026】
本発明の一実施形態に係る強化ガラス板10は、強化部30の平面圧縮応力の最大値が1~120MPaである。強化部30の平面圧縮応力の最大値が1MPa以上であれば、端面12の機械的強度は高い。強化部30の平面圧縮応力の最大値は2MPa以上がより好ましく、3MPa以上がさらに好ましく、5MPa以上が特に好ましい。強化部30の平面圧縮応力の最大値が120MPa以下であれば、強化部30の、端面12と反対側に隣り合う位置40に発生する平面引張応力が強くなりすぎず、強化ガラス板10の主面11a、11bに傷がついても強化ガラス板10が割れにくい。強化部30の平面圧縮応力の最大値は100MPa以下であってもよく、50MPa以下であってもよく、30MPa以下であってもよく、10MPa以下であってもよい。ここで、平面圧縮応力の最大値は、強化ガラス板10の一方の主面において複屈折2次元分布評価装置により測定される強化部の平面圧縮応力の最大値を意味し、図3(C)で表される値である。
【0027】
本発明の一実施形態に係る強化ガラス板10は、端面12に保護層が形成されていてもよい。保護層としては、例えば粘着テープ、紫外線硬化樹脂、熱溶融樹脂が挙げられる。
【0028】
本発明の一実施形態に係る強化ガラス板10は、端面12の表面粗さRaが1μm以下である。ここで、表面粗さRaは、JIS B 0601(1994)により規定される値である。また、端面12の表面粗さRaが1μm以下とは、端面12全体の表面粗さRaが1μm以下であることを意味する。また、端面12が面取部50を有する場合、面取部50の表面粗さRaも1μm以下である。端面12の表面粗さRaが1μm以下であれば、端面12の強度が大きいため好ましい。例えば、後述するようにレーザ光の照射によりガラス板を切断して強化ガラス板10を製造することにより、強化ガラス板10の端面12の表面粗さRaを1μm以下にすることができる。端面12の表面粗さRaは0.5μm以下がより好ましく、0.3μm以下がさらに好ましく、0.1μm以下がよりさらに好ましく、0.05μm以下が特に好ましく、0.01μm以下が最も好ましい。端面12の表面粗さRaの下限は特に限定されないが、0.0001μm以上であってもよい。
【0029】
本発明の一実施形態に係る強化ガラス板10は、第1の主面11aおよび第2の主面11bの面積が0.001m以上であることが好ましい。面積が0.001m以上であれば、建築窓、外壁、太陽電池カバーガラス、車両窓等の各種用途に好適に用いられる。強化ガラス板10の面積は、0.1m以上であってもよく、1m以上であってもよく、2m以上であってもよく、3m以上であってもよく、5m以上であってもよく、7m以上であってもよく、9m以上であってもよい。
【0030】
一方、第1の主面11aおよび第2の主面11bの面積は、それぞれ、12m以下が好ましい。面積が12m以下であれば、強化ガラス板の取り扱いが容易になり、例えば強化ガラス板の設置時の周辺部材との接触による破損を抑制できる。面積は、10m以下であってもよい。
【0031】
本発明の一実施形態に係る強化ガラス板10は、第1の主面11aおよび第2の主面11bが矩形であることが好ましい。矩形であれば、例えば建築窓、外壁、手摺材、太陽電池カバーガラスとして設置しやすい。ここで、矩形とは、概略直角四辺形であり、任意の1つの辺から対向して位置する辺までの距離を測定した時、長辺、短辺ともに、測定位置による誤差が各々0.3%以内に収まり、コーナー部に曲率や切欠き等がある形状を含む。
【0032】
本発明の一実施形態に係る強化ガラス板10は、矩形である場合において、第1の主面11aおよび第2の主面11bの長辺の長さbが、50mm以上であってもよく、100mm以上であってもよく、300mm以上であってもよく、500mm以上であってもよく、1000mm以上であってもよく、2000mm以上であってもよく、2500mm以上であってもよい。第1の主面11aおよび第2の主面11bの長辺の長さbは、5000mm以下であってもよい。ここで、長辺の長さbとは、図2に示す対向する2つの短辺間の最短距離bである。
【0033】
本発明の一実施形態に係る強化ガラス板10は、矩形である場合において、第1の主面11aおよび第2の主面11bの短辺の長さaが、15mm以上であってもよく、50mm以上であってもよく、100mm以上であってもよく、300mm以上であってもよく、500mm以上であってもよく、1000mm以上であってもよく、2000mm以上であってもよい。第1の主面11aおよび第2の主面11bの短辺の長さaは、3000mm以下であってもよい。ここで、短辺の長さaとは、図2に示す対向する2つの長辺間の最短距離aである。
【0034】
本発明の一実施形態に係る強化ガラス板10の板厚は、強度やハンドリング性などから0.5mm以上であってよい。板厚は、1mm以上であってもよく、2mm以上であってもよく、3mm以上であってもよく、5mm以上であってもよい。一方、板厚が25mm以下であれば、軽量であるため好ましい。板厚は22mm以下がより好ましく、19mm以下がさらに好ましい。
【0035】
本発明の一実施形態に係る強化ガラス板10は、重量が1000kg以下であることが好ましい。重量が1000kg以下であれば、軽量であるため好ましい。重量は500kg以下がより好ましい。また、重量は、強度などの観点から2kg以上が好ましい。重量は、5kg以上がより好ましく、10kg以上がさらに好ましい。
【0036】
また、本発明の一実施形態に係る強化ガラス板10は、第1の主面11aおよび第2の主面11bの一方または両方に、熱線反射膜や防汚膜等の機能膜を形成してもよい。
【0037】
本発明の一実施形態に係る強化ガラス板10のガラス転移点Tgは、530℃以上が好ましく、540℃以上がより好ましい。
【0038】
本発明の一実施形態に係る強化ガラス板10の比重は、2.45~2.55が好ましい。
【0039】
上記した数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用され、特段の定めがない限り、以下本明細書において「~」は、同様の意味をもって使用される。
本発明の一実施形態に係る強化ガラス板10は、強化ガラス板10の全体の比重が均一であることが好ましい。強化ガラス板10の全体の比重が均一であるとは、強化ガラス板10の端面12から板厚の1/10以下の深さまでの部分の比重と、主面11a、11bの中央における主面11a、11bから板厚の1/10以下の深さまでの部分の比重との差が、強化ガラス板10の主面11a、11bの中央における主面11a、11bから板厚の1/10以下の深さまでの部分の比重に対して-0.50%~0.00%の範囲であることを意味する。比重は、ラマン分光法などの任意の方法により表面仮想温度を測定して推定することができる。
【0040】
本発明の一実施形態に係る強化ガラス板10のヤング率は、65GPa以上が好ましい。これによって、剛性や破壊強度が充分となる。ヤング率は70GPa以上であってもよい。一方、ヤング率が90GPa以下であれば、強化ガラス板が脆くなる事を抑制し、強化ガラス板の切削、ダイシング時の欠けを抑制できる。ヤング率は85GPa以下であってもよく、80GPa以下であってもよい。
【0041】
本発明の一実施形態に係る強化ガラス板10は、50~350℃での平均熱膨張係数が30×10-7/℃以上140×10-7/℃以下が好ましい。50~350℃での平均熱膨張係数が30×10-7/℃以上であれば、後述する端面強化工程でのレーザ光60の照射時に、ガラス板10の端面の温度T2がガラス板10の軟化点未満であっても強化部30を形成することができる。50~350℃での平均熱膨張係数は、60×10-7/℃以上がより好ましく、80×10-7/℃以上がさらに好ましく、85×10-7/℃以上が特に好ましい。また、50~350℃での平均熱膨張係数が140×10-7/℃以下であれば、端面強化工程でのレーザ光60の照射によりレーザ光60が当たっている部分と当たっていない部分との温度差が生じたときに発生する応力が大きくなりすぎず、強化ガラス板10が割れにくい。50~350℃での平均熱膨張係数は、100×10-7/℃以下がより好ましく、95×10-7/℃以下がさらに好ましい。
【0042】
ここで、本発明の一実施形態に係る強化ガラス板10は、酸化物基準のモル百分率表示でFeを0.003~1.5%、SiOを56~75%、Alを0~20%、NaOを8~22%、KOを0~10%、MgOを0~14%、ZrOを0~5%、CaOを0~12%含有することが好ましい。以降、百分率表示は、特に断らない限り、酸化物基準のモル百分率表示含有量を示す。
【0043】
本発明の一実施形態に係る強化ガラス板10において、ガラス組成を上記範囲に限定した理由を以下に説明する。
【0044】
Feは、後述する端面加工に近赤外線レーザを用いる場合に含有することが好ましい。ガラス中のFe2+イオンは、波長が1000~1100nmのレーザ光線を吸収する。Feの含有量が0.003%以上であれば、レーザ光により端面の加熱を効率よく行うことができる。Feの含有量は0.005%以上がより好ましく、0.01%以上がさらに好ましく、0.02%以上が特に好ましく、0.05%以上が最も好ましい。Feの含有量が1.5%以下であれば、レーザ光がガラス表面で吸収されにくく、ガラス内部で集光しやすい。Feの含有量は1.0%以下がより好ましく、0.5%以下がさらに好ましく、0.3%以下がよりさらに好ましく、0.2%以下が特に好ましく、0.1%以下が最も好ましい。
【0045】
近赤外線以外のレーザ光を利用する場合は、レーザ光の波長に合わせて適切な吸収成分をガラスに適量含有することが好ましい。可視光領域波長の光の吸収はガラスを着色するため、可視光レーザによる端面強化は、着色ガラスを用いてもよい。
【0046】
SiOは、ガラス微細構造の中で網目構造を形成する成分であり、ガラスを構成する主要成分である。SiOの含有量は、56%以上が好ましく、63%以上がより好ましく、66%以上がさらに好ましく、68%以上が特に好ましい。また、SiOの含有量は、75%以下が好ましく、73%以下がより好ましく、72%以下がさらに好ましい。SiOの含有量が56%以上であるとガラスとしての安定性や耐候性の点で優位である。一方、SiOの含有量が75%以下であると熔解性および成形性の点で優位である。
【0047】
Alは、必須ではないが、ガラスの耐候性を向上するため含有させてもよい。Alを含有する場合は、0.4%以上が好ましく、0.6%以上がより好ましく、0.8%以上がさらに好ましい。また、屈折率が低くなり、反射率が低下する。また、Alの含有量が20%以下であると、ガラスの粘性が高い場合でも失透温度が大きくは上昇しないため、ソーダライムガラス生産ラインでの熔解、成形の点で優位である。Alの含有量は、10%以下がより好ましく、5%以下がさらに好ましく、3%以下が特に好ましく、2%以下が最も好ましい。
【0048】
SiOおよびAlの含有量の合計(以下、SiO+Al含有量ともいう。)は、68%以上が好ましい。SiO+Al含有量が68%以上であると、圧痕がついた時のクラック耐性が向上する。また、屈折率が低くなり、反射率が低下する。SiO+Al含有量は、70%以上がより好ましい。また、SiO+Al含有量は、80%以下が好ましい。SiO+Al含有量が80%以下では、高温でのガラスの粘性が低下し、溶融が容易となる。SiO+Al含有量は、76%以下がより好ましく、74%以下がさらに好ましい。
【0049】
NaOは、ガラスの高温粘性と失透温度を下げ、ガラスの熔解性、成形性を向上させる成分である。NaOの含有量は、8%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、12%以上がさらに好ましい。また、NaOの含有量は、22%以下が好ましく、16%以下がより好ましく、14%以下がさらに好ましい。一方、NaOの含有量が22%以下であると、充分な耐候性が得られる。
【0050】
Oは、ガラスの熔解性、成形性を向上させるため含有してもよい。KOを含有する場合は、0.5%以上であってもよく、0.7%以上であってもよい。また、KOの含有量は10%以下が好ましく、2%以下がより好ましく、1%以下がさらに好ましい。KOの含有量が10%以下であると、充分な耐候性が得られる。
【0051】
MgOは、必須ではないが、ガラスを安定化させる成分である。MgOを含有する場合は、2%以上が好ましく、4%以上がより好ましく、6%以上がさらに好ましい。また、MgOの含有量は、14%以下が好ましく、10%以下がより好ましく、8%以下がさらに好ましい。MgOの含有量が2%以上であると、ガラスの耐薬品性が良好になる。また、高温での熔解性が良好になる。一方、MgOの含有量が14%以下であると、失透が起こり難くなる
【0052】
ZrOは屈折率を高くする成分であり、屈折率を低くし反射率を低下させるために実質的に含有しないことが好ましい。なお、本明細書において「実質的に含有しない」とは、原料等から混入する不可避的不純物以外には含有しないこと、すなわち、意図的に含有させないことを意味する。しかし、ZrOは、熔解性、成形性を向上させるため含有してもよい。含有する場合は、5%以下が好ましく、3%以下がより好ましく、1%以下がさらに好ましい。
【0053】
CaOは、必須ではないが、ガラスを安定化させる成分である。CaOを含有する場合は、CaOの含有量は、2%以上が好ましく、5%以上がより好ましく、7%以上がさらに好ましい。また、CaOの含有量は、12%以下が好ましく、10%以下がより好ましく、9%以下がさらに好ましい。CaOの含有量が2%以上であると、耐薬品性が良好になる。また、CaOの含有量が12%以下であると、失透しにくい。
【0054】
SrOは、必須ではないが、ガラスの高温粘性を下げ、失透温度を下げる目的で含有してもよい。含有する場合のSrO量は、3%以下が好ましく、2%以下がより好ましく、1%以下がさらに好ましい。
【0055】
BaOは、必須ではないが、ガラスの高温粘性を下げ、失透温度を下げる目的で含有してもよい。BaOは、ガラスの比重を重くする作用があるため、軽量化を意図する場合には含有しないことが好ましい。含有する場合のBaO量は、3%以下が好ましく、2%以下がより好ましく、1%以下がさらに好ましい。
【0056】
ZnOは、フロート法でガラス板を成形するときに、フロートバスで還元され製品欠点となるため、実質的に含有しないことが好ましい。
【0057】
この他、ガラスの熔融の清澄剤として、硫酸塩、塩化物、フッ化物などを適宜含有してもよい。
【0058】
本発明の強化ガラス板は、本質的に以上で説明した成分からなるが、本発明の目的を損なわない範囲でその他の成分を含有してもよい。そのような成分を含有する場合、それら成分の含有量の合計は5%以下が好ましく、より好ましくは3%以下、典型的には1%以下である。以下、上記その他成分について例示的に説明する。
【0059】
は、高温での熔融性またはガラス強度の向上のために、1%未満の範囲で含有してもよい。一般的には、NaOまたはKOのアルカリ成分とBを同時に含有すると揮散が激しくなり、煉瓦を著しく浸食するので、Bは実質的に含有しないことが好ましい。
【0060】
LiOは、ガラスの高温粘性と失透温度を下げ、ガラスの熔解性、成形性を向上させるため含有してもよい。含有する場合は、LiOの含有量は1%以下が好ましく、0.05%以下がより好ましく、0.01%以下が特に好ましい。
【0061】
次に、本発明の一実施形態に係る強化ガラス板10の製造方法について説明する。
【0062】
本発明の一実施形態に係る強化ガラス板10を製造する場合、ガラス板製造工程、端面強化工程を経る。
【0063】
ガラス板製造工程では、例えば種々の原料を適量調合し、約1400~1800℃に加熱し溶融した後、脱泡、攪拌などにより均質化し、周知のフロート法、ダウンドロー法、ロールアウト法、プレス法などによって板状に成形し、徐冷後所望のサイズに切断してガラス板が製造される。
切断は、ガラスの切断時に発生するマイクロクラックが生じないように、板状に成形したガラスをレーザやガスバーナーによる熱応力スクライブ後に割断することにより行われることが好ましい。
【0064】
切断にレーザを用いる場合、板状に成形されたガラスにレーザ光を照射することにより行われる。レーザ光がガラスに入射することによりガラスが加熱され、発生した熱応力により亀裂が伸展しスクライブ線が形成される。スクライブ線が形成されたガラス板を割断することによりガラス板が切断される。割断は、機械的または熱的な応力により行われることが好ましい。
【0065】
レーザ光の波長は、ガラス組成などによるが、例えば250~10600nmであってよい。レーザ光の波長が250~10600nmであると、切断を容易に行うことができる。
【0066】
レーザ光の光源としては、例えば、Ybファイバーレーザ(波長:1000~1100nm)、Ybディスクレーザ(波長:1000~1100nm)、Nd:YAGレーザ(波長:1064nm)、高出力半導体レーザ(波長:808~980nm)などの近赤外線レーザが挙げられる。
なお、レーザ光の光源としては、UVレーザ(波長:355nm)、グリーンレーザ(波長:532nm)、Ho:YAGレーザ(波長:2080nm)、Er:YAGレーザ(2940nm)、中赤外光パラメトリック発振器を使用したレーザ(波長:2600~3450nm)、炭酸ガスレーザ(波長:10600nm)なども使用可能である。
レーザ光の光源は、パルス発振式でもよいが、好ましくは連続発振式である。連続発振式の場合、ガラス板10に連続的な熱応力が発生するので、スクライブ線の品質が安定する。
【0067】
また、熱応力スクライブ時の加熱温度を徐冷点以下とすることにより、切断により生じた端面にマイクロクラック等が生じないため、製造される強化ガラス板10の端面12の表面粗さRaを小さくすることができる。
【0068】
端面12は、面取してもよいし、面取しなくてもよい。面取は、レーザ光の照射によりガラス板の主面および端面に傾斜したスクライブ線を形成後、割断して行われることが好ましい。面取がレーザ光の照射により傾斜したスクライブ線を形成後、割断して行われることにより、面取部50の表面粗さRaを小さくすることができ、強度を向上することができる。
【0069】
端面強化工程では、ガラス板の端面に沿って端面と平行方向に平面圧縮応力を形成する。
図4は、端面強化工程におけるレーザ光照射時のガラス板の断面図である。
端面強化工程では、例えばレーザ光60をガラス板の端面12に照射することによって、ガラス板10の内部が加熱される。その後、ガラス板10の内部がガラス板10の端面12よりも遅れて冷却されることにより、引張応力がガラス板10の内部40に生じる。このとき、応力のつり合いによりガラス板10の内部に生じる引張応力領域に対応した圧縮応力領域がガラス板の端面12に形成され、端面12が強化できる。
【0070】
端面強化工程では、レーザ光60の照射時に、ガラス板10の端面の法線方向の端面からの長さがガラス板10の厚さと同距離である位置Dの温度T1が、ガラス板10の歪点以上となるようにガラス板10が加熱される。位置Dの温度T1が、ガラス板10の歪点以上であれば、端面12が充分に強化される。
【0071】
端面強化工程では、レーザ光60の照射時に、ガラス板10の端面12の温度T2は、ガラス板10の軟化点未満であり、かつ、T1>T2である。端面12の温度がガラス板10の軟化点未満であり、かつ、T1>T2であれば、その後の端面12の表面に引張応力が生じない。仮に端面12の温度がT1<T2である場合、その後に引張応力が端面12の表面の一部に生じうる。また、端面12の温度が軟化点以上である場合、端面が変形してしまう。レーザ光60の照射時に、ガラス板10の端面12の温度は好ましくはガラス板10の徐冷点以下、より好ましくはガラス板10の歪点以下である。
【0072】
端面強化工程では、レーザ光60の照射時に、ガラス板10の第1主面11aおよび第2主面11bの温度が300℃以下であることが好ましい。ガラス板10の第1主面11aおよび第2主面11bの温度が300℃以下であれば、ガラス板10の変形が抑制できる。レーザ光60の照射時に、ガラス板10の第1主面11aおよび第2主面11bの温度は200℃以下がより好ましく、100℃以下がさらに好ましい。
【0073】
端面強化工程では、ガラス板10の端面12からガラス板10の内部にレーザ光60を入射させることにより、ガラス板10の内部が広範囲に加熱でき、端面12の強化が促進できる。
【0074】
レーザ光60は、ガラス板10の端面12に対して照射されると共に、ガラス板10の内部に集光されることが好ましい。レーザ光60の集光点21がガラス板10の内部に配されることで、ガラス板10の内部がガラス板10の表面よりも高温になる。
レーザ光60は、ガラス板10に対する照射によって主に線形吸収を生じさせる。主に線形吸収が生じるとは、線形吸収によって生じる熱量が非線形吸収によって生じる熱量よりも大きいことを意味する。非線形吸収はほとんど生じなくてよい。
【0075】
非線形吸収は、多光子吸収とも呼ばれる。多光子吸収が発生する確率は光子密度(レーザ光60のパワー密度)に対して非線形であり、光子密度が高いほど確率が飛躍的に高くなる。例えば2光子吸収が発生する確率は、光子密度の自乗に比例する。
【0076】
本発明者らの知見によると、ガラス板10の場合、引張応力をガラス板10の内部40に生じさせるために有効な非線形吸収を生じさせるためには、光子密度が1×10W/cm以上が好ましい。
【0077】
ガラス板10の任意の位置で、光子密度が1×10W/cm未満であってよい。この場合、非線形吸収はほとんど生じない。レーザ光60の断面の大きさは波長よりも大きいため、集光点21の大きさはゼロではなく、集光点における光子密度は1×10W/cm未満であってよい。
【0078】
一方、線形吸収は、1光子吸収とも呼ばれる。1光子吸収が発生する確率は光子密度に比例する。1光子吸収の場合、ランベルト・ベールの法則(Lambert-Beer’s law)に従って、レーザ光60の強度が減衰する。
【0079】
レーザ光60がガラス板10中を距離E(単位[cm])だけ移動する間にレーザ光60の強度がIからIに変化したとすると、I=I×exp(-α×E)の式が成立する。αは、吸収係数(単位[cm-1])と呼ばれる定数であり、紫外可視近赤外分光光度計等により測定される。
【0080】
吸収係数αは、例えば100よりも小さくてよい。吸収係数αが100以上の場合、レーザ光60の大部分がガラス板10の表面近傍で吸収され、ガラス板10の内部の加熱が困難である。吸収係数αは、好ましくは30よりも小さく、より好ましくは10よりも小さい。吸収係数αは、一般的に0よりも大きい。吸収係数αは、レーザ光60の波長やガラス板10のガラス組成などに依存する。
【0081】
レーザ光60の波長は、ガラス板10のガラス組成などによるが、例えば250~5000nmであってよい。レーザ光60の波長が250~5000nmであると、吸収係数αが適切な範囲に収まる。
【0082】
レーザ光60の光源としては、例えば、Ybファイバーレーザ(波長:1000~1100nm)、Ybディスクレーザ(波長:1000~1100nm)、Nd:YAGレーザ(波長:1064nm)、高出力半導体レーザ(波長:808~980nm)などの近赤外線レーザが挙げられる。
【0083】
なお、レーザ光60の光源としては、UVレーザ(波長:355nm)、グリーンレーザ(波長:532nm)、Ho:YAGレーザ(波長:2080nm)、Er:YAGレーザ(2940nm)、中赤外光パラメトリック発振器を使用したレーザ(波長:2600~3450nm)なども使用可能である。
【0084】
レーザ光60の光源は、パルス発振式でもよいが、好ましくは連続発振式である。連続発振式の場合、ガラス板10の内部が広範囲に加熱できる。
【0085】
レーザ光60の本数は、図4では1本であるが、複数本でもよい、複数本のレーザ光60が同時にガラス板10に対して照射されてもよい。
【0086】
端面強化工程では、ガラス板10に対するレーザ光60の照射によって主に線形吸収を生じさせ、ガラス板10の内部をガラス板10の端面12よりも高温に加熱することで引張応力が形成され、ガラス板10の端面12が強化される。主に線形吸収を生じさせることで、主に非線形吸収を生じさせる場合よりも、ガラス板10の内部が広範囲に加熱でき、端面12の強化が促進できる。
【0087】
端面強化工程では、ガラス板10の端面12に沿ってレーザ光60の照射位置を移動させることによって、強化部30がガラス板10の外縁に形成される。強化部30は、ガラス板10の外縁の少なくとも一部に沿って連続的に形成されてもよく、ガラス板10の外縁に沿って全体的に形成されてもよい。
【0088】
ガラス板10におけるレーザ光60の照射位置の移動は、ガラス板10、レーザ光60の光源、または両方の移動によってなされる。ガラス板10におけるレーザ光60の照射位置の移動は、ガルバノミラーの操作によってなされてもよい。
【0089】
ガラス板10の端面12におけるレーザ光60の照射形状は、ガラス板10におけるレーザ光60の移動方向に沿って線状に形成されていてもよい。この時、ガラス板10におけるレーザ光60の移動方向のパワー分布は、トップハット分布でもガウス分布でもよい。線状に形成されることによりガラス板10の温度変化が緩やかになり、端面強化工程でのガラス板10の熱割れが抑制できる。
【0090】
ガラス板10の端面12におけるレーザ光60の照射形状の板厚方向の幅Φ(図4参照)は、ガラス板10の厚さの2倍以下に形成されていてもよい。ガラス板10の端面12におけるレーザ光60の照射形状の板厚方向の幅Φが、ガラス板10の厚さ以下に形成されることにより、レーザ光60がガラス板10の外に照射されないため、レーザ光のエネルギーロスを小さくすることができる。
【0091】
ガラス板10におけるレーザ光60の板厚方向のパワー分布中心位置は、板厚中央と一致していてもよい。板厚中央と一致することにより、端面強化工程を効果的に実施できる。
【0092】
端面強化工程では、ガラス板10に対して圧縮空気などの気体又はミストなどの液体及びこれらの混合物を吹き付けてもよい。ガラス板10の表面の温度上昇が抑制できる。また、ガラス板10の表面とガラス板10の内部との温度差が確保でき、レーザ光60の照射条件が緩和できる。また、ガラス板10の表面に付着したホコリなどの異物が除去できる。異物にレーザ光60が当たると、異物がレーザ光60を吸収しうる。
【0093】
端面強化工程の後に、端面12に保護層が形成されてもよい。
【0094】
以上説明した本実施形態の強化ガラス板にあっては、端面の強度が高く割れにくい。
【0095】
本発明は上記実施形態に限定されない。本発明の目的を達成できる範囲での変形や改良等は本発明に含まれる。
上記実施形態では、端面強化工程において、レーザ光60をガラス板の端面12に照射することによって、ガラス板10の内部が加熱される形態を例示したが、赤外線ヒータやマイクロ波によりガラス板10の内部を加熱し、端面12を強化してもよい。
【実施例0096】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されない。
図5は、実施例の強化ガラス板200を示す断面図である。
例1,2,4,6,8が実施例であり、例3,5,7,9が比較例である。
【0097】
表1に示すガラス組成になるように、珪砂等の各種のガラス原料を調合し、1400~1500℃の温度で溶融し、得られた溶融ガラスを厚さTが2.8mmとなるようにフロート法で板状に成形、切断し、矩形のガラス板を得た。
得られたガラス板のガラス転移点Tg(単位:℃)、比重、ヤング率(単位:GPa)、平均熱膨張係数(単位:10-7/℃)を測定した。その結果を表1に示す。
【0098】
以下にガラス板の各物性の測定方法を示す。
(ガラス転移点Tg)
JIS R3103-3(2001年)に規定されている方法に従い、示差熱膨張計(TMA)を用いて測定した。
(比重)
泡を含まない約20gのガラス塊をアルキメデス法によって測定した。
(ヤング率)
超音波パルス法により測定した。
(平均熱膨張係数)
JIS R3102(1995年)に規定されている方法に従い、示差熱膨張計(TMA)を用いて測定した。測定温度範囲は50~350℃である。
【0099】
(例1)
得られたガラス板を、レーザ光を照射することにより短辺の長さaが15mm、長辺の長さbが100mmになるようにスクライブ後に割断した。割断された端面はC面取形状であり、端面の表面粗さRaは、表面粗さ測定器(Bruker社製、DektakXT)を用いて測定した。表面粗さの測定条件は、カットオフ値λc:0.8mm、カットオフ比λc/λs:32、測定速度:0.1mm/sec、評価長さ:1mmである。測定した端面の表面粗さRaは、0.0022μmであり、面取部の表面粗さRaは0.0052μmであった。
スクライブに用いたレーザ光の光源は、波長(1070nm)のファイバーレーザである。ガラス板表面におけるレーザ光の直径は1.9mm、ガラス板表面からの集光点の深さは6.8mm、レーザ光の光源の出力は340Wとした。
【0100】
図5に示すように、得られたガラス板の端面212を上に向け、該端面212に対して上方からレーザ光260を垂直方向からガラス板の内部で集光するように照射することにより、端面212に平面圧縮応力が形成された強化部を形成し、強化ガラス板200を作製した。
レーザ光260の光源としては、主に線形吸収を生じさせる波長(1070nm)のファイバーレーザを用いた。レーザ光260の照射位置は、ガラス板の端面212の板厚方向中央部とし、10.0mm/秒の移動速度で、ガラス板の長手方向に100mm移動させた。ガラス板の端面212におけるレーザ光260の照射形状は幅2mm、長さ100mmとした。
ガラス板の端面212からの幅方向の集光点の深さf(図5参照)は30mm、レーザ光260の光源の出力P(不図示)は1300Wとした。
レーザ光260の照射により、ガラス板の端面212の法線方向の端面212からの長さがガラス板の厚さと同距離である位置Dの温度が、ガラス板の歪点以上となる。また、ガラス板の端面212の温度は、506℃であった
例1の強化ガラス板200の強化部230の平面圧縮応力の最大値は2.9MPaであり、強化部230の端面212からの幅Cは、2.8mmであった。幅Cは、強化ガラス板200の厚さTの0.5倍以上であった。強化部230の平面圧縮応力は、複屈折2次元分布評価装置(フォトニックラティス社製のWPA-100)により測定した。
【0101】
以上の方法により強化ガラス板200を11個作製し、11個の強化ガラス板200について、レーザ光260の照射後、レーザ光260を照射した端面212を下に向けて、強化ガラス板200を下に凸に曲げ変形させる4点曲げ強度を測定した。得られた値を平均して平均破断応力を求めた。また、JIS R 1625(1996)にしたがいワイブルプロットを行い、ワイブル係数を求めた。上スパンは20mm、下スパンは90mmとし、ヘッド速度は1mm/分とした。
その結果、曲げ強さの平均値は、303MPaであった。また、破断応力の対数値が正規分布になると仮定して求めた0.1%破壊確率強度は、116MPaであり、ワイブル係数は3.6であった。
なお、例1の強化ガラス板の第1の主面の重心11aおよび第2の主面の重心11bにおける表面圧縮応力を表面応力計(折原製作所製バビネ型表面応力計)で測定したところ計測不能であり、表面圧縮応力は3MPa以下であることが確認された。
【0102】
(例2)
ガラス板の端面に照射するレーザ光260の光源の出力Pを1400Wにした以外は例1と同様の方法により強化ガラス板200を9個作製した。例2の強化ガラス板200の強化部230の平面圧縮応力の最大値は7.8MPaであり、強化部230の端面212からの幅Cは、2.5mmであった。
例1と同様に4点曲げ試験を行った。その結果、平均破断応力は、314MPaであった。また、曲げ強さの対数値が正規分布になると仮定して求めた0.1%破壊確率強度は、193MPaであり、ワイブル係数は7.0であった。
なお、例2の強化ガラス板の第1の主面の重心11aおよび第2の主面の重心11bにおける表面圧縮応力を表面応力計(折原製作所製バビネ型表面応力計)で測定したところ計測不能であり、表面圧縮応力は3MPa以下であることが確認された。
【0103】
(例3)
例1と同様の方法によりガラス板200を16個作製したが、端面212にレーザ光260を照射させなかった。例1と同様に4点曲げ試験を行った。
その結果、平均破断応力は、257MPaであった。また、曲げ強さの対数値が正規分布になると仮定して求めた0.1%破壊確率強度は、84MPaであり、ワイブル係数は3.3であった。
なお、例3のガラス板の第1の主面の重心11aおよび第2の主面の重心11bにおける表面圧縮応力を表面応力計(折原製作所製バビネ型表面応力計)で測定したところ計測不能であり、表面圧縮応力は3MPa以下であることが確認された。
【0104】
例1~例3のワイブルプロットを図6に示す。図6のFは、破壊確率である。例1~例3の4点曲げ試験の結果を比較すると、端面にレーザ光を照射した例1、例2の平均破断応力とワイブル係数は、端面にレーザ光を照射していない例3の平均破断応力とワイブル係数よりも大きかった。また、端面にレーザ光を照射した例1、例2の破断応力の対数値が正規分布になると仮定して求めた0.1%破壊確率強度は、端面にレーザ光を照射していない例3の曲げ強さの対数値が正規分布になると仮定して求めた0.1%破壊確率強度よりも大きかった。端面にレーザ光を照射し、端面に強化部が形成されることにより端面を強化できることがわかった。
【0105】
(例4)
得られたガラス板にカッターでスクライブ線を形成し、ガラス板を切断した。端面に2000番により面取部を形成し、端面をC面取形状に加工した。端面の表面粗さRaは0.0012μm、面取部の表面粗さRaは0.1613μmであった。
例2と同様の方法により、ガラス板の端面にレーザ光260を照射し強化ガラス板200を18個作製したが、ガラス板の端面212からの幅方向の集光点の深さf(図5参照)は56.8mmとした。例4の強化ガラス板200の強化部230の平面圧縮応力の最大値は4.9MPaであり、強化部230の端面212からの幅Cは、2.6mmであった。
例1と同様に4点曲げ試験を行った。その結果、平均破断応力は、219MPaであった。また、曲げ強さの対数値が正規分布になると仮定して求めた0.1%破壊確率強度は、165MPaであり、ワイブル係数は11.9であった。
なお、例4の強化ガラス板の第1の主面の重心11aおよび第2の主面の重心11bにおける表面圧縮応力を表面応力計(折原製作所製バビネ型表面応力計)で測定したところ計測不能であり、表面圧縮応力は3MPa以下であることが確認された。
【0106】
(例5)
例4と同様の方法によりガラス板200を16個作製したが、端面212にレーザ光260を照射させなかった。
例1と同様に4点曲げ試験を行った。その結果、平均破断応力は、191MPaであった。また、曲げ強さの対数値が正規分布になると仮定して求めた0.1%破壊確率強度は104MPaであり、ワイブル係数は5.7であった。
なお、例5のガラス板の第1の主面の重心11aおよび第2の主面の重心11bにおける表面圧縮応力を表面応力計(折原製作所製バビネ型表面応力計)で測定したところ計測不能であり、表面圧縮応力は3MPa以下であることが確認された。
例4、例5のワイブルプロットを図7に示す。例4、例5の4点曲げ試験の結果を比較すると、端面にレーザ光を照射した例4の平均破断応力とワイブル係数は、端面にレーザ光を照射していない例5の平均破断応力とワイブル係数よりも大きかった。また、端面にレーザ光を照射した例4の破断応力の対数値が正規分布になると仮定して求めた0.1%破壊確率強度は、端面にレーザ光を照射していない例5の曲げ強さの対数値が正規分布になると仮定して求めた0.1%破壊確率強度よりも大きかった。端面にレーザ光を照射し、端面に強化部が形成されることにより端面を強化できることがわかった。
【0107】
(例6)
得られたガラス板にカッターでスクライブ線を形成し、ガラス板を切断した。端面に200番により面取部を形成し、端面をC面取形状に加工した。端面の表面粗さRaは0.0031μm、面取部の表面粗さRaは0.6828μmであった。
例2と同様の方法により、ガラス板の端面にレーザ光260を照射し強化ガラス板200を15個作製したが、レーザ光260の光源の出力Pを1100W、ガラス板の端面212におけるレーザ光260の照射形状は幅2mm、ガラス板の端面212からの幅方向の集光点の深さf(図5参照)は85.2mmとした。例6の強化ガラス板200の強化部230の平面圧縮応力の最大値は6.8MPaであり、強化部230の端面212からの幅Cは、2.6mmであった。
例1と同様に4点曲げ試験を行った。その結果、平均破断応力は、105MPaであった。また、曲げ強さの対数値が正規分布になると仮定して求めた0.1%破壊確率強度は85MPaであり、ワイブル係数は16.4であった。
なお、例6の強化ガラス板の第1の主面の重心11aおよび第2の主面の重心11bにおける表面圧縮応力を表面応力計(折原製作所製バビネ型表面応力計)で測定したところ計測不能であり、表面圧縮応力は3MPa以下であることが確認された。
【0108】
(例7)
例6と同様の方法によりガラス板200を20個作製したが、端面212にレーザ光260を照射させなかった。例1と同様に4点曲げ試験を行った。その結果、平均破断応力は、88MPaであった。また、曲げ強さの対数値が正規分布になると仮定して求めた0.1%破壊確率強度は68MPaであり、ワイブル係数は14.4であった。なお、例7のガラス板の第1の主面の重心11aおよび第2の主面の重心11bにおける表面圧縮応力を表面応力計(折原製作所製バビネ型表面応力計)で測定したところ計測不能であり、表面圧縮応力は3MPa以下であることが確認された。
例6、例7のワイブルプロットを図8に示す。例6、例7の4点曲げ試験の結果を比較すると、端面にレーザ光を照射した例6の平均破断応力とワイブル係数は、端面にレーザ光を照射していない例7の平均破断応力とワイブル係数よりも大きかった。また、端面にレーザ光を照射した例6の破断応力の対数値が正規分布になると仮定して求めた0.1%破壊確率強度は、端面にレーザ光を照射していない例7の曲げ強さの対数値が正規分布になると仮定して求めた0.1%破壊確率強度よりも大きかった。端面にレーザ光を照射し、端面に強化部が形成されることにより端面を強化できることがわかった。
【0109】
(例8)
得られたガラス板にカッターでスクライブ線を形成し、ガラス板を切断した。端面を200番でC面取形状に面取り加工した。端面の表面粗さRaは0.6828μm、面取部の表面粗さRaは0.6828μmであった。
例2と同様の方法により、ガラス板の端面にレーザ光260を照射し強化ガラス板200を19個作製したが、レーザ光260の光源の出力Pを1800W、ガラス板の端面212におけるレーザ光260の照射形状は幅3mm、ガラス板の端面212からの幅方向の集光点の深さf(図5参照)は45mmとした。例8の強化ガラス板200の強化部230の平面圧縮応力の最大値は22.0MPaであり、強化部230の端面212からの幅Cは、1.6mmであった。
例1と同様に4点曲げ試験を行った。その結果、平均破断応力は、155MPaであった。また、曲げ強さの対数値が正規分布になると仮定して求めた0.1%破壊確率強度は104MPaであった。
なお、例8の強化ガラス板の第1の主面の重心11aおよび第2の主面の重心11bにおける表面圧縮応力を表面応力計(折原製作所製バビネ型表面応力計)で測定したところ計測不能であり、表面圧縮応力は3MPa以下であることが確認された。
【0110】
(例9)
例8と同様の方法によりガラス板200を20個作製したが、端面212にレーザ光260を照射させなかった。
例1と同様に4点曲げ試験を行った。その結果、平均破断応力は84MPaであった。また、曲げ強さの対数値が正規分布になると仮定して求めた0.1%破壊確率強度は73MPaであった。
なお、例9のガラス板の第1の主面の重心11aおよび第2の主面の重心11bにおける表面圧縮応力を表面応力計(折原製作所製バビネ型表面応力計)で測定したところ計測不能であり、表面圧縮応力は3MPa以下であることが確認された。
【0111】
例8、例9の4点曲げ試験の結果を比較すると、端面にレーザ光を照射した例8の平均破断応は、端面にレーザ光を照射していない例9の平均破断応力よりも大きかった。また、端面にレーザ光を照射した例8の破断応力の対数値が正規分布になると仮定して求めた0.1%破壊確率強度は、端面にレーザ光を照射していない例9の曲げ強さの対数値が正規分布になると仮定して求めた0.1%破壊確率強度よりも大きかった。端面にレーザ光を照射し、端面に強化部が形成されることにより端面を強化できることがわかった。
【0112】
端面に強化部が形成されることにより破断応力が向上する詳細な理由は明確ではないが、ガラス板の端面に生じていた傷をヒーリングして強度が高くなったと考えられる。
【0113】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の強化ガラス板は、例えば、建築窓、外壁、手摺材、太陽電池カバーガラス、車両窓として好適に用いられる。
【符号の説明】
【0115】
10 強化ガラス板
11a 第1の主面
11b 第2の主面
12 端面
30 強化部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8