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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022123622
(43)【公開日】2022-08-24
(54)【発明の名称】研磨装置および研磨方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 21/08 20060101AFI20220817BHJP
   B24B 21/00 20060101ALI20220817BHJP
   B24B 9/00 20060101ALI20220817BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
B24B21/08
B24B21/00 A
B24B9/00 601H
H01L21/304 621E
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021021042
(22)【出願日】2021-02-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】山本 暁
(72)【発明者】
【氏名】内山 圭介
(72)【発明者】
【氏名】伊沢 真於
(72)【発明者】
【氏名】柏木 誠
【テーマコード(参考)】
3C049
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C049AA05
3C049AA11
3C049AA12
3C049AA14
3C049AA16
3C049AB04
3C049BA05
3C049BB02
3C049BB04
3C049CA01
3C049CB01
3C158AA05
3C158AA11
3C158AA12
3C158AA14
3C158AA16
3C158AB04
3C158BA05
3C158BB02
3C158BB04
3C158BC02
3C158CB01
3C158DA17
5F057AA02
5F057AA16
5F057BA11
5F057CA21
5F057DA06
5F057EB22
5F057FA19
5F057FA41
5F057GA27
5F057GB24
(57)【要約】      (修正有)
【課題】研磨ヘッドと研磨テープとの間に生じる動摩擦力によって研磨ヘッドの押圧力が影響されることなく、基板の平面部を均一に研磨することができる研磨装置および研磨方法を提供する。
【解決手段】研磨装置100は、基板Wを保持し、基板Wを回転させる基板保持部と、研磨テープ3をその長手方向に送る研磨テープ供給機構141と、基板Wの平面部に近接して配置された少なくとも1つの研磨ヘッド10を備え、研磨ヘッド10は、流体によって研磨テープ3を基板の平面部に押し付ける流体押圧部を有し、流体押圧部は、研磨テープ3の裏面に対向して配置された流体供給口を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の平面部を研磨するための研磨装置であって、
基板を保持し、前記基板を回転させる基板保持部と、
研磨テープをその長手方向に送る研磨テープ供給機構と、
前記基板の平面部に近接して配置された少なくとも1つの研磨ヘッドを備え、
前記研磨ヘッドは、流体によって前記研磨テープを前記基板の平面部に押し付ける流体押圧部を有し、
前記流体押圧部は、前記研磨テープの裏面に対向して配置された流体供給口を有する、研磨装置。
【請求項2】
前記流体押圧部は、スリット状の前記流体供給口を有するスリットノズルである、請求項1に記載の研磨装置。
【請求項3】
前記流体押圧部は、中央に窪みが形成された押圧面と、前記窪みに前記流体供給口を有するエリアパッドである、請求項1に記載の研磨装置。
【請求項4】
前記流体は、気体と液体の混合流体である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の研磨装置。
【請求項5】
前記混合流体中の前記気体の割合は、前記液体の割合よりも大きい、請求項4に記載の研磨装置。
【請求項6】
前記基板の平面部は、前記基板の周縁部に位置するエッジ部であり、
前記流体押圧部は、前記基板の外周形状と実質的に同一の曲率を有する円弧形状を有している、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の研磨装置。
【請求項7】
基板の平面部を研磨するための研磨方法であって、
基板保持部により基板を保持し、前記基板を回転させ、
研磨テープ供給機構で研磨テープをその長手方向に送りながら、
研磨ヘッドの流体押圧部に設けられた流体供給口から前記研磨テープの裏面に向けて流体を供給することにより、前記流体によって前記研磨テープを前記基板の平面部に押し付けて研磨する、研磨方法。
【請求項8】
前記流体押圧部は、スリット状の前記流体供給口を有するスリットノズルである、請求項7に記載の研磨方法。
【請求項9】
前記流体押圧部は、中央に窪みが形成された押圧面と、前記窪みに前記流体供給口を有するエリアパッドである、請求項7に記載の研磨方法。
【請求項10】
前記流体は、気体と液体の混合流体である、請求項7乃至9のいずれか一項に記載の研磨方法。
【請求項11】
前記混合流体中の前記気体の割合は、前記液体の割合よりも大きい、請求項10に記載の研磨方法。
【請求項12】
前記基板の平面部は、前記基板の周縁部に位置するエッジ部であり、
前記流体押圧部は、前記基板の外周形状と実質的に同一の曲率を有する円弧形状を有している、請求項7乃至11のいずれか一項に記載の研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハなどの基板の平面部を研磨するための研磨装置および研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、メモリー回路、ロジック回路、イメージセンサ(例えばCMOSセンサー)などのデバイスは、より高集積化されつつある。これらのデバイスをウェーハなどの基板に形成する工程においては、微粒子や塵埃、不要な膜などの異物が基板に付着することがある。基板に付着した異物は、デバイスの成形不良や破損といった不具合を引き起こしてしまう。したがって、デバイスの信頼性を向上させるために、基板上の異物を除去することが必要とされる。
【0003】
ウェーハなどの基板上の異物を除去するために、研磨具を用いて基板を研磨する研磨装置がある。このような研磨装置として、研磨具を基板に摺接させることで基板を研磨する研磨装置がある。研磨装置は、研磨ヘッドにより研磨具を基板に押し付けることで基板を研磨する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-77003号公報
【特許文献2】特開2019-107752号公報
【特許文献3】特開平5-151565号公報
【特許文献4】特開平7-108449号公報
【特許文献5】特開平7-124853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
研磨装置の一例として、基板を回転させながら、かつ研磨テープなどの研磨具を一方向に送りながら研磨ヘッドにより研磨具を基板に押し付けることで基板を研磨する研磨装置がある。図21は、従来の研磨ヘッドの問題点を説明する図である。研磨ヘッド310は、研磨ブレード340によって研磨テープ303をウェーハWに押し付けてウェーハWを研磨する。このとき、研磨テープ303は矢印で示す方向に送られており、研磨ブレード340と研磨テープ303との間に動摩擦力が生じる。この動摩擦力によって、研磨テープ303にかかるテンションは、研磨テープ303の送り方向において下流側T1のテンションの方が上流側T2のテンションよりも大きくなる。研磨ヘッド310は、図示しないユニバーサルジョイントを有しており、研磨テープ303のテンションによって研磨ブレード340が傾く。したがって、研磨テープ303の送り方向において下流側の押圧点P1では、上流側の押圧点P2よりも、研磨テープ303に対する押圧力が小さくなり、ウェーハWを均一に研磨することができない。
【0006】
上記問題点の対策として、研磨ブレード340の材質を変更して摩擦係数を低減させることはできるが、動摩擦力をゼロにすることはできない。また、研磨ヘッド310にユニバーサルジョイントを適用せず、研磨ブレード340の傾きを調整して押圧点P1と押圧点P2の押圧力を均等にする方法もあるが、研磨テープ303にかかるテンションの変化に伴って研磨ヘッド310の傾きを調整するのは困難である。
【0007】
そこで、本発明は、研磨ヘッドと研磨テープとの間に生じる動摩擦力によって研磨ヘッドの押圧力が影響されることなく、基板の平面部を均一に研磨することができる研磨装置および研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、基板の平面部を研磨するための研磨装置であって、基板を保持し、前記基板を回転させる基板保持部と、研磨テープをその長手方向に送る研磨テープ供給機構と、前記基板の平面部に近接して配置された少なくとも1つの研磨ヘッドを備え、前記研磨ヘッドは、流体によって前記研磨テープを前記基板の平面部に押し付ける流体押圧部を有し、前記流体押圧部は、前記研磨テープの裏面に対向して配置された流体供給口を有する、研磨装置が提供される。
一態様では、前記流体押圧部は、スリット状の前記流体供給口を有するスリットノズルである。
一態様では、前記流体押圧部は、中央に窪みが形成された押圧面と、前記窪みに前記流体供給口を有するエリアパッドである。
【0009】
一態様では、前記流体は、気体と液体の混合流体である。
一態様では、前記混合流体中の前記気体の割合は、前記液体の割合よりも大きい。
一態様では、前記基板の平面部は、前記基板の周縁部に位置するエッジ部であり、前記流体押圧部は、前記基板の外周形状と実質的に同一の曲率を有する円弧形状を有している。
【0010】
一態様では、基板の平面部を研磨するための研磨方法であって、基板保持部により基板を保持し、前記基板を回転させ、研磨テープ供給機構で研磨テープをその長手方向に送りながら、研磨ヘッドの流体押圧部に設けられた流体供給口から前記研磨テープの裏面に向けて流体を供給することにより、前記流体によって前記研磨テープを前記基板の平面部に押し付けて研磨する、研磨方法が提供される。
一態様では、前記流体押圧部は、スリット状の前記流体供給口を有するスリットノズルである。
一態様では、前記流体押圧部は、中央に窪みが形成された押圧面と、前記窪みに前記流体供給口を有するエリアパッドである。
【0011】
一態様では、前記流体は、気体と液体の混合流体である。
一態様では、前記混合流体中の前記気体の割合は、前記液体の割合よりも大きい。
一態様では、前記基板の平面部は、前記基板の周縁部に位置するエッジ部であり、前記流体押圧部は、前記基板の外周形状と実質的に同一の曲率を有する円弧形状を有している。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、流体によって研磨ヘッドを研磨テープに押し付けることにより、研磨ヘッドと研磨テープの間に動摩擦力が生じることなく、基板の平面部を均一に研磨することができる。
【0013】
また、本発明によれば、研磨時に基板と研磨テープとの間に生じる摩擦熱を流体によって冷却することができ、研磨レートを向上させることができる。
【0014】
さらに、流体が基板の研磨加工点まで回り込むことにより、研磨屑を基板表面から除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】研磨装置の一実施形態を示す模式図である。
図2】研磨ヘッドの一実施形態を示す模式図である。
図3図2に示す研磨ヘッドの上面図である。
図4図2に示す研磨ヘッドの配置を示す平面図である。
図5】研磨ヘッドの他の実施形態を示す模式図である。
図6図5に示す研磨ヘッドの上面図である。
図7】流体押圧部の他の実施形態を示す上面図である。
図8図7に示す研磨ヘッドの配置を示す平面図である。
図9】研磨装置の他の実施形態を示す模式図である。
図10】流体押圧部が2つのスリットノズルである研磨ヘッドを示す上面図である。
図11図9に示す研磨ヘッドの配置を示す平面図である。
図12】流体押圧部が2つのエリアパッドである研磨ヘッドを示す上面図である。
図13】研磨装置のさらに他の実施形態を示す模式図である。
図14図14(a)および図14(b)は、基板の周縁部を示す拡大断面図である。
図15図13に示す研磨装置の研磨ヘッドを示す模式図である。
図16図15に示す研磨ヘッドの上面図である。
図17】チルト機構によって上方に傾けられた研磨ヘッドを示す図である。
図18】チルト機構によって下方に傾けられた研磨ヘッドを示す図である。
図19】ウェーハのトップエッジ部を研磨しているときの様子を示す模式図である。
図20】研磨ヘッドがウェーハのベベル部を研磨している様子を示す図である。
図21】従来の研磨ヘッドの問題点を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、研磨装置の一実施形態を示す模式図である。図1に示す研磨装置100は、基板の一例であるウェーハWを保持し、その軸心を中心として回転させる基板保持部110と、研磨具としての研磨テープ3をこの基板保持部110に保持されたウェーハWの第1の面1に流体で押し付けてウェーハWの第1の面1を研磨する研磨ヘッド10と、研磨テープ3を研磨ヘッド10に供給する研磨テープ供給機構141を備えている。
【0017】
基板保持部110は、ウェーハWの周縁部に接触可能な複数のローラー111と、複数のローラー111をそれぞれの軸心を中心に回転させるローラー回転機構(図示せず)を備えている。研磨ヘッド10は、基板保持部110に保持されているウェーハWの下側に配置されている。図1では、基板保持部110の一部の図示は省略されている。本実施形態の基板保持部110は、4つのローラー111を備えている(うち2つは図示せず)。
【0018】
本実施形態では、ウェーハWの第1の面1は、デバイスが形成されていない、またはデバイスが形成される予定がないウェーハWの裏面、すなわち非デバイス面である。第1の面1とは反対側のウェーハWの第2の面2は、デバイスが形成されている、またはデバイスが形成される予定である面、すなわちデバイス面である。本実施形態では、ウェーハWは、その第1の面1が下向きの状態で、基板保持部110に水平に保持される。
【0019】
ローラー回転機構は、4つのローラー111を同じ方向に同じ速度で回転させるように構成されている。ウェーハWの第1の面1の研磨中、ウェーハWの周縁部は、ローラー111によって把持される。ウェーハWは水平に保持され、ローラー111の回転によってウェーハWはその軸心を中心に回転される。ウェーハWの第1の面1の研磨中、4つのローラー111はそれぞれの軸心を中心に回転するが、ローラー111自体の位置は静止している。
【0020】
図1に示すように、基板保持部110に保持されたウェーハWの下方には、ウェーハWの第1の面1にリンス液(例えば純水、またはアルカリ性の薬液)を供給するリンス液供給ノズル127が配置されている。このリンス液供給ノズル127は、図示しないリンス液供給源に接続されている。リンス液供給ノズル127は、ウェーハWの第1の面1の加工点を向いて配置されている。図1では、リンス液供給ノズル127は1つ配置されているが、一実施形態では、ウェーハWの第1の面1の加工点および/または加工点以外のエリアを向いて複数のリンス液供給ノズル127が配置されてもよい。リンス液供給ノズル127からウェーハWの第1の面1の加工点に供給されたリンス液は、研磨屑をウェーハWの第1の面1から除去することができる。このとき、リンス液は、ウェーハWが回転する方向において、研磨ヘッド10の上流側に供給するとよい。また、加工点以外に供給されたリンス液は、ウェーハWの乾燥を防止することができる。
【0021】
基板保持部110に保持されたウェーハWの上方には、ウェーハWの第2の面2に保護液(例えば純水)を供給する保護液供給ノズル128が配置されている。保護液供給ノズル128は、図示しない保護液供給源に接続されている。保護液供給ノズル128はウェーハWの第2の面2の中心を向いて配置されている。保護液は、保護液供給ノズル128からウェーハWの第2の面2の中心に供給され、遠心力により保護液はウェーハWの第2の面2上を広がる。保護液は、ウェーハWの研磨で生じた研磨屑や異物を含むリンス液がウェーハWの第2の面2に回り込んでウェーハWの第2の面に付着することを防止する。その結果、ウェーハWの第2の面2を清浄に保つことができる。
【0022】
研磨ヘッド10は、支持部材131に支持されており、支持部材131は可動プレート120に固定されている。したがって、研磨ヘッド10の全体は可動プレート120と一体に移動可能となっている。支持部材131は図示しない通孔を有しており、研磨テープ3はこの通孔を通って延びている。
【0023】
研磨ヘッド10は、流体によって研磨テープ3をウェーハWの第1の面1に押し付けるように構成されている。研磨ヘッド10は、流体供給ライン30に接続されており、図示しない流体供給源から流体が供給される。研磨ヘッド10の詳細については、後述する。
【0024】
研磨テープ供給機構141は、研磨テープ3を供給するテープ巻き出しリール143と、研磨テープ3を回収するテープ巻き取りリール144を備えている。テープ巻き出しリール143およびテープ巻き取りリール144は、それぞれテンションモータ143a,144aに連結されている。テンションモータ143a,144aは、リールベース142に固定されている。リールベース142は、可動プレート120に固定されており、研磨テープ供給機構141の全体は可動プレート120と一体に移動可能となっている。
【0025】
テープ巻き取りリール144を矢印で示す方向に回転させることにより、研磨テープ3はテープ巻き出しリール143から研磨ヘッド10を経由してテープ巻き取りリール144の矢印で示す方向に送られる。研磨テープ3は、研磨テープ3の研磨面3aがウェーハWの第1の面1を向くように研磨ヘッド10の上方に供給される。テンションモータ143aは、所定のトルクをテープ巻き出しリール143に与えることにより、研磨テープ3にテンションをかけることができる。テンションモータ144aは、研磨テープ3を一定速度で送るように制御される。研磨テープ3を送る速度は、テープ巻き取りリール144の回転速度を変化させることによって変更できる。一実施形態では、研磨テープ3を送る方向は、図1の矢印で示す方向の逆方向としてもよい(テープ巻き出しリール143とテープ巻き取りリール144の配置を入れ替えてもよい)。テープ巻き取りリール144とは別に、テープ送り装置を設けてもよい。この場合、テープ巻き取りリール144に連結されているテンションモータ144aは、所定のトルクをテープ巻き取りリール144に与えることにより、研磨テープ3にテンションをかけることができる。
【0026】
研磨装置100は、研磨テープ3を支持する複数のガイドローラー153a,153b,153c,153dをさらに備えている。研磨テープ3は、これらガイドローラー153a,153b,153c,153dにより研磨ヘッド10を囲むように案内される。研磨ヘッド10は、流体によって研磨テープ3をその裏側からウェーハWの第1の面1に押し付けることでウェーハWの第1の面1を研磨する。研磨ヘッド10の上部に配置されたガイドローラー153b,153cは、ウェーハWの第1の面1と平行な方向に研磨テープ3が進行するように研磨テープ3をガイドする。ガイドローラー153a,153b,153c,153dは、図示しない保持部材に固定されており、この保持部材は可動プレート120に固定されている。
【0027】
研磨テープ3をウェーハWの第1の面1の中心O1から最外部まで接触させるために、本実施形態の研磨装置100は、研磨ヘッド10を基板保持部110に対して相対的に平行移動させる研磨ヘッド移動機構191を備えている。研磨ヘッド移動機構191は、研磨ヘッド10をウェーハWの第1の面1の中心O1と第1の面1の最外部との間で移動させるように構成されている。
【0028】
可動プレート120の下面には複数の直動ガイド195が固定されており、可動プレート120は複数の直動ガイド195に支持されている。複数の直動ガイド195は設置面197に配置されている。可動プレート120は研磨ヘッド移動機構191によって移動され、直動ガイド195は、可動プレート120の動きをウェーハWの半径方向への直線運動に制限する。
【0029】
研磨ヘッド移動機構191は、ボールねじ機構193と、ボールねじ機構193を駆動するモータ194を備えている。モータ194としてサーボモータを使用することができる。可動プレート120は、ボールねじ機構193のねじ軸193aに連結されている。研磨ヘッド移動機構191を作動させると、研磨ヘッド10、研磨テープ供給機構141、およびガイドローラー153a,153b,153c,153dは、基板保持部110に対して相対的にウェーハWの半径方向に移動する。
【0030】
ウェーハWの研磨中、研磨ヘッド移動機構191は研磨ヘッド10をウェーハWの第1の面1の中心O1と第1の面1の最外部との間で移動させる。研磨装置100は、研磨装置100の各構成要素の動作を制御する動作制御部180をさらに備えている。研磨ヘッド移動機構191は、動作制御部180に電気的に接続されており、研磨ヘッド移動機構191の動作は、動作制御部180によって制御される。研磨ヘッド移動機構191が動作すると、研磨ヘッド10、研磨テープ供給機構141、およびガイドローラー153a,153b,153c,153dは、一体に移動する。
【0031】
ウェーハWの第1の面1の研磨中、ローラー111自体の位置は静止しており、ローラー111は、研磨ヘッド10がウェーハWの中心側から外側に移動しても接触しない位置に配置されている。したがって、研磨テープ3は、最外部を含むウェーハWの第1の面1の全体を研磨することが可能となる。
【0032】
図2は、研磨ヘッド10の一実施形態を示す模式図である。図3は、図2に示す研磨ヘッド10の上面図である。図2は、研磨ヘッド10から供給される流体によって研磨テープ3をウェーハWの第1の面1に押し付けている状態を示している。研磨テープ3は、矢印で示す方向に所定の速度で送られている。研磨ヘッド10は、研磨テープ3の下方に配置されており、研磨テープ3と研磨ヘッド10とは離間している。
【0033】
研磨ヘッド10は、流体供給ライン30に接続されており、図示しない流体供給源から流体が供給される。より具体的には、流体供給ライン30は、図示しない液体供給源から液体(例えば、純水、炭酸水、アルカリ性の薬液等)が供給される液体供給ライン31と、図示しない気体供給源から気体(例えば、ドライエア、不活性ガス等)が供給される気体供給ライン32を有する。一実施形態では、流体供給ライン30は、液体供給ライン31または気体供給ライン32のいずれか一方のみを有してもよい。
【0034】
研磨ヘッド10は、流体押圧部12と、流路14と、流体混合室15を有している。本実施形態の研磨ヘッド10は、流体押圧部12がスリットノズルにより構成されている。流体押圧部12は、研磨ヘッド10の上部に設けられており、図3に示すように、流体押圧部12には、流体押圧部12の長手方向に一直線上に延びたスリット状の流体供給口13が形成されている。流体押圧部12および流体供給口13は、研磨ヘッド10を上から見たときに、研磨ヘッド10に対して斜めに傾いている。
【0035】
流路14は、流体供給口13および流体混合室15に連通している。流体混合室15は、流体供給ライン30、すなわち液体供給ライン31および気体供給ライン32に接続されている。液体供給ライン31を流れる液体、および気体供給ライン32を流れる気体は、流体混合室15内で混合され、混合流体が生成される。この混合流体は、流路14を通って流れ、二流体噴流として流体供給口13から研磨テープ3の裏面に向かって供給される。流体供給口13は、研磨テープ3の裏面に対向して配置されており、流体供給口13から供給された混合流体(二流体噴流)によって研磨テープ3をウェーハWの第1の面1に押し付けることができる。
【0036】
液体供給ライン31には、液体供給ライン31の流路を開閉する液体供給弁33と、液体供給ライン31を流れる液体の流量を調整する流量制御装置35と、液体供給ライン31を流れる液体の流量を測定する流量計37が設けられている。液体供給弁33は、液体の流れ方向において流量制御装置35および流量計37の上流側に配置されている。流量制御装置35の例として、流量制御弁またはマスフローコントローラが挙げられる。流量計37と流体混合室15との間に圧力センサ(図示せず)が設けられてもよい。
【0037】
気体供給ライン32には、気体供給ライン32の流路を開閉する気体供給弁34と、気体供給ライン32を流れる気体の流量を調整する流量制御装置36と、気体供給ライン32を流れる気体の流量を測定する流量計38が設けられている。気体供給弁34は、気体の流れ方向において流量制御装置36および流量計38の上流側に配置されている。流量制御装置36の例として、流量制御弁またはマスフローコントローラが挙げられる。なお、流量制御装置36に代えて、気体供給ライン32を流れる気体の圧力を調整する圧力制御装置を設けてもよい。圧力制御装置の例として、電空レギュレータが挙げられる。流量計38に代えて、気体供給ライン32を流れる気体の圧力を測定する圧力計を設けてもよい。また、流量制御装置36(または圧力制御装置)と流体混合室15との間に流量計と圧力計を併設させてもよい。
【0038】
一実施形態では、混合流体中の気体の割合は、混合流体中の液体の割合よりも大きい。一般に、同量の液体(例えば、純水、炭酸水、薬液等)と気体(例えば、ドライエア、不活性ガス等)では、気体の方が低コストである。したがって、混合流体中の気体の割合を液体の割合よりも大きくすることにより、コストを削減することができる。混合流体中の気体と液体の割合は、流量制御装置35および流量制御装置36(または圧力制御装置)によって調整することができる。
【0039】
本実施形態では、研磨ヘッド10に設けられた流体混合室15において液体と気体を混合させて混合流体を生成したが、一実施形態では、予め混合された混合流体が流れる流体供給ライン30が流体混合室15を介さずに流路14と連通し、流体押圧部12に直接混合流体が供給されてもよい。また、一実施形態では、液体供給ライン31または気体供給ライン32のいずれか一方が流体混合室15を介さずに流路14と連通し、流体押圧部12に液体または気体のいずれか一方のみが供給されてもよい。いずれの場合でも、研磨ヘッド10は、流体を流体供給口13から研磨テープ3の裏面に向かって供給することができる。
【0040】
図4は、図2に示す研磨ヘッド10の配置を示す平面図である。研磨ヘッド10の流体押圧部12および流体供給口13は、研磨テープ3の進行方向(矢印Eで示す)に対して斜めに傾いて配置されている。これにより、ウェーハW上の研磨点に対して複数回研磨テープ3を当接することができるため、効率よくウェーハWを研磨することができる。
【0041】
本発明の流体押圧部12および流体供給口13の研磨テープ3の進行方向に対する角度は、図4に示す実施形態に限定されず、例えば、研磨テープ3の進行方向に対して垂直に配置されてもよい。流体押圧部12および流体供給口13を研磨テープ3の進行方向に対して垂直にすることにより、研磨テープ3の進行方向の研磨ヘッド10の幅を小さくすることができる。また、本発明の流体押圧部12および流体供給口13の形状は、図4に示す実施形態に限定されず、例えば、流体供給口13は研磨テープ3の幅よりも外側まで延びた形状を有してもよい。
【0042】
次に、本実施形態の研磨装置100の動作について説明する。以下に説明する研磨装置100の動作は、図1に示す動作制御部180によって制御される。動作制御部180は、液体供給弁33、気体供給弁34、流量制御装置35、流量制御装置36(または圧力制御装置)、基板保持部110、研磨テープ供給機構141、および研磨ヘッド移動機構191に電気的に接続されている。液体供給弁33、気体供給弁34、流量制御装置35、流量制御装置36(または圧力制御装置)、基板保持部110、リンス液供給ノズル127、保護液供給ノズル128、研磨テープ供給機構141、および研磨ヘッド移動機構191の動作は動作制御部180によって制御される。
【0043】
動作制御部180は、少なくとも1台のコンピュータから構成される。動作制御部180は、記憶装置180aと、演算装置180bを備えている。演算装置180bは、記憶装置180aに格納されているプログラムに含まれている命令に従って演算を行うCPU(中央処理装置)またはGPU(グラフィックプロセッシングユニット)などを含む。記憶装置180aは、演算装置180bがアクセス可能な主記憶装置(例えばランダムアクセスメモリ)と、データおよびプログラムを格納する補助記憶装置(例えば、ハードディスクドライブまたはソリッドステートドライブ)を備えている。
【0044】
研磨されるウェーハWは、第1の面1が下向きの状態で、基板保持部110のローラー111により保持され、さらにウェーハWの軸心を中心に回転される。具体的には、基板保持部110は、ウェーハWの第1の面1が下向きの状態で複数のローラー111をウェーハWの周縁部に接触させながら、複数のローラー111をそれぞれの軸心を中心に回転させることで、ウェーハWを回転させる。次に、リンス液供給ノズル127からウェーハWの第1の面1にリンス液が供給され、保護液供給ノズル128からウェーハWの第2の面2に保護液が供給される。リンス液は、ウェーハWの第1の面1上の加工点の洗浄および/または加工点以外の乾燥を防止するために供給され、保護液は、遠心力によりウェーハWの第2の面2の全体に広がる。
【0045】
研磨ヘッド移動機構191は、研磨ヘッド10をウェーハWの第1の面1の中心O1の下方に移動させる。動作制御部180は、研磨テープ供給機構141を駆動し、所定のテンションをかけながら研磨テープ3をその長手方向に所定の速度で進行させる。次に、動作制御部180は、液体供給弁33および気体供給弁34を開き、研磨ヘッド10に流体を供給する。研磨ヘッド10は、流体によって研磨テープ3の研磨面3aをウェーハWの第1の面1に接触させ、リンス液の存在下でウェーハWの第1の面1の研磨を開始する。さらに、研磨ヘッド10から供給される流体によって研磨テープ3をウェーハWの第1の面1に押し付けながら、研磨ヘッド移動機構191は、研磨ヘッド10、研磨テープ供給機構141、およびガイドローラー153a,153b,153c,153dをウェーハWの半径方向外側に移動させる。動作制御部180は、流量制御装置35および流量制御装置(圧力制御装置)36によって研磨ヘッド10に供給する流量を制御することにより、研磨テープ3に対する流体の押圧力を調整することができる。ウェーハWの研磨中、リンス液供給ノズル127および保護液供給ノズル128は、リンス液および保護液を常にウェーハWに供給し続ける。
【0046】
研磨ヘッド10がウェーハWの第1の面1の最外部に到達したとき、動作制御部180はウェーハWの研磨を終了させる。具体的には、液体供給弁33および気体供給弁34を閉じ、研磨ヘッド10への流体の供給を停止して研磨テープ3をウェーハWの第1の面1から離間させる。その後、動作制御部180は、基板保持部110、リンス液供給ノズル127、保護液供給ノズル128、および研磨テープ供給機構141の動作を停止させ、ウェーハWの研磨を終了する。一実施形態では、研磨ヘッド移動機構191は、研磨ヘッド10をウェーハWの第1の面1の最外部と中心O1との間で往復させてもよい。
【0047】
上述した実施形態によれば、研磨ヘッド10が研磨テープ3の裏面に接触することなく、流体によって研磨テープ3を押し付けるため、研磨テープ3を送りながらウェーハWを研磨しても研磨テープ3と研磨ヘッド10との間に動摩擦力が発生することはない。したがって、研磨ヘッド10の流体押圧部12から供給される流体の圧力を調整して押圧力を均一にすることにより、研磨テープ3の裏面をウェーハWの平面部に均一に押し付けることができ、結果的にウェーハWの平面部を均一に研磨することができる。
【0048】
特に、本実施形態では、研磨テープ3を押し付ける流体として、液体と気体との混合流体が使用されている。この混合流体は、二流体噴流として研磨ヘッド10から研磨テープ3の裏面に噴射される。混合流体は、液体のみに比べて、研磨テープ3をより大きな押圧力でウェーハWに対して押し付けることができる。
【0049】
また、研磨ヘッド10から研磨テープ3の裏面に供給される流体によって、ウェーハWが研磨される際にウェーハWと研磨テープ3との間に生じる摩擦熱を冷却することができる。一般に、ウェーハWの研磨加工点で生じる摩擦熱によって研磨テープ3の研磨性能が低下し、研磨レートが低下することが知られている。したがって、流体によって摩擦熱を冷却することにより、研磨レートを向上させることができる。
【0050】
さらに、研磨ヘッド10から研磨テープ3の裏面に供給される流体がウェーハWの研磨加工点まで回り込むことにより、研磨屑をウェーハWの第1の面1から除去することができる。
【0051】
図5は、研磨ヘッド10の他の実施形態を示す模式図である。図6は、図5に示す研磨ヘッド10の上面図である。図5は、研磨ヘッド10から供給される流体によって研磨テープ3をウェーハWの第1の面1に押し付けている状態を示している。特に説明しない本実施形態の詳細は、図1乃至図4を参照して説明した上記実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0052】
研磨ヘッド10は、流体押圧部12と、流路14と、流体混合室15を有している。本実施形態の研磨ヘッド10は、流体押圧部12がエリアパッドにより構成されている。流体押圧部12は、研磨ヘッド10の上部に設けられており、図6に示すように、研磨ヘッド10を上から見たときに矩形状を有している。流体押圧部12の上面である押圧面16には、その中央に矩形状の窪み17が形成されており、窪み17の中央に流体供給口18が形成されている。流体供給口18は、2つ以上形成されていてもよい。流路14は、流体供給口18および流体混合室15に連通している。
【0053】
流体混合室15で生成された混合流体は、流路14を通って流体供給口18から窪み17内に供給されて窪み17を満たし、さらに流体押圧部12の外側に向かって流出する。流体供給口18および窪み17は、研磨テープ3の裏面に対向して配置されている。流体押圧部12の押圧面16と研磨テープ3の裏面との隙間が流体で満たされることによって、窪み17を含む押圧面16の全体で研磨テープ3をウェーハWの第1の面1に押し付けることができる。
【0054】
図7は、流体押圧部12の他の実施形態を示す上面図である。特に説明しない本実施形態の詳細は、図5および図6を参照して説明した上記実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。図7に示すように、流体押圧部12は、研磨ヘッド10を上から見たときに平行四辺形状を有していてもよい。流体押圧部12の上面である押圧面16には、その中央に平行四辺形状の窪み17が形成されており、窪み17の中央に流体供給口18が形成されている。流体供給口18は、2つ以上形成されていてもよい。流路14は、流体供給口18および流体混合室15に連通している。
【0055】
図8は、図7に示す研磨ヘッド10の配置を示す平面図である。流体押圧部12は、研磨ヘッド10を上から見たときに、研磨テープ3の進行方向(矢印Eで示す)に対して平行な2辺を有する平行四辺形となるように配置されている。これにより、ウェーハW上の研磨点に対して複数回研磨テープ3を当接することができるため、効率よくウェーハWを研磨することができる。本発明の流体押圧部12の形状は、図8に示す実施形態に限定されず、例えば、研磨テープ3の幅よりも外側まで延びた形状を有してもよい。
【0056】
図5乃至図8に示す実施形態では、研磨テープ3をウェーハWに対して押し付ける流体として、液体と気体との混合流体に代えて、液体を使用してもよい。
【0057】
図9は、研磨装置の他の実施形態を示す模式図である。特に説明しない本実施形態の詳細は、図1乃至図8を参照して説明した上記実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。図9では、リンス液供給ノズル127の図示は省略されている。本実施形態の研磨装置100は、研磨ヘッド組立体11A,11Bと、研磨テープ3を研磨ヘッド組立体11A,11Bにそれぞれ供給する研磨テープ供給機構141A,141Bを備えている。研磨ヘッド組立体11Aは、研磨ヘッド10A,10Bを備えている。同様に、研磨ヘッド組立体11Bは、研磨ヘッド10A,10Bを備えている。研磨ヘッド組立体11Aは、支持部材131Aに支持されており、研磨ヘッド組立体11Bは、支持部材131Bに支持されている。
【0058】
研磨ヘッド組立体11Aに供給される研磨テープ3は、ガイドローラー163a,163b,163c,163dに支持されており、研磨ヘッド組立体11Bに供給される研磨テープ3は、ガイドローラー173a,173b,173c,173dに支持されている。研磨テープ供給機構141A,141B、支持部材131A,131B、ガイドローラー163a,163b,163c,163d、ガイドローラー173a,173b,173c,173dの構成は、図1を参照して説明した研磨テープ供給機構141、支持部材131、ガイドローラー153a,153b,153c,153dと同じである。本実施形態の研磨装置100は、研磨ヘッド移動機構191を備えていない。したがって、研磨中、研磨ヘッド組立体11A,11Bの位置は固定されている。
【0059】
研磨ヘッド10Aは、図2乃至図4を参照して説明した流体押圧部12がスリットノズルである研磨ヘッド10に相当する。図10は、流体押圧部12A,12Bが2つのスリットノズルである研磨ヘッド10Bを示す上面図である。特に説明しない本実施形態の流体押圧部12A,12Bの詳細は、図2乃至図4を参照して説明した流体押圧部12と同じであるので、その重複する説明を省略する。研磨ヘッド10Bは、2つの流体押圧部12A,12Bを有しており、それぞれに流体供給口13A,13Bが形成されている。2つの流体押圧部12A,12Bは、研磨ヘッド10Bの上部に設けられており、研磨テープ3(図10には図示せず)の進行方向に延びる研磨ヘッド10Bの中心線L1に関して対称に配置されている。一実施形態では、2つの流体押圧部12A,12Bは、研磨テープ3の進行方向に対して斜めに傾いていれば、中心線L1に関して対称に配置されていなくてもよい。
【0060】
図11は、図9に示す研磨ヘッド10A,10Bの配置を示す平面図である。複数の研磨ヘッド10A,10Bは、基板保持部110の軸心CP(ウェーハWの第1の面1の中心O1)から異なる距離に配置されている。基板保持部110の軸心CPから流体押圧部の最外端までの距離d1は、ウェーハWの半径d2よりも長い。
【0061】
研磨中、研磨テープ供給機構141Aは、研磨テープ3を図9および図11の矢印Fで示す方向に送り、研磨テープ供給機構141Bは、研磨テープ3を図9および図11の矢印Gで示す方向に送る。すなわち、それぞれの研磨テープ3は、ウェーハWの中心部から外周部に向かって送られる。これにより、ウェーハWの研磨で生じた研磨屑をウェーハWの中心部からウェーハWの外側へ効率よく排出させることができる。
【0062】
複数の研磨ヘッド10A,10Bは、互いに独立して動作可能に構成されている。研磨ヘッド組立体11Aの研磨ヘッド10A,10Bは、研磨テープ3の進行方向F(研磨テープ3の長手方向)に沿って隙間をあけて配列されており、研磨ヘッド組立体11Bの研磨ヘッド10A,10Bは、研磨テープ3の進行方向G(研磨テープ3の長手方向)に沿って隙間をあけて配列されている。本実施形態の複数の流体押圧部12,12A,12Bのそれぞれは、研磨テープ3の進行方向F,Gに対して斜めに延びている。研磨テープ3の進行方向Fまたは進行方向Gから見たとき、複数の流体押圧部12,12A,12Bは、研磨テープ3の進行方向F,Gに垂直な方向に沿って連続的に配列されている。さらに、研磨テープ3の進行方向Fまたは進行方向Gから見たとき、複数の流体押圧部12,12A,12Bは、隙間なく連続的に配列されている。
【0063】
複数の流体押圧部12,12A,12Bは、一直線上には並んでいないが、基板保持部110の軸心CPから異なる距離に位置しているので、ウェーハWが回転しているとき、ウェーハWの第1の面1の各領域は、複数の流体押圧部12,12A,12Bのいずれかを通過する。したがって、複数の流体押圧部12,12A,12Bから供給される流体によって、研磨テープ3をウェーハWの第1の面1の全面に押し付けることができる。
【0064】
流体押圧部12,12A,12Bおよび流体供給口13,13A,13Bの研磨テープ3の進行方向に対する角度は、図11に示す実施形態に限定されず、例えば、研磨テープ3の進行方向に対して垂直に配置されてもよい。流体押圧部12,12A,12Bおよび流体供給口13,13A,13Bを研磨テープ3の進行方向に対して垂直にすることにより、研磨テープ3の進行方向の研磨ヘッド10の幅を小さくすることができる。
【0065】
図12は、流体押圧部12A,12Bが2つのエリアパッドである研磨ヘッド10の上面図である。特に説明しない本実施形態の流体押圧部12A,12Bは、図7および図8を参照して説明した流体押圧部12と同じであるので、その重複する説明を省略する。研磨ヘッド10Bは、研磨ヘッド10Bを上から見たときに、矩形状を有する2つの流体押圧部12A,12Bを有している。流体押圧部12Aの上面である押圧面16Aには、その中央に矩形状の窪み17Aが形成されており、窪み17Aの中央に流体供給口18Aが形成されている。流体押圧部12Bも同様に、流体押圧部12Bの上面である押圧面16Bに窪み17Bが形成されており、窪み17Bに流体供給口18Bが形成されている。2つの流体押圧部12A,12Bは、研磨ヘッド10Bの上部に設けられており、流体押圧部12Aと流体押圧部12Bは、研磨テープ3(図12には図示せず)の進行方向に延びる研磨ヘッド10Bの中心線L1に関して対称に配置されている。一実施形態では、2つの流体押圧部12A,12Bは、研磨テープ3の進行方向に対して斜めに傾いていれば、中心線L1に関して対称に配置されていなくてもよい。
【0066】
一実施形態では、研磨ヘッド10Aは、図3および図4を参照して説明した流体押圧部12を有する研磨ヘッド10に代えて、図7および図8を参照して説明した流体押圧部12を有する研磨ヘッド10を適用してもよい。研磨ヘッド10Bは、図10および図11で説明した2つの流体押圧部12A,12Bに代えて、図12を参照して説明した2つの流体押圧部12A,12Bを有する研磨ヘッド10Bを適用してもよい。
【0067】
上述した実施形態によれば、研磨ヘッド10A,10Bが研磨テープ3の裏面に接触することなく、流体によって研磨テープ3を押し付けるため、研磨テープ3を送りながらウェーハWを研磨しても研磨テープ3と研磨ヘッド10A,10Bとの間に動摩擦力が発生することはない。したがって、研磨ヘッド10A,10Bの流体押圧部12から供給される流体の圧力を調整して押圧力を均一にすることにより、研磨テープ3の裏面をウェーハWの平面部に均一に押し付けることができ、結果的にウェーハWの平面部を均一に研磨することができる。
【0068】
また、研磨ヘッド10A,10Bから研磨テープ3の裏面に供給される流体によって、ウェーハWが研磨される際にウェーハWと研磨テープ3との間に生じる摩擦熱を冷却することができる。一般に、ウェーハWの研磨加工点で生じる摩擦熱によって研磨テープ3の研磨性能が低下し、研磨レートが低下することが知られている。したがって、流体によって摩擦熱を冷却することにより、研磨レートを向上させることができる。
【0069】
さらに、研磨ヘッド10A,10Bから研磨テープ3の裏面に供給される流体がウェーハWの研磨加工点まで回り込むことにより、研磨屑をウェーハWの第1の面1から除去することができる。
【0070】
図13は、研磨装置のさらに他の実施形態を示す模式図である。図13に示す研磨装置200は、基板(例えばウェーハ)の周縁部を研磨する研磨装置に好適に使用される。本明細書では、基板の周縁部を、基板の最外周に位置するベベル部と、このベベル部の半径方向内側に位置する平面部であるエッジ部を含む領域として定義する。エッジ部は、より具体的には、トップエッジ部およびボトムエッジ部である。
【0071】
図14(a)および図14(b)は、基板の周縁部を示す拡大断面図である。図14(a)はいわゆるストレート型の基板の断面図であり、図14(b)はいわゆるラウンド型の基板の断面図である。図14(a)の基板Wにおいて、ベベル部は、上側傾斜部(上側ベベル部)P、下側傾斜部(下側ベベル部)Q、および側部(アペックス)Rから構成される基板Wの最外周面(符号Bで示す)である。図14(b)の基板Wにおいては、ベベル部は、基板Wの最外周面を構成する、湾曲した断面を有する部分(符号Bで示す)である。トップエッジ部は、ベベル部Bの半径方向内側に位置する環状の平面部E1であり、基板Wのデバイス面内に位置する領域である。ボトムエッジ部は、トップエッジ部とは反対側に位置し、ベベル部Bの半径方向内側に位置する環状の平面部E2である。トップエッジ部E1は、デバイスが形成された領域を含むこともある。
【0072】
図13に戻って、研磨装置200は、基板の一例であるウェーハWを保持し、回転させる基板保持部210と、基板保持部210に保持されたウェーハWの周縁部を研磨するための研磨ヘッド10と、ウェーハWの下面に液体を供給する下側供給ノズル222と、ウェーハWの上面に液体を供給する上側供給ノズル230を備えている。ウェーハWに供給される液体の一例として、純水が挙げられる。ウェーハWの研磨中、下側供給ノズル222からウェーハの下面に液体が供給され、上側供給ノズル230からウェーハWの上面に液体が供給される。
【0073】
図13は、基板保持部210がウェーハWを保持している状態を示している。研磨ヘッド10は、基板保持部210にウェーハWが保持されているとき、ウェーハWの周縁部を向いている。基板保持部210は、ウェーハWを真空吸着により保持する保持ステージ204と、保持ステージ204の中央部に連結されたシャフト205と、保持ステージ204を回転させ、かつ上下動させる保持ステージ駆動機構207を備えている。保持ステージ駆動機構207は、保持ステージ204を、その軸心Crを中心に回転させ、軸心Crに沿って上下方向に移動させることが可能に構成されている。
【0074】
研磨ヘッド10、保持ステージ204、下側供給ノズル222、および上側供給ノズル230は隔壁260の内部に配置されている。隔壁260の内部は、ウェーハWが研磨される研磨室を構成している。隔壁260は、ベースプレート265上に配置されている。シャフト205は、ベースプレート265を貫通して延びている。
【0075】
保持ステージ駆動機構207は、保持ステージ204を回転させるステージ回転装置としてのモータ214と、保持ステージ204を上下動させるためのエアシリンダ217を備えている。モータ214は、ベースプレート265の下面に固定されている。保持ステージ204は、シャフト205と、このシャフト205に連結されたプーリー211aと、モータ214の回転軸に取り付けられたプーリー211bと、これらプーリー211a,211bに掛けられたベルト212を介してモータ214によって回転される。モータ214の回転軸はシャフト205と平行に延びている。このような構成により、保持ステージ204の上面に保持されたウェーハWは、モータ214によって回転される。シャフト205は、シャフト205の下端に取り付けられたロータリージョイント216を介してエアシリンダ217に連結されており、エアシリンダ217によってシャフト205および保持ステージ204が上昇および下降できるようになっている。
【0076】
ウェーハWは、図示しない搬送機構により、ウェーハWの中心O1が保持ステージ204の軸心Cr上にあるように保持ステージ204の上面に載置される。ウェーハWは、デバイス面が上向きの状態で保持ステージ204の上面に保持される。このような構成により、基板保持部210は、ウェーハWを保持ステージ204の軸心Cr(すなわちウェーハWの軸心)を中心に回転させ、かつウェーハWを保持ステージ204の軸心Crに沿って上昇下降させることができる。
【0077】
研磨ヘッド10は、流体によって研磨テープ3をウェーハWのエッジ部に押し付けるように構成されている。研磨ヘッド10は、流体供給ライン30に接続されており、図示しない流体供給源から流体が供給される。研磨ヘッド10の詳細については、後述する。
【0078】
研磨装置200は、研磨テープ3を研磨ヘッド10に供給し、かつ研磨ヘッド10から回収する研磨テープ供給機構242をさらに備えている。研磨テープ供給機構242は、隔壁260の外に配置されている。研磨テープ供給機構242は、研磨テープ3を研磨ヘッド10に供給するテープ巻き出しリール243と、ウェーハWの研磨に使用された研磨テープ3を回収するテープ巻き取りリール244を備えている。テープ巻き取りリール244を矢印で示す方向に回転させることにより、研磨テープ3はテープ巻き出しリール243から研磨ヘッド10の流体押圧部12を経由してテープ巻き取りリール244の矢印で示す方向に送られる。
【0079】
テープ巻き出しリール243およびテープ巻き取りリール244には図示しないテンションモータがそれぞれ連結されている。テープ巻き出しリール243に連結されたテンションモータは、テープ巻き出しリール243に所定のトルクを与え、研磨テープ3にテンションをかけることができる。テープ巻き取りリール244に連結されたテンションモータは、研磨テープ3を一定速度で送るように制御される。研磨テープ3を送る速度は、テープ巻き取りリール244の回転速度を変化させることによって変更できる。一実施形態では、研磨テープ3を送る方向は、図13の矢印で示す方向の逆方向としてもよい(テープ巻き出しリール243とテープ巻き取りリール244の配置を入れ替えてもよい)。テープ巻き取りリール244とは別に、テープ送り装置を設けてもよい。この場合、テープ巻き取りリール244に連結されているテンションモータは、所定のトルクをテープ巻き取りリール244に与えることにより、研磨テープ3にテンションをかけることができる。
【0080】
研磨テープ3は、研磨テープ3の研磨面がウェーハWの周縁部を向くように研磨ヘッド10に供給される。研磨テープ3は、隔壁260に設けられた開口部260aを通してテープ巻き出しリール243から研磨ヘッド10へ供給され、使用された研磨テープ3は開口部260aを通ってテープ巻き取りリール244に回収される。研磨テープ供給機構242は、研磨テープ3を支持するための複数のガイドローラー245,246,247,248をさらに備えている。研磨テープ3の進行方向は、ガイドローラー245,246,247,248によってガイドされる。
【0081】
図15は、図13に示す研磨装置200の研磨ヘッド10を示す模式図である。図16は、図15に示す研磨ヘッド10の上面図である。研磨ヘッド10は、流体によって研磨テープ3の研磨面3aをウェーハWのエッジ部に押し付ける2つの流体押圧部12A,12Bを備えている。特に説明しない本実施形態の流体押圧部12A,12Bの詳細は、図2および図3を参照して説明した実施形態の流体押圧部12と同じであるので、その重複する説明を省略する。図15では、液体供給弁33、気体供給弁34、流量制御装置35、流量制御装置(圧力制御装置)36、流量計37および流量計(圧力計)38の図示は省略されている。
【0082】
研磨ヘッド10は、研磨テープ3をテープ巻き出しリール243(図13参照)から研磨ヘッド10の流体押圧部12A,12Bを経由してテープ巻き取りリール244(図13参照)にガイドする複数のガイドローラー253,254,255,256,257,258,259を有しており、これらのガイドローラーはウェーハWの接線方向と直交する方向に研磨テープ3が進行するように研磨テープ3をガイドする。
【0083】
研磨ヘッド10は、2つのスリットノズルである流体押圧部12A,12Bと、流路14と、流体混合室15を有している。流体押圧部12Aと流体押圧部12Bは、並列に配置されており、中心線Ctに関して対称に配置されている。2つの流体押圧部12A,12Bには、それぞれスリット状の流体供給口13A,13Bが形成されている。2つの流体押圧部12A,12Bおよび流体供給口13A,13Bは、中心線Ctに向かって内側に湾曲している。より具体的には、流体押圧部12A,12Bおよび流体供給口13A,13Bは、研磨対象物であるウェーハW(図16には図示せず)の外周形状と実質的に同じ曲率を有する円弧形状を有している。
【0084】
流路14は、流体供給口13A,13Bおよび流体混合室15に連通しており、流体混合室15で混合された混合流体は、流路14を通って流体供給口13A,13Bから研磨テープ3の裏面に向かって供給される。流体供給口13A,13Bは、研磨テープ3の裏面に対向して配置されており、流体供給口13A,13Bから供給された流体によって研磨テープ3をウェーハWのエッジ部に押し付けることができる。
【0085】
本実施形態では、研磨ヘッド10に設けられた流体混合室15において液体と気体を混合させて混合流体としたが、一実施形態では、予め混合した混合流体が流れる流体供給ライン30が流体混合室15を介さずに流路14と連通しており、流体押圧部12A,12Bに直接混合流体が供給されてもよい。また、一実施形態では、液体供給ライン31または気体供給ライン32のいずれか一方と流体混合室15を介さずに流路14と連通しており、流体押圧部12A,12Bに液体または気体のいずれか一方のみが供給されてもよい。
【0086】
研磨ヘッド10は、流体押圧部12Aおよび流体押圧部12Bの間に配置された押圧パッド(ベベルパッド)270をさらに有していてもよい。押圧パッド270は、シリコーンゴムなどの弾力性を有する独立発泡材から構成されている。研磨ヘッド10が図示しない押圧機構によってウェーハWに向かって移動されると、押圧パッド270は、研磨テープ3をその裏側からウェーハWのベベル部に対して押圧し、研磨ヘッド10は、ウェーハWのベベル部を研磨する。研磨テープ3の裏面との摩擦を少なくするために、表面がフッ素樹脂で覆われたシートを押圧パッド270の前面(押圧面)に貼り付けてもよい。押圧パッド270は、ボルトなどにより着脱可能となっている。
【0087】
研磨装置200は、図示しないチルト機構をさらに備えている。研磨装置200は、チルト機構により研磨ヘッド10の傾斜角度を変化させながらウェーハWの周縁部を研磨することができる。図17は、チルト機構(図示せず)によって上方に傾けられた研磨ヘッド10を示す図であり、図18は、チルト機構によって下方に傾けられた研磨ヘッド10を示す図である。
【0088】
図17に示すように、流体押圧部12Aは、研磨ヘッド10を上方に傾けたときにウェーハWの周縁部の上方に位置し、トップエッジ部に対向する。図18に示すように、流体押圧部12Bは、研磨ヘッド10を下方に傾けたときにウェーハWの周縁部の下方に位置し、ボトムエッジ部に対向する。トップエッジ部を研磨するときは、研磨ヘッド10を上方に傾けた状態で流体押圧部12Aにより研磨テープ3の研磨面3aをウェーハWのトップエッジ部に対して押圧する。ボトムエッジ部を研磨するときは、研磨ヘッド10を下方に傾けた状態で流体押圧部12Bにより研磨テープ3の研磨面3aをウェーハWのボトムエッジ部に対して押圧する。一実施形態では、研磨ヘッド10は、流体押圧部12Aまたは流体押圧部12Bのどちらか一方のみを備えていてもよい。例えば、トップエッジ部のみを研磨する場合は、研磨ヘッド10は流体押圧部12Aのみを備えており、ボトムエッジ部のみを研磨する場合は、研磨ヘッド10は流体押圧部12Bのみを備えている。
【0089】
研磨装置200は、研磨装置200の各構成要素の動作を制御する動作制御部280を備えている。研磨ヘッド10、液体供給弁33、気体供給弁34、流量制御装置35、流量制御装置(圧力制御装置)36、基板保持部210、下側供給ノズル222、上側供給ノズル230、研磨テープ供給機構242、およびチルト機構は、動作制御部280に電気的に接続されている。研磨ヘッド10、液体供給弁33、気体供給弁34、流量制御装置35、流量制御装置(圧力制御装置)36、基板保持部210、下側供給ノズル222、上側供給ノズル230、研磨テープ供給機構242、およびチルト機構の動作は、動作制御部280によって制御される。研磨中、動作制御部280は、研磨テープ供給機構242を作動させ、研磨テープ3に所定のテンションをかけながら研磨テープ3をその長手方向に所定の速度で進行させる。
【0090】
動作制御部280は、少なくとも1台のコンピュータから構成される。動作制御部280は、記憶装置280aと、演算装置280bを備えている。演算装置280bは、記憶装置280aに格納されているプログラムに含まれている命令に従って演算を行うCPU(中央処理装置)またはGPU(グラフィックプロセッシングユニット)などを含む。記憶装置280aは、演算装置280bがアクセス可能な主記憶装置(例えばランダムアクセスメモリ)と、データおよびプログラムを格納する補助記憶装置(例えば、ハードディスクドライブまたはソリッドステートドライブ)を備えている。
【0091】
図19は、ウェーハWのトップエッジ部を研磨しているときの様子を示す模式図である。研磨ヘッド10は、流体によって研磨テープ3をウェーハWに押し付けながら、リニアアクチュエータ(図示せず)などから構成される移動機構によって図19の矢印で示す方向(ウェーハWの径方向外側)に一定の速度で移動する。移動機構の動作は動作制御部280によって制御される。本実施形態では、研磨ヘッド10の流体押圧部12A,12BがウェーハWの周縁部に沿って湾曲しているので、研磨テープ3がウェーハWに接触している時間がトップエッジ部全体に亘って均一となる。したがって、トップエッジ部全体を均一に研磨することができる。2つの流体押圧部12A,12Bおよび流体供給口13A,13Bは、中心線Ct(図16参照)に向かって内側に湾曲している。
【0092】
流体押圧部12Aと流体押圧部12Bとは、中心線Ct(図16参照)に関して対称に配置されているので、図18に示すように流体押圧部12Bがボトムエッジ部に対向するまで研磨ヘッド10を下方に傾けたときは、流体押圧部12BはウェーハWのボトムエッジ部に沿って延びる。したがって、トップエッジ部と同様に、流体押圧部12Bによってボトムエッジ部を正確かつ均一に研磨することができる。
【0093】
図20は、研磨ヘッド10がウェーハWのベベル部を研磨している様子を示す図である。ウェーハWの周縁部を研磨するときは、チルト機構(図示せず)により研磨ヘッド10の傾斜角度を連続的に変化させながら、押圧機構(図示せず)により研磨テープ3をウェーハWの周縁部(例えば、ベベル部)に押し当てる。
【0094】
一実施形態では、研磨ヘッド10の流体押圧部12A,12Bは、スリットノズルに代えて図5乃至図8を参照して説明したエリアパッドを備えてもよい。
【0095】
さらに一実施形態では、研磨ヘッド10がトップエッジ部およびボトムエッジ部のうちのいずれか1つを研磨する場合、研磨ヘッド10は、2つの流体押圧部12A,12Bのうちいずれか1つのみを備えていてもよい。さらに一実施形態では、研磨装置200は、保持ステージ204の周方向に配列された複数の研磨ヘッド10を備えていてもよい。
【0096】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0097】
1 第1の面
2 第2の面
3 研磨テープ
10,10A,10B 研磨ヘッド
11A,11B 研磨ヘッド組立体
12,12A,12B 流体押圧部
13,13A,13B 流体供給口
14 流路
15 流体混合室
16,16A,16B 押圧面
17,17A,17B 窪み
18,18A,18B 流体供給口
30 流体供給ライン
31 液体供給ライン
32 気体供給ライン
33 液体供給弁
34 気体供給弁
35 流量制御装置
36 流量制御装置(圧力制御装置)
37 流量計
38 流量計(圧力計)
100 研磨装置
110 基板保持部
111 ローラー
120 可動プレート
127 リンス液供給ノズル
128 保護液供給ノズル
131,131A,131B 支持部材
141,141A,141B 研磨テープ供給機構
142 リールベース
143 テープ巻き出しリール
143a テンションモータ
144 テープ巻き取りリール
144a テンションモータ
153a,153b,153c,153d,163a,163b,163c,163d,173a,173b,173c,173d ガイドローラー
180 動作制御部
180a 記憶装置
180b 演算装置
191 研磨ヘッド移動機構
193 ボールねじ機構
193a ねじ軸
194 モータ
195 直動ガイド
197 設置面
200 研磨装置
204 保持ステージ
205 シャフト
207 保持ステージ駆動機構
210 基板保持部
214 モータ
217 エアシリンダ
222 下側供給ノズル
230 上側供給ノズル
242 研磨テープ供給機構
243 テープ巻き出しリール
244 テープ巻き取りリール
245,246,247,248 ガイドローラー
253,254,255,256,257,258,259 ガイドローラー
260 隔壁
265 ベースプレート
270 押圧パッド
280 動作制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21