(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022123767
(43)【公開日】2022-08-24
(54)【発明の名称】紛体供給装置
(51)【国際特許分類】
B65G 65/40 20060101AFI20220817BHJP
B65G 65/46 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
B65G65/40 C
B65G65/46 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021021289
(22)【出願日】2021-02-12
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】槙 孝一郎
【テーマコード(参考)】
3F075
【Fターム(参考)】
3F075AA08
3F075BA01
3F075CA06
3F075CA09
3F075CB12
3F075CB16
3F075CC03
3F075CC05
3F075DA04
3F075DA06
(57)【要約】
【課題】本発明は、貯蔵槽内に貯留されている紛体状の原料の状態に基づいて、アジテーションを適切に行うことができる紛体供給装置を提供することを目的とする。
【解決手段】上端開口から投入された紛体を下端開口から排出供給可能な貯蔵槽と、
前記貯蔵槽内に設けられ、前記紛体を撹拌可能な撹拌手段と、
前記紛体の嵩比重又は前記紛体により前記撹拌手段に加わる力を計測する計測手段と、
前記計測手段が計測した前記紛体により前記撹拌手段に加わる力又は荷重が所定の閾値を超えたときに、前記撹拌手段の撹拌回転を開始させる制御手段と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端開口から投入された紛体を下端開口から排出供給可能な貯蔵槽と、
前記貯蔵槽内に設けられ、前記紛体を撹拌可能な撹拌手段と、
前記紛体の嵩比重又は前記紛体により前記撹拌手段に加わる力を計測する計測手段と、
前記計測手段が計測した前記紛体により前記撹拌手段に加わる力又は荷重が所定の閾値を超えたときに、前記撹拌手段の撹拌回転を開始させる制御手段と、を有する紛体供給装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記計測手段が計測した前記紛体の嵩比重又は前記紛体により前記撹拌手段に加わる力が所定の第2の閾値を下回ったときに、前記撹拌手段の撹拌回転を停止させる請求項1に記載の紛体供給装置。
【請求項3】
前記撹拌手段は、前記貯蔵槽の前記上端開口から前記貯蔵槽内に挿入されて設けられ、前記撹拌手段を回転させる回転機構及び前記撹拌手段を上下動させる昇降機能の少なくとも1つを有する請求項1又は2に記載の紛体供給装置。
【請求項4】
前記計測手段は、ロードセルを含む請求項1乃至3のいずれか一項に記載の紛体供給装置。
【請求項5】
前記計測手段は、前記撹拌手段近傍に配置したトルク棒を回転させた際に発生するトルクに基づいて前記紛体の嵩比重を計測する請求項1乃至4のいずれか一項に記載の紛体供給装置。
【請求項6】
前記貯蔵槽は漏斗状の形状を有するホッパーである請求項1乃至5のいずれか一項に記載の紛体供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紛体供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、銅製錬等の非鉄製錬における自熔炉への粉体状の原料の供給時には、粉体状の原料を貯蔵する貯蔵槽から、粉体状の原料を定量的に切り出して、自熔炉へと定量的に提供するため、紛体供給装置が用いられている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
かかる紛体供給装置では、貯蔵槽の下方にスクリューコンベアやロータリーバルブ等の定量切り出し装置を設け、粉体状の原料を自熔炉に定量供給している。そして、定量切り出しした紛体原料を定量搬送し、紛体原料を自熔炉の精鉱バーナーで燃焼させることにより、有用な銅等の金属を取得する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-9908号公報
【特許文献2】特開2014-162642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、定量切り出し装置を用いた場合であっても、特に粉体の水分率が低い場合等においては、自熔炉に供給する粉体状の原料が一時的に所定適量を超えて粉体貯蔵槽から噴出してしまう、いわゆるフラッシング現象を十分に抑制できない場合がある。
【0006】
かかるフラッシング現象は、貯蔵槽内で紛体が固められた状態となり、それが一気に崩れて落下した状態のときに発生し易い。
【0007】
つまり、貯蔵槽の高さが2m以上のものについては、内部の荷重が大きくなり、貯蔵槽下方では圧密状態になっている。嵩比重が真比重の50%(すなわち空隙存在率50%)では粉体であっても固く締められた状態にあり、空隙を有する固体である。
【0008】
5m近い貯蔵槽では、鉱石粉砕粉などの精鉱は下方では数キロg/平方cmの荷重で十分に固体状態に圧密され、同程度のせん断応力のエネルギーで崩れるほどに固くなる。このような貯蔵槽では、下方にて「棚張り」の現象が起こり、貯蔵槽の実質的な形状を変化させ、前方や後方に穴の開いた漏斗形状に至る場合がある。棚張りとは、貯蔵槽の壁面の特定の部分に紛体が固着してしまい、貯蔵槽の内面形状を実質的に変化させてしまう現象をいう。つまり、例えば、漏斗状のホッパーの下端面に紛体が固着すれば、下端の開口形状は円形ではなくなり、固着した部分が塞がれた形状となってしまう。
【0009】
このような現象が発生した貯蔵槽では、均一なスクリューによる切り出しが難しく、その流量に大幅な変動が現れるという問題があった。
【0010】
これを解決するために、スクリューの上部にアジテーションを目的とした羽根を設ける方法などがあるが、この羽根の上部に棚張りが起こると、結果的に同様の問題に至ることがあった。
【0011】
そこで、本発明は、貯蔵槽内に貯留されている紛体状の原料の状態に基づいて、アジテーションを適切に行うことができる紛体供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る紛体供給装置は、上端開口から投入された紛体を下端開口から排出供給可能な漏斗状の形状を有する貯蔵槽と、
前記貯蔵槽内に設けられ、前記紛体を撹拌可能な撹拌手段と、
前記紛体の嵩比重又は前記紛体が前記撹拌手段に加える力を計測する計測手段と、
前記計測手段が計測した前記紛体の嵩比重又は前記紛体が前記撹拌手段に加える力が所定の閾値を超えたときに、前記撹拌手段の撹拌回転を開始させる制御手段と、を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、不均一な粉体の流れを抑制し、特に鉱石を原料とした乾式製錬では、その供給を均一にすることは製造上重要な要因であり、安定燃焼を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る紛体供給装置の一例を示した図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態に係る紛体供給装置の一例を示した図である。
【
図4】嵩比重測定装置で用いる検量線の一例を示した図である。
【
図5】本発明の第3の実施形態に係る紛体供給装置の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
【0016】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る紛体供給装置の一例を示した図である。第1の実施形態に係る紛体供給装置は、ホッパー10と、アジテーター20と、ロードセル30と、アンプ40と、制御部50と、切り出し流路60と、定量搬送路70と、を有する。また、関連構成要素として、ホッパー10内に紛体100が貯留されている。紛体100は、例えば、精鉱であってもよく、具体的には例えば、銅の精錬に用いられる銅精鉱であってもよい。
【0017】
ホッパー10は、紛体100を貯留する貯蔵槽である。ホッパー10は、紛体100を投入する上端開口11と、紛体100を下方に排出する下端開口12とを有する。上端開口11から紛体100を供給することができ、下端開口12から貯留した紛体100を排出供給することができれば、ホッパー10の形状は問わないが、上端開口11よりも下端開口12が狭くなった形状、例えば、漏斗のようなテーパー形状を有してもよい。図示されていないが、ホッパー10の下方に定量切り出し装置が設けられ、紛体100の定量切り出しを行うため、下端開口12が大き過ぎると定量切り出しが困難となる。よって、
図1に示されるように、例えば、ホッパー10は、漏斗状の形状に構成されてもよい。
【0018】
アジテーター20は、ホッパー10内に貯留された紛体100を撹拌するための撹拌手段である。ホッパー10が漏斗形状の場合、下端開口12よりも大きい面積を有する上端開口11から供給された紛体100は、下方に移動するにつれて密度が大きくなる。それは、ホッパー10の開口面積が下方に移動するにつれて小さくなることと、更に上方から紛体100が供給され、上方からの荷重が増加することの双方に起因する。
【0019】
紛体100の密度が増加し、嵩比重が増加したら、嵩比重を低下させるため、アジテーター20を回転させ、紛体100を撹拌する。即ち、アジテーター20は、紛体100の嵩比重の増加を低減させ、紛体100がホッパー10の側壁に固着することを防止する。
【0020】
図1においては、軸20aが水平に延在し、軸20aの外周面に撹拌翼20bが延在方向に沿って設けられた形状が例として示されている。このような水平に延びるアジテーター20の場合には、軸20aが回転して外周面に設けられた撹拌翼20bが紛体100を撹拌する。アジテーター20は、ホッパー10内の種々の位置に設けることができるが、上述のように、ホッパー10は、下方に存在する紛体100ほど嵩比重が高い傾向があるので、アジテーター20はホッパー10内の下部に設けることが好ましい。
図1においても、ホッパー10の下端開口12のやや上方にアジテーター20が設けられている。このように、ホッパー10内の下部にアジテーター20を設けることにより、効果的に紛体100の固着を防止することができる。
【0021】
ロードセル30は、紛体100によりアジテーター20に加わる力、又はアジテーター20付近の紛体100の嵩比重を測定するために設けられた力・荷重検出手段であり、力の大きさを電気信号に変換する荷重変換器である。これにより、アジテーター20が紛体100から受ける引込力、引張力等を計測し、これを電気信号に変換することができる。
【0022】
ロードセル30は、ひずみゲージ式、圧電式、容量式、電磁式、音叉式等、種々の検出方式により構成することができる。例えば、紛体100から加えられる力に比例してひずむ起歪体とひずみゲージを用い、ひずみを計測することによりアジテーター20に加わる力を検出してもよい。
【0023】
アンプ40は、ロードセル30から送信されてきた電気信号を増幅するための手段である。なお、アンプ40は、必要に応じて、ノイズの除去等を併せて行ってもよい。また、アンプ40は必須ではなく、ロードセル30が十分大きい電気信号を出力し、アンプ40が不要な場合には、必ずしも設けなくてもよい。
【0024】
制御部50は、アンプ40又はロードセル30から受信した信号に基づき、アジテーター20に加わる力を把握する。そして、アジテーター20に加わる力が所定の閾値を超えたときに、アジテーター20の撹拌動作を開始する。
図1の場合には、アジテーター20の軸20aの回転を開始させ、軸20aの外周面に設けられている撹拌翼20bで紛体100を撹拌する。これにより、紛体100をほぐすことができ、紛体100の密度、つまり嵩比重を低下させることができる。これにより、ホッパー10の側面に紛体100が固着するのを防止することができ、棚張りの発生を防止することができる。
【0025】
図2は、棚張りの発生状態の一例を示した図である。
図2に示されるように、紛体100がホッパー10の側面下部に固着して固体状態となってしまうと、ホッパー10の下端開口12の開口形状が変化してしまう。よって、このような棚張りの発生を防止することが、定量供給を達成するために効果的である。
【0026】
発明者は、このような現象の発生を確認するため、ホッパー内の嵩比重分布を内部の粉体をスクリューでの解砕する際に発生する音(AE、Acoustic Echo)を測定して推定した。その結果、時間的にホッパーの内部の嵩比重が変動することがあり、前方に穴があるような漏斗形状を成したり、中間でラットホールが発生したり、後方で穴が発生したりと固まった粉体がホッパーの内部で様々な形状を成し、それが数分から数時間の不変であったり、激しく変化したりしていることが分かった。これは、固化と亀裂分裂によって荷下がりする粉体の特徴であり、特に高さのあるホッパーでは固化しやすく、起り易いことを見出した。これらの棚張りを常に開催し、固化を防ぐことが重要である。また固化は荷重を受けてある程度の時間経過をもって発生し、早い段階での固化部分の解砕は棚張り抑制効果が大きい。よって、
図1で説明したように、固化が発生した初期段階でアジテーター20を動作させるのが効果的である。
【0027】
図1の説明に戻る。制御部50は、アジテーター20の撹拌動作を継続した結果、アジテーター20に加わる力が弱くなり、検出した力の大きさが下限の閾値を下回ったら、アジテーター20の撹拌動作を停止される制御を行ってもよい。これにより、紛体100が砂のように、又は液体のように大量に連続的に流れてしまうフラッシング現象を防止することができる。
【0028】
即ち、アジテーター20に加わる力が所定の上限の閾値を超えたらアジテーター20の撹拌動作を開始させ、所定の下限の閾値を下回ったらアジテーター20の撹拌動作を停止させることにより、紛体100の嵩比重を常に良好な状態とすることができる。
【0029】
なお、制御部50は、演算処理機能を有する種々の手段から構成されてよい。例えば、CPU(Central Control Unit、中央処理装置)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を備え、プログラムにより動作するコンピュータ又はマイクロコンピュータとして構成されてもよいし、特定の用途向けに開発されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)として構成されてもよい。
【0030】
切り出し流路60は、ホッパー10の下端開口12から排出される紛体100を定量切り出しして供給するための流路である。よって、切り出し流路60の下端開口12の下方には、図示しない定量切り出し装置が設けられ、紛体100を定量切り出し供給する。切り出し流路60は、内部にスクリュー61を有する。スクリュー61は、切り出し流路60内の紛体100を定量搬送するための搬送手段である。スクリュー61の回転により、紛体100を一定の流量で搬送する。切り出し流路60の端部には、排出口62が設けられ、切り出し流路60内を水平に移動した紛体100が、下方に排出されて落下する構成となっている。
【0031】
定量搬送路70は、切り出し流路60の排出口62から受けた切り出された紛体100を定量搬送し、精鉱バーナーに供給するための搬送手段である。定量供給路70は、スクリュー71を有し、スクリュー71の回転により切り出された紛体100を定量搬送する。そして、端部に設けられた排出口72から紛体100を下方に設けられた図示しない精鉱バーナーに供給する。かかる精鉱バーナーによる燃焼を一定に保つためには、定量搬送路70の排出口72から紛体100を一定量供給する必要がある。
【0032】
かかる精鉱バーナーへの紛体100の定量供給のため、本実施形態に係る紛体供給装置は、アジテーター20、ロードセル30、制御部50を備え、ホッパー10内の紛体100が一定の嵩比重を有するような動作を行う。即ち、上述のように、アジテーター20に加わる力を計測し、その力に基づいて制御部50がアジテーター20を動作させるか否かを判断し、制御する。これにより、ホッパー10内の紛体100の嵩比重を一定とし、精鉱バーナーでの紛体100の供給量を一定とすることができる。
【0033】
[第2の実施形態]
図3は、本発明の第2の実施形態に係る紛体供給装置の一例を示した図である。第2の実施形態に係る紛体供給装置は、アジテーター21が、水平に延在して設けられるのではなく、ホッパー10の上端開口11から下方に延びるように挿入されて下端開口12付近の深い位置に円板21bが設けられている点で、第1の実施形態に係る紛体供給装置と異なっている。また、ロードセルではなく、嵩比重測定装置31が設けられている点で、第1の実施形態に係る紛体供給装置と異なっている。
【0034】
その他の構成要素は、第1の実施形態に係る紛体供給装置と同様であるから、対応する構成要素に同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0035】
アジテーター21は、垂直方向に延在するとともに、上下方向に振動して紛体100を撹拌する構造を有する。アジテーター21の下端には、円板21bが設けられているので、スコップで掘り起こすような動作で紛体100を撹拌する。円板21bは、ホッパー10の下端開口12のやや上方に設けられているので、ホッパー10の深い箇所の紛体100を撹拌することができる。また、アジテーター21は左右に2本設けられており、複数箇所で撹拌を行うことができる。
【0036】
なお、円板21bの形状は、必ずしも円形でなく多角形でもよいし、円板21bが1本のアジテーター21に複数枚設けられているような構成であってもよい。このように、アジテーター21の形状や動作は、用途に応じて種々の構成とすることができる。
【0037】
嵩比重測定装置31は、トルク棒32と、抵抗体33と、手動ハンドル34と、トルク計35とを有する。トルク棒32がホッパー10の上端開口11から下方に延びるように挿入され、下端に抵抗体33を有し、上端に手動ハンドル34、手動ハンドル34上にトルク計35が設けられている。
【0038】
トルク棒32は、紛体100内におけるトルクを測定するための手段である。抵抗体33は、トルクを発生させるために設けられたトルク発生手段である。つまり、トルク棒32のみであれば、トルク棒32の回転は抵抗が全くないので、力が発生せず、トルクを測定することができない。しかしながら、抵抗体33が設けられていれば、トルク棒32を回転させようとすると、抵抗体33が周囲の紛体100から回転を抑制する力を受け、トルクを発生させることができる。
【0039】
トルク棒32の上端には角ヘッド32aが形成されている。角ヘッド32aは回転手段である手動ハンドルの先端を嵌めて回転トルクを伝えるための部材である。角ヘッド1aの形状にはとくに制限はなく、四角形や六角形のヘッド形状でよい。
【0040】
手動ハンドル34は、その先端に角ヘッド32aに合致する嵌合凹部34aを備えており、角ヘッド32aに嵌合凹部34aを嵌めて、手で手動ハンドル34を回わすと、トルク棒32を回わすことができる。
【0041】
なお、本実施形態において、回転手段は手動ハンドル34であるが、これに限られるものではなくモータ駆動の回転手段も採用される。
【0042】
また、トルク計35は手動ハンドル34に予め付設されているものを用いると、正確に手動ハンドル34に生ずるトルクを計測することができる。ただし、本発明においてトルク計35は予め付設されたものに限ることなく、使用時にそのつど取付けるものであってもよい。
【0043】
次に、測定方法であるが、
図3に示すように、嵩比重測定装置31をホッパー10の上端開口11からホッパー10内に挿入する。挿入深さは任意に選択してよいが、例えば、円板21bと同じ深さであってもよい。円板21b付近の嵩比重を測定することができる。
【0044】
トルク棒32を任意に選択した深さにおいて、トルク棒32を手動で回転させる。加えた回転トルクにより、回転初期はトルク棒32に若干ねじれが生じる。さらに回転トルクを加えると、トルク計35で計測されるトルク値は漸増していくが、抵抗体33周辺の精鉱が抵抗体33の回転しようとする力に抗いきれなくなった段階で、トルク値は一定または若干低下して抵抗体33はスムーズに回転するようになる。この一連の操作中における最大トルク値は、回転前の抵抗体33周辺の精鉱嵩比重に関係したトルク値となる。
【0045】
ここで、トルク検出値と嵩比重との関係が検量線として分かっていれば、トルク検出値から紛体100の嵩比重を算出することができる。つまり、トルク計35で計測されたトルク検出値を検量線と照合することで、ホッパー10内の貯留物である紛体100の嵩比重を推定することができる。
【0046】
このような方式でかさ比重を推定するには、予め検量線を用意しておく必要がある。そのために、
図3に示すように、嵩比重が異なる精鉱が入った試験セルC内で抵抗体33を回転させ、抵抗体33回転時のトルク値を測定し、そのトルク値に対する嵩比重の関係、すなわち検量線を実用上必要な範囲で作成しておく。検量線の一例を
図4に示す。この検量線に貯槽内で測定したトルク値を照合することで、貯槽内の嵩比重を推定することができる。
【0047】
検量線の作成は、次の要領で行える。
【0048】
図3に示すような、200mm角で高さ500mmの透明な樹脂製試験セルC内に本発明の嵩比重測定装置Aの抵抗体4部分を設置してから、その試験セルC内に10kgの精鉱を投入し、精鉱嵩比重1.7から2.2の範囲で回転トルク値を測定することで、
図4に示すような検量線を作成できる。精鉱嵩比重は、試験セルC内の鉱層高さを測定し、そこから算出される体積から推定できる。
【0049】
このように、トルク棒32の先端に取り付ける抵抗体33ごとに嵩比重が既知の精鉱でトルクを事前に測定して検量線を作成しておくことにより、他の方法では困難であるホッパー10内の精鉱嵩比重分布を容易に測定することが可能である。
【0050】
この場合、制御部50は、嵩比重に対して閾値を設定する。つまり、嵩比重が所定の閾値を超えたら、アジテーター21の上下動を開始させる。これにより、紛体100を撹拌することができ、紛体100の嵩比重を低下させることができる。
【0051】
そして、アジテーター21の撹拌動作を継続しつつトルク測定を継続し、嵩比重が所定の下限の閾値を下回ったら、制御部50は、アジテーター21の撹拌動作を停止させる。これにより、フラッシングを防止することができる。
【0052】
このように、紛体100の嵩比重を計測し、嵩比重に所定の閾値を設定することにより、嵩比重が所定範囲内に保たれるように制御部50がアジテーター21の動作を制御することができる。その結果、フラッシングや閉塞による操業トラブルを極力抑えられる精鉱の滞留時間を見出すことができる。
【0053】
このような嵩比重の測定を、トルク棒32及び抵抗体33の深さを移動させながら測定し、ホッパー10内の紛体100の全体の嵩比重を考慮してアジテーター21を動作させるようなより精度の高い制御を行うようにしてもよい。
【0054】
なお、嵩比重の測定方法は、このようなトルクを計測する方法に限らず、種々の方法により嵩比重を算出し、アジテーター21の動作開始と停止を制御することができる。
【0055】
また、
図4において、トルクと嵩比重との関係を示し、嵩比重を測定することで撹拌制御を実施する形態を示したが、トルク自体に閾値を設定し、計測したトルクに基づいて撹拌制御を行うようにしてもよい。
【0056】
更に、本実施形態では、トルク棒32、抵抗体33、手動ハンドル34及びトルク計35を用いて嵩比重測定装置31を構成したが、手動ハンドル34をモータに置き換えてもよいことは上述の通りである。更に、嵩比重測定装置31のトルク測定は、ロードセルを用いて行うようにしてもよい。実施形態1で説明したロードセル30は、力検出器、荷重変換器として広く利用されており、トルクを計測することが可能なセンサも市販されている。
【0057】
このように、第2の実施形態に係る紛体供給装置によれば、嵩密度に基づいてアジテーター21の撹拌制御を行い、紛体100の嵩密度を良好な状態に保ちつつ紛体100の定量供給を行うことができる。
【0058】
[第3の実施形態]
図5は、本発明の第3の実施形態に係る紛体供給装置の一例を示した図である。第3の実施形態に係る紛体供給装置は、アジテーター22が、ホッパー10の上端開口11から深さ方向に挿入され、軸22aの下端に撹拌翼22bが設けられた構成である点で、第1及び第2の実施形態に係る紛体供給装置と異なっている。
【0059】
また、アジテーター22が2個設けられ、その間にロードセル30が用いられている点でも、第1及び第2の実施形態に係る紛体供給装置と異なっている。
【0060】
アジテーター22は、軸22aの回転により撹拌翼22bを回転させ、紛体100を撹拌する動作を行う。このように、撹拌翼22bを水平方向に回転させて紛体100を撹拌してもよい。また、アジテーター22を複数設けることにより、ホッパー10内の全体の領域にて紛体100を撹拌することができる。
【0061】
ロードセル30は、第1の実施形態と同様に、撹拌翼22bに加わる力を計測するセンサを用いることができる。アジテーター22の撹拌翼22bの付近の引込力、引張力等を測定することができる。なお、
図5においては、ロードセル30を、撹拌翼22bと同じ深さに設置し、撹拌翼22bに加わる力を効果的に測定できる位置に配置している。しかしながら、ロードセル30の位置は、これに限定される訳ではなく、用途に応じて種々の位置に配置することができる。
【0062】
そして、ロードセル30で検出した撹拌翼22bに加わる力が、所定の閾値を超えたときに、制御部50は、軸22aを回転させ、撹拌翼22bを回転させる撹拌動作を開始させる。これにより、紛体100のホッパー10の側壁への固着を防止することができる。
【0063】
そして、ロードセル30による撹拌翼22bに加わる力の計測を継続し、力の大きさが所定の下限の閾値を下回ったら、制御部50は、アジテーター22の回転動作を停止させる。これにより、フラッシングを防止することができる。
【0064】
このような動作を継続し、ホッパー10内の紛体100からアジテーター22に加わる力が所定範囲内に保たれるようにすれば、ホッパー10内の紛体100の嵩密度を良好な状態に保つことができ、紛体100の固着及びフラッシングを効果的に防止することができる。その結果、切り出し流路60及び定量搬送路70への定量供給が可能となり、精鉱バーナーでの安定した燃焼が可能となる。
【0065】
なお、ロードセル30で計測した力の大きさを示す電気信号は、アンプ40で増幅され、制御部50に送信されることは、第1の実施形態で説明した通りである。
【0066】
他の構成要素については、第1の実施形態に係る紛体供給装置の構成要素と同様であるので、対応する構成要素に同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0067】
このように、本発明の実施形態に係る紛体供給装置は、種々の態様をとることが可能であり、いずれの構成においても、アジテーター20~22の撹拌動作を適切に制御することができ、ホッパー10内での紛体100の付着やフラッシングを効果的に防止することができる。
【0068】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説したが、本発明は、上述した実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0069】
10 ホッパー
20、21、22 アジテーター
30 ロードセル
31 嵩比重測定装置
40 アンプ
50 制御部
60 切り出し流路
70 定量搬送路
100 紛体