(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022123851
(43)【公開日】2022-08-24
(54)【発明の名称】遷移金属含有材の堆積
(51)【国際特許分類】
C23C 16/455 20060101AFI20220817BHJP
H01L 21/285 20060101ALI20220817BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
C23C16/455
H01L21/285 C
H01L21/28 301R
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022016981
(22)【出願日】2022-02-07
(31)【優先権主張番号】63/148,241
(32)【優先日】2021-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519237203
【氏名又は名称】エーエスエム・アイピー・ホールディング・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ミカ・マッティネン
(72)【発明者】
【氏名】ティモ・ハタンパ
(72)【発明者】
【氏名】ミッコ・リタラ
(72)【発明者】
【氏名】マルック・レスケラ
【テーマコード(参考)】
4K030
4M104
【Fターム(参考)】
4K030AA02
4K030AA03
4K030AA06
4K030AA07
4K030AA11
4K030AA13
4K030AA16
4K030AA17
4K030AA18
4K030BA01
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4K030BA07
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4K030BB14
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4K030CA12
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4K030DA04
4K030EA03
4K030EA11
4K030FA01
4K030FA10
4K030HA01
4K030KA41
4K030LA15
4M104AA01
4M104AA02
4M104AA04
4M104AA06
4M104BB04
4M104BB05
4M104BB36
4M104BB39
4M104DD43
4M104DD45
4M104DD47
(57)【要約】
【課題】本開示は半導体デバイスの製造を提供する。
【解決手段】具体的に本開示は、周期的堆積プロセスによって、遷移金属含有材を基材上に形成する方法に関する。方法は、基材を反応チャンバ内に提供すること、遷移金属化合物を含む遷移金属前駆体を反応チャンバ内に提供すること、および第二の前駆体を反応チャンバ内に提供することを含み、遷移金属化合物は、付加リガンドに結合された遷移金属ハロゲン化物を含み、第二の前駆体はカルコゲンまたはニクトゲンを含む。本開示は、遷移金属層を形成する方法と、半導体デバイスとにさらに関する。さらに、気相堆積アセンブリが開示されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期的堆積プロセスによって基材上に、遷移金属含有材を形成する方法であって、
基材を反応チャンバ内に提供することと、
遷移金属化合物を含む遷移金属前駆体を前記反応チャンバ内に提供することと、
前記反応チャンバに第二の前駆体を提供することと、を含み、
前記遷移金属化合物が、付加リガンドに結合された遷移金属ハロゲン化物を含み、前記第二の前駆体がカルコゲンまたはニクトゲンを含む、方法。
【請求項2】
前記付加リガンドが、二座の窒素を含む付加リガンドである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記二座の窒素を含む付加リガンドが2つの窒素原子を含み、各窒素原子が少なくとも1つの炭素原子に結合されている、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記二座の窒素を含む付加リガンドが、N,N,N’,N’‐テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)またはN,N,N’,N’‐テトラメチル‐1,3‐プロパンジアミン(TMPDA)である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記遷移金属含有材の遷移金属が第1列遷移金属である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記遷移金属含有材の遷移金属がMn、Fe、Co、Ni、Cu、およびZnから成る群から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記遷移金属含有材の遷移金属がCoおよびNiから成る群から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記遷移金属ハロゲン化物が遷移金属塩化物を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記遷移金属化合物がCoCl2(TMEDA)とNiCl2(TMPDA)のうちの1つを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第二の前駆体がカルコゲンを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記カルコゲンが硫黄、セレン、およびテルルから成る群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第二の前駆体がカルコゲン‐水素結合を含む、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記第二の前駆体がカルコゲンおよび水素を含む、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第二の前駆体がH2S、H2Se、H2Te、(CH3)2S、(NH4)2S、(CH3)2SO、(CH3)2Se、(CH3)2Te、Se(SiEt3)2、およびTe(SiEt3)2から成る群から選択される、請求項10から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第二の前駆体がヒ素、アンチモン、およびビスマスから成る群から選択されるニクトゲンを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記第二の前駆体がアルキル基を含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記第二の前駆体がチオールを含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記周期的堆積プロセスが、前記遷移金属前駆体および前記第二の前駆体を前記反応チャンバ内で交互かつ逐次的に提供することを含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記遷移金属含有材の電気抵抗率が、50nmの層厚さで100μΩcm未満である、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記遷移金属含有材が、10nm以下の厚さで実質的に連続的な層を形成する、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記基材が、第一の材料を含む第一の表面と第二の材料を含む第二の表面とを備え、前記遷移金属含有材が、前記第二の表面に対して前記第一の表面上に選択的に堆積される、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記第一の材料が第一の誘電材料または第一の金属を含み、前記第二の材料が第二の誘電材料または第二の金属を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第一の材料が天然の酸化ケイ素、熱酸化ケイ素、ソーダ石灰ガラス、イリジウムなどの金属、硫化スズなどの金属硫化物、または窒化チタンなどの金属窒化物を含む、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
前記第二の材料がSi‐H、または酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化チタンなどの金属酸化物、または硫化亜鉛などの金属硫化物を含む、請求項21から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記第二の材料が、その場で堆積した材料である、請求項21から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
周期的堆積プロセスによって基材上に、遷移金属含有材を形成する方法であって、
基材を反応チャンバ内に提供することと、
付加リガンドに結合された遷移金属ハロゲン化物を含む遷移金属前駆体を前記反応チャンバ内に提供することと、
第二の前駆体を前記反応チャンバに提供することと、
前記遷移金属含有材を還元剤と接触させることによって元素遷移金属を形成することと、を含む方法。
【請求項27】
前記還元剤が形成ガス(H2+N2)、アンモニア(NH3)、アンモニア(NH3)プラズマ、ヒドラジン(N2H4)、分子水素(H2)、水素原子(H)、水素プラズマ、水素ラジカル、水素励起種、アルコール、アルデヒド、カルボン酸、ボラン、アミン、三級ブチルヒドラジン(C4H12N2)、シラン(SiH4)、ジシラン(Si2H6)、トリシラン(Si3H8)、ゲルマン(GeH4)、ジゲルマン(Ge2H6)、ボラン(BH3)、およびジボラン(B2H6)のうちの少なくとも1つを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
請求項1に記載の方法によって堆積させた遷移金属含有材を含む半導体デバイス構造体。
【請求項29】
請求項26に記載の方法によって堆積させた遷移金属含有材を含む半導体デバイス構造体。
【請求項30】
遷移金属含有材を周期的堆積方法によって基材上に堆積させるための気相堆積アセンブリであって、
前記基材を保持するように配置構成されている1つ以上の反応チャンバと、
付加リガンドに結合された遷移金属ハロゲン化物を含む遷移金属前駆体および/または第二の前駆体を前記反応チャンバ内に気相で提供するように配置構成されている前駆体インジェクターシステムと、
前記付加リガンドに結合された遷移金属ハロゲン化物を含む遷移金属前駆体を収容および蒸発させるように配置構成された遷移金属前駆体容器と、
前記第二の前駆体を収容および蒸発させるように配置構成された第二の前駆体容器と、を備え、
前記気相堆積アセンブリが、前記前駆体インジェクターシステムを介して前記反応チャンバに前記遷移金属前駆体および/または第二の前駆体を提供して、遷移金属含有材を前記基材上に堆積させるように配置構成されている、気相堆積アセンブリ。
【請求項31】
前記基材上に堆積した遷移金属含有材を還元するために還元剤を収容および蒸発させるように配置構成されている還元剤容器を備え、前記気相堆積アセンブリが前記還元剤を前記前駆体インジェクターシステムを介して前記反応チャンバに提供して前記基材上に元素遷移金属を形成するように配置構成されている、請求項30に記載の気相堆積アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
共同研究契約の当事者
本明細書で特許請求される発明は、ヘルシンキ大学(the University of Helsinki)とASM Microchemistry Oyの間の共同研究協約によって、または共同研究協約のために、および/または共同研究協約に関連してなされた。本契約は、特許請求される発明がなされた日およびその日以前に発効されたものであり、特許請求される発明は、本契約の範囲内で取り組まれた活動の結果としてなされたものである。
【0002】
本開示は、半導体デバイスを製造するための方法および設備に関する。より具体的に本開示は、遷移金属含有材を基材上に堆積させるための方法およびシステムと、遷移金属含有材を含む層とに関する。本開示はまた、本明細書に開示された方法によって堆積された、遷移金属含有材を含む半導体デバイス構造体にも関する。
【背景技術】
【0003】
マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、および銅などの遷移金属は、異なる組成および特性を有する様々なカルコゲニドを形成する。例えば、大半のコバルト相および硫化ニッケル相は高導電性である。そのため、これらは、コバルトおよび銅インターコネクトのバリア層およびシード層として機能することを含むマイクロエレクトロニクスのために期待できる場合がある。これらは、例えば水分解用の電気触媒や、リチウムイオンおよび他の電池、太陽電池およびスーパーキャパシタにおける電極などの他の用途において有望な材料である場合がある。また、セレン化物およびテルル化物などの他のカルコゲニドも、様々なマイクロエレクトロニクス用途におけるその可能性のために探索されている。カルコゲニドに加えて、第15族元素(ニクトゲン)、中でも注目すべきはアンチモン(Sb)や、それだけでなくヒ素(As)およびビスマス(Bi)も将来の半導体材料のための可能性を提供する。
【0004】
遷移金属硫化物もまた、金属コバルト層およびニッケル層に対する可能性のある前駆体である。加えて、コバルトおよびニッケル硫化物は、酸化に対してより安定であり、かつ金属2D硫化物よりも合成が簡単である。硫化物として、これらは、金属、酸化物、および他の材料群と比較して、例えば接点として、MoS2などの半導体2D硫化物とより化学的に適合である場合がある。
【0005】
可能性のある将来の用途の大半は、所望の基材および構造体上に堆積される極薄の連続層を必要とする。他の場合において、制御されたサイズのナノ粒子が好ましい場合がある。いずれの場合においても、必要なレベルの制御を提供する方法はほとんど知られていなく、また公知の方法の各々は、新しい用途における材料の魅力を低減する場合がある欠点を含む。
【0006】
それ故に、遷移金属カルコゲニド(硫化物など)だけでなく、遷移金属ニクチド(アンチモン化物など)を堆積させるための代替的な方法に対する当技術分野におけるニーズがある。
【0007】
このセクションに記載される問題および解決策の考察を含む任意の考察は、本開示の状況を提供する目的のためにのみこの開示に含まれている。こうした考察は、本発明がなされた時点で、または別の方法で先行技術を構成する時点で、情報のいずれかまたはすべてが既知であったことを認めるものと解釈されるべきではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この「発明の概要」は、選択された概念を単純化した形態で紹介する場合があり、これは以下でさらに詳細に説明される場合がある。この「発明の概要」は、特許請求される主題の主要な特徴または本質的な特徴を特定することを必ずしも意図していなく、特許請求される主題の範囲を限定するために使用することも意図していない。
【0009】
本開示の様々な実施形態は、周期的気相堆積プロセスによって、遷移金属含有材を基材上に堆積する方法と、気相堆積アセンブリと、半導体デバイス構造体とに関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様において、周期的堆積プロセスによって遷移金属含有材を基材上に形成する方法が開示されている。方法は、基材を反応チャンバ内に提供することと、遷移金属前駆体を反応チャンバ内に提供することと、第二の前駆体を反応チャンバ内に提供することとを含んでもよい。遷移金属前駆体は、付加リガンドに結合された遷移金属ハロゲン化物を含む遷移金属化合物を含んでもよい。
【0011】
別の態様において、周期的堆積プロセスによって、遷移金属含有材を基材上に形成する方法が開示されている。方法は、基材を反応チャンバ内に提供することと、付加リガンドに結合された遷移金属ハロゲン化物を含む遷移金属化合物を含む遷移金属前駆体を反応チャンバ内に提供することと、第二の前駆体を反応チャンバ内に提供することと、遷移金属含有材を還元剤と接触させ、それによって元素遷移金属を形成することとを含んでもよい。
【0012】
さらなる一態様において、遷移金属含有材を含む半導体デバイス構造体と、本開示によって堆積された、遷移金属含有材とが開示されている。
【0013】
なお別の態様において、周期的堆積方法によって遷移金属含有材を基材上に堆積するための気相堆積アセンブリが開示されている。本開示による気相堆積アセンブリは、基材を保持するように配置構成された1つ以上の反応チャンバと、反応チャンバ内で気相の付加リガンドおよび/または第二の前駆体に結合された遷移金属ハロゲン化物を含む遷移金属化合物を含む遷移金属前駆体を反応チャンバ内に提供するように配置構成された前駆体インジェクターシステムとを備えてもよい。気相堆積アセンブリは、付加リガンドに結合された遷移金属ハロゲン化物を含む遷移金属化合物を含む遷移金属前駆体を収容および蒸発させるように配置構成された遷移金属前駆体容器と、第二の前駆体を収容および蒸発させるように配置構成された第二の前駆体容器とをさらに備えてもよい。本開示による気相堆積アセンブリは、遷移金属含有材を基材上に堆積するために、前駆体インジェクターシステムを介して遷移金属前駆体および/または第二の前駆体を反応チャンバに提供するように配置構成されてもよい。
【0014】
本開示において、変数の任意の2つの数はその変数の実行可能な範囲を構成することができ、示された任意の範囲は端点を含んでもよく、または除外してもよい。加えて、示された変数の任意の値は(それらが「約」を有して示されているか否かにかかわらず)、正確な値またはおおよその値を指し、等価物を含んでもよく、また平均値、中央値、代表値、または大多数またはこれに類するものを指してもよい。さらに、本開示において、「含む」「によって構成される」、および「有する」という用語は、一部の実施形態において、「典型的にまたは広く含む」、「含む」、「から本質的に成る」、または「から成る」を別々に指す。本開示において、任意の定義された意味は、一部の実施形態において、通常および慣習的な意味を必ずしも除外するものではない。
【0015】
例示的な材料の各々に対して与えられる化学式は限定するものとして解釈されるべきではなく、所与の非限定的な例示的な材料は所与の例示的な化学量論によって限定されるべきではない。
【0016】
本開示のさらなる理解を提供するために含まれていて、かつ本明細書の一部を構成する添付図面は、例示的な実施形態を図示し、記載内容とともに本開示の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】本開示による、遷移金属含有材を基材上に堆積させる方法の例示的な実施形態のプロセスフロー図を図示する。
【
図1B】本開示による、遷移金属含有材を基材上に堆積させる方法の例示的な実施形態のプロセスフロー図を図示する。
【
図2】本開示による、遷移金属含有材を基材上に選択的に堆積させる方法の例示的な一実施形態を図示する。
【
図3】本開示による気相堆積アセンブリの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に提供された方法、構造体、デバイス、および設備の例示的な実施形態の記述は、単に例示的なものであり、また例示の目的のみを意図している。以下の記述は、開示の範囲または特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。さらに、示された特徴を有する複数の実施形態の列挙は、追加の特徴を有する他の実施形態、または述べられた特徴の異なる組み合わせを組み込む他の実施形態を除外することを意図していない。例えば、様々な実施形態が例示的な実施形態として記載されていて、従属請求項で引用されてもよい。別途記載がない限り、例示的な実施形態またはその構成要素は、組み合わせられる場合があり、または互いに別々に適用されうる。
【0019】
本明細書に提示された図は、任意の特定の材料、構造体、または装置の実際の姿であることを意味せず、本開示の実施形態を記述するために使用されている、単に理想化された表現にすぎない。
【0020】
本開示による様々な方法において、基材は反応チャンバ内に提供される。言い換えれば、基材は、堆積条件を制御することができる空間の中に組み込まれる。反応チャンバは、集積回路を形成するために異なるプロセスが実行されるクラスタツールの一部であってもよい。一部の実施形態において、反応チャンバは、フロータイプの反応器(クロスフロー反応器など)であってもよい。一部の実施形態において、反応チャンバはシャワーヘッド反応器であってもよい。一部の実施形態において、反応チャンバは空間分割された反応器であってもよい。一部の実施形態において、反応チャンバは枚葉式ALD反応器であってもよい。一部の実施形態において、反応チャンバは大量生産可能な枚葉式ALD反応器であってもよい。一部の実施形態において、反応チャンバは、複数の基材を同時に製造するためのバッチ式反応器であってもよい。
【0021】
基材
本明細書で使用される「基材」という用語は、デバイス、回路、材料、もしくは材料層を形成するために使用されてもよい任意の下地材料(複数可)、またはデバイス、回路、材料、もしくは材料層が上に形成されてもよい任意の下地材料(複数可)を指してもよい。基材は、シリコン(例えば単結晶シリコン)などのバルク材料、ゲルマニウムなどの他の第IV族材料、または第II‐VI族、もしくは第III‐V族半導体材料などの他の半導体材料を含むことができる。基材は、バルク材料の上にある1つ以上の層を含むことができる。基材は、基材の層の少なくとも一部分内に、またはその一部分上に形成された、陥凹部、線、トレンチ、またはフィンなどの上昇している部分の間の空間、およびこれに類するものを含む様々なトポロジー(ギャップなど)を含むことができる。基材としては、窒化物(例えばTiN)、酸化物、絶縁材料、誘電材料、導電性材料、金属(タングステン、ルテニウム、モリブデン、コバルト、アルミニウム、または銅など)、もしくは金属材料、結晶材料、エピタキシャル、ヘテロエピタキシャル、および/または単結晶材料が挙げられうる。本開示の一部の実施形態において、基材はシリコンを含む。基材は、シリコンに加えて、上述の通りの他の材料を含んでもよい。他の材料は層を形成してもよい。
【0022】
一部の実施形態において、基材は、酸化ケイ素ベースの表面などの‐OH基を含む。一部の実施形態において、基材表面は、HF浸漬Si(Si‐H)表面またはHF浸漬のGe表面など、‐H末端終端化を追加的に含んでもよい。こうした実施形態において、対象の表面は、‐H末端と‐H末端の下方の材料の両方を備えると考えられることになる。
【0023】
周期的堆積
遷移金属含有材は、周期的堆積プロセスを使用して堆積される。本明細書で使用される「周期的堆積」という用語は、基材の上に層を堆積させるための、反応チャンバの中への前駆体(反応物質)の連続的な導入を指してもよく、またこれは原子層堆積(ALD)および周期的化学蒸着(周期的CVD)などの処理技法を含む。CVDタイプのプロセスは典型的に、2つ以上の前駆体間の気相反応を含む。前駆体は、材料が堆積される基材を収容する反応チャンバに同時に提供されてもよい。前駆体は、部分的にまたは完全に分離されたパルスで提供されてもよい。気体状の前駆体間の反応を促進するために、基材および/または反応チャンバを加熱することができる。一部の実施形態において、前駆体は、所望の厚さを有する層が堆積されるまで提供される。一部の実施形態において、所望の厚さを有する薄膜を堆積させるために、周期的CVDタイプのプロセスを複数のサイクルで使用することができる。周期的CVDタイプのプロセスにおいて、重ならない、または部分的に重なる、もしくは完全に重なるパルスで前駆体を反応チャンバに提供してもよい。
【0024】
ALDタイプのプロセスは、前駆体の制御された、典型的に自己限定的な表面反応に基づく。気相反応は、前駆体を交互に、かつ逐次的に反応チャンバの中に供給することによって回避される。気相反応前駆体は、例えば前駆体パルスと前駆体パルスの間に反応チャンバから過剰な前駆体および/または反応副産物を除去することによって、反応チャンバ内で互いに分離される。これは、排出工程、および/または不活性ガスパルスもしくはパージを用いて達成されてもよい。一部の実施形態において、基材は不活性ガスなどのパージガスと接触している。例えば、過剰な前駆体および反応副産物を除去するために、前駆体パルスと前駆体パルスの間で、基材をパージガスと接触させてもよい。
【0025】
一部の実施形態において、各反応は自己限定的であり、また単層ごとの成長が達成される。これらは「真のALD」反応と称されてもよい。一部のこうした実施形態において、遷移金属前駆体は自己限定的な様態で基材表面上に吸着してもよい。第二の前駆体は次に、吸着された遷移金属前駆体と反応して、基材上に遷移金属含有材の単層まで形成してもよい。還元剤などの第三の反応物質は、材料中の遷移金属を元素遷移金属に還元するために導入されてもよい。
【0026】
一部の実施形態において、遷移金属含有材の堆積プロセスは、自己限定的ではない1つ以上の段階を有する。例えば、一部の実施形態において、少なくとも1つの前駆体は、基材表面上で少なくとも部分的に分解されてもよい。それ故に、一部の実施形態において、プロセスは、CVD条件に近いプロセス条件レジームで、または一部の場合において、完全にCVD条件で動作してもよい。
【0027】
本開示による方法は、空間原子層堆積設備にも使用されてもよい。空間ALDにおいて、前駆体は異なる物理的セクションにおいて連続的に供給され、基材はセクション間を移動する。少なくとも2つのセクションが提供されてもよく、このセクションでは基材の存在下で、半反応が起こることができる。こうした半反応セクション内に基材が存在する場合、第一の前駆体または第二の前駆体から単層が形成されてもよい。その後、基材は第二の半反応ゾーンに移動され、そこで第一の前駆体または第二の前駆体を用いてALDサイクルを完了して標的材料を形成する。代替的に、基材の位置を静止させることが可能であり、かつガス供給を移動させることが可能であり、またはこれら2つの何らかの組み合わせが可能である。より厚い膜を得るために、このシーケンスを繰り返してもよい。
【0028】
パージとは、例えば真空ポンプを用いて反応チャンバを排出することによって、かつ/または反応チャンバ内部のガスをアルゴンもしくは窒素などの不活性ガスで交換することによって、気相前駆体および/または気相副産物を基材表面から除去することを意味する。パージは、2回の前駆体パルスの間に実行されてもよい。典型的なパージ時間は約0.05~20秒であり、また約0.2~10秒、または約0.5~5秒とすることもできる。しかしながら、アスペクト比が非常に高い構造もしくは複雑な表面形態を有する他の構造を覆う、高度にコンフォーマルな工程カバレッジが必要な場合、またはバッチ反応器などの異なる反応器タイプが使用されうる場合など、必要に応じて他のパージ時間を利用することができる。ALDについて上述の通り、パージは、時間的または空間モードで実行されてもよい。
【0029】
本開示において、「ガス」は、常温常圧(NTP)にて気体である材料、気化した固体、および/または気化した液体を含むことができ、また状況に応じて単一の気体、また気体の混合物によって構成されることができる。「不活性ガス」という用語は、相当な程度まで化学反応に関与しないガスを指すことができる。例示的な不活性ガスとしては、HeおよびArならびにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。一部の場合において、窒素および/または水素を不活性ガスとすることができる。プロセスガス以外のガス、すなわちガス分配アセンブリ、他のガス分配装置、またはこれに類するものを通過することなく導入されるガスは、例えば反応空間を密封するために使用することができ、また希ガスなどのシールガスを含むことができる。
【0030】
「前駆体」という用語は、別の化合物、特に堆積した材料を構成する化合物を生成する化学反応に関与する化合物を指すことができる。「反応物質」という用語は、前駆体という用語と交互に使用されることができる。しかしながら、反応物質は、堆積した材料を修飾する化学物質に使用されてもよい。例えば、遷移金属カルコゲニドを元素金属に還元する還元剤は、反応物質と呼ばれる場合がある。
【0031】
堆積した材料
遷移金属含有材は、本開示による方法によって堆積されてもよい。一部の実施形態において、遷移金属は第1列遷移金属である。一部の実施形態において、遷移金属はマンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、および亜鉛(Zn)から成る群から選択される。遷移金属はコバルト(Co)、ニッケル(Ni)、および銅(Cu)から成る群から選択されてもよい。一部の実施形態において、遷移金属はCoおよびNiから成る群から選択される。それ故に、本明細書に開示された方法によって堆積された、遷移金属含有材は、Co、Ni、および/またはCuなどの1つ以上の遷移金属、ならびに追加的に1つ以上のカルコゲンまたはニクトゲンを含んでもよい。カルコゲンは、酸素を除く元素周期表の第16族の元素であると考えられる。一部の実施形態において、カルコゲンは硫黄(S)、セレン(Se)、およびテルル(Te)から成る群から選択される。本開示による、遷移金属含有材は、例えばCoおよびS、CoおよびSe、またはCoおよびTeを含んでもよい。一部の実施形態において、本開示による、遷移金属含有材は、CuおよびS、CuおよびSe、またはCuおよびTeを含んでもよい。一部の実施形態において、本開示による、遷移金属含有材は、NiおよびS、NiおよびSe、またはNiおよびTeを含んでもよい。)。本開示による、遷移金属含有材は、例えばMnおよびS、MnおよびSe、またはMnおよびTeを含んでもよい。本開示による、遷移金属含有材は、例えばFeおよびS、FeおよびSe、またはFeおよびTeを含んでもよい。
【0032】
本開示において、ニクトゲンは、窒素を除く元素周期表の第15族の元素であると考えられる。一部の実施形態において、ニクトゲンはヒ素(As)、アンチモン(Sb)、およびビスマス(Bi)から成る群から選択される。それ故に、本開示による、遷移金属含有材は、例えばCoおよびAs、CoおよびSb、またはCoおよびBiを含んでもよい。一部の実施形態において、本開示による、遷移金属含有材は、例えばMnおよびAs、MnおよびSb、またはMnおよびBiを含んでもよい。一部の実施形態において、本開示による、遷移金属含有材は、例えばFeおよびAs、FeおよびSb、またはFeおよびBiを含んでもよい。一部の実施形態において、本開示による、遷移金属含有材は、例えばNiおよびAs、NiおよびSb、またはNiおよびBiを含んでもよい。一部の実施形態において、本開示による、遷移金属含有材は、例えばCuおよびAs、CuおよびSb、またはCuおよびBiを含んでもよい。
【0033】
遷移金属カルコゲニドは、様々な相で存在してもよい。別段の示されない限り、遷移金属カルコゲニドは、一般的な相を指定することなく一般的な形態にあるものを指す。例えば、CoSxは、Co4S3、Co9S8、CoS、Co3S4、またはCoS2、またはそれらの組み合わせなどの任意の硫化コバルト相を意味してもよい。NiSxは、Ni3S2、Ni3S8、β‐NiS、Ni3S4、またはNiS2、またはそれらの組み合わせなどの任意の硫化ニッケル相を意味してもよい。さらなるCuSxは、CuS2、CuS、Cu9S8、またはそれらの組み合わせなどの任意の硫化銅相を意味してもよい。しかしながら、一部の実施形態において、遷移金属含有材は、Co9S8(コバルトペントランダイト)を含む、またはそれから本質的に成る、またはそれから成る。一部の実施形態において、遷移金属含有材は、β‐NiSを含む、またはそれから本質的に成る、またはそれから成る。一部の実施形態において、遷移金属含有材は、Ni9S8を含んでもよく、またはそれから本質的に成ってもよく、またはそれから成ってもよい。しかしながら、一部の実施形態において、本開示によって堆積された遷移金属カルコゲニドは、異なる相の混合物を含む。材料中に存在してもよい例示的な相は、Cu2S、Cu31S16、Cu58S32、Cu9S5、Cu7S4、Cu8S5、Cu39S28、Cu9S8、CuS、およびCuS2である。一部の実施形態において、遷移金属含有材は、0.9~1.0のS対Coの比を有してもよい。
【0034】
一部の実施形態において、遷移金属含有材は、例えば約70~約99.5の原子%遷移金属カルコゲニドもしくは遷移金属ニクチド、または約80~約99.5原子%の遷移金属カルコゲニドもしくは遷移金属ニクチド、または約90~約99.5原子%の遷移金属カルコゲニドもしくは遷移金属ニクチドを含んでもよい。本開示の方法によって堆積された、遷移金属含有材は、例えば約80原子%、約83原子%、約85原子%、約87原子%、約90原子%、約95原子%、約97原子%、または約99原子%の遷移金属カルコゲニドまたは遷移金属ニクチドを含んでもよい。
【0035】
一部の実施形態において、本開示によって堆積された、遷移金属含有材は、約3原子%未満、または約1原子%未満の塩素を含む。一部の実施形態において、本開示によって堆積された、遷移金属含有材は、約1原子%未満、または約0.5原子%未満の酸素を含む。一部の実施形態において、本開示によって堆積された、遷移金属含有材は、約2原子%未満、または約1原子%未満、%、または約0.5原子%未満の炭素を含む。一部の実施形態において、本開示によって堆積された、遷移金属含有材は、約0.5原子%未満、または約0.2原子%未満、または約0.1原子%未満の窒素を含む。一部の実施形態において、本開示によって堆積された、遷移金属含有材は、約1.5原子%未満、または約1原子%未満の水素を含む。
【0036】
一部の実施形態において、遷移金属含有材は、遷移金属含有材から本質的に成る、または遷移金属含有材から成る。一部の実施形態において、遷移金属含有材は、硫化コバルトから本質的に成る、または硫化コバルトから成る。一部の実施形態において、遷移金属含有材は、硫化ニッケルから本質的に成る、または硫化ニッケルから成る。一部の実施形態において、遷移金属含有材は、硫化銅から本質的に成る、または硫化銅から成る。一部の実施形態において、遷移金属含有材は、セレン化コバルトから本質的に成る、またはセレン化コバルトから成る。一部の実施形態において、遷移金属含有材は、セレン化ニッケルから本質的に成る、またはセレン化ニッケルから成る。一部の実施形態において、遷移金属含有材は、セレン化銅から本質的に成る、またはセレン化銅から成る。一部の実施形態において、遷移金属含有材は、テルル化コバルトから本質的に成る、またはテルル化コバルトから成る。一部の実施形態において、遷移金属含有材は、テルル化ニッケルから本質的に成る、またはテルル化ニッケルから成る。一部の実施形態において、遷移金属含有材は、テルル化銅から本質的に成る、またはテルル化銅から成る。
【0037】
一部の実施形態において、本開示による、堆積した遷移金属含有材は、層を形成してもよい。本明細書で使用される「膜」および/または「層」という用語は、本明細書に開示された方法によって堆積された材料などの、任意の連続的または非連続的な構造体および材料を指すことができる。例えば、層および/または膜としては、二次元材料、三次元材料、ナノ粒子、または均一な部分的もしくは完全な分子層、または部分的もしくは完全な原子層、または原子および/もしくは分子のクラスタを挙げることができる。膜または層は、少なくとも部分的に連続していてもよいピンホールを有する材料または層を含んでもよい。シード層は、別の材料の核形成速度を増加させる役割を果たす非連続層であってもよい。しかしながら、シード層はまた、実質的にまたは完全に連続的であってもよい。一部の実施形態において、遷移金属含有材は、10nm以下の厚さで実質的に連続的な層を形成する。
【0038】
一態様において、本明細書に提示された方法によって堆積された材料を含む半導体デバイス構造体が開示されている。
【0039】
本明細書で使用される「構造体」は、本明細書に記載の通りの基材とすることができ、またはそれを含むことができる。構造体は、本開示による方法によって形成された1つ以上の層などの、基材の上にある1つ以上の層を含むことができる。
【0040】
選択的堆積
一部の実施形態において、基材は、第一の材料を含む第一の表面と第二の材料を含む第二の表面とを備え、遷移金属含有材は、第二の表面に対して第一の表面上に選択的に堆積される。堆積条件を適切に選択することによって、遷移金属含有材は、第二の表面に対して第一の表面上に選択的に堆積されてもよい。本開示による方法は、選択性をもたらすために不動態化または他の表面処理などの前処理なしで実行されてもよい。それ故に、本開示で提示された方法の一部の実施形態において、堆積は本質的に選択的である。しかしながら、当業者によって理解される通り、選択性は、基材表面のクリーニング、エッチング、またはこれに類するものなどのプロセスによって影響を受ける場合がある。
【0041】
選択性は、(第一の表面上の堆積)-(第二の表面上の堆積)]/(第一の表面上の堆積)によって計算される割合として示されることができる。堆積は様々なやり方のうちのいずれかで測定されることができる。一部の実施形態において、堆積は堆積した材料の測定された厚さとして示されてもよい。一部の実施形態において、堆積は堆積した材料の測定された量として示されてもよい。
【0042】
一部の実施形態において、選択性は約30%超、約50%超、約75%超、約85%超、約90%超、約93%超、約95%超、約98%超、約99%超であり、または約99.5%超でさえある。実施形態において、選択性は堆積の持続時間または厚さにわたって変化する可能性がある。
【0043】
一部の実施形態において、堆積は第一の表面上にのみに生じ、第二の表面上に生じない。一部の実施形態において、基材の第二の表面と比較して基材の第一の表面上の堆積は、少なくとも約80%の選択性であり、これは一部の特定の用途のために十分に選択的である場合がある。一部の実施形態において、基材の第二の表面と比較して基材の第一の表面上の堆積は、少なくとも約50%の選択性であり、これは一部の特定の用途のために十分に選択的である場合がある。一部の実施形態において、基材の第二の表面と比較して基材の第一の表面上の堆積は、少なくとも約10%の選択性であり、これは一部の特定の用途のために十分に選択的である場合がある。
【0044】
一部の実施形態において、基材の第一の表面上に堆積された、遷移金属含有材は、約50nm未満、約20nm未満、約10nm未満、約5nm未満、約3nm未満、約2nm未満、または約1nm未満の厚さを有してもよく、その一方で、基材の第一の表面上に堆積された、遷移金属含有材の、基材の第二の表面に対する比は、約2:1以上、約20:1以上、約15:1以上、約10:1以上、約5:1以上、約3:1以上、または約2:1以上であってもよい。
【0045】
一部の実施形態において、本明細書に記載の選択的堆積プロセスの選択性は、第一の表面および/または第二の表面を成す材料に依存してもよい。例えば、第一の表面がCu表面を備え、第二の表面が二酸化ケイ素表面を備える一部の実施形態において、選択性は約10:1超であってもよく、または約20:1超であってもよい。第一の表面が金属または金属酸化物を備え、第二の表面が二酸化ケイ素表面を備える一部の実施形態において、選択性は約5:1超であってもよい。
【0046】
遷移金属前駆体
遷移金属は遷移金属前駆体によって、遷移金属含有材内に導入される。一部の実施形態において、遷移金属前駆体は、付加体形成リガンドを有する遷移金属化合物を含んでもよい。一部の実施形態において、遷移金属前駆体は、遷移金属ハロゲン化物化合物を含んでもよい。一部の実施形態において、遷移金属前駆体は、単座、二座、または多座付加体形成リガンドなどの付加体形成リガンドを有する遷移金属化合物を含んでもよい。一部の実施形態において、遷移金属前駆体は、単座、二座、または多座付加体形成リガンドなどの付加体形成リガンドを有する遷移金属ハロゲン化物化合物を含んでもよい。一部の実施形態において、遷移金属前駆体は、窒素を含む単座、二座、または多座付加体形成リガンドなどの、窒素を含む付加体形成リガンドを有する遷移金属化合物を含んでもよい。一部の実施形態において、遷移金属前駆体は、亜リン酸、酸素、または硫黄を含む単座、二座、または多座付加体形成リガンドなどの、亜リン酸、酸素、または硫黄を含む付加体形成リガンドを有する遷移金属化合物を含んでもよい。例えば、一部の実施形態において、遷移金属ハロゲン化物化合物は、遷移金属塩化物、遷移金属ヨウ化物、遷移金属フッ化物、または遷移金属臭化物を含んでもよい。一部の実施形態において、遷移金属ハロゲン化物化合物は、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、または亜鉛のうちの少なくとも1つを含むが、これに限定されない遷移金属種を含んでもよい。一部の実施形態において、遷移金属ハロゲン化物化合物は、塩化コバルト、塩化ニッケル、または塩化銅のうちの少なくとも1つを含んでもよい。一部の実施形態において、遷移金属ハロゲン化物化合物は、臭化コバルト、臭化ニッケル、または臭化銅のうちの少なくとも1つを含んでもよい。一部の実施形態において、遷移金属ハロゲン化物化合物は、フッ化コバルト、フッ化ニッケル、またはフッ化銅のうちの少なくとも1つを含んでもよい。一部の実施形態において、遷移金属ハロゲン化物化合物は、ヨウ化コバルト、ヨウ化ニッケル、またはヨウ化銅のうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0047】
一部の実施形態において、遷移金属ハロゲン化物化合物は、二座窒素を含む付加体形成リガンドを含んでもよい。一部の実施形態において、遷移金属ハロゲン化物化合物は、2つの窒素原子を含む付加体形成リガンドを含んでもよく、窒素原子の各々は少なくとも1つの炭素原子に結合されている。本開示の一部の実施形態において、遷移金属ハロゲン化物化合物は、中心遷移金属原子に結合された1つ以上の窒素原子を含み、それによって金属錯体を形成する。
【0048】
本開示の一部の実施形態において、遷移金属前駆体は、以下の式(I):
(付加体)n-M-Xa (I)
を有する遷移金属化合物を含んでもよく、式中、「付加体」の各々は付加体形成リガンドであり、かつ単座、二座、または多座付加体形成リガンドまたはその混合物であるように独立して選択することができ、単座形成リガンドの場合、nは1~4であり、二座または多座付加体形成リガンドの場合、nは1~2であり、Mは、例えばコバルト(Co)、銅(Cu)、またはニッケル(Ni)などの遷移金属であり、Xaのそれぞれは別のリガンドであり、またハロゲン化物または他のリガンドであるように独立して選択されることができ、aは1~4であり、一部の場合、aは2である。
【0049】
本開示の一部の実施形態において、遷移金属ハロゲン化物化合物などの遷移金属化合物における付加体形成リガンドは、窒素原子、亜リン酸原子、酸素原子、または硫黄原子のうちの少なくとも1つを通して、遷移金属化合物の遷移金属原子に配位させる、単座、二座、または多座付加体形成リガンドを含んでもよい。本開示の一部の実施形態において、遷移金属化合物中の付加体形成リガンドは、環状付加体リガンドを含んでもよい。本開示の一部の実施形態において、遷移金属化合物中の付加体形成リガンドは、モノアミン、ジアミン、またはポリアミンを含んでもよい。本開示の一部の実施形態において、遷移金属化合物中の付加体形成リガンドは、モノエーテル、ジエーテル、またはポリエーテルを含んでもよい。一部の実施形態において、遷移金属化合物中の付加体形成リガンドは、モノホスフィン、ジホスフィン、またはポリホスフィンを含んでもよい。一部の実施形態において、遷移金属化合物中の付加体形成リガンドは、付加体形成リガンド中の窒素、酸素、亜リン酸、または硫黄に加えて、炭素を含んでもよい。
【0050】
一部の実施形態において、遷移金属化合物中の付加体形成リガンドは、1つの単座付加体形成リガンドを含んでもよい。本開示の一部の実施形態において、遷移金属化合物中の付加体形成リガンドは、2つの単座付加体形成リガンドを含んでもよい。本開示の一部の実施形態において、遷移金属化合物中の付加体形成リガンドは、3つの単座付加体形成リガンドを含んでもよい。本開示の一部の実施形態において、遷移金属化合物中の付加体形成リガンドは、4つの単座付加体形成リガンドを含んでもよい。本開示の一部の実施形態において、遷移金属化合物中の付加体形成リガンドは、1つの二座付加体形成リガンドを含んでもよい。本開示の一部の実施形態において、遷移金属化合物中の付加体形成リガンドは、2つの二座付加体形成リガンドを含んでもよい。本開示の一部の実施形態において、遷移金属化合物中の付加体形成リガンドは、1つの多座付加体形成リガンドを含んでもよい。本開示の一部の実施形態において、遷移金属化合物中の付加体形成リガンドは、2つの多座付加体形成リガンドを含んでもよい。
【0051】
一部の実施形態において、付加体形成リガンドは、アミン、ジアミン、またはポリアミン付加体形成リガンドなどの窒素を含む。こうした実施形態において、遷移金属化合物は、トリエチルアミン(TEA)、N,N,N’,N’‐テトラメチル‐1,2‐エチレンジアミン(CAS:110‐18‐9、TMEDA)、N,N,N’,N’‐テトラエチルエチレンジアミン(CAS:150‐77‐6、TEEDA)、N,N’‐ジエチル‐1,2‐エチレンジアミン(CAS:111‐74‐0、DEEDA)、N,N’‐ジイソプロピルエチレンジアミン(CAS:4013‐94‐9)、N,N,N’,N’‐テトラメチル‐1,3‐プロパンジアミン(CAS:110‐95‐2、TMPDA)、N,N,N’,N’‐テトラメチルメタンジアミン(CAS:51‐80‐9、TMMDA)、N,N,N’,N”,N”‐ペンタメチルジエチレントリアミン(CAS:3030‐47‐5、PMDETA)、ジエチレントリアミン(CAS:111‐40‐0、DIEN)、トリエチレンテトラアミン(CAS:112‐24‐3、TRIEN)、トリス(2‐アミノエチル)アミン(CAS:4097‐89‐6、TREN、TAEA)、1,1,4,7,10,10‐ヘキサメチルトリエチレンテトラミン(CAS:3083‐10‐1、HMTETA)、1,4,8,11‐テトラアザシクロテトラデカン(CAS:295‐37‐4、Cyclam)、1,4,7‐トリメチル‐1,4,7‐トリアザシクロノナン(CAS:96556‐05‐7)、または1,4,8,11‐テトラメチル‐1,4,8,11‐テトラアザシクロテトラデカン(CAS:41203‐22‐9)のうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0052】
一部の実施形態において、付加体形成リガンドは、ホスフィン、ジホスフィン、またはポリホスフィン付加体形成リガンドなどの亜リン酸を含む。例えば、遷移金属化合物は、トリエチルホスフィン(CAS:554‐70‐1)、トリメチルホスファイト(CAS:121‐45‐9)、1,2‐ビス(ジエチルホスフィノ)エタン(CAS:6411‐21‐8、BDEPE)、または1,3‐ビス(ジエチルホスフィノ)ロパン(CAS:29149‐93‐7)のうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0053】
本開示の一部の実施形態において、付加体形成リガンドは、エーテル、ジエーテル、またはポリエーテル付加体形成リガンドなどの酸素を含む。例えば、遷移金属化合物は、1,4‐ジオキサン(CAS:123‐91‐1)、1,2‐ジメトキシエタン(CAS:110‐71‐4、DME、モノグライム)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(CAS:111‐96‐6、ジグライム)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(CAS:112‐49‐2、トリグライム)、または1,4,7,10‐テトラオキサシクロドデカン(CAS:294‐93‐9、12‐クラウン‐4)のうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0054】
一部の実施形態において、付加体形成リガンドは、チオエーテル、または、例えば1,7‐ジアザ‐12‐クラウン‐4:1,7‐ジオキサ‐4,10‐ジアザシクロドデカン(CAS:294‐92‐8)、または1,2‐ビス(メチルチオ)エタン(CAS:6628‐18‐8)のうちの少なくとも1つなどの混合エーテルアミンを含んでもよい。
【0055】
一部の実施形態において、二座の窒素を含むリガンドは、N,N,N’,N’‐テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)またはN,N,N’,N’‐テトラメチル‐1,3‐プロパンジアミン(TMPDA)である。一部の実施形態において、遷移金属ハロゲン化物化合物は、塩化コバルトN,N,N’,N’‐テトラメチル‐1,2‐エチレンジアミン(CoCl2(TMEDA))を含んでもよい。一部の実施形態において、遷移金属ハロゲン化物化合物は、臭化コバルトN,N,N’,N’‐テトラメチル‐1,2‐エチレンジアミン(CoBr2(TMEDA))を含んでもよい。一部の実施形態において、遷移金属ハロゲン化物化合物は、ヨウ化コバルトN,N,N’,N’‐テトラメチル‐1,2‐エチレンジアミン(CoI2(TMEDA))を含んでもよい。一部の実施形態において、遷移金属ハロゲン化物化合物は、塩化コバルトN,N,N’,N’‐テトラメチル‐1,3‐プロパンジアミン(CoCl2(TMPDA))を含んでもよい。一部の実施形態において、遷移金属ハロゲン化物化合物は、塩化コバルトN,N,N’,N’‐テトラメチル‐1,2‐エチレンジアミン(CoCl2(TMEDA))、塩化ニッケルテトラメチル‐1,3‐プロパンジアミン(NiCl2(TMPDA))、またはヨウ化ニッケルテトラメチル‐1,3‐プロパンジアミン(NiI2(TMPDA))のうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0056】
一部の実施形態において、遷移金属前駆体は、臭化コバルトN,N,N’,N’‐テトラメチル‐1,3‐プロパンジアミン(CoBr2(TMPDA))を含む。一部の実施形態において、遷移金属前駆体は、ヨウ化コバルトN,N,N’,N’‐テトラメチル‐1,3‐プロパンジアミン(CoI2(TMPDA))を含む。一部の実施形態において、遷移金属前駆体は、ヨウ化コバルトN,N,N’,N’‐テトラエチルエチレンジアミン(CoI2(TEEDA))を含む。
【0057】
本開示の一部の実施形態において、基材を遷移金属前駆体と接触させることは、約0.01秒~約60秒の時間期間の間、約0.05秒~約10秒の時間期間の間、約0.1秒~約5.0秒の時間期間の間、約0.5秒~約10秒の時間期間の間、約1秒~約30秒の時間期間の間、遷移金属前駆体を反応チャンバ内に提供することを含んでもよい。例えば、遷移金属前駆体は、約0.5秒の間、約1秒の間、約1.5秒の間、約2秒の間、または約3秒の間、反応チャンバ内に提供されてもよい。加えて、遷移金属前駆体のパルスを行っている間、遷移金属前駆体の流量は、2000sccm未満、または500sccm未満、または100sccm未満であってさえもよい。加えて、基材上に遷移金属前駆体を提供している間、遷移金属前駆体の流量は、約1~約2000sccm、約5~約1000sccm、または約10~約500sccmの範囲であってもよい。
【0058】
過剰な遷移金属前駆体および反応副産物(ある場合)は、例えば不活性ガスで排気することによって、表面から除去されてもよい。例えば、本開示の一部の実施形態において、方法はパージサイクルを含んでもよく、基材の表面は、おおよそ2.0秒未満の時間期間の間パージされる。過剰な遷移金属前駆体および任意の反応副産物は、反応チャンバと流体連通する排気システムによって生成された真空の助けを借りて除去されてもよい。
【0059】
一部の実施形態において、ヘテロレプティック遷移金属前駆体を使用してもよい。一例として、Co(btsa)2(THF)を含む遷移金属前駆体を使用してもよい。別の例において、Ni(btsa)2(THF)を含む遷移金属前駆体を使用してもよい。これらの遷移金属前駆体は、環酸素を通して遷移金属原子に結合されたテトラヒドロフラン(THF)環を含む。遷移金属前駆体は、2つのビス(トリメチルシリル)アミドリガンドをさらに含み、2つのビス(トリメチルシリル)アミドリガンドはそれらの窒素原子を通して同じ遷移金属原子に結合されている。
【0060】
第二の前駆体
一部の実施形態において、第二の前駆体は、カルコゲンを含む前駆体化合物を指してもよく、カルコゲンは硫黄、セレン、およびテルルを含む元素周期表の第16族からの元素である。一部の実施形態において、第二の前駆体はカルコゲンを含む。様々な第二の前駆体が、本開示による方法において使用されてもよい。一部の実施形態において、第二の前駆体はカルコゲン水素化物を含む。一部の実施形態において、第二の前駆体は、以下のリスト:H2S、H2Se、H2Te、(CH3)2S、(NH4)2S、ジメチルスルホキシド((CH3)2SO)、(CH3)2Se、(CH3)2Te、元素Sもしくは原子S、カルコゲン‐水素結合を含む他の前駆体(H2S2、H2Se2、H2Te2、または式R‐Y‐H(式中、Rは置換または非置換の炭化水素、例えばC1~C8アルキルまたは置換アルキル(アルキルシリル基、例えば直鎖状または分枝状C1~C5アルキル基など)とすることができ、YはS、Se、またはTeとすることができる)を有するカルコゲノールなど)から選択される。一部の実施形態において、第二の前駆体は、式R‐S‐H(式中、Rは置換または非置換の炭化水素、例えばC1~C8のアルキル基、より直鎖状または分枝状のC1~C5のアルキル基とすることができる)を有するチオールを含む。一部の実施形態において、第二の前駆体は、式R‐Se‐H(式中、Rは置換または非置換の炭化水素、例えばC1~C8のアルキル基、より直鎖状または分枝状のC1~C5のアルキル基とすることができる)を有するセレノールを含む。
【0061】
一部の実施形態において、第二の前駆体は、式(II):
(R3Si)2Y (II)
を有する化合物を含んでもよく、式中、R3Siはアルキルシリル基であり、YはS、Se、またはTeとすることができる。
【0062】
一部の実施形態において、第二の前駆体はSまたはSeを含む。一部の実施形態において、第二の前駆体はSを含む。一部の実施形態において、第二の前駆体はSを含まない。一部の実施形態において、第二の前駆体は元素硫黄などの元素カルコゲンを含んでもよい。一部の実施形態において、第二の前駆体はTeを含む。一部の実施形態において、第二の前駆体はTeを含まない。一部の実施形態において、第二の前駆体はSeを含む。一部の実施形態において、第二の前駆体はSeを含まない。一部の実施形態において、第二の前駆体はS、Se、またはTeを含む前駆体から選択される。一部の実施形態において、第二の前駆体は、式(III):
H2Sn (III)
(式中、nは4~10である)を有する化合物を含む。
【0063】
一部の実施形態において、好適な第二の前駆体は、任意の数の、カルコゲンを含む化合物を含んでもよい。一部の実施形態において、第二の前駆体は少なくとも1つのカルコゲン-水素結合を含んでもよい。一部の実施形態において、第二の前駆体はカルコゲンプラズマ、カルコゲン原子またはカルコゲンラジカルを含んでもよい。励起された第二の前駆体が望ましい一部の実施形態において、プラズマは反応チャンバ内または反応チャンバの上流で生成されてもよい。一部の実施形態において、第二の前駆体は、プラズマ、原子、またはラジカルなどの励起された第二の前駆体を含まない。一部の実施形態において、第二の前駆体は、H2Sなどのカルコゲン‐水素結合を含む第二の前駆体から形成されたカルコゲンプラズマ、カルコゲン原子、またはカルコゲンラジカルを含んでもよい。一部の実施形態において、第二の前駆体は、カルコゲンプラズマ、カルコゲン原子、またはカルコゲンラジカル(硫黄、セレンまたはテルルを含むプラズマ、好ましくは硫黄を含むプラズマなど)を含んでもよい。一部の実施形態において、プラズマ、原子、またはラジカルはテルルを含む。一部の実施形態において、プラズマ、原子、またはラジカルはセレンを含む。一部の実施形態において、第二の前駆体はテルル前駆体を含まない。
【0064】
一部の実施形態において、カルコゲンを含む気相前駆体の純度は、堆積した材料の組成に影響を与える場合があり、従って、カルコゲンを含む気相前駆体の高純度の供給源が利用されてもよい。一部の実施形態において、気相前駆体を含むカルコゲンは、95.0%以上の純度、または98.0%以上の純度、または99.0%以上の純度、または99.5%以上の純度を有してもよい。非限定的な一実施例として、第二の前駆体は、99.0%以上、または99.5%以上の純度の硫化水素(H2S)を含んでもよい。
【0065】
一部の実施形態において、第二の前駆体はニクトゲンを含む。一部の実施形態において、ニクトゲンはAs、Sb、およびBiから成る群から選択される。一部の実施形態において、ニクトゲンはAsおよびSbから成る群から選択される。一部の実施形態において、ニクトゲンはSbである。一部の実施形態において、ニクトゲンはAsである。一部の実施形態において、ニクトゲンはBiである。例えば、ニクトゲンを含む第二の前駆体はアルキルシリルニクチドを含んでもよい。
【0066】
一部の実施形態において、高純度の第二の前駆体を利用することに加えて、第二の前駆体ガスをさらに精製して、不要な不純物を除去してもよい。従って、本開示の一部の実施形態は、第二の前駆体内の水または酸素のうちの少なくとも1つの濃度を低減するために、反応チャンバに入る前にガス精製器を通して第二の前駆体を流すことをさらに含んでもよい。
【0067】
一部の実施形態において、第二の前駆体内の水濃度、または酸素濃度を、5原子%未満、または1原子%未満、または1000ppm未満、または100ppm未満、または10ppm未満、または1ppm未満、または100ppb未満、または10ppb未満、または1ppb未満にさえも低減してもよい。
【0068】
本開示をいかなる特定の理論に限定することなく、第二の前駆体内の水濃度または酸素濃度のうちの少なくとも1つの低減は、適切な堆積温度にて遷移金属酸化物相の堆積を防止する一方で、所望の組成を有する遷移金属カルコゲニド材料の堆積を可能にする場合がある。
【0069】
一部の実施形態において、第二の前駆体を反応チャンバ内に提供すること(すなわち、第二の前駆体に基材を曝露すること)は、0.1秒~2.0秒、または約0.01秒~約20秒、または約0.01秒~約60秒、または約0.01秒~約10秒の時間期間の間、第二の前駆体(例えば硫化水素)を基材上にパルスすることを含んでもよい。一部の実施形態において、第二の前駆体は、約40秒未満、または約30秒未満、または約20秒未満、または約10秒未満、または約5秒未満、または約3秒未満の間、反応チャンバ内に提供されてもよい。第二の前駆体を反応チャンバ内に提供中に、第二の前駆体の流量は、約100sccm未満、または約50sccm未満、または約25sccm未満であってもよい。例えば、第二の前駆体の流量は、約10sccm~約20sccm(15sccmなど)であってもよい。加えて、基材上に第二の前駆体を提供中に、第二の前駆体の流量は、約1sccm~約2000sccm、または約5sccm~約1000sccm、または約10sccm~約500sccmであってもよい。
【0070】
第二の前駆体は、基材上の、遷移金属を含む分子と反応してもよい。一部の実施形態において、第二の前駆体は硫化水素を含んでもよく、また反応は遷移金属硫化物を基材上に堆積させてもよい。
【0071】
還元剤
本開示の一部の実施形態において、本開示の例示的な周期的堆積方法は、基材を還元剤と接触させることを含む、追加的なプロセス工程を含んでもよい。こうした実施形態において、周期的堆積プロセスによって、遷移金属含有材を基材上に形成する方法が開示されている。方法は、基材を反応チャンバ内に提供することと、反応チャンバ内の付加リガンドに結合された遷移金属ハロゲン化物を含む遷移金属前駆体を提供することとを含む。方法は、第二の前駆体を反応チャンバ内に提供することと、遷移金属含有材を還元剤と接触させて、それによって元素遷移金属を形成することとをさらに含む。
【0072】
それ故に、一部の実施形態において、基材上の、遷移金属含有材は還元剤と接触している。一部の実施形態において、還元剤前駆体は、形成ガス(H2+N2)、アンモニア(NH3)、アンモニア(NH3)プラズマ、ヒドラジン(N2H4)、分子水素(H2)、水素原子(H)、水素プラズマ、水素ラジカル、水素励起種、アルコール、アルデヒド、カルボン酸、ボラン、もしくはアミン、三級ブチルヒドラジン(C4H12N2)、シラン(SiH4)、ジシラン(Si2H6)、トリシラン(Si3H8)、ゲルマン(GeH4)、ジゲルマン(Ge2H6)、ボラン(BH3)、およびジボラン(B2H6)、または有機還元剤のうちの少なくとも1つを含む。有機還元剤は、例えばアルコール、アルデヒド、またはカルボン酸を含んでもよい。
【0073】
還元剤は反応チャンバ内に提供されてもよく、また各堆積サイクルにて、すなわち遷移金属前駆体および第二の前駆体が毎回、反応チャンバ内に提供された後に、基材と接触してもよい。代替的に、還元剤は反応チャンバ内に提供されてもよく、また所定の数の堆積サイクルが実行された後に基材と接触してもよい。例えば、還元剤は、遷移金属カルコゲニドまたは遷移金属ニクチドを基材上に堆積する5、10、20、40、50または100サイクル毎の後に、反応チャンバ内に提供されてもよい。さらなる代替方法として、還元剤は堆積プロセスの終了時に反応チャンバ内に提供されてもよい。それ故に、所望の量の、遷移金属含有材が最初に堆積され、その後堆積した材料は還元剤に曝露される。一部の実施形態において、還元剤は反応チャンバに提供され、遷移金属前駆体とは別個に、かつ第二の前駆体とは別個に、基材と接触してもよい。
【0074】
一部の実施形態において、遷移金属含有材は、500℃未満、または400℃未満、または300℃未満、または250℃未満、または200℃未満で、または150℃未満の基材温度でさえも、還元剤に曝露されてもよい。一部の実施形態において、遷移金属含有材は、圧力が低減された雰囲気中で還元剤に曝露されてもよく、圧力は約0.001mbar~約10bar、または約1mbar~約1000mbarであってもよい。基材は、遷移金属含有材の堆積が実行される同じ反応チャンバ内で還元剤に曝露されてもよい。代替的に、基材は、異なる反応チャンバ内で還元剤に曝露されてもよい。異なる反応チャンバは、遷移金属含有材が中で堆積される反応チャンバと同じクラスタツールの一部であってもよい。
【0075】
図面
本開示は、図面に描写された以下の例示的な実施形態によってさらに説明されている。本明細書に示された図は、任意の特定の材料、構造体またはデバイスの実際の図であることを意味せず、本開示の実施形態を記述するための単なる概略的な表現にすぎない。当然のことながら、図内の要素は単純化および明瞭化のために例示されていて、必ずしも実寸に比例して描かれていない。例えば、図中の一部の要素の寸法は、本開示の例示された実施形態の理解の向上を助けるために他の要素と比較して誇張されている場合がある。図面に描写された構造体および装置は、追加の要素および詳細を含んでいることがあり、それらの要素および詳細は明確化のために省略されている場合がある。
【0076】
図1Aは、本開示による、遷移金属含有材を基材上に堆積させる方法100の例示的な一実施形態のプロセスフロー図である。方法において、遷移金属含有材は、周期的堆積プロセスによって基材上に堆積される。方法は基材を反応チャンバ内に提供すること102を含む。一部の実施形態において、基材はケイ素を含んでもよい。一部の実施形態において、基材は酸化ケイ素を含んでもよく、酸化ケイ素から本質的に成ってもよく、または酸化シリコンから成ってもよい。
【0077】
反応チャンバは、原子層堆積(ALD)反応器の一部を形成することができる。反応器は枚葉式反応器であってもよい。代替的に、反応器はバッチ反応器であってもよい。方法100の様々な段階は、単一の反応チャンバ内で実行されることができ、またはそれらはクラスタツールの反応チャンバなどの複数の反応器チャンバ内で実行されることができる。一部の実施形態において、方法100は、クラスタツールの単一の反応チャンバ内で実行されるが、他の前のもしくは後続の、構造体または装置の製造工程は、同じクラスタツールの追加的な反応チャンバ内で実行される。任意選択的に、反応チャンバを含む反応器には、基材および/または反応物質および/または前駆体のうちの1つ以上の温度を上昇させることによって反応を活性化させるためのヒーターを提供することができる。
【0078】
工程102中に、反応チャンバ104内に遷移金属前駆体を提供するために、および/または反応チャンバ106内に第二の前駆体を提供するために、基材を所望の温度および圧力にすることができる。反応チャンバ内の(例えば基材または基材支持体の)温度は、例えば約50℃~約350℃、約100℃~約300℃、約120℃~約170℃、または約150℃~約200℃とすることができる。さらなる一例として、反応チャンバ内の温度は、約275℃~約325℃、または約100℃~約225℃とすることができる。使用される温度は、前駆体によって選択されてもよい。例えば、CoCl2(TMEDA)を含む遷移金属前駆体を使用する場合、堆積温度は約175℃~約325℃の範囲であってもよい。例えば、堆積温度は180℃、200℃、225℃、250℃、275℃、または300℃であってもよい。NiCl2(TMPDA)が遷移金属前駆体として使用される場合、堆積温度は、約150℃~約280℃の範囲(165℃、175℃、185℃、225℃、または250℃など)が使用されてもよい。
【0079】
一部の実施形態において、本開示による堆積中の反応チャンバ内の圧力は、50mbar未満、または10mbar未満である。一部の実施形態において、本開示による堆積中の反応チャンバ内の圧力は、約5mbarである。
【0080】
本開示による方法の第一の堆積段階104において、遷移金属前駆体が反応チャンバ内に提供される。遷移金属前駆体は遷移金属化合物を含んでもよい。遷移金属化合物は、付加リガンドに結合された遷移金属ハロゲン化物を含んでもよい。一部の実施形態において、付加リガンドは二座窒素含有付加リガンドを含んでもよい。一部の実施形態において、二座窒素含有付加リガンドは、2つの窒素原子を含んでもよく、窒素原子の各々は、少なくとも1つの炭素原子に結合されている。一部の実施形態において、二座の窒素を含むリガンドは、N,N,N’,N’‐テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)またはN,N,N’,N’‐テトラメチル‐1,3‐プロパンジアミン(TMPDA)である。一部の実施形態において、遷移金属ハロゲン化物は遷移金属塩化物を含む。一部の実施形態において、遷移金属ハロゲン化物は遷移金属塩化物である。一部の実施形態において、遷移金属化合物は、CoCl2(TMEDA)およびNiCl2(TMPDA)のうちの1つを含む。一部の実施形態において、遷移金属化合物は、CoCl2(TMEDA)およびNiCl2(TMPDA)のうちの1つである。
【0081】
本開示による方法の第二の堆積段階106において、第二の前駆体が反応チャンバ内に提供される。一部の実施形態において、第二の前駆体はカルコゲンを含み、またカルコゲンは硫黄、セレン、およびテルルから成る群から選択される。一部の実施形態において、第二の前駆体はカルコゲンおよび水素を含む。一部の実施形態において、第二の前駆体はカルコゲン‐水素結合を含む。例えば、第二の前駆体はH2Sであってもよく、または第二の前駆体はH2Seであってもよい。一部の実施形態において、第二の前駆体はアルキル基を含む。一部の実施形態において、第二の前駆体は、H2S、H2Se、H2Te、(CH3)2S、(NH4)2S、(CH3)2SO、(CH3)2Se、および(CH3)2Teから成る群から選択される。
【0082】
一部の実施形態において、遷移金属前駆体は、遷移金属前駆体を反応チャンバの中に提供する前に加熱されてもよい。例えば、遷移金属前駆体は、約60℃~約180℃に(約100℃、約110℃、約120℃、約150℃、または約170℃などに)加熱されてもよい。非限定的な一実施例として、CoCl2(TMEDA)またはNiCl2(TMPDA)などの二座窒素を含む付加リガンド前駆体に結合された遷移金属ハロゲン化物は、約150℃に、約160℃に、または約170℃に加熱されてもよい。シリルアミドリガンドを含む遷移金属前駆体などの一部の他の遷移金属前駆体の場合は、より低い温度(約60℃または約80℃など)に加熱されてもよい。
【0083】
一部の実施形態において、第二の前駆体は、反応チャンバに第二の前駆体を提供する前に加熱されてもよい。一部の実施形態において、第二の前駆体は、反応チャンバに第二の前駆体を提供する前に周囲温度に保持されてもよい。一部の実施形態において、第二の前駆体の流れは、圧力調整器を通して、および/またはニードル弁によって調整されてもよい。これは、H2Sなどの高揮発性の第二の前駆体にとって特に利点を有する場合がある。一部の実施形態において、第二の前駆体は約40℃~約60℃(約50℃など)に加熱されてもよい。例えば、第二の前駆体がセレンまたはテルルを含む実施形態において、第二の前駆体は加熱されてもよい。
【0084】
遷移金属前駆体を提供する段階104、および第二の前駆体を提供する段階106は、任意の順序で実行されてもよい。遷移金属前駆体を提供する段階104、および第二の前駆体を提供する段階106は、堆積サイクルを構成し、遷移金属含有材の堆積を結果的にもたらしてもよい。一部の実施形態において、遷移金属含有材の堆積の2つの段階、すなわち遷移金属前駆体および第二の前駆体を反応チャンバ内に提供すること(104および106)は、繰り返されてもよい(ループ108)。こうした実施形態は幾つかの堆積サイクルを含む。堆積された遷移金属の厚さは、堆積サイクルの数を調整することによって調整されてもよい。堆積サイクル(ループ108)は、所望の遷移金属の厚さが達成されるまで繰り返されてもよい。例えば、約50、100、200、300、400、500、700、800、1,000、1,200、1,500、2,000、2,400、または3,000回の堆積サイクルを実行してもよい。
【0085】
非限定的な一実施例において、硫化コバルトは、酸化ケイ素含有材料(天然酸化物および熱酸化物など)の表面上に堆積されてもよい。遷移金属前駆体としてのCoCl2(TMEDA)と、第二の前駆体としてのH2S(例えば14sccmの流量を有する)とが使用されてもよい。CoCl2(TMEDA)に対して1秒のパルス時間、およびH2Sパルスに対して2秒のパルス時間を使用してもよく、また各後続の前駆体パルスは、1秒のパージによって分離されてもよい。基材は、天然の酸化ケイ素またはソーダ石灰ガラスを含んでもよく、また堆積温度は180℃~275℃であってもよい。堆積は、おおよそ5mbarのN2圧力下で実行されてもよい。
【0086】
堆積した硫化コバルト材料は、例えば70μΩcmの抵抗率を有してもよい。一部の実施形態において、材料の抵抗率は堆積温度の低下とともに増加する場合がある。さらに、材料の均一性は堆積温度に依存してもよく、一部の実施形態において275℃は、均一な硫化コバルト層を得るために好適な温度である場合がある。硫化コバルトはCo9S8相を含んでもよい。
【0087】
硫化コバルト材料の成長速度は、例えば約0.1~約1Å/サイクルであってもよい。例えば、硫化コバルトの成長速度は180℃の温度にて、例えば約0.2Å/サイクルであってもよく、また275℃の温度にて、約0.6Å/サイクル~約1Å/サイクルであってもよい。しかしながら、一部の実施形態において、例えば約3Å/サイクルの成長速度が観察される場合がある。成長速度は堆積プロセス中に変化する場合がある。より長いH2Sパルスは、堆積した材料の成長速度を増加させる場合がある。例えば、パルス長さは1秒~6秒の間で変化する場合がある。より長いパルス長さはまた、堆積した材料の抵抗率を低減する場合がある。例えば、より短いパルス長さで、硫化コバルト材料の抵抗率は約100μΩcmである場合があり、より長いパルス時間を使用することは、材料抵抗率を約70μΩcmに低減する場合がある。堆積した材料のS対Coの比は、パルス長さにかかわらず、変化しないまま(おおよそ0.9)である場合がある。
【0088】
一部の実施形態において、堆積した材料は、立方体Co9S8(コバルトペントランダイト)のみから本質的に成ってもよく、またはこれのみから成ってもよい。層結晶性は堆積温度の上昇とともに増大してもよい。低酸素含有量(1原子%未満、または0.5原子%未満)、低炭素含有量(2原子%未満、または1原子%未満)、低窒素含有量(0.5原子%未満)、および低水素含有量(1.5原子%未満)が、堆積した材料中に存在する場合がある。酸素は、堆積後酸化から由来する場合がある。
【0089】
一部の実施形態におい、連続的な材料層は、異なる厚さで観察される場合がある。例えば、一部の実施形態において、おおよそ3nmの厚さの材料は、連続的な層を形成する場合がある。これは、例えば10回の堆積サイクル後に観察される場合がある。一部の実施形態において、約7nmの材料は、連続的な層を形成する場合がある。これは、例えば50回の堆積サイクル後に観察される場合がある。本開示による硫化コバルト材料はまた、サファイア、雲母、GaN、ならびにAl2O3、Ir、およびTiO2などの異なるALD成長表面を含む、化学的に異なる基材上で成長する場合もある。
【0090】
酸化ケイ素を含む表面とは対照的に、硫化コバルト堆積は、Si‐H表面上に明白な核形成遅延を示す場合がある。例えば、連続的な層を得るために約250回の堆積サイクルがかかる場合がある。
【0091】
ある特定の実施形態において、275℃にてケイ素表面上におおよそ60nmの厚さに硫化コバルト層を成長させ、堆積した材料の安定性を試験するために熱処理されてもよい。総圧力30mbarを有する流れるN2雰囲気において、結晶性および相組成の変化は、少なくとも750℃への加熱の際に観察されない場合がある。それ故に、本開示の方法によって堆積された、Co9S8を含む層は、例えばコバルトまたは銅堆積のためのだけでなく、高温処理を用いる他の用途でも、シード層またはバリア層として使用されてもよい。動的な高真空下(約10-5mbar)で、Co9S8を含む層は、少なくとも600℃まで安定である場合がある。大気圧下の還元形成ガス(10%H2/90%N2)環境において、Co9S8層は、少なくともおおよそ400℃まで安定している場合がある。より高い温度にて、金属コバルトが形成し始める場合がある。層は、約475℃にて実質的に完全に元素コバルト(主に、hcp構造のCoからのわずかな寄与を有するfcc構造のCo)に変形される場合がある。周囲(酸化)雰囲気下で、堆積した材料のCo9S8は、約225℃まで安定なままであってもよく、また約250℃にてCo3S4に変換し始めてもよい。Co3O4の形成は、275℃で開始される場合があり、測定中に酸化物は、Co3S4が約575℃~725℃にて存在する唯一の相になるまで、様々な相(例えば、約300℃までCo3S4、約325℃~約375℃にてCo3S4およびCoS2、ならびに約400℃~約550℃にてCoSO4など)と共存してもよい。純粋な酸素の大気圧下で、高温挙動は周囲空気と同様である場合があるが、相転移の一部はわずかにより低い温度で生じる場合がある。
【0092】
さらなる例として、硫化ニッケル材料は、本明細書に提示された方法によって堆積されてもよい。多くの硫化ニッケルは、CoSxと同様の用途に使用されてもよい高導電性の材料である。従って、NiCl2(TMPDA)(Tソース=157℃)は、165℃~250℃の範囲の温度にて第二の前駆体としてH2Sを用いた堆積において遷移金属前駆体として使用されてもよい。NiCl2(TMPDA)およびH2Sに対して2秒のパルス時間を使用してもよい。例えば、硫化ニッケルは、165℃の温度にて0.6Å/サイクルの成長速度で堆積されてもよく、得られた、硫化ニッケルを含む材料は、40μΩcmの抵抗率を有してもよい。
【0093】
約165℃~約175℃の温度にて、硫化ニッケルを含む材料を、例えば0.6Å/サイクルの速度で成長させてもよく、結果としてもたらされる材料は例えば約40μΩcmの抵抗率を有してもよい。より低い成長速度が、約200℃~約250℃の温度で観察される場合がある一方で、材料の抵抗率は、例えば約100μΩcmに増加する場合がある。硫黄とニッケルの比は、約165℃~約250℃の温度範囲全体を通して、おおよそ1.0のままである場合がある。材料はβ‐NiSおよびNi9S8相を含んでもよい。
【0094】
最低温度で堆積した層は、主にβ‐NiSを含有する場合があり、その一方で温度を上昇させることは、Ni9S8相の量を増加させる場合がある。低酸素含有量(0.5原子%未満)、低炭素含有量(約0.5原子%以下)、低窒素含有量(0.5原子%未満)、および低水素含有量(1.5原子%未満、または1原子%未満)が、堆積した材料中に存在する場合がある。一部の実施形態において、O、C、N、およびH不純物の総量は、約2原子%以下であってもよい。一部の実施形態において、堆積した硫化ニッケル材料は、材料が周囲雰囲気中に保存されている場合でさえも、明白な表面酸化を含有しない場合がある。
【0095】
NiSxは、第一の表面として、Si、SiO2、SLG、サファイア(α‐Al2O3)、雲母、およびALD堆積Ir、SnS2、およびTiNを含む、様々な基材上に堆積されてもよい。しかしながら、硫化ニッケル材料は、第二の表面として、Si‐H、ALD成長Al2O3、ALD成長Ta2O5、ALD成長ZrO2、ALD成長Nb2O5、ALD成長TiO2、またはALD成長ZnS上で容易に成長しない場合がある。一部の実施形態において、第一の表面上で50nmのNiSxを成長させることが可能である場合があり、その一方で第二の表面上に堆積がない。一部の実施形態において、第二の表面上に4または6nmなどの幾らかのナノメートルの堆積があってもよく、その一方で第一の表面上に約50nmの堆積した材料がある。
【0096】
一部の実施形態において、導電率が250μΩcmのおおよそ6nmの厚さの層が、天然の酸化物含有酸化ケイ素上に100回の堆積サイクルで堆積されてもよい。層の抵抗率は、層の厚さの増加とともに減少してもよい。例えば、約20nmの層の厚さで、抵抗率は約60μΩcmであり、約45nmの層の厚さで、約40μΩcmである場合がある。
【0097】
一部の実施形態において、165℃にて堆積したおおよそ50nmの厚さの層は最初に、Ni9S8成分が存在するβ‐NiSを主として含む場合がある。大気圧でのN2雰囲気下で、約400℃までの温度でβ‐NiS相が存在してもよく、また約475℃までNi9S8が存在してもよい。この温度を上回ると、α‐Ni7S6が形成されてもよく、また約575℃以上の温度にて、実質的に唯一の相であってもよい。NiSiは、600℃を上回る温度で形成されてもよく、また本開示の特定の理論に限定することなく、その存在は基材との反応に起因する場合がある。Ni3S2も形成される場合があり、また材料が室温まで冷却される時に存在する場合があるため、硫黄は硫化ニッケル層から完全に失われない場合がある。
【0098】
おおよそ10-5mbarの動的な高真空において、N2と比較してより低い温度にて層変形が起こる場合がある。β‐NiS相およびNi9S8相は、例えばそれぞれ約350℃および375℃で消失する場合があり、またNiSiが約450℃で形成し始めるのとともに、約375℃~約475℃でα‐Ni7S6が観察される場合がある。堆積した材料を約750℃に加熱し、室温に戻るまで冷却した後、NiSiに加えて、Ni3S2が存在する場合がある。
【0099】
大気圧下の還元形成ガス(10%H2、90%N2)環境において、β‐NiSは約300℃にて還元され始め、Ni9S8を形成する場合がある。金属ニッケル(fcc構造)は、約350℃にて形成し始める場合があり、また約425℃から上で唯一の相として存在する場合がある。それ故に、NiSx層は、Co9S8よりも簡単に元素金属に還元される場合がある。
【0100】
一部の実施形態において、Ni9S8は、温度が約250℃に達すると消失する場合があり、実質的にβ‐NiSのみが300℃まで存在したままになり、ここでNi3S4成分が形成し始める。六角形のα‐NiSは、325℃にて形成し始めてもよく、また375℃~450℃にて層は、主としてα‐NiSを含んでもよいが。NiOが周囲雰囲気中で約350℃を上回る温度にて出現し始める場合がある。温度が約475℃に達する時、α‐NiS相は消失する場合がある。またNiSO4相は約500℃~約550℃で存在する場合がある。より高い温度にて、NiSO4の分解後、硫黄を含む相は層から欠如する場合がある。周囲雰囲気の代わりに純粋なO2が使用される場合、同様の相転移が起こる場合があるが、これは周囲温度と比較して約25℃~約50℃より低い温度で起こりうる。
【0101】
酸化条件下で、NiSx層は、Co9S8よりも安定である場合があり、これは約275℃にて他の硫化物相に変形し始める場合がある。酸化物形成のための閾値温度は、Co9S8と比較して、NiSxでは約100℃より高い場合がある(275℃と比較して375℃)。
【0102】
別の非限定的な実施例において、遷移金属セレン化物および遷移金属テルル化物が堆積されてもよい。CoCl2(TMEDA)およびNiCl2(TMPDA)は、Se(SiEt3)2およびTe(SiEt3)2とともに第二の前駆体として使用されて、それぞれのセレン化物およびテルル化物を堆積させてもよい。
【0103】
1.0に近いSe対Coの原子比を有するセレン化コバルト層を堆積させるために、CoCl2(TMEDA)を使用することが可能である。180℃の堆積温度にて、層は、おおよそ50μΩcmの抵抗率を有してもよい。225℃または275℃のより高い堆積温度を使用する場合、幾らかのCoSeを有する主に結晶性のCo9Se8を含む材料が達成される場合がある。
【0104】
CoCl2(TMEDA)およびTe(SiEt3)2を使用して、約180℃~約275℃の温度にて、テルル化コバルト材料を基材上に堆積してもよい。材料は結晶性であってもよく、また例えば、六角形のCoTe相、および場合によってCo1.67Te2相を含んでもよい。堆積した材料は、おおよそ120μΩcmの抵抗率を有してもよい。
【0105】
テルル化ニッケル材料を基材上に堆積させるために、NiCl2(TMPDA)およびTe(SiEt3)2を使用してもよい。堆積温度は、約165℃から約200℃の間で変化してもよい。
【0106】
一部の実施形態において、周期的堆積プロセスは、遷移金属前駆体および第二の前駆体を交互に、かつ逐次的に反応チャンバ内に提供することを含む。一部の実施形態において、反応チャンバは、
図1Bに描写の通り、前駆体と前駆体の間でパージされる105、107。こうした実施形態において、堆積サイクルは、工程104、105、106、および107を含むと考えられる場合がある。上記の通り、堆積サイクルは、所望の遷移金属含有材の厚さを達成するために、何回も繰り返されてもよい108。
【0107】
1回のサイクル中に堆積した、遷移金属含有材の量(サイクル当たりの成長)は、温度、前駆体パルス長さおよび流れ速度などのプロセス条件に依存して変化する。サイクル当たりの成長の速度は、例えば約0.01Å/サイクル~約3Å/サイクル、または約0.05Å/サイクル~約2Å/サイクル、0.1Å/サイクル~約1.5Å/サイクル(約0.2Å/サイクル~約1.2Å/サイクル、または約0.3Å/サイクル~約1.5Å/サイクルなど)であってもよい。例えば、成長速度は、約0.4Å/サイクル、0.5Å/サイクル、0.7Å/サイクル、0.8Å/サイクル、1.0Å/サイクル、または1.1Å/サイクルであってもよい。堆積条件、堆積サイクル数などに依存して、変化する厚さの、遷移金属含有材層を堆積してもよい。例えば、遷移金属含有材は、おおよそ0.2nm~90nm、または約1nm~50nm、または約0.5nm~25nm、または約1nm~50nm、または約10nm~120nmの厚さを有してもよい。遷移金属含有材は、例えばおおよそ0.5nm、1nm、2nm、3nm、5nm、6nm、8nm、10nm、15nm、20nm、25nm、30nm、35nm、40nm、50nm、70nm、85nm、または100nmの厚さを有してもよい。所望の厚さは、問題の用途に従って選択されてもよい。一部の実施形態において、本開示による方法によって、薄い実質的に連続的な層を堆積させてもよい。
【0108】
ある特定の用途において、薄い実質的に連続的な薄い層が望ましい。一部の実施形態において、遷移金属含有材は、10nm以下の厚さで実質的に連続的な層を形成する。一部の実施形態において、遷移金属含有材は、10nm以下の厚さで連続的な層を形成する。一部の実施形態において、実質的に連続的な層は、10回前後の堆積サイクルで形成されてもよい。一部の実施形態において、実質的に連続的な層は、5nm未満の厚さで形成されてもよい。例えば、実質的に連続的な硫化コバルト層は、4nm未満の厚さで形成されてもよい。
【0109】
遷移金属前駆体および第二の前駆体は、別個の工程(104および106)で反応チャンバ内に提供されてもよい。
図1Bは、工程104および106がパージ工程105および107によって分離されている、本開示による一実施形態を図示する。こうした実施形態において、堆積サイクルは1つ以上のパージ工程103、105を含む。パージ工程中に、前駆体および/または反応物質は、アルゴン(Ar)、窒素(N
2)、またはヘリウム(He)などの不活性ガス、および/または真空圧によって互いに時間的に分離されることができる。遷移金属前駆体および/または第二の前駆体の分離は代替的に、空間的であってもよい。
【0110】
反応チャンバをパージすること103、105は、遷移金属前駆体と第二の前駆体の間の気相反応を防止または緩和する場合があり、また可能性のある自己飽和表面反応を可能にする場合がある。何らかの過剰な化学物質および反応副産物がある場合に、基材が次の反応性化学物質と接触する前に、例えば反応チャンバをパージすることによって、または基材を移動させることによって、基材の表面から除去されてもよい。しかしながら、一部の実施形態において、遷移金属前駆体と第二の前駆体に別々に接触するように、基材を移動させる場合がある。一部の実施形態において、反応が自己飽和する場合があるので、基材の厳密な温度制御、および前駆体の正確な投与量制御は必要とされない場合がある。しかしながら、基材温度は、入射ガス種が単層または多重単層に凝縮しないようにするだけでなく、表面上で熱分解しないようにする温度であることが好ましい。
【0111】
方法100を実行する時、遷移金属含有材は基材の上に堆積される。堆積プロセスは周期的堆積プロセスであってもよく、また周期的CVD、ALD、またはハイブリッド周期的CVD/ALDプロセスを含んでもよい。例えば、一部の実施形態において、特定のALDプロセスの成長速度は、CVDプロセスと比較して低い場合がある。成長速度を増加させるための1つのアプローチは、ALDプロセスにおいて典型的に用いられる温度よりも高い堆積温度で動作することであってもよく、結果として化学蒸着プロセスの一部の部分において、依然として遷移金属前駆体および第二の前駆体の逐次的な導入の利点を生かす。こうしたプロセスは周期的CVDと呼ばれる場合がある。一部の実施形態において、周期的CVDプロセスは、反応チャンバの中への2つ以上の前駆体の導入を含んでもよく、反応チャンバ内の2つ以上の前駆体の間に重なる時間期間がある場合があり、結果として堆積のALD成分と堆積のCVD成分の両方をもたらす場合がある。これはハイブリッドプロセスと呼ばれる。さらなる実施例によると、周期的堆積プロセスは、1つの反応物質または前駆体の連続的な流れと、反応チャンバの中へのその他の化学物質成分の定期的なパルスとを含んでもよい。工程104中の反応チャンバ内の温度および/または圧力は、工程102に関連して上述した圧力および温度のいずれかと同一または類似であることができる。
【0112】
一部の実施形態において、遷移金属前駆体は基材表面104と接触し、過剰な遷移金属前駆体は、不活性ガスまたは真空105によって部分的にまたは実質的に完全に除去され、第二の前駆体は、遷移金属前駆体を含む基材表面と接触する。遷移金属前駆体は、1つ以上のパルス104で基材表面と接触されてもよい。言い換えれば、遷移金属前駆体のパルス104は繰り返されてもよい。基材表面上の遷移金属前駆体は第二の前駆体と反応して、遷移金属含有材を基材表面上に形成してもよい。また、第二の前駆体のパルス106は繰り返されてもよい。一部の実施形態において、第二の前駆体は最初に反応チャンバ内に提供されてもよい106。その後、反応チャンバはパージされてもよく105、また遷移金属前駆体は1つ以上のパルス104で反応チャンバ内に提供されてもよい。
【0113】
材料の適用性は、抵抗率などのその電気的特性に依存してもよい。一部の実施形態において、本開示による、遷移金属含有材層は、200μΩcm未満の抵抗率を有してもよい。例えば、本開示による、遷移金属含有材層の抵抗率は、150μΩcm未満、100μΩcm未満、または70μΩcm未満、または50μΩcm未満であってもよい。当該抵抗率を有する層の厚さは、例えば約20nm、約30nm、約40nm、約50nm、または約80nmであってもよい。例えば、CoCl2(TMEDA)およびH2Sを使用することによって硫化コバルトを堆積させる場合、遷移金属カルコゲニドを含む層で100μΩcm未満の抵抗率が達成されてもよい。こうした層の厚さは、約40nm~約70nmであってもよい。遷移金属含有材は、Co9S8を含んでもよく、これから本質的に成る、またはこれから成る。別の非限定的な実施例として、NiCl2(TMPDA)およびH2Sを使用することによって硫化ニッケルが堆積される場合、遷移金属カルコゲニドを含む層で50μΩcm未満の抵抗率が達成されてもよい。こうした層の厚さは、約25nm~約60nmであってもよい。遷移金属含有材は、β‐NiSおよび/またはNi9S8を含んでもよく、これから本質的に成ってもよく、またはこれから成ってもよい。一部の実施形態において、遷移金属カルコゲニドを含む層の抵抗率は、堆積温度に依存する場合がある。ある特定の場合において、より低い堆積温度でより低い抵抗率が達成される場合がある。一部の他の場合において、効果は逆転し、堆積温度の低下とともに抵抗率は増加する。一部の実施形態において、本開示による遷移金属カルコゲニドを含む層の電気抵抗率は、50nmの層厚さで100μΩcm未満である。一部の実施形態において、本開示による硫化ニッケルを含む層の電気抵抗率は、20nmの層の厚さで100μΩcm未満である。一部の実施形態において、本開示による硫化ニッケルを含む層の電気抵抗率は、50nmの層の厚さで50μΩcm未満である。
【0114】
還元またはアニーリングなどの追加的な処理工程は堆積後に、遷移金属含有材上で実行されてもよい。例えば、一部の実施形態において、アニールは、遷移金属カルコゲニドを所望の相に変換するために実行されてもよい。例えば、約400℃~約500℃の温度にて硫化ニッケル層をアニーリングすることは、実質的にNi9S8および/またはα‐Ni7S6のみを含む層を得ることを可能にする場合がある。一部の実施形態において、本開示による、遷移金属カルコゲニドを含む層(硫化コバルト層など)は、高温において安定である場合がある。一部の実施形態において、本開示による、遷移金属含有材は、コバルトまたは銅のためのシード層として使用されてもよい。一部の実施形態において、本開示による、遷移金属含有材は、コバルトまたは銅のためのバリア層として使用されてもよい。一般的に、本開示による方法によって堆積された、遷移金属含有材は、熱履歴が高い用途において使用可能である場合がある。
【0115】
図2は、本開示の選択的な一実施形態の概略図である。工程102中に提供される基材200は、第一の材料を含む第一の表面202と、第二の材料を含む第二の表面204とを含んでもよい。
図2の例示的な実施形態において、第一の材料を有する第一の表面202と、第二の材料を含む第二の表面204とを備える基材200が描写されている。基材200は表面の下に追加的な層を備えてもよい。パネルa)において、基材の表面は、第一の表面202および第二の表面204によって形成されている。第一の表面202は、第一の材料を含む、これから本質的に成る、またはこれから成る。第二の表面204は、第二の材料を含む、これから本質的に成る、またはこれから成る。第一の材料と第二の材料は異なる材料である。
図2の図において、第一の表面202および第二の表面204は、同じ垂直方向の高さにある。しかしながら実際には、第一の表面202および第二の表面204は異なる高さにあることが可能である。
【0116】
図2のパネルb)において、本開示による、遷移金属含有材206は、第一の表面202上に選択的に堆積されている。遷移金属含有材206の堆積は、1回以上の堆積サイクルで行われてもよい。
【0117】
一部の実施形態において、第一の材料は第一の誘電材料を含む。一部の実施形態において、第一の材料は第一の金属を含む。一部の実施形態において、第二の材料は第二の誘電材料を含む。第二の誘電体材料は第一の誘電体材料と異なる。一部の実施形態において、第二の材料は第二の金属を含む。第二の金属は第一の金属と異なる。それ故に、一部の実施形態において、第一の材料は第一の誘電体材料または第一の金属を含み、第二の材料は第二の誘電体材料または第二の金属を含む。一部の実施形態において、第一の表面202は、第一の材料から本質的に成る、または第一の材料から成る。一部の実施形態において、第二の表面204は、第二の材料から本質的に成る、または第二の材料から成る。
【0118】
一部の実施形態において、第一の材料は天然の酸化ケイ素、熱酸化ケイ素、ソーダ石灰ガラス、金属(イリジウムなど)、金属硫化物(硫化スズなど)、または金属窒化物(窒化チタンなど)を含む。一部の実施形態において、第一の表面はルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、オスミウム(Os)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、または金(Au)を含んでもよい。
【0119】
一部の実施形態において、第二の材料はSi‐H、金属酸化物(酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、またはチタンなど)、金属硫化物(硫化亜鉛など)を含む。一部の実施形態において、第二の材料は、その場で堆積した材料である。その場で堆積した材料は本明細書において、それが堆積した雰囲気以外の他の雰囲気に曝露されていない材料を意味する。例えば、その場で堆積した材料は周囲雰囲気に曝露されていない。別の実施例として、その場で堆積した材料は窒素雰囲気下で維持されている。一実施形態において、第二の材料は、その場で堆積した酸化アルミニウム(Al2O3)である。
【0120】
図3は、遷移金属含有材を基材上に堆積するための、本開示による堆積アセンブリ30の一実施形態の概略図である。
【0121】
堆積アセンブリ30を使用して、本開示による方法を実行し、かつ/または本開示による構造体またはデバイス部分を形成することができる。例示した実施例において、堆積アセンブリ30は、基材を保持するように配置構成された1つ以上の反応チャンバ32と、遷移金属前駆体および/または第二の前駆体を反応チャンバ32の中に提供するように配置構成された前駆体インジェクターシステム33とを含む。反応チャンバ32は、ALDまたはCVD反応チャンバなどの任意の好適な反応チャンバを備えることができる。堆積アセンブリ30は、反応チャンバ内の温度を50℃~350℃に制御するように配置構成されたヒーターを備えてもよい。
【0122】
堆積アセンブリは、遷移金属前駆体を収容および蒸発するように配置構成された前駆体容器331をさらに含み、機能を追加する。堆積アセンブリ400は、前駆体インジェクターシステム401を介して反応チャンバ402に前駆体を提供して、本開示による基材上に酸化ケイ素を堆積させるように配置構成されている。
【0123】
堆積アセンブリ30の前駆体インジェクターシステム33は、第二の前駆体供給源332、任意選択的なパージガス供給源333、排気源34、およびコントローラ35をさらに備える。遷移金属前駆体供給源331は、容器、および本開示に記載の通りの1つ以上の遷移金属前駆体を、単独で、または1つ以上のキャリア(例えば不活性)ガスと混合して含むことができる。第二の前駆体供給源332は、容器、および本開示による1つ以上の第二の前駆体を、単独で、または1つ以上のキャリアガスと混合して含むことができる。一方または両方の容器は、本開示による、遷移金属前駆体または第二の前駆体をそれぞれ蒸発させるように配置構成された気化器を備えてもよい。気化器は、遷移金属前駆体または第二の前駆体を、それぞれ好適な温度にて気化させるように配置構成されてもよい。遷移金属前駆体にとって好適な温度は、例えば50℃~350℃であってもよい。パージガス供給源333は、本明細書に記載の通りの1つ以上の不活性ガスを含むことができる。3つのガス供給源331~333を有して例示されているものの、堆積アセンブリ30は任意の好適な数のガス供給源を含むことができる。ガス供給源331~333は、各々がフローコントローラ、弁、ヒーター、およびこれに類するもの含むことができるライン334~336を介して反応チャンバ32に連結されることができる。堆積設備30は、反応チャンバ30内の圧力を排気して下げるように配置構成されたポンプを含んでもよい。ポンプは排気源34内に備えられてもよい。排気源34は1つ以上の真空ポンプを備えてもよい。
【0124】
コントローラ35は、弁と、マニホールドと、ヒーターと、ポンプと、堆積アセンブリ30内に含まれる他の構成要素とを動作させるための電子回路およびソフトウェアを含む。こうした回路および構成要素は、1つ以上の前駆体、反応物質、およびパージガスを、それぞれの供給源331~333から導入するように動作する。コントローラ35は、ガスパルスシーケンスのタイミング、基材および/または反応チャンバの温度、反応チャンバ内の圧力、ならびに様々な他の動作を制御して、堆積アセンブリ30の適切な動作を提供することができる。コントローラ35は、前駆体、反応物質、およびパージガスの反応チャンバ32の中へ、および外への流れを制御するために、弁を電気的にまたは空気圧で制御する制御ソフトウェアを含むことができる。コントローラ35は、ある特定のタスクを実行するソフトウェアまたはハードウェア構成要素などのモジュールを含むことができる。モジュールは有利なことに、制御システムのアドレス指定可能な記憶媒体上に常駐するように構成されることができ、かつ1つ以上のプロセスを実行するように構成されることができる。
【0125】
異なる数および種類の前駆体供給源ならびにパージガス供給源を含む、堆積アセンブリ30の他の構成が可能である。さらに、当然のことながら、反応チャンバ32の中にガスを適切に供給するという目的を達成するために使用されてもよい、弁、導管、前駆体供給源、およびパージガス供給源の多くの配置がある。さらに、アセンブリの概略図として、例示を単純化のために多くの構成要素が省略されていて、こうした構成要素としては、例えば様々な弁、マニホールド、精製器、ヒーター、容器、通気孔、および/またはバイパスだけでなく、安全機能も挙げられてもよい。
【0126】
堆積アセンブリ30の動作中に、半導体ウエハ(図示せず)などの基材は、例えば基材取り扱いシステムから反応チャンバ32に移送される。基材(複数可)が反応チャンバ32に移送されると、ガス供給源331~333からの1つ以上のガス(前駆体、キャリアガス、および/またはパージガスなど)は、反応チャンバ32の中に導入される。
【0127】
上述の本開示の例示的な実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその法的等価物によって定義される、本発明の実施形態の単なる実施例であるため、本発明の範囲を限定しない。いかなる均等の実施形態も、本発明の範囲内にあることが意図される。本開示の様々な修正は、記述された要素の代替的な有用な組み合わせなど、本明細書に示されたかつ記載されたものに加えて、記述から当業者に明らかになる場合がある。こうした修正および実施形態もまた、添付の特許請求の範囲内に入ることが意図される。
【手続補正書】
【提出日】2022-03-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期的堆積プロセスによって基材上に、遷移金属含有材を形成する方法であって、
基材を反応チャンバ内に提供することと、
遷移金属化合物を含む遷移金属前駆体を前記反応チャンバ内に提供することと、
前記反応チャンバに第二の前駆体を提供することと、を含み、
前記遷移金属化合物が、付加リガンドに結合された遷移金属ハロゲン化物を含み、前記第二の前駆体がカルコゲンまたはニクトゲンを含む、方法。
【請求項2】
前記付加リガンドが、二座の窒素を含む付加リガンドである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記二座の窒素を含む付加リガンドが2つの窒素原子を含み、各窒素原子が少なくとも1つの炭素原子に結合されている、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記遷移金属含有材の遷移金属が第1列遷移金属である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記遷移金属含有材の遷移金属がMn、Fe、Co、Ni、Cu、およびZnから成る群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記遷移金属含有材の遷移金属がCoおよびNiから成る群から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記遷移金属ハロゲン化物が遷移金属塩化物を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記遷移金属化合物がCoCl2(TMEDA)とNiCl2(TMPDA)のうちの1つを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第二の前駆体がカルコゲンを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記カルコゲンが硫黄、セレン、およびテルルから成る群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第二の前駆体がH2S、H2Se、H2Te、(CH3)2S、(NH4)2S、(CH3)2SO、(CH3)2Se、(CH3)2Te、Se(SiEt3)2、およびTe(SiEt3)2から成る群から選択される、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記第二の前駆体がヒ素、アンチモン、およびビスマスから成る群から選択されるニクトゲンを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第二の前駆体がアルキル基を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記周期的堆積プロセスが、前記遷移金属前駆体および前記第二の前駆体を前記反応チャンバ内で交互かつ逐次的に提供することを含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記基材が、第一の材料を含む第一の表面と第二の材料を含む第二の表面とを備え、前記遷移金属含有材が、前記第二の表面に対して前記第一の表面上に選択的に堆積される、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記第一の材料が第一の誘電材料または第一の金属を含み、前記第二の材料が第二の誘電材料または第二の金属を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第一の材料が天然の酸化ケイ素、熱酸化ケイ素、ソーダ石灰ガラス、イリジウムなどの金属、硫化スズなどの金属硫化物、または窒化チタンなどの金属窒化物を含む、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記第二の材料がSi‐H、または酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化チタンなどの金属酸化物、または硫化亜鉛などの金属硫化物を含む、請求項15から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
周期的堆積プロセスによって基材上に、遷移金属含有材を形成する方法であって、
基材を反応チャンバ内に提供することと、
付加リガンドに結合された遷移金属ハロゲン化物を含む遷移金属前駆体を前記反応チャンバ内に提供することと、
第二の前駆体を前記反応チャンバに提供することと、
前記遷移金属含有材を還元剤と接触させることによって元素遷移金属を形成することと、を含む方法。
【請求項20】
前記還元剤が形成ガス(H2+N2)、アンモニア(NH3)、アンモニア(NH3)プラズマ、ヒドラジン(N2H4)、分子水素(H2)、水素原子(H)、水素プラズマ、水素ラジカル、水素励起種、アルコール、アルデヒド、カルボン酸、ボラン、アミン、三級ブチルヒドラジン(C4H12N2)、シラン(SiH4)、ジシラン(Si2H6)、トリシラン(Si3H8)、ゲルマン(GeH4)、ジゲルマン(Ge2H6)、ボラン(BH3)、およびジボラン(B2H6)のうちの少なくとも1つを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
遷移金属含有材を周期的堆積方法によって基材上に堆積させるための気相堆積アセンブリであって、
前記基材を保持するように配置構成されている1つ以上の反応チャンバと、
付加リガンドに結合された遷移金属ハロゲン化物を含む遷移金属前駆体および/または第二の前駆体を前記反応チャンバ内に気相で提供するように配置構成されている前駆体インジェクターシステムと、
前記付加リガンドに結合された遷移金属ハロゲン化物を含む遷移金属前駆体を収容および蒸発させるように配置構成された遷移金属前駆体容器と、
前記第二の前駆体を収容および蒸発させるように配置構成された第二の前駆体容器と、を備え、
前記気相堆積アセンブリが、前記前駆体インジェクターシステムを介して前記反応チャンバに前記遷移金属前駆体および/または第二の前駆体を提供して、遷移金属含有材を前記基材上に堆積させるように配置構成されている、気相堆積アセンブリ。
【請求項22】
前記基材上に堆積した遷移金属含有材を還元するために還元剤を収容および蒸発させるように配置構成されている還元剤容器を備え、前記気相堆積アセンブリが前記還元剤を前記前駆体インジェクターシステムを介して前記反応チャンバに提供して前記基材上に元素遷移金属を形成するように配置構成されている、請求項21に記載の気相堆積アセンブリ。
【外国語明細書】