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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022123980
(43)【公開日】2022-08-25
(54)【発明の名称】センサ装置
(51)【国際特許分類】
   G01P 1/02 20060101AFI20220818BHJP
【FI】
G01P1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021021476
(22)【出願日】2021-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥山 賢人
(57)【要約】
【課題】ハウジングが周囲の湿気を吸収することを抑制することができるセンサ装置を提供する。
【解決手段】センサ装置1は、物理量を電気信号に変換する検出部2と、検出部2を埋設した樹脂製のハウジング6と、ハウジング6の表面に形成された防水性を有するコーティング層7と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理量を電気信号に変換する検出部と、
前記検出部を埋設した樹脂製のハウジングと、
前記ハウジングの表面に形成された防水性を有するコーティング層と、を備える
センサ装置。
【請求項2】
前記検出部は、検出素子を含む検出本体部と前記検出本体部から引き出された複数の接続端子とを備え、
前記検出本体部は、前記ハウジングにおけるセンサ軸方向の先端側の端部に埋設されており、
前記コーティング層は、前記検出本体部におけるセンサ軸方向の基端側の端部の位置から前記先端側に至る前記ハウジングの表面の全体に少なくとも形成されている、
請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項3】
前記コーティング層は、前記検出本体部の前記基端側の端部の位置から前記先端側の領域に、厚みが最大となる部位を有する、
請求項2に記載のセンサ装置。
【請求項4】
前記検出部に電気的に接続されるとともに、一部が前記ハウジングに埋設されたケーブルをさらに備え、
前記コーティング層は、前記ハウジングの表面から前記ハウジングから露出した前記ケーブルの表面までにわたって連続的に形成されている、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項5】
前記検出部は、車輪の回転速度を検出するために用いられる、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車輪の回転速度を検出する車輪速センサが開示されている。特許文献1に記載の車輪速センサにおいては、車輪の回転速度を検出するためのホールICが、樹脂製のハウジング(特許文献1に記載の樹脂被覆)内に埋設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-209197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
樹脂は湿気を吸収する性質(すなわち吸湿性)を有するところ、特許文献1に記載の車輪速センサにおいては、樹脂製のハウジングがその周囲の湿気を吸収することが懸念される。特に車輪速センサが高温多湿の環境下で長時間使用された場合等においては、ハウジングの吸湿が進みやすく、ハウジングが膨張してハウジング内に埋設されたホールIC等の電子部品を圧迫したり、ハウジング内に埋設されたホールICのリード線等の通電部品に水分が付着してイオンマイグレーションが発生したりすることが懸念される。
【0005】
本発明は、前述の事情に鑑みてなされたものであり、ハウジングが周囲の湿気を吸収することを抑制することができるセンサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記の目的を達成するため、物理量を電気信号に変換する検出部と、前記検出部を埋設した樹脂製のハウジングと、前記ハウジングの表面に形成された防水性を有するコーティング層と、を備えるセンサ装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ハウジングが周囲の湿気を吸収することを抑制することができるセンサ装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施の形態における、センサ装置を備えた車輪軸受装置の全体構造を示す断面図である。
図2】第1の実施の形態における、センサ装置の側面図である。
図3】第1の実施の形態における、センサ装置の軸方向及びハウジングフランジの長手方向の双方に平行なセンサ装置の断面図である。
図4】第1の実施の形態における、センサ装置の軸方向及びハウジングフランジの幅方向の双方に平行なセンサ装置の断面図である。
図5】第2の実施の形態における、センサ装置の断面図である。
図6】第3の実施の形態における、センサ装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態について、図1乃至図4を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
【0010】
(車輪軸受装置10)
図1は、センサ装置1を備えた車輪軸受装置10の全体構造を示す断面図である。本形態において、センサ装置1は、車輪の回転速度を検出するための車輪速センサであり、車輪軸受装置10に組み込まれる。本形態においては、まずセンサ装置1を含めた車輪軸受装置10の概要を説明し、次にセンサ装置1の詳細を説明する。
【0011】
車輪軸受装置10は、内輪11と外輪12と複数の転動体13と回転検出装置14とを備える。内輪11は、円筒状の内輪本体部111と、図示しない車輪が取り付けられる内輪フランジ112とを有する。内輪本体部111の内周部には、図示しないドライブシャフトを内輪11の回転軸Aが延在する方向に連結するためのスプライン嵌合部111aが形成されている。内輪フランジ112は、内輪本体部111から内輪本体部111の外周側に張り出すよう形成されている。内輪フランジ112には、車輪を取り付けるための図示しないボルトを挿通されるためのボルト挿通孔112aが複数形成されている。内輪本体部111を外周側から囲むように外輪12が配されている。
【0012】
外輪12は、略円筒状に形成されており、懸架装置を介して車体に連結されたナックル15に複数のボルトB1を用いて固定されている。なお、図1においては、複数のボルトB1のうちの1つのみを示している。内輪11と外輪12とは、環状の空間を介して内輪11の径方向に対向しており、当該環状の空間に複数の球状の転動体13が配されている。外輪12はナックル15に対して回転不能に構成されている一方、内輪11はナックル15及び外輪12に対して回転可能に構成されている。内輪11の回転軸Aが延在する方向における前記環状の空間の両側は、シール部材16によって封止されている。
【0013】
回転検出装置14は、磁性ロータ141とセンサ装置1とを有する。磁性ロータ141は磁性体であり、その外周部に凸部141aと凹部141bとが周方向に交互に形成された歯車状を呈している。磁性ロータ141は、内輪11の回転軸Aが延在する方向における外輪12の内輪フランジ112側と反対側の位置において、内輪本体部111の外周面に嵌合されており、内輪11と一体的に回転することができるよう構成されている。また、内輪本体部111の外周面には、磁性ロータ141における外輪12側と反対側の位置に、磁性ロータ141への異物の付着を抑制する環状のカバー部材17が取り付けられている。
【0014】
センサ装置1は、例えばアンチロックブレーキシステム(ABS)を構成するものとすることができる。センサ装置1は、磁性ロータ141の外周部と対向するよう配されている。センサ装置1は、ナックル15に形成されたセンサ挿入穴151に挿入されるとともに、ナックル15にボルトB2を用いて締結されている。
【0015】
センサ装置1は、樹脂製のハウジング6内に、検出素子211及び磁石3を埋設してなる。検出素子211は、内輪11と一体に回転する磁性ロータ141の回転速度を電気信号に変換するホール素子からなる。磁石3は、検出素子211における磁性ロータ141側と反対側に配されている。
【0016】
センサ装置1は、次のような原理により、内輪11と一体に回転する車輪の回転速度を検出する。まず、車輪が回転することにより、車輪と一体に内輪11及び磁性ロータ141が回転する。これに伴い、検出素子211と磁性ロータ141との間のギャップが周期的に変動する。すなわち、検出素子211と凸部141aとが対向している状態においては、ギャップは比較的小さくなるが、検出素子211と凹部141bとが対向している状態においては、ギャップは比較的大きくなる。それゆえ、車輪の回転に伴って検出素子211と磁性ロータ141との間の磁気抵抗が周期的に変化し、その結果、ホール素子近傍の磁界が周期的に変化する。この磁界変化の周期を基に、車輪の回転速度の情報が得られる。
【0017】
なお、本形態のセンサ装置1は磁石3を備えるが、磁石3を備えないセンサ装置とすることもできる。この場合は、磁性ロータ141に代えて、内輪本体部111に環状の磁気エンコーダを嵌合させる。磁気エンコーダは、その外周部に、S極とN極とが周方向に交互に設けられているものである。この場合、車輪の回転に伴って磁気エンコーダが回転し、検出素子211近傍の磁界の向きが周期的に変動するところ、磁界の向きが変化する周期に基づいて車輪の回転速度の情報が得られる。
【0018】
(センサ装置1)
図2は、センサ装置1の側面図である。図3は、センサ装置1の軸方向及びハウジングフランジ62の長手方向の双方に平行なセンサ装置1の断面図である。図4は、センサ装置1の軸方向及びハウジングフランジ62の幅方向の双方に平行なセンサ装置1の断面図である。
【0019】
以後、センサ装置1の軸方向を、センサ軸方向Xという。センサ軸方向Xは、ハウジング6において検出部2を収容する軸状部分(すなわち後述のハウジング本体部61)の軸方向を意味するものとする。また、センサ軸方向Xの一方側であって、ハウジング6における検出素子211が配された側を先端側X1といい、ハウジング6からケーブル5が引き出された側を基端側X2という。センサ装置1は、検出部2、磁石3、コンデンサ4、ケーブル5、ハウジング6、コーティング層7、及びセンサシール部材8を備える。
【0020】
検出部2は、図3に示すごとく、ホール素子からなる検出素子211をパッケージ212に内包してなる検出本体部21と、検出本体部21から引き出された一対の接続端子22とを備える。検出本体部21は、略四角形板状に形成されており、その厚み方向がセンサ軸方向Xとなる姿勢でハウジング6内に埋設されている。検出本体部21は、ハウジング6の先端側X1の端部に埋設されており、検出本体部21の基端側X2に隣接する位置に磁石3が配されている。一対の接続端子22は、検出素子211の出力信号を伝送する。一対の接続端子22のそれぞれは、パッケージ212からセンサ軸方向Xに直交する方向に引き出された後、基端側X2に向けて折り曲げられた形状を有する。
【0021】
図4に示すごとく、コンデンサ4は、一対の接続端子22に接続されている。コンデンサ4は、検出素子211の出力信号に含まれるノイズを除去する役割を有する。例えばコンデンサ4は、いわゆるチップコンデンサとすることができる。コンデンサ4によってノイズが除去された検出素子211の出力信号は、一対の接続端子22からケーブル5に伝送される。
【0022】
ケーブル5は、一対の被覆電線51と、一対の被覆電線51を一括して覆うシース52とを備える。被覆電線51は、例えば銅等の導電性の高い材料からなる複数の素線を撚った撚線からなる内部導体511と、内部導体511を被覆する電気的絶縁性を有する絶縁被覆512とを備える。内部導体511の端部は、絶縁被覆512から露出しているとともに接続端子22に電気的に接続されている。一対の被覆電線51は、接続端子22に接続される側の端部がシース52から露出しており、シース52内においては互いに撚り合わされている。シース52は、電気的絶縁性を有する材料を、中実の円柱状に形成してなる。そして、シース52の内側には、一対の被覆電線51が埋設されている。
【0023】
ケーブル5は、一部がハウジング6内に埋設されているとともに、他の一部がハウジング6から引き出されている。ケーブル5におけるハウジング6に埋設された側と反対側の端部は、アンチロックブレーキシステムの動作を制御するための図示しないECU(Electronic Control Unit)に接続される。
【0024】
ハウジング6は、検出部2、磁石3、コンデンサ4、ケーブル5の一部、及び後述のカラー9を内部に埋設している。ハウジング6は、ハウジング6を成形するための成形型に、検出部2、磁石3、コンデンサ4、ケーブル5の一部、及びカラー9を配置し、成形型にハウジング6を構成する溶融樹脂を注入して硬化させるインサート成形によって製造され得る。なお、インサート成形を容易にすべく、検出部2、磁石3、コンデンサ4、及びケーブル5を図示しないホルダによって保持した状態で成形型内に配置し、ホルダを含めた形でハウジング6をインサート成形してもよい。ハウジング6は、例えば、66ナイロン、610ナイロン、612ナイロン、又はPBT(すなわちポリブチレンテレフタレート)等の熱可塑性樹脂からなる。
【0025】
ハウジング6は、センサ軸方向Xに延在する略円柱状のハウジング本体部61と、ハウジング本体部61から外周側に張り出すよう形成されたハウジングフランジ62とを有する。ハウジング本体部61は、検出部2、磁石3、及びコンデンサ4の全体を埋設しているとともに、ケーブル5の一部を埋設している。ケーブル5は、シース52の一端部と、シース52の前記一端部から突出した一対の被覆電線51とが、ハウジング本体部61に埋設されている。
【0026】
ハウジング本体部61の外周部には、ハウジングフランジ62よりも先端側X1の領域に、センサシール部材8を配置するための配置溝611が全周にわたって形成されている。本形態において、配置溝611は、接続端子22と内部導体511との接続部分100よりも基端側X2の位置に配されている。センサシール部材8は、例えばOリングからなる。図1に示すごとく、センサシール部材8は、センサ挿入穴151の内壁とハウジング本体部61との間をシールする。これにより、センサ装置1におけるセンサシール部材8から先端側X1の部位は、センサ挿入穴151に取り付けられた状態において、外部から飛散してくる水分がかかりにくい領域に配される。なお、この場合であっても、センサ装置1におけるセンサシール部材8から先端側X1の部位の周囲には、湿気が存在し得る。そして、検出部2、磁石3、及びコンデンサ4のそれぞれの全体は、センサシール部材8よりも先端側X1に位置している。
【0027】
図1に示すごとく、ハウジングフランジ62は、ボルトB2を用いてナックル15に締結される。図3に示すごとく、ハウジングフランジ62には、ボルトB2を挿通するためのカラー9が貫通している。前述したハウジング6のインサート成形によって、カラー9の外周面はハウジングフランジ62に密着した状態となる。カラー9は、ハウジングフランジ62からセンサ軸方向Xの両側に突出している。これにより、ハウジングフランジ62をナックル15に締結した後、ボルトB2の軸力が樹脂製のハウジング6に直接作用することに起因する樹脂クリープの発生を防止することができ、その結果、ボルトB2の軸力が経時的に低下することを抑制することができる。
【0028】
ハウジング6の表面には、防水性を有するコーティング層7が形成されている。コーティング層7は、撥水性、親水性のいずれの性質を有していてもよい。コーティング層7は、例えば、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、又はポリウレタン樹脂を主成分として含む材料からなる。コーティング層7は、樹脂製のハウジング6が、ハウジング6の周囲の雰囲気の湿気を吸収することを抑制する役割を有する。
【0029】
本形態において、コーティング層7は、コーティング層7を構成する液剤をハウジング6の表面に噴霧するとともに、当該液剤を乾燥させることによって形成される。なお、コーティング層7の形成方法はこれに限られず、例えばコーティング層7を構成する液剤にハウジング6を浸漬して引き抜き、乾燥させることでハウジング6の表面にコーティング層7を形成してもよい。
【0030】
ここで、図3及び図4に示すごとく、センサ軸方向Xにおいて、検出本体部21の基端側X2の端部の位置を位置P1、コンデンサ4の基端側X2の端部の位置を位置P2、接続端子22と内部導体511との接続部分100における基端側X2の端部の位置を位置P3とする。このとき、コーティング層7は、位置P1から先端側X1に至るハウジング6の表面の全体に少なくとも形成されている。また、本形態において、コーティング層7は、位置P2から先端側X1に至るハウジング6の表面の全体に少なくとも形成されている。さらに、本形態において、コーティング層7は、位置P3から先端側X1に至るハウジング6の表面の全体に少なくとも形成されている。特に本形態において、コーティング層7は、外部に露出しているハウジング6の全表面に形成されているとともに、ハウジング6から露出したケーブル5の表面にも形成されている。すなわち、コーティング層7は、ハウジング6の表面とケーブル5の表面とを連続的に覆っており、これによってハウジング6とケーブル5との境界に、外部から飛散してきた水分が浸入することを抑制している。
【0031】
図3に示すごとく、コーティング層7におけるケーブル5の表面に形成された部位であるケーブルコーティング部71のセンサ軸方向Xの長さLは、0.5mm以上、10mm以下とすることが好ましい。ケーブルコーティング部71のセンサ軸方向Xの長さを0.5mm以上とすることにより、ハウジング6とケーブル5との境界に水分が浸入することを抑制しやすい。ケーブルコーティング部71のセンサ軸方向Xの長さを10mm以下とすることにより、コーティング層7を形成する時間を短縮し、センサ装置1の生産性を向上させやすい。
【0032】
ハウジング6を介して検出本体部21の磁性ロータ141が配される側(すなわち先端側X1)の面と対向するコーティング層7の対向部72の厚みは、0.1mm以下であることが好ましい。この場合、センサ装置1を車輪軸受装置10に組み付けた状態において、検出本体部21の検出素子211と磁性ロータ141との距離が遠くなることに起因してセンサ装置1による車輪の回転速度の検出精度が低下することを抑制することができる。本形態において、コーティング層7は、略全体において、厚みが均一になるよう形成されている。
【0033】
また、コーティング層7は、ハウジング6の色と異なる色とすることができる。これにより、ハウジング6の表面にコーティング層7が形成されていることが一目で把握できるようになる。さらに、センサ装置1の種別に応じてコーティング層7の色を変えることも可能である。例えば本形態のように、ハウジング6内にコンデンサ4が内蔵されたセンサ装置1についてのみコーティング層7の色をハウジング6の表面の色と異ならせることにより、センサ装置1がコンデンサ4を内蔵したものか否かを一目で判断できるようになる。
【0034】
(第1の実施の形態の作用及び効果)
本形態のセンサ装置1は、ハウジング6の表面に形成された防水性を有するコーティング層7を有する。それゆえ、ハウジング6が周囲の湿気を吸収することを抑制することができる。以下、ハウジング6の吸湿を抑制することによって得られる効果を説明する。
【0035】
ハウジング6が吸湿した場合、ハウジング6が膨張し、ハウジング6内の検出本体部21、コンデンサ4等の電子部品が圧迫される。そうなると、ハウジング6内の電子部品の所望の性能が得られなくなったり、電子部品とこれに接続された部品との接続箇所に応力がかかり、電子部品とこれに接続された部品との間の電気的接続性が低下したりすることが懸念される。また、ハウジング6が膨張して検出部2が圧迫された場合、検出本体部21のパッケージ212と一対の接続端子22との間に隙間が形成され、当該隙間からパッケージ212内に水分が浸入することも懸念される。さらに、ハウジング6が吸湿して、ハウジング6内に配された検出本体部21、接続端子22、コンデンサ4等の通電部品に水分が付着すると、イオンマイグレーションの発生が懸念される。イオンマイグレーションが発生すると、各通電部品間の電気的絶縁性が低下することが懸念される。以上のように例示した懸念点を解消する観点から、ハウジング6の吸湿を抑制することが望ましい。
【0036】
ここで、単にハウジング6内の部品の防水性を確保しようとした場合、ハウジング6の表面にコーティング層7を形成せず、ハウジング6内の部品の表面を直接コーティングすることも考えられる。しかしながら、この場合、ハウジング6をインサート成形する際に、ハウジング6を構成する高温の溶融樹脂によってハウジング6内の部品の表面に形成されたコーティングが剥がされ、防水効果が失われるおそれがある。そこで、本形態のように、ハウジング6成形後にハウジング6の表面にコーティング層7を形成することにより、ハウジング6成形時の熱によるコーティングの剥がれを防止することができ、コーティング層7による防水効果を確実に得ることができる。
【0037】
また、コーティング層7は、検出本体部21の基端側X2の端部の位置P1から先端側X1に至るハウジング6の表面の全体に少なくとも形成されている。それゆえ、検出本体部21の周囲において、ハウジング6が吸湿することを抑制することができる。
【0038】
また、コーティング層7は、コンデンサ4の基端側X2の端部の位置P2から先端側X1に至るハウジング6の表面の全体に少なくとも形成されている。それゆえ、コンデンサ4の周囲においてハウジング6が吸湿することを抑制することができる。
【0039】
また、コーティング層7は、接続端子22と内部導体511との接続部分100における基端側X2の端部の位置P3から先端側X1に至るハウジング6の表面の全体に少なくとも形成されている。それゆえ、接続端子22と内部導体511との接続部分100の周囲において、ハウジング6が吸湿することを抑制することができる。
【0040】
また、コーティング層7は、ハウジング6の表面からハウジング6から露出したケーブル5の表面までにわたって連続的に形成されている。これにより、ハウジング6とケーブル5との境界に、外部から飛散してきた水分が浸入することを抑制することができる。
【0041】
また、検出部2は、車輪の回転速度を検出するために用いられる。すなわち、本形態において、センサ装置1は、車輪の回転速度を検出する車輪速センサである。そのため、センサ装置1は、周囲の湿度が高くなる環境下で使用され、ハウジング6の吸湿が著しく懸念される。そこで、車輪速センサとして用いられるセンサ装置1において、ハウジング6の表面にコーティング層7を設けることにより、効果的にハウジング6の吸湿を抑制することができる。
【0042】
以上のごとく、本形態によれば、ハウジングが周囲の湿気を吸収することを抑制することができるセンサ装置を提供することができる。
【0043】
[第2の実施の形態]
図5は、本形態におけるセンサ装置1の断面図である。本形態は、コーティング層7の厚みを不均一とした形態である。本形態において、コーティング層7は、ハウジング6の表面における配置溝611から先端側X1の領域の厚みが、その他の部位の厚みよりも大きくなっている。
【0044】
コーティング層7は、検出本体部21の基端側X2の端部の位置P1から先端側X1の領域に、厚みが最大となる部位を有する。本形態においては、ハウジング6の先端側X1の端面に形成されたコーティング層7の部位である端面コーティング部73の厚みが、コーティング層7の最大厚みとなっている。端面コーティング部73の厚みは、センサ装置1による車輪速度の検出精度が低下することを抑制する観点から、0.1mm以下であることが好ましい。
【0045】
本形態のコーティング層7を噴霧によって形成する場合は、ハウジング6の表面の部位によってコーティング層7を構成する液剤の噴霧量、噴霧時間等を変更することによって、本形態のように厚みが不均一のコーティング層7を形成することができる。また、本形態のコーティング層7を浸漬によって形成する場合は、まず、コーティング層7が形成される前のセンサ装置1の姿勢を、先端側X1が鉛直方向の下側となる姿勢とする。そして、コーティング層7が形成される前のセンサ装置1を、鉛直方向の下側に移動させてコーティング層7を構成する液剤に浸漬した後、引き抜く。こうすることによって、センサ装置1を液剤から引き抜く際の重力により、コーティング層7は、先端側X1の部位の厚みが大きくなり、端面コーティング部73の厚みが最も大きくなる。
【0046】
本形態のその他の構成は、第1の実施の形態の構成と同様である。
なお、第2の実施の形態以降において用いた符号のうち、既出の形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0047】
(第2の実施の形態の作用及び効果)
本形態において、コーティング層7は、検出本体部21の基端側X2の端部の位置P1から先端側X1の領域に、厚みが最大となる部位を有する。ここで、ハウジング6が吸湿して膨張した場合、特に検出本体部21がハウジング6の膨張による影響を受けやすいところ、本構成によれば、ハウジング6における検出本体部21の周囲の部位による吸湿を一層抑制しやすい。
その他、第1の実施の形態と同様の作用効果を有する。
【0048】
[第3の実施の形態]
図6は、本形態におけるセンサ装置1の断面図である。本形態は、コーティング層7を、ハウジング6の表面の一部に形成した形態である。本形態において、コーティング層7は、配置溝611と接続端子22とのセンサ軸方向Xの間の位置から先端側X1に至るハウジング6の表面の全体に形成されている。そして、コーティング層7の内周側には、検出部2、磁石3、及びコンデンサ4が配されている。
その他は、第1の実施の形態と同様である。
【0049】
(第3の実施の形態の作用及び効果)
本形態においては、コーティング層7を形成する時間を短縮し、センサ装置1の生産性を向上させやすい。また、コーティング層7の内周側には、検出部2、コンデンサ4、及び、接続端子22と内部導体511との接続部分100が配されているため、これらの周囲においてハウジング6が吸湿することを抑制することができる。
その他、第1の実施の形態と同様の作用効果を有する。
【0050】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0051】
[1]物理量を電気信号に変換する検出部(2)と、前記検出部(2)を埋設した樹脂製のハウジング(6)と、前記ハウジング(6)の表面に形成された防水性を有するコーティング層(7)と、を備えるセンサ装置(1)。
【0052】
[2]前記検出部(2)は、検出素子(211)を含む検出本体部(21)と前記検出本体部(21)から引き出された複数の接続端子(22)とを備え、前記検出本体部(21)は、前記ハウジング(6)におけるセンサ軸方向(X)の先端側(X1)の端部に埋設されており、前記コーティング層(7)は、前記検出本体部(21)におけるセンサ軸方向(X)の基端側(X2)の端部の位置(P1)から前記先端側(X1)に至る前記ハウジング(6)の表面の全体に少なくとも形成されている、前記[1]に記載のセンサ装置(1)。
【0053】
[3]前記コーティング層(7)は、前記検出本体部(21)の前記基端側(X2)の端部の位置(P1)から前記先端側(X1)の領域に、厚みが最大となる部位を有する、前記[2]に記載のセンサ装置(1)。
【0054】
[4]前記検出部(2)に電気的に接続されるとともに、一部が前記ハウジング(6)に埋設されたケーブル(5)をさらに備え、前記コーティング層(7)は、前記ハウジング(6)の表面から前記ハウジング(6)から露出した前記ケーブル(5)の表面までにわたって連続的に形成されている、前記[1]乃至[3]のいずれか1つに記載のセンサ装置(1)。
【0055】
[5]前記検出部(2)は、車輪の回転速度を検出するために用いられる、前記[1]乃至[4]のいずれか1つに記載のセンサ装置(1)。
【0056】
(付記)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、前述した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0057】
1…センサ装置
2…検出部
21…検出本体部
211…検出素子
22…接続端子
5…ケーブル
6…ハウジング
7…コーティング層
P1…検出本体部におけるセンサ軸方向の基端側の端部の位置
X…センサ軸方向
X1…センサ軸方向の先端側
X2…センサ軸方向の基端側
図1
図2
図3
図4
図5
図6