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特開2022-124145機械学習装置、状態診断装置、推論装置、機械学習方法、機械学習プログラム、状態診断方法、状態診断プログラム、推論方法、及び、推論プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124145
(43)【公開日】2022-08-25
(54)【発明の名称】機械学習装置、状態診断装置、推論装置、機械学習方法、機械学習プログラム、状態診断方法、状態診断プログラム、推論方法、及び、推論プログラム
(51)【国際特許分類】
   F04B 51/00 20060101AFI20220818BHJP
   F04B 49/10 20060101ALI20220818BHJP
【FI】
F04B51/00
F04B49/10 311
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021021741
(22)【出願日】2021-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100214248
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 純
(74)【代理人】
【識別番号】100214260
【弁理士】
【氏名又は名称】相羽 昌孝
(72)【発明者】
【氏名】原田 陽介
(72)【発明者】
【氏名】山田 泰雅
(72)【発明者】
【氏名】杉山 和彦
(72)【発明者】
【氏名】関口 孝志
【テーマコード(参考)】
3H145
【Fターム(参考)】
3H145AA12
3H145AA23
3H145AA42
3H145BA31
3H145BA41
3H145CA04
3H145CA06
3H145DA49
3H145EA13
3H145EA14
3H145EA37
3H145EA38
3H145EA42
3H145EA49
3H145FA02
3H145FA18
3H145FA19
3H145FA26
3H145FA27
(57)【要約】      (修正有)
【課題】作業者の経験に依存することなく、流体供給装置の状態を高精度に診断することを可能とする機械学習装置を提供する。
【解決手段】機械学習装置4は、流体を移送するポンプ及びポンプの吐出側に設けられた圧力タンクを備える流体供給装置1の状態を診断するための学習モデルを生成する機械学習装置であって、所定期間におけるポンプの運転状況のデータ、及び、所定期間における圧力タンクから流体が供給される流体供給先にて使用された流体の使用流量のデータを入力データとして少なくとも含む学習用データを複数組記憶する学習用データ記憶部401と、学習モデルに学習用データを複数組入力することで、入力データと出力データとの相関関係を学習モデルに学習させる機械学習部402と、機械学習部402により学習させた学習モデルを記憶する学習済みモデル記憶部403と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を移送するポンプ及び前記ポンプの吐出側に設けられた圧力タンクを備える流体供
給装置の状態を診断するための学習モデルを生成する機械学習装置であって、
所定期間における前記ポンプの運転状況のデータ、及び、前記所定期間において前記圧
力タンクから前記流体が供給される流体供給先にて使用された前記流体の使用流量のデー
タを入力データとして少なくとも含む学習用データを複数組記憶する学習用データ記憶部
と、
前記学習モデルに前記学習用データを複数組入力することで、前記入力データと前記流
体供給装置の診断情報との相関関係を前記学習モデルに学習させる機械学習部と、
前記機械学習部により学習させた前記学習モデルを記憶する学習済みモデル記憶部と、
を備える、
機械学習装置。
【請求項2】
前記学習用データは、
前記流体供給装置の状態が複数の状態のうちのいずれかであることを表す前記診断情
報を出力データとしてさらに含み、前記入力データ及び前記出力データが対応付けられた
ものであり、
前記機械学習部は、
前記入力データと前記出力データとの相関関係を教師あり学習により前記学習モデル
に学習させる、
請求項1に記載の機械学習装置。
【請求項3】
前記学習用データは、
前記診断情報が前記流体供給装置の状態が所定の状態であることを表すときの前記入
力データのみを含み、
前記機械学習部は、
前記入力データと前記流体供給装置の状態が前記所定の状態であることを表す前記診
断情報との相関関係を教師なし学習により前記学習モデルに学習させる、
請求項1に記載の機械学習装置。
【請求項4】
前記入力データに含まれる前記ポンプの運転状況のデータは、
前記ポンプの運転中又は停止中のいずれかを示す運転状態の時系列データ、
前記ポンプの回転数の時系列データ、又は、
前記ポンプの駆動源であるモータに供給されるモータ電流値の時系列データである、
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の機械学習装置。
【請求項5】
前記入力データに含まれる前記使用流量のデータは、
複数の前記流体供給先に設けられた前記使用流量の計測メータの計測結果を合計した
合計使用流量の時系列データ、
複数の前記流体供給先に設けられた入退室記録の時系列データ、
複数の前記流体供給先に設けられた蛇口使用量の時系列データ、
複数の前記流体供給先に設けられた電気使用量の時系列データ、又は、
複数の前記流体供給先に設けられたガス使用量の時系列データ、
である
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の機械学習装置。
【請求項6】
前記診断情報は、
前記流体供給装置の状態が正常であること、及び、前記流体供給装置の状態が予め設
定された余寿命の期間以内の異常であることのいずれかを表す、
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の機械学習装置。
【請求項7】
前記診断情報は、
前記流体供給装置の状態が正常な状態であること、及び、前記流体供給装置の状態が
予め設定された複数の余寿命の期間以内のうちのいずれかに該当するという異常であるこ
とのいずれかを表す、
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の機械学習装置。
【請求項8】
前記診断情報は、前記流体供給装置の状態として、
前記圧力タンクの状態に関する前記診断情報、
前記ポンプの吐出側に設けられた圧力センサの状態に関する前記診断情報、
前記ポンプの吐出側に設けられた流量センサの状態に関する前記診断情報、又は、
前記ポンプの吐出側に設けられた逆止弁の状態に関する前記診断情報である、
請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の機械学習装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の機械学習装置により生成された学習モデ
ルを用いて、流体を移送するポンプ及び前記ポンプの吐出側に設けられた圧力タンクを備
える流体供給装置の状態を診断する状態診断装置であって、
所定期間における前記ポンプの運転状況のデータ、及び、前記所定期間において前記圧
力タンクから前記流体が供給される流体供給先にて使用された前記流体の使用流量のデー
タを含む入力データを取得する入力データ取得部と、
前記入力データ取得部により取得された前記入力データを前記学習モデルに入力し、前
記流体供給装置の診断情報を推論する推論部と、を備える、
状態診断装置。
【請求項10】
流体を移送するポンプ及び前記ポンプの吐出側に設けられた圧力タンクを備える流体供
給装置の状態を診断するために用いられる推論装置であって、
前記推論装置は、メモリと、プロセッサとを備え、
前記プロセッサは、
所定期間における前記ポンプの運転状況のデータ、及び、前記所定期間において前記圧
力タンクから前記流体が供給される流体供給先にて使用された前記流体の使用流量のデー
タを含む入力データを取得する入力データ取得処理と、
前記入力データ取得処理にて前記入力データを取得すると、前記流体供給装置の診断
情報を推論する推論処理と、を実行する、
推論装置。
【請求項11】
流体を移送するポンプ及び前記ポンプの吐出側に設けられた圧力タンクを備える流体供
給装置を診断するための学習モデルを生成する機械学習方法であって、
所定期間における前記ポンプの運転状況のデータ、及び、前記所定期間において前記圧
力タンクから前記流体が供給される流体供給先にて使用された前記流体の使用流量のデー
タを入力データとして少なくとも含む学習用データを学習用データ記憶部に複数組記憶す
る学習用データ記憶工程と、
前記学習モデルに前記学習用データを複数組入力することで、前記入力データと前記流
体供給装置の診断情報との相関関係を前記学習モデルに学習させる機械学習工程と、
前記機械学習部により学習させた前記学習モデルを学習済みモデル記憶部に記憶する学
習済みモデル記憶工程と、を備える、
機械学習方法。
【請求項12】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の機械学習装置により生成された学習モデ
ルを用いて、流体を移送するポンプ及び前記ポンプの吐出側に設けられた圧力タンクを備
える流体供給装置の状態を診断する状態診断方法であって、
所定期間における前記ポンプの運転状況のデータ、及び、前記所定期間において前記圧
力タンクから前記流体が供給される流体供給先にて使用された前記流体の使用流量のデー
タを含む入力データを取得する入力データ取得工程と、
前記入力データ取得工程により取得された前記入力データを前記学習モデルに入力し、
前記流体供給装置の診断情報を推論する推論工程と、を備える、
状態診断方法。
【請求項13】
流体を移送するポンプ及び前記ポンプの吐出側に設けられた圧力タンクを備える流体供
給装置の状態を診断するために用いられる推論方法であって、
所定期間における前記ポンプの運転状況のデータ、及び、前記所定期間において前記圧
力タンクから前記流体が供給される流体供給先にて使用された前記流体の使用流量のデー
タを含む入力データを取得する入力データ取得工程と、
前記入力データ取得工程にて前記入力データを取得すると、前記流体供給装置の診断
情報を推論する推論工程と、を実行する
推論方法。
【請求項14】
コンピュータに、請求項11に記載の機械学習方法が備える各工程を実行させるための

機械学習プログラム。
【請求項15】
コンピュータに、請求項12に記載の状態診断方法が備える各工程を実行させるための

状態診断方法。
【請求項16】
コンピュータに、請求項13に記載の推論方法が備える各工程を実行させるための、
推論プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械学習装置、状態診断装置、推論装置、機械学習方法、機械学習プログラ
ム、状態診断方法、状態診断プログラム、推論方法、及び、推論プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
オフィスビルまたはマンションなどの給水対象に水(水道水)を供給するための装置と
して給水装置が広く使用されている。給水装置は、一般に、水を圧送するためのポンプと
、ポンプを駆動するためのモータと、ポンプの運転を制御する制御部と、ポンプの下流に
接続される圧力タンクと、を備えている。
【0003】
給水装置は、モータにより駆動されるポンプが水を圧送することにより、供給先に水を
供給する。ポンプとポンプの下流に設けられる圧力タンクとの間には逆止弁が配置されて
おり、この逆止弁と圧力タンクとにより、ポンプが停止した後においても給水配管内の水
圧が適切に維持され、供給先に水が送られる。
【0004】
このような給水装置は、長年のポンプの作動又は供給先への給水につれて、作動を繰り
返す。作動の繰り返しは、給水装置を徐々に劣化させる。しかしながら、給水装置の劣化
は、使用状況により異なるので、交換を最適なタイミングで行うことが困難であった。そ
こで、給水装置の劣化状態を的確に診断し、適切な交換時期を把握することができる装置
が提案されている(例えば特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3596909号公報
【特許文献2】特開平8-86278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び特許文献2にそれぞれ開示された装置では、個々の物理量(圧力、モー
タ電流、又は、給水時間等)に基づいて、給水装置の圧力タンクの状態を診断するもので
ある。そのため、給水装置の圧力タンクの状態の変化が、上記以外の物理量に表出したり
、複数の物理量に複合的に表出したりするような場合には、特許文献1及び特許文献2に
それぞれ開示された装置では対応できなかった。また、複数の物理量に基づくような複合
的な事象に伴う診断では、作業者の経験(暗黙知を含む)に依存した部分や作業者の個人
差が大きく、このような診断を自動化する装置の実現が強く要望されている。
【0007】
本発明は、上述した課題に鑑み、高価なセンサを設置せず、作業者の経験に依存するこ
ともなく、流体供給装置の状態を高精度に診断することを可能とする機械学習装置、状態
診断装置、推論装置、機械学習方法、機械学習プログラム、状態診断方法、状態診断プロ
グラム、推論方法、及び、推論プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の態様に係る機械学習装置は、
流体を移送するポンプ及び前記ポンプの吐出側に設けられた圧力タンクを備える流体供
給装置の状態を診断するための学習モデルを生成する機械学習装置であって、
所定期間における前記ポンプの運転状況のデータ、及び、前記所定期間において前記圧
力タンクから前記流体が供給される流体供給先にて使用された前記流体の使用流量のデー
タを入力データとして少なくとも含む学習用データを複数組記憶する学習用データ記憶部
と、
前記学習モデルに前記学習用データを複数組入力することで、前記入力データと前記流
体供給装置の診断情報との相関関係を前記学習モデルに学習させる機械学習部と、
前記機械学習部により学習させた前記学習モデルを記憶する学習済みモデル記憶部と、
を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の機械学習装置によれば、流体供給装置の診断情報を高精度に推論(診断)する
ことが可能な学習モデルを提供することができる。また、本発明の状態診断装置によれば
、作業者の経験に依存することなく、流体供給装置の状態を高精度に診断することができ
る。
【0010】
上記以外の課題、構成及び効果は、後述する発明を実施するための形態にて明らかにさ
れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態に係る状態診断システム2が適用された流体供給装置1の一例を示す図である。
図2】機械学習装置4及び状態診断装置5を構成するコンピュータ200の一例を示すハードウエア構成図である。
図3】第1の実施形態に係る機械学習装置4の一例を示すブロック図である。
図4】第1の実施形態に係る機械学習装置4で使用されるデータ(教師あり学習)の一例を示すデータ構成図である。
図5】第1の実施形態に係る機械学習装置4で使用されるニューラルネットワークモデルの一例を示す模式図である。
図6】第1の実施形態に係る機械学習装置4による機械学習方法の一例を示すフローチャートである。
図7】第1の実施形態に係る状態診断装置5の一例を示すブロック図である。
図8】第1の実施形態に係る状態診断装置5による状態診断方法の一例を示すフローチャートである。
図9】第2の実施形態に係る機械学習装置4で使用されるデータ(教師なし学習)の一例を示すデータ構成図である。
図10】第2の実施形態に係る機械学習装置4で使用されるオートエンコーダモデルの一例を示す模式図である。
図11】第2の実施形態に係る機械学習装置4による機械学習方法の一例を示すフローチャートである。
図12】第2の実施形態に係る状態診断装置5による状態診断方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明を実施するための実施形態について説明する。以下では、
本発明の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本発明の該当部分の説
明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術による
ものとする。
【0013】
図1は、第1の実施形態に係る状態診断システム2が適用された流体供給装置1を示す
。この流体供給装置1は主にマンション、オフィス、商業施設、工場、学校等の建物、住
宅、公園等の施設(給水対象)に、水を供給するための装置である。流体供給装置1は、
流体供給源41から導入管42を介して吸込口から水を導入する。なお、流体供給源41
は、受水槽を用いた受水槽方式でもよい。流体供給装置1の吐出口には給水管43が接続
されている。給水管43は、各建物の蛇口等の流体供給先44に接続している。流体供給
装置1は、流体供給源41からの水を増圧し、建物等の各流体供給先44に水を供給する
【0014】
なお、本実施形態の流体供給装置1は、水を供給する給水装置を例として示すが、流体
供給装置1は、燃料及び薬品等の水以外の液体、並びに、ガス、水素及び酸素等の気体を
含む流体を供給するものでよい。
【0015】
流体供給装置1は、ポンプ12と、このポンプ12を駆動する駆動部としてのモータ1
3(電動機)と、モータ13を制御するためのインバータ14と、を備えている。インバ
ータ14は、漏電遮断器52を介して商用電源51に接続されている。
【0016】
流体供給装置1は、ポンプ12の吐出側(下流側)に、逆止弁15と、フロースイッチ
16と、圧力タンク17と、を有する。図1に示す流体供給装置1は、1組のポンプ12
、モータ13、逆止弁15、及びフロースイッチ16を有する。なお、流体供給装置1は
、2組以上のポンプ12、モータ13、逆止弁15、及びフロースイッチ16を有しても
よい。流体供給装置1は、複数台のポンプ12を備えることにより、一部のポンプ12が
運転不可となった場合に、運転可能な他のポンプ12にて給水を継続し、断水を避けるこ
とができる。
【0017】
また、流体供給装置1は、ポンプ12の上流側に、逆流防止装置11を有する。逆流防
止装置11は、流体供給装置1の吸込口に接続された導入管42に設けられており、流体
供給装置1から流体供給源41への水の逆流を防止する。なお、流体供給源41が受水槽
の場合などには、流体供給装置1は、逆流防止装置11を備えなくてもよい。
【0018】
流体供給装置1は、ポンプ12の吐出口に接続された吐出管に逆止弁15を有する。逆
止弁15は、ポンプ12が停止した時、ポンプ12側への水の逆流を防止する。また、流
体供給装置1は、逆止弁15の下流側(二次側)に、フロースイッチ16を有する。フロ
ースイッチ16は、吐出管を流れる水の流量が所定の値にまで低下したことを検出する流
量検出器である。さらに、流体供給装置1は、フロースイッチ16の下流側に、圧力タン
ク17を有する。圧力タンク17は、ポンプ12が停止している間、流体供給装置1の吐
出側の圧力を保持するための圧力保持器である。
【0019】
本実施形態に係る圧力タンク17は、容器内部を空気室と水室とに分ける隔膜17aを
有する。空気室の内部には予め空気が封入されており、ポンプ12から水室に流入した水
は隔膜17aを介して空気を圧縮する。圧力タンク17とポンプ12との間には逆止弁1
5が配置されており、この逆止弁15と圧力タンク17とにより、ポンプ12が停止した
後においても給水配管内の水圧が適切に維持され、流体供給先44に水が送られる。流体
供給先44に水が送られると、隔膜17aは、空気室側から水室側を押圧する。
【0020】
流体供給装置1は、給水動作を制御する制御部20を備える。制御部20は、CPU(
Central Processing Unit)を中心とした回路基板、又は専用の回路基板などを用いれば
よい。なお、制御部20は、図示しない電力線を介して商用電源51からの電力が供給さ
れる。ただし、制御部20は、インバータ14など、流体供給装置1の他の構成を介して
電力が供給されてもよい。
【0021】
また、制御部20とインバータ14は、通信接続線21を通じて互いに接続される。制
御部20からインバータ14へは、各種設定値、モータ13の回転速度に関する制御指令
としての周波数指令値、運転・停止信号等の信号が送られる。インバータ14から制御部
20へは、実際の周波数値や電流値等の運転状況が逐次送られる。
【0022】
なお、制御部20とインバータ14との間で送受信される制御信号は、アナログ信号お
よび/またはデジタル信号を用いることができる。例えば、回転周波数等にはアナログ信
号を用い、運転停止指令等にはデジタル信号を用いることができる。
【0023】
上記構成を有する流体供給装置1に対して圧力タンク17の状態を診断する状態診断シ
ステム2が設けられている。状態診断システム2は、測定装置3と、機械学習装置4と、
状態診断装置5とを備える。
【0024】
測定装置3は、流体供給装置1の各部に設置され、流体供給装置1の各部の物理量や状
態量を測定する。測定装置3は、学習フェーズでは、機械学習装置4に接続されて学習用
のデータ測定に用いられ、推論フェーズでは、状態診断装置5に接続されて診断用のデー
タ測定に用いられる。測定装置3は、ポンプ運転状況センサ31と、使用流量センサ32
と、ポンプ1次圧センサ33と、ポンプ2次圧センサ34と、を備える。なお、ポンプ1
次圧センサ33は、ポンプに係る圧力を測定するポンプ圧力センサであるが、備えなくて
もよい。
【0025】
ポンプ運転状況センサ31は、ポンプ12の運転状況を取得する。ポンプ12の運転状
況は、例えば、ポンプ12のON/OFF、ポンプ12の回転数、又は、モータ13の電流値等
から取得する。ポンプ運転状況センサ31は、所定期間における時系列データを測定でき
ることが好ましい。所定期間はポンプが始動された始動時点を含んでもよい。ポンプ12
の運転状況を取得することで、ポンプ12から吐出される流体の量を推測することができ
る。
【0026】
ポンプ運転状況センサ31は、ポンプ12、モータ13、又は、インバータ14の運転
中又は停止中のいずれかを示す運転状態の時系列データを取得できることが好ましい。運
転状態は、制御部20からポンプ12、モータ13、又は、インバータ14へのON/O
FF指令を取得すればよい。運転状態は、制御部20の指令がONの場合には運転中、O
FFの場合には停止中と認識すればよい。
【0027】
また、ポンプ運転状況センサ31は、ポンプ12の回転数の時系列データを取得しても
よい。ポンプ12の回転数は、ポンプ12又はモータ13の回転速度を測定して取得すれ
ばよい。また、モータ13の回転数は、インバータ14の出力周波数によって決まるので
、インバータ14の出力周波数を取得してもよい。
【0028】
さらに、ポンプ運転状況センサ31は、ポンプ12の駆動源であるモータ13に供給さ
れるモータ電流値の時系列データを取得してもよい。モータ電流値を取得することで、ポ
ンプ12の仕事量を取得することができる。なお、ポンプ12が空運転、閉塞運転、又は
、過流量運転であることも認識できる。
【0029】
使用流量センサ32は、所定期間において圧力タンク17から流体が供給される流体供
給先44にて使用された流体の流量を測定する。複数の流体供給先44が存在する場合、
使用流量センサ32は、複数の流体供給先44の流量を合計した合計使用流量を測定すれ
ばよい。使用流量は、時系列データで測定できることが好ましい。例えば、使用流量セン
サ32は、図1に示すように、複数の流体供給先44に供給される上流側に設けてよい。
また、使用流量センサ32は、マンション又はアパート等の集合住宅の各室を供給先44
として、各室に設けてもよい。なお、使用流量センサ32は、各室に対応する水道メータ
を使用してもよい。所定期間はポンプが始動された始動時点を含んでもよい。
【0030】
使用流量センサ32は、直接計測せず、他の計測データから推測してもよい。例えば、
複数の流体供給先44における人の入退室記録を計測し、その時系列データから使用流量
を推測してもよい。また、各室のトイレ、浴室のシャワー、キッチンの蛇口等にセンサを
取り付け、その使用量から流体の使用流量を推測してもよい。さらに、各室の電気または
ガスの使用量から流体の使用流量を推測してもよい。
【0031】
ポンプ1次圧センサ33は、ポンプ12の吸込側圧力を測定するための圧力測定器であ
る。本実施形態のポンプ1次圧センサ33は、流体供給源41と逆流防止装置11の間に
設けられる。ポンプ1次圧センサ33は、所定期間における時系列データを測定できるこ
とが好ましい。所定期間はポンプが始動された始動時点を含んでもよい。
【0032】
ポンプ2次圧センサ34は、ポンプ12の吐出側の圧力を測定するための圧力測定器で
ある。本実施形態のポンプ2次圧センサ34は、フロースイッチ16と圧力タンク17の
間に設けられる。ポンプ2次圧センサ34は、所定期間における時系列データを測定でき
ることが好ましい。所定期間はポンプが始動された始動時点を含んでもよい。
【0033】
測定装置3は、例えば、所定の測定周期にて各部の物理量や状態量を測定し、測定周期
が経過する毎に、その測定時点での測定値を機械学習装置4及び状態診断装置5に出力可
能に構成される。なお、測定装置3を構成するポンプ運転状況センサ31、使用流量セン
サ32、ポンプ1次圧センサ33、及び、ポンプ2次圧センサ34の各々における測定周
期は同一でもよいし、異なるものでもよい。また、測定装置3は、上記のように、測定周
期が経過する毎に離散的な測定値を出力することに代えて、アナログ信号のように連続的
な測定値を出力してもよい。
【0034】
機械学習装置4は、学習フェーズの主体として動作し、流体供給装置1の状態を診断す
る際に用いられる学習モデル6を機械学習により生成する。機械学習装置4は、機械学習
の手法として、「教師あり学習」を採用することができる。
【0035】
状態診断装置5は、推論フェーズの主体として動作し、機械学習装置4により生成され
た学習済みの学習モデル6を用いて、測定装置3により測定された測定値から流体供給装
置1の状態を診断する。学習済みの学習モデル6は、機械学習装置4から任意の通信網や
記録媒体等を介して状態診断装置5に提供される。
【0036】
外部装置35は、流体供給装置1との間で各種情報を送受信するための装置であって、
例えば、プラント管理用のコンピュータ(ローカルサーバ及びクラウドサーバを含む。)
、作業者(保守点検者)が使用する診断用コンピュータ、又は、USBメモリや外付けH
DD等の外部記憶ユニットで構成されている。この外部装置35は、後述する機械学習装
置200に接続されて学習用データセットを構成する各種データを送信することも可能で
ある。また、この外部装置35は、流体供給装置1に異常が発生した場合に作業者等に対
して異常が発生したことやその内容を報知するための、GUI(Graphical U
ser Interface)等からなる報知手段を備えている。なお、外部装置35及
び流体供給装置1の間の通信には無線通信を利用してもよい。
【0037】
図2は、機械学習装置4及び状態診断装置5を構成するコンピュータ200の一例を示
すハードウエア構成図である。l
【0038】
機械学習装置4及び状態診断装置5のそれぞれは、汎用又は専用のコンピュータ200
により構成される。コンピュータ200は、図2に示すように、その主要な構成要素とし
て、バス210、プロセッサ212、メモリ214、入力デバイス216、表示デバイス
218、ストレージ装置220、通信I/F(インターフェース)部222、外部機器I
/F部224、I/O(入出力)デバイスI/F部226、及び、メディア入出力部22
8を備える。なお、上記の構成要素は、コンピュータ200が使用される用途に応じて適
宜省略されてもよい。
【0039】
プロセッサ212は、1つ又は複数の演算処理装置(CPU、MPU、GPU、DSP
等)で構成され、コンピュータ200全体を統括する制御部として動作する。メモリ21
4は、各種のデータ及びプログラム230を記憶し、例えば、メインメモリとして機能す
る揮発性メモリ(DRAM、SRAM等)と、不揮発性メモリ(ROM、フラッシュメモ
リ等)とで構成される。
【0040】
入力デバイス216は、例えば、キーボード、マウス、テンキー、電子ペン等で構成さ
れる。表示デバイス218は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子
ペーパー、プロジェクタ等で構成される。入力デバイス216及び表示デバイス218は
、タッチパネルディスプレイのように、一体的に構成されていてもよい。ストレージ装置
220は、例えば、HDD、SSD等で構成され、オペレーティングシステムやプログラ
ム230の実行に必要な各種のデータを記憶する。
【0041】
通信I/F部222は、インターネットやイントラネット等のネットワーク240に有
線又は無線により接続され、所定の通信規格に従って他のコンピュータとの間でデータの
送受信を行う。外部機器I/F部224は、プリンタ、スキャナ等の外部機器250に有
線又は無線により接続され、所定の通信規格に従って外部機器250との間でデータの送
受信を行う。無線通信の手段は、典型的には国際規格の通信手段が用いられる。国際規格
の通信手段として、IEEE802.15.4、IEEE802.15.1、IEEE8
02.15.11a、11b、11g、11n、11ac、11ad、ISO/IEC1
4513-3-10、IEEE802.15.4gなどの方式がある。また、Bluet
ooth(登録商標)、BluetoothLowEnergy、Wi-Fi、ZigB
ee(登録商標)、Sub-GHz、EnOcean(登録商標)等を用いることもでき
る。I/OデバイスI/F部226は、各種のセンサ、アクチュエータ等のI/Oデバイ
ス260に接続され、I/Oデバイス260との間で、例えば、センサによる検出信号や
アクチュエータへの制御信号等の各種の信号やデータの送受信を行う。メディア入出力部
228は、例えば、DVDドライブ、CDドライブ等のドライブ装置で構成され、DVD
、CD等のメディア270に対してデータの読み書きを行う。
【0042】
上記構成を有するコンピュータ200において、プロセッサ212は、プログラム23
0をメモリ214のワークメモリ領域に呼び出して実行し、バス210を介してコンピュ
ータ200の各部を制御する。なお、プログラム230は、メモリ214の代わりに、ス
トレージ装置220に記憶されていてもよい。プログラム230は、インストール可能な
ファイル形式又は実行可能なファイル形式でCD、DVD等の非一時的な記録媒体に記録
され、メディア入出力部228を介してコンピュータ200に提供されてもよい。プログ
ラム230は、通信I/F部222を介してネットワーク240経由でダウンロードする
ことによりコンピュータ200に提供されてもよい。
【0043】
コンピュータ200は、例えば、据置型コンピュータや携帯型コンピュータで構成され
、任意の形態の電子機器である。コンピュータ200は、クライアント型コンピュータで
もよいし、サーバ型コンピュータやクラウド型コンピュータでもよい。コンピュータ20
0は、機械学習装置4及び状態診断装置5以外の他の装置に適用されてもよい。
【0044】
(機械学習装置4)
図3は、第1の実施形態に係る機械学習装置4の一例を示すブロック図である。
【0045】
機械学習装置4は、学習用データ取得部400と、学習用データ記憶部401と、機械
学習部402と、学習済みモデル記憶部403とを備える。機械学習装置4は、例えば、
図2に示すコンピュータ200で構成される。その場合、学習用データ取得部400は、
通信I/F部222又はI/OデバイスI/F部226で構成され、機械学習部402は
、プロセッサ212で構成され、学習用データ記憶部401及び学習済みモデル記憶部4
03は、ストレージ装置220で構成される。
【0046】
学習用データ取得部400は、各種の外部装置と通信網300を介して接続され、入力
データを少なくとも含む学習用データを取得するインタフェースユニットである。外部装
置35は、例えば、流体供給装置1に設けられた測定装置3、及び、作業者が使用する作
業者用端末8等である。なお、状態診断装置5が、通信網300に接続されている場合に
は、学習用データ取得部400は、状態診断装置5の診断対象である流体供給装置1に設
けられた測定装置3から学習用データを取得するようにしてもよい。
【0047】
学習用データ記憶部401は、学習用データ取得部400で取得した学習用データを1
又は複数組記憶するデータベースである。なお、学習用データ記憶部401を構成するデ
ータベースの具体的な構成は適宜設計すればよい。
【0048】
機械学習部402は、学習用データ記憶部401に記憶された学習用データを用いて機
械学習を実施する。すなわち、機械学習部402は、学習モデル6に学習用データを複数
組入力することで、学習用データに含まれる入力データと流体供給装置1の診断情報との
相関関係を学習モデル6に学習させることで、学習済みの学習モデル6を生成する。本実
施形態では、機械学習部402による教師あり学習の具体的な手法として、ニューラルネ
ットワークを採用する場合について説明する。
【0049】
学習済みモデル記憶部403は、機械学習部402により生成された学習済みの学習モ
デル6を記憶するデータベースである。学習済みモデル記憶部403に記憶された学習済
みの学習モデル6は、任意の通信網や記録媒体等を介して実システム(例えば、状態診断
装置5)に提供される。なお、図3では、学習用データ記憶部401と、学習済みモデル
記憶部403とが別々の記憶部として示されているが、これらは単一の記憶部で構成され
てもよい。
【0050】
図4は、第1の実施形態に係る機械学習装置4で使用されるデータ(教師あり学習)の
一例を示すデータ構成図である。
【0051】
学習用データは、入力データとして、所定期間におけるポンプ12の運転状況のデータ
、及び、流体供給先44にて使用された流体の流量のデータを少なくとも含む。入力デー
タとしてのポンプ12の運転状況のデータ、及び、流体供給先44にて使用された流体の
流量のデータの各々における所定期間は、同一の期間に設定することを基本とするが、各
データ間に時間差が生じる関係が認められる場合には、当該時間差に対応する期間に設定
してもよい。
【0052】
なお、入力データは、ポンプ12の運転状況のデータ、及び、流体供給先44にて使用
された流体の流量のデータ以外に他のデータをさらに含むものでもよく、例えば、ポンプ
12の吸込側1次圧、ポンプ12の吐出側2次圧、ポンプ12が運転するときに生じる音
、ポンプ12又はモータ13の少なくとも一方の温度、ポンプ12の潤滑圧力、潤滑剤の
流量、潤滑剤の温度、及び、潤滑剤の性状値(色、粒径分布)のデータのうち少なくとも
1つのデータをさらに含むものでもよい。
【0053】
所定期間におけるポンプ12の運転状況のデータは、ポンプ12の運転中又は停止中の
いずれかを示す運転状態のデータ、所定期間におけるポンプ12の回転数のデータ、及び
、所定期間におけるポンプ12の駆動源であるモータ13に供給されるモータ電流値のデ
ータの少なくとも1つが好ましい。本実施形態では、ポンプ12の運転状況のデータは、
ポンプ12の運転中又は停止中のいずれかを示す運転状態のデータ、所定期間におけるポ
ンプ12の回転数のデータ、又は、所定期間におけるポンプ12の駆動源であるモータ1
3に供給されるモータ電流値のデータからなるものとして説明する。
【0054】
所定期間におけるポンプ12の運転中又は停止中のいずれかを示す運転状態のデータは
、所定期間内の複数の測定時点において、ポンプ運転状況センサ31により測定された複
数の測定値(運転/停止等)で構成される。運転状態のデータは、例えば、測定時点を示
す測定時刻と紐付けられて、測定時刻で時系列順に並べた配列のデータとして構成される
。なお、ポンプ運転状況センサ31が、連続的な測定値を出力するような場合には、学習
用データ取得部400が、所定のサンプリング周期にて測定値をデータ化する。これによ
り、所定期間における運転状態のデータは、所定期間内の複数のサンプリング時点におけ
る複数の測定値(運転/停止等)で構成される。
【0055】
所定期間におけるポンプ12の回転数のデータは、所定期間内の複数の測定時点におい
てポンプ運転状況センサ31により測定された複数の測定値(回転数)で構成される。回
転数のデータは、例えば、測定時点を示す測定時刻と紐付けられて、測定時刻で時系列順
に並べた配列のデータとして構成される。なお、ポンプ運転状況センサ31が、連続的な
測定値を出力するような場合には、学習用データ取得部400が、所定のサンプリング周
期にて測定値をデータ化する。これにより、所定期間における回転数のデータは、所定期
間内の複数のサンプリング時点における複数の測定値(回転数)で構成される。
【0056】
所定期間におけるポンプ12の駆動源であるモータ13に供給されるモータ電流値のデ
ータは、所定期間内の複数の測定時点においてポンプ運転状況センサ31により測定され
た複数の測定値(電流値)で構成される。電流値のデータは、例えば、測定時点を示す測
定時刻と紐付けられて、測定時刻で時系列順に並べた配列のデータとして構成される。な
お、ポンプ運転状況センサ31が、連続的な測定値を出力するような場合には、学習用デ
ータ取得部400が、所定のサンプリング周期にて測定値をデータ化する。これにより、
所定期間における電流値のデータは、所定期間内の複数のサンプリング時点における複数
の測定値(電流値)で構成される。
【0057】
所定期間における圧力タンク17から流体が供給される流体供給先44にて使用された
流体の流量のデータは、複数の流体供給先44の流量を合計した合計使用流量の測定値で
構成される。圧力タンク17から流体が供給される流体供給先44にて使用された流体の
流量のデータは、例えば、測定時点を示す測定時刻と紐付けられて、測定時刻で時系列順
に並べた配列のデータとして構成される。なお、使用流量センサ1が、連続的な測定値を
出力するような場合には、学習用データ取得部400が、所定のサンプリング周期にて測
定値をデータ化する。これにより、所定期間における圧力タンク17から流体が供給され
る流体供給先44にて使用された流体の流量のデータは、所定期間内の複数のサンプリン
グ時点における複数の測定値(流体供給先44にて使用された流体の流量)で構成される
【0058】
流体供給装置1の診断情報は、流体供給装置1に対する異常診断が行われたときの、流
体供給装置1に何らかの異常が発生しているか否かを示す情報であって、そのデータ形式
としては種々のものを採用することができる。異常は、異常診断が行われた時点において
異常の発生が判明したような事後的な異常だけなく、異常診断が行われた時点では正常と
判断される許容範囲ではあるが、将来的な異常の発生が予見されたような異常の兆候も含
む。
【0059】
例えば、一態様としての診断情報は、図4に示すように、流体供給装置1が正常である
こと(異常なし)及び異常であること(異常あり)のいずれかを表す情報で構成すること
ができる。この場合、診断情報は、2値に分類され、例えば流体供給装置1が正常な状態
であることを示す値を「0」とし、流体供給装置1が異常な状態であることを示す値を「
1」として、作業用コンピュータ8を用いて作業者により入力データに関連付けた形で該
当する値が入力されればよい。なお、この場合には具体的な異常の内容に関する情報は必
ずしも必要ない。
【0060】
加えて、上記診断情報のうち、流体供給装置1の異常であることを表す情報は、異常の
具体的な内容をも含んでいてもよい。異常の具体的な内容としては、例えば、圧力タンク
17に関する異常、ポンプ12の吐出側に設けられたポンプ2次圧センサ34の異常、ポ
ンプ12の吐出側に設けられたフロースイッチ16の異常、又は、ポンプ12の吐出側に
設けられた逆止弁15の異常等が含まれる。この場合、診断情報は、複数の値(3以上)
に分類され、例えば流体供給装置1が正常な状態であることを示す値を「0」とし、流体
供給装置1が圧力タンク17に関する異常であることを示す値を「1」、ポンプ12の吐
出側に設けられたポンプ2次圧センサ34の異常であることを示す値を「2」、以下同様
に各異常の内容に合わせて値を一意に事前に定めた上で、作業用コンピュータ8を用いて
作業者により入力データに関連付けた形で該当する値が入力されればよい。このような診
断情報の設定を行うことで、異常の発生の有無のみならず、異常が発生したときの異常の
具体的な内容の情報(図4に示す異常1/異常2/…/異常nに対応する。)をも含んだ
学習用データセットを準備することができる。上述した一態様としての診断情報は、以下
に述べる機械学習においては、教師あり学習(図4参照。)を行う場合に利用されるもの
である。
【0061】
また、ソレノイド部3の診断情報としては、上述したもの以外にも採用することができ
る。例えば、他の態様としての診断情報は、流体供給装置1が異常でなく正常であること
のみを表す情報とすることができる。この場合、診断情報には流体供給装置1が正常であ
ることを表す情報しか含まれないため、必然的にこの診断情報を出力データとして含む学
習用データセットは、流体供給装置1が正常である場合の入力データと出力データとで構
成されたデータセットのみとなる。したがって、この場合における学習用データセットの
出力データは常に同じであるため、学習用データセットは出力データをデータとして有し
ている必要は必ずしもないことは、当業者であれば当然に理解できるであろう。当該他の
態様としての診断情報は、以下に述べる機械学習においては、教師なし学習を行う場合に
利用されるものである。
【0062】
また、他の態様としての診断情報は、図4に示すように、流体供給装置1が正常な状態
であること(異常なし)及び流体供給装置1の余寿命が予め設定された期間(例えば数時
間、数日、数ヶ月、又は、数年等)以内の異常な状態であること(異常あり)のいずれか
を表す情報で構成することができる。この場合、診断情報は、2値に分類され、例えば流
体供給装置1が正常な状態であることを示す値を「0」とし、流体供給装置1の余寿命が
予め設定された期間以内の異常な状態であることを示す値を「1」として、作業用コンピ
ュータ8を用いて作業者により入力データに関連付けた形で該当する値が入力されればよ
い。なお、この場合には具体的な異常の内容に関する情報は必ずしも必要ない。
【0063】
加えて、上記診断情報のうち、流体供給装置1の余寿命が予め設定された期間以内の異
常であることを表す情報は、図4の破線で示すように、余寿命の具体的な内容をも含んで
いてもよい。この場合、診断情報は、複数の値(少なくとも3以上)に分類され、流体供
給装置1が正常な状態であること、流体供給装置1の余寿命が予め設定された複数の余寿
命の期間以内のいずれかに該当するという異常であることのいずれかを表す情報で構成す
る。
【0064】
例えば流体供給装置1が正常な状態であることを示す値を「0」とし、流体供給装置1
の余寿命が第1の期間(例えば6ヶ月以上1年未満)に該当する異常であることを示す値
を「1」、流体供給装置1の余寿命が第1の期間よりも短い第2の期間(例えば6ヶ月未
満)に該当する異常であることを示す値を「2」、以下同様に各異常の内容に合わせて値
を一意に事前に定めた上で、作業用コンピュータ8を用いて作業者により入力データに関
連付けた形で該当する値が入力されればよい。このような診断情報の設定を行うことで、
異常の発生の有無のみならず、異常が発生したときの余寿命の具体的な内容の情報(図4
に示す異常1/異常2/…/異常nに対応する。)をも含んだ学習用データセットを準備
することができる。上述した一態様としての寿命予測情報は、以下に述べる機械学習にお
いては、教師あり学習(図4参照。)を行う場合に利用されるものである。
【0065】
また、流体供給装置1の寿命予測情報としては、上述したもの以外にも採用することが
できる。例えば、他の態様としての寿命予測情報は、流体供給装置1が異常でなく正常で
あることのみを表す情報とすることができる。この場合、寿命予測情報には流体供給装置
1が正常であることを表す情報しか含まれないため、必然的にこの寿命予測情報を出力デ
ータとして含む学習用データセットは、流体供給装置1が正常である場合の入力データと
出力データとで構成されたデータセットのみとなる。したがって、この場合における学習
用データセットの出力データは常に同じであるため、学習用データセットは出力データを
データとして有している必要は必ずしもないことは、当業者であれば当然に理解できるで
あろう。当該他の態様としての寿命予測情報は、以下に述べる機械学習においては、教師
なし学習を行う場合に利用されるものである。
【0066】
機械学習として「教師あり学習」を採用する場合、学習用データは、入力データに対応
付けられた出力データとして、例えば、試験装置の圧力タンク内の図示しない圧力センサ
によって測定された所定期間における圧力タンク17の封入圧力の診断情報、ポンプの吐
出側に設けられたポンプ2次圧センサ34によって測定された所定期間における2次圧力
の診断情報、ポンプの吐出側に設けられたフロースイッチ16によって測定された所定期
間における流量の診断情報、又は、ポンプの吐出側に設けられた逆止弁15の作動情報を
さらに含んでもよい。出力データは、教師あり学習において、例えば、教師データや正解
ラベルと称される。
【0067】
圧力タンク17の封入圧力の診断情報、ポンプの吐出側に設けられたポンプ2次圧セン
サ34によって測定された所定期間における2次圧力の診断情報、ポンプの吐出側に設け
られたフロースイッチ16によって測定された所定期間における流量の診断情報、又は、
ポンプの吐出側に設けられた逆止弁15の作動情報は、所定期間に含まれる時点又は所定
期間よりも後の時点における点データ、又は、所定期間又は所定期間よりも後の時点を含
む期間における時系列データである。
【0068】
したがって、本実施形態に係る学習用データは、図4に示すように、所定期間における
ポンプ12の運転状況のデータ、及び、流体供給先44にて使用された流体の流量のデー
タを含む入力データと、流体供給装置1の診断情報を含む出力データとが対応付けられて
構成される。
【0069】
ここで、学習用データに含まれる入力データ(所定期間におけるポンプ12の運転状況
のデータ、及び、流体供給先44にて使用された流体の流量のデータ)と、流体供給装置
1の診断情報との間の相関関係について説明する。
【0070】
流体供給装置1の診断情報は、様々なパラメータによって変化する。しかしながら、例
えば圧力タンク17の封入圧力等、各構成部材の不具合を測定するためには高価なセンサ
がそれぞれ必要であり、従来は作業者の経験に依存する部分が大きかった。そこで、学習
用データが、入力データとして、所定期間におけるポンプ12の運転状況、及び、所定期
間における流体供給先44にて使用された流体の流量を測定することで、流体供給装置1
を診断することを可能とする。
【0071】
学習用データ取得部400は、上記の学習用データを取得する場合、流体供給装置1に
設けられた測定装置3にて測定された所定期間におけるポンプ12の運転状況のデータ、
及び、所定期間における流体供給先44にて使用された流体の流量のデータを入力データ
として、測定装置3から取得する。
【0072】
また、作業者が、測定装置3にて入力データが測定された所定期間における流体供給装
置1を診断し、その診断値を作業者用端末8に入力すると、学習用データ取得部400は
、作業者用端末8にて入力された診断値を出力データ(教師データ)として、作業者用端
末8から取得する。そして、学習用データ取得部400は、これらの入力データと出力デ
ータとを対応付けられることで一の学習用データを構成し、学習用データ記憶部401に
記憶する。
【0073】
図5は、第1の実施形態に係る機械学習装置4で使用されるニューラルネットワークモ
デルの一例を示す模式図である。
【0074】
学習モデル6は、図5に示すニューラルネットワークモデルとして構成される。ニュー
ラルネットワークモデルは、入力層にあるl個のニューロン(x1~xl)、第1中間層
にあるm個のニューロン(y11~y1m)、第2中間層にあるn個のニューロン(y2
1~y2n)、及び、出力層にあるo個のニューロン(z1~zo)から構成される。
【0075】
入力層の各ニューロンには、学習用データに含まれる入力データのそれぞれが対応付け
られる。出力層の各ニューロンには、学習用データに含まれる出力データのそれぞれが対
応付けられる。なお、入力層に入力する前の入力データに対して所定の前処理を施しもよ
いし、出力層から出力された後の出力データに対して所定の後処理を施しもてもよい。
【0076】
第1中間層及び第2中間層は、隠れ層とも呼ばれており、ニューラルネットワークとし
ては、第1中間層及び第2中間層の他に、さらに複数の隠れ層を有するものでもよいし、
第1中間層のみを隠れ層とするものでもよい。また、入力層と第1中間層との間、第1中
間層と第2中間層との間、第2中間層と出力層との間には、各層のニューロンの間を接続
するシナプスが張られており、それぞれのシナプスには、重みwi(iは自然数)が対応
付けられる。
【0077】
ニューラルネットワークモデルは、学習用データを用いて、当該学習用データに含まれ
る入力データを入力層に入力し、その推論結果として出力層から出力された出力データと
、当該学習用データに含まれる出力データ(教師データ)とを比較することで、入力デー
タと出力データとの相関関係を学習する。
【0078】
具体的には、入力層の各ニューロンには、学習用データに含まれる入力データのそれぞ
れが入力される。そして、出力層の各ニューロンの値は、当該ニューロンに接続される入
力側のニューロンの値と、出力側のニューロンと入力側のニューロンとを接続するシナプ
スに対応付けられた重みwiとの乗算値の数列の和として算出する処理を、入力層以外の
全てのニューロンに対して行うことで算出される。
【0079】
そして、推論結果として出力層の各ニューロンに出力された値(z1~zo)と、学習
用データに含まれる出力データのそれぞれに対応する教師データの値(t1~to)とを
それぞれ比較して誤差を求め、その誤差が小さくなるように、各シナプスに対応付けられ
た重みwiを調整する処理(バックプロバケーション)が実施される。
【0080】
上記の一連の工程を所定回数反復実施すること、又は、上記の誤差が許容値より小さく
なること等の所定の学習終了条件が満たされた場合には、機械学習を終了し、学習済みの
ニューラルネットワークモデル(シナプスのそれぞれに対応付けられた全ての重みwi)
として生成される。
【0081】
(機械学習方法)
図6は、第1の実施形態に係る機械学習装置4による機械学習方法の一例を示すフロー
チャートである。なお、機械学習方法は、図1の学習フェーズに該当する。
【0082】
まず、ステップS10において、学習用データ取得部400は、機械学習を開始するた
めの事前準備として、所望の数の学習用データを準備し、その準備した学習用データを学
習用データ記憶部401に記憶する。ここで準備する学習用データの数については、最終
的に得られる学習モデル6に求められる推論精度を考慮して設定すればよい。
【0083】
学習用データを準備する方法には、いくつかの方法を採用することができる。例えば、
特定の流体供給装置1を診断する場合において、その前後の期間における各種の測定値を
、測定装置3を用いて取得するとともに、作業者が作業者用端末8を用いて、これらの測
定値に対応付ける形で診断結果を入力することで、学習データを構成する入力データと出
力データとを準備する。そして、このような作業を繰り返すことで学習用データを複数組
準備することが可能である。また、他の方法として、例えば、流体供給装置1の対象部を
意図的に所定値にすることで学習用データを取得することも可能である。
【0084】
次に、ステップS11において、機械学習部402は、機械学習を開始すべく、学習前
の学習モデル6を準備する。ここで準備する学習前の学習モデル6は、図5に例示したニ
ューラルネットワークモデルで構成されており、各シナプスの重みが初期値に設定されて
いる。入力層の各ニューロンには、所定期間におけるポンプ12の運転状況のデータ、及
び、所定期間における流体供給先44にて使用された流体の流量のデータのそれぞれが対
応付けられる。出力層の各ニューロンには、学習用データに含まれる出力データとしての
圧力タンク17の封入圧力の診断情報、ポンプの吐出側に設けられたポンプ2次圧センサ
34によって測定された所定期間における2次圧力の診断情報、ポンプの吐出側に設けら
れたフロースイッチ16によって測定された所定期間における流量の診断情報、又は、ポ
ンプの吐出側に設けられた逆止弁15の作動情報等の流体供給装置1の診断情報のそれぞ
れが対応付けられる。
【0085】
次に、ステップS12において、機械学習部402は、学習用データ記憶部401に記
憶された複数組の学習用データから、例えば、ランダムに一の学習用データを取得する。
【0086】
次に、ステップS13において、機械学習部402は、一の学習用データに含まれる入
力データを、準備された学習前(又は学習中)の学習モデル6の入力層に入力する。その
結果、学習モデル6の出力層から推論結果として出力データが出力されるが、当該出力デ
ータは、学習前(又は学習中)の学習モデル6によって生成されたものである。そのため
、学習前(又は学習中)の状態では、推論結果として出力された出力データは、学習用デ
ータに含まれる出力データ(教師データ)とは異なる情報を示す。
【0087】
次に、ステップS14において、機械学習部402は、ステップS12において取得さ
れた一の学習用データに含まれる出力データ(教師データ)と、ステップS14において
出力層から推論結果として出力された出力データとを比較し、各シナプスの重みを調整す
ることで、機械学習を実施する。これにより、機械学習部402は、入力データと出力デ
ータとの相関関係を学習モデル6に学習させる。
【0088】
次に、ステップS15において、機械学習部402は、機械学習を継続する必要がある
か否かを、例えば、出力データと教師データとの誤差や、学習用データ記憶部401内に
記憶された未学習の学習用データの残数に基づいて判定する。
【0089】
ステップS15において、機械学習部402が機械学習を継続すると判定した場合(ス
テップS15でNo)、ステップS12に戻り、学習中の学習モデル6に対してステップ
S12~S14の工程を未学習の学習用データを用いて複数回実施する。一方、ステップ
S15において、機械学習部402が機械学習を終了すると判定した場合(ステップS1
5でYes)、ステップS16に進む。
【0090】
そして、ステップS16において、機械学習部402は、各シナプスに対応付けられた
重みが調整されることで生成された学習済みの学習モデル6を学習済みモデル記憶部40
3に記憶し、図6に示す一連の機械学習方法を終了する。機械学習方法において、ステッ
プS10が学習用データ記憶工程、ステップS11~S15が機械学習工程、ステップS
16が学習済みモデル記憶工程に相当する。
【0091】
以上のように、本実施形態に係る機械学習装置4及び機械学習方法によれば、学習用デ
ータに含まれる入力データとしての所定期間におけるポンプ12の運転状況のデータ、及
び、所定期間における流体供給先44にて使用された流体の流量のデータから、流体供給
装置1の状態を高精度に推論(診断)することが可能な学習モデル6を提供することがで
きる。
【0092】
(状態診断装置5)
図7は、第1の実施形態に係る状態診断装置5の一例を示すブロック図である。
【0093】
状態診断装置5は、入力データ取得部500と、推論部501と、学習済みモデル記憶
部502と、出力処理部503とを備える。状態診断装置5は、例えば、図2に示すコン
ピュータ200で構成される。その場合、入力データ取得部500は、通信I/F部22
2又はI/OデバイスI/F部226で構成され、推論部501及び出力処理部503は
、プロセッサ212で構成され、学習済みモデル記憶部502は、ストレージ装置220
で構成される。なお、状態診断装置5は、流体供給装置1に組み込まれていてもよいし、
流体供給装置1の上位の管理装置(例えば、設備のコントローラ、複数の設備を管理する
設備管理システム等)に組み込まれていてもよい。
【0094】
入力データ取得部500は、流体供給装置1に設けられた測定装置3(ポンプ運転状況
センサ31、及び、使用流量センサ32)に接続され、測定装置3により測定された測定
値に基づく入力データ(所定期間における、ポンプ12の運転状況のデータ、及び、流体
供給先44にて使用された流体の流量のデータ)を取得するインタフェースユニットであ
る。
【0095】
推論部501は、入力データ取得部500により取得された入力データを学習モデル6
に入力し、流体供給装置1の状態を診断する推論処理を行う。推論処理には、機械学習装
置4及び機械学習方法にて教師あり学習が実施された学習済みの学習モデル6が用いられ
る。
【0096】
推論部501は、学習モデル6を用いた推論処理を行う機能のみならず、推論処理の前
処理として、入力データ取得部500により取得された入力データを所望の形式等に調整
して学習モデル6に入力する前処理機能や、推論処理の後処理として、学習モデル6から
出力された出力データの値に所定の論理式や計算式を適用することで、流体供給装置1の
状態を最終的に診断する後処理機能をも含んでいる。なお、推論部501の推論結果は、
学習済みモデル記憶部502や他の記憶装置(不図示)に記憶することが好ましく、過去
の推論結果は、例えば、学習モデル6の推論精度の更なる向上のため、オンライン学習や
再学習に用いられる学習用データとして利用することが可能である。
【0097】
学習済みモデル記憶部502は、推論部501の推論処理にて用いられる学習済みの学
習モデル6を記憶するデータベースである。なお、学習済みモデル記憶部502に記憶さ
れる学習モデル6の数は1つに限定されない。例えば、入力データの数が異なる、又は、
機械学習の手法が異なる複数の学習モデル6が記憶され、選択的に利用可能としてもよい
【0098】
出力処理部503は、推論部501の推論結果、すなわち、流体供給装置1の状態を出
力する処理を行う。具体的な出力手段は、種々の手段を採用することが可能である。出力
処理部503は、例えば、流体供給装置1の状態を、表示や音で作業者に報知したり、流
体供給装置1の状態を履歴として、例えば、流体供給装置1の上位の管理装置(不図示)
に送信し、流体供給装置1の管理装置の記憶部に記憶したり、モータ13の駆動制御等に
利用してもよい。
【0099】
(状態診断方法)
図8は、第1の実施形態に係る状態診断装置5による状態診断方法の一例を示すフロー
チャートである。図8では、流体供給装置1の診断情報が、正常「0」及び異常「1」の
いずれかを表す2値分類として定義されたものとして説明する。なお、流体供給装置1の
診断方法は、図5の推論フェーズに該当する。
【0100】
モータ13に電流が供給されてモータ13が回転駆動されることにより、ポンプ12は
回転された状態となる。このとき、図8に示す一連の状態診断方法が、状態診断装置5に
て所定の診断タイミングにて実行されてもよい。診断タイミングは、例えば、所定の時間
間隔毎でもよいし、所定の事象発生時(作業者の操作指示時、メンテナンス動作時等)で
もよい。
【0101】
まず、ステップS21において、入力データ取得部500が、測定装置3(ポンプ運転
状況センサ31、及び、使用流量センサ32)により測定された測定値に基づく入力デー
タ(所定期間における、ポンプ12の運転状況のデータ、及び、流体供給先44にて使用
された流体の流量のデータ)を取得する。このとき、入力データは、所定期間と同一期間
又は所定期間よりも長期間において測定装置3にて測定された測定値を含むことが要求さ
れる。
【0102】
次に、ステップS22において、推論部501は、入力データに前処理を施して学習モ
デル6の入力層に入力し、その学習モデル6の出力層から出力された出力データを取得す
る。
【0103】
次に、ステップS23において、推論部501は、教師あり学習の後処理の一例として
、出力データの値(0■1の間の数)と、所定の閾値とを比較し、例えば、出力データの
値が、所定の閾値未満であれば、診断情報は「正常」であると判断し、所定の閾値以上で
あれば、診断情報は「異常」であると判断することで、その判断結果を推論結果として出
力する。
【0104】
次に、ステップS24において、出力処理部503は、推論部501の推論結果である
流体供給装置1の診断情報が「正常」及び「異常」のいずれを表すかを判定し、「正常」
と判定した場合には、ステップS25に進み、「異常」と判定した場合には、ステップS
26に進む。
【0105】
そして、ステップS25において、出力処理部503は、「正常」を表す情報を出力す
る。なお、ステップS25は省略されてもよい。
【0106】
また、ステップS26において、出力処理部503は、「異常」を表す情報を出力し、
図8に示す一連の流体供給装置1の診断方法を終了する。流体供給装置1の診断方法にお
いて、ステップS20が入力データ取得工程、ステップS21~S22が推論工程、ステ
ップS23~S25が出力処理工程に相当する。
【0107】
以上のように、本実施形態に係る状態診断装置5及び状態診断方法によれば、作業者の
経験に依存することなく、流体供給装置1の状態を高精度に診断することができる。
【0108】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、機械学習の手法として、「教師あり学習」を採用した場合につい
て説明したが、本実施形態では、「教師なし学習」を採用した場合について説明する。な
お、第2の実施形態に係る流体供給装置1及び流体供給装置診断システム2を構成する測
定装置3、機械学習装置4及び状態診断装置5の基本的な構成や動作は、第1の実施形態
と同様であるため、以下では第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0109】
(機械学習装置4)
機械学習装置4は、第1の実施形態(図4参照)と同様に、学習用データ取得部400
と、学習用データ記憶部401と、機械学習部402と、学習済みモデル記憶部403と
を備える。
【0110】
図9は、第2の実施形態に係る機械学習装置4で使用されるデータ(教師なし学習)の
一例を示すデータ構成図である。
【0111】
機械学習として「教師なし学習」を採用する場合、学習データは、診断情報が所定期間
における流体供給装置1の状態が所定の状態であることを表すときの入力データのみを含
む。すなわち、学習データは、出力データを含まない構成としてもよく、機械学習装置4
が採用する機械学習の手法に応じて出力データの有無や出力データの形式を適宜選択する
ことができる。
【0112】
流体供給装置1の状態として、異常の有無を診断する場合には、診断情報は、流体供給
装置1の状態が正常及び異常のいずれかであることを表す情報として構成される。この場
合に、本実施形態に係る学習用データは、図9に示すように、流体供給装置1の状態が正
常であるときの所定期間における、ポンプ12の運転状況のデータ、及び、流体供給先4
4にて使用された流体の流量のデータのみで構成される。
【0113】
学習用データ取得部400は、上記の学習用データを取得する場合、流体供給装置1に
設けられた測定装置3にて測定された所定期間における、ポンプ12の運転状況のデータ
、及び、流体供給先44にて使用された流体の流量のデータを入力データとして、測定装
置3から取得する。そして、作業者が、測定装置3にて入力データが測定された所定期間
における流体供給装置1の状態を診断し、その診断した診断結果が正常であることを作業
者用端末8に入力すると、学習用データ取得部400は、その入力データのみで一の学習
用データを構成し、学習用データ記憶部401に記憶する。
【0114】
機械学習部402は、学習モデル6に学習用データを一又は複数組入力することで、学
習用データに含まれる入力データと流体供給装置1の状態が正常であることを表す診断情
報との相関関係を学習モデル6に学習させることで、学習済みの学習モデル6を生成する
。本実施形態では、機械学習部402による教師なし学習の具体的な手法として、オート
エンコーダを採用する場合について説明する。
【0115】
図10は、第2の実施形態に係る機械学習装置4で使用されるオートエンコーダモデル
の一例を示す模式図である。
【0116】
学習モデル6は、図10に示すオートエンコーダモデルとして構成される。オートエン
コーダモデルは、入力層にあるl個のニューロン(x1~xl)、中間層にあるm個のニ
ューロン(y1~ym)、及び、出力層にあるo個のニューロン(z1~zo)から構成
される。入力層と出力層のニューロンの個数は同じであり、中間層のニューロンの個数よ
りも多い。
【0117】
入力層の各ニューロンには、学習用データに含まれる入力データのそれぞれが対応付け
られる。中間層は、隠れ層とも呼ばれており、複数の隠れ層を有するものでもよい。また
、入力層と中間層との間、中間層と出力層との間には、各層のニューロンの間を接続する
シナプスが張られており、それぞれのシナプスには、重みwi(iは自然数)が対応付け
られる。
【0118】
オートエンコーダモデルは、学習用データを用いて、当該学習用データに含まれる入力
データを入力層に入力し、その推論結果として出力層から出力された出力データと、当該
学習用データに含まれる入力データとを比較し、重みwiを調整する処理を実施すること
で、入力データが有するパターンや傾向を学習する。
【0119】
上記の一連の工程を所定回数反復実施すること、又は、上記の誤差が許容値より小さく
なること等の所定の学習終了条件が満たされた場合には、機械学習を終了し、学習済みの
オートエンコーダモデル(シナプスのそれぞれに対応付けられた全ての重みwi)として
生成される。
【0120】
(機械学習方法)
図11は、第2の実施形態に係る機械学習装置4による機械学習方法の一例を示すフロ
ーチャートである。
【0121】
まず、ステップS30において、学習用データ取得部400は、機械学習を開始するた
めの事前準備として、所望の数の学習用データを準備し、その準備した学習用データを学
習用データ記憶部401に記憶する。
【0122】
学習用データを準備する方法には、いくつかの方法を採用することができる。例えば、
特定の流体供給装置1が正常な状態である場合の所定期間における各種の測定値を、測定
装置3を用いて取得することで、学習データを構成する入力データを準備する。そして、
このような作業を繰り返すことで学習用データを複数組準備することが可能である。
【0123】
次に、ステップS31において、機械学習部402は、機械学習を開始すべく、学習前
の学習モデル6を準備する。ここで準備する学習前の学習モデル6は、図10に例示した
オートエンコーダモデルで構成されており、各シナプスの重みが初期値に設定されている
。入力層の各ニューロンには、学習用データに含まれる入力データとしてのポンプ12の
運転状況のデータ、及び、流体供給先44にて使用された流体の流量のデータのそれぞれ
が対応付けられる。
【0124】
次に、ステップS32において、機械学習部402は、学習用データ記憶部401に記
憶された複数組の学習用データから、例えば、ランダムに一の学習用データを取得する。
【0125】
次に、ステップS33において、機械学習部402は、一の学習用データに含まれる入
力データを、準備された学習前(又は学習中)の学習モデル6の入力層に入力する。その
結果、学習モデル6の出力層から推論結果として出力データが出力されるが、当該出力デ
ータは、学習前(又は学習中)の学習モデル6によって生成されたものである。そのため
、学習前(又は学習中)の状態では、推論結果として出力された出力データは、学習用デ
ータに含まれる入力データとは異なる情報を示す。
【0126】
次に、ステップS34において、機械学習部402は、ステップS32において取得さ
れた一の学習用データに含まれる入力データと、ステップS33において出力層から推論
結果として出力された出力データとを比較し、各シナプスの重みを調整することで、機械
学習を実施する。
【0127】
次に、ステップS35において、機械学習部402は、機械学習を継続する必要がある
か否かを判定する。その結果、継続すると判定した場合(ステップS35でNo)、ステ
ップS32に戻り、学習中の学習モデル6に対してステップS32~S34の工程を実施
し、機械学習を終了すると判定した場合(ステップS35でYes)、ステップS36に
進む。
【0128】
そして、機械学習部402は、ステップS36において、各シナプスに対応付けられた
重みが調整されることで生成された学習済みの学習モデル6を学習済みモデル記憶部40
3に記憶し、図11に示す一連の機械学習方法を終了する。機械学習方法において、ステ
ップS30が学習用データ記憶工程、ステップS31~S35が機械学習工程、ステップ
S36が学習済みモデル記憶工程に相当する。
【0129】
以上のように、本実施形態に係る機械学習装置4及び機械学習方法によれば、所定期間
における、ポンプ12の運転状況のデータ、及び、流体供給先44にて使用された流体の
流量のデータから、流体供給装置1の診断情報を高精度に推論(診断)することが可能な
学習モデル6を提供することができる。
【0130】
(流体供給装置1)
流体供給装置1は、第1の実施形態(図7参照)と同様に、入力データ取得部500と
、推論部501と、学習済みモデル記憶部502と、出力処理部503とを備える。
【0131】
推論部501は、入力データ取得部500により取得された入力データを学習モデル6
に入力し、流体供給装置1の診断情報を推論する推論処理を行う。推論処理には、機械学
習装置4及び機械学習方法にて教師なし学習が実施された学習済みの学習モデル6が用い
られる。
【0132】
(状態診断方法)
図12は、第2の実施形態に係る状態診断方法の一例を示すフローチャートである。図
12では、流体供給装置1の診断情報が、正常及び異常のいずれかであることを表す2値
分類として定義されたものとして説明する。
【0133】
まず、ステップS40において、入力データ取得部500が、測定装置3(ポンプ運転
状況センサ31及び使用流量センサ32)により測定された測定値に基づく入力データ(
所定期間における、ポンプ12の運転状況のデータ、及び、流体供給先44にて使用され
た流体の流量のデータ)を取得する。
【0134】
次に、ステップS41において、推論部501は、入力データに前処理を施して学習モ
デル6の入力層に入力し、その学習モデル6の出力層から出力された出力データを取得す
る。
【0135】
次に、ステップS42において、推論部501は、教師なし学習の後処理の一例として
、入力データに基づく特徴量と、出力データに基づく特徴量との差を求める。特徴量は、
例えば、多次元空間上の特徴ベクトルとして表現されるパラメータであり、差は、特徴ベ
クトル間の距離として表現される。そして、推論部501は、その差が所定の閾値未満で
あれば、診断情報は「正常」であると判断し、所定の閾値以上であれば、診断情報は「異
常」であると判断することで、その判断結果を推論結果として出力する。
【0136】
次に、ステップS43において、出力処理部503は、推論部501の推論結果である
流体供給装置1の診断情報が「正常」及び「異常」のいずれを表すかを判定する。その結
果、「正常」と判定した場合には、ステップS44に進み、「異常」と判定した場合には
、ステップS45(省略可能)に進み、図12に示す一連の流体供給装置診断方法を終了
する。状態診断方法において、ステップS40が入力データ取得工程、ステップS41~
S42が推論工程、ステップS43~S45が出力処理工程に相当する。
【0137】
以上のように、本実施形態に係る状態診断装置5及び状態診断方法によれば、作業者の
経験に依存することなく、流体供給装置1の状態を高精度に診断することができる。
【0138】
(他の実施形態)
本発明は上述した実施形態に制約されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲
内で種々変更して実施することが可能である。そして、それらはすべて、本発明の技術思
想に含まれるものである。
【0139】
上記実施形態では、機械学習部402による機械学習の具体的な手法として、ニューラ
ルネットワークをそれぞれ採用した場合について説明したが、機械学習部402は、任意
の他の機械学習の手法を採用してもよい。他の機械学習の手法としては、例えば、決定木
、回帰木等のツリー型、バギング、ブースティング等のアンサンブル学習、再帰型ニュー
ラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク等のニューラルネット型(ディープ
ラーニングを含む)、階層型クラスタリング、非階層型クラスタリング、k近傍法、k平
均法等のクラスタリング型、主成分分析、因子分析、ロジスティク回帰等の多変量解析、
サポートベクターマシン等が挙げられる。
【0140】
本発明は、図2に示すコンピュータ200に、上記実施形態に係る機械学習方法が備え
る各工程を実行させるためのプログラム(機械学習プログラム)230の態様で提供する
こともできる。また、本発明は、図2に示すコンピュータ200に、上記実施形態に係る
状態診断方法が備える各工程を実行させるためのプログラム(状態診断プログラム)23
0の態様で提供することもできる。
【0141】
(推論装置、推論方法及び推論プログラム)
本発明は、上記実施形態に係る状態診断装置5(状態診断方法又は状態診断プログラム
)の態様によるもののみならず、流体供給装置1の状態を診断するために用いられる推論
装置(推論方法又は推論プログラム)の態様で提供することもできる。その場合、推論装
置(推論方法又は推論プログラム)としては、メモリと、プロセッサとを含み、このうち
のプロセッサが、一連の処理を実行するものとすることができる。当該一連の処理とは、
所定期間における、ポンプ12の運転状況のデータ、及び、流体供給先44にて使用され
た流体の流量のデータを含む入力データを取得する入力データ取得処理(入力データ取得
工程)と、入力データ取得処理にて入力データを取得すると、流体供給装置1の状態診断
情報を推論する推論処理(推論工程)とを含む。
【0142】
推論装置(推論方法又は推論プログラム)の態様で提供することで、状態診断装置5を
実装する場合に比して簡単に種々の装置への適用が可能となる。推論装置(推論方法又は
推論プログラム)が流体供給装置1の状態を推論する際、上記実施形態に係る機械学習装
置4及び機械学習方法により生成された学習済みの学習モデル6を用いて、状態診断装置
5の推論部501が実施する推論手法を適用してもよいことは、当業者にとって当然に理
解され得るものである。
【符号の説明】
【0143】
1…流体供給装置、
12…ポンプ、13…モータ、14…インバータ、17…圧力タンク、
41…流体供給源、44…流体供給先、
2…状態診断システム、
3…測定装置、31…ポンプ運転状況センサ、32…使用流量センサ、33…ポンプ1次
圧センサ、34…ポンプ2次圧センサ、
4…機械学習装置、5…状態診断装置、6…学習モデル、
400…学習用データ取得部、401…学習用データ記憶部、402…機械学習部、40
3…モデル記憶部、
500…入力データ取得部、501…推論部、502…モデル記憶部、503…出力処理
部、
200…コンピュータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12