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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124445
(43)【公開日】2022-08-25
(54)【発明の名称】フレーム、及び保護具
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20220818BHJP
   A62B 18/08 20060101ALI20220818BHJP
【FI】
A41D13/11 H
A41D13/11 L
A62B18/08 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021144681
(22)【出願日】2021-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2021021653
(32)【優先日】2021-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 純
(72)【発明者】
【氏名】片野 祥吾
(72)【発明者】
【氏名】石井 英二
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA06
2E185BA07
(57)【要約】
【課題】フレームの装着状態においてフィルムの固定箇所が目立ち難いフレームを提供する。
【解決手段】保護具用のフレーム10であって、湾曲部11と、湾曲部11の両端からフレームの後端側に延びる第1当接部12及び第2当接部16と、第1当接部12又は第2当接部16と連続し各当接部とは反対側の端がフレームの前端側を向くように屈曲した第1屈曲部13及び第2屈曲部17と、各屈曲部における第1当接部又は第2当接部とは反対側の端から延出した第1延出部14及び第2延出部18と、各延出部に設けられてフィルム50を固定するための第1固定部15及び第2固定部19と、を備え、フレーム装着状態では、第1当接部12と第2当接部16とによって頭部を挟み込み、且つ、第1固定部15及び第2固定部19により固定されたフィルム50を、顔の正面で顔と対向させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔面保護用のフィルムを固定し、頭部に装着可能なフレームであって、
湾曲して延びている湾曲部と、
前記湾曲部の一端から前記湾曲部に沿って前記フレームの後端側に延び、一方の側頭部と当接する第1当接部と、
前記湾曲部の他端から前記湾曲部に沿って前記フレームの後端側に延び、他方の側頭部と当接する第2当接部と、
前記第1当接部と連続し、前記第1当接部とは反対側の端が前記フレームの前端側を向くように屈曲した第1屈曲部と、
前記第2当接部と連続し、前記第2当接部とは反対側の端が前記フレームの前端側を向くように屈曲した第2屈曲部と、
前記第1屈曲部における前記第1当接部とは反対側の端から延出した第1延出部と、
前記第2屈曲部における前記第2当接部とは反対側の端から延出した第2延出部と、
前記第1延出部に設けられ、前記フィルムを固定するための第1固定部と、
前記第2延出部に設けられ、前記フィルムを固定するための第2固定部と、を備え、
前記フレームが前記頭部に装着された状態では、前記第1当接部と前記第2当接部とによって前記頭部を挟み込み、且つ、前記第1固定部及び前記第2固定部により固定された前記フィルムを顔の正面で前記顔と対向させる、フレーム。
【請求項2】
顔面保護用のフィルムを固定し、頭部に装着可能なフレームであって、
湾曲して延びている湾曲部と、
前記湾曲部の一端から前記湾曲部に沿って前記フレームの後端側に延び、一方の側頭部と当接する第1当接部と、
前記湾曲部の他端から前記湾曲部に沿って前記フレームの後端側に延び、他方の側頭部と当接する第2当接部と、
前記第1当接部に設けられ、前記フィルムを固定するための第1固定部と、
前記第2当接部に設けられ、前記フィルムを固定するための第2固定部と、を備え、
前記フレームが前記頭部に装着された状態では、前記第1当接部及び前記第2当接部の各々における前記湾曲部とは反対側の端を耳の後端よりも前側に位置させ、前記第1当接部と前記第2当接部とによって前記頭部を挟み込み、且つ、前記第1固定部及び前記第2固定部により固定された前記フィルムを、顔の正面で前記顔と対向させる、フレーム。
【請求項3】
前記第1延出部は、前記第1屈曲部における前記第1当接部とは反対側の端から円弧状に延出し、前記フレームが前記頭部に装着された状態では耳よりも前側に位置し、
前記第2延出部は、前記第2屈曲部における前記第2当接部とは反対側の端から円弧状に延出し、前記フレームが前記頭部に装着された状態では耳よりも前側に位置する、請求項1に記載のフレーム。
【請求項4】
前記湾曲部は、円弧状に湾曲し、弾性を有し、前記フレームが前記頭部に装着された状態では前頭部に沿って前記前頭部と当接する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のフレーム。
【請求項5】
前記湾曲部は、前記フレームが前記頭部に装着された状態では前記フィルムよりも上側に位置する、請求項4に記載のフレーム。
【請求項6】
前記第1固定部及び前記第2固定部のうちの少なくとも一方は、2つ以上の固定箇所にて前記フィルムを固定する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のフレーム。
【請求項7】
前記第1固定部及び前記第2固定部の各々は、前記フィルムが前記第1固定部及び前記第2固定部に対して着脱可能な状態で前記フィルムを固定する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のフレーム。
【請求項8】
前記第1固定部は、前記フィルムの横幅方向における一端部を固定し、
前記第2固定部は、前記フィルムの横幅方向における他端部を固定する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のフレーム。
【請求項9】
前記フレームの各部分が金属によって構成されている、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のフレーム。
【請求項10】
前記フレームが前記頭部に装着された状態では、前記第1固定部及び前記第2固定部により固定された前記フィルムが、前記フィルムによって少なくとも前記顔の口部分が覆われる位置に配置される、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のフレーム。
【請求項11】
顔面保護用のフィルムと、
前記フィルムを固定し、頭部に装着可能なフレームと、を備え、
前記フレームは、
湾曲して延びている湾曲部と、
前記湾曲部の一端から前記湾曲部に沿って前記フレームの後端側に延び、一方の側頭部と当接する第1当接部と、
前記湾曲部の他端から前記湾曲部に沿って前記フレームの後端側に延び、他方の側頭部と当接する第2当接部と、
前記第1当接部と連続し、前記第1当接部とは反対側の端が前記フレームの前端側を向くように屈曲した第1屈曲部と、
前記第2当接部と連続し、前記第2当接部とは反対側の端が前記フレームの前端側を向くように屈曲した第2屈曲部と、
前記第1屈曲部における前記第1当接部とは反対側の端から延出した第1延出部と、
前記第2屈曲部における前記第2当接部とは反対側の端から延出した第2延出部と、
前記第1延出部に設けられ、前記フィルムを固定するための第1固定部と、
前記第2延出部に設けられ、前記フィルムを固定するための第2固定部と、を備え、
前記フレームが前記頭部に装着された状態では、前記第1当接部と前記第2当接部とによって前記頭部を挟み込み、且つ、前記第1固定部及び前記第2固定部により固定された前記フィルムを、顔の正面で前記顔と対向させる、保護具。
【請求項12】
顔面保護用のフィルムと、
前記フレームを固定し、頭部に装着可能なフレームと、を備え、
前記フレームは、
湾曲して延びている湾曲部と、
前記湾曲部の一端から前記湾曲部に沿って前記フレームの後端側に延び、一方の側頭部と当接する第1当接部と、
前記湾曲部の他端から前記湾曲部に沿って前記フレームの後端側に延び、他方の側頭部と当接する第2当接部と、
前記第1当接部に設けられ、前記フィルムを固定するための第1固定部と、
前記第2当接部に設けられ、前記フィルムを固定するための第2固定部と、を備え、
前記フレームが前記頭部に装着された状態では、前記第1当接部及び前記第2当接部の各々における前記湾曲部とは反対側の端を耳の後端よりも前側に位置させ、前記第1当接部と前記第2当接部とによって前記頭部を挟み込み、且つ、前記第1固定部及び前記第2固定部により固定された前記フィルムを、顔の正面で前記顔と対向させる、保護具。
【請求項13】
前記フィルムは、飛沫飛散防止用のフィルムであり、
前記フレームが前記頭部に装着された状態では、前記第1固定部及び前記第2固定部により固定された前記フィルムが、前記フィルムによって少なくとも前記顔の口部分が覆われる位置に配置される、請求項11又は12に記載の保護具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレームに係り、特に、顔面保護用のフィルムを固定し、頭部に装着可能なフレームに関する。また、本発明は、上記のフレームに顔面保護用のフィルムを固定して構成される保護具に関する。
【背景技術】
【0002】
感染症防止目的等のために利用される保護具は、例えば、利用者の顔の一部又は全部を覆うフィルムを、利用者の頭部に装着可能なフレームによって固定することで構成される。保護具のフレームは、例えば、ヘアバンドのように略環状の可撓部材からなり、前頭部に沿って額付近と当接し、頭部の略全周を囲うように頭部に装着される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、特許文献1に記載の保護具では、フレーム装着状態では、フレームにおけるフィルム固定箇所が頭部の前側に位置している。具体的には、特許文献1に記載のフレームでは、フィルム固定用のビスが、利用者の額と同じ高さにあり、且つ利用者の顔の中心から若干側方にずれた位置に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-305271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の保護具のようにフレームにおけるフィルム固定箇所が利用者の頭部の前側に位置していると、保護具の利用者の見た目、特に顔を正面から見た際の印象に対して、フィルム固定箇所による影響が及ぶ場合がある。具体的に説明すると、例えば、フィルム固定箇所が利用者の頭部の前側に位置している場合には、保護具の利用者と対面する者(以下、対面者という)が、フレームにおけるフィルム固定箇所の存在に気付き易くなる。この場合、対面者は、利用者の顔付近に異物が存在するという印象(違和感)を感じ得る。
【0006】
一方、対面者が利用者と対面した際の印象を向上させる上では、保護具を装着した利用者の顔の見た目を、より自然な状態(保護具を装着していない状態)での見た目に近付けることが好ましい。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、以下に示す目的を解決することを課題とする。
本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、フレームの装着状態においてフィルムの固定箇所が目立ち難いフレームを提供することを目的とする。
また、本発明は、上記のフレームによってフィルムを固定して構成された保護具を提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、以下の構成により上記目的を達成することができることを見出した。
[1] 顔面保護用のフィルムを固定し、頭部に装着可能なフレームであって、湾曲して延びている湾曲部と、湾曲部の一端から湾曲部に沿ってフレームの後端側に延び、一方の側頭部と当接する第1当接部と、湾曲部の他端から湾曲部に沿ってフレームの後端側に延び、他方の側頭部と当接する第2当接部と、第1当接部と連続し、第1当接部とは反対側の端がフレームの前端側を向くように屈曲した第1屈曲部と、第2当接部と連続し、第2当接部とは反対側の端がフレームの前端側を向くように屈曲した第2屈曲部と、第1屈曲部における第1当接部とは反対側の端から延出した第1延出部と、第2屈曲部における第2当接部とは反対側の端から延出した第2延出部と、第1延出部に設けられ、フィルムを固定するための第1固定部と、第2延出部に設けられ、フィルムを固定するための第2固定部と、を備え、フレームが頭部に装着された状態では、第1当接部と第2当接部とによって頭部を挟み込み、且つ、第1固定部及び第2固定部により固定されたフィルムを、顔の正面で顔と対向させる、フレーム。
[2] 顔面保護用のフィルムを固定し、頭部に装着可能なフレームであって、湾曲して延びている湾曲部と、湾曲部の一端から湾曲部に沿ってフレームの後端側に延び、一方の側頭部と当接する第1当接部と、湾曲部の他端から湾曲部に沿ってフレームの後端側に延び、他方の側頭部と当接する第2当接部と、第1当接部に設けられ、フィルムを固定するための第1固定部と、第2当接部に設けられ、フィルムを固定するための第2固定部と、を備え、フレームが頭部に装着された状態では、第1当接部及び第2当接部の各々における湾曲部とは反対側の端を耳の後端よりも前側に位置させ、第1当接部と第2当接部とによって頭部を挟み込み、且つ、第1固定部及び第2固定部により固定されたフィルムを、顔の正面で顔と対向させる、フレーム。
[3] 第1延出部は、第1屈曲部における第1当接部とは反対側の端から円弧状に延出し、フレームが頭部に装着された状態では耳よりも前側に位置し、第2延出部は、第2屈曲部における第2当接部とは反対側の端から円弧状に延出し、フレームが頭部に装着された状態では耳よりも前側に位置する、[1]に記載のフレーム。
[4] 湾曲部は、円弧状に湾曲し、弾性を有し、フレームが頭部に装着された状態では前頭部に沿って前頭部と当接する、[1]乃至[3]のいずれかに記載のフレーム。
[5] 湾曲部は、フレームが頭部に装着された状態ではフィルムよりも上側に位置する、[4]に記載のフレーム。
[6] 第1固定部及び第2固定部のうちの少なくとも一方は、2つ以上の固定箇所にてフィルムを固定する、[1]乃至[5]のいずれかに記載のフレーム。
[7] 第1固定部及び第2固定部の各々は、フィルムが第1固定部及び第2固定部に対して着脱可能な状態でフィルムを固定する、[1]乃至[6]のいずれかに記載のフレーム。
[8] 第1固定部は、フィルムの横幅方向における一端部を固定し、第2固定部は、フィルムの横幅方向における他端部を固定する、[1]乃至[7]のいずれかに記載のフレーム。
[9] フレームの各部分が金属によって構成されている、[1]乃至[8]のいずれかに記載のフレーム。
[10] フレームが頭部に装着された状態では、第1固定部及び第2固定部により固定されたフィルムが、フィルムによって少なくとも顔の口部分が覆われる位置に配置される、[1]乃至[9]のいずれかに記載のフレーム。
【0009】
[11] 顔面保護用のフィルムと、フィルムを固定し、頭部に装着可能なフレームと、を備え、フレームは、湾曲して延びている湾曲部と、湾曲部の一端から湾曲部に沿ってフレームの後端側に延び、一方の側頭部と当接する第1当接部と、湾曲部の他端から湾曲部に沿ってフレームの後端側に延び、他方の側頭部と当接する第2当接部と、第1当接部と連続し、第1当接部とは反対側の端がフレームの前端側を向くように屈曲した第1屈曲部と、第2当接部と連続し、第2当接部とは反対側の端がフレームの前端側を向くように屈曲した第2屈曲部と、第1屈曲部における第1当接部とは反対側の端から延出した第1延出部と、第2屈曲部における第2当接部とは反対側の端から延出した第2延出部と、第1延出部に設けられ、フィルムを固定するための第1固定部と、第2延出部に設けられ、フィルムを固定するための第2固定部と、を備え、フレームが頭部に装着された状態では、第1当接部と第2当接部とによって頭部を挟み込み、且つ、第1固定部及び第2固定部により固定されたフィルムを、顔の正面で顔と対向させる、保護具。
[12] 顔面保護用のフィルムと、フレームを固定し、頭部に装着可能なフレームと、を備え、フレームは、湾曲して延びている湾曲部と、湾曲部の一端から湾曲部に沿ってフレームの後端側に延び、一方の側頭部と当接する第1当接部と、湾曲部の他端から湾曲部に沿ってフレームの後端側に延び、他方の側頭部と当接する第2当接部と、第1当接部に設けられ、フィルムを固定するための第1固定部と、第2当接部に設けられ、フィルムを固定するための第2固定部と、を備え、フレームが頭部に装着された状態では、第1当接部及び第2当接部の各々における湾曲部とは反対側の端を耳の後端よりも前側に位置させ、第1当接部と第2当接部とによって頭部を挟み込み、且つ、第1固定部及び第2固定部により固定されたフィルムを、顔の正面で顔と対向させる、保護具。
[13] フィルムは、飛沫飛散防止用のフィルムであり、フレームが頭部に装着された状態では、第1固定部及び第2固定部により固定されたフィルムが、フィルムによって少なくとも顔の口部分が覆われる位置に配置される、[11]又は[12]に記載の保護具。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、フレームの装着状態においてフィルムの固定箇所が目立ち難いフレーム、及び、当該フレームによってフィルムを固定して構成された保護具が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態に係る保護具を示す図である。
図2】第1の実施形態に係る保護具を装着した利用者の頭部を側方から見た図である。
図3】フィルムの固定箇所についての変形例を示す図である。
図4】第1の実施形態に係る保護具の変形例を示す図である。
図5】従来例に係る保護具を装着した利用者の頭部を正面から見た図である。
図6】第2の実施形態に係る保護具を示す図である。
図7】第2の実施形態に係る保護具を装着した利用者の頭部を測層から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のフレーム及び保護具について、添付の図面に示す二つの好適な実施形態(第1実施形態及び第2実施形態)を参照しながら、以下に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするために挙げた具体例の一つにすぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、以下に説明する実施形態から変更又は改良され得る。また、当然ながら、本発明には、その等価物が含まれる。
【0013】
また、本明細書において、本発明のフレーム中の各部分の位置及び状態等を説明する場合には、特に断る場合を除き、フレームが装着されているときの位置及び状態等を説明することとする。また、以下の説明中、「前」及び「後」は、フレームを装着した着用者から見たときの「前」及び「後」を意味する。
また、本明細書において、頭部の一部分と「当接する」とは、その部分に直接接する場合に加え、髪を介して当該部分に触れることも含まれる。
【0014】
(第1実施形態について)
本発明の第1実施形態に係るフレーム(以下、フレーム10)は、顔面保護用のフィルム(以下、フィルム50)を固定し、利用者の頭部に装着可能なフレームである。つまり、フレーム10は、フィルム50とともに図1に図示の保護具1を構成する。
【0015】
保護具1は、所謂フェイスガード又はマウスシールドであり、その主たる用途は、利用者の口から放出される唾滴等の飛沫が飛散するのを防止することである。すなわち、フィルム50は、飛沫飛散防止用のフィルムであり、フレーム10が頭部に装着された状態では、図2又は3に示すように、少なくとも利用者の顔の口部分を覆う位置に配置される。なお、フェイスガードとして機能する保護具1(図1及び2に示す保護具)は、利用者の顔に飛沫及び浮遊物等が付着するのを防ぐ目的にも利用され得る。その場合には、フィルム50を顔の目を覆う位置に配置することもできる。
【0016】
フィルム50の材質及び厚み等の寸法値等については、特に限定されるものではない。例えば、フィルム50の材質は、意匠性、特に保護具1を利用した状態での利用者の顔が良好に視認できる透明性(光透過性)が高いものであることが好ましく、無色透明のものが特に好ましい。本発明のフレーム10とフィルム50を組み合わせた際、対面者にとって、利用者が保護具1を装着している印象を特に弱める視覚的効果が高いからである。フィルム50の好適な材質の一例としては、トリアセチルセルロース(Triacetylcellulose:TAC)、ポリエチレンテレフタレート、及びポリカーボネート等のフィルムが挙げられる。透明性の点では、トリアセチルセルロースが好ましい。また、フィルム50の片面若しくは両面に反射防止のコートを付与してもよい。また、フィルム50をフレーム10の両端の間に掛け渡して顔の正面に対向するように配置した際の強度から考えて、フィルム50の厚みは、80μm以上が好ましい。また、フレーム10にフィルム50を固定した際のフィルム50の曲げやすさや重量感の点から考えて、フィルム50の厚みは、500μm以下が好ましい。さらに、フィルム50の厚みについては、100μm以上且つ300μm以下であるとより好ましく、110μm以上且つ250μm以下であるのが特に好ましい。
【0017】
フレーム10は、図1に示すように、三次元状に折り曲げられた形状をなし、フレーム幅方向の中心位置を基準として対称な形状となっている。具体的に説明すると、フレーム10は、円弧状に湾曲して延びる湾曲部11を備える。また、図1に示すように、フレーム10の一端部には、湾曲部11に近い側から順に、第1当接部12、第1屈曲部13及び第1延出部14が設けられ、第1延出部14には第1固定部15が設けられている。フレーム10の他端部には、湾曲部11に近い側から順に、第2当接部16、第2屈曲部17及び第2延出部18が設けられ、第2延出部18には第2固定部19が設けられている。
【0018】
上述したフレーム10の各部分は、樹脂又は金属によって構成されてもよい。フレーム10の材質としては、頭部に固定する際のばね性を付与できる材料が好ましい。さらに、フレーム10の材質については、ばね性及び強度を付与する材料の剛性、また使用感に関する軽量性、及び材料コスト等の観点から適宜選択することができる。また、ばね性の観点から、金属からなるフレーム10であれば、細くしても十分な強度を確保することができ、より細くなるほど装着時に目立ち難くなる。なお、フレーム10の材質として利用する金属としては、鋼又はステンレス、あるいはアルミ又はチタン等の比較的軽量な金属又はその合金等が好ましい。また、金属の形状は、針金又はワイヤ等のような細長い芯線形状であってもよく、若干の幅を有するリボン形状であってもよい。なお、フレーム10の各部分の材質及び形状は、特に限定されず、例えばフレーム10の一部又は全部がプラスチック等の樹脂成型品であってもよい。
【0019】
フレーム10は、例えば一体成型品であってもよく、換言すると、フレーム10中の各部分が同一材料によって構成されてもよい。この場合には、フレーム10をより簡単に製造することができる。ただし、フレーム10中の一部が他の部分と異なってもよく、例えば、湾曲部11とそれ以外の部分とが異なる構成であってもよい。具体的には、湾曲部11が金属芯線によって構成され、湾曲部11以外の部分が金属芯線を樹脂、布又は紙等にて被覆することで構成されてもよい。
【0020】
また、フレーム10が装飾品として利用されることを考慮して、フレーム10中の各部分には加飾処理が施されてもよい。
【0021】
以下、フレーム10の各部分について詳しく説明する。湾曲部11は、円弧状に湾曲した部分であり、後端が開いている。また、湾曲部11は、弾性を有し、フレーム10を装着する際には後端の開き度合いが大きくなるように(換言すると、湾曲部11の曲率が小さくなるように)弾性変形する。
【0022】
第1当接部12は、図1及び2に示すように、湾曲部11の一端(具体的には、左端)側で湾曲部11と隣接し、湾曲部11を延長させた部分に相当する。すなわち、第1当接部12は、湾曲部11に沿ってフレーム10の後端側に延びている。第2当接部16は、第1当接部12と対称形状であり、湾曲部11の他端(具体的には、右端)側で湾曲部11と隣接し、湾曲部11に沿ってフレーム10の後端側に延びている。第1当接部12及び第2当接部16の各々は、湾曲部11と連続しており、湾曲部11と同一の太さ(又は幅)を有する。
【0023】
第1屈曲部13は、図1及び2に示すように、湾曲部11とは反対側で第1当接部12と連続する部分である。第1屈曲部13は、第1当接部12とは反対側の端(下端)がフレーム10の前端側を向くように略L字状又は略V字状に屈曲している。第2屈曲部17は、第1屈曲部13と対称形状であり、湾曲部11とは反対側で第2当接部16と連続する部分である。第2屈曲部17は、第2当接部16とは反対側の端(下端)がフレーム10の前端側を向くように略L字状又は略V字状に屈曲している。なお、第1屈曲部13及び第2屈曲部17は、フレーム10の後端部分をなし、それぞれの屈曲部位は、フレーム10の後端に存在する。
【0024】
第1延出部14は、図1及び2に示すように、第1屈曲部13における第1当接部12とは反対側の端(下端)から下方に延出した部分である。第1延出部14は、図2に示すように緩やかに円弧状に湾曲しており、厳密には前側に向かって凸となる円弧をなすように湾曲している。第2延出部18は、第1延出部14と対称形状であり、第2屈曲部17における第2当接部16とは反対側の端(下端)から下方に延出した部分であり、緩やかに円弧状に湾曲している。
【0025】
第1固定部15は、フィルム50を固定するために第1延出部14に設けられた部分である。第1固定部15は、第1延出部14の外側面に設けられており、図1に示す構成では、第1延出部14の外側面から突出した嵌合突起15aを備える。嵌合突起15aは、フィルム50の横幅方向における一端部に形成された嵌合孔50aと嵌合可能である。嵌合突起15aが嵌合孔50aに嵌合することにより、フィルム50の横幅方向の一端部が第1固定部15に固定される。なお、第1固定部15は、第1延出部14を顔面からわずかに浮かせるようにし、第1延出部14の内側面に設けてもよい。
【0026】
第2固定部19は、フィルム50を固定するために第2延出部18の外側面に設けられた部分であり、例えば、嵌合突起15aと同様の嵌合突起19aを備える(図1参照)。嵌合突起19aがフィルム50の横幅方向における他端部に形成された嵌合孔50aと嵌合することにより、フィルム50の横幅方向他端部が第2固定部19に固定される。なお、第2固定部19は、第2延出部18を顔面からわずかに浮かせるようにし、第2延出部18の内側面に設けてもよい。
【0027】
上記のように第1固定部15及び第2固定部19によってフィルム50の側端部が固定されることにより、フレーム10における2つの側端部の間にフィルム50が弓形に撓んだ状態で掛け渡される。
【0028】
また、嵌合孔50aに嵌り込んだ嵌合突起15a,19aを嵌合孔50aから抜くと、フィルム50を第1固定部15及び第2固定部19から取り外すことができる。このように、第1固定部15及び第2固定部19の各々は、フィルム50が第1固定部15及び第2固定部19の各々に対して着脱可能な状態でフィルム50を固定してもよい。この場合には、使用済みのフィルム50をフレーム10から取り外して新しいフィルム50に交換することができる。ただし、これに限定されず、第1固定部15及び第2固定部19が、フィルム50を着脱不能に固定するものであってもよい。
【0029】
また、フィルム50が固定箇所(具体的には嵌合突起15a,19a)を支点として揺動(回動)するのを抑える観点から、第1固定部15及び第2固定部19のうちの少なくとも一方は、2つ以上の固定箇所を備えるとよい。図1に示すケースでは、第1固定部15及び第2固定部19の各々が、2つの固定箇所として、2つの嵌合突起15a,19aを備えている。
【0030】
なお、フィルム50の揺動(回動)を抑える上で、第1固定部15及び第2固定部19のうちの少なくとも一方が必ずしも2つ以上の固定箇所を備えなくてもよい。例えば、嵌合突起15a,19aの断面形状が円形以外の形状、具体的には図3に示すような楕円形、あるいは多角形又は星形等であれば、1つの嵌合突起15a,19aであってもフィルム50の揺動(回動)を抑えることができる。
【0031】
なお、第1固定部15及び第2固定部19は、嵌合突起15a,19aを備える構成に限定されない。フィルム50側に嵌合突起が設けられている場合には、第1固定部15及び第2固定部19のそれぞれに嵌合孔が設けられてもよい。
【0032】
また、第1固定部15及び第2固定部19によってフィルム50を固定する構造については、嵌合突起15a,19aと嵌合孔50aとの凹凸嵌合構造に限定されるものではない。例えば、スナップフィット方式による固定構造、若しくはは鉤爪(フック)状の先端部分をフィルムの縁等に引っ掛けることでフィルム50を固定する構造も利用可能である。また、第1固定部15及び第2固定部19の一方を嵌合突起とし、もう一方をフィルム50の回転を抑えるようにフィルム50の縁に引っ掛ける(係合する)爪状構造としてもよい。
【0033】
あるいは、第1固定部15及び第2固定部19が、クリップ等のようにフィルム50を挟むことができる構造であってもよい。あるいは、第1固定部15及び第2固定部19の各々が、挿入孔と挿入孔に挿入されるピン又はネジ等によって構成され、フィルム50に設けられた貫通孔と上記の挿入孔とを重ねた状態でピン又はネジ等を挿し込むことでフィルム50を固定するものであってもよい。また、フィルム50の横幅方向における両端部に固定用のピース(断片部材)が取り付けられてもよい。その場合、第1固定部15及び第2固定部19は、固定用ピースに備わる嵌合部に嵌合等することで、固定用ピースを介してフィルム50を固定してもよい。
【0034】
以上までに説明してきたフレーム10が利用者の頭部に装着された状態(以下、フレーム装着状態という。)では、図2に示すように湾曲部11が利用者の前頭部に沿って前頭部と当接する。
【0035】
また、フレーム装着状態では、第1当接部12が一方(具体的には左側)の側頭部と当接し、不図示ではあるが、第2当接部16が他方(具体的には右側)の側頭部と当接する。より詳しく説明すると、湾曲部11が弾性変形した状態でフレーム10が頭部に装着されるため、フレーム10には復元力が発生する。この復元力により、フレーム10は、第1当接部12と第2当接部16とにより頭部を挟み込んだ状態で装着され、フレーム10の装着状態を良好に維持することができる。
【0036】
なお、フレーム装着状態では、通常、図2に示すように、湾曲部11が利用者の顔よりも上方位置(詳しくは、額部分より若干上方の位置)にて利用者の頭部に当接する。このため、フレーム10中、湾曲部11、第1当接部12及び第2当接部16によって構成される部分は、ヘアバンド又はカチューシャとして利用することが可能である。なお、湾曲部11において頭部と当接する部分を櫛状の形状とし、頭髪と接触させることでフレーム装着状態をより安定させることができる。
【0037】
また、フレーム装着状態では、第1当接部12及び第2当接部16の各々における湾曲部11とは反対側の端が、利用者の耳の後端よりも前側(顔側)に位置する。つまり、第1当接部12及び第2当接部16の各々は、耳の後端よりも前側の位置で側頭部と当接する。また、第1屈曲部13及び第2屈曲部17の各々が、耳よりも幾分前方(顔側)に位置し、耳の上端部と同じ高さ又は若干上方位置に配置される。さらに、第1延出部14及び第2延出部18の各々が、耳よりも幾分前方(顔側)に位置し、耳と略同じ高さに配置される。より具体的に説明すると、第1延出部14及び第2延出部18の各々は、例えば、耳と顎関節との間に配置される(図2参照)。
【0038】
そして、フレーム装着状態では、フィルム50が利用者の顔の正面で顔と対向するようになる。この際、フィルム50の少なくとも一部は、顔の口部分の前方に位置する。換言すると、フレーム装着状態では、第1固定部15及び第2固定部19により固定されたフィルム50が、フィルム50によって少なくとも顔の口部分が覆われる位置に配置される。
【0039】
より詳しく説明すると、図1及び2に示すフェイスシールド型の保護具1のように、上下方向の長さが十分に長いフィルム50が用いられる場合、第1固定部15及び第2固定部19により固定されるフィルム50が、フィルム50によって顔の全体が覆われる位置に配置される。また、図4に示すマウスシールド型の保護具1のように、上下方向の長さが比較的短いフィルム50が用いられる場合、第1固定部15及び第2固定部19により固定されるフィルム50を、フィルム50によって顔の口部分及びその周辺が覆われる位置に配置される。
【0040】
また、第1固定部15及び第2固定部19は、フレーム装着状態では側頭部付近に配置され、保護具1を装着した利用者の顔を正面から見た際には目立たない(気づかれ難い)位置にある。これにより、保護具1を装着した利用者の顔の見た目を、より自然な状態(保護具1を装着していない状態)での見た目に近付けることができる。
【0041】
上記の点について詳しく説明すると、従来型の保護具101のフレーム110は、図4に示すように、湾曲部111、第1当接部112及び第2当接部113を有し、かかる点では第1実施形態のフレーム10と共通する。
【0042】
他方、従来型のフレーム110では、図4に示すように、フィルム150を固定する固定部114が湾曲部111、より詳しくは例えばフレーム110の前端部に設けられている。そのため、従来型の保護具101を装着した場合、その利用者と対面する者(対面者)にとって、固定部114が目立ち易くなる。この結果、対面者は、利用者の顔の付近に固定部114が存在することに起因した違和感(異物感)を感じ得る。また、対面者は、固定部114の存在に気付き易く、そのために、利用者が保護具101を装着していることを意識し易くなる。
【0043】
これに対して、第1実施形態のフレーム10では、フレーム装着状態において固定部(詳しくは、第1固定部15及び第2固定部19)が利用者の側頭部付近、具体的には耳よりも若干前側に位置する。そのため、対面者にとって固定部が目立ちにくくなり、対面者は、固定部が見えることによる違和感(異物感)を感じにくくなる。
【0044】
また、第1実施形態のフレーム10では、フレーム装着状態において、固定部を含むフレーム10各部が利用者の顔に触れないため、保護具1の装着中に顔に掛かる負荷(フレーム10各部からの接触圧)を抑えることができる。
【0045】
さらに、第1実施形態のフレーム10を有する保護具1(特に、フェイスガードタイプ型の保護具1)では、図2に示すように、フレーム装着状態において湾曲部11がフィルム50よりも上側に位置する。つまり、保護具1の装着時、フレーム10の中で最も目立つ湾曲部11がフィルム50から離れた位置に配置されるため、フレーム10がフィルム50から独立して見えるようになる(フィルム50を保持するものとして認識され難くなる)。これにより、保護具1を装着した利用者の顔を正面から見た対面者にとって、上述の違和感がより一層生じにくくなる。
【0046】
さらにまた、フレーム10がフィルム50から独立して見えるという視覚的効果により、対面者に対して、利用者が保護具1を装着しているという印象を弱め、保護具1のフィルム50があたかも利用者の前に設置された透明板であると思わせることができる。さらには、フィルム50の透明性及び防曇性を高めることで、上記の透明板の存在がより認識されにくい視覚的効果を与えることができる。これにより、利用者が保護具1を装着することに対して抱く抵抗感(心理的負担)を緩和させることができる。
【0047】
以上のようにフィルム50の透明性及び防曇性を高めることで透明板の存在が認識されにくい視覚的効果を付与するために、透明性及び防曇性の高いフィルムを好ましく用いることができる。透明性を高めるためには、具体的には透明性の高いトリアセチルセルロースフィルム、あるいは片面若しくは両面に反射防止処理をしたフィルムを用いることができる。防曇性を高めるためには、例えば、トリアセチルセルロースフィルムを表面のけん化処理によりセルロース層を形成した防曇トリアセチルセルロースフィルム等を用いることができる。
【0048】
フィルム50の透明性は、光透過性、具体的にはフィルム50の光透過率によって示される。光透過率は、例えばヘイズメーターによる全光線透過率、又は分光光度計による光透過率として測定される。フィルム50の透明性は、フィルム自体の表面及びフィルム内部での散乱が小さいことにより高くなり、また、フィルム50の表面の片面若しくは両面の反射防止処理による表面反射の低減により高くなる。フィルム50自体の透明性が高いことで着用時のフィルム50の存在が認識しにくくなる。また、片面もしくは両面の反射防止により、保護具1を着用した際のフィルム50への光及び影の写り込みが少ないため、保護具1の利用者にとって、着用時の煩わしさ、及び長期使用での目の疲れがない。また、利用者の対面者にとって、フィルム50が見えにくく保護具1を着用している印象を弱める視覚的効果が高い。フィルム50における光透過率としては、90%以上が好ましく、より好ましくは95%以上であり、特に好ましくは98%以上である。
【0049】
フィルム50の透明性を高めるために、シリカ粒子と空隙からなる表面層を設けることも好ましい。例えば透明性の高いトリアセチルセルロースに表面層を設けることで透明性を高めることができる。また、トリアセチルセルロースにけん化処理により防曇層を設け、さらにシリカ粒子と空隙からなる表面層を設けることにより、防曇性と光透過性を両立することができる。
【0050】
以上のような表面層を構成するシリカ粒子として、粒径は光透過性と光散乱(ヘイズ)を抑制する観点から3nm以上200nm以下が好ましい。光透過性を向上させる観点で、3nm以上が好ましく、5nm以上がより好ましく、10nm以上がさらに好ましい。また、ヘイズを抑制する観点で、200nm以下であることが好ましく、100nm以下がさらに好ましく、70nm以下が特に好ましい。粒径を好ましい範囲とすることにより、高い光透過性と低いヘイズを得られることに加え、表面層の空隙を制御し表面の反射を抑制できる。また、防曇層上に表面層を設けた場合に防曇層へ水を通過させやすくする等により、高い透明性と防曇性が得られるからである。具体的な無機粒子としては、日産化学株式会社製のスノーテックス(登録商標)のうち、AK(粒径12nm)、AK-Y(粒径45nm)、及びAK-YL(粒径60nm)等が好ましい粒径の粒子としてあげられる。
【0051】
表面層にシリカ粒子に加え、水溶性のポリマーをバインダーとして加えることも好ましい。表面層の親水性を保ちつつ、ヘイズを抑制し、膜の強度を付与することができるからである。バインダーのポリマーとしては、具体的には、セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、及びヒドロキシプロピルセルロース(HPC)等のセルロース類;ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルの部分ケン化によるポリビニルアルコール、及びポリ酢酸ビニル共重合体等のポリビニルアルコール類;ヒドロキシエチルアクリレート等のアクリルの重合体若しくは共重合体等のヒドロキシル基含有アクリル重合体、ポリアクリルアミド系ポリマー、及びポリビニルピロリドン系ポリマー等が挙げられる。以上のポリマーにおいて、特にポリビニルアルコール類が好ましい。
【0052】
なお、特に透明性の高いフィルム50を用いる場合には、さらにフィルムによる違和感を与えにくくすることができる。
【0053】
また、防曇層上に表面層を付与する場合、防曇層の厚みは、0.01μm以上20μm以下であることが好ましい。防曇性付与の観点では、厚みは0.01μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましく、0.1μm以上がさらに好ましい。また、フィルムの変形が少ない観点から、防曇層の厚みは、20μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましく、12μm以下がさらに好ましい。
【0054】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係るフレーム(以下、フレーム30)について、図6及び7を参照しながら説明する。フレーム30は、第1実施形態のフレーム10と同様、図6及び7に示す保護具1Xを構成するものであり、顔面保護用のフィルム50を固定し、利用者の頭部に装着可能である。フレーム30の材質については、第1実施形態のフレーム10と共通するため、説明を省略することとする。なお、フレーム30の各部分は、フレーム装着時に目立ちにくくするために細くする理由から金属、特にワイヤ等の線状金属材料によって構成されるのが好ましい。
【0055】
以下では、フレーム30の構造のうち、第1実施形態のフレーム10と異なる点を中心に説明する。フレーム30は、図6及び7に示すように、全体として略C字形状をなし、横幅方向の中央位置を基準として対称(左右対称)な構造である。フレーム30は、湾曲部31、第1当接部32、第1固定部33、第2当接部34、及び第2固定部35を有する。
【0056】
フレーム30の湾曲部31、第1当接部32及び第2当接部34は、第1実施形態のフレーム10の湾曲部11、第1当接部12及び第2当接部16と略同一の形状及び構成である。すなわち、湾曲部31は、図6に示すように円弧状に湾曲し、その後端が開いている。また、湾曲部31は、弾性を有し、フレーム30を装着する際には後端の開き度合いが大きくなるように弾性変形する。第1当接部32は、湾曲部31の一端(具体的には、左端)側で湾曲部31と隣接し、湾曲部31の一端から湾曲部31に沿ってフレーム30の後端側に延びている。第2当接部34は、湾曲部31の他端(具体的には、右端)側で湾曲部31と隣接し、湾曲部31の他端から湾曲部31に沿ってフレーム10の後端側に延びている。
【0057】
第1固定部33は、フィルム50を固定する部分であり、第1当接部32に設けられている。第2固定部35は、フィルム50を固定する部分であり、第2当接部34に設けられている。このように、第1実施形態と第2実施形態との間では、第1固定部及び第2固定部が設けられる位置が異なる。つまり、第2実施形態のフレーム30は、第1屈曲部13、第1延出部14、第2屈曲部17及び第2延出部18を有しない点で、第1実施形態のフレーム10と相違する。
【0058】
第2実施形態では、第1実施形態と同様、第1固定部33がフィルム50の横幅方向の一端部を固定し、第2固定部35がフィルム50の横幅方向の他端部を固定する(図6参照)。なお、各固定部によるフィルム50の固定構造は、第1実施形態と共通する。例えば、図6に示すように、第1固定部33及び第2固定部35の各々は、第1当接部32及び第2当接部34の各々の外側面から突出した嵌合突起33a、35aを備え、嵌合突起15aがフィルム50の嵌合孔50aと嵌合することでフィルム50を固定するものでもよい。
【0059】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様、第1固定部33及び第2固定部35によってフィルム50の側端部が固定されることで、フレーム30における2つの側端部の間にフィルム50が弓形に撓んだ状態で掛け渡される。また、第1固定部33及び第2固定部35の各々は、フィルム50が着脱可能な状態でフィルム50を固定してもよい。ただし、これに限定されず、第1固定部33及び第2固定部35が、フィルム50を着脱不可能に固定するものでもよい。
【0060】
また、フィルム50が固定箇所を支点として揺動(回動)するのを抑える観点から、第1固定部33及び第2固定部35のうちの少なくとも一方は、2つ以上の固定箇所を備えるとよい。図6に示すケースでは、第1固定部33及び第2固定部35の各々が、2つの固定箇所として、2つの嵌合突起33a,35aを備える。
【0061】
以上のように構成されたフレーム30が利用者の頭部に装着された状態(フレーム装着状態)では、図7に示すように、第1当接部32及び第2当接部34の各々における後端(湾曲部31とは反対側の端)が耳の後端よりも前側に位置する。また、湾曲部31が前頭部に沿って湾曲した状態で前頭部と当接し、第1当接部32と第2当接部34とが側頭部と当接して頭部を挟み込む。このようなフレーム30の構成を採用する場合には、フレーム30をヘアバンド又はカチューシャとして利用することが可能である。
【0062】
そして、フレーム装着状態では、図7に示すように、第1固定部33及び第2固定部35により固定されたフィルム50が、顔の正面で顔と対向する。より詳しく説明すると、第1固定部33及び第2固定部35により固定されたフィルム50を、フィルム50によって少なくとも顔の口部分が覆われる位置に配置し、図7に示すフェイスガード型の保護具1Xでは、顔全体を覆う位置に配置する。このとき、湾曲部31がフィルム50よりも上側に位置するため、フレーム30がフィルム50から独立して見える視覚的効果を生じさせる。
【0063】
以上により、第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。具体的には、フレーム装着状態において固定部(すなわち、第1固定部33及び第2固定部35)を目立ちにくい位置に配置することで、固定部が見えることによる違和感(異物感)を対面者に与えにくくすることができる。
【0064】
(フィルムに関する試験例)
以下、本発明において好適に用いられるフィルムに関して、その性能に関する試験例について説明する。試験例では、フィルム基材として、ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下PET)、及び、トリアセチルセルロースフィルム(以下TAC)を用いた。
PETの一例として、市販のルミラー(登録商標)#125-T60(東レ株式会社製)125μmを用いた。
また、TACの一例として、セルロースアセテート(アセチル基置換度:2.86、粘度平均重合度:320)に添加剤としてアジピン酸とエチレングリコールとのエステルを繰り返し単位とするオリゴマー(分子量1000)を13%含む添加した130μmのフィルムを用いた。このフィルムを浸漬法によりけん化処理しフィルム表面に6μmの防曇層を形成した。
また、シリカ粒子として、シリカゾル(スノーテックス(登録商標)AK-YL、粒子径60nm:日産化学株式会社製)を用い、バインダーのPVAとしてクラレポバール(登録商標)3-88(部分けん化品、けん化度88%)を用いた。この成分を含む固形分濃度0.3%の塗布液とし、界面活性剤としてサーフィノール440(日信化学工業(株)製)を0.01%添加し、上記の防曇層を形成したTAC上にバーコートにより片面又は両面に塗布し乾燥して表面層を形成した。
そして、上記の要領にて4種類のフィルム(試験例1~4)を作成した。
【0065】
次に、各種類のフィルム(試験1~4)について、光透過率及び防曇性を評価した。結果は、表1に示すとおりである。なお、光透過率測定には、日本電色製のヘイズメーター「NDH7000」を用い、全光線透過率を光透過率とした。
また、防曇性は45℃の湯浴を準備し、湯浴上10cmにフィルムを晒した際に曇り始めるまでの時間により、以下のように評価した。
A:30秒以上曇らない。
B:5秒以上曇らない。
C:5秒未満で曇る。
表1に示すように、試験例2~4により、防曇性が良好なフィルムが得られた。また、フィルム3、4により透過率と防曇性が良好で、本発明に好適なフィルムが得られた。
【表1】
【0066】
(その他の実施形態)
以上までに、本発明のフレーム及び保護具について、具体的な二つの実施形態を挙げて説明してきたが、上述した実施形態は、あくまでも一例に過ぎず、他の実施形態も考えられ得る。
【0067】
上記の実施形態では、フレーム装着状態において湾曲部11,31が利用者の前頭部に当接することとしたが、これに限定されるものではない。フレーム装着状態において、湾曲部11,31は、前頭部から若干浮いた位置(離間した位置)に配置されてもよい。
【0068】
また、第1実施形態では、フレーム10が湾曲部11、第1当接部12、第1屈曲部13、第1延出部14、第1固定部15、第2当接部16、第2屈曲部17、第2延出部18及び第2固定部19を備えるが、これら以外の部分、例えば加飾用に設けられた延出部分をさらに備えてもよい。同様に、第2実施形態では、フレーム30が湾曲部31、第1当接部32、第1固定部33、第2当接部34、及び、第2固定部35を備えるが、これら以外の部分、例えば、加飾用の延出部分をさらに備えてもよい。
【0069】
また、保護具1,1Xの用途については、特に限定されないが、対面接客用、医療用、調理用、介護用、教育用又は事務作業用等の様々な分野において、本発明の保護具及びフレームは利用可能である。
【符号の説明】
【0070】
1,1X 保護具
10 フレーム
11 湾曲部
12 第1当接部
13 第1屈曲部
14 第1延出部
15 第1固定部
15a 嵌合突起
16 第2当接部
17 第2屈曲部
18 第2延出部
19 第2固定部
19a 嵌合突起
50 フィルム
50a 嵌合孔
30 フレーム
31 湾曲部
32 第1当接部
33 第1固定部
33a 嵌合突起
34 第2当接部
35 第2固定部
35a 嵌合突起
101 保護具
110 フレーム
111 湾曲部
112 第1当接部
113 第2当接部
114 固定部
150 フィルム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7