(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022125669
(43)【公開日】2022-08-29
(54)【発明の名称】切削装置
(51)【国際特許分類】
B24B 49/10 20060101AFI20220822BHJP
B24B 45/00 20060101ALI20220822BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20220822BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20220822BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
B24B49/10
B24B45/00 A
B24B27/06 M
B23Q17/00 B
H01L21/78 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021023388
(22)【出願日】2021-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】和泉 邦治
(72)【発明者】
【氏名】蘇 志博
【テーマコード(参考)】
3C029
3C034
3C158
5F063
【Fターム(参考)】
3C029EE05
3C034AA13
3C034AA19
3C034BB52
3C034CA26
3C034CA30
3C034CB13
3C034DD10
3C034DD18
3C158AA03
3C158AA15
3C158AC01
3C158AC02
3C158BA05
3C158BA09
3C158BB06
3C158BB08
3C158BB09
3C158BC03
3C158CB06
5F063AA23
5F063AA41
5F063AA48
5F063DD03
5F063DD17
5F063DE11
5F063DE23
(57)【要約】
【課題】固定ナットの螺合状態の不良を検知する。
【解決手段】スピンドルを有し、スピンドルの先端部にはブレードマウントを介して環状の切削ブレードが装着される切削ユニットと、ブレードマウントにおける切削ブレードの状態を判定する判定ユニットと、を備え、判定ユニットは、ブレードマウントのマウンタの第1流路に接続され、負圧又は正圧を第1流路に作用させるための第2流路と、第2流路における圧力及び第2流路を流れる流体の流量の少なくとも一方の測定値を得る測定器と、切削ブレードが配置されたマウンタのボス部に固定ナットが少なくとも部分的に螺合された状態で第1流路に負圧又は正圧を作用させたときの測定値が異常値を示す場合、固定ナットのボス部への螺合状態が不良であると判定する螺合状態判定部と、螺合状態判定部の判定結果を報知する報知部と、を有する切削装置を提供する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピンドルを有し、該スピンドルの先端部にはブレードマウントを介して環状の切削ブレードが装着される切削ユニットと、
該ブレードマウントにおける該切削ブレードの状態を判定する判定ユニットと、を備え、
該ブレードマウントは、
該スピンドルの先端部に固定されるマウンタと、
該切削ブレードを該マウンタに押圧して該マウンタと共に該切削ブレードを挟持するための固定ナットと、を含み、
該マウンタは、
該切削ブレードの中央孔に挿入され、該固定ナットが螺合する雄ねじを有するボス部と、
該ボス部の基端部側に位置し該ボス部の径方向において該ボス部よりも外側に突出しており、該切削ブレードが該ボス部に挿入された状態で該切削ブレードに接触可能な環状のフランジ部と、
該マウンタに形成され、該ボス部の外側且つ該フランジ部の内側に位置する開口に接続している第1流路と、を有し、
該判定ユニットは、
該マウンタの該第1流路に接続され、負圧又は正圧を該第1流路に作用させるための第2流路と、
該第2流路における圧力及び該第2流路を流れる流体の流量の少なくとも一方の測定値を得る測定器と、
該切削ブレードが配置された該マウンタの該ボス部に該固定ナットが少なくとも部分的に螺合された状態で該第1流路に負圧又は正圧を作用させたときの該測定値が異常値を示す場合、該固定ナットの該ボス部への螺合状態が不良であると判定する螺合状態判定部と、
該螺合状態判定部の判定結果を報知する報知部と、を有することを特徴とする切削装置。
【請求項2】
ブレード交換ユニットを更に備え、
該ブレード交換ユニットは、
該切削ブレードを着脱自在に保持するブレード保持部と、
該固定ナットを回転可能に保持する固定ナット保持部と、
該ブレード保持部と、該固定ナット保持部と、を移動させる移動部と、を有することを特徴とする請求項1に記載の切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を切削するための切削ブレードが装着されるスピンドルを備える切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表面側に複数の半導体デバイスが形成された半導体ウェーハを個々のデバイスチップに分割するために、切削装置が広く利用されている。切削装置は、半導体ウェーハを切削するための切削ユニットを有する。切削ユニットは、切削ブレードが装着されるスピンドルを含む。
【0003】
切削ブレードの切り刃は、使用に伴い磨耗するので、摩耗の程度に応じて適宜交換する必要がある。切削ブレードとしては、例えば、金属製の環状の基台の一面に環状の切り刃が接着されたハブ型の切削ブレードが使用される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この切削ブレードをスピンドルに装着する際には、スピンドルの先端部に固定されたマウンタのボス部に切削ブレードの貫通穴を挿入させ、ボス部の先端部の外周側面に形成されている雄ねじに、環状の固定ナットの内周側面に形成されている雌ねじをねじ止めする(即ち、固定ナットをボス部に螺合する)。
【0005】
しかし、ボス部の中心軸に対して固定ナットの回転軸が斜めに傾く様に固定ナットがねじ止めされた場合、マウンタ及び固定ナットによって切削ブレードが十分に固定されない。この状態で、被加工物を切削すると、切削溝が被加工物の厚さ方向に対して傾く斜め切れが生じたり、切削ブレードの切り刃の破損が生じたりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであり、固定ナットの螺合状態の不良を検知することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、スピンドルを有し、該スピンドルの先端部にはブレードマウントを介して環状の切削ブレードが装着される切削ユニットと、該ブレードマウントにおける該切削ブレードの状態を判定する判定ユニットと、を備え、該ブレードマウントは、該スピンドルの先端部に固定されるマウンタと、該切削ブレードを該マウンタに押圧して該マウンタと共に該切削ブレードを挟持するための固定ナットと、を含み、該マウンタは、該切削ブレードの中央孔に挿入され、該固定ナットが螺合する雄ねじを有するボス部と、該ボス部の基端部側に位置し該ボス部の径方向において該ボス部よりも外側に突出しており、該切削ブレードが該ボス部に挿入された状態で該切削ブレードに接触可能な環状のフランジ部と、該マウンタに形成され、該ボス部の外側且つ該フランジ部の内側に位置する開口に接続している第1流路と、を有し、該判定ユニットは、該マウンタの該第1流路に接続され、負圧又は正圧を該第1流路に作用させるための第2流路と、該第2流路における圧力及び該第2流路を流れる流体の流量の少なくとも一方の測定値を得る測定器と、該切削ブレードが配置された該マウンタの該ボス部に該固定ナットが少なくとも部分的に螺合された状態で該第1流路に負圧又は正圧を作用させたときの該測定値が異常値を示す場合、該固定ナットの該ボス部への螺合状態が不良であると判定する螺合状態判定部と、該螺合状態判定部の判定結果を報知する報知部と、を有する切削装置が提供される。
【0009】
好ましくは、切削装置は、ブレード交換ユニットを更に備え、該ブレード交換ユニットは、該切削ブレードを着脱自在に保持するブレード保持部と、該固定ナットを回転可能に保持する固定ナット保持部と、該ブレード保持部と、該固定ナット保持部と、を移動させる移動部と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様に係る切削装置は、ブレードマウントにおける切削ブレードの状態を判定する判定ユニットを備える。判定ユニットは、ブレードマウントを構成するマウンタの第1流路に接続され負圧又は正圧を第1流路に作用させるための第2流路と、第2流路における圧力及び第2流路を流れる流体の流量の少なくとも一方の測定値を得る測定器と、を有する。
【0011】
判定ユニットは、更に、螺合状態判定部を有する。螺合状態判定部は、切削ブレードが配置されたマウンタのボス部に固定ナットが少なくとも部分的に螺合された状態で第1流路に負圧又は正圧を作用させたときの測定値が異常値を示す場合、螺合状態判定部は、固定ナットのボス部への螺合状態が不良であると判定する。
【0012】
判定ユニットは、更に、螺合状態判定部の判定結果を報知する報知部を有する。報知部により螺合状態が不良であることを報知できるので、切削ブレードが正しく装着されていない状態で被加工物の切削を開始することを未然に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】固定ナットが正しく締結された切削ユニットの一部断面側面図である。
【
図4】固定ナットが正しく締結されていない切削ユニットの一部断面側面図である。
【
図7】
図7(A)は負圧で固定ナットの螺合状態を判定する場合の判定方法のフロー図であり、
図7(B)は正圧で固定ナットの螺合状態を判定する場合の判定方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。
図1は、切削装置2の斜視図である。
図1に示すX軸方向(加工送り方向)、Y軸方向(割り出し送り方向)及びZ軸方向(鉛直方向)は、互いに直交する方向である。
【0015】
なお、
図1では、構成要素の一部を機能ブロックで示す。切削装置2は、各構成要素を支持する基台4を備える。基台4の角部には、昇降機構(不図示)によって昇降するエレベータ6が設けられている。
【0016】
エレベータ6の昇降台6aの上面には、被加工物11(被加工物ユニット17)を収容するためのカセット8が載せられる。被加工物11は、例えば、シリコン等の半導体材料でなる円盤状のウェーハである。
【0017】
被加工物11の裏面側には、被加工物11よりも大径のダイシングテープ13が貼り付けられ、ダイシングテープ13の外周部には、金属製の環状のフレーム15が貼り付けられる。これにより、ダイシングテープ13を介して被加工物11がフレーム15で支持された被加工物ユニット17が形成される。
【0018】
エレベータ6に対してX軸方向の一方側には、円形の開口4aが形成されている。開口4aには、切削後の被加工物11を洗浄する洗浄ユニット10が配置されている。洗浄ユニット10は、スピンナテーブル12、ノズル(不図示)等を有する。
【0019】
洗浄ユニット10の上方には、一対のガイドレール14が設けられている。一対のガイドレール14は、Y軸方向に沿って互いに近づく様に移動することで、被加工物ユニット17のY軸方向の位置を調整する。
【0020】
一対のガイドレール14に対してY軸方向の一方側には、X軸方向に沿う長手部を有する矩形状の開口4bが形成されている。開口4bには、開口4bの一部を覆う矩形状のテーブルカバー16が設けられている。
【0021】
テーブルカバー16のX軸方向の両側には、X軸方向に伸縮可能な蛇腹状カバー18が設けられている。テーブルカバー16の上方には、被加工物ユニット17等を吸引保持するための円盤状のチャックテーブル20が設けられている。
【0022】
チャックテーブル20の上面は、負圧を利用して被加工物ユニット17を吸引保持する保持面として機能する。チャックテーブル20の側部には、フレーム15を挟持する一対のクランプユニット20aが設けられている。
【0023】
テーブルカバー16の下方には、Z軸方向に略平行な回転軸の周りにチャックテーブル20を回転させるモーター等の回転駆動源(不図示)が配置されている。更に、回転駆動源の下方には、ボールねじ式のX軸移動機構(加工送りユニット)(不図示)が設けられている。
【0024】
開口4bのうち、Y軸方向で開口4aと隣接する領域は、被加工物11の搬入及び搬出が行われる搬入搬出領域である。また、開口4bのうち、搬入搬出領域に対してX軸方向の反対側には、被加工物11の切削が行われる切削領域がある。
【0025】
切削領域の上方には、金属等で形成された直方体状のカバー部材22が設けられている。カバー部材22によって覆われた空間の内部には、一対の切削ユニット24が配置されている。ここで、
図2及び
図3を用いて切削ユニット24の構成について説明する。
【0026】
図2は、切削ユニット24の分解斜視図である。
図2に示す様に、切削ユニット24は、筒状のスピンドルハウジング26を有する。スピンドルハウジング26内には、円柱状のスピンドル28が回転可能に収容されている。
【0027】
スピンドル28の基端部には、サーボモーター等の回転駆動源(不図示)が設けられている。スピンドル28の先端部28aは、スピンドルハウジング26から突出しており、先端部28aには、ねじ穴28bが形成されている。
【0028】
先端部28aには、略円盤形状のマウンタ30が配置される。マウンタ30の中央部の一面側には、円筒状の第1のボス部30aが形成されている。第1のボス部30aの内部(マウンタ30内)には、第1流路30b(
図3参照)が形成されており、第1のボス部30aの外周側面には、第1流路30bの一端に位置する開口30cが形成されている。
【0029】
マウンタ30において第1のボス部30aの反対側には、円筒状の第2のボス部(ボス部)30dが形成されている。第2のボス部30dの先端部の外周側面には、後述する固定ナット36が螺合する雄ねじ30eが形成されている。
【0030】
第2のボス部30dの基端部側には、第2のボス部30dの径方向において第2のボス部30dよりも外側に突出する環状のフランジ部30fが形成されている。また、第2のボス部30dの外側且つフランジ部30fの内側には、環状の凹部30gが形成されている。凹部30gには、第1流路30bの他端に位置する開口30hが形成されている。
【0031】
マウンタ30をスピンドル28に固定する際には、まず、第1のボス部30aの内側に形成された円柱状の凹部に先端部28aを嵌合させる。次いで、雄ねじ32をねじ穴28bに締結することで、マウンタ30が先端部28aに固定される(
図3参照)。
【0032】
先端部28aに固定されたマウンタ30には、環状の切削ブレード34が装着される。本例の切削ブレード34は、いわゆるハブ型ブレードであるが、切削ブレード34として、ハブレス型(即ち、ワッシャー型)ブレードが装着されてもよい。
【0033】
切削ブレード34は、アルミニウム合金等で形成された円環状の基台34aを有する。基台34aには、基台34aの一面34a1から他面34a2まで貫通する中央孔34bが形成されている。また、一面34a1の外周部には、円環状の切り刃34cが接着剤で固定されている。
【0034】
切削ブレード34をマウンタ30に装着する際には、一面34a1がフランジ部30fと対面する様に第2のボス部30dを環状の切削ブレード34の中央孔34bに挿入させ、更に、第2のボス部30dに環状の固定ナット36を螺合する。
【0035】
固定ナット36は、雌ねじが形成されたねじ穴36aを有する。ねじ穴36aの周囲には、固定ナット36を把持して回転させる際に利用される複数のピン被挿入部36bが形成されている。本例では、4つのピン被挿入部36bが、ねじ穴36aの周りに略等間隔で配置されている。
【0036】
固定ナット36の一面側には、環状のフランジ部36c(
図3参照)が形成されている。固定ナット36を雄ねじ30eに正しく締結すると、固定ナット36のフランジ部36cは他面34a
2に接触し、マウンタ30のフランジ部30fは一面34a
1に接触する。
【0037】
この様にして、切削ブレード34は、固定ナット36によりマウンタ30に押圧され、固定ナット36及びマウンタ30で挟持される。
図3は、固定ナット36が正しく締結された切削ユニット24の一部断面側面図である。
【0038】
なお、本実施形態では、マウンタ30及び固定ナット36を合わせてブレードマウント38と称する。つまり、切削ブレード34は、ブレードマウント38を介してスピンドル28の先端部28aに装着される。
【0039】
スピンドルハウジング26の先端部には、第1のボス部30aの外周を囲むことができる様に円筒状のボス部26aが設けられている。ボス部26aの内周部には、一周に渡って環状溝26bが形成されている。
【0040】
ボス部26aには環状溝26bに接続する吸引路26cが形成されている。吸引路26cの一端は、マウンタ30の第1流路30bに隙間を介して接続している。吸引路26cの他端は、ボス部26aの外周側面に露出しており、第1流路30bに負圧又は正圧を作用させるための第2流路40の一端に接続している。
【0041】
本例の第2流路40は、2つに分岐しており、分岐した一方には、第1電磁弁42を介して、エジェクタ等の負圧源44が接続されている。また、分岐した他方には、第2電磁弁46を介して、エアーコンプレッサ、エアータンク等を有するエアー供給源48が接続されている。
【0042】
第2流路40において、第1電磁弁42及び第2電磁弁46と、第2流路40の一端と、の間には、測定器50が接続されている。測定器50は、圧力計と流量計との一方又は両方を含み、第2流路40における圧力と、第2流路40を流れるエアー(流体)の流量と、の少なくとも一方の測定値を得る。
【0043】
圧力計としては、例えば、ダイアフラム圧力計を用いることができ、流量計としては、例えば、超音波式流量計又は電磁式流量計を用いることができる。測定器50は、固定ナット36が第2のボス部30dに正しく螺合しているか否かを検査する際に利用される。
【0044】
例えば、固定ナット36の螺合状態を負圧で検査する場合、第1電磁弁42を開状態、且つ、第2電磁弁46を閉状態として、所定時間(例えば、10秒間)第1流路30bに負圧を作用させる。このとき、測定器50が第2流路40の圧力又は流量を測定する。
【0045】
また、例えば、固定ナット36の螺合状態を正圧で検査する場合、第1電磁弁42を閉状態、且つ、第2電磁弁46を開状態として、所定時間(例えば、10秒間)第1流路30bに正圧を作用させる。このとき、測定器50が第2流路40の圧力又は流量を測定する。
【0046】
測定器50には、制御ユニット52(
図1参照)が接続されている。制御ユニット52は、例えば、CPU(Central Processing Unit)に代表されるプロセッサ等の処理装置と、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の主記憶装置と、フラッシュメモリ等の補助記憶装置と、を含むコンピュータによって構成されている。
【0047】
補助記憶装置には、ソフトウェアが記憶されており、このソフトウェアに従い処理装置等を動作させることによって、制御ユニット52の機能が実現される。補助記憶装置には、測定器50で得られた測定値を所定の閾値と比較するためのプログラムが記憶されている。
【0048】
このプログラムは、コンピュータで実行されることにより、螺合状態判定部54として機能する。なお、螺合状態判定部54は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)や、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等で構成されてもよい。
【0049】
螺合状態判定部54は、第2流路40の圧力値(測定器50で得た測定値)と、第2流路40の流量値(測定器50で得た測定値)と、の少なくとも一方を、所定の閾値と比較する。
【0050】
ここで、
図3及び
図4を参照し、切削ブレード34が配置された第2のボス部30dに固定ナット36が少なくとも部分的に螺合された状態で、第1流路30bに負圧を作用させた場合を考える。
【0051】
図3に示す様に固定ナット36が正しく締結されているとき、切削ブレード34とフランジ部30fとで閉空間が構成されるので、第1流路30bに負圧を作用させると、第2流路40の圧力は、比較的低い低圧値A
1となる。また、第2流路40の流量は、比較的低い低流量値B
1となる。
【0052】
図4は、固定ナット36が正しく締結されていない切削ユニット24の一部断面側面図である。
図4では、固定ナット36の回転軸が第2のボス部30dの中心軸に対して斜めに傾いた状態で、固定ナット36がマウンタ30にねじ止めされている。
【0053】
それゆえ、固定ナット36は、
図3の様に第2のボス部30dの基端部側まで行かず、
図3の場合に比べて第2のボス部30dの先端部側で止まっている。この場合、切削ブレード34は、マウンタ30及び固定ナット36で十分に固定されない。
【0054】
また、切削ブレード34とフランジ部30fとで規定される空間は、閉空間とならず、切削ブレード34とフランジ部30fとの間に、隙間58aが形成されることがある。更に、他面34a2とフランジ部36cとの間にも、隙間58bが形成されることがある。
【0055】
図4に示す様に、隙間58aが形成された状態で、第1流路30bに負圧を作用させると、隙間58aからエアーが流入するので、第2流路40の圧力は、比較的高い高圧値A
3となり、第2流路40の流量は、比較的高い高流量値B
3となる。
【0056】
そこで、第1流路30bに負圧を作用させる場合、低圧値A1と高圧値A3との間の所定値が、圧力の閾値A2として螺合状態判定部54に設定される。また、低流量値B1と高流量値B3との間の所定値が、流量の閾値B2として螺合状態判定部54に設定される。
【0057】
第1流路30bに負圧を作用させるときの圧力及び流量の関係を表1に示す。螺合状態判定部54は、圧力値が閾値A2よりも大きい異常値である場合、固定ナット36の第2のボス部30dへの螺合状態が不良であると判定し、流量値が閾値B2よりも大きい異常値である場合、螺合状態が不良であると判定する。
【0058】
【0059】
次に、負圧ではなく正圧を第1流路30bに作用させる場合について説明する。固定ナット36が正しく締結されているとき(
図3参照)、切削ブレード34とフランジ部30fとで閉空間が構成される。
【0060】
この場合、第1流路30bに正圧を作用させると、エアーは隙間58aから流出しないので、第2流路40の圧力は、比較的高い高圧値A6となる。これに対して、隙間58aから流出するエアーの流れが形成されないので、第2流路40の流量は、比較的低い低流量値B4となる。
【0061】
一方で、固定ナット36が正しく締結されていない場合(
図4参照)、第1流路30bに正圧を作用させると、隙間58aが形成されるので、第2流路40の圧力は、比較的低い低圧値A
4となるが、第2流路40の流量は、比較的高い高流量値B
6となる。
【0062】
そこで、第1流路30bに正圧を作用させる場合、低圧値A4と高圧値A6との間の所定値が、圧力の閾値A5として螺合状態判定部54に設定される。また、低流量値B4と高流量値B6との間の所定値が、流量の閾値B5として螺合状態判定部54に設定される。
【0063】
第1流路30bに正圧を作用させるときの圧力及び流量の関係を表2に示す。螺合状態判定部54は、圧力値が閾値A5よりも小さい異常値である場合、固定ナット36の第2のボス部30dへの螺合状態が不良であると判定し、流量値が閾値B5よりも大きい異常値である場合、螺合状態が不良であると判定する。
【0064】
【0065】
螺合状態判定部54の判定結果は、報知部56により、作業者(不図示)へ報知される。報知部56は、モニタ56a、ランプ56b及びスピーカ(不図示)の少なくとも1つを有する。例えば、モニタ56aには、螺合状態が良好であるか不良であるかが表示される。
【0066】
また、例えば、螺合状態が良好である場合、ランプ56bの第1の色(例えば、青色)が点灯し、螺合状態が不良である場合、ランプ56bの第1の色とは異なる第2の色(例えば、赤色)が点灯する。
【0067】
更に、例えば、螺合状態が良好である場合、スピーカから「螺合状態は良好です」又は「正常です」との音声が流れ、螺合状態が不良である場合、スピーカから「螺合状態は不良です」又は「異常です」との音声が流れる。
【0068】
なお、報知部56は、上述の第2流路40、測定器50及び螺合状態判定部54と共に、ブレードマウント38における切削ブレード34の状態を判定する判定ユニット60を構成している。
【0069】
固定ナット36の螺合状態が不良であることが報知された場合、例えば、作業者が、切削装置2の稼働を停止させ、固定ナット36の螺合状態を検査したり、固定ナット36の取り付けを調整したりする。それゆえ、切削ブレード34が正しく装着されていない状態での被加工物11の切削を防止できる。
【0070】
ここで、
図1に戻って、切削装置2の他の構成要素について説明する。カバー部材22の搬入搬出領域側の側面には、ドア部59が設けられている。ドア部59は、上下又は左右に移動することで、カバー部材22の一部を開閉する。
【0071】
基台4の上方には、第1の搬送ユニット62が設けられている。第1の搬送ユニット62は、水平方向移動機構(不図示)に連結され長手部がZ軸方向に沿って配置されたエアシリンダを有する。エアシリンダのロッドの下端部には、吸着ユニット62aが設けられている。
【0072】
吸着ユニット62aのエレベータ6側の端部には、フレーム15の外周部の一部を把持可能な把持機構62bが設けられている。第1の搬送ユニット62の上方には、第2の搬送ユニット64のアーム部が設けられている。
【0073】
アーム部の一端部には、水平方向移動機構(不図示)が連結され、アーム部の他端部には、長手部がZ軸方向に沿って配置されたエアシリンダが連結されている。エアシリンダのロッドの下端部には、吸着ユニット64aが設けられている。
【0074】
ここで、切削装置2を用いて被加工物11を切削する手順を簡単に説明する。まず、第1の搬送ユニット62が、把持機構62bでフレーム15を把持し、カセット8から一対のガイドレール14へ被加工物ユニット17を引き出す。
【0075】
一対のガイドレール14が被加工物ユニット17のY軸方向の位置を調整した後、第1の搬送ユニット62が、吸着ユニット62aでフレーム15を吸着し、被加工物ユニット17を搬入搬出領域に配置されたチャックテーブル20へ搬送する。
【0076】
その後、チャックテーブル20は、保持面で被加工物11の裏面側を吸引保持した状態で、切削領域へ移動する。アライメントにより被加工物11の分割予定ライン(不図示)のX-Y平面内での向きが調整された後、切削ユニット24が被加工物11を切削する。
【0077】
切削後、チャックテーブル20が搬入搬出領域へ移動する。第2の搬送ユニット64は、吸着ユニット64aでフレーム15を吸着し、チャックテーブル20から洗浄ユニット10へ被加工物ユニット17を搬送する。
【0078】
洗浄ユニット10での被加工物11の洗浄及び乾燥の後、第1の搬送ユニット62が一対のガイドレール14を利用して、被加工物ユニット17をカセット8へ搬送する。この様にして、次々に、被加工物11が切削される。
【0079】
ところで、切削を進めるにつれて、切削ブレード34は摩耗するので、摩耗した切削ブレード34を交換する必要がある。本実施形態の切削装置2は、ハブ型の切削ブレード34を自動で交換するためのブレード交換ユニット66を有する。
【0080】
図5及び
図6を用いてブレード交換ユニット66を説明する。
図5は、ブレード交換ユニット66の斜視図であり、
図6は、交換機構90の側面図である。ブレード交換ユニット66は、基台4に対して固定されたベース板68を有する。
【0081】
ベース板68には、多関節型ロボット70をZ軸方向に沿って移動させるための昇降機構72が設けられている。なお、多関節型ロボット70及び昇降機構72は、後述する交換機構90(ブレード保持治具94、固定ナット保持部96等)を移動させるための移動部74を構成する。
【0082】
昇降機構72は、ベース板68の下部に設けられたモーター(不図示)と、モーターの回転軸に連結された駆動プーリー(不図示)とを有する。また、ベース板68の上部には、従動プーリー(不図示)が設けられている。
【0083】
駆動プーリーと従動プーリーとには、1本の歯付無端ベルト(不図示)が架けられており、この歯付無端ベルトの一部には、金属製の第1の支持具76が固定されている。第1の支持具76は、歯付無端ベルトの移動に伴いZ軸方向に沿って移動する。
【0084】
なお、昇降機構72は、歯付無端ベルト等の構成に限定されない。昇降機構72は、ボールねじ式であってもよい。第1の支持具76には、モーター等の回転駆動源を有する第1の回転機構78が取り付けられている。
【0085】
第1の回転機構78には、第1のアーム80の一端部が連結されている。第1の回転機構78は、第1のアーム80をX-Y平面内で回転移動させる。第1のアーム80の他端部には、モーター等の回転駆動源を有する第2の回転機構82が連結されている。
【0086】
第2の回転機構82には、第2のアーム84の一端部が連結されている。第2の回転機構82は、第2のアーム84をX-Y平面内で回転移動させる。第2のアーム84の他端部には、モーター等の回転駆動源を有する第3の回転機構86が連結されている。
【0087】
第3の回転機構86には、金属製の第2の支持具88が連結されている。第3の回転機構86は、第2の支持具88をX-Y平面内で回転移動させる。第2の支持具88には、交換機構90が固定されている。
【0088】
交換機構90は、退避位置(例えば、
図1参照)と、第1のアーム80、第2のアーム84等を展開した交換位置(例えば、
図5参照)と、の間で移動させられる。交換機構90は、略円筒状の筐体92を有する。
【0089】
筐体92の内部には、筐体92を回転させるためのモーター等の回転駆動源(不図示)が収容されている。当該回転駆動源により、筐体92は、筐体92の円筒の長手方向(即ち、高さ方向)に沿う回転軸92aの周りに回転可能である。
【0090】
筐体92の側面には、回転軸92aを挟む様に一対のブレード保持治具(ブレード保持部)94が配置されている。ブレード保持治具94は、金属等で形成された有底円筒状の枠体を有する。
【0091】
枠体の開口部には、ゴム、樹脂、エラストマー等の弾性材料で形成され、切削ブレード34の基台34aを吸引保持可能な環状部材が配置されている。環状部材には、当該環状部材の周方向に沿って複数の開口(不図示)が形成されており、各開口には、第3流路(不図示)の一端が接続されている。
【0092】
第3流路には、第3電磁弁(不図示)を介してエジェクタ等の負圧源(不図示)が接続されている。また、第3流路には、第4電磁弁(不図示)を介してエアー供給源(不図示)が、接続されている。
【0093】
第3電磁弁を開状態とし、第4電磁弁を閉状態とすれば、ブレード保持治具94で切削ブレード34を吸引保持できる。これに対して、第3電磁弁を閉状態とし、第4電磁弁を開状態とすれば、エアーを利用して、ブレード保持治具94から切削ブレード34を放すことができる。この様に、ブレード保持治具94は、切削ブレード34を着脱自在に保持できる。
【0094】
筐体92の側面の周方向において一対のブレード保持治具94の間には、固定ナット36を回転可能に保持する固定ナット保持部96が設けられている。固定ナット保持部96は、円盤状のベース部98(
図6参照)を有する。
【0095】
ベース部98の一面側には、ベース部98の周方向において略等間隔に、各々ピン被挿入部36bへ挿入可能な4つの挿入ピン100が配置されている。ベース部98の他面側には、回転軸102の一端部が固定されており、回転軸102の他端部には、モーター等の駆動部104が連結されている。
【0096】
ベース部98の外周部には、円筒状のカバー106が設けられている。カバー106は、回転軸102に固定されたアクチュエータ108により回転軸102の長手方向に沿って進退可能である。
【0097】
ベース部98とカバー106との間には、ベース部98の周方向において略等間隔に、4つの爪部110が配置されている。各爪部110は、バネ等の付勢部材(不図示)によりベース部98の径方向の外側へ付勢された状態で、その基端部が回転軸102に対して連結されている。
【0098】
カバー106を筐体92に近づく向きに移動(後退)させれば、爪部110の先端部は、ベース部98の径方向の外側へ移動する。これに対して、カバー106を筐体92から離れる向きに移動(前進)させれば、爪部110の先端部は、ベース部98の径方向の内側へ移動する。
【0099】
次に、ブレード交換ユニット66を用いて自動的に切削ブレード34を交換する例を説明する。例えば、まず、移動部74を利用して、開口4bの近傍に配置されたブレードストックテーブル112の上方に、交換機構90を配置する。
【0100】
そして、一のブレード保持治具94で新品の切削ブレード34を吸引保持する。次いで、開状態のドア部59を経てカバー部材22の内部へ交換機構90を進入させて、固定ナット保持部96を利用して固定ナット36を第2のボス部30dから取り外す。
【0101】
具体的には、複数の挿入ピン100をそれぞれ対応するピン被挿入部36bに挿入した状態で、爪部110の先端部で固定ナット36の外周部を保持し、回転軸102を所定の方向に回転させれば、固定ナット36を取り外すことができる。
【0102】
次いで、他のブレード保持治具94で使用済の切削ブレード34を吸引保持した後、一のブレード保持治具94をマウンタ30に対向させて新品の切削ブレード34を第2のボス部30dに配置する。
【0103】
そして、固定ナット保持部96で固定ナット36を第2のボス部30dに取りつける。具体的には、各挿入ピン100を対応するピン被挿入部36bに挿入した状態で、爪部110の先端部で固定ナット36の外周部を保持し、回転軸102を所定の方向とは逆方向に回転させれば、固定ナット36を第2のボス部30dに取り付けることができる。
【0104】
本実施形態では、この様にブレード交換ユニット66を用いて自動的に切削ブレード34を交換する場合においても、判定ユニット60を用いて、固定ナット36の螺合状態を判定する。それゆえ、交換機構90の調整不足等によって発生する切削ブレード34の螺合状態の不良を切削前に検出できる。
【0105】
次に、
図7(A)及び
図7(B)を参照し、固定ナット36の螺合状態を判定する方法について説明する。
図7(A)は、負圧で固定ナット36の螺合状態を判定する場合の判定方法のフロー図である。
【0106】
装着工程S10では、第2のボス部30dに切削ブレード34を配置した状態で、固定ナット保持部96により所定のトルクで第2のボス部30dに固定ナット36を螺合する。次いで、第1電磁弁42を閉状態とし、第2電磁弁46を瞬間的に(例えば、1秒以下の所定時間だけ)開状態として、第1流路30b及び第2流路40に正圧を作用させる。
【0107】
この様にして、基台34aに対して一時的に送風を行う(ブロー工程S20)。
図4に示す様に螺合状態が不良である場合には、ブロー工程S20により、切削ブレード34が固定ナット36側へ移動する。
【0108】
これにより、実際には
図4に示す様に螺合状態が不良であるにも関わらず、偶然、基台34aがフランジ部30fに接した状態である場合に、第1流路30bに負圧を作用させた結果、螺合状態が良好であると螺合状態判定部54が誤判定することとを防止できる。
【0109】
ブロー工程S20の後、所定時間、第1電磁弁42を開状態とし、第2電磁弁46を閉状態として、第1流路30b及び第2流路40に負圧を作用させることで、螺合状態判定部54が螺合状態の良否を判定する(判定工程S30)。
【0110】
判定工程S30では、圧力値のみに基づいて螺合状態判定部54が良否を判定してよく、流量値のみに基づいて螺合状態判定部54が良否を判定してもよい。また、圧力値及び流量の両方に基づいて螺合状態判定部54が良否を判定してもよい。螺合状態が良好である場合、判定を終了する。
【0111】
これに対して、螺合状態が不良であれば、報知部56を介して作業者にその旨を報知する(報知工程S40)。作業者は、報知を受けた場合、手作業で固定ナット36の取り付けを調整したり、ブレード交換ユニット66を調整することで再度固定ナット36を取り付けたりする(修正工程S50)。
【0112】
修正工程S50の後、再度、ブロー工程S20に戻る。なお、複数回の修正工程S50を経ても螺合状態が不良である場合、固定ナット36、ブレード交換ユニット66等に物理的な異常があるとして、判定を終了してもよい。
【0113】
図7(B)は、正圧で固定ナット36の螺合状態を判定する場合の判定方法のフロー図である。正圧を利用する場合は、ブロー工程S20が無い点を除いて、負圧を利用する
図7(A)の場合と同じであるので、重複する説明を省略する。
【0114】
正圧を利用する場合は、装着工程S10の後、所定時間、第1電磁弁42を閉状態とし、第2電磁弁46を開状態として、第1流路30b及び第2流路40に正圧を作用させることで、螺合状態判定部54が螺合状態の良否を判定する(判定工程S30)。
【0115】
上述の実施形態では、螺合状態判定部54が固定ナット36の螺合状態を判定する例を説明したが、螺合状態判定部54は、第2のボス部30dに挿入された切削ブレード34の挿入状態を判定することもできる。
【0116】
具体的には、切削ブレード34の中央孔34bに第2のボス部30dを挿入した後、且つ、第2のボス部30dに固定ナット36を螺合する前に、負圧を利用して、切削ブレード34の挿入状態を判定する。
【0117】
例えば、切削ブレード34が第2のボス部30dに対して斜めに傾いて挿入されている場合、第1流路30b等に負圧を作用させると、一面34a1とフランジ部30fとの間の隙間に起因して、圧力値及び流量値は、閾値よりも高い異常値となる。
【0118】
この場合、螺合状態判定部54は、挿入不良と判定し、報知部56を通じて切削ブレード34の再挿入を促す。但し、切削ブレード34の挿入状態を負圧で判定する場合、切削ブレード34が第2のボス部30dから外れてしまう恐れがあるので、
図7(A)で説明したブロー工程S20を行わない。
【0119】
この様に、螺合状態判定部54が切削ブレード34の挿入状態を判定することにより、第2のボス部30dに対して斜めに挿入された切削ブレード34を、固定ナット36で無理に固定することを防止できる。それゆえ、第2のボス部30dの損傷も防止できる。
【0120】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。例えば、ハブ型の切削ブレード34に代えて、押さえナット(不図示)と、フランジ部30fとで、円環状の切り刃(即ち、ハブレス型の切削ブレード34)を挟持してもよい。
【0121】
但し、この場合も、押さえナットの切削ブレード34とは反対側には、固定ナット36が配置される。つまり、固定ナット36は、切削ブレード34の場合と同様に、第2のボス部30dに螺合されるので、固定ナット36の螺合状態の判定を行うことが好ましい。
【0122】
また、螺合状態判定部54は、固定ナット36の螺合前に、第2のボス部30dに挿入されたハブレス型の切削ブレード34の挿入状態を判定してもよい。特に、ハブレス型の切削ブレード34は、ハブ型のものに比べて、第2のボス部30dと接する領域が小さいので、第2のボス部30dから落下しやすい。
【0123】
加えて、ハブレス型の切削ブレード34は、ハブ型のものに比べて、重量が軽いので、仮に落下しても音や振動がほぼ無い。それゆえ、作業者は、切削ブレード34の落下に気づき難いという問題がある。
【0124】
しかし、上述の判定手法に従い、ハブレス型の切削ブレード34の挿入状態を、螺合状態判定部54により自動で判定できる。これにより、切削ブレード34が第2のボス部30dに挿入されていない状態で、第2のボス部30dに固定ナット36を螺合することを防止できる。
【0125】
ところで、制御ユニット52は、切削装置2の外部に配置されたサーバー(不図示)に有線又は無線で接続され、判定の都度、判定結果を外部のサーバーへ送信してもよい。判定結果を外部のサーバーに記録しておけば、後に行われる不良解析時に当該判定結果を利用できる。
【符号の説明】
【0126】
2:切削装置、4:基台、4a,4b:開口、6:エレベータ、6a:昇降台
8:カセット、10:洗浄ユニット、12:スピンナテーブル、14:ガイドレール
11:被加工物、13:ダイシングテープ、15:フレーム、17:被加工物ユニット
16:テーブルカバー、18:蛇腹状カバー
20:チャックテーブル、20a:クランプユニット
22:カバー部材、24:切削ユニット
26:スピンドルハウジング、26a:ボス部、26b:環状溝、26c:吸引路
28:スピンドル、28a:先端部、28b:ねじ穴
30:マウンタ、30a:第1のボス部、30b:第1流路、30c,30h:開口
30d:第2のボス部(ボス部)、30e:雄ねじ、30f:フランジ部、30g:凹部
32:雄ねじ、34:切削ブレード
34a:基台、34a1:一面、34a2:他面、34b:中央孔、34c:切り刃
36:固定ナット、36a:ねじ穴、36b:ピン被挿入部、36c:フランジ部
38:ブレードマウント、40:第2流路
42:第1電磁弁、44:負圧源、46:第2電磁弁、48:エアー供給源
50:測定器、52:制御ユニット
54:螺合状態判定部、56:報知部、56a:モニタ、56b:ランプ
58a,58b:隙間、59:ドア部、60:判定ユニット
62:第1の搬送ユニット、62a:吸着ユニット、62b:把持機構
64:第2の搬送ユニット、64a:吸着ユニット
66:ブレード交換ユニット、68:ベース板、70:多関節型ロボット
72:昇降機構、74:移動部、76:第1の支持具、78:第1の回転機構
80:第1のアーム、82:第2の回転機構
84:第2のアーム、86:第3の回転機構
88:第2の支持具、90:交換機構、92:筐体、92a:回転軸
94:ブレード保持治具(ブレード保持部)、96:固定ナット保持部
98:ベース部、100:挿入ピン、102:回転軸、104:駆動部、106:カバー
108:アクチュエータ、110:爪部、112:ブレードストックテーブル