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特開2022-125685半導体ウエハの温度制御装置及び半導体ウエハの温度制御方法
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  • 特開-半導体ウエハの温度制御装置及び半導体ウエハの温度制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022125685
(43)【公開日】2022-08-29
(54)【発明の名称】半導体ウエハの温度制御装置及び半導体ウエハの温度制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20220822BHJP
   H01L 21/02 20060101ALI20220822BHJP
   G05B 11/36 20060101ALI20220822BHJP
   G05B 13/02 20060101ALI20220822BHJP
【FI】
H01L21/66 B
H01L21/02 Z
G05B11/36 K
G05B13/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021023417
(22)【出願日】2021-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】590000835
【氏名又は名称】株式会社KELK
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小室 亘
(72)【発明者】
【氏名】小林 敦
(72)【発明者】
【氏名】元山 崇
(72)【発明者】
【氏名】高橋 武孝
【テーマコード(参考)】
4M106
5H004
【Fターム(参考)】
4M106AA01
4M106BA01
4M106CA64
4M106DD01
4M106DD10
4M106DH45
4M106DH46
4M106DJ02
5H004GA02
5H004GB15
5H004HA01
5H004HB01
5H004KA11
5H004KC54
(57)【要約】
【課題】半導体ウエハが載置される載置面に局所的な入熱があった場合でも素早く応答する。
【解決手段】半導体ウエハの温度制御装置は、半導体ウエハが載置される載置面を有し、載置面が平面視で互いに区画された複数の領域を有する載置部と、複数の領域毎に載置部の温度を独立して調整する温度調整部と、複数の領域の少なくとも1つに複数設けられ、温度調整部により温度調整された領域の温度を検出する温度検出部と、複数の温度検出部の検出温度を監視し、監視した複数の検出温度のうち単位時間当たりの温度変化が大きいものを選択し、選択した検出温度に基づいて温度調整部を制御する制御部と、を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウエハが載置される載置面を有し、前記載置面が平面視で互いに区画された複数の領域を有する載置部と、
前記複数の領域毎に前記載置部の温度を独立して調整する温度調整部と、
前記複数の領域の少なくとも1つに複数設けられ、前記温度調整部により温度調整された前記領域の温度を検出する温度検出部と、
前記複数の温度検出部の検出温度を監視し、監視した複数の検出温度のうち単位時間当たりの温度変化が大きいものを選択し、選択した検出温度に基づいて前記温度調整部を制御する制御部と、を備える
半導体ウエハの温度制御装置。
【請求項2】
前記載置面は、平面視で円形状に形成され、
前記複数の温度検出部は、平面視で前記載置面の周方向及び径方向のそれぞれにおいて互いに離れて配置されている
請求項1に記載の半導体ウエハの温度制御装置。
【請求項3】
前記複数の領域は、
平面視で前記載置面の中央に設けられ、平面視で円形状に形成された中央領域と、
平面視で前記中央領域の径方向外側において互いに周方向に区画され、平面視で弧状に形成された複数の外側領域と、を備え、
前記温度検出部は、前記複数の領域のそれぞれに複数設けられ、
前記複数の温度検出部は、平面視で前記中央領域及び前記複数の外側領域のそれぞれにおいて互いに離れて配置されている
請求項2に記載の半導体ウエハの温度制御装置。
【請求項4】
前記温度検出部は、前記複数の領域のそれぞれに複数設けられ、
前記制御部は、選択した検出温度に基づいて、前記複数の領域のうち平面視で互いに隣り合う2つの領域の一方における前記温度調整部を制御するとともに、前記2つの領域の他方における前記温度調整部を制御する
請求項1から3のいずれか一項に記載の半導体ウエハの温度制御装置。
【請求項5】
前記載置部は、前記載置面を第一面に有する板状に形成され、
前記温度調整部は、前記載置部において前記載置面が設けられた側とは反対側の第二面に設けられ、
前記載置部は、前記第二面において開口する凹部を有し、
前記温度調整部は、前記凹部に繋がる貫通孔を有し、
前記温度検出部は、前記貫通孔を通じて前記凹部に配置されている
請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体ウエハの温度制御装置。
【請求項6】
前記温度調整部は、熱電素子を備えている
請求項1から5のいずれか一項に記載の半導体ウエハの温度制御装置。
【請求項7】
平面視で互いに区画された複数の領域の少なくとも1つの領域の複数箇所で温度を監視し、
前記複数の領域を有する載置面に半導体ウエハを載置し、
監視した複数箇所の温度のうち単位時間当たりの温度変化が大きいものを選択し、
選択した温度に基づいて前記領域の温度を調整する
半導体ウエハの温度制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハの温度制御装置及び半導体ウエハの温度制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハの温度制御装置として、例えば下記特許文献1には、半導体ウエハの温度を目標温度に制御し、半導体ウエハの面内の温度分布を制御するための装置が開示されている。温度制御装置は、平面視で同心円状に分割された複数のゾーンを有するステージと、各ゾーンに設けられた複数の温度調整手段と、各ゾーンに設けられた温度センサと、を備える。温度センサは、各ゾーンに1つのみ設けられている。
一方、下記特許文献2には、半導体ウエハに形成されたチップに通電して電気的特性を検査するプローバが開示されている。プローバは、半導体ウエハを保持するウエハ搭載台と、チップの電極位置に合わせて作られたプローブと、温度制御装置と、を備える。温度制御装置は、ウエハ搭載台を加熱する加熱機構と、ウエハ搭載台を冷却する冷却機構と、を備える。冷却機構は、ウエハ搭載台に冷却液を循環させる搭載台冷却ライン等を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-167813号公報
【特許文献2】特開2016-192485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、ステージの各ゾーンに温度センサが1つしか設けられていないため、ゾーンに局所的な入熱があった場合、温度センサが入熱位置から遠く離れて配置されていると、温度変化を捉えるまで時間がかかり、応答が悪くなる可能性がある。
特許文献2では、冷却液の循環により温調しているため、設定温度の変更に対する応答が悪くなる可能性がある。
【0005】
そこで本発明は、半導体ウエハが載置される載置面に局所的な入熱があった場合でも素早く応答することができる半導体ウエハの温度制御装置及び半導体ウエハの温度制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る半導体ウエハの温度制御装置は、半導体ウエハが載置される載置面を有し、前記載置面が平面視で互いに区画された複数の領域を有する載置部と、前記複数の領域毎に前記載置部の温度を独立して調整する温度調整部と、前記複数の領域の少なくとも1つに複数設けられ、前記温度調整部により温度調整された前記領域の温度を検出する温度検出部と、前記複数の温度検出部の検出温度を監視し、監視した複数の検出温度のうち単位時間当たりの温度変化が大きいものを選択し、選択した検出温度に基づいて前記温度調整部を制御する制御部と、を備える。
【0007】
本発明の一態様に係る半導体ウエハの温度制御方法は、平面視で互いに区画された複数の領域の少なくとも1つの領域の複数箇所で温度を監視し、前記複数の領域を有する載置面に半導体ウエハを載置し、監視した複数箇所の温度のうち単位時間当たりの温度変化が大きいものを選択し、選択した温度に基づいて前記領域の温度を調整する。
【発明の効果】
【0008】
上記態様によれば、半導体ウエハが載置される載置面に局所的な入熱があった場合でも素早く応答することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態の温度制御装置のブロック図。
図2】実施形態の温度検出部の配置を示す平面図。
図3図2のIII-III断面図。
図4】実施形態の温度制御方法のフローチャート。
図5】実施形態の複数の検出温度の温度変化の説明図。
図6】実施形態の温度制御の一例を説明するための平面図。
図7】実施形態の第一変形例の温度制御の一例を説明するための平面図。
図8】実施形態の第二変形例の温度制御の一例を説明するための平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。実施形態においては、半導体ウエハの温度制御装置の一例として、通電により電気的特性が検査されるチップを有する半導体ウエハの温度(通電により局所的に入熱された半導体ウエハの温度)を目標温度に制御するための温度制御装置を挙げて説明する。例えば、半導体ウエハは、円板状に形成されている。
【0011】
<温度制御装置>
図1は、温度制御装置1のブロック図である。図2は、温度検出部4の配置を示す平面図である。なお、図2においては、半導体ウエハWを破線で示し、温度検出部4を実線で示している。
図1に示すように、温度制御装置1は、載置部2と、温度調整部3と、温度検出部4(図2参照)と、制御部5と、を備える。温度制御装置1の各要素は、制御部5によって制御される。
【0012】
<載置部>
載置部2は、半導体ウエハWが載置される載置面10を有する。載置部2は、載置面10を第一面11に有する円板状に形成されている。図2に示すように、載置面10は、平面視で円形状に形成されている。例えば、載置面10の外径は、半導体ウエハWの外径以上の大きさとされている。載置面10は、平面視で互いに区画された複数(例えば本実施形態では5つ)の領域20~24を有する。
【0013】
複数の領域20~24は、平面視で載置面10の中央に設けられた中央領域20と、平面視で中央領域20の径方向外側に設けられた複数(例えば本実施形態では4つ)の外側領域21~24と、を備える。
【0014】
中央領域20は、平面視で真円形状(円形状)に形成されている。例えば、載置面10に半導体ウエハWを載置した場合、中央領域20は平面視で半導体ウエハWの中央部分と重なる。
【0015】
例えば、載置面10に半導体ウエハWを載置した場合、4つの外側領域21~24は平面視で半導体ウエハWの外周部分と重なる。4つの外側領域21~24は、互いに周方向に区画されている。各外側領域21~24は、平面視で円弧状(弧状)に形成されている。各外側領域21~24は、平面視で中央領域20を囲む円環状の領域を周方向で均等に4分割した形状を有する。すなわち、4つの外側領域21~24は、平面視で互いに同じ形状を有する。4つの外側領域21~24は、第一外側領域21、第二外側領域22、第三外側領域23及び第四外側領域24である。第一外側領域21、第二外側領域22、第三外側領域23及び第四外側領域24は、平面視で中央領域20を中心として左回り(反時計回り)に順に並んでいる。
【0016】
図3は、図2のIII-III断面図である。
図3に示すように、載置部2は、第一面11とは反対側の第二面12において開口する凹部13を有する。凹部13は、第一面11(載置面10)には開口していない。凹部13は、複数の領域20~24(図2参照)のそれぞれに複数設けられている。例えば、複数の凹部13は、中央領域20に4つ、各外側領域21~24に3つずつ設けられている。
【0017】
<温度調整部>
温度調整部3は、複数の領域20~24毎に載置部2の温度を独立して調整する。例えば、温度調整部3は、ペルチェ素子等の熱電素子30を備える。例えば、熱電素子30は、複数の領域20~24のそれぞれに設けられている。例えば、複数の熱電素子30に通電すると、各領域20~24を独立に加熱・冷却することができる。各領域20~24のそれぞれの熱電素子30は、制御部5(図1参照)によって制御される。
【0018】
温度調整部3は、載置部2の第二面12に設けられている。温度調整部3は、凹部13に繋がる貫通孔31を有する。貫通孔31は、凹部13に対応して複数設けられている。例えば、複数の貫通孔31は、中央領域20に4つ、各外側領域21~24に3つずつ設けられている。
【0019】
温度調整部3において載置部2と対向する面とは反対側の面には、温度調整部3を冷却する冷却部35が設けられている。例えば、冷却部35は、水冷板である。例えば、水冷板は、冷却水が流通可能な冷却路36を有する。例えば、冷却路36は、複数の領域20~24のそれぞれに設けられている。例えば、不図示のポンプを駆動して各冷却路36に冷却水を流すことにより、各領域20~24を独立に冷却することができる。各領域20~24に対応するポンプは、制御部5(図1参照)によって制御される。
【0020】
冷却部35は、温度調整部3の貫通孔31に繋がる挿通孔37を有する。挿通孔37は、貫通孔31に対応して複数設けられている。例えば、複数の挿通孔37は、中央領域20に4つ、各外側領域21~24に3つずつ設けられている。
【0021】
<温度検出部>
温度検出部4は、温度調整部3により温度調整された領域20~24(図2参照)の温度を検出する。例えば、温度検出部4は、測温抵抗体(RTD:Resistance temperature Detector)、熱電対(TC:ThermoCouple)等の温度センサ40を備える。温度センサ40は、複数の領域20~24のそれぞれに複数設けられている。例えば、図2に示すように、温度センサ40は、中央領域20に4つ、各外側領域21~24に3つずつ設けられている。図3に示すように、温度センサ40は、冷却部35の挿通孔37、温度調整部3の貫通孔31を通じて載置部2の凹部13に配置されている。
【0022】
図2に示すように、複数の温度センサ40は、平面視で載置面10の周方向及び径方向のそれぞれにおいて互いに離れて配置されている。複数の温度センサ40は、平面視で中央領域20及び複数の外側領域21~24のそれぞれにおいて互いに離れて配置されている。例えば、中央領域20の4つの温度センサ40は、径方向では互いに同じ位置に配置され且つ周方向では互いに同じ間隔をあけて配置されている。例えば、各外側領域21~24の3つの温度センサ40は、径方向では3つのうち周方向で真ん中の1つが他の2つよりも内側に配置され且つ周方向では3つが互いに同じ間隔をあけて配置されている。各温度センサ40の検出温度は、制御部5(図1参照)に入力される。
【0023】
<制御部>
制御部5は、複数の温度センサ40の検出温度を監視する。制御部5は、監視した複数の検出温度のうち単位時間当たりの温度変化が最も大きいものを選択する。例えば、制御部5は、監視した複数の検出温度のうち単位時間当たりの温度変化の平均値が最も大きいものを選択する。制御部5は、選択した検出温度に基づいて温度調整部3を制御する。例えば、制御部5は、選択した検出温度に基づいて所定の領域(例えば、複数の領域20~24の少なくとも1つ)の温度が目標温度になるように温度調整部3をPID制御(Proportional Integral Derivative Controller)する。
【0024】
なお、本実施形態では、制御部5は、監視した複数の検出温度のうち単位時間当たりの温度変化の平均値が最も大きいものを選択する場合について説明するが、これに限らない。例えば、制御部5は、監視した複数の検出温度のうち単位時間当たりの温度変化の平均値が所定値(例えば、予め定めた閾値)よりも大きいものを選択してもよい。すならち、制御部5は、監視した複数の検出温度のうち単位時間当たりの温度変化が大きいものを選択し、選択した検出温度に基づいて温度調整部3を制御すればよい。
【0025】
<温度制御方法>
図4は、温度制御方法のフローチャートである。
温度制御方法は、温度監視工程(図4のステップS1)、ウエハ載置工程(図4のステップS2)、ウエハ検査工程(図4のステップS3)、温度選択工程(図4のステップS4)及び温度調整工程(図4のステップS5)を含む。
【0026】
温度監視工程では、平面視で互いに区画された複数の領域20~24の少なくとも1つの領域の複数箇所で温度を監視する。例えば、温度監視工程では、複数の領域20~24のそれぞれにおいて複数箇所で温度を監視する。例えば、温度監視工程では、複数の領域20~24のそれぞれに設けられた複数の温度センサ40のすべてを常に監視する。温度監視工程の後、ウエハ載置工程に移行する(図4のステップS2)。
【0027】
例えば、ウエハ載置工程では、複数の領域20~24を有する載置面10に半導体ウエハWを載置する(図4のステップS2)。例えば、ウエハ載置工程では、平面視で円形状の載置面10に対し、円板状の半導体ウエハWが全体的に重なるように載置する。ウエハ載置工程の後、ウエハ検査工程に移行する(図4のステップS3)。
【0028】
ウエハ検査工程では、載置面10に載置された半導体ウエハWを検査する。例えば、半導体ウエハWの検査により局所的な入熱が発生する。ウエハ検査工程の後、温度選択工程に移行する(図4のステップS4)。
【0029】
温度選択工程では、監視した複数箇所の温度のうち単位時間当たりの温度変化が最も大きいものを選択する。例えば、温度選択工程では、監視した複数の検出温度のうち単位時間当たりの温度変化の平均値が最も大きいものを選択する。
【0030】
図5は、複数の検出温度の温度変化の説明図である。図5において、縦軸は温度、横軸は時間をそれぞれ示す。
例えば、図5に示すように、温度選択工程では、監視した複数の検出温度(グラフA1~A3)のうち単位時間当たり(時間t1~t2)の温度変化の最大値が温調開始閾値Th以下のものを選択する。
【0031】
例えば、載置面10の所定の領域に局所的に入熱があった場合、所定の領域に設けられた3つの温度センサ40(図2参照)の温度変化は互いに異なる。例えば、図5に示すように、3つの温度センサ40の検出温度(グラフA1~A3)のうち単位時間当たりの温度変化の最大値が温調開始閾値Th以下のものが、2つあるとする(2つのグラフA1,A2)。例えば、2つの温度センサ40のうち入熱位置に近いものの検出温度(グラフA1)は急峻に昇温する。一方、2つの温度センサ40のうち入熱位置から遠いものの検出温度(グラフA2)は緩やかに昇温する。例えば、温度選択工程では、温度センサ40の検出温度(グラフA1)を選択する。温度選択工程の後、温度調整工程に移行する(図4のステップS5)。
【0032】
温度調整工程では、選択した温度(グラフA1)に基づいて所定の領域の温度を調整する。例えば、温度調整工程では、温度センサ40の検出温度(グラフA1)に基づいて第一外側領域21(図2参照)の温度を調整する。
【0033】
<温度制御>
図6は、温度制御の一例を説明するための平面図である。
上述の通り、半導体ウエハは、通電により電気的特性が検査されるチップを有する。図6においては、平面視で矩形状のチップ50を破線で示し且つ半導体ウエハの図示を省略するとともに、温度検出部4を実線で示している。
例えば、図6に示すように、通電によりチップ50の電気的特性を検査する場合、載置面10のうち平面視でチップ50と重なる部分(図6の例では第一外側領域21の一部)が局所的に入熱される。
【0034】
ここで、第一外側領域21に設けられた3つの温度センサ40のうち1つ(黒丸で示した温度センサ41)は、平面視でチップ50と重なっている。一方、第一外側領域21に設けられた3つの温度センサ40のうち他の2つ(ドットハッチ丸で示した温度センサ42)は、平面視でチップ50から離れて配置されている。そのため、3つの温度センサ40のうち1つ(黒丸で示した温度センサ41)は、単位時間当たりの温度変化が最も大きくなる。したがって、3つの温度センサ40のうち1つ(黒丸で示した温度センサ41)に基づいて第一外側領域21の温度を調整することにより、他の2つ(ドットハッチ丸で示した温度センサ42)に基づいて第一外側領域21の温度を調整する場合と比較して、第一外側領域21の温度変化を素早く捉えることができる。
【0035】
<作用効果>
以上説明したように、本実施形態の温度制御装置1は、半導体ウエハWが載置される載置面10を有し、載置面10が平面視で互いに区画された複数の領域20~24を有する載置部2と、複数の領域20~24毎に載置部2の温度を独立して調整する温度調整部3と、複数の領域20~24の少なくとも1つに複数設けられ、温度調整部3により温度調整された領域の温度を検出する温度検出部4と、複数の温度検出部4の検出温度を監視し、監視した複数の検出温度のうち単位時間当たりの温度変化が最も大きいものを選択し、選択した検出温度に基づいて温度調整部3を制御する制御部5と、を備える。
この構成によれば、平面視で互いに区画された複数の領域20~24の少なくとも1つの領域の複数箇所で温度を監視し、複数の領域20~24を有する載置面10に半導体ウエハWを載置し、監視した複数箇所の温度のうち単位時間当たりの温度変化が最も大きいものを選択し、選択した温度に基づいて領域の温度を調整することができる。したがって、半導体ウエハWが載置される載置面10に局所的な入熱があった場合でも素早く応答することができる。
【0036】
例えば仮に、載置面の各領域に温度センサが1つしか設けられていない場合、領域に局所的な入熱があった場合、温度センサが入熱位置から遠く離れて配置されていると、温度変化を捉えるまで時間がかかり、応答が悪くなる可能性がある。これに対し本実施形態の構成によれば、複数の領域20~24の少なくとも1つには温度センサ40が複数設けられているため、領域20~24に局所的な入熱があった場合でも、複数の温度センサ40のうち少なくとも1つは他のものよりも入熱位置に近く配置される。そのため、温度変化を捉えるまでの時間を短縮し、応答を良くすることができる。
加えて、本実施形態では、ペルチェ素子等の熱電素子30により各領域20~24を温調しているため、冷却液の循環により温調する場合と比較して、設定温度の変更に対する応答を良くすることができる。
さらに、本実施形態では、監視した複数箇所の温度のうち単位時間当たりの温度変化が最も大きいものを選択し、選択した温度に基づいて領域の温度を調整することで、監視したすべての温度に基づいて領域の温度を調整する場合と比較して、温度制御を簡素化しつつ領域の温度を最適な温度に調整することができる。すなわち、本実施形態では、所定の領域において温度の監視箇所(監視点)は複数設けられている一方で、温度の制御箇所(制御点、例えば図6の黒丸で示した温度センサ41)は1つのみであるため、目標温度への温調を素早く正確に行うことができる。
【0037】
さらに、本実施形態では、ペルチェ素子等の熱電素子30を用いて温調していることで、冷却液の循環により温調する場合に必要な加熱機構及び冷却機構の併設が不要である。そのため、エネルギー消費量を低減するとともに、設備設置スペースを低減することができる。
【0038】
本実施形態では、載置面10は、平面視で円形状に形成されている。複数の温度検出部4は、平面視で載置面10の周方向及び径方向のそれぞれにおいて互いに離れて配置されている。
そのため、半導体ウエハWが載置される載置面10の任意の位置に局所的な入熱があった場合でも素早く応答することができる。
【0039】
本実施形態では、複数の領域20~24は、平面視で載置面10の中央に設けられ、平面視で円形状に形成された中央領域20と、平面視で中央領域20の径方向外側において互いに周方向に区画され、平面視で弧状に形成された複数の外側領域21~24と、を備える。温度検出部4は、複数の領域20~24のそれぞれに複数設けられている。複数の温度検出部4は、平面視で中央領域20及び複数の外側領域21~24のそれぞれにおいて互いに離れて配置されている。
そのため、円板状の半導体ウエハWを載置面10に載置した際に、各領域20~24の任意の位置に局所的な入熱があった場合でも素早く応答することができる。
【0040】
本実施形態では、載置部2は、載置面10を第一面11に有する板状に形成されている。温度調整部3は、載置部2において載置面10が設けられた側とは反対側の第二面12に設けられている。載置部2は、第二面12において開口する凹部13を有する。温度調整部3は、凹部13に繋がる貫通孔31を有する。温度検出部4は、貫通孔31を通じて凹部13に配置されている。
そのため、温度検出部4により、載置部2の凹部13を通じて領域の温度を精度よく検出することができる。加えて、半導体ウエハWを載置面10に載置した際に、温度検出部4を邪魔にならないように配置することができる。
【0041】
本実施形態の温度制御方法は、平面視で互いに区画された複数の領域20~24の少なくとも1つの領域の複数箇所で温度を監視し、複数の領域20~24を有する載置面10に半導体ウエハWを載置し、監視した複数箇所の温度のうち単位時間当たりの温度変化が最も大きいものを選択し、選択した温度に基づいて領域の温度を調整する。
そのため、半導体ウエハWが載置される載置面10に局所的な入熱があった場合でも素早く応答することができる。
【0042】
<その他の実施形態>
上述した実施形態では、載置面が平面視で円形状に形成されている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、載置面は、平面視で矩形状に形成されていてもよい。例えば、載置面の平面視形状は、半導体ウエハの形状等、要求仕様に応じて変更することができる。
【0043】
上述した実施形態では、複数の温度検出部が平面視で載置面の周方向及び径方向のそれぞれにおいて互いに離れて配置されている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、複数の温度検出部は、平面視で載置面の周方向及び径方向のそれぞれにおいて互いに離れて配置されていなくてもよい。例えば、複数の温度検出部の配置態様は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0044】
上述した実施形態では、複数の領域は、平面視で載置面の中央に設けられ、平面視で円形状に形成された中央領域と、平面視で中央領域の径方向外側において互いに周方向に区画され、平面視で弧状に形成された複数の外側領域と、を備える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、複数の領域は、平面視で中央領域と同心円状に形成された複数の環状領域を備えていてもよい。例えば、各領域の形状及び配置の態様は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0045】
上述した実施形態では、温度検出部が複数の領域のそれぞれに複数設けられている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、温度検出部は、複数の領域の1つのみに複数設けられていてもよい。例えば、温度検出部は、複数の領域の少なくとも1つに複数設けられていればよい。例えば、温度検出部の設置数及び設置位置は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0046】
上述した実施形態では、制御部は、所定の領域(図6の例では第一外側領域21)に設けられた複数の温度検出部の検出温度を監視し、監視した複数の検出温度のうち単位時間当たりの温度変化が最も大きいものを選択し、選択した検出温度に基づいて温度調整部を制御する例を挙げて説明したが、これに限らない。
例えば、図7に示すように、制御部は、選択した検出温度に基づいて、複数の領域のうち平面視で互いに隣り合う2つの領域の一方(図7の例では第一外側領域21)における温度調整部を制御するとともに、2つの領域の他方(図7の例では第二外側領域22)における温度調整部を制御してもよい。この構成によれば、半導体ウエハが載置される載置面10のうち第一外側領域21に局所的な入熱があった際に隣の第二外側領域22に熱影響があった場合でも素早く応答することができる。
例えば、第二外側領域22における温度調整部を制御する場合、制御部は、第二外側領域22の複数の温度検出部(3つの温度センサ40)のうち第一外側領域21の温度検出部(黒丸で示した温度センサ41)に最も近いもの(白丸で示した温度センサ43)が検出した検出温度を選択し、選択した検出温度に基づいて第二外側領域22の温度調整部を制御してもよい。
【0047】
上述した実施形態では、平面視で互いに区画された複数の領域の所定の領域の複数箇所で温度を監視し、複数の領域を有する載置面に半導体ウエハを載置し、監視した複数箇所の温度のうち単位時間当たりの温度変化が最も大きいものを選択し、選択した温度に基づいて領域の温度を調整する例を挙げて説明したが、これに限らない。
例えば、図8に示すように、複数の領域のすべての領域の複数箇所で温度を監視し、監視した複数箇所の温度のうち単位時間当たりの温度変化が最も大きいものを選択し、選択した温度に基づいてすべての領域の温度を調整してもよい。例えば、各領域20~24における温度調整部を制御する場合、制御部は、各領域20~24のそれぞれにおいて1つのみの制御点(例えば図8の黒丸で示した温度センサ41の検出温度)に基づいて、各領域20~24における温度調整部を制御してもよい。例えば、各領域の温度調整の態様は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0048】
上述した実施形態では、載置部が載置面を第一面に有する板状に形成されている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、載置部は、載置面を第一面に有するブロック状に形成されていてもよい。例えば、載置部の形状は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0049】
上述した実施形態では、温度調整部が載置部において載置面が設けられた側とは反対側の第二面に設けられている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、温度調整部は、載置部に内蔵されていてもよい。例えば、温度調整部の設置態様は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0050】
上述した実施形態では、温度検出部が温度調整部の貫通孔を通じて載置部の凹部に配置され、載置部の凹部を通じて領域の温度を検出する例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、温度検出部は、載置部の凹部を通じずに領域の温度を検出してもよい。例えば、温度検出部は、非接触式の温度センサであってもよい。例えば、温度検出部の態様は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0051】
上述した実施形態では、半導体ウエハの温度制御方法の一例として、ウエハ載置の前から温度監視をする例(温度監視工程の後にウエハ載置工程に移行する例)を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、ウエハ載置の後に温度監視をしてもよい(ウエハ載置工程の後に温度監視工程に移行してもよい)。例えば、温度監視のタイミングは、要求仕様に応じて変更することができる。
【0052】
上述した実施形態では、半導体ウエハの温度制御装置の一例として、通電により電気的特性が検査されるチップを有する半導体ウエハの温度(通電により局所的に入熱された半導体ウエハの温度)を目標温度に制御するための温度制御装置を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、温度制御装置は、通電により電気的特性が検査されるチップを有しない半導体ウエハの温度を目標温度に制御するための温度制御装置に適用されてもよい。例えば、温度制御装置は、シリコンウエハ等の半導体ウエハの温度を目標温度に制御するための温度制御装置に適用されてもよい。例えば、温度制御装置は、ドライプロセスに使用されてもよい。例えば、温度制御装置の使用態様は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0053】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれらに限定されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能であり、上述した実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0054】
1…温度制御装置、2…載置部、3…温度調整部、4…温度検出部、5…制御部、10…載置面、11…第一面、12…第二面、13…凹部、20…中央領域(領域)、21…第一外側領域(領域)、22…第二外側領域(領域)、23…第三外側領域(領域)、24…第四外側領域(領域)、30…熱電素子、31…貫通孔、W…半導体ウエハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8