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特開2022-125905PTC機能性組成物、PTC機能性組成物層、非水電解質二次電池用被覆集電体、非水電解質二次電池用電極及び非水電解質二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022125905
(43)【公開日】2022-08-29
(54)【発明の名称】PTC機能性組成物、PTC機能性組成物層、非水電解質二次電池用被覆集電体、非水電解質二次電池用電極及び非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/66 20060101AFI20220822BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20220822BHJP
【FI】
H01M4/66 A
H01M4/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021023738
(22)【出願日】2021-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】白 鎭碩
(72)【発明者】
【氏名】田代 勇太
(72)【発明者】
【氏名】干場 弘治
(72)【発明者】
【氏名】深谷 倫行
【テーマコード(参考)】
5H017
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017AS02
5H017CC01
5H017DD05
5H017DD06
5H017EE06
5H017EE07
5H017EE09
5H017HH00
5H017HH01
5H017HH03
5H017HH04
5H017HH06
5H017HH07
5H050AA07
5H050AA12
5H050AA15
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA04
5H050FA04
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA07
5H050HA08
5H050HA15
(57)【要約】
【課題】非水電解質二次電池において十分なPTC機能と電池性能とを両立させるPTC機能性組成物を提供する。
【解決手段】炭素材料と、結着剤と、熱可塑性樹脂とを含有するPTC機能性組成物であって、前記炭素材料が導電性を有する粒子状のものであり、前記炭素材料が吸収するジブチルフタレートの総量(DBP吸収量)が30cc/100g以上120cc/100g以下であり、前記炭素材料の一次粒子径が20nm以上300nm以下であることを特徴とするPTC機能性組成物とした。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素材料と、結着剤と、熱可塑性樹脂とを含有するPTC機能性組成物であって、
前記炭素材料が導電性を有する粒子状のものであり、前記炭素材料が吸収するジブチルフタレートの総量(DBP吸収量)が30cc/100g以上120cc/100g以下であり、前記炭素材料の一次粒子径が20nm以上300nm以下であることを特徴とするPTC機能性組成物。
【請求項2】
前記炭素材料のラマン分光分析法によって測定される1350cm-1付近のピーク面積(A)と1580cm-1付近のピーク面積(A)との比(A/A)が2.2以上3.5以下である、請求項1に記載のPTC機能性組成物。
【請求項3】
前記炭素材料のラマン分光分析法によって測定される1580cm-1付近のピーク半値幅(G-FWHM)が95cm-1以上150cm-1以下である、請求項1又は2に記載のPTC機能性組成物。
【請求項4】
前記炭素材料の総比表面積が7m2/g以上100m2/g以下である、請求項1~3の何れか一項に記載のPTC機能性組成物。
【請求項5】
前記炭素材料の60MPa加圧時の体積密度が1.0g/cc以上1.6g/cc以下である、1~4の何れか一項に記載のPTC機能性組成物。
【請求項6】
固形分全体を100質量部とした場合の、前記炭素材料の含有量が10質量部以上70質量部以下であり、前記結着剤の含有量が1質量部以上50質量部以下であり、前記熱可塑性樹脂の含有量が5質量部以上65質量部以下である、1~5のいずれか一項に記載のPTC機能性組成物。
【請求項7】
請求項1~6の何れか一項に記載のPTC機能性組成物を含有するPTC機能性組成物層。
【請求項8】
請求項7記載のPTC機能性組成物層を備えた非水電解質二次電池用被覆集電体。
【請求項9】
請求項8に記載の非水電解質二次電池用被覆集電体を備えた非水電解質二次電池用電極。
【請求項10】
請求項9に記載の該非水電解質二次電池用電極を備えた非水電解質二次電池。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PTC機能性組成物、該PTC機能性組成物を含有する非水電解質二次電池用PTC機能性組成物層、該PTC機能性組成物層を備えた非水電解質二次電池用被覆集電体、該被覆集電体を備えた非水電解質二次電池用電極及び該電極を備えた非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池をはじめとする非水電解質二次電池は、スマートフォンやノート型パソコン等の電源として広く用いられており、最近は車載用など大型電池にも使用されている。一方、リチウムイオン二次電池は、エネルギー密度が高いという利点の反面、非水電解質を使用するため、安全性に十分な対策が必要であるが、近年電池の大型化に応じて、安全性の確保が更に重要となっている。
【0003】
そこで、リチウムイオン二次電池には、故障等の不慮の事故の際、自発的かつ安全に充放電を停止する所謂シャットダウン機能が求められており、電池内部ではセパレータにその機能が付与されている。しかし、セパレータによるシャットダウンが不完全でセパレータ融点より更に温度が上昇する場合や、外部温度の上昇により、セパレータが融解して内部短絡が発生する場合もあり、さらなる安全性向上に向けた対策が求められている。
【0004】
その対策として、リチウム二次電池の電極を構成する集電体または活物質層内に正温度係数(PTC)機能性組成物を形成する技術が提案されている(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005―268066号公報
【特許文献2】特開2016―191037号公報
【特許文献3】特開2017―228344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1~3に記載されているPTC機能性組成物では十分なPTC機能を発揮できない、又は電池性能が低下してしまう場合があることに本発明者は気が付いた。
【0007】
本発明は、本発明者が前述した問題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、含有する炭素材料の粒子同士のつながりが比較的弱く、かつ炭素材料の一次粒径が所定の範囲内のものであるPTC機能性組成物とすれば、非水電解質二次電池において十分なPTC機能と電池性能とを両立させることが出来ることを見出して初めて完成したものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明に係るPTC機能性組成物は、炭素材料と、結着剤と、熱可塑性樹脂とを含有するPTC機能性組成物であって、前記炭素材料が導電性を有する粒子状のものであり、前記炭素材料が吸収するジブチルフタレートの総量(DBP吸収量)が30cc/100g以上120cc/100g以下であり、前記炭素材料の一次粒子径が20nm以上300nm以下であることを特徴とするものである。
【0009】
このように構成したPTC機能性組成物によれば、前記炭素材料のDBP吸収量及び一次粒子径がそれぞれ前述した範囲内であることにより、粒子同士のつながりが比較的弱く、電池の内部温度上昇時における熱可塑性樹脂の体積膨張に伴う炭素材料同士の導電性の遮蔽効果を十分に発揮させることができる。一方で、常温時には炭素材料間での導電パスが形成されやすく、PTC機能性組成物を含有するPTC機能性組成物層を電池内に形成した場合であっても、サイクル寿命等の電池特性の悪化を低減することができる。
【0010】
前記炭素材料のラマン分光分析法によって測定される1350cm-1付近のピーク面積(A) と1580cm-1付近のピーク面積(A)の比R値(A/A)が2.2以上3.5以下であることが好ましい。炭素材料の前記比R値(A/A)が、前述した範囲のものであれば、炭素材料粒子の表面の結晶性が比較的低い(非晶質性である)ことになる。炭素材料粒子の表面が適度に非晶質性であると、熱可塑性樹脂との相互作用が強くなり、熱可塑性樹脂の体積膨張による影響を受けやすいので、熱可塑性樹脂の体積膨張に伴う炭素材料の導電パス切断効果を十分に発揮させることができると考えられる。
【0011】
同様の理由から、前記炭素材料のラマン分光分析法によって測定される1580cm-1付近のピーク半値幅(G-FWHM)が95cm-1以上150cm-1以下であることが好ましい。
【0012】
前記炭素材料の総比表面積が7m2/g以上100m2/g以下であることが好ましい。
【0013】
前記炭素材料の60MPa加圧時の体積密度が1.0g/cc以上1.6g/cc以下であることが好ましい。
【0014】
前記炭素材料の60MPa加圧時の体積抵抗率が0.020Ωcm以上0.10Ωcm以下であることが好ましい。
【0015】
PTC機能性組成物の固形分全体を100質量部とした場合に、前記炭素材料の含有量が10質量部以上70質量部以下であり、結着剤の含有率が1質量部以上50質量部以下であり、熱可塑性樹脂の含有量が5質量部以上65質量部以下であることが好ましい。
【0016】
本発明は、以上に説明したようなPTC機能性組成物を含有するPTC機能性組成物層、集電体上に前記PTC機能性組成物層が形成された非水電解質二次電池用被覆集電体、該非水電解質二次電池用被覆集電体を備えた非水電解質二次電池用電極、又は該非水電解質二次電池用電極を備えた非水電解質二次電池を含むものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、実用化するために十分なPTC機能と電池性能とを両立させることが出来る非水電解質二次電池を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の一実施形態に係る二次電池の具体的な構成について説明する。
<1.非水電解質二次電池の基本構成>
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、正極と、負極と、セパレータ(separator)と、非水電解質と、を備えるものである。
このリチウムイオン二次電池の充電到達電圧(酸化還元電位)は、例えば、4.0V(vs.Li/Li+)以上5.0V以下、特に4.2V以上5.0V以下となる。リチウムイオン二次電池の形態は、特に限定されないが、例えば、円筒形、角形、ラミネート(laminate)形、またはボタン(button)形等のいずれであってもよい。
【0019】
(1-1.正極)
前記正極は、正極集電体と、該正極集電体上に形成された正極合剤層とを備えている。
前記正極集電体は、導電体であればどのようなものでも良く、例えば、板状又は箔状のものであり、アルミニウム(aluminum)、ステンレス(stainless)鋼、及びニッケルメッキ(nickel coated)鋼等で構成されることが好ましい。
前記正極合剤層は、少なくとも正極活物質を含み、導電剤と、正極用バインダーとをさらに含んでいてもよい。
【0020】
前記正極活物質は、例えば、リチウムを含む遷移金属酸化物または固溶体酸化物であり、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵および放出することができる物質であれば特に制限されない。リチウムを含む遷移金属酸化物としては、例えば、Li1.0Ni0.88Co0.1Al0.01Mg0.01等を挙げることができるが、これ以外にも、LiCoO等のLi・Co系複合酸化物、LiNiCoMn等のLi・Ni・Co・Mn系複合酸化物、LiNiO等のLi・Ni系複合酸化物、またはLiMn等のLi・Mn系複合酸化物等を例示することができる。固溶体酸化物としては、LiMnCoNi(1.150≦a≦1.430、0.45≦x≦0.6、0.10≦y≦0.15、0.20≦z≦0.28)、LiMn1.5Ni0.5等を例示することができる。なお、前記正極活物質の含有量(含有比)は、特に制限されず、非水電解質二次電池の正極合剤層に適用可能な含有量であればよい。また、これらの化合物を単独で用いても良いし、または複数種混合して用いてもよい。
【0021】
前記導電剤は、前記正極の導電性を高めるためのものであれば特に制限されない。前記導電剤の具体例としては、例えば、カーボンブラック、天然黒鉛、人造黒鉛及び繊維状炭素の中から選ばれる一種以上を含有するものを挙げることができる。
前記カーボンブラックの例としては、ファーネスブラック(furnace black)、チャネルブラック(channel black)、サーマルブラック(thermal black)、ケッチェンブラック(ketjen black)、アセチレンブラック(acetylene black)等を挙げることができる。
前記繊維状炭素の例としては、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンナノファイバ等を挙げることができる。
前記導電剤の含有量は、特に制限されず、非水電解質二次電池の正極合剤層に適用可能な含有量であれば良い。
【0022】
前記正極用バインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride)等のフッ素含有樹脂、スチレンブタジエンゴム(styrene-butadiene rubber)等のエチレン含有樹脂、エチレンプロピレンジエン三元共重合体(ethylene-propylene-diene terpolymer)、アクリロニトリルブタジエンゴム(acrylonitile-butadiene rubber)、フッ素ゴム(fluororubber)、ポリ酢酸ビニル(polyvinyl acetate)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリエチレン(polyethylene)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)、カルボキシメチルセルロース(carboxy metyl cellulose)若しくはカルボキシメチルセルロース誘導体(カルボキシメチルセルロースの塩等)、又はニトロセルロース(nitrocellulose)等を挙げることができる。前記正極用バインダーは、前記正極活物質及び前記導電剤を前記正極集電体上に結着させることができるものであればよく、特に制限されない。
【0023】
(1-2.負極)
負極は、負極集電体と、該負極集電体上に形成された負極合剤層とを備えるものである。
前記負極集電体は、導電体であればどのようなものでも良く、例えば、板状又は箔状のものであり、銅、ステンレス鋼、及びニッケルメッキ鋼等で構成されるものであることが好ましい。
【0024】
前記負極合剤層は、少なくとも負極活物質を含み、導電剤と、負極用バインダーとをさらに含んでいても良い。
前記負極活物質は、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵及び放出することが出来るものであれば特に限定されないが、例えば、黒鉛活物質(人造黒鉛、天然黒鉛、人造黒鉛と天然黒鉛との混合物、人造黒鉛を被覆した天然黒鉛等)、Si系活物質又はSn系活物質(例えば、ケイ素(Si)もしくはスズ(Sn)もしくはそれらの酸化物の微粒子と黒鉛活物質との混合物、ケイ素もしくはスズの微粒子、ケイ素もしくはスズを基本材料とした合金)、金属リチウム及びLiTi12等の酸化チタン系化合物、リチウム窒化物等が考えられる。負極活物質としては、以上に挙げたもののうち一種類を用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。なお、ケイ素の酸化物は、SiOx(0≦x≦2)で表される。
【0025】
前記導電剤は、前記負極の導電性を高めるためのものであれば特に制限されず、例えば、前記正極の項で説明したものと同様のものを使用することができる。
【0026】
前記負極用バインダーとしては、前記負極活物質及び前記導電剤を前記負極集電体上に結着させることができるものであればよく、特に制限されない。前記負極用バインダーは、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリル酸(PAA)、スチレンブタジエン系共重合体(SBR)、カルボキシメチルセルロースの金属塩(CMC)などであってもよい。1種のバインダーが単独で使用されても良いし、2種以上を含有するものとしても良い。
【0027】
(1-3.セパレータ)
セパレータは、特に制限されず、リチウムイオン二次電池のセパレータとして使用されるものであれば、どのようなものであってもよい。セパレータとしては、優れた高率放電性能を示す多孔膜や不織布等を、単独あるいは併用することが好ましい。セパレータを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン(polyethylene)、ポリプロピレン(polypropylene)等に代表されるポリオレフィン(polyolefin)系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate)、ポリブチレンテレフタレート(polybutylene terephthalate)等に代表されるポリエステル(polyester)系樹脂、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene difluoride)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(vinylidene difluoride-hexafluoropropylene copolymer)、フッ化ビニリデン-パーフルオロビニルエーテル共重合体(vinylidene difluoride-perfluoroninylether copolymer)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン共重合体(vinylidene difluoride-tetrafluoroethylene copolymer)、フッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン共重合体(vinylidene difluoride-trifluoroethylene copolymer)、フッ化ビニリデン-フルオロエチレン共重合体(vinylidene difluoride-fluoroethylene copolymer)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロアセトン共重合体(vinylidene difluoride-hexafluoroacetone copolymer)、フッ化ビニリデン-エチレン共重合体(vinylidene difluoride-ethylene copolymer)、フッ化ビニリデン-プロピレン共重合体(vinylidene difluoride-propylene copolymer)、フッ化ビニリデン-トリフルオロプロピレン共重合体(vinylidene difluoride-trifluoro propylene copolymer)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(vinylidene difluoride-tetrafluoroethylene copolymer)、フッ化ビニリデン-エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(vinylidene difluoride-ethylene-tetrafluoroethylene copolymer)等を挙げることができる。なお、セパレータの気孔率は、特に制限されず、従来のリチウムイオン二次電池のセパレータが有する気孔率を任意に適用することが可能である。
【0028】
セパレータの表面に、耐熱性を向上させるための無機粒子を含む耐熱層、または電極と接着して電池素子を固定化するための接着剤を含む層があってもよい。前述の無機粒子としては、Al、AlOOH、Mg(OH)、SiOなどがあげられる。接着剤としてはフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン重合体の酸変性物、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体などがあげられる。
【0029】
(1-4.非水電解液)
非水電解液は、従来からリチウムイオン二次電池に用いられる非水電解液と同様のものを特に限定なく使用することができる。非水電解液は、電解液用溶媒である非水溶媒に電解質塩を含有させた組成を有する。前記非水溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート(propylene carbonate)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate)、ブチレンカーボネート(butylene carbonate)、クロロエチレンカーボネート(chloroethylene carbonate)、フルオロエチレンカーボネート(fluoroethylene carbonate)、ビニレンカーボネート(vinylene carbonate)等の環状炭酸エステル類、γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone)、γ-バレロラクトン(γ-valerolactone)等の環状エステル類、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate)、ジエチルカーボネート(diethyl carbonate)、エチルメチルカーボネート(ethylmethyl carbonate)等の鎖状カーボネート類、ギ酸メチル(methylformate)、酢酸メチル(methylacetate)、酪酸メチル(methylbutyrate)、プロピオン酸エチル(ethyl propionate)、プロピオン酸プロピル(propyl propionate)等の鎖状エステル類、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)またはその誘導体、1,3-ジオキサン(1,3-dioxane)、1,4-ジオキサン(1,4-dioxane)、1,2-ジメトキシエタン(1,2-dimethoxyethane)、1,4-ジブトキシエタン(1,4-dibutoxyethane)、またはメチルジグライム(methyldiglyme)、エチレングリコールモノプロピルエーテル(ethylene glycol monopropyl ether)、プロピレンレングリコールモノプロピルエーテル(propylene glycol monopropyl ether)等のエーテル類、アセトニトリル(acetonitrile)、ベンゾニトリル(benzonitrile)等のニトリル類、ジオキソラン(dioxolane)またはその誘導体、エチレンスルフィド(ethylene sulfide)、スルホラン(sulfolane)、スルトン(sultone)またはその誘導体等を、単独で、またはそれら2種以上を混合して使用することができる。なお、前記非水溶媒を2種以上混合して使用する場合、各非水溶媒の混合比は、従来のリチウムイオン二次電池で用いられる混合比が適用可能である。
【0030】
電解質塩としては、例えば、LiClO、LiBF、LiAsF、LiPF、LIPF-x(C2n+1)x[但し、1<x<6、n=1or2]、LiSCN、LiBr、LiI、LiSO、Li10Cl10、NaClO、NaI、NaSCN、NaBr、KClO、KSCN等のリチウム(Li)、ナトリウム(Na)またはカリウム(K)の1種を含む無機イオン塩、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiN(CFSO)(CSO)、LiC(CFSO、LiC(CSO、(CHNBF、(CHNBr、(CNClO、(CNI、(CNBr、(n-CNClO、(n-CNI、(CN-maleate、(CN-benzoate、(CN-phtalate、ステアリルスルホン酸リチウム(stearyl sulfonic acid lithium)、オクチルスルホン酸リチウム(octyl sulfonic acid lithium)、ドデシルベンゼンスルホン酸リチウム(dodecyl benzeneulfonic acid lithium)等の有機イオン塩等が挙げられ、これらのイオン性化合物を単独、あるいは2種類以上混合して用いることが可能である。なお、電解質塩の濃度は、従来のリチウムイオン二次電池で使用される非水電解液と同様でよく、特に制限はない。本実施形態では、前述したようなリチウム化合物(電解質塩)を0.8mol/l以上1.5mol/l以下程度の濃度で含有させた非水電解液を使用することが好ましい。
【0031】
なお、非水電解液には、各種の添加剤を添加してもよい。このような添加剤としては、負極作用添加剤、正極作用添加剤、エステル系の添加剤、炭酸エステル系の添加剤、硫酸エステル系の添加剤、リン酸エステル系の添加剤、ホウ酸エステル系の添加剤、酸無水物系の添加剤、及び電解質系の添加剤等が挙げられる。これらのうちいずれか1種を非水電解液に添加しても良いし、複数種類の添加剤を非水電解液に添加してもよい。
【0032】
<2.本実施形態に係る非水電解質二次電池の製造方法>
次に、リチウムイオン二次電池の製造方法について説明する。正極は、以下のように作製される。まず、正極活物質、導電剤、及び正極用バインダーを所望の割合で混合したものを、正極スラリー用溶媒に分散させることで正極スラリーを形成する。次いで、この正極スラリーを正極集電体上に塗布し、乾燥させることで、正極合剤層を形成する。なお、塗布の方法は、特に限定されない。塗布の方法としては、例えば、ナイフコーター(knife coater)法、グラビアコーター(gravure coater)法、リバースロールコーター(reverse roll coater)、スリットダイコーター(slit die coater)等が考えられる。以下の各塗布工程も同様の方法により行われる。次いで、プレス(press)機により正極合剤層を所望の密度となるようにプレスする。これにより、正極が作製される。
【0033】
負極も、正極と同様に作製される。まず、負極合剤層を構成する材料を混合したものを、負極スラリー用溶媒に分散させることで、負極スラリーを作製する。次いで、負極スラリーを負極集電体上に塗布し、乾燥させることで、負極合剤層を形成する。次いで、プレス機により負極合剤層を所望の密度となるようにプレスする。これにより、負極が作製される。
【0034】
次いで、セパレータを正極及び負極で挟むことで、電極構造体を作製する。次いで、電極構造体を所望の形態(例えば、円筒形、角形、ラミネート形、ボタン形等)に加工し、当該形態の容器に挿入する。次いで、当該容器内に非水電解液を注入することで、セパレータ内の各気孔や正極及び負極の空隙に電解液を含浸させる。これにより、リチウムイオン二次電池が作製される。
【0035】
<3.本実施形態に係る非水電解質二次電池の特徴構成>
以下に、本実施形態に係る非水電解質二次電池の特徴構成について説明する。
【0036】
(3-1.PTC機能性組成物層)
前述した正極及び負極は、さらに正温度係数(PTC)機能性組成物を含有するPTC機能性組成物層を備えている。
前記PTC機能性組成物層は、前記正極集電体と前記負極集電体との間に形成されていれば良く、例えば、前記正極集電体と前記正極合剤層との間、及び又は前記負極集電体と前記負極合剤層との間に設けられていることが好ましい。本実施形態では、前記PTC機能性組成物層を前記正極集電体と前記正極合剤層との間及び前記負極集電体と前記負極合剤層との間の両方に設けている。
【0037】
前記PTC機能性組成物は、炭素材料と、結着剤と、熱可塑性樹脂とを含有するものである。
前記炭素材料は、導電性を有する粒子状のものであり、例えばカーボンブラック等の非晶質炭素である。この炭素材料は、比較的炭素材料粒子同士のつながりが弱いものである。
【0038】
炭素材料粒子同士のつながり度合(つながり強度)は、例えば、炭素材料が吸収するジブチルフタレートの総量(総DBP吸収量)及び炭素材料粒子の一次粒径によって定義することができる。ある一次粒子径の炭素材料について、その総DBP吸収量が増大する場合には、一次粒子が凝集して形成される凝集体の構造が複雑化していることを示すので、すなわち一次粒子同士がより多く凝集していると考えられるからである。
【0039】
本実施形態に係るPTC機能性組成物に使用される炭素材料は、その総DBP吸収量の範囲が30cc/100g以上120cc/100g以下であり、かつその一次粒径が20nm以上300nm以下の範囲である。高温時の前記熱可塑性樹脂の体積膨張によって容易に炭素材料粒子同士のつながりを遮断することができ、かつ常温時には炭素材料粒子同士が問題なく導通パスを形成することができる。総DBP吸収量の範囲は、30cc/100g以上110cc/100g以下であることがより好ましい。一次粒径は25nm以上300nm以下の範囲であることがより好ましく、30nm以上300nm以下の範囲であることが特に好ましい。
【0040】
また、炭素材料についてラマン分光分析法を行った場合に測定される1350cm-1付近のピーク面積(A)と1580cm-1付近のピーク面積(A)との比(A/A、R値ともいう。)が2.2以上3.5以下である、又は1580cm-1付近のピーク半値幅(G-FWHM)が95cm-1以上150cm-1以下であるものであれば、炭素材料の結晶性(黒鉛化度)が低く、表面が比較的荒れている又は官能基が比較的多いと考えられる。炭素材料粒子の表面が比較的荒れていると周囲の熱可塑性樹脂との結着力が高くなり、熱可塑性樹脂の体積膨張時に炭素材料粒子が熱可塑性樹脂に追随しやすくなる。その結果、PTC機能を発揮しやすくなるので好ましい。前記R値は、2.3以上3.3以下であることがより好ましい。また、G-FWHMは98cm-1以上115cm-1以下であることがより好ましく、98cm-1以上110cm-1以下であることが特に好ましい。
【0041】
炭素材料の総比表面積は、前述した一次粒子径と同じく炭素材料同士のつながり度合に影響を与える要因の一つである。本実施形態で使用される炭素材料については、その総比表面積が7m/g以上100m/g以下であることが好ましく、7m/g以上70m/g以下であることがより好ましく、7m/g以上60m/g以下であることが特に好ましい。
【0042】
炭素材料の60MPa加圧時の体積密度についても、前述した一次粒子径と同じく炭素材料同士のつながり度合に影響を与える要因の1つであり、本実施形態で使用される炭素材料については、その体積密度が1.0g/cc以上1.6g/cc以下であることが好ましく、1.0g/cc以上1.5g/cc以下であることがより好ましい。なお、炭素材料の60MPa加圧時の体積密度は、実施例において詳述する測定方法によって定義されるものである。
【0043】
炭素材料の60MPa加圧時の体積抵抗率は、前述した総DBP吸収量及び炭素材料粒子の一次粒径と同様に炭素材料同士のつながり度合に影響を与える要因の1つであり、本実施形態で使用される炭素材料については、その60MPa加圧時の体積抵抗率が0.020Ωcm以上0.10Ωcm以下であることが好ましく、0.02Ωcm以上0.075Ωcm以下であることがより好ましい。なお、炭素材料の60MPa加圧時の体積抵抗率は、実施例において詳述する測定方法によって定義されるものである。
【0044】
前記非晶質炭素としては、前述した性質を満たすカーボンブラック等であれば特に限定されない。カーボンブラックの具体例としては、例えば、ファーネスブラック(furnace black)、チャネルブラック(channel black)、サーマルブラック(thermal black)、ケッチェンブラック(ketjen black)、アセチレンブラック(acetylene black)等を挙げることができる。これらの中でも、ファーネス法で製造されたファーネスブラックは、その製法が総DBP吸収量、一次粒子径などを前述した範囲内のものに調整しやすいものであると考えられるので好ましい。
【0045】
前記結着剤は、前記炭素材料と前記熱可塑性樹脂とを結着させることが出来るものであれば特に制限されない。前記結着剤の具体例としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)の金属塩、ポリアクリル酸(PAA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等を挙げることができる。
【0046】
前記熱可塑性樹脂は、PTC機能性組成物に一般的に使用されているものであれば良く特に制限されない。前記熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリウレタン(PUR)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ポリアミド (PA)、ポリアセタール (POM)、ポリカーボネート (PC)、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE、変性PPE、PPO)、ポリエチレンテレフタレート (PET)、グラスファイバー強化ポリエチレンテレフタレート (GF-PET)、ポリブチレンテレフタレート (PBT)、環状ポリオレフィン (COP)、ポリフェニレンスルファイド (PPS)、ポリサルフォン (PSF)、ポリエーテルサルフォン (PES)、非晶ポリアリレート (PAR)、ポリエーテルエーテルケトン (PEEK)、熱可塑性ポリイミド (PI)、ポリアミドイミド (PAI)等を挙げることができる。
【0047】
PTC機能性組成物を構成する各成分の含有割合としては、例えば、PTC機能性組成物から溶媒などの液体成分を除いた固形分全体を100質量とした場合に、前記炭素材料の含有量が10質量部以上70質量部以下であり、結着剤の含有量が1質量部以上50質量部以下であり、熱可塑性樹脂の含有量が5質量部以上65質量部以下であることが好ましい。PTC機能性組成物から溶媒などの液体成分を除いた固形分全体を100質量とした場合に前記炭素材料の含有量が15質量部以上65質量部以下であり、結着剤の含有量が4質量部以上40質量部以下であり、熱可塑性樹脂の含有量が10質量部以上60質量部以下であることがより好ましい。なお、PTC機能性組成物の固形分全体とは、例えば、乾燥させることによって液体部分を全て揮発させた後に残る固体の総質量を指すものであり、すなわちPTC機能性組成物を作製する際に使用した各成分の粉体としての総質量に等しいものである。
【0048】
(3-2.PTC機能性組成物層の作製方法)
前述したPTC機能性組成物を水やNMP等の溶媒に懸濁してスラリー状にしたものを、正極集電体又は負極集電体上に乾燥後の厚みが0.1μm以上5μm以下、より好ましくは0.3μm以上2μm以下の厚みとなるように塗布し、乾燥させることによって形成することができる。本明細書においては、PTC機能性組成物層が表面に形成された集電体を被覆集電体と呼ぶこととする。被覆集電体のPTC機能性組成物層の厚みが0.1μm以上であれば、異常発熱時PTC機能を十分に発揮することができるので好ましい。また、被覆集電体のPTC機能性組成物層の厚みが5μm以下であれば、電極に占める活物質の含有比率を確保して、電池容量の低下を抑えることができるので好ましい。この被覆集電体が備えるPTC機能性組成物層の上に合剤層を形成することによって正極又は負極となる二次電池用電極を作製することができる。
より具体的には、PTC機能性組成物層と正極集電体とを備える正極用被覆集電体のPTC機能性組成物層の上に正極合剤層を形成することによって、前記正極を形成することができる。同様に、PTC機能性組成物層と負極集電体とを備える負極用被覆集電体のPTC機能性組成物層の上に負極合剤層を形成することによって、前記負極を形成することができる。
【0049】
<4.本実施形態による効果>
以上のように構成した非水電解質二次電池によれば、十分なPTC機能とサイクル寿命などの電池特性を両立することができる。
【0050】
<5.本発明に係る他の実施形態>
本発明は、前述した実施形態に限られるものではない。
前述した実施形態では、本発明に係るPTC機能性組成物を用いて、集電体と合剤層との間にPTC機能性組成物層を形成するものについて説明したが、PTC機能性組成物を正極合剤層及び/又は負極合剤層に含有させることによって、正極合剤層及び/又は負極合剤層にPTC機能を付与するようにしても良い。
その他、本発明はこれら実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【実施例0051】
以下、本発明を具体的な実施例に基づいてより詳細に説明する。しかしながら、以下の実施例は、あくまでも本発明の一例であり、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
以下の手順あるいは工程によって非水電解質二次電池用の被覆集電体を作製した。
<PTC機能性組成物の作製>
導電性炭素材料としてのカーボンブラック(DBP吸収量42cc/100g、一次粒子径122nm、比表面積19m2/g)56gと、結着剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム塩 (CMC)2.5%水溶液560g(固形分として14g)を水100gに入れミキサーを用にて3000回転で20分間混合した。その後、この混合液を吉田工業機械株式会社製NanoVatorのタンク内に投入した。タンク内の混合液を圧送ポンプによってスラリーポンプに搬送し、スラリーポンプによりストレートノズル(ノズル径150μm)に80MPaの圧力で圧入した。ストレートノズルを通過し高圧分散処理された混合液は熱交換器を介して、2Lの容器に回収された。回収された混合液に、さらに熱可塑性樹脂として高密度ポリエチレン(HDPE、 High Density Polyethylene)25%水溶液120g(固形分として30g)を添加し、ミキサーにて500回転/分の速度で10分間混合し、PTC機能性組成物を得た。得られたPTC機能性組成物から水分を除いた固形分は12%であった。
【0052】
<PTC機能性組成物層の形成>
集電体となる厚さ10μmのアルミニウム箔上(実施例17は銅箔)に、前述したようにして作成したPTC機能性組成物をグラビアコーターを用いて塗布をした。集電体に塗布されたPTC機能性組成物を130℃で5分間加熱乾燥し、厚み1.5μmのPTC機能性組成物層を備えた被覆集電体を得た。
【0053】
(実施例2~9、11~20、比較例1~4)
各実施例及び各比較例において、表1に示す物性の原料及び割合で変更した以外は、実施例1と同様の手順で被覆集電体を作製した。なお、比較例1については、PTC機能性組成物層を備えない集電体を以下の各工程及び実験に使用することとした。
【0054】
(実施例10)
実施例3及び8に用いたカーボンブラックを15質量部ずつ混合した導電性炭素材料とし、表1に示す他の原料、割合で変更した以外は、実施例1と同様の手順で被覆集電体を作製した。
【0055】
(負極作製)
人造黒鉛、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(CMC)、スチレンブタジエン系水分散体を固形分の質量比97.5:1.0:1.5で水溶媒中に溶解分散させることで、負極合剤スラリーを作製した。次いで、乾燥後の合剤塗布量(面密度)が片面20.5mg/cm2になるように負極合剤スラリーを上述の被覆集電体のPTC機能性組成物層上、又は集電体の片面に塗工乾燥させた後、ロールプレス機で合剤層密度が1.65g/cc となるようにプレスし、負極を作製した。
【0056】
(正極作製)
Li1.0Ni0.88Co0.1Al0.01Mg0.01、アセチレンブラック、ポリフッ化ビニリデンを固形分の質量比97.7:1.0:1.3でN-メチル-2-ピロリドン溶媒中に分散させて混合することで、正極合剤スラリーを作製した。次いで、乾燥後の合剤塗布量(面密度)が片面24.0mg/cm2になるようにスラリーを上述の被覆集電体のPTC機能性組成物層上又は集電体の片面に塗工乾燥させた後、ロールプレス機で合剤層密度が3.65g/ccとなるようにプレスし、正極を作製した。
【0057】
(二次電池セル作製)
上述の片面負極、片面正極にそれぞれニッケル及びアルミリード線を溶接した後、ポリプロピレン製多孔質セパレータを負極1枚と正極1枚で挟む形で電極単層体を作製した。次いで、アルミラミネートフィルム内に上記の電極単層体を、リード線を外部に引き出した状態で収納し、電解液を注液して減圧封止することで初期充電前二次電池セルを作製した。電解液には、エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/フルオロエチレンカーボネートを15/80/5(体積比)で混合した溶媒に1.3MのLiPF6および1%質量%のビニレンカーボネートを溶解させたものを使用した。
【0058】
<導電性炭素材料の物性評価>
実施例及び比較例に用いた導電性炭素材料の評価については、以下の通り行った。
(炭素材料の総DBP吸収量及び総比表面積、一次粒子径)
炭素材料は、吸収量/給油量測定器(小泉測機製作所製 S-500) を用い、JIS K6217-4にてDBP吸収量を測定した。具体的には試料を10g投入し、滴下速度4ml/min、100回転/分にて回転し、トルクの最大値が確認されるまで測定を実施し、測定開始から最大トルクを示す間の範囲で、最大トルクの70%のトルクを示したときの滴下油量から算出された値をDBP吸収量とした。総DBP吸収量は、各炭素材料のDBP吸収量と混合比の加重平均値を総DBP吸収量とした。また、ガス吸着量測定装置(マイクロトラック・ベル社製 BELSORP)を用い、JIS K6217-2にて比表面積を測定した。具体的には試料0.3gをセルへ充填し、200℃にて4時間に加熱して前処理を行った後、液体窒素温度まで冷却して、窒素ガスを飽和吸着させ、その後室温まで加熱して脱着したガス量を計測し、得られた結果から、通常のBET法により算出した。総比表面積は、各炭素材料の比表面積と混合比の加重平均値を総比表面積とした。一次粒子径は電子顕微鏡で測定された粒子径を平均したものである。
【0059】
(ラマン分光分析)
顕微レーザーラマン分光装置として日本分光株式会社NRS-5100を用い、励起波長532.36nmで測定を行った。測定条件は以下の通りである。
露出時間:10秒
積算回数:20回
回折格子:300本/mm(600nm)
測定された全領域のラマンスペクトルのうち、800cm-1~2000cm-1でのスペクトルにおいてカーブフィッティングを実施し、1350cm-1付近のピーク面積(A) と1580cm-1付近のピーク面積(A)の比(A/A)、1580cm-1付近のピークの半値幅(G-FWHM)を得た。
【0060】
(60MPa加圧時の体積密度及び粉体抵抗)
日東精工アナリテック株式会社MCP-PD51を用い、円柱状シリンダーに充填した炭素材料粉末を油圧プレス機にて加圧成形した際の体積密度、及び加圧成形された粉体の体積抵抗率の測定を行った。測定条件は以下の通りである。
荷重:18.85kN
電極間隔:3.0mm
電極半径:0.7mm
試料半径:10.0mm
使用プローブ:4探針プローブ
【0061】
<二次電池の評価>
(抵抗測定)
実施例1~20および比較例1~4で作製した二次電池セルを、25℃の恒温槽内で設計容量の0.1CAで4.3Vまで定電流充電を行い、引き続き4.3Vで0.05CAになるまで定電圧充電を行った。その後0.1CAで3.0Vまで定電流放電を行った。さらに、25℃の恒温槽内で、充電終止電圧4.3V、放電終止電圧3.0Vの条件で0.2CAで定電流充電、0.05CAで定電圧充電、0.2CAで定電流放電を1サイクル行ったセルを初期セルとし、インピーダンスアナライザー(日置電機社製 RM3544)にて25℃、1kHzでの抵抗測定を行い、25℃初期抵抗値を得た。その後、該初期セルを150℃まで昇温速度10℃/分で加熱し、150℃で上述と同様に抵抗測定を実施し、150℃抵抗値を得た。
【0062】
(サイクル特性)
実施例1~20および比較例1~4で作製した二次電池セルを、25℃の恒温槽内で設計容量の0.1CAで4.3Vまで定電流充電を行い、引き続き4.3Vで0.05CAになるまで定電圧充電を行った。その後0.1CAで3.0Vまで定電流放電を行った。さらに、25℃の恒温槽内で、充電終止電圧4.3V、放電終止電圧3.0Vの条件で0.2CAで定電流充電、0.05CAで定電圧充電、0.2CAで定電流放電を1サイクル行い、初期放電容量を測定した。この二次電池を、45℃の温度下、充電終止電圧4.3V、放電終止電圧3.0Vの条件で0.5CAで定電流充電、0.05CAで定電圧充電、0.5CAで定電流放電する寿命試験を100サイクル実施した。そして、100サイクル後、定電流充電0.2CA、定電圧充電0.05CA、放電0.2CAでの放電容量を計測し、初期放電容量で除算することで、100サイクル後の容量維持率を測定した。
【0063】
(評価結果)
以上に説明した実施例及び比較例で使用した原料、物性及び組成を表1に示す。
また、実施例1~20及び比較例1~4の評価結果を表2にまとめた。
【0064】
【表1】
なお、表1中の「CMC」はカルボキシメチルセルロースナトリウム塩を示す。表1中の質量部という表示は、PTC機能性組成物の固形分全体を100質量部とした場合の各成分の含有量を示す。
【0065】
【表2】
【0066】
(実施例及び比較例の結果に関する考察)
表2に示すように、本発明に係るPTC機能性組成物を含有するPTC機能性組成物層を備える非水電解質二次電池とすることによって、電池の内部温度が上昇した場合、電池の内部抵抗が大きく上昇することが確認された。このことから、例えば、内部短絡などにより電池が異常発熱した場合、集電体の抵抗が増大し、電流を遮断することで、電池の発火などを回避することができると考えられる。
【0067】
一方、PTC機能性組成物層を備えていない比較例1や、導電性炭素材料の総DBP吸収量が大きい比較例2~3では、電池の内部温度が上昇しても、目立った電池の内部抵抗の上昇は見られなかった。まず、比較例1では、PTC機能性組成物層を備えていないため、発熱時に抵抗を増大させる効果がない。比較例2-3では、導電性炭素材料の総DBP吸収量が120cc/100gを超えてしまっている。前述したように、炭素材料の総DBP吸収量が大きいことは、すなわち導電性炭素材料同士のつながりが強いことを示す。そのため、これら比較例2~3では、炭素材料同士のつながりが強すぎることによって熱可塑性樹脂の体積膨張による抵抗の増大効果が損なわれてしまっていると考えらえる。
また、比較例2~3においては、導電性炭素材料におけるラマン分光測定のR値(A/A)が小さく、主に表面での結晶性が高く欠陥および官能基が比較的に少ないことを示している。
【0068】
これらの結果から、比較例2~3では、発熱時における樹脂の体積膨張に伴う導電性炭素材料の体積膨張が不十分のため、炭素材料同士の導電性を遮断する効果が少なかったことが考えられる。
導電性炭素材料として黒鉛を用いた比較例4では、炭素材料の総DBP吸収量は小さく、黒鉛同士のつながり具合は小さいものの、初期の抵抗が大きく100サイクル容量維持率が低下することがわかる。これは、ラマン分光測定にてR値が非常に小さく結晶性は高くても、粒子径の大きい黒鉛を用いると黒鉛同士間で導電パスの形成が不十分のためと考えられる。
【0069】
前述した実施例1~20以外にも、例えば、実施例8と同じ材料を使用して炭素材料の含有量を10質量部とし、結着剤の含有量を30質量部、熱可塑性樹脂の含有量を60質量部とした場合、炭素材料の含有量を70質量部とし、結着剤の含有量を15質量部、熱可塑性樹脂の含有量を15質量部とした場合、結着剤の含有量を50質量部とし、炭素材料の含有量を30質量部、熱可塑性樹脂の含有量を20質量部とした場合、実施例3と同じ材料を使用して熱可塑性樹脂の含有量を5質量部とし、炭素材料の含有量を65質量部、結着剤の含有量を30質量部とした場合においても実施例1~20と同等のサイクル維持率を示す二次電池が作製できたものの、150℃におけるセルインピーダンスの上昇が実施例1~20に比べると劣る結果となった。また実施例19に示すように、結着剤の含有量を1質量部まで減らすと、実施例1~18及び20に比べてインピーダンスの温度変化が小さくなり、サイクル維持率についても少し下がってしまうことが分かる。この結果から、炭素材料、結着剤及び熱可塑性樹脂の含有割合は、実施例1~20で実施した範囲内のものとすることが好ましく、実施例1~18及び20に記載されている範囲にすることがより好ましいことが分かる。