(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126019
(43)【公開日】2022-08-30
(54)【発明の名称】エピタキシャルウェーハの欠陥パターン検出システムおよび検出方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/956 20060101AFI20220823BHJP
【FI】
G01N21/956 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021023838
(22)【出願日】2021-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 翔平
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA51
2G051AB01
2G051AB07
2G051EA08
2G051EA11
2G051EC03
2G051ED21
(57)【要約】
【課題】単結晶基板の主表面上に、該単結晶基板と格子定数の異なる単結晶薄膜を気相成長させたエピタキシャルウェーハ上の×型ないし線状に発生するパターンの欠陥のみを自動かつ高精度に検出する検出システムおよび検出方法を提供する。
【解決手段】単結晶基板の主表面上に、該単結晶基板と格子定数の異なる単結晶薄膜を気相成長させたエピタキシャルウェーハ上の欠陥パターンを自動で検出するシステムであって、前記エピタキシャルウェーハ上の欠陥を検出し測定する欠陥検査装置と、前記欠陥が検出された位置をマップ表示する画像データを読み込む手段と、前記画像データに対し空間フィルタを作用させることで、×型ないし線状パターンの欠陥のみ抽出し前記×型ないし線状パターンの有無を判定するソフトで処理を行う手段と、判定結果をリストやデータベースへ出力する手段を備えるものであることを特徴とする欠陥パターン検出システム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶基板の主表面上に、該単結晶基板と格子定数の異なる単結晶薄膜を気相成長させたエピタキシャルウェーハ上の欠陥パターンを自動で検出するシステムであって、
前記エピタキシャルウェーハ上の欠陥を検出し測定する欠陥検査装置と、
前記欠陥が検出された位置をマップ表示する画像データを読み込む手段と、
前記画像データに対し空間フィルタを作用させることで、×型ないし線状パターンの欠陥のみ抽出し前記×型ないし線状パターンの有無を判定するソフトで処理を行う手段と、
判定結果をリストやデータベースへ出力する手段を備えるものであることを特徴とする欠陥パターン検出システム。
【請求項2】
前記欠陥検査装置は、前記エピタキシャルウェーハ全体もしくは特定の範囲のパーティクルおよび欠陥検出位置をマップ表示できる機能、又は欠陥検出位置を座標データとして出力できる機能を備えるものであることを特徴とする請求項1に記載の欠陥パターン検出システム。
【請求項3】
前記欠陥検査装置は、前記マップ表示の結果を画像で出力できる機能を持つものであることを特徴とする請求項2に記載の欠陥パターン検出システム。
【請求項4】
前記欠陥検査装置が前記マップ表示機能を持たない場合において、前記欠陥パターン検出システムは、前記座標データを読み込み、マップ画像に変換する手段をさらに備えるものであることを特徴とする請求項2に記載の欠陥パターン検出システム。
【請求項5】
前記×型ないし線状パターンの有無を判定する前記手段は、マップ画像における前記×型ないし線状パターンの欠陥の直線が有する特定の方向および特定の幅に基づき、前記×型ないし線状パターンを検出するものであることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の欠陥パターン検出システム。
【請求項6】
前記空間フィルタは、離散畳み込み積分によりマップ画像から前記×型ないし線状パターンを抽出する処理を行うものであることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の欠陥パターン検出システム。
【請求項7】
前記×型ないし線状パターンの有無を判定する前記手段は、前記空間フィルタによる処理後の画像において、強度のあるピクセルの存在を確認することにより前記判定を行うものであることを特徴とする請求項6に記載の欠陥パターン検出システム。
【請求項8】
前記離散畳み込み積分後の判定結果を前記リストやデータベースに出力する手段をさらに備えるものであることを特徴とする請求項6に記載の欠陥パターン検出システム。
【請求項9】
単結晶基板の主表面上に、該単結晶基板と格子定数の異なる単結晶薄膜を気相成長させたエピタキシャルウェーハ上の欠陥パターンを自動で検出する方法であって、
前記エピタキシャルウェーハ上の欠陥を検出する欠陥検査装置で欠陥位置を測定するステップと、
前記欠陥が検出された位置をマップ表示する画像データを読み込むステップと、
前記画像データに対し空間フィルタを作用させることで、×型ないし線状パターンの欠陥のみ抽出し前記×型ないし線状パターンの有無を判定するソフトで処理を行うステップと、
判定結果をリストやデータベースへ出力するステップを含むことを特徴とする欠陥パターン検出方法。
【請求項10】
前記欠陥検査装置は、前記エピタキシャルウェーハ全体もしくは特定の範囲のパーティクルおよび欠陥検出位置をマップ表示できる機能、又は欠陥検出位置を座標データとして出力できる機能を備えることを特徴とする請求項9に記載の欠陥パターン検出方法。
【請求項11】
前記欠陥検査装置は、前記マップ表示の結果を画像で出力できる機能を持つことを特徴とする請求項10に記載の欠陥パターン検出方法。
【請求項12】
前記欠陥検査装置が前記マップ表示機能を持たない場合において、前記座標データを読み込み、マップ画像に変換する手段を用いることを特徴とする請求項10に記載の欠陥パターン検出方法。
【請求項13】
前記×型ないし線状パターンの有無を判定する前記ステップにおいて、マップ画像における前記×型ないし線状パターンの欠陥の直線が有する特定の方向および特定の幅に基づき、前記×型ないし線状パターンを検出することを特徴とする請求項9~12のいずれか一項に記載の欠陥パターン検出方法。
【請求項14】
前記空間フィルタは、離散畳み込み積分によりマップ画像から前記×型ないし線状パターンを抽出する処理を行うことを特徴とする請求項9~12のいずれか一項に記載の欠陥パターン検出方法。
【請求項15】
前記×型ないし線状パターンの有無を判定する前記ステップにおいて、前記空間フィルタによる処理後の画像において、強度のあるピクセルの存在を確認することにより前記判定を行うことを特徴とする請求項14に記載の欠陥パターン検出方法。
【請求項16】
前記離散畳み込み積分後の判定結果の出力を、前記リストやデータベースに出力できる手段により行うことを特徴とする請求項14に記載の欠陥パターン検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エピタキシャルウェーハ上の欠陥パターン検出システムおよび検出方法に係り、空間フィルタリング処理の応用によって判定を行う欠陥パターン検出システムおよび検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電源コントロール等の用途として、パワー半導体デバイスが用いられている。このパワー半導体デバイス用の基板としては、チョクラルスキー(CZ)法により育成されたシリコン単結晶インゴットをスライスし、得られたシリコンウェーハ(単結晶基板)の主表面に、結晶欠陥をほぼ完全に含まないシリコンエピタキシャル層(単結晶薄膜)を気相成長させたエピタキシャルシリコンウェーハが主に利用されている。
【0003】
省電力化のため、半導体デバイスのオン抵抗低下へのニーズが高まっている。具体的なオン抵抗低下の方法は、半導体素子基板の薄膜化と基板抵抗の低下である。半導体素子のデバイス特性上、薄膜化には限界があるため、基板の更なる低抵抗化が求められている。高濃度にドーパントをドープした低抵抗率のシリコン単結晶基板にエピタキシャル層を成長したエピタキシャルウェーハが要求される。
【0004】
このエピタキシャルウェーハにおいて基板として使用されるシリコン単結晶基板は、高濃度のドーパントをドープして引き上げたインゴットから作製されるが、SbやAs等のn型ドーパントを用いた場合においては引き上げの際にドープしたドーパントが蒸発してしまうという課題がある。そのため、エピタキシャル層を成長させるシリコン単結晶基板がn型ならば、揮発性が比較的低いP(赤燐)をドーパントとしてドープしたシリコン単結晶基板が用いられる。また、p型ならばB(ボロン)を高濃度にドープし、p型のエピタキシャルシリコンウェーハの基板とすることが多い。そして、これらを高濃度にドープしたシリコン単結晶基板上の主表面上に、エピタキシャル層を気相成長することにより、低抵抗率の基板を用いたエピタキシャルウェーハが製造される。
【0005】
しかし、低抵抗率のシリコン単結晶基板にエピタキシャル層を成長したエピタキシャルウェーハをレーザーを用いた欠陥検査装置で検査すると、ウェーハ面内に1辺が数mm程度の×型ないし線状の特徴的な欠陥パターンが見られることがある。該欠陥パターンが発生したシリコンウェーハのマップの例を
図16および
図17に示す。該欠陥パターンは、結晶方位に依存しており、特定の「方向」、かつ特定の「幅」でマップ画像上に発生する。
【0006】
該欠陥パターンの欠陥を電子顕微鏡で詳細に観察すると、×型パターンの中心には多数の転位や面欠陥が発生していることが分かる。一方、×型の末端付近では
図18に示すように、低抵抗率基板10bとエピタキシャル層10aの界面に転位11が走り、最終的に表面へ抜ける様子を発見することができる。該エピタキシャルウェーハは、シリコンよりも原子半径の小さなPを高濃度にドープした基板抵抗率0.001Ωcm以下の低抵抗率基板10bに、抵抗率0.1Ωcm以上のエピタキシャル層10aを気相成長して作製している。その結果、格子不整合によりエピタキシャルウェーハ内部で応力が発生する。エピタキシャルウェーハに何らかの欠陥があると、欠陥を起点としてミスフィット転位が発生し、格子不整合により応力が緩和される。典型的な欠陥のひとつはウェーハエッジの表面欠陥であり、通常はエッジからミスフィット転位が発生するため、
図19に示すような欠陥マップの不良エピタキシャルウェーハとなる。基板がドーパント濃度の非常に高い低抵抗率基板の場合になると、エピタキシャルウェーハ面内に転位密集や面欠陥が発生するため、これらを起点としたミスフィット転位が発生することで、ウェーハエッジ以外のウェーハ面内に×型や線状の特徴的な欠陥パターンを持つエピタキシャルウェーハができるというメカニズムを想定している。高集積化の進む半導体デバイスにおいて、欠陥が存在すると耐圧低下などのデバイス不良の原因につながるため、厳しく管理する必要がある。
【0007】
しかし、一般的な欠陥検査装置では、前記のような欠陥パターンを検出する機能は備えていない。一般的な欠陥検査装置で管理できる主な項目は欠陥の個数であり、不良品が発生したとしても、前記パターンにより検出欠陥数が増加したため不良となったのか、別の理由で不良となったのか、自動で判定することはできない。不良の理由は人間が1枚1枚のマップ画像を見ていく必要があり、欠陥の発生状況を正確に把握することができなかった。
【0008】
自動画像判定の方法として、近年ではCNN(Convolutional Neural Network;畳み込みニューラルネットワーク)と呼ばれる機械学習手法を用いた方法が注目を集めている(非特許文献1)。CNNは深層学習を用いた画像分類方法であり、大量のラベル付与済みデータにより学習を行い、新たな画像を学習済みの分類器で作用させることで、どのラベルの性質に近いかを高精度に判別することができる。学習の過程で、判定に適切な特徴量を分類器が自ら学習することができるため、特徴量の設定といった分類のアルゴリズムを規定する必要がないという特性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008-134196号公報
【特許文献2】特開2020-35282号公報
【特許文献3】特開2010-118487号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】A. Krizhevsky, I. Sutskever,and G.E. Hinton, ImageNet Classification with Deep Convolutional Neural Networks. In Proc. NIPS, 2012.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、CNNでは学習用に数千から数万件といった大量のラベル付与済みデータが必要であるため、上述の特定欠陥パターンの有無を示すラベル付け作業が必須となる。実際には、該特定欠陥パターンの発生率は数パーセントから数十パーセントであるため、ラベル付けのために確認が必要なデータは学習用データの約10倍となり、実施は困難である。また、通常のCNNでは画像全体に対し判定が行われるため、判定したい欠陥パターンの座標を求めるためにアルゴリズムが複雑化する恐れがある。さらに、前記の欠陥パターンは発生する方向や幅に特徴があることがわかっているため、CNNを採用しなくとも特徴量設計が比較的容易と考えられる。
以上の点から、CNN以外のアルゴリズムによる判定ソフトを開発し、欠陥検査装置の測定が完了した後に自動で該特定欠陥パターンを検出し、結果を出力する自動判定システムの構築が望まれていた。
様々なアルゴリズムやステップを実行する欠陥検出方法等が開示されているが(特許文献1~3)、上述した×型ないし線状パターンを検出するための修正やさらなる改善が必要である。
【0012】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、単結晶基板の主表面上に、該単結晶基板と格子定数の異なる単結晶薄膜を気相成長させたエピタキシャルウェーハ上の×型ないし線状に発生するパターンの欠陥のみを自動かつ高精度に検出する検出システムおよび検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するため、本発明では、単結晶基板の主表面上に、該単結晶基板と格子定数の異なる単結晶薄膜を気相成長させたエピタキシャルウェーハ上の欠陥パターンを自動で検出するシステムであって、
前記エピタキシャルウェーハ上の欠陥を検出し測定する欠陥検査装置と、
前記欠陥が検出された位置をマップ表示する画像データを読み込む手段と、
前記画像データに対し空間フィルタを作用させることで、×型ないし線状パターンの欠陥のみ抽出し前記×型ないし線状パターンの有無を判定するソフトで処理を行う手段と、
判定結果をリストやデータベースへ出力する手段を備えるものであることを特徴とする欠陥パターン検出システムを提供する。
【0014】
このような欠陥パターン検出システムであれば、単結晶基板の主表面上に、該単結晶基板と格子定数の異なる単結晶薄膜を気相成長させたエピタキシャルウェーハ上の×型ないし線状に発生するパターンの欠陥のみを自動かつ高精度に検出することができる。
【0015】
前記欠陥検査装置は、前記エピタキシャルウェーハ全体もしくは特定の範囲のパーティクルおよび欠陥検出位置をマップ表示できる機能、又は欠陥検出位置を座標データとして出力できる機能を備えてもよい。
さらに、前記欠陥検査装置は、前記マップ表示の結果を画像で出力できる機能を持つものでもよい。
【0016】
このように、本発明に係る欠陥パターン検出システムの欠陥検査装置として、エピタキシャルウェーハ全体もしくは特定の範囲のパーティクルおよび欠陥検出位置をマップ表示できる機能を持ち、マップ表示結果を画像で出力できる機能を持つ欠陥検査装置を採用することができる。
【0017】
もしくは、前記欠陥検査装置が前記マップ表示機能を持たない場合において、前記欠陥パターン検出システムは、前記座標データを読み込み、マップ画像に変換する手段をさらに備えてもよい。
このように、前記欠陥検査装置が欠陥検出位置を座標データとして出力できる機能を備える場合に、本発明に係る欠陥パターン検出システムは、座標データを読み込み、マップ画像に変換する手段を備えることにより、欠陥が検出された位置をマップ表示することもできる。
【0018】
前記×型ないし線状パターンの有無を判定する前記手段は、マップ画像における前記×型ないし線状パターンの欠陥の直線が有する特定の方向および特定の幅に基づき、前記×型ないし線状パターンを検出することが好ましい。
エピタキシャルウェーハに発生する×型ないし線状パターンの欠陥は結晶方位に沿って発生するため、マップ画像におけるこの欠陥の直線は特定の「方向」および特定の「幅」を有し、この特徴から×型ないし線状の欠陥パターンをより高精度に自動検出することができる。
【0019】
また、前記空間フィルタは、離散畳み込み積分によりマップ画像から前記×型ないし線状パターンを抽出する処理を行ってもよい。
このような離散畳み込み積分を行う計算方法によって、×型ないし線状の欠陥パターンをより高精度に自動検出することができる。
【0020】
前記×型ないし線状パターンの有無を判定する前記手段は、前記空間フィルタによる処理後の画像において、強度のあるピクセルの存在を確認することにより前記判定を行ってもよい。
このようにして、×型ないし線状の欠陥パターンのみを抽出する精度を向上させることができる。
【0021】
本発明に係る欠陥パターン検出システムは、前記離散畳み込み積分後の判定結果を前記リストやデータベースに出力する手段をさらに備えてもよい。
これにより、欠陥の発生状況を正確に把握することができる。
【0022】
また、前記課題を解決するため、本発明では、単結晶基板の主表面上に、該単結晶基板と格子定数の異なる単結晶薄膜を気相成長させたエピタキシャルウェーハ上の欠陥パターンを自動で検出する方法であって、
前記エピタキシャルウェーハ上の欠陥を検出する欠陥検査装置で欠陥位置を測定するステップと、
前記欠陥が検出された位置をマップ表示する画像データを読み込むステップと、
前記画像データに対し空間フィルタを作用させることで、×型ないし線状パターンの欠陥のみ抽出し前記×型ないし線状パターンの有無を判定するソフトで処理を行うステップと、
判定結果をリストやデータベースへ出力するステップを含むことを特徴とする欠陥パターン検出方法を提供する。
【0023】
このような欠陥パターン検出方法であれば、単結晶基板の主表面上に、該単結晶基板と格子定数の異なる単結晶薄膜を気相成長させたエピタキシャルウェーハ上の×型ないし線状に発生するパターンの欠陥のみを自動かつ高精度に検出することができる。
【0024】
前記欠陥検査装置は、前記エピタキシャルウェーハ全体もしくは特定の範囲のパーティクルおよび欠陥検出位置をマップ表示できる機能、又は欠陥検出位置を座標データとして出力できる機能を備えてもよい。
さらに、前記欠陥検査装置は、前記マップ表示の結果を画像で出力できる機能を持つものでもよい。
【0025】
このように、本発明に係る欠陥パターン検出方法の欠陥検査装置として、エピタキシャルウェーハ全体もしくは特定の範囲のパーティクルおよび欠陥検出位置をマップ表示できる機能を持ち、マップ表示結果を画像で出力できる機能を持つ欠陥検査装置を採用することができる。
【0026】
もしくは、前記欠陥検査装置が前記マップ表示機能を持たない場合において、前記座標データを読み込み、マップ画像に変換する手段を用いてもよい。
このように、前記欠陥検査装置が欠陥検出位置を座標データとして出力できる機能を備える場合に、本発明に係る欠陥パターン検出方法において、座標データを読み込み、マップ画像に変換する手段を用いることにより、欠陥が検出された位置をマップ表示することもできる。
【0027】
前記×型ないし線状パターンの有無を判定する前記ステップにおいて、マップ画像における前記×型ないし線状パターンの欠陥の直線が有する特定の方向および特定の幅に基づき、前記×型ないし線状パターンを検出することが好ましい。
エピタキシャルウェーハに発生する×型ないし線状パターンの欠陥は結晶方位に沿って発生するため、マップ画像におけるこの欠陥の直線は特定の「方向」および特定の「幅」を有し、この特徴から×型ないし線状の欠陥パターンをより高精度に自動検出することができる。
【0028】
また、前記空間フィルタは、離散畳み込み積分によりマップ画像から前記×型ないし線状パターンを抽出する処理を行ってもよい。
このような離散畳み込み積分を行う計算方法によって、×型ないし線状の欠陥パターンをより高精度に自動検出することができる。
【0029】
前記×型ないし線状パターンの有無を判定する前記ステップにおいて、前記空間フィルタによる処理後の画像において、強度のあるピクセルの存在を確認することにより前記判定を行ってもよい。
このようにして、×型ないし線状の欠陥パターンのみを抽出する精度を向上させることができる。
【0030】
本発明に係る欠陥パターン検出方法において、前記離散畳み込み積分後の判定結果の出力を、前記リストやデータベースに出力できる手段により行うこともできる。
これにより、欠陥の発生状況を正確に把握することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によると、自動かつ高精度で、エピタキシャルウェーハに発生する×型ないし線状の欠陥パターンのみを検出し、結果を出力する欠陥パターン検出システム(自動判定システム)および欠陥パターン検出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の一実施形態に係る欠陥パターン検出システムの概要を示す図である。
【
図2】本発明の別の実施形態に係る欠陥パターン検出システムの概要を示す図である。
【
図3】本発明の欠陥パターン判定ソフトの概要を示すフロー図の一例である。
【
図4】本発明の欠陥パターン判定ソフトの前処理ステップを示すフロー図の一例である。
【
図5】本発明の欠陥パターン判定ソフトの空間フィルタリングステップを示すフロー図の一例である。
【
図6】×型欠陥パターンを45度回転した概念図である;(a)回転前、(b)回転後。
【
図7】3×3のカーネルを使用した離散畳み込み積分の計算方法を示した説明図である。
【
図8】ソーベルフィルタを使用した離散畳み込み積分の計算方法の一例を示した説明図である。
【
図10】特定の幅の線を抽出するカーネルの一例を示した概念図である;(a)縦軸方向用カーネル、(b)横軸方向用カーネル。
【
図11】
図10(a)のカーネルを使用し、幅3ピクセルの線のある原画像に対し離散畳み込み積分の計算過程を示した説明図である。
【
図12】
図10(a)のカーネルを使用し、幅4ピクセルの線のある原画像に対し離散畳み込み積分の計算過程を示した説明図である。
【
図13】欠陥密集のあるエピタキシャルウェーハの一例を示すウェーハマップ画像である。
【
図14】比較例においてソーベルフィルタを用いた欠陥パターン判定ソフトによる画像の変化を示すための、注目する欠陥の拡大図である;(a)×型、(b)欠陥密集。
【
図15】実施例において特定の幅の線を抽出するカーネルを用いた欠陥パターン判定ソフトによる画像の変化を示すための、注目する欠陥の拡大図である;(a)×型、(b)欠陥密集。
【
図16】低抵抗率基板を用いたエピタキシャルウェーハ上で×型に発生する欠陥パターンの一例を示すウェーハマップ画像である。
【
図17】低抵抗率基板を用いたエピタキシャルウェーハ上で線状に発生する欠陥パターンの一例を示すウェーハマップ画像である。
【
図18】×型パターンの末端付近におけるエピタキシャルウェーハ断面の電子顕微鏡写真である。
【
図19】低抵抗率基板を用いたエピタキシャルウェーハ上の典型的なミスフィット転位の一例を示すウェーハマップ画像である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
上述のように、単結晶基板の主表面上に、該単結晶基板と格子定数の異なる単結晶薄膜を気相成長させたエピタキシャルウェーハ上の×型ないし線状に発生するパターンの欠陥のみを自動かつ高精度に検出する検出システムおよび検出方法の開発が求められていた。
【0034】
本発明者は、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、空間フィルタを作用させて×型ないし線状パターンの欠陥のみ抽出し×型ないし線状パターンの有無を判定可能なソフトで処理を行うことで上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0035】
即ち、本発明は、単結晶基板の主表面上に、該単結晶基板と格子定数の異なる単結晶薄膜を気相成長させたエピタキシャルウェーハ上の欠陥パターンを自動で検出するシステムであって、
前記エピタキシャルウェーハ上の欠陥を検出し測定する欠陥検査装置と、
前記欠陥が検出された位置をマップ表示する画像データを読み込む手段と、
前記画像データに対し空間フィルタを作用させることで、×型ないし線状パターンの欠陥のみ抽出し前記×型ないし線状パターンの有無を判定するソフトで処理を行う手段と、
判定結果をリストやデータベースへ出力する手段を備えるものであることを特徴とする欠陥パターン検出システムを提供する。
【0036】
さらに、本発明は、単結晶基板の主表面上に、該単結晶基板と格子定数の異なる単結晶薄膜を気相成長させたエピタキシャルウェーハ上の欠陥パターンを自動で検出する方法であって、
前記エピタキシャルウェーハ上の欠陥を検出する欠陥検査装置で欠陥位置を測定するステップと、
前記欠陥が検出された位置をマップ表示する画像データを読み込むステップと、
前記画像データに対し空間フィルタを作用させることで、×型ないし線状パターンの欠陥のみ抽出し前記×型ないし線状パターンの有無を判定するソフトで処理を行うステップと、
判定結果をリストやデータベースへ出力するステップを含むことを特徴とする欠陥パターン検出方法を提供する。
【0037】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
[欠陥パターン検出システム]
本発明の欠陥パターン検出システムの配置を、
図1および
図2の図を使って説明しながら、本発明の欠陥パターン検出システムの各構成要素を説明する。
【0039】
(欠陥検査装置)
まず、
図1および
図2に示す欠陥検査装置は、エピタキシャルウェーハ上の欠陥を検出し、欠陥位置を測定するものであり、このような機能を有するものであれば特に限定されない。また、検出対象たるエピタキシャルウェーハも、単結晶基板の主表面上に、格子定数の異なる単結晶薄膜を気相成長させたエピタキシャルウェーハであれば、特に限定されるものではない。低抵抗率化を図るため、単結晶基板にはリン又はボロン等のドーパントが高濃度にドープされていてもよい。
【0040】
本発明に係る欠陥検査装置は、エピタキシャルウェーハ全体もしくは特定の範囲のパーティクルおよび欠陥検出位置をマップ表示できる機能、又は欠陥検出位置を座標データとして出力できる機能を備えることができる。
前者の場合、欠陥検査装置は、前記マップ表示の結果を画像で出力できる機能を持つものでもよい。
図1は、このような欠陥検査装置が欠陥を検出した座標のマップ画像データを出力できる機能を備える場合のフロー図を示している。
もしくは、後者の場合、すなわち、欠陥検査装置が座標データのみを出力できる場合は、座標データを読み込み、
図16のようなウェーハ1枚単位のマップ画像ファイル(もしくは、ウェーハ1枚単位のマップ画像に相当する集計された配列データ)に変換する手段(ソフト)を欠陥パターン検出システム内に備えてもよい。この場合のフロー図を
図2に示している。
【0041】
(読み込み手段)
本発明に係る欠陥パターン検出システムの読み込み手段は、欠陥検査装置によって欠陥が検出された位置をマップ表示する画像データを読み込むものである。このような機能を有するものであれば、特に限定されるものではない。
【0042】
(判定手段)
本発明に係る欠陥パターン検出システムの判定手段は、読み込み手段によって読み込まれた画像データに対し空間フィルタを作用させることで、×型ないし線状パターンの欠陥のみ抽出し前記×型ないし線状パターンの有無を判定するソフト(以下、欠陥パターン判定ソフトともいう)で処理を行うものである。
【0043】
図3に、前記画像データに空間フィルタを作用させる機能を備える、好ましい欠陥パターン判定ソフトの詳細を示すフロー図の一例を示す。
ここでは、まず、画像ファイル(画像データ)を読み込んだ後、前処理ステップでこの画像を空間フィルタリングに適した画像に加工する。次に、空間フィルタを作用させることで対象の欠陥パターンを抽出し、その後に抽出されたパターンの存在を確認することで判定を行う。また、対象の欠陥パターンがある場合、その座標とサイズを計測する。最後に、結果の出力に向けてウェーハIDと判定結果や座標、サイズの対応づけと集計を行う。
【0044】
図4を用いて前処理ステップの一例を説明する。この例では、まず、前記欠陥検査装置で出力した画像データが判定に必要なマップ画像以外の情報を含む場合は、マップ画像が記載されている位置のみ残し、他の情報は画像から削除する。次に、グレースケール処理後、マップ画像に平滑化と二値化の処理を行う。平滑化はスムージングとも呼ばれ、画像の特異点やノイズを軽減する効果がある。代表的な方法にガウシアンフィルタリングがある。二値化では、事前に閾値を設定しておき、閾値以上(もしくは以下)の場合は黒、それ以外は白とすることで、色の薄い点を強調または消去、さらにエッジを明瞭にすることができる。
これらの前処理の条件を適切に設定することで、この後の空間フィルタリングで対象とするパターンの抽出精度が向上するため、実施しておくのが好ましい。
【0045】
図5を用いて空間フィルタリングステップの一例を説明する。このステップでは対象の欠陥パターンの抽出を行う。
図16や
図17で示した×型ないし線状のパターンの特徴として、結晶方位性のあるミスフィット転位であるため特定の方向に発生することが分かっている。そこで、特定の方向の線を抽出する画像処理により、目的パターンが存在するか否かの判定ができるか検討した結果、以下のような実施態様に想到した。
【0046】
具体的には、空間フィルタリング(
図5)の第1のステップで画像を任意の角度に回転し、線の方向を画像の横軸および縦軸方向に合わせる。
図6に×型の欠陥パターンを45度回転した例を示す。例として用いた基板では、
図6(a)のように×型の線は軸の45度方向に沿って発生するため、回転処理により
図6(b)のように画像の横軸および縦軸方向に合わせることができる。
【0047】
空間フィルタリング(
図5)の第2のステップとして、横軸および縦軸方向の線の抽出を行う。ここで、
図7を使い計算方法の一例を説明する。まず、処理前の画像(原画像)における各ピクセルの強度をfとする。注目するi、jのピクセルとi、jに隣接するピクセルに対して、カーネルと呼ばれる配列k
i、jとの積和演算を行い、新たな画像の位置i、jの強度g
i、jを算出する。式では以下のように表現できる。
【数1】
カーネルの設計によって抽出するパターンが決まるため、画像の横軸および縦軸方向の線を抽出するカーネルの選択が重要となる。一連の計算を離散畳み込み積分と呼ぶ。
以上のように、空間フィルタは、離散畳み込み積分によりマップ画像から×型ないし線状パターンを抽出する処理を行ってもよい。離散畳み込み積分を行う計算方法によって、×型ないし線状の欠陥パターンをより高精度に自動検出することができる。
【0048】
ここで、×型画像の一部に離散畳み込み積分を処理したことを想定した概念図を
図8に示す。ここで、原画像は二値化済みであることを想定し(
図4参照)、強度が0か1の値であるとしている。また、カーネルの一例としてエッジ抽出に一般的に用いられるソーベルフィルタ(3×3)を適用している。点線で囲った位置の積和計演算を考えると、計算に用いる原画像の範囲は該位置を含めた9ピクセルとなり、それぞれの位置に対応するカーネルの値との積和を計算する。左上の位置から、原画像は0、カーネルは-1、その積は0である。右隣の位置の積も0、その右隣も0となり、このようにして合計9ピクセルの積の和は3となる。この計算を繰り返し、適宜強度の最大値を調整することで、
図8の処理後画像のような縦方向のエッジ線を抽出した画像を得ることができる。さらに、
図8のカーネルを90度回転した横軸方向抽出用のカーネルの結果と合わせることで、2軸方向のエッジの線抽出が可能となる。
【0049】
ただし、従来のソーベルフィルタの問題点として、対象としている×型ないし線状の欠陥パターン以外に、面積の大きな欠陥密集でもエッジが抽出されることがあげられる。例えば
図9のような密集に対して離散畳み込み積分によって処理すると、四辺のエッジ線が抽出されてしまうことが考えられる。空間フィルタリングの目的は×型ないし線状の欠陥パターンのみを抽出することであり、それ以外のパターンでは強度がなくなる必要がある。つまり、ソーベルフィルタでは判定能力が不十分になる恐れがある。
【0050】
以上の点を考慮しカーネルの設計を鋭意検討した結果、
図10(a)(b)のカーネルを使用することで、特定の幅の縦方向又は横方向の線のみを抽出することを見出した。該カーネルでは、例えば
図10(a)の矢印で示した幅の線を抽出することができ、この場合は幅3ピクセルである。ここで、カーネルの大きさおよび抽出する幅は任意に設定できるものとする。
図11を用いて計算過程を説明する。ここで、原画像の下は最下行ピクセルのパターンが続いているものとする。
図10(a)のカーネルを用いて離散畳み込み積分を行うと、処理後画像の各ピクセル値は-5から10の値を取る。理解しやすくするため、次のステップの二値化を想定し強度6以上のピクセルに色を付けると、原画像の3ピクセルの幅の線の中心が強度を持つことを確認できる。対して、
図12のような原画像で4ピクセル以上の幅を持つ線を想定した場合、すべての位置で強度6を超えるピクセルが存在せず、線が消失する。このように、
図10(a)のカーネルを用いることで、特定の幅の縦軸方向の線を抽出することが可能である。横軸方向についても同様の考え方で線抽出が可能であり(例えば、
図10(b)のカーネルを用いる)、両者の結果を合算させることで2軸方向の特定の幅の線のみを抽出可能である。
以上のように、×型ないし線状パターンの有無を判定する判定手段は、マップ画像における×型ないし線状パターンの欠陥の直線が有する特定の方向および特定の幅に基づき、×型ないし線状パターンを検出することが好ましい。これにより、×型ないし線状の欠陥パターンをより高精度に自動検出できる。
【0051】
図5の空間フィルタリングの第3のステップとして、空間フィルタリングによる処理後画像に対し、あらかじめ設定した閾値により二値化を行う。
【0052】
以上の操作によって、対象とする×型ないし線状の欠陥パターンのみが抽出された画像を得ることができるため、空間フィルタリングのステップを完了する。
【0053】
図3の好ましいフロー図で示した対象パターンの判定のステップでは、前ステップの処理が完了した画像において、強度をもつピクセルが存在するか否かを判定することができる。
このように、本発明において、×型ないし線状パターンの有無を判定する判定手段は、空間フィルタによる処理後の画像において、強度のあるピクセルの存在を確認することにより判定を行うことができる。これにより、×型ないし線状の欠陥パターンのみを抽出する精度を向上させることができる。
強度をもつピクセルが存在する場合、その座標とサイズを取得する。このとき、座標は前処理ステップで回転したことを考慮する必要がある。
最後に判定結果、パターンの座標、サイズを集計し、出力できる形式にまとめる。
以上で、欠陥パターン判定ソフトの動作が完了する。
【0054】
(出力手段)
本発明に係る欠陥パターン検出システムの出力手段は、判定結果をリストやデータベースへ出力するものである。
また、本発明に係る欠陥パターン検出システムは、離散畳み込み積分後の判定結果をリストやデータベースに出力する手段をさらに備えてもよい。
これにより、欠陥の発生状況を正確に把握することができる。
【0055】
[欠陥パターン検出方法]
次に、上述した本発明の欠陥パターン検出システムを用いる、本発明の欠陥パターン検出方法を図面を参照して説明するが、本発明の欠陥パターン検出方法は以下のものに限定されるものではない。なお、特に断りない限り、同一の装置、手段、機能等について同一の名称を用い、詳細な説明は省略する。
【0056】
(測定ステップ)
本発明の欠陥パターン検出方法では、まず、エピタキシャルウェーハ上の欠陥を検出する欠陥検査装置で欠陥位置を測定する。このエピタキシャルウェーハや欠陥検査装置として、前述したものと同じものを用いることができる。
即ち、欠陥検査装置は、エピタキシャルウェーハ全体もしくは特定の範囲のパーティクルおよび欠陥検出位置をマップ表示できる機能、又は欠陥検出位置を座標データとして出力できる機能を備えてもよい。前者の場合(
図1参照)、欠陥検査装置は、マップ表示の結果を画像で出力できる機能を持つものでもよい。もしくは、後者の場合、本発明に係る欠陥パターン検出方法において、座標データを読み込み、マップ画像に変換する手段(ソフト)を用いることにより、欠陥が検出された位置をマップ表示することもできる(
図2参照)。
【0057】
(読み込みステップ)
本発明に係る欠陥パターン検出方法における読み込みステップでは、欠陥検査装置によって欠陥が検出された位置をマップ表示する画像データを読み込む。
【0058】
(判定ステップ)
次に、読み込みステップにおいて読み込まれた画像データに対し空間フィルタを作用させることで、×型ないし線状パターンの欠陥のみ抽出し前記×型ないし線状パターンの有無を判定するソフト(欠陥パターン判定ソフト)で処理を行う。
この欠陥パターン判定ソフトによる処理の好適な例として、
図3に示したものを挙げることができる。
すなわち、本発明に係る欠陥パターン検出方法において、
図4に示したような前処理ステップや、
図5に示したような空間フィルタリングステップを上述したように行うことが好ましい。
【0059】
特に、空間フィルタが、離散畳み込み積分によりマップ画像から×型ないし線状パターンを抽出する処理を行うことが好ましく、このような離散畳み込み積分を行う計算方法によって、×型ないし線状の欠陥パターンをより高精度に自動検出することができる。
また、×型ないし線状パターンの有無を判定する判定ステップにおいて、マップ画像における×型ないし線状パターンの欠陥の直線が有する特定の方向および特定の幅に基づき、×型ないし線状パターンを検出することが好ましい。これにより、×型ないし線状の欠陥パターンをより高精度に自動検出できる。
さらに、×型ないし線状パターンの有無を判定する判定ステップにおいて、空間フィルタによる処理後の画像において、強度のあるピクセルの存在を確認することにより判定を行うことが好ましい。これにより、×型ないし線状の欠陥パターンのみを抽出する精度を向上させることができる。
【0060】
(出力ステップ)
欠陥パターン判定ソフトの動作が完了した後、本発明に係る欠陥パターン検出方法における出力ステップでは、判定結果をリストやデータベースへ出力する。
本発明に係る欠陥パターン検出方法において、離散畳み込み積分後の判定結果の出力を、リストやデータベースに出力できる手段により行うこともできる。
これにより、欠陥の発生状況を正確に把握することができる。
【実施例0061】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明に係る実施例および比較例では、欠陥検査装置(KLA-Tencor社製SP1)の結果として
図16および
図13のマップ画像が得られるエピタキシャルウェーハを用いた。
図16は本発明の課題である×型の欠陥パターンが発生しているエピタキシャルウェーハのウェーハマップ図である。
図13は欠陥の密集が発生しているが、本発明の欠陥パターン判定ソフトの結果では特定のパターンは存在しないと判定されると期待するエピタキシャルウェーハのウェーハマップである。
【0062】
(比較例)
図16および
図13のエピタキシャルウェーハに対し、比較例ではエッジ抽出に一般的に用いられる
図12に示すソーベルフィルタ(3×3)を用いて欠陥パターン判定を実施した。欠陥検査装置から出力された欠陥ウェーハマップに対し、前処理を実施し、空間フィルタリングを行った。空間フィルタリングステップでは、対象画像を45度回転した。その後、離散畳み込み積分および二値化による縦軸方向および横軸方向の線抽出を行った。ソーベルフィルタのサイズは、画像の画素数に合わせて適宜調整した。処理前後の画像を
図14(a)(b)に示す。(a)で示した×型の欠陥パターンは処理後の画像でも確認でき、パターンの抽出ができている。しかし、(b)で示した欠陥密集についても、画像が抽出されてしまい、×型の欠陥パターンとの分離ができなかった。
【0063】
(実施例)
実施例では、
図16および
図13のエピタキシャルウェーハに
図10(a)(b)のカーネルを用いて欠陥パターン判定を実施した。比較例と同様の条件で離散畳み込み積分の前ステップまで処理を進めたが、
図10(a)(b)のカーネルを用いて離散畳み込み積分および二値化による特定の幅を持つ縦軸方向および横軸方向の線抽出を行った。ここで、該カーネルのサイズおよび抽出する線幅は、画像の画素数に合わせて適宜調整した。線幅を調整する場合、すべて0となっている内側の行(列)の数を増減させた。
【0064】
処理前後の画像を
図15(a)(b)に示す。(a)で示した×型の欠陥パターンは処理後の画像でも確認でき、パターン抽出ができている。一方、(b)で示した欠陥密集では本発明に係るカーネルで調整した抽出される線幅よりも幅の大きなパターンとなるため、画像は抽出されなかった。結果、×型の欠陥パターンと欠陥密集との分離に成功した。
【0065】
これらの結果から、本発明に係る欠陥パターン検出システムおよび欠陥パターン検出方法であれば、単結晶基板の主表面上に、該単結晶基板と格子定数の異なる単結晶薄膜を気相成長させたエピタキシャルウェーハ上の×型ないし線状に発生するパターンの欠陥のみを自動かつ高精度に検出できることが明らかとなった。
【0066】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明はその具体的な記載に限定されることなく、例示した構成等を技術的に矛盾のない範囲で適宜組み合わせて実施することも可能であるし、またある要素、処理を周知の形態に置き換えて実施することもできる。
また、上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。