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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126089
(43)【公開日】2022-08-30
(54)【発明の名称】ウエーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20220823BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20220823BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
H01L21/78 M
H01L21/78 P
H01L21/78 Q
H01L21/304 631
B24B27/06 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021023949
(22)【出願日】2021-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】大前 巻子
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
5F063
【Fターム(参考)】
3C158AA03
3C158AB04
3C158AC05
3C158CB02
3C158DA17
5F057AA21
5F057BA11
5F057CA31
5F057DA17
5F057EC16
5F063AA16
5F063CA01
5F063CA04
5F063CC21
5F063DD08
5F063DF12
5F063DF21
5F063DG24
5F063DG27
5F063DG32
(57)【要約】
【課題】デバイスチップの表面に切削屑が付着せず、また粘着層の一部が残存することがないウエーハの加工方法を提供する。
【解決手段】ウエーハ10の表面10aに熱圧着シートT1を配設する熱圧着シート配設工程と、熱圧着シートT1を加熱してウエーハ10の表面10aに圧着する熱圧着工程と、ウエーハ10の裏面10bをダイシングテープT2で支持するダイシングテープ支持工程と、切削ブレード45を回転可能に備えた切削手段42によって、分割予定ライン14に沿って熱圧着シートT1を切削して除去する熱圧着シート除去工程と、切削ブレード48を回転可能に備えた切削手段42によって分割予定ライン14に沿ってウエーハ10を個々のデバイスチップ12’に分割する分割工程と、を含み構成される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハを個々のデバイスチップに分割するウエーハの加工方法であって、
ウエーハの表面に熱圧着シートを配設する熱圧着シート配設工程と、
熱圧着シートを加熱してウエーハの表面に圧着する熱圧着工程と、
ウエーハの裏面をダイシングテープで支持するダイシングテープ支持工程と、
切削ブレードを回転可能に備えた切削手段によって、分割予定ラインに沿って熱圧着シートを切削して除去する熱圧着シート除去工程と、
切削ブレードを回転可能に備えた切削手段によって分割予定ラインに沿ってウエーハを個々のデバイスチップに分割する分割工程と、
を含み構成されるウエーハの加工方法。
【請求項2】
該熱圧着シート除去工程において分割予定ラインに沿って熱圧着シートを切削して除去する場合に、切削ブレードがウエーハに至らない範囲で、該熱圧着シートを切削して除去する請求項1に記載のウエーハの加工方法。
【請求項3】
該熱圧着シート除去工程において使用する切削ブレードの厚みは、該分割工程において使用する切削ブレードの厚みよりも厚い請求項1又は2に記載されたウエーハの加工方法。
【請求項4】
該熱圧着シート除去工程において使用する切削ブレードを構成する砥粒は、該分割工程において使用する切削ブレードを構成する砥粒よりも粗い請求項1から3のいずれかに記載のウエーハの加工方法。
【請求項5】
該熱圧着シートは、ポリオレフィン系シート、又はポリエステル系シートである請求項1から4のいずれかに記載のウエーハの加工方法。
【請求項6】
該ポリオレフィン系シートは、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシート、ポリスチレンシートのいずれかであり、該ポリエステル系シートは、ポリエチレンテレフタレートシート、ポリエチレンナフタレートシートのいずれかである請求項5に記載のウエーハの加工方法。
【請求項7】
熱圧着シートを加熱してウエーハの表面に圧着する際の加熱温度は、該熱圧着シートとしてポリエチレンシートが選択された場合は120℃~140℃であり、ポリプロピレンシートが選択された場合は160℃~180℃であり、ポリスチレンシートが選択された場合は220℃~240℃であり、ポリエチレンテレフタレートシートが選択された場合は250℃~270℃であり、ポリエチレンナフタレートが選択された場合は160℃~180℃である請求項6に記載のウエーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハを個々のデバイスチップに分割するウエーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画された表面に形成されたウエーハは、切削ブレードを回転可能に備えたダイシング装置によって個々のデバイスチップに分割され、携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
また、ガリウムヒ素(GaAs)の半導体基板の表面にレンズを含む複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されて形成されたウエーハを、ダイシング装置によって個々のデバイスチップに分割すると、該デバイスを構成するレンズの周りに切削屑が付着して、デバイスの品質を低下させるという問題がある。
【0004】
そこで、ウエーハの表面に粘着テープを貼着して切削し、個々のデバイスチップに分割することが考えられる(例えば、特許文献1を参照)。しかし、ウエーハの表面に該粘着テープが貼着されていることにより、ウエーハの表面への切削屑の付着は抑制できるものの、デバイスチップから粘着テープを剥離した際に、粘着層の一部がデバイスに付着して残り、デバイスチップの品質を低下させるという問題が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-134390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、切削ブレードを使用してウエーハを個々のデバイスチップに分割する場合であっても、デバイスチップの表面に切削屑が付着せず、また粘着層の一部が残存することがないウエーハの加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハを個々のデバイスチップに分割するウエーハの加工方法であって、ウエーハの表面に熱圧着シートを配設する熱圧着シート配設工程と、熱圧着シートを加熱してウエーハの表面に圧着する熱圧着工程と、ウエーハの裏面をダイシングテープで支持するダイシングテープ支持工程と、切削ブレードを回転可能に備えた切削手段によって、分割予定ラインに沿って熱圧着シートを切削して除去する熱圧着シート除去工程と、切削ブレードを回転可能に備えた切削手段によって分割予定ラインに沿ってウエーハを個々のデバイスチップに分割する分割工程と、を含み構成されるウエーハの加工方法が提供される。
【0008】
該熱圧着シート除去工程において分割予定ラインに沿って熱圧着シートを切削して除去する場合に、切削ブレードがウエーハに至らない範囲で、該熱圧着シートを切削して除去することが好ましい。また、該熱圧着シート除去工程において使用する切削ブレードの厚みは、該分割工程において使用する切削ブレードの厚みよりも厚いことが好ましい。さらに、該熱圧着シート除去工程において使用する切削ブレードを構成する砥粒は、該分割工程において使用する切削ブレードを構成する砥粒よりも粗いことが好ましい。
【0009】
該熱圧着シートは、ポリオレフィン系シート、又はポリエステル系シートであって、該ポリオレフィン系シートは、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシート、ポリスチレンシートのいずれかであり、該ポリエステル系シートは、ポリエチレンテレフタレートシート、ポリエチレンナフタレートシートのいずれかであることが好ましく、熱圧着シートを加熱してウエーハの表面に圧着する際の加熱温度は、該熱圧着シートとしてポリエチレンシートが選択された場合は120℃~140℃であり、ポリプロピレンシートが選択された場合は160℃~180℃であり、ポリスチレンシートが選択された場合は220℃~240℃であり、ポリエチレンテレフタレートシートが選択された場合は250℃~270℃であり、ポリエチレンナフタレートが選択された場合は160℃~180℃であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、切削加工を実施してウエーハを個々のデバイスチップに分割したとしても、デバイスチップの表面に切削屑が付着するという問題が解消されると共に、従来の技術において発生していた、ウエーハの表面に粘着層の一部が付着して残存し、デバイスチップの品質が低下するという問題が解決される。また、熱圧着シートとウエーハとを同時に切削すると、切削ブレードが粘性のある熱圧着シートを巻き込みながらウエーハを切削することになり、デバイスチップの外周に欠けが生じたり、チッピングが発生したりするという問題が生じていたのに対し、切削加工を、熱圧着シート除去工程と、分割工程とに分けて実施することにより、上記した問題が回避され、デバイスチップの外周に欠けが生じたり、チッピングが発生したりするという問題が解消する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態のウエーハ、及び熱圧着シート配設工程の実施態様を示す斜視図である。
図2】(a)熱圧着工程の第1の形態、(b)熱圧着工程の第2の形態、(c)熱圧着工程の第3の形態を示す斜視図である。
図3】熱圧着シートをウエーハの外縁に沿ってカットする態様を示す斜視図である。
図4】ダイシングテープ支持工程の実施態様を示す斜視図である。
図5】(a)熱圧着シート除去工程を実施する態様を示す斜視図、(b)(a)に示す熱圧着シート除去工程が実施された状態の一部拡大断面図である。
図6】(a)分割工程を実施する態様を示す斜視図、(b)(a)に示す分割工程が実施された状態の一部拡大断面図、(c)分割工程が施されたウエーハの斜視図及び一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に基づいて構成されるウエーハの加工方法に係る実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
本実施形態のウエーハの加工方法を実施するに際し、まず、図1に示すように、被加工物であるウエーハ10を用意する。ウエーハ10は、例えば、ガリウムヒ素(GaAs)の半導体基板の表面10aにレンズを含む複数のデバイス12が分割予定ライン14によって区画されて形成されたウエーハである。なお、本実施形態の分割予定ライン14は、その幅が約50μmで形成されている。該ウエーハ10を用意したならば、図1に示す熱圧着装置20(一部のみを示している)に搬送して、熱圧着装置20のチャックテーブル23に裏面10b側を下方に向けて載置する。チャックテーブル23は、図に示すように、吸着チャック21と、吸着チャック21を囲繞する枠体22とを備えている。吸着チャック21は、通気性を有する部材からなり、図示を省略する吸引源に接続され、吸着チャック21の表面に吸引負圧が生成される。ウエーハ10を載置したならば、ウエーハ10の表面10a側に、上方から熱圧着シートT1を載置する。以上により、熱圧着シート配設工程が完了する。
【0014】
熱圧着シートT1は、加熱することにより粘着力を発揮するシートであり、例えば、ポリオレフィン系シート、又はポリエステル系シートから選択される。熱圧着シートT1をポリオレフィン系シートから選択する場合は、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシート、ポリスチレンシートのいずれかであることが好ましく、該ポリエステル系シートから選択する場合は、ポリエチレンテレフタレートシート、ポリエチレンナフタレートシート、のいずれかであることが好ましい。本実施形態では、熱圧着シートT1として、ポリエチレンシートを選択したものとして、以下に説明する。
【0015】
図1の下方に示すように、熱圧着シートT1は、ウエーハ10全体を覆うと共に、チャックテーブル23を構成する吸着チャック21よりも大きい寸法の円形で形成されている。上記した熱圧着シート配設工程を実施して、熱圧着装置20のチャックテーブル23にウエーハ10及び熱圧着シートT1を載置したならば、図示を省略する吸引源を作動して、ウエーハ10と共に、熱圧着シートT1の下面側を負圧Vで吸引して内部を真空状態とし、熱圧着シートT1と吸着チャック21との間の空気を除去して熱圧着シートとウエーハ10の表面10a側を密着させる。
【0016】
次いで、熱圧着シートT1を加熱してウエーハ10の表面10aに熱圧着する熱圧着工程を実施する。図2を参照しながら、熱圧着工程について、より具体的に説明する。図2(a)には、熱圧着工程の第1の形態が示されている。この第1の形態では、熱圧着装置20に対し、図に示すような、熱圧着ローラ24が配設されている。熱圧着ローラ24の表面24aにはフッ素樹脂がコーティングされ、その内部には加熱手段(図示は省略する)を備えており、表面24aを所望の温度に加熱することができる。この熱圧着ローラ24を、チャックテーブル23に吸引保持されたウエーハ10及び熱圧着シートT1の上方に位置付ける。
【0017】
ウエーハ10の上方に熱圧着ローラ24を位置付けたならば、熱圧着ローラ24の該加熱手段を作動し、熱圧着シートT1の上方からウエーハ10に押し付ける。さらに、図示を省略する回転駆動手段を作動して熱圧着ローラ24を矢印R1で示す方向に回転させると共に、矢印R2で示す方向のウエーハ10の端部まで移動させる。該加熱手段によって加熱する際の加熱温度は、ポリエチレンからなる熱圧着シートT1が粘着力を発揮するポリエチレンの溶融温度(120℃~140℃)に設定される。この熱圧着時の加熱により、熱圧着シートT1が粘着力を発揮してウエーハ10の表面10aの全域に熱圧着される。
【0018】
図2(b)には、熱圧着工程の第2の形態が示されている。この第2の形態では、上記した熱圧着ローラ24に替えて、温風ヒータ25が配設される。第2の形態においても、上記した第1の形態と同様に、熱圧着装置20のチャックテーブル23にウエーハ10及び熱圧着シートT1を載置し、図示を省略する吸引源を作動して、ウエーハ10と共に、熱圧着シートT1の下面側を負圧Vで吸引して内部を真空状態とし、熱圧着シートT1と吸着チャック21との間の空気を除去して熱圧着シートとウエーハ10の表面10a側を密着させる。
【0019】
次いで、ウエーハ10の上方に温風ヒータ25を位置付けて、温風ヒータ25を作動し、ウエーハ10を覆う熱圧着シートT1上に温風を吹き付ける。該温風も、熱圧着シートT1を120℃~140℃に加熱するように設定され、この温風加熱により、熱圧着シートT1が粘着力を発揮してウエーハ10の表面10aの全域に熱圧着シートT1が熱圧着される。
【0020】
さらに、図2(c)には、熱圧着工程の第3の形態が示されている。この第3の形態では、上記した熱圧着ローラ24、温風ヒータ25に替えて、加熱ヒータ26が配設される。この第3の形態においても、上記した第1、第2の形態と同様に、熱圧着装置20のチャックテーブル23にウエーハ10及び熱圧着シートT1を載置し、図示を省略する吸引源を作動して、ウエーハ10と共に、熱圧着シートT1の下面側を負圧Vで吸引して内部を真空状態とし、熱圧着シートT1と吸着チャック21との間の空気を除去して熱圧着シートとウエーハ10の表面10a側を密着させる。
【0021】
次いで、ウエーハ10の上方に加熱ヒータ26を位置付けて作動し、ウエーハ10を覆う熱圧着シートT1を加熱する。該加熱ヒータ26も、熱圧着シートT1を120℃~140℃に加熱するように設定され、この加熱ヒータ26の作用により、熱圧着シートT1が粘着力を発揮してウエーハ10の表面10aの全域に熱圧着シートT1が熱圧着される。
【0022】
上記したように、熱圧着工程を実施したならば、図3に示すカッター30をチャックテーブル23上に位置付ける。カッター30は、ケーシング32に回転自在に支持された回転軸33の先端にブレード34が配設されており、図示を省略する駆動モータによって、ブレード34を矢印R3で示す方向に回転させることができる。ブレード34を矢印R3で示す方向に回転させながら、熱圧着シートT1の上方からウエーハ10の外周縁に位置付けて切込み、チャックテーブル23を矢印R4で示す方向に回転させる。これにより、図3の下方に示すように、熱圧着シートT1は、ウエーハ10の表面10aに熱圧着された状態で、ウエーハ10の外周縁に沿った円形状にカットされる。
【0023】
次いで、ウエーハ10の裏面10bをダイシングテープT2で支持するダイシングテープ支持工程を実施する。図4を参照しながら、該ダイシングテープ支持工程について、より具体的に説明する。
【0024】
ダイシングテープ支持工程を実施するに際し、図4に示すように、ウエーハ10を収容可能な開口Faを有する環状のフレームFと、該開口Faよりも大きくフレームFの外形よりも小さい表面に粘着層を備えたダイシングテープT2を用意する。フレームFの開口Faの中央にウエーハ10の裏面10bを下方に向けて位置付けると共に、ダイシングテープT2の中央にウエーハ10の裏面10bを位置付けて、ダイシングテープT2の外周縁をフレームFの下面側に貼着して一体とし、ウエーハ10の裏面10bをダイシングテープT2で支持した状態とする(図4の下段を参照)。
【0025】
次いで、ダイシングテープ支持工程によってダイシングテープT2に支持されたウエーハ10を、図5(a)に示す切削装置40に搬送する。切削装置40は、切削手段42を備えており、切削手段42は、スピンドルハウジング43と、スピンドルハウジング43に回転自在に支持された回転軸44と、回転軸44の先端部に固定される第1の切削ブレード45と、第1の切削ブレード45を覆いスピンドルハウジング43の先端部に配設されたブレードカバー46と、第1の切削ブレード45による切削加工位置に切削水を噴射する切削水供給ノズル47と、を備えている。スピンドルハウジング43の後方には、図示を省略する電動モータが配設されており、該電動モータに駆動される回転軸44により切削ブレード45が矢印R5で示す方向に回転させられる。なお、上記した第1の切削ブレード45は、例えば、その直径が50mm、厚みが約35μmであり、ダイヤモンド等からなる砥粒を金属、樹脂等のボンド材で固定して形成したものであって、該砥粒は、比較的大きい4~6μmの粒径で構成される。
【0026】
上記した切削装置40にウエーハ10を搬送したならば、ウエーハ10の表面10aを上方に、ダイシングテープT2を下方に向けて図示を省略する保持手段に保持して、ウエーハ10の所定の分割予定ラン14をX方向に整合させると共に、第1の切削ブレード45との位置合わせを実施する。次いで、第1の切削ブレード45を、例えば30000rpmの速度で、矢印R5で示す方向に回転させると共に、切削水供給ノズル47から例えば2L/分の量で切削水を供給して第1の切削ブレード45を表面10a側から切り込ませる。このとき、表面10a側から切り込ませる量は、図5(b)に示すように、ウエーハ10の表面10aに配設された熱圧着シートT1を除去すると共に、ウエーハ10を切削しない位置に至る量に設定されている。なお、図示の実施形態では、第1の切削ブレード45の先端部とウエーハ10の表面10aとの間に、熱圧着シートT1の残部110が僅かに残されている。
【0027】
上記したように第1の切削ブレード45を、表面10a側から切り込ませたならば、ウエーハ10をX方向に例えば3mm/秒の速度で加工送りして、いわゆるダウンカットとなる状態で熱圧着シートT1を切削して除去し、分割予定ライン14に沿って熱圧着シート除去溝100を形成する。さらに、該熱圧着シート除去溝100を形成した分割予定ライン14にY方向で隣接し、熱圧着シート除去溝100が形成されていない分割予定ライン14上に第1の切削ブレード45を割り出し送りして、上記と同様にして熱圧着シート除去溝100を形成する。これらを繰り返すことにより、X方向に沿うすべての分割予定ライン14に沿って上記の熱圧着シート除去溝100を形成する。次いで、該保持手段を90度回転し、先に熱圧着シート除去溝100を形成した方向と直交する方向をX方向に整合させ、上記した切削加工を新たにX方向に整合させたすべての分割予定ライン14に対して実施し、ウエーハ10の表面10aに形成されたすべての分割予定ライン14に沿って熱圧着シート除去溝100を形成する。このようにしてウエーハ10の表面10aに形成されたすべての分割予定ラン14に沿って熱圧着シートT1を除去した熱圧着シート除去溝100を形成する。以上により、第1の切削ブレード45によってウエーハ10の分割予定ライン14に沿って熱圧着シートT1を切削して除去する熱圧着シート除去工程が完了する。
【0028】
上記したように、熱圧着シート除去工程を実施したならば、分割予定ラインに沿ってウエーハを個々のデバイスチップに分割する分割工程を実施する。該分割工程について、図6を参照しながら、より具体的に説明する。
【0029】
該分割工程は、図6(a)に示すように、上記した切削装置40を使用する。ただし、本実施形態の分割工程を実施するに際しては、熱圧着シート除去工程を実施した際に切削装置40に装着されていた第1の切削ブレード45に替えて、第2の切削ブレード48を装着する。第2の切削ブレード48は、例えば、第1の切削ブレード45の厚みD1に対して厚みの薄いブレードを使用したり、第1の切削ブレード45に対して、細かい砥粒(例えば粒径が1~2μm)を使用してボンド材で固めたものを使用したりすることが好ましい。なお、本実施形態の第2の切削ブレード48は、図6(b)に示すように、第1の切削ブレード45の厚みD1(約35μm)よりも薄い厚みD2(約15μm)のブレードを採用したものとして説明する。
【0030】
該分割工程を実施するに際しては、熱圧着シート除去工程を施したウエーハ10を、切削装置40にそのまま保持させておき、図6(a)に示すように、第2の切削ブレード48を装着した切削手段42の直下に位置付ける。次いで、ウエーハ10の表面10aにおいて、上記した熱圧着シート除去溝100が形成された所定の分割予定ライン14をX方向に整合させると共に、第2の切削ブレード48との位置合わせを実施する。次いで、X方向に整合させた分割予定ライン14の熱圧着シート除去溝100の中央に、例えば30000rpmの速度で、矢印R6で示す方向に回転駆動させられた第2の切削ブレード48を位置付けて、切削水供給ノズル47から例えば2L/分の量で切削水を供給すると共に表面10a側から切り込ませる。このとき、表面10a側から切り込ませる量は、図6(b)に示すように、ウエーハ10を分割予定ライン14に沿って完全に分割する量に設定されている。
【0031】
上記したように第2の切削ブレード48を、表面10a側から切り込ませたならば、ウエーハ10をX方向に例えば3mm/秒の速度で加工送りして、いわゆるダウンカットとなる状態で切削して、第2の切削ブレード48の厚みD2に対応した分割溝102を形成する。さらに、熱圧着シート除去溝100及び該分割溝102を形成した分割予定ライン14にY方向で隣接し、分割溝102が形成されていない分割予定ライン14上に第2の切削ブレード48を割り出し送りして、上記と同様にして熱圧着シート除去溝100の中央に分割溝102を形成する。これらを繰り返すことにより、X方向に沿うすべての分割予定ライン14に沿って上記の熱圧着シート除去溝100及び分割溝102を形成する。次いで、該保持手段を90度回転し、先に分割溝102を形成した方向と直交する方向をX方向に整合させ、上記した切削加工を新たにX方向に整合させたすべての分割予定ライン14に対して実施し、ウエーハ10の表面10aに形成されたすべての分割予定ライン14に沿って熱圧着シート除去溝100及び分割溝102を形成し、ウエーハ10が、分割予定ライン14に沿って分割されて個々のデバイスチップ12’が形成される。以上により、第2の切削ブレード48を備えた切削手段42によって分割予定ライン14に沿ってウエーハ10を個々のデバイスチップ12’に分割する分割工程が完了する。
【0032】
なお、上記した分割工程が完了したならば、必要に応じて、個々のデバイスチップ12’に分割されたウエーハ10の表面10a側に貼着された熱圧着シートT1を除去するようにしてもよい。該熱圧着シートT1を除去する場合は、ウエーハ10の表面10a側を加熱、又は冷却することにより、熱圧着シートT1の粘着力を低下させ、剥離用のテープ(図示は省略する)を熱圧着シートT1側に貼り付ける等して、個々のデバイスチップ12’に分割されたウエーハ10の表面10aから熱圧着シートT1を除去する。
【0033】
上記した実施形態によれば、分割工程を実施してウエーハ10を個々のデバイスチップ12’に分割したとしても、デバイスチップ12’の表面に切削屑が付着するという問題が解消されると共に、従来の技術において発生していた、ウエーハ10の表面10aに粘着層の一部が付着して残存しデバイスチップ12’の品質が低下するという問題が解決される。また、熱圧着シートT1とウエーハ10とを一緒に切削すると、切削ブレードが粘性のある熱圧着シートT1を巻き込みながらウエーハ10を切削することになり、デバイスチップ12’の外周に欠けが生じたり、チッピングが発生したりするという問題が生じていたのに対し、切削加工を、熱圧着シート除去工程と、分割工程とに分けて実施することにより、上記した問題が回避され、デバイスチップ12’の外周に欠けが生じたり、チッピングが発生したりするという問題が解消する。
【0034】
また、上記した実施形態では、熱圧着シート除去工程において使用する第1の切削ブレード45の厚みD1は、該分割工程において使用する第2の切削ブレード48の厚みD2よりも厚く設定されていることから、第2の切削ブレード48を使用して、先に形成された熱圧着シート除去溝100に切り込む際に、熱圧着シートT1を巻き込むことなくウエーハ10の分割予定ライン14に沿って切削加工を実施することができ、デバイスチップ12’の外周に欠けが生じたり、チッピングが発生したりするという問題がより効果的に解決される。また、上記した実施形態では、熱圧着シート除去工程で使用する第1の切削ブレード45の砥粒の粒径を大きい粒径とし、第2の切削ブレード48で使用する砥粒の砥粒の粒径を小さい粒径としたことから、熱圧着シート除去工程と分割工程と適切に実施することができる。
【0035】
上記した実施形態では、熱圧着シートT1として、ポリエチレンシートを採用したものとして説明したが、本発明は、これに限定されず、ポリオレフィン系シート、又はポリエステル系シートのいずれかから採用することができ、熱圧着シートT1を加熱してウエーハ10の表面10aに圧着する際の加熱温度は、熱圧着シートT1としてポリプロピレンシートが選択された場合は160℃~180℃に設定し、ポリスチレンシートが選択された場合は220℃~240℃に設定し、ポリエチレンテレフタレートシートが選択された場合は250℃~270℃に設定し、ポリエチレンナフタレートが選択された場合は160℃~180℃に設定することが好ましい。
【0036】
本発明は、上記した実施形態に限定されない。例えば、上記した実施形態では、第1の切削ブレード45の厚みD1を、第2の切削ブレード48の厚みD2よりも厚くなるようにしたが、第1の切削ブレード45と、第2の切削ブレード48とを同一の切削ブレードとなるように、すなわち、熱圧着シート除去工程及び分割工程のいずれにおいても、同一の切削ブレードを使用するようにしてもよい。
【0037】
また、上記した実施形態では、切削装置40の切削手段42に装着される切削ブレードを交換して、熱圧着シート除去工程と分割工程とを順次実施する旨説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、2つの切削手段を備えた切削装置を用意し、一方の切削手段に第1の切削ブレード45を装着し、他方の切削手段に第2の切削ブレード48を装着して、熱圧着シート除去工程を実施し、続けて分割工程を実施するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0038】
10:ウエーハ
10a:表面
10b:裏面
12:デバイス
14:分割予定ライン
20:熱圧着装置
21:吸着チャック
22:枠体
23:チャックテーブル
24:熱圧着ローラ
25:温風ヒータ
26:加熱ヒータ
30:カッター
32:ケーシング
33:回転軸
34:ブレード
40:切削装置
42:切削手段
43:スピンドルハウジング
44:回転軸
45:第1の切削ブレード
46:ブレードカバー
47:切削水供給ノズル
48:第2の切削ブレード
100:熱圧着シート除去溝
102:分割溝
110:残部
F:フレーム
Fa:開口
T1:熱圧着シート
T2:ダイシングテープ
図1
図2
図3
図4
図5
図6