(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126150
(43)【公開日】2022-08-30
(54)【発明の名称】レジスト膜厚膜化組成物および厚膜化パターンの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/40 20060101AFI20220823BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20220823BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20220823BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20220823BHJP
C08K 5/17 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
G03F7/40 511
H01L21/30 570
G03F7/20 501
G03F7/20 521
C08L101/00
C08K5/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021024064
(22)【出願日】2021-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100206265
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 逸子
(72)【発明者】
【氏名】池田 宏和
【テーマコード(参考)】
2H196
2H197
4J002
5F146
【Fターム(参考)】
2H196AA25
2H196EA02
2H196HA35
2H197AA05
2H197CA05
2H197HA03
2H197HA04
2H197HA05
2H197JA15
4J002BN031
4J002EU046
4J002FD206
4J002GP03
5F146LA18
(57)【要約】
【課題】レジスト膜厚膜化組成物の提供。
【解決手段】レジスト膜厚膜化組成物は、ポリマー(A)、窒素含有化合物(B)、および溶媒(C)を含んでなり、ここで、前記窒素含有化合物(B)は、1または2のヒドロキシ、アミノ、C
1-4ヒドロキシアルキルおよびC
1-4アミノアルキルからなる群から選択される置換基で置換された、5または6員環の、含窒素不飽和複素環である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー(A)、窒素含有化合物(B)、および溶媒(C)を含んでなるレジスト膜厚膜化組成物:
ここで、前記窒素含有化合物(B)は、1または2のヒドロキシ、アミノ、C1-4ヒドロキシアルキルおよびC1-4アミノアルキルからなる群から選択される置換基で置換された、5または6員環の、含窒素不飽和複素環である。
【請求項2】
前記窒素含有化合物(B)が、式(I)で表される、請求項1に記載の組成物。
【化1】
(ここで、
X
1は、NまたはNHであり、
X
2~X
6は、それぞれ独立に、CH、CY、またはNであり、ただし、X
2~X
6のうちの1つまたは2つが、CYであり、
Yは、それぞれ独立に、ヒドロキシ(-OH)、アミノ(-NH
2)、C
1-4ヒドロキシアルキルまたはC
1-4アミノアルキルであり、
nは、0または1である)
【請求項3】
前記窒素含有化合物(B)が、式(Ia)、(Ib)、または(Ic)で表される、請求項1または2に記載の組成物。
【化2】
(ここで、
Y
aは、それぞれ独立に、ヒドロキシ(-OH)、アミノ(-NH
2)、C
1-4ヒドロキシアルキルまたはC
1-4アミノアルキルであり、
naは、1または2である)
【化3】
(ここで、
Y
bは、それぞれ独立に、ヒドロキシ(-OH)、アミノ(-NH
2)、C
1-4ヒドロキシアルキルまたはC
1-4アミノアルキルであり、
nbは、1または2である)
【化4】
(ここで、
Y
cは、それぞれ独立に、ヒドロキシ(-OH)、アミノ(-NH
2)、C
1-4ヒドロキシアルキルまたはC
1-4アミノアルキルであり、
ncは、1または2である)
【請求項4】
前記ポリマー(A)が、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリエチレンオキシド樹脂、ポリ-N-ビニルホルムアミド樹脂、オキサゾリン含有水溶性樹脂、水性ウレタン樹脂、ポリアリルアミン樹脂、ポリエチレンイミン樹脂、ポリビニルアミン樹脂、水溶性フェノール樹脂、水溶性エポキシ樹脂、ポリエチレンイミン樹脂、およびこれらの共重合体、ならびにスチレン-マレイン酸共重合体からなる群から選択される、請求項1~3の少なくともいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記溶媒(C)が水を含んでなる、請求項1~4の少なくともいずれか一項に記載の組成物:
好ましくは、前記水の含有量は、前記溶媒(C)の総質量を基準として、80~100質量%(より好ましくは90~100質量%、さらに好ましくは98~100質量%、よりさらに好ましくは100質量%)であり;
好ましくは、前記ポリマー(A)の含有量は、前記組成物の総質量を基準として、5~30質量%(より好ましくは7~20質量%、さらに好ましくは8~15質量%)であり;
好ましくは、前記窒素含有化合物(B)の含有量は、前記組成物の総質量を基準として、0.001~5質量%(より好ましくは0.005~2質量%、さらに好ましくは0.005~1質量%)であり;または
好ましくは、前記溶媒(C)の含有量は、前記組成物の総質量を基準として、70~95質量%(より好ましくは80~95質量%、さらに好ましくは85~95質量%)である。
【請求項6】
さらに架橋剤(D)を含んでなる、請求項1~5の少なくともいずれか一項に記載の組成物:
好ましくは前記架橋剤(D)が、メラミン系架橋剤、尿素系架橋剤、およびアミノ系架橋剤からなる群から選択され;または
好ましくは前記架橋剤(D)の含有量は、前記組成物の総質量を基準として、0~10質量%(より好ましくは0.1~5質量%、さらに好ましくは0.5~3質量%)である。
【請求項7】
さらに界面活性剤(E)を含んでなる、請求項1~6の少なくともいずれか一項に記載の組成物:
好ましくは、前記界面活性剤(E)の含有量は、前記レジスト膜厚膜化組成物の総質量を基準として、0~5質量%(より好ましくは0.001~2質量%;さらに好ましくは0.01~1質量%)であり;
好ましくは、前記組成物がさらに添加剤(F)を含んでなり;
好ましくは、前記添加剤(F)は、可塑剤、酸、塩基性化合物、抗菌剤、殺菌剤、防腐剤、抗真菌剤、または少なくともこれらいずれかの混合物である;または
好ましくは、添加剤(F)の含有量は、前記組成物の総質量を基準として、0~10質量%(好ましくは0.001~5質量%、さらに好ましくは0.001~1質量%)である。
【請求項8】
レジストパターン微細化組成物である、請求項1~7の少なくともいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
以下の工程を含んでなる厚膜化パターンの製造方法:
(1)基板の上方に、レジスト組成物を適用し、レジスト膜を形成する工程、
(2a)前記レジスト膜を露光する工程、
(2b)前記レジスト膜を現像し、レジストパターンを形成する工程、
(2c)前記レジストパターンの表面に、請求項1~8のいずれか一項に記載のレジスト膜厚膜化組成物を適用し、レジスト膜厚膜化層を形成する工程、
(3)前記レジストパターンおよびレジスト膜厚膜化層を加熱し、前記レジスト膜厚膜化層の前記レジストパターン近傍領域を硬化させて不溶化層を形成する工程、および
(4)前記レジスト膜厚膜化層の未硬化部分を除去する工程:
ただし、工程(2a)、(2b)および(2c)の順番は任意であり、かつ(2a)は(2b)より先に行われる。
【請求項10】
(2a)、(2b)、(2c)の順で工程が行われる請求項9に記載の厚膜化パターンの製造方法。
【請求項11】
前記工程(2a)における露光が、限界解像度が1.5~5.0μmである露光装置を用いて行われる、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記工程(2a)における露光が、開口数が0.08~0.15である投影レンズを用いて行われる、請求項9~11の少なくともいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記工程(2a)において照射される光が、300~450nmの波長の光を含んでなる、請求項9~12の少なくともいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
以下の工程を含んでなる加工基板の製造方法:
請求項9~13の少なくともいずれか一項に記載の方法によって厚膜化パターンを形成が形成された基板を準備する工程、および
(5)エッチングで前記基板を加工する工程。
【請求項15】
請求項9~14の少なくともいずれか一項に記載の方法を含んでなる、デバイスの製造方法:
好ましくは、前記基板に配線を形成する工程をさらに含んでなり;または
好ましくは、前記デバイスが表示デバイスである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト膜厚膜化組成物および厚膜化パターンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子や液晶表示素子の製造においては、レジストを用いたパターン形成が行われている。レジストパターンを微細化する方法の一つとして、レジスト組成物からレジストパターンを形成した後、レジストパターン上に被覆層を施し、加熱等することにより、被覆層とレジストパターンの間にミキシング層を形成させ、その後被覆層の一部を除去することによりレジストパターンを太らせ、結果としてレジストパターンの分離サイズあるいはホール開口サイズを縮小してレジストパターンの微細化を図り、実効的に解像限界以下の微細レジストパターンを形成する方法が提案されている。
【0003】
液晶表示素子のレジストプロセスは、高スループットを達成するために高感度化が求められる。使用される光源は、例えば365nm(i線)、405nm(h線)、436nm(g線)等の300nm以上の放射線、特にこれらの混合波長が使用されている。また、レジストパターンの形状は、半導体製造分野において矩形が好まれるのに対し、その後の加工において有利であるため、ホール部などの内側側面に傾斜(以下、テーパーという)のついた形状が好まれることがある。
【0004】
最近では、システムLCDとよばれる高機能LCDに対する技術開発が盛んに行われており、レジストパターンのさらなる高解像化が求められている。一般的にレジストパターンの解像度(解像限界)を上げるためには、短波長の光源を用いるか、高NA(開口数)の露光プロセスを用いることが必要である。しかし、液晶表示素子製造分野において、光源装置を変更して、露光波長を今以上に短波長化することは困難であり、スループット向上の観点から、高NA化も困難である。
特許文献1および2は、現像されたレジストパターンに微細パターン形成組成物を適用することで、微細パターンを製造する方法を提案する。
【0005】
また、特許文献3は、半導体デバイスや液晶デバイスなどの製造に有効な、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜を有する基板との密着性が優れたレジストパターンを形成しうるとともに、昇華物によるエッチング不良がなく、感度および残膜率の経時変化の少ないポジ型レジスト組成物を提供することを目的に、所定のピリジン誘導体をポジ型レジスト組成物に添加することを検討する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-078810号公報
【特許文献2】特開2019-078812号公報
【特許文献3】日本国特許3024695号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような技術背景の下、本発明者らはレジストパターンの製造に関して、いまだ改良が求められる1以上の課題が存在すると考えた。それらは例えば、以下が挙げられる:レジストパターンを厚膜化する;レジストパターンのシュリンク量を大きくする;下地基板とレジストパターンの密着性を向上する;表示素子の製造分野における使用に好適な、実効的に解像限界以下のレジストパターンを製造する;レジストパターンの形状をテーパー形状を有するパターン形状を維持しつつ、限界解像以下の微細パターンを精度よく製造する;エッチャントが厚膜化したレジストパターンマスクの端から入り込むことを防ぐ;成分の溶解性が良好である組成物を得る;不溶物による成分の濃度の偏りや濁りが生じない組成物を得る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるレジスト膜厚膜化組成物は、ポリマー(A)、窒素含有化合物(B)、および溶媒(C)を含んでなる:ここで、前記窒素含有化合物(B)は、1または2のヒドロキシ、アミノ、C1-4ヒドロキシアルキルおよびC1-4アミノアルキルからなる群から選択される置換基で置換された、5または6員環の、含窒素不飽和複素環である。
【0009】
本発明による厚膜化パターンの製造方法は、以下の工程を含んでなる:
(1)基板の上方に、レジスト組成物を適用し、レジスト膜を形成する工程、
(2a)前記レジスト膜を露光する工程、
(2b)前記レジスト膜を現像し、レジストパターンを形成する工程、
(2c)前記レジストパターンの表面に、上記に記載のレジスト膜厚膜化組成物を適用し、レジスト膜厚膜化層を形成する工程、
(3)前記レジストパターンおよびレジスト膜厚膜化層を加熱し、前記レジスト膜厚膜化層の前記レジストパターン近傍領域を硬化させて不溶化層を形成する工程、および
(4)前記レジスト膜厚膜化層の未硬化部分を除去する工程。
ただし、工程(2a)、(2b)および(2c)の順番は任意であり、かつ(2a)は(2b)より先に行われる。
【0010】
本発明による加工基板の製造方法は、以下の工程を含んでなる:
上記に記載の方法によって厚膜化パターンを形成が形成された基板を準備する工程、および
(5)エッチングで前記基板を加工する工程。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、以下の1または複数の効果を望むことが可能である:レジストパターンを厚膜化する;エッチングマスクとして有用なレジストパターンを得る;下地基板との密着性が高いレジストパターンを得る;テーパー形状を有するレジストパターン形状を維持しつつ、微細パターンを形成することができる;スペース部またはホール部の寸法縮小率が高い;限界解像以下のパターンを良好かつ経済的に形成させることができる;低露光量で、より微細なパターンを製造することができる;エッチャントが厚膜化したレジストパターンマスクの端から入り込むことを防ぐ;溶質の溶媒(好ましくは水)への溶解性が良好である;不溶物による成分の濃度の偏りが生じない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】微細化されたパターンを形成する方法の説明図
【発明を実施するための形態】
【0013】
[定義]
本明細書において、特に限定されて言及されない限り、本パラグラフに記載の定義や例に従う。
単数形は複数形を含み、「1つの」や「その」は「少なくとも1つ」を意味する。ある概念の要素は複数種によって発現されることが可能であり、その量(例えば質量%やモル%)が記載された場合、その量はそれら複数種の和を意味する。
「および/または」は、要素の全ての組み合わせを含み、また単体での使用も含む。
「~」または「-」を用いて数値範囲を示した場合、これらは両方の端点を含み、単位は共通する。例えば、5~25モル%は、5モル%以上25モル%以下を意味する。
「Cx-y」、「Cx~Cy」および「Cx」などの記載は、分子または置換基中の炭素の数を意味する。例えば、C1-6アルキルは、1以上6以下の炭素を有するアルキル鎖(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル等)を意味する。
ポリマーが複数種類の繰り返し単位を有する場合、これらの繰り返し単位は共重合する。これら共重合は、交互共重合、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合、またはこれらの混在のいずれであってもよい。ポリマーや樹脂を構造式で示す際、括弧に併記されるnやm等は繰り返し数を示す。
温度の単位は摂氏(Celsius)を使用する。例えば、20度とは摂氏20度を意味する。
添加剤は、その機能を有する化合物そのものをいう(例えば、塩基発生剤であれば、塩基を発生させる化合物そのもの)。その化合物が、溶媒に溶解または分散されて、組成物に添加される態様もあり得る。本発明の一形態として、このような溶媒は溶媒(C)またはその他の成分として本発明にかかる組成物に含有されることが好ましい。
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0015】
[レジスト膜厚膜化組成物]
本発明によるレジスト膜厚膜化組成物は、ポリマー(A)、特定の構造を有する窒素含有化合物(B)、および溶媒(C)を含んでなる。
本発明の好ましい態様として、前記レジスト膜厚膜化組成物はレジストパターン微細化組成物である。レジストパターン微細化組成物は、レジストパターンを厚膜化することでレジストパターンを太らせ、結果としてレジストパターンの分離サイズやホール開口サイズなどを縮小させる。
本発明によるレジスト膜厚膜化組成物の粘度は、1~120cPであることが好ましく;より好ましくは10~80cPである。ここで粘度は、細管粘度計により25℃で測定したものである。
【0016】
(A)ポリマー
本発明に用いられるポリマー(A)は、レジストパターンとの親和性が良好であれば、特に限定されないが、好ましくは、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリエチレンオキシド樹脂、ポリ-N-ビニルホルムアミド樹脂、オキサゾリン含有水溶性樹脂、水性ウレタン樹脂、ポリアリルアミン樹脂、ポリエチレンイミン樹脂、ポリビニルアミン樹脂、水溶性フェノール樹脂、水溶性エポキシ樹脂、ポリエチレンイミン樹脂、およびこれらの共重合体、ならびにスチレン-マレイン酸共重合体からなる群から選択される。より好適には、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアリルアミン樹脂、ポリビニルアルコールオキサゾリン含有水溶性樹脂、またはポリビニルアルコール-ポリビニルピロリドン共重合体が挙げられる。
【0017】
ポリマー(A)の含有量は、レジスト膜厚膜化組成物の総質量を基準として、好ましくは5~30質量%であり;より好ましくは7~20質量%であり;さらに好ましくは8~15質量%)である。
本発明の一形態として、ポリマー(A)の質量平均分子量(Mw)は1,000~1,000,000であり;好ましくは2,000~200,000であり;より好ましくは3,000~100,000であり;よりさらに好ましくは5,000~50,000である。ここで、本発明において、Mwとはポリスチレン換算質量平均分子量を意味し、ポリスチレンを基準としてゲル浸透クロマトグラフィにより測定することができる。以降についても同じである。
【0018】
(B)窒素含有化合物
窒素含有化合物(B)は、1または2のヒドロキシ、アミノ、C1-4ヒドロキシアルキルおよびC1-4アミノアルキルからなる群から選択される置換基で置換された、5または6員環の、含窒素不飽和複素環である。好適には、前記含窒素不飽和複素環は芳香族性を有する。好適な態様として、窒素含有化合物(B)は密着増強成分である。理論に拘束されないが、窒素含有化合物(B)がレジスト膜厚膜化組成物の固形成分がレジスト膜に入り込むことを促進し、不溶化層を厚くすると考えられる。また、理論に拘束されないが、窒素含有化合物(B)がレジスト膜厚膜化膜の下の層または基板(好ましくは基板)への密着性を上げ、これによりエッチャントが端から入り込む現象を抑制すると考えられる。エッチャントがマスクの端から入り込むと、下層の保護の効果が減ることになる。
【0019】
窒素含有化合物(B)は、好ましくは、式(I)で表される。
【化1】
ここで、
X
1は、NまたはNHであり;好ましくはNである。
X
2~X
6は、それぞれ独立に、CH、CY、またはNであり、ただし、X
2~X
6のうちの1つまたは2つが、CYである。好ましくはX
2~X
6のうちの1つがCYである。また、好ましい態様として、CY以外のX
2~X
6はCHである。より好ましい態様として、X
2がCYであり、X
3~X
6はCHである。
好適な態様として、隣接する環原子が連続してNにならない。例えばX
2およびX
6はNではなく、CHまたはCYである。
Yは、それぞれ独立に、ヒドロキシ(-OH)、アミノ(-NH
2)、C
1-4ヒドロキシアルキルまたはC
1-4アミノアルキルであり;好ましくはヒドロキシ、アミノ、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチルまたはヒドロキシプロピルであり;より好ましくはヒドロキシメチルまたはヒドロキシエチルであり;さらに好ましくはヒドロキシエチルである。
nは、0または1であり;好ましは1である。
明確性のために記載すると、X
1~X
6のN原子またはC原子において、余った結合手はHと結合する。
【0020】
窒素含有化合物(B)は、より好ましくは、式(Ia)、(Ib)、または(Ic)で表され;さらに好ましくは式(Ia)で表される。
【化2】
ここで、
Y
aは、それぞれ独立に、ヒドロキシ(-OH)、アミノ(-NH
2)、C
1-4ヒドロキシアルキルまたはC
1-4アミノアルキルであり;好ましくはヒドロキシ、アミノ、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチルまたはヒドロキシプロピルであり;より好ましくはヒドロキシエチルである。
naは1または2であり;好ましくは1である。
【化3】
ここで、
Y
bは、それぞれ独立に、ヒドロキシ(-OH)、アミノ(-NH
2)、C
1-4ヒドロキシアルキルまたはC
1-4アミノアルキルであり;好ましくはヒドロキシ、アミノ、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチルまたはヒドロキシプロピルであり;より好ましくはヒドロキシエチルである。
nbは1または2であり、好ましくは1である。
【化4】
ここで、
Y
cは、それぞれ独立に、ヒドロキシ(-OH)、アミノ(-NH
2)、C
1-4ヒドロキシアルキルまたはC
1-4アミノアルキルであり;好ましくはヒドロキシ、アミノ、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチルまたはヒドロキシプロピルであり;より好ましくはヒドロキシエチルである。
ncは1または2であり;好ましくは1である。
【0021】
窒素含有化合物(B)の具体例は、以下である。
【化5】
【0022】
窒素含有化合物(B)の含有量は、レジスト膜厚膜化組成物の総質量を基準として、好ましくは0.001~5質量%であり;より好ましくは0.005~2質量%であり;さらに好ましくは0.005~1質量%である。
窒素含有化合物(B)の含有量は、ポリマー(A)の総質量を基準として、好ましくは0.01~50質量%であり;より好ましくは0.05~20質量%であり;さらに好ましくは0.05~10質量%である。
【0023】
(C)溶媒
溶媒(C)は、ポリマー(A)、窒素含有化合物(B)および必要に応じて用いられるその他の成分を溶解するためのものである。このような溶媒は、レジスト層を溶解させないことが必要である。
溶媒(C)は、好ましくは水を含んでなる。水は、好適には脱イオン水(DIW)である。精細なレジストパターンの形成に用いられるため、溶媒(C)は不純物が少ないものが好ましい。好ましい溶媒(C)は、不純物が1ppm以下であり;より好ましくは100ppb以下であり;さらに好ましくは10ppb以下である。微細なプロセスに使用するために、溶質を溶解した液をフィルトレーションし、レジスト膜厚膜化組成物を調製することも本発明の好適な一態様である。
水の含有量は、溶媒(C)の総質量を基準として、好ましくは80~100質量%であり;より好ましくは90~100質量%であり;さらに好ましくは98~100質量%であり;よりさらに好ましくは100質量%である。本発明の好適な形態として、溶媒(C)は実質的に水のみからなる。ただし、添加物が水以外の溶媒に溶解および/または分散された状態(例えば界面活性剤)で、本発明によるレジスト膜厚膜化組成物に含有される態様は、本発明の好適な態様として許容される。
【0024】
水を除く溶媒(C)の具体例としては、例えば、イソプロピルアルコール(IPA)、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、乳酸エチル、またはこれらの混合液が好適である。これらは溶液の保存安定性の点で好ましい。これらの溶媒は、2種以上を混合して使用することもができる。水を除く溶媒(C)のより具体例として挙げられるものとして、より好適にはIPA、PGME、PGMEA,γ-ブチロラクトン、乳酸エチルまたはこれらの混合液;さらに好適にはIPA、PGME、PGMEA、またはこれらの混合液;よりさらに好適にはIPA、PGMEまたはPGMEA、がある。
【0025】
溶媒(C)の含有量は、レジスト膜厚膜化組成物の総質量を基準として、好ましくは70~95質量%であり;より好ましくは80~95質量%であり;さらに好ましくは85~95質量%である。
レジスト膜厚膜化組成物全体のpHは、好ましくは5~12であり;より好ましくは7~12であり;さらに好ましくは9~12であるである。
【0026】
(D)架橋剤
本発明によるレジスト膜厚膜化組成物は、(D)架橋剤を含むことができる。好適な態様として、レジスト膜厚膜化組成物は(D)架橋剤を含んでなる。
架橋剤(D)は、好ましくはメラミン系架橋剤、尿素系架橋剤、およびアミノ系架橋剤からなる群から選択される。
【0027】
メラミン系架橋剤は、好ましくは以下の式(II)で表される。
【化6】
ここで、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5およびR
6は、それぞれ独立に、H、メチル、エチル、-CH
2OH、-CH
2OCH
3、または-CH
2OC
2H
5であり、好ましくは-CH
2OCH
3である。
【0028】
尿素系架橋剤は、好ましくは以下の式(IIIa)または(IIIb)で表される。
【化7】
ここで、
R
7、R
8、R
9およびR
10は、それぞれ独立に、H、メチル、エチル、-CH
2OH、-CH
2OCH
3、または-CH
2OC
2H
5であり、好ましくは-CH
2OCH
3である。
【化8】
ここで、
R
11およびR
12は、それぞれ独立に、H、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、-CH
2OH、-CH
2OCH
3、または-CH
2OC
2H
5であり、好ましくは-CH
2OCH
3、-CH
2OCH
3である。
R
13およびR
14は、それぞれ独立に、H、ヒドロキシ、メトキシ、エトキシ、カルボキシであり、好ましくはメトキシである。
【0029】
アミノ系架橋剤は、好ましくは、イソシアネート、ベンゾグアナミン、およびグリコールウリルである。
【0030】
より好適には、メトキシメチロールメラミン、メトキシエチレン尿素、グリコールウリル、イソシアネート、ベンゾグアナミン、エチレン尿素、エチレン尿素カルボン酸、(N-メトキシメチル)-ジメトキシエチレン尿素、(N-メトキシメチル)メトキシヒドロキシエチレン尿素、N-メトキシメチル尿素、またはこれらの群から選ばれる2以上の架橋剤の組み合わせが挙げられる。好ましくはメトキシメチロールメラミン、メトキシエチレン尿素、(N-メトキシメチル)-ジメトキシエチレン尿素、(N-メトキシメチル)メトキシヒドロキシエチレン尿素、N-メトキシメチル尿素、またはこれらの群から選ばれる2以上の架橋剤の組み合わせである。
【0031】
架橋剤(D)の含有量は、レジスト膜厚膜化組成物の総質量を基準として、好ましくは0~10質量%であり;より好ましくは0.1~5質量%であり;さらに好ましくは0.5~3質量%である。
架橋剤(D)の含有量は、ポリマー(A)の総質量を基準として、好ましくは0~100質量%であり;より好ましくは1~50質量%であり;さらに好ましくは5~30質量%である。
【0032】
(E)界面活性剤
本発明によるレジスト膜厚膜化組成物は、さらに界面活性剤(E)を含むことができる。界面活性剤(E)は、塗布性や溶解性を向上させるために有用である。本発明に用いることができる界面活性剤としては、(I)陰イオン界面活性剤、(II)陽イオン界面活性剤、または(III)非イオン界面活性剤を挙げることができ、より具体的には(I)アルキルスルホネート、アルキルベンゼンスルホン酸、およびアルキルベンゼンスルホネート、(II)ラウリルピリジニウムクロライド、およびラウリルメチルアンモニウムクロライド、ならびに(III)ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアセチレニックグリコールエーテル、フッ素含有界面活性剤(例えば、フロラード(スリーエム)、メガファック(DIC)、サーフロン(AGCセイミケミカル)、および有機シロキサン界面活性剤(例えば、KF-53、KP341(信越化学工業))が挙げられる。
これら界面活性剤は、単独で、または2種以上混合して使用することができる。
【0033】
界面活性剤(E)の含有量は、レジスト膜厚膜化組成物の総質量を基準として、好ましくは0~5質量%であり;より好ましくは0.001~2質量%であり;さらに好ましくは0.01~1質量%である。界面活性剤(E)を含まない(0質量%)ことも本発明の一形態である。
【0034】
(F)添加剤
本発明によるレジスト膜厚膜化組成物は、上記した(A)~(E)成分以外の、添加剤(F)をさらに含むことができる。添加物(F)は、好ましくは、可塑剤、酸、塩基性化合物、抗菌剤、殺菌剤、防腐剤、抗真菌剤、または少なくともこれらいずれかの混合物である。
添加剤(F)の含有量は、レジスト膜厚膜化組成物の総質量を基準として、好ましくは0~10質量%であり、より好ましくは0.001~5質量%、さらに好ましくは0.001~1質量%である。本発明によるレジスト膜厚膜化組成物が、添加剤(F)を含まない(0質量%)ことも本発明の好ましい形態である。
【0035】
[厚膜化パターンの形成方法]
本発明による厚膜化パターンの形成方法は、以下の工程を含んでなる:
(1)基板の上方に、レジスト組成物を適用し、レジスト膜を形成する工程、
(2a)レジスト膜を露光する工程、
(2b)レジスト膜を現像し、レジストパターンを形成する工程、
(2c)レジストパターンの表面に、本発明によるレジスト膜厚膜化組成物を適用し、レジスト膜厚膜化層を形成する工程、
(3)レジストパターンおよびレジスト膜厚膜化層を加熱し、前記レジスト膜厚膜化層の前記レジストパターン近傍領域を硬化させて不溶化層を形成する工程、および
(4)前記レジスト膜厚膜化層の未硬化部分を除去する工程。
ただし、工程(2a)、(2b)および(2c)の順番は任意であり、かつ(2a)は(2b)より先に行われる。好ましくは、(2a)、(2b)、(2c)の順または(2a)、(2c)、(2b)の順;より好ましくは(2a)、(2b)、(2c)の順で工程が行われる。
なお、本発明による厚膜化パターン形成方法において、「レジスト膜」は、「レジスト層」および「レジストパターン」を含む概念である。すなわち本発明におけるレジスト膜厚膜化組成物が厚膜化する対象である「レジスト膜」は、「レジスト層」である場合も、「レジストパターン」である場合も含む。「レジスト層」はレジスト組成物が塗布され、現像される前の層を意味し;「レジストパターン」はレジスト層が現像され、形成されたパターンを意味する。例えば、(2a)、(2b)、(2c)の順で工程が行われるとき、(2b)工程より前のレジスト膜はレジスト層である。
【0036】
以下、本発明による厚膜化パターン形成方法の一例を、工程ごとに、図を参照しつつ、説明する。
【0037】
工程(1)
工程(1)は、基板の上方に、レジスト組成物を適用し、レジスト膜を形成させる工程である。
用いられる基板は、特に限定されないが、例えば、シリコン基板、ガラス基板、プラスチック基板などが挙げられる。好ましくは、500×600mm2以上の大型ガラス角基板である。基板には、表面にシリコン酸化膜、アルミニウム、モリブデン、クロムなどの金属膜、ITOなどの金属酸化膜、更には半導体素子、回路パターンなどが必要に応じ設けられたものなどでもよい。
ここで、本発明において、「基板の上方」とは、基板の直上に適用する場合および他の層を介して適用する場合を含む。好適な態様は基板の直上に適用する。他の層を介して適用する場合とは、例えば基板の直上にレジスト下層膜を形成し、その直上にレジスト組成物を適用する態様が挙げられる。レジスト下層膜は好ましくはBARCまたはSOCであり;より好ましくはBARCである。
【0038】
レジスト組成物の適用は、例えば、スリット塗布、スピン塗布等の方法が挙げられる。また、塗布法は、前記具体的に示したものに限られず、従来感光性組成物を塗布する際に利用されている塗布法のいずれのものであってもよい。レジスト組成物を基板の上方に適用した後、必要に応じて、基板を70℃から110℃に加熱し、溶媒成分を揮発させ、レジスト膜を形成させる。この加熱をプリベーク、または第1の加熱ということがある。加熱(後の工程における加熱においても同様)は、ホットプレート、オーブン、ファーネス等を用いて行うことができる。本発明によるレジスト膜厚膜化組成物を適用するレジスト膜は、プリベーク後の膜厚が1.0~3.0μmであるものが好ましく、より好ましくは1.3~2.5μm、であるものがより好ましい。
【0039】
レジスト組成物は、特に限定されないが、好ましくはアルカリ溶解速度が100~3000Åである、より好ましくは400~1,000Åであるノボラック樹脂を含んでなることが好ましく、液晶表示素子製造分野で用いられるレジスト組成物が好適に使用される。ここで、本発明において、アルカリ溶解速度は、2.38%(±1%が許容される)水酸化テトラメチルアンモニウム(以下、TMAHという)水溶液に対する樹脂膜の溶解時間から測定される。なお、半導体製造分野で用いられるレジスト組成物のノボラック樹脂のアルカリ溶解速度は、通常100Å以上400Å未満である。
ノボラック樹脂は、従来公知の、アルカリ可溶性樹脂とキノンジアジド基を含む感光剤とを含有する感光性組成物において用いられるノボラック樹脂であることが好ましい。本発明において好ましく用いることができるノボラック樹脂は、種々のフェノール類の単独あるいはそれらの複数種の混合物をホルマリンなどのアルデヒド類で重縮合することによって得られる。
【0040】
本発明のレジスト組成物は、好ましくは感光剤を含む。感光剤は、好ましくはキノンジアジド基を有する感光剤であり、例えばナフトキノンジアジドスルホン酸クロリドやベンゾキノンジアジドスルホン酸クロリドのようなキノンジアジドスルホン酸ハライドと、この酸ハライドと縮合反応可能な官能基を有する低分子化合物または高分子化合物とを反応させることによって得られるものが好ましい。ここで酸ハライドと縮合可能な官能基としては水酸基、アミノ基等が挙げられ、特に水酸基が好適である。水酸基を有する低分子化合物としては、例えばハイドロキノン、レゾルシン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4’-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4,6’-ペンタヒドロキシベンゾフェノン等が挙げられ、水酸基を有する高分子化合物としては、ノボラック樹脂、ポリビニルフェノール等が挙げられる。また、キノンジアジドスルホン酸ハライドと水酸基を有する化合物の反応物は、単一エステル化物でもエステル化率の異なる二種以上の混合物であっても良い。これらキノンジアジド基を有する感光剤は、本発明においては、感光性組成物中の樹脂成分100質量部に対し、通常1~30質量部、好ましくは15~25質量部の量で用いられる。
【0041】
本発明に用いられるレジスト組成物は、溶剤を含む。溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテー卜等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、乳酸メチル、乳酸エチル等の乳酸エステル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メチルエチルケトン、2-ヘプタノン、シクロヘキサノン等のケトン類、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類、γ-ブチロラクトン等のラクトン類等をあげることができる。これらの溶剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
溶剤の配合比は、塗布方法や塗布後の膜厚の要求によって異なる。例えば、スプレーコートの場合は、ノボラック樹脂と感光剤と任意の成分との総質量を基準として、90%以上になったりするが、ディスプレイの製造で使用される大型ガラス基板のスリット塗布では、通常50%以上、好ましくは60%以上、通常90%以下、好ましくは85%以下とされる。
本発明のレジスト組成物はポジ型でもネガ型でもよく;好ましくはポジ型である。
【0042】
本発明に用いられるレジスト組成物に含まれうる構成成分としては、その他には、例えば、界面活性剤、密着増強剤等が挙げられる。
【0043】
工程(2a)
工程(2a)は、レジスト膜を露光する工程である。レジスト膜を所望のマスクを介してパターニングのため露光する。このときの露光波長はレジスト組成物を露光する際に利用されている、g線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)などの単波長や、g線とh線の混合波長、ブロードバンドと呼ばれるg線、h線、i線が混合したものなど、いずれのものであってもよい。露光が含む波長は13.5~450nmであり;好ましくは248~450nmであり;より好ましくは300~450nmであり;さらに好ましくは350~450nmである。露光量は、15~80mJ/cm2であることが好ましく;より好ましくは20~60mJ/cm2である。
【0044】
本発明において、露光装置は、限界解像度が1.5~5.0μm;より好ましくは1.5~4.0μmである装置において好適である。ここで、本発明において限界解像度は、特許文献1[0024]の記載と同様に定義される。工程(2a)における露光が、限界解像度が1.5~5.0μmである露光装置を用いて行われることが好適である。
【0045】
露光は、開口数NAが0.08~0.15(好ましくは0.083~0.145;より好ましくは0.083~0.10)である投影レンズを用いて行われることが好ましい。露光にレンズを使用しない(いわゆるミラープロジェクション方式)場合は、厳密にはNAが存在しないが、上記の限界解像度が同等程度である場合の開口数NAと置き換えて、解釈するものとする。工程(2a)における露光が、開口数が0.08~0.15である投影レンズを用いて行われることが好適である。
【0046】
工程(2b)
工程(2b)は、レジスト膜を現像し、レジストパターンを形成させる工程である。ポジ型の場合の好適な態様として、露光後、アルカリ現像液にて現像することにより、露光部が溶け出し、未露光部だけが残り、ポジパターンが形成される。アルカリ現像液は、TMAH等の第四級アミンの水溶液や、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の無機水酸化物の水溶液が一般的である。ここで、露光部が現像液に溶け出し、未露光部が基板上に残り、レジストパターンが形成される。
【0047】
レジストパターン形成後、レジスト膜厚膜化組成物適用前に、レジストパターンを加熱する工程をさらに含むことができる。この加熱を、ポストベーク、または第2の加熱ということがある。このポストベークの目的は、エッチング耐性の向上である。ポストベークの温度は、好ましくは110~150℃であり、より好ましくは130~140℃である。ポストベークの時間は、ホットプレートの場合に、好ましくは30~300秒間であり、好ましくは60~180秒間である。
(2b)レジスト層を現像し、レジストパターンを形成する工程の後に、((2b)-2)前記レジストパターンを全面露光する工程、を有することも本発明の厚膜化パターンの製造方法の好適な一態様である。(2b)-2工程の露光の限界解像度および開口数の条件の好適例は、上述の(2a)と同様である。
【0048】
以降、
図1を参照しながら説明する。
図1では(2a)、(2b)、(2c)の順で工程を行う。
図1(a)は、基板1上にレジストパターン2が形成された状態を示す。形成されたレジストパターンの断面形状は、テーパー形状であることが好ましい。本発明において、レジストパターンがテーパー形状の場合に、その後のドライエッチング等で配線加工を行う際に、なだらかな形状が転写される。。
【0049】
必要に応じてポストベークされたレジストパターンを全面露光する工程((2b)-2)をさらに含むことも好ましい。350~450nmの露光波長でマスクを介せずあるいはブランクマスク(すべての光が透過)を使って、全面露光を行う。全面露光することにより、最初のパターニング露光時には未露光部であったところが露光されるため、感光剤から酸が発生する。不溶化層形成の際に、この酸が触媒として機能し、架橋を促進すると考えられる。
【0050】
工程(2c)
工程(2c)は、レジストパターンの表面にレジスト膜厚膜化組成物を適用し、レジスト膜厚膜化層を形成させる工程である。レジスト膜厚膜化組成物の適用は、従来知られた何れの方法であってもよいが、レジスト組成物の適用のときと同様の方法で行われることが好ましい。このとき、レジスト膜厚膜化組成物の膜厚は任意でよい。本発明の態様として、ベアシリコン上で塗布した場合の膜厚は、50nm~10μmが好適であり;1.0~8.0μmがより好適であり;3.0~6.0μmがさらに好適である。塗布後、必要に応じてプリベークし(例えば、60~90℃、15~90秒)、レジスト膜厚膜化層を形成させる。
図1(b)は、形成されたレジストパターン上に、レジスト膜厚膜化組成物を塗布し、レジスト膜厚膜化層3が形成された状態を示す。
【0051】
工程(3)
工程(3)は、レジストパターンおよびレジスト膜厚膜化層を加熱し、レジスト膜厚膜化層のレジストパターン近傍領域を硬化させて不溶化層4を形成させる工程である。この工程における加熱を、ミキシングベーク、または第3の加熱というということがある。
図1(c)は、形成されたレジスト膜厚膜化層とレジストパターンとをミキシングベークした後に、不溶化層4が形成された状態を示す。ミキシングベークにより、例えば、レジスト組成物中のポリマーと、レジスト膜厚膜化層中のポリマーとが、混合したり、または架橋剤によって架橋され、レジストパターンの近傍領域が硬化し、不溶化層が形成される。ミキシングベークの温度およびベーク時間は、使用されるレジスト、レジスト膜厚膜化組成物で使用される材料、ターゲットとする微細パターンの線幅などにより適宜決定される。ミキシングベークの温度は、50~140℃が好ましく;80~120℃がより好ましい。ベーク時間は90~300秒が好ましく、150~240秒がより好ましい。
【0052】
工程(4)
工程(4)は、レジスト膜厚膜化層の未硬化部分を除去する工程である。
図1(d)は、レジスト膜厚膜化層の未硬化部分が除去され、厚膜化パターン5が形成された状態を示す。未硬化部分の除去方法については特に限定されないが、レジスト膜厚膜化層に、水、水に可溶性の有機溶剤と水との混合液、またはアルカリ水溶液を接触させることによって、前記未硬化部分を除去することが好ましい。より好ましくは、イソプロピルアルコールを含む水溶液、TMAHを含む水溶液である。なお、除去の条件によって、不溶化層の厚さが変化することがある。例えば、液体との接触時間を長くすることで、不溶化層の厚さは薄くなることがある。以上の処理により、パターンのスペース部分が実効的に微細化され、厚膜化パターンを得ることができる。
【0053】
ここで、
図1(d)に示すように、レジストパターンのボトムの位置と厚膜化パターンのボトムの位置との距離をシュリンク量6と定義する。シュリンク量の測定方法は、例えば、断面観察により、レジストパターンのボトムのスペース幅またはホール径を4点測定し、平均スペース幅またはホール径(S
1)とし、同様に微細パターン形成後の平均スペース幅またはホール径(S
2)を測定する。S
2-S
1を2で割った値をシュリンク量として、算出することができる。
厚膜化パターンの断面形状は、テーパー形状であることが好ましい。
【0054】
工程(4)の後に、厚膜化パターンをさらに加熱してパターンを変形させる工程(4)-2、をさらに含むことも好ましい。本発明において、この工程(4)-2をセカンドポストベークまたは第4の加熱とよぶことがある。工程(4)-2により、厚膜化パターンのスペース部分がさらに微細化された、厚膜化パターン7を得る。工程(4)-2では、厚膜化パターンに熱フローが起こり、パターンの変形が起こると考えられる。セカンドポストベークの温度は、好ましくは100~145℃であり;より好ましくは120~130℃である。ベーク時間は、90~300秒であることが好ましく;より好ましくは150~240秒である。
図1(e)は、セカンドポストベーク後の、厚膜化パターン7が形成された状態を示す。工程(4)-2が行われる場合は、
図1(e)に示すように、レジストパターンのボトムの位置とセカンドベーク後の厚膜化パターンのボトムの位置との距離をシュリンク量8と定義する。また、理論に拘束されないが、窒素含有化合物(B)が含まれることで、厚膜化パターンの軟化点が下がってフローしやすくなり、シュリンク量が多くなると考えられる。
【0055】
[加工基板の製造方法]
本発明による加工基板の製造方法は、以下の製造方法を含んでなる。
上記に記載の方法によって厚膜化パターンを形成が形成された基板を準備する工程、および
(5)エッチングで前記基板を加工する工程。
【0056】
工程(5)
工程(5)は、厚膜化パターンをマスクとして、直接基板の加工を行ってもよい。別の態様として、厚膜化パターンをマスクとして下の層をエッチングし、エッチングされた下の層をマスクとして基板を加工する方法も挙げられる。
好適には工程(5)では厚膜化パターンをマスクとして、直接基板の加工を行う。下地となる各種基板を、ドライエッチング法、ウェットエッチング法、イオン注入法、金属めっき法などを用いて、加工することができる。例えば、ドライエッチングやウェットエッチングによって基板を蝕刻加工して凹部を形成させ、その凹部に導電性材料を充填して回路構造を形成させたり、金属メッキ法によって厚膜化パターンで覆われていない部分に金属層を形成させて回路構造を形成させたりすることもできる。本発明による方法によれば、厚膜化パターンと下地基板との密着性を高くできるので、ウェットエッチングに好適である。厚膜であるため、ドライエッチングに用いることも好適な一態様である。
【0057】
基板の加工の過程で、厚膜化パターンは除去される。必要に応じて、基板に配線を形成する加工がされ、デバイスが製造される。デバイスは、好ましくは半導体デバイスまたは表示デバイスであり;より好ましくは表示デバイスである。本発明において表示デバイスとは、表示面に画像(文字を含む)を表示する素子を意味する。表示素子とは、好適にはフラットパネルディスプレイ(FPD)である。FPDとは、好適には液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機EL(OLED)ディスプレイ、フィールド・エミッション・ディスプレイ(FED)であり;より好適には液晶ディスプレイである。
【実施例0058】
本発明を諸例により説明すると以下の通りである。なお、本発明の態様はこれらの例のみに限定されるものではない。
【0059】
[比較組成物Aの調製]
AZ R200(Merck Electronics株、以下Merckとする)の固形成分を9.9質量%としたものを準備し、これを比較組成物A(以降、AZ R200(9.9質量%)ということがある)とする。
AZ R200は、ポリビニルアルコール樹脂と水とを含み、窒素含有化合物(B)を含まない。
【0060】
[レジスト膜厚膜化組成物Aの調製]
100質量部のAZ R200(9.9質量%)に、窒素含有化合物(B)として0.083質量部の2-ピリジンエタノールを溶解させる。得られる溶液を0.2μmのフッ化樹脂フィルターでろ過して、レジスト膜厚膜化組成物Aを得る。
【0061】
[レジスト膜厚膜化組成物Bの調製]
2-ピリジンエタノールを0.083質量部から0.165質量部に変更する以外は、上記のレジスト膜厚膜化組成物Aの調製と同様にして、レジスト膜厚膜化組成物Bを得る。
【0062】
[比較組成物Bの調製]
2-ピリジンエタノール0.083質量部をジエチルアニリン0.083質量部に変更する以外は、上記のレジスト膜厚膜化組成物Aの調製と同様にして、比較組成物Bを得る。
【0063】
[レジスト膜厚膜化組成物C~E、および比較組成物Cの調製]
表1に記載のポリマー(A)、窒素含有化合物(B)、架橋剤(D)および界面活性剤(E)を溶媒(C)に溶解させる。得られる溶液を0.2μmのフッ化樹脂フィルターでろ過して、それぞれレジスト膜厚膜化組成物C~Eおよび比較組成物Cを得る。
【表1】
表中の成分について、以下に説明する。
・V-7154:ポリビニルアルコール-ポリビニルピロリドングラフトコポリマー、第一工業製薬
・ニカラックMX-280:三和ケミカル
【化9】
・サーフロンS-231:パーフルオロアルキルベタイン(アルキル基の炭素数6)、AGCセイミケミカル
【0064】
[シュリンク量評価1]
4インチシリコンウエハにレジスト組成物であるAZ SFP-1500(10cP)(Merck)をスピンコーター(Dual-1000、リソテックジャパン)で塗布し、ホットプレートで110℃、160秒プリベークし、レジスト層を形成させる。なお、AZ SFP-1500(10cP)のノボラック樹脂のアルカリ溶解速度は約500Åである。プリベーク後のレジスト層の膜厚は1.5μmである。
次に、理論上、ライン=3.0μm、スペース=3.0um、となるようにマスクをセットし、ステッパー(NES2W-ghi06(NA=0.13)、ニコンエンジニアリング)で22.0mJ/cm
2で、レジスト層をg線、h線混合波長で露光する。23℃のTMAH2.38%現像液で60秒間現像し、レジストパターンを形成させる。得られたレジストパターンをホットプレートで140℃、180秒間ポストベークする。この時点でSEM切片を作成すると、ライン幅は2.87μmである。
ポストベーク後のレジストパターンを露光機(PLA-501F、キヤノン)で全面露光する。このときの波長は、g線、h線、i線混合波長である。スピンコーター(MS-A100、ミカサ)でレジスト膜厚膜化組成物Aをレジストパターンの表面に塗布し、レジスト膜厚膜化層を形成させる。レジスト膜厚膜化層をホットプレートで100℃、180秒ミキシングベークをすることにより不溶化層を形成させる。ミキシングベーク後の膜厚は3.0μmである。R2 Developer(Merck)で現像することにより、未硬化部分を除去し、厚膜化パターンを得る。得られた厚膜化パターンをホットプレートで140℃で180秒間ポストベークし、厚膜化パターンを変形させる。この時点でSEM切片を作成すると、ライン幅は4.28μmであり、シュリンク量は0.71μmと算出される。
レジスト膜厚膜化組成物Aを、レジスト膜厚膜化組成物B、比較組成物A、Bに変更する以外は、上記と同様に、シュリンク幅の算出を行う。得られた結果を表2に記載する。
本発明の窒素含有化合物(B)を含み実施例であるレジスト膜厚膜化組成物を用いることで、比較組成物と比べてシュリンク量を大きくすることができることが確認される。
【表2】
【0065】
[シュリンク量評価2]
4インチシリコンウエハにレジスト組成物であるAZ SFP-1500(10cP)をスピンコーター(Dual-1000)で塗布し、ホットプレートで110℃、160秒プリベークし、レジスト層を形成させる。プリベーク後のレジスト層の膜厚は1.5μmである。
次に、理論上、ライン=3.0μm、スペース=3.0um、となるようにマスクをセットし、ステッパー(NES2W-ghi06(NA=0.13))で22.0mJ/cm
2で、レジスト層をg線、h線混合波長で露光する。23℃のTMAH2.38%現像液で60秒間現像し、レジストパターンを形成させる。得られたレジストパターンをホットプレートで140℃、180秒間ポストベークする。この時点でSEM切片を作成すると、ライン幅は2.79μmである。
ポストベーク後のレジストパターンを露光機(PLA-501F)で全面露光する。このときの波長は、g線、h線、i線混合波長である。スピンコーター(MS-A100)でレジスト膜厚膜化組成物Cをレジストパターンの表面に塗布し、レジスト膜厚膜化層を形成させる。レジスト膜厚膜化層をホットプレートで100℃、180秒ミキシングベークをすることにより不溶化層を形成させる。ミキシングベーク後の膜厚は3.0μmである。DIWで現像することにより、未硬化部分を除去し、厚膜化パターンを得る。得られた厚膜化パターンをホットプレートで140℃で180秒間ポストベークし、厚膜化パターンを変形させる。この時点でSEM切片を作成すると、ライン幅は3.31μmであり、シュリンク量は0.26μmと算出される。
レジスト膜厚膜化組成物Cを、レジスト膜厚膜化組成物Dまたは比較組成物Cに変更する以外は、上記と同様に、シュリンク幅の算出を行う。得られた結果を表3に記載する。
本発明の窒素含有化合物(B)を含み実施例であるレジスト膜厚膜化組成物を用いることで、比較組成物と比べてシュリンク量を大きくすることができることが確認される。
【表3】
【0066】
[密着性評価1]
ITO成膜基板(オプトサイエンス)にレジスト組成物であるAZ SFP-1500(10cP)をスピンコーター(Dual-1000)で塗布し、ホットプレートで110℃、160秒プリベークし、レジスト層を形成させる。プリベーク後のレジスト層の膜厚は1.5μmである。
次に、理論上、ライン=6.0μm、スペース=6.0um、となるようにマスクをセットし、ステッパー(NES2W-ghi06(NA=0.13))で22.0mJ/cm
2で、レジスト層をg線、h線混合波長で露光する。23℃のTMAH2.38%現像液で60秒間現像し、レジストパターンを形成させる。得られたレジストパターンをホットプレートで140℃、180秒間ポストベークする。この時点でSEM切片を作成すると、ライン幅は6.08μmである。
ポストベーク後のレジストパターンを露光機(PLA-501F)で全面露光する。このときの波長は、g線、h線、i線混合波長である。スピンコーター(MS-A100)でレジスト膜厚膜化組成物Aをレジストパターンの表面に塗布し、レジスト膜厚膜化層を形成させる。レジスト膜厚膜化層をホットプレートで100℃、180秒間ミキシングベークをすることにより不溶化層を形成させる。ミキシングベーク後の膜厚は3.0μmである。R2 Developer(Merck)で現像することにより、未硬化部分を除去し、厚膜化パターンを得る。得られた厚膜化パターンをホットプレートで150℃で180秒間ポストベークし、厚膜化パターンを変形させる。この時点でSEM切片を作成すると、ライン幅は6.81μmであり、シュリンク量は0.37μmと算出される。
得られた厚膜化パターンを23℃のITOエッチャント(塩酸/塩化鉄(III)系)でジャストエッチングの3倍の時間エッチングする。ここで、ジャストエッチングとは、ITO層が消失し、その下地層表面が現れてちょうどエッチング終了する時間を意味する。
その後、残った厚膜化パターンを40℃のTOK-106(東京応化工業)で180秒間処理することにより除去し、メタル配線を得る。この時点でSEM切片を作成すると、メタル配線のライン幅は、4.66μmである。
レジスト膜厚膜化組成物Aを、レジスト膜厚膜化組成物B、比較組成物A、Bに変更する以外は、上記と同様に、シュリンク幅の算出およびメタル配線のライン幅の測定を行う。得られた結果を表4に記載する。
本発明の窒素含有化合物(B)を含み実施例であるレジスト膜厚膜化組成物を用いることで、比較組成物と比べてシュリンク量を大きくすることができ、メタル配線のライン幅を大きくすることができることが確認される。
【表4】
【0067】
[密着性評価2]
Cr成膜基板(オプトサイエンス)にレジスト組成物であるAZ SFP-1500(10cP)をスピンコーター(Dual-1000)で塗布し、ホットプレートで110℃、160秒プリベークし、レジスト層を形成させる。プリベーク後のレジスト層の膜厚は1.5μmである。
次に、理論上、ライン=6.0μm、スペース=6.0um、となるようにマスクをセットし、ステッパー(NES2W-ghi06(NA=0.13))で22.0mJ/cm
2で、レジスト層をg線、h線混合波長で露光する。23℃のTMAH2.38%現像液で60秒間現像し、レジストパターンを形成させる。得られたレジストパターンをホットプレートで140℃、180秒間ポストベークする。この時点でSEM切片を作成すると、ライン幅は6.33μmである。
ポストベーク後のレジストパターンを露光機(PLA-501F)で全面露光する。このときの波長は、g線、h線、i線混合波長である。スピンコーター(MS-A100)でレジスト膜厚膜化組成物Cをレジストパターンの表面に塗布し、レジスト膜厚膜化層を形成させる。レジスト膜厚膜化層をホットプレートで100℃、180秒間ミキシングベークをすることにより不溶化層を形成させる。ミキシングベーク後の膜厚は3.0μmである。DIWで現像することにより、未硬化部分を除去し、厚膜化パターンを得る。得られた厚膜化パターンをホットプレートで150℃で180秒間ポストベークし、厚膜化パターンを変形させる。この時点でSEM切片を作成すると、ライン幅は6.80μmであり、シュリンク量は0.24μmと算出される。
得られた厚膜化パターンを23℃のCrエッチャント(関東化学)でジャストエッチングの3倍の時間エッチングする。ここで、ジャストエッチングとは、Cr層が消失し、その下地層表面が現れてちょうどエッチング終了する時間を意味する。
その後、残った厚膜化パターンを40℃のTOK-106で180秒間処理することにより除去し、メタル配線を得る。この時点でSEM切片を作成すると、メタル配線のライン幅は、5.24μmである。
レジスト膜厚膜化組成物Cを、レジスト膜厚膜化組成物Eまたは比較組成物Cに変更する以外は、上記と同様に、シュリンク幅の算出およびメタル配線のライン幅の測定を行う。得られた結果を表5に記載する。
本発明の窒素含有化合物(B)を含む実施例であるレジスト膜厚膜化組成物Eを用いることで、比較組成物Cと比べてシュリンク量を大きくし、メタル配線のライン幅を大きくすることができることが確認される。本発明の窒素含有化合物(B)を含む実施例であるレジスト厚膜化組成物Cを用いると、比較組成物Cと比べてシュリンク量はわずかに少ないが、メタル配線のライン幅を大きくすることができることが確認される。理論に拘束されないが、レジスト膜厚膜化組成物Cを用いると、形成される厚膜化パターンまたは不溶化層の基板への密着性が優れているため、エッチャントがパターンの底部から染み込むことなく、より有効にマスクとしての機能を果たすことができると考えられる。
【表5】