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特開2022-126300ウェーハ収納容器の洗浄装置及びウェーハ収納容器の洗浄方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126300
(43)【公開日】2022-08-30
(54)【発明の名称】ウェーハ収納容器の洗浄装置及びウェーハ収納容器の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20220823BHJP
   B08B 3/02 20060101ALI20220823BHJP
   B08B 3/04 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
H01L21/304 648E
B08B3/02 A
B08B3/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021024296
(22)【出願日】2021-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 史利
(72)【発明者】
【氏名】若杉 勝郎
【テーマコード(参考)】
3B201
5F157
【Fターム(参考)】
3B201AA21
3B201AB01
3B201BB02
3B201BB92
5F157BB03
5F157BB09
5F157CB11
5F157CC21
5F157CF42
5F157CF44
5F157CF93
5F157DC90
(57)【要約】
【課題】ウェーハ収納容器の洗浄性能を向上できるウェーハ収納容器の洗浄装置及びウェーハ収納容器の洗浄方法を提供する。
【解決手段】ウェーハ収納容器の洗浄装置1は、容器本体11と蓋体12とを有するウェーハ収納容器2を格納した格納治具3を収容可能な洗浄槽31と、洗浄槽31内に洗浄液等を供給する給液ノズル32A~32Hと、洗浄槽31外に排液を排出する排液ノズル34とを備える。容器本体11は容器開口部11Bに対向する奥壁11Aを有する。給液ノズル32A~32Hは容器開口部11Bを下方に向けた容器本体11が、格納治具3に載置されて洗浄槽31に収納された収納状態で洗浄液等を吐出する各給液開口部32AA~32HAが奥壁11Aの内側に対向するように設けられ、排液ノズル34は前記収納状態で排液を吸い込む排出開口部34Aが奥壁11Aの内側の中央に対向するように設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のウェーハを収納する容器本体と、前記容器本体の容器開口部を塞ぐ蓋体とを有するウェーハ収納容器を、流体流通自在な格納治具に格納して洗浄するウェーハ収納容器の洗浄装置であって、
前記ウェーハ収納容器を格納した前記格納治具を収容可能な洗浄槽と、
前記洗浄槽内に洗浄液又は洗浄水を供給する複数本の給液ノズルと、
前記洗浄槽外に排液を排出する排液ノズルと、
を備え、
前記容器本体は、前記容器開口部に対向する奥壁を有し、
前記複数本の前記給液ノズルの少なくとも一部は、前記容器開口部を下方に向けた前記容器本体が、前記格納治具に載置されて前記洗浄槽に収納された収納状態において、前記洗浄液又は前記洗浄水を吐出する各給液開口部が前記奥壁の内側に対向するように設けられ、
前記排液ノズルは、前記収納状態において、前記排液を吸い込む排出開口部が前記奥壁の内側の中央に対向するように設けられている
ウェーハ収納容器の洗浄装置。
【請求項2】
請求項1に記載のウェーハ収納容器の洗浄装置において、
前記容器本体内へ前記洗浄液又は前記洗浄水を供給する給液流量が、前記排液ノズルを介して前記容器本体内から排出される排液流量よりも多くなるように構成されている
ウェーハ収納容器の洗浄装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のウェーハ収納容器の洗浄装置において、
前記格納治具を、前記洗浄槽内の洗浄液又は洗浄水に浸漬させる浸漬状態と、前記浸漬状態から洗浄液又は洗浄水外に引き上げる引上状態とに移動させる浸漬脱出移動機構を備えている
ウェーハ収納容器の洗浄装置。
【請求項4】
複数枚のウェーハを収納する容器本体と、前記容器本体の容器開口部を塞ぐ蓋体とを有するウェーハ収納容器を、流体流通自在な格納治具に格納して洗浄するウェーハ収納容器の洗浄方法であって、
前記容器本体は、前記容器開口部に対向する奥壁を有し、
前記容器本体の前記容器開口部を下方に向けた状態で前記ウェーハ収納容器を格納した前記格納治具を洗浄槽に充填された洗浄液又は洗浄水に浸漬する浸漬工程を備え、
前記ウェーハ収納容器の浸漬状態において、前記奥壁の内側に向けて前記洗浄液又は前記洗浄水を供給し、前記奥壁の内側の中央近傍から排液を排出する
ウェーハ収納容器の洗浄方法。
【請求項5】
請求項4に記載のウェーハ収納容器の洗浄方法において、
前記浸漬工程では、前記容器本体内へ前記洗浄液又は前記洗浄水を供給する給液流量を、前記容器本体内から排出される排液流量よりも多くする
ウェーハ収納容器の洗浄方法。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載のウェーハ収納容器の洗浄方法において、
前記格納治具を、前記洗浄槽内の洗浄液又は洗浄水に浸漬させる浸漬状態と、前記浸漬状態から洗浄液又は洗浄水外に引き上げる引上状態とに少なくとも1往復以上移動させる浸漬引上移動工程を備えている
ウェーハ収納容器の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚のウェーハを収納する容器本体と、この容器本体の容器開口部を塞ぐ蓋体とを有するウェーハ収納容器を洗浄するウェーハ収納容器の洗浄装置及びウェーハ収納容器の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェーハ収納容器の洗浄方式には、シャワー方式と浸漬方式とがある。シャワー方式は、ウェーハ収納容器に洗浄液又は洗浄水(例えば、純水)を直接噴射して洗浄する方式である。浸漬方式は、第1の洗浄槽に充填された洗浄液にウェーハ収納容器を浸漬させた後、洗浄液を除去するために第2の洗浄槽に充填された洗浄水にウェーハ収納容器を浸漬させて洗浄する方式である。
【0003】
特許文献1には、ウェーハ収納容器を構成する容器本体のパッキンと接触する部分を高圧ジェット等により局所的に洗浄する局所洗浄工程と、前記シャワー方式又は前記浸漬方式によりウェーハ収納容器を全体的に洗浄する全体洗浄工程と、を有するウェーハ収納容器の洗浄方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-72215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来一般のウェーハ収納容器を構成する容器本体11は、例えば、図9に示すように、容器開口部11Bに対向して奥壁11Aが形成されている。この奥壁11A内側には、中央に中央凹部22が形成されているとともに、中央凹部22周辺に周辺凹部21A及び21Bが形成されている。また、周辺凹部21A及び21Bと、中央凹部22との間には凸部23A及び23Bが形成されている。
【0006】
容器本体11を、ウェーハ収納容器の洗浄装置を構成する洗浄槽内の洗浄液等に容器開口部11Bを下方に向けて浸漬させると、前記周辺凹部21A及び21Bや前記中央凹部22に空気が残ることがある。この場合、前記周辺凹部21A及び21Bや前記中央凹部22に洗浄液等が届かず、十分な洗浄を行えない。
【0007】
また、ウェーハ収納容器を構成する蓋体12には、図10(A)に示すように、蓋体12を容器本体11に固定施錠する一対のラッチ機構24や、図10(B)に示すように、ウェーハを容器本体11内側に押し付け固定するフロントリテーナ25が形成されている。この蓋体12を前記シャワー方式及び前記浸漬方式を用いて洗浄する際、ラッチ機構24やフロントリテーナ25等の細部や空洞まで洗浄液等が届かず、十分な洗浄を行えない場合がある。
【0008】
さらに、前記浸漬方式では、容器本体11を洗浄液に浸漬させた後、洗浄水に浸漬させているが、洗浄水により洗浄液を十分に洗い流せず、容器本体11内に洗浄液の液残りが発生する場合がある。この液残りがあると、容器本体11が経時変化により劣化したり、水垢による染みなどの外観異常を引き起こしたりする場合がある。
【0009】
特許文献1に記載された従来技術は、前記課題を考慮して構成されていないため、前記課題を解決できていない。
よって、ウェーハ収納容器の洗浄性能を向上できるウェーハ収納容器の洗浄装置及びウェーハ収納容器の洗浄方法が望まれている。
【0010】
本発明は、ウェーハ収納容器の洗浄性能を向上できるウェーハ収納容器の洗浄装置及びウェーハ収納容器の洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、複数枚のウェーハを収納する容器本体と、前記容器本体の容器開口部を塞ぐ蓋体とを有するウェーハ収納容器を、流体流通自在な格納治具に格納して洗浄するウェーハ収納容器の洗浄装置であって、前記ウェーハ収納容器を格納した前記格納治具を収容可能な洗浄槽と、前記洗浄槽内に洗浄液又は洗浄水を供給する複数本の給液ノズルと、前記洗浄槽外に排液を排出する排液ノズルと、を備え、前記容器本体は、前記容器開口部に対向する奥壁を有し、前記複数本の前記給液ノズルの少なくとも一部は、前記容器開口部を下方に向けた前記容器本体が、前記格納治具に載置されて前記洗浄槽に収納された収納状態において、前記洗浄液又は前記洗浄水を吐出する各給液開口部が前記奥壁の内側に対向するように設けられ、前記排液ノズルは、前記収納状態において、前記排液を吸い込む排出開口部が前記奥壁の内側の中央に対向するように設けられている。
【0012】
本発明に係るウェーハ収納容器の洗浄装置において、前記容器本体内へ前記洗浄液又は前記洗浄水を供給する給液流量が、前記排液ノズルを介して前記容器本体内から排出される排液流量よりも多くなるように構成されている。
【0013】
本発明に係るウェーハ収納容器の洗浄装置において、前記格納治具を、前記洗浄槽内の洗浄液又は洗浄水に浸漬させる浸漬状態と、前記浸漬状態から洗浄液又は洗浄水外に引き上げる引上状態とに移動させる浸漬脱出移動機構を備えている。
【0014】
本発明は、複数枚のウェーハを収納する容器本体と、前記容器本体の容器開口部を塞ぐ蓋体とを有するウェーハ収納容器を、流体流通自在な格納治具に格納して洗浄するウェーハ収納容器の洗浄方法であって、前記容器本体は、前記容器開口部に対向する奥壁を有し、前記容器本体の前記容器開口部を下方に向けた状態で前記ウェーハ収納容器を格納した前記格納治具を洗浄槽に充填された洗浄液又は洗浄水に浸漬する浸漬工程を備え、前記ウェーハ収納容器の浸漬状態において、前記奥壁の内側に向けて前記洗浄液又は前記洗浄水を供給し、前記奥壁の内側の中央近傍から排液を排出する。
【0015】
本発明に係るウェーハ収納容器の洗浄方法において、前記浸漬工程では、前記容器本体内へ前記洗浄液又は前記洗浄水を供給する給液流量を、前記容器本体内から排出される排液流量よりも多くする。
【0016】
本発明に係るウェーハ収納容器の洗浄方法において、前記格納治具を、前記洗浄槽内の洗浄液又は洗浄水に浸漬させる浸漬状態と、前記浸漬状態から洗浄液又は洗浄水外に引き上げる引上状態とに少なくとも1往復以上移動させる浸漬引上移動工程を備えている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ウェーハ収納容器の洗浄性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係るウェーハ収納容器の洗浄装置によるウェーハ収納容器の洗浄状態を示す断面状態の正面模式図である。
図2図1に示すウェーハ収納容器の洗浄装置の平面模式図である。
図3図2のA-A’断面図である。
図4図1に示すウェーハ収納容器の洗浄装置で使用する格納治具にウェーハ収納容器を格納した状態を示す断面状態の正面模式図である。
図5】ウェーハ収納容器の洗浄装置からウェーハ収納容器を格納した格納治具を引き上げた状態を示す断面状態の正面模式図である。
図6】ウェーハ収納容器の洗浄装置内の洗浄液等へウェーハ収納容器を格納した格納治具を浸漬させた状態を示す断面状態の正面模式図である。
図7】本発明の変形例を説明するための図であり、(A)は給液ノズルの先端に液中噴射ノズルを取り付けた例を示す一部断面斜視図であり、(B)は排液ノズルの先端にフロートを取り付けた例を示す斜視図である。
図8】実施例及び比較例の洗浄方法によって洗浄した容器本体内に満たした純水0.1ml当たりに存在する粒径0.1μm以上のパーティクルの平均個数を測定した結果の一例を示すグラフである。
図9】ウェーハ収納容器を構成する容器本体の構造の一例を示す容器開口部を下方に向けた状態における断面状態の正面模式図である。
図10】ウェーハ収納容器を構成する蓋体の構造の一例を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は裏面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
[ウェーハ収納容器の洗浄装置1の構成]
ウェーハ収納容器の洗浄装置1は、図1図3に示すように、複数枚のウェーハを収納する容器本体11と、容器本体11の容器開口部11Bを塞ぐ蓋体12とを有するウェーハ収納容器2を流体流通自在な格納治具3に格納して洗浄する。
【0020】
ウェーハ収納容器の洗浄装置1は、洗浄槽31と、複数本の給液ノズル32、この実施形態では、8本の給液ノズル32A~32Hと、複数本の側方給液ノズル33、この実施形態では、2本の側方給液ノズル33A及び33Bと、排液ノズル34と、浸漬脱出移動機構35とを備えている。
【0021】
洗浄槽31は、ウェーハ収納容器2を格納した格納治具3を収容可能な大きさに形成されている。洗浄槽31は、略矩形箱状であり、上端に槽開口部31Aを有している。
【0022】
各給液ノズル32A~32Hは、容器開口部11Bを下方に向けて容器本体11が格納治具3に載置されて洗浄槽31内(図2に示す1点鎖線DLの枠)に収納された収納状態において、各給液開口部32AA~32HAが容器本体11の奥壁11Aに向けて洗浄液又は洗浄水(例えば、純水)を吐出できるように設けられている(図1及び図6参照)。
【0023】
各給液ノズル32A~32Hは、図2に示すように、接続管36A~36Dで順次C字形に接続され、接続管36Eを介して給液管37に接続されている。
【0024】
接続管36Aは給液ノズル32A~32Cの各下端及び接続管36Bに接続され、接続管36Bは給液ノズル32A、32D及び32Fの各下端並びに接続管36C及び36Eに接続されている。接続管36Cは給液ノズル32F~32Hの各下端及び接続管36Dに接続され、接続管36Dは給液ノズル32E及び32Hの各下端に接続されている。
【0025】
給液管37の上端37Aは、図1に示すように、洗浄槽31の槽底部31Bを貫通して洗浄槽31内で接続管36Eと接続されている。給液管37の下端37Bは、図示しない給液ポンプに接続されている。
【0026】
排液ノズル34は、容器開口部11Bを下方に向けて容器本体11が格納治具3に載置されて洗浄槽31内に収納された収納状態において、排液を吸い込む排出開口部34Aが奥壁11Aの内側の中央に近接するように、槽底部31Bを貫通して設けられている(図1及び図6参照)。排液ノズル34の下端34Bは、図示しない排液ポンプに接続されている。ここにおいて、排液ノズル34の高さは、本実施形態では、給液ノズル32A~32Hの高さとほぼ等しい。
【0027】
前記収納状態における容器本体11の奥壁11Aと、前記各給液開口部32AA~32HAとの距離は、容器本体11の種類や奥壁11Aの形状によって異なるが、例えば、50mm以下が好ましい。前記距離が50mm以下であれば、前記奥壁11A各部に洗浄液が届き、容器本体11内部を十分に洗浄することができる。前記排液ノズル34の先端に突起などの流体導通手段が形成されていれば、前記流体導通手段が前記奥壁11Aに当接しても良い。この場合、前記奥壁11Aと前記排出開口部34Aとの間に隙間が形成されるので、前記隙間から排液や空気を勢いよく吸い込むことができる。
【0028】
洗浄槽31の図2中、左右に対向する側壁31C及び31Dの各内側略中央には、側方給液ノズル33A及び33Bが設けられている。側方給液ノズル33A及び33Bは、前記給液ノズル32A~32Hと同様、図示しない給液ポンプに接続されている。側方給液ノズル33A及び33Bは、洗浄槽31の中央に向けて洗浄液又は純水を吐出することにより、容器本体11の外壁や蓋体12の一方の面を洗浄する。
【0029】
次に、容器本体11及び蓋体12を格納する格納治具3について図4を参照して説明する。図4では、格納治具3を破線で表し、蓋体12には図10に示すラッチ機構24及びフロントリテーナ25を表していない。この表示方法は、図1図5及び図6でも採用している。
【0030】
格納治具3は、容器本体11及び蓋体12を格納可能な大きさに形成されている。格納治具3は、例えば、樹脂製のパイプを粗い格子の直方体状に組んで構成され、流体流通自在にされている。格納治具3を直方体状に構成する各面は、図示しないネジとナット、その他の適宜な締結部材の開放・締結、あるいは、パイプを連結する継手の挿抜により分解、組立可能に構成されている。格納治具3の下端には、下部開口部3Aが形成されている。下部開口部3A及び容器開口部11Bは、いずれも相似の略矩形状であり、容器開口部11Bの周縁が下部開口部3Aの周縁を支持することにより、容器本体11が格納治具3に格納される。
【0031】
浸漬脱出移動機構35は、図1図5及び図6に示すように、容器本体11及び蓋体12を格納した格納治具3を、洗浄槽31内の洗浄液又は洗浄水に浸漬させる浸漬状態と、この浸漬状態から洗浄液又は洗浄水外に引き上げる引上状態とに移動させる。浸漬脱出移動機構35は、図1図5及び図6では、一対の屈曲した形状で表している。しかし、実際は、浸漬脱出移動機構35は、格納治具3上部を把持する把持部を有し、格納治具3を前記浸漬状態と前記引上状態とに移動させるとともに、他の場所に搬送するロボットにより構成されている。
【0032】
[ウェーハ収納容器の洗浄方法]
次に、前記構成を有するウェーハ収納容器の洗浄装置1を用いたウェーハ収納容器2の洗浄方法について、図1図5及び図6を参照して説明する。
【0033】
まず、浸漬脱出移動機構35は、容器開口部11Bを下方に向けた状態で容器本体11及び蓋体12を格納した格納治具3を、図1に示すように、洗浄槽31に充填された洗浄液に浸漬する(浸漬工程)。
【0034】
次に、図示しない給液ポンプを駆動することにより、給液管37及び接続管36A~36Eを介して各給液ノズル32A~32Hに洗浄液を供給し、各給液開口部32AA~32HAから洗浄液を吐出させるとともに、側方給液ノズル33A及び33Bに洗浄液を供給し、洗浄槽31の中央に向けて洗浄液を吐出させ、洗浄槽31の槽開口部31Aから洗浄液をオーバーフローさせる。また、図示しない排液ポンプを駆動することにより、排液ノズル34の排出開口部34Aから排液を吸い込み、洗浄槽31外に排出する。
【0035】
以上説明した給液ポンプ及び排液ポンプの駆動により、図1に矢印で示すように、洗浄液及び排液が流れる。
【0036】
浸漬脱出移動機構35が、洗浄槽31の槽底部31Bに向かって格納治具3を洗浄液に浸漬させていくに従って、容器本体11内の空気は排液ノズル34から排液とともに吸い込まれ、容器本体11内から徐々に排出されていく。
【0037】
そして、格納治具3が槽底部31Bに到達するが、この段階において、容器本体11の前記周辺凹部21A及び21B並びに前記中央凹部22に空気が残る場合がある。
しかし、図1に示す収納状態において、各給液ノズル32A~32Hの各給液開口部32AA~32HAが容器本体11の奥壁11Aの内側に近接するように設けられ、排液ノズル34の排出開口部34Aが奥壁11Aの内側の中央に近接するように設けられている。この状態で奥壁11Aの内側に向けて洗浄液を供給し、奥壁11Aの内側の中央近傍から排液を排出している。
【0038】
以上説明した構成及び動作により、前記周辺凹部21A及び21B並びに前記中央凹部22に残った空気が動いて奥壁11Aの内側の中央近傍に集まる。これにより、排出開口部34Aから排液とともに、前記残った空気が容器本体11外に排出されるので、前記周辺凹部21A及び21B並びに前記中央凹部22に洗浄液が届き、容器本体11内部を十分に洗浄することができる。本実施形態では、複数の給液ノズル32A~32Hが排液ノズル34を取り囲むように配置されているので、容器本体11の奥壁11Aに残存しやすい空気を効率よく排出することができる。
【0039】
容器本体11の外壁や蓋体12は、側方給液ノズル33A及び33Bが洗浄槽31の中央に向けて吐出する洗浄液により洗浄される。この際、格納治具3が流体流通自在に構成されているので、格納治具3によって洗浄液の勢いがそがれることなく、容器本体11の外壁や蓋体12に到達するので、容器本体11の外壁や蓋体12を十分に洗浄することができる。
【0040】
前記浸漬工程では、容器本体11内へ洗浄液を供給する給液流量を、容器本体11内から排出される排液流量よりも多くしている。これにより、洗浄液が容器本体11全体に行き渡った後、図1に示すように、容器開口部11Bからもオーバーフローする。このため、容器本体11内において洗浄液の循環効率が排液ノズル34からのみ排液する場合より向上し、ウェーハ収納容器2の洗浄性が向上する。
【0041】
次に、浸漬脱出移動機構35は、容器本体11及び蓋体12を格納した格納治具3を、図1に示す洗浄槽31内の洗浄液に浸漬させた浸漬状態から洗浄液外に引き上げる引上状態(図5参照)と、洗浄槽31内の洗浄液に浸漬させる浸漬状態(図6参照)とに少なくとも1往復以上移動させる(浸漬引上移動工程)。浸漬引上移動工程は、1往復以上5往復以下が好ましく、3往復程度がより好ましい。往復動作を行わないと洗浄効果が少なく、6往復以上では作業効率が低下する。
【0042】
この浸漬引上移動工程により、蓋体12表面に洗浄液の流れが生じるので、図10に示すラッチ機構24やフロントリテーナ25等の細部や空洞まで洗浄液が届き、十分な洗浄を行うことができる。また、容器本体11及び蓋体12におけるパーティクルなどの汚れの残りを改善することができる。よって、ウェーハ収納容器2の洗浄性を向上できる。
前記引上状態と前記浸漬状態との間の前記格納治具3の移動速度は、容器本体11及び蓋体12に液残りが生じない程度で作業効率を上げられる速度が好ましい。
【0043】
以上説明した洗浄液を用いたウェーハ収納容器2の洗浄後、浸漬脱出移動機構35は、ウェーハ収納容器2を格納した格納治具3を、純水などの洗浄水を充填した洗浄槽31を備えたウェーハ収納容器の洗浄装置1まで移動させ、前記浸漬工程及び前記浸漬引上移動工程を行う。
【0044】
この洗浄水を用いたウェーハ収納容器2の洗浄を行うことにより、洗浄液の動作で説明したと同様に周辺凹部21A及び21Bへの洗浄水の供給、中央凹部22の近傍からの排液の排出、容器開口部11Bからの洗浄水のオーバーフロー、浸漬引上移動工程による洗浄効果の向上などにより、従来と比較して洗浄液を洗い流すことができ、容器本体11及び蓋体12に洗浄液の液残りが発生しにくくなる。このため、容器本体11及び蓋体12に経時変化による劣化や外観異常が起こりにくくなる。
【0045】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の種々の改良並びに設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【0046】
例えば、前記実施形態では、給液ノズル32A~32H及び排液ノズル34は固定されている例を示したが、これに限定されない。例えば、前記容器本体11の形状に合わせて給液ノズル32及び排液ノズル34を長さの異なるものと交換可能に構成したり、多少昇降させるように構成したりしても良い。この際、排液ノズル34の高さを給液ノズル32A~32Hの高さと等しくしたり、異ならせたり、容器本体11の奥壁形状に合わせて調整できる構造に構成すれば、例えば、奥壁11Aに周辺凹部21A及び21Bや中央凹部22が形成されていないなど、形状が異なる複数のウェーハ収納容器2に対応することができる。
【0047】
各給液ノズル32A~32Hの各先端には、突起などの流体導通手段を形成しても良い。前記流体導通手段が前記奥壁11Aに当接した場合は、前記流体導通手段の高さにより前記収納状態における各給液開口部32AA~32HAと奥壁11Aとの距離を規定できる。前記収納状態における容器本体11の奥壁11Aと、前記排出開口部34Aとの距離は、容器本体11の種類や奥壁11Aの形状によって異なるが、例えば、50mm以下が好ましい。前記距離が50mm以下であれば、前記奥壁11A各部から排液や空気を十分に吸い込むことができる。
【0048】
また、各給液ノズル32A~32Hの各先端には、図7(A)に示すように、金属製又は樹脂製の液中噴射ノズル41を取り付けても良い。前記液中噴射ノズル41は、液中で噴射し、その負圧を利用して周りの洗浄液又は洗浄水を吸い込み、給液ポンプの供給流量の3~4倍の洗浄液又は洗浄水を噴出する。前記液中噴射ノズル41は、洗浄液又は洗浄水の循環効率を向上できる。
【0049】
排液ノズル34の先端には、図7(B)に示すように、先端に突起などの流体導通手段42Aが形成された円筒状のフロート42を遊嵌しても良い。前記フロート42は、洗浄液又は洗浄水内で浮力により上昇して前記流体導通手段42Aが前記奥壁11Aに当接し、前記奥壁11Aと前記排出開口部34Aとの間に隙間が形成されるので、前記隙間から排液や空気を勢いよく吸い込むことができる。前記フロート42は、設けなくてもよいが、設ければ、洗浄液又は洗浄水の循環効率を向上できるとともに、ウェーハ収納容器2の浸漬深度に関係なく、常に、奥壁11A近傍から排液を吸引することができる。
【0050】
また、前記実施形態では、8本の給液ノズル32A~32H、2本の側方給液ノズル33A及び33B並びに1本の排液ノズル34を図2に示すように、配置する例を示したが、給液ノズル32、側方給液ノズル33及び排液ノズル34の本数及び配置位置はこれに限定されない。例えば、側方給液ノズル33A及び33Bに換えて、又は、側方給液ノズル33A及び33Bに加えて、図2に示す洗浄槽31の上下に対向する側壁31E及び31Fの各内側略中央に側方給液ノズル33を設けても良い。
【0051】
また、前記実施形態では、容器本体11内へ洗浄液又は洗浄水を供給する給液流量が、排液ノズル34を介して容器本体11内から排出される排液流量よりも多くなるように構成する例を示したが、これに限定されない。ただし、前記給液流量が前記排液流量よりも多い場合には前記した効果がある。
【0052】
また、前記実施形態では、格納治具3は、樹脂製のパイプを粗い格子の直方体状に組んで構成する例を示したが、これに限定されない。格納治具3は、例えば、線材などにより粗い格子の直方体状に組んで構成するなど、ウェーハ収納容器2を収納可能であって、流体流通自在な構成であれば良い。
【0053】
また、前記実施形態では、浸漬脱出移動機構35は、前記浸漬工程及び前記浸漬引上移動工程の他、格納治具3を他の場所へ搬送する搬送工程が行える構成としたが、これに限定されない。浸漬脱出移動機構35は、例えば、前記浸漬工程及び前記浸漬引上移動工程のみ行える構成とし、格納治具3の搬送工程は別の部材が行うように構成しても良い。
【実施例0054】
次に、本発明の実施例について説明する。なお、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0055】
実施例1では、前記実施形態に係るウェーハ収納容器の洗浄装置1を用いて前記浸漬工程のみを採用した。実施例2では、前記ウェーハ収納容器の洗浄装置1を用いて前記浸漬工程及び前記浸漬引上移動工程を採用した。一方、比較例1ではシャワー方式を採用した。その後、いずれの場合も、洗浄後の容器本体11内に純水を満たし、その純水0.1ml当たりに存在する粒径0.1μm以上のパーティクルの平均個数を測定した。
ウェーハ収納容器は全て、ウェーハの搬送及び発送に用いられるミライアル社製のFOSB(Front Opening Shipping Box)を使用した。液中パーティクルの測定には、リオン社製液中パーティクルセンサKS-40Aを使用した。
【0056】
表1及び図8には、実施例1及び2並びに比較例1によって洗浄した容器本体11内に純水を満たし、その純水0.1ml当たりに存在する粒径0.1μm以上のパーティクルの平均個数を測定した結果の一例を示す。
【0057】
【表1】
【0058】
[評価]
シャワー方式を採用した比較例1によれば、粒径0.1μm以上のパーティクルの平均個数は1.08であり、洗浄性能が低いことがわかる。これに対し、浸漬方式を採用した実施例1によれば、前記パーティクルの平均個数は0.72であり、比較例1より洗浄性能が向上していることがわかる。実施例2によれば、前記パーティクルの平均個数を0.61に抑えることができ、洗浄性能が大幅に向上していることがわかる。
【符号の説明】
【0059】
1…ウェーハ収納容器の洗浄装置、2…ウェーハ収納容器、3…格納治具、3A…下部開口部、11…容器本体、11A…奥壁、11B…容器開口部、12…蓋体、21A,21B…周辺凹部、22…中央凹部、23A,23B…凸部、24…ラッチ機構、25…フロントリテーナ、31…洗浄槽、31A…槽開口部、31B…槽底部、31C,31D,31E,31F…側壁、32,32A~32H…給液ノズル、32AA~32HA…給液開口部、33,33A,33B…側方給液ノズル、34…排液ノズル、34A…排出開口部、34B,37B…下端、35…浸漬脱出移動機構、36A~36E…接続管、37…給液管、37A…上端、41…液中噴射ノズル、42…フロート、42A…流体導通手段、DL…1点鎖線。
図1
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図10