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特開2022-126979真空ポンプおよび真空ポンプの組み立て方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126979
(43)【公開日】2022-08-31
(54)【発明の名称】真空ポンプおよび真空ポンプの組み立て方法
(51)【国際特許分類】
   F04C 25/02 20060101AFI20220824BHJP
   F04C 19/00 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
F04C25/02 P
F04C19/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021024869
(22)【出願日】2021-02-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】松村 圭祐
【テーマコード(参考)】
3H129
【Fターム(参考)】
3H129AA07
3H129AA15
3H129AB06
3H129AB11
3H129BB32
3H129BB33
3H129BB43
3H129CC03
3H129CC04
3H129CC19
3H129CC38
(57)【要約】
【課題】羽根車とケーシングとの間の隙間の調整作業を容易に、かつ短時間で行うことができる真空ポンプが提供される。
【解決手段】ケーシング1と、羽根車2と、を備える真空ポンプVPが提供される。ケーシング1は、隣接ケーシングと羽根車2との間の隙間を調整する調整シムが装着可能な隙間調整部位を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、
前記ケーシング内に収容される少なくとも1つの羽根車と、を備え、
前記ケーシングは、
排気ケーシングと、
前記排気ケーシングに隣接して配置された隣接ケーシングと、を備えており、
前記ケーシングは、前記隣接ケーシングと前記隣接ケーシングに隣接する前記羽根車との間の隙間を調整する調整シムが装着可能な隙間調整部位を備えている、真空ポンプ。
【請求項2】
前記隙間調整部位は、前記排気ケーシングと前記隣接ケーシングとの間の、前記ケーシングの合わせ面に形成されている、請求項1に記載の真空ポンプ。
【請求項3】
前記隣接ケーシングは、吸気ケーシングおよび前記吸気ケーシングと前記排気ケーシングとの間に配置された中間ケーシングのうちのいずれかである、請求項1または請求項2に記載の真空ポンプ。
【請求項4】
前記調整シムは、前記羽根車が固定された回転軸と同心状に配置された環状形状を有している、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の真空ポンプ。
【請求項5】
前記調整シムは、金属から構成されている、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の真空ポンプ。
【請求項6】
前記隙間調整部位は、前記ケーシングに封入される液体の漏洩を防止するシール部材の外側に配置されている、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の真空ポンプ。
【請求項7】
排気ケーシングおよび前記排気ケーシングに隣接して配置された隣接ケーシングを備えるケーシングと、前記ケーシング内に収容される少なくとも1つの羽根車と、を備えた真空ポンプの組み立て方法において、
前記ケーシングの隙間調整部位に調整シムを装着して、前記隣接ケーシングと前記隣接ケーシングに隣接する前記羽根車との間に隙間を形成する、方法。
【請求項8】
前記隙間調整部位は、前記排気ケーシングと前記隣接ケーシングとの間の、前記ケーシングの合わせ面に形成されている、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記隣接ケーシングは、吸気ケーシングおよび前記吸気ケーシングと前記排気ケーシングとの間に配置された中間ケーシングのうちのいずれかである、請求項7または請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記真空ポンプは、前記調整シムとして、第1調整シムおよび第2調整シムと、前記隙間調整部位として、前記排気ケーシングに形成された第1隙間調整部位および前記排気ケーシングと前記隣接ケーシングとの間に形成された第2隙間調整部位と、を備えており、
前記第1隙間調整部位に前記第1調整シムを装着し、前記羽根車が回転軸に固定された状態で、前記羽根車をアキシャル荷重が作用する方向に引っ張り、
前記羽根車と前記排気ケーシングとの間に形成される第1隙間の初期値に基づいて、前記第1隙間の大きさを決定し、
前記第2調整シムを前記第2隙間調整部位に装着し、前記第1隙間の大きさに基づいて、前記隣接ケーシングと前記羽根車との間の第2隙間の大きさを決定する、請求項7~請求項9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空ポンプおよび真空ポンプの組み立て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
真空ポンプは、羽根車と、羽根車を収容するケーシングと、を備えている。このような真空ポンプでは、その機能を十分に発揮するために、羽根車とケーシングとの間の隙間は、所定の(より具体的には、微小な)大きさを有する。この隙間は、羽根車の側端面と、この側端面に対向するケーシングの側壁と、の間に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-138778号公報
【特許文献2】実開平5-019587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業者は、真空ポンプの組み立て時において、羽根車とケーシングとの間の隙間が所定の大きさになるように、この隙間を調整する。しかしながら、ケーシングは羽根車を覆う構造を有しているため、作業者は、このような調整作業のすべてを目視で確認しながら行うことができない。したがって、隙間が所定の大きさを有しているか否かを、真空ポンプの性能評価試験を実行して、確認しなければならない。
【0005】
仮に、隙間が所定の大きさを有していない場合、作業者は、真空ポンプを分解し、再度、組み立てる必要がある。このような分解および組み立て作業は、真空ポンプが性能評価試験をパスするまで繰り返される。このように、隙間の調整作業は、非常に煩雑であり、多大な時間を要するおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、羽根車とケーシングとの間の隙間の調整作業を容易に、かつ短時間で行うことができる真空ポンプおよび真空ポンプの組み立て方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、ケーシングと、前記ケーシング内に収容される少なくとも1つの羽根車と、を備える真空ポンプが提供される。前記ケーシングは、排気ケーシングと、前記排気ケーシングに隣接して配置された隣接ケーシングと、を備えており、前記ケーシングは、前記隣接ケーシングと前記隣接ケーシングに隣接する前記羽根車との間の隙間を調整する調整シムが装着可能な隙間調整部位を備えている。
【0008】
一態様では、前記隙間調整部位は、前記排気ケーシングと前記隣接ケーシングとの間の、前記ケーシングの合わせ面に形成されている。
一態様では、前記隣接ケーシングは、吸気ケーシングおよび前記吸気ケーシングと前記排気ケーシングとの間に配置された中間ケーシングのうちのいずれかである。
一態様では、前記調整シムは、前記羽根車が固定された回転軸と同心状に配置された環状形状を有している。
【0009】
一態様では、前記調整シムは、金属から構成されている。
一態様では、前記隙間調整部位は、前記ケーシングに封入される液体の漏洩を防止するシール部材の外側に配置されている。
【0010】
一態様では、排気ケーシングおよび前記排気ケーシングに隣接して配置された隣接ケーシングを備えるケーシングと、前記ケーシング内に収容される少なくとも1つの羽根車と、を備えた真空ポンプの組み立て方法が提供される。方法は、前記ケーシングの隙間調整部位に調整シムを装着して、前記隣接ケーシングと前記隣接ケーシングに隣接する前記羽根車との間に隙間を形成する。
【0011】
一態様では、前記隙間調整部位は、前記排気ケーシングと前記隣接ケーシングとの間の、前記ケーシングの合わせ面に形成されている。
一態様では、前記隣接ケーシングは、吸気ケーシングおよび前記吸気ケーシングと前記排気ケーシングとの間に配置された中間ケーシングのうちのいずれかである。
一態様では、前記真空ポンプは、前記調整シムとして、第1調整シムおよび第2調整シムと、前記隙間調整部位として、前記排気ケーシングに形成された第1隙間調整部位および前記排気ケーシングと前記隣接ケーシングとの間に形成された第2隙間調整部位と、を備えており、前記第1隙間調整部位に前記第1調整シムを装着し、前記羽根車が回転軸に固定された状態で、前記羽根車をアキシャル荷重が作用する方向に引っ張り、前記羽根車と前記排気ケーシングとの間に形成される第1隙間の初期値に基づいて、前記第1隙間の大きさを決定し、前記第2調整シムを前記第2隙間調整部位に装着し、前記第1隙間の大きさに基づいて、前記隣接ケーシングと前記羽根車との間の第2隙間の大きさを決定する。
【発明の効果】
【0012】
作業者は、調整シムを隙間調整部位に装着することにより、容易に、かつ短時間で隙間の調整作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】真空ポンプを備えたポンプ装置の一実施形態を示す図である。
図2】ケーシングと羽根車との間に形成された隙間を示す図である。
図3】隙間を調整するための調整シムを示す図である。
図4】複数の調整シムを示す斜視図である。
図5】真空ポンプの組み立て手順を示す図である。
図6】中間ケーシングと羽根車との間の隙間を調整する隙間調整部位を示す図である。
図7図6の部分拡大図である。
図8】隙間の大きさを調整する手順を示す図である。
図9】吸気ケーシングと第1羽根車との間の隙間を調整する調整シムが装着可能な隙間調整部位を示す図である。
図10】真空ポンプの他の実施形態を示す図である。
図11図10の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、真空ポンプの一実施形態について、図面を参照して説明する。以下の実施形態において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0015】
図1は、真空ポンプを備えたポンプ装置の一実施形態を示す図である。図1に示すように、ポンプ装置PAは、真空ポンプVPと、モータMTと、を備えている。図1に示す実施形態では、真空ポンプVPは、液封式真空ポンプであるが、真空ポンプVPの構造は、液封式真空ポンプには限定されない。
【0016】
真空ポンプVPは、液体(水など)を内部に封入するケーシング1と、ケーシング1内に収容される少なくとも1つの羽根車2と、を備えている。本実施形態では、真空ポンプVPは、2つの羽根車2(すなわち、第1羽根車2Aおよび第2羽根車2B)を備えた多段ポンプ(より具体的には、2段)である。以下、本明細書において、第1羽根車2Aおよび第2羽根車2Bを区別せずに、単に羽根車2と呼ぶことがある。
【0017】
図1に示す実施形態では、ケーシング1は、気体(例えば、空気)を吸入する吸気口8が形成された吸気ケーシング10と、吸気ケーシング10に吸入された気体を排気する排気口9が形成された排気ケーシング12と、第1羽根車2Aおよび第2羽根車2Bを区画する中間ケーシング11と、を備えている。
【0018】
本実施形態では、中間ケーシング11は、排気ケーシング12に隣接する隣接ケーシングである。中間ケーシング11は、吸気ケーシング10と排気ケーシング12との間に配置されており、第1羽根車2Aおよび第2羽根車2Bを区画する区画壁15を有している。
【0019】
第1羽根車2Aおよび第2羽根車2Bは、ケーシング1(より具体的には、中間ケーシング11)の中心に対して偏心した状態で、モータMTの回転軸3に固定されている。回転軸3と排気ケーシング12との間には、軸封装置16が配置されている。軸封装置16は、中間ケーシング11に封入された液体(すなわち、封入液)の漏洩を防止する。
【0020】
モータMTが駆動すると、羽根車2は回転軸3とともに回転する。羽根車2が回転すると、中間ケーシング11内の封入液には遠心力が作用し、中間ケーシング11は、封入液による環状の液膜を中間ケーシング11の内周壁11aに形成する。このように、真空ポンプVPは、環状の液膜と羽根車2との間に形成された空間の容積変化を利用して、気体を移送するように構成されている。
【0021】
図2は、ケーシングと羽根車との間に形成された隙間を示す図である。真空ポンプVPの組み立て時において、羽根車2とケーシング1との間には、所定の大きさの隙間を形成する必要がある。
【0022】
図2に示す実施形態では、排気ケーシング12の側壁12aと第2羽根車2Bの側端面2Baとの間には、所定の大きさを有する隙間S1が形成されている。中間ケーシング11の区画壁15の側壁15aと第2羽根車2Bの側端面2Bbとの間には、所定の大きさを有する隙間S2が形成されている。隙間S1および隙間S2のそれぞれは、微小な大きさを有しているが、図2では、図面を見やすくするために、隙間S1および隙間S2の大きさは誇張して描かれている。
【0023】
図3は、隙間を調整するための調整シムを示す図である。図3に示すように、真空ポンプVPは、排気ケーシング12と排気ケーシング12に隣接する第2羽根車2Bとの間の隙間S1を調整する調整シム20を備えている。調整シム20は、回転軸3と同心状に配置された環状形状を有しており、例えば、金属から構成されている。
【0024】
図3に示すように、ケーシング1(より具体的には、排気ケーシング12)は、調整シム20が装着可能な隙間調整部位(より具体的には、排気側隙間調整部位)22を備えている。調整シム20は、隙間調整部位22と第2羽根車2Bとの間に配置されており、第2羽根車2Bは、調整シム20に密着している。調整シム20の厚さ(すなわち、回転軸3の軸線CL方向の大きさ)は、隙間S1に相当する。したがって、作業者は、異なる厚さを有する調整シム20を隙間調整部位22に装着することにより、隙間S1の大きさを任意に決定することができる。
【0025】
図4は、複数の調整シムを示す斜視図である。図4に示すように、作業者は、複数の調整シム20を重ねて配置することにより、隙間S1の大きさを決定してもよい。このように、作業者は、任意の大きさおよび/または任意の枚数の調整シム20を隙間調整部位22に装着してもよい。
【0026】
図5は、真空ポンプの組み立て手順を示す図である。図5に示すように、真空ポンプVPの組み立て時において、作業者は、排気ケーシング12が回転軸3に取り付けられた状態で、調整シム20を隙間調整部位22に装着する(ステップS101参照)。その後、作業者は、第2羽根車2Bを回転軸3に取り付ける(ステップS102参照)。このとき、排気ケーシング12の側壁12aと第2羽根車2Bとの間の隙間S1は、露出しているため、作業者は、隙間S1の大きさを目視で確認しつつ、隙間S1の大きさを調整することができる。
【0027】
図5のステップS102を実行した後、作業者は、中間ケーシング11を回転軸3に取り付けて、中間ケーシング11の区画壁15と第2羽根車2Bとの間の隙間S2を調整する。しかしながら、中間ケーシング11の取り付け時において、中間ケーシング11の区画壁15と第2羽根車2Bとの間の隙間S2は露出していないため、作業者は、隙間S2の大きさを目視で確認することはできない。
【0028】
従来では、作業者は、隙間S2の大きさを推定的に決定して、真空ポンプVPの組み立て後に、真空ポンプVPの性能評価試験を実行して、隙間S2(および隙間S1)の大きさが適切か否かを確認しなければならい。しかしながら、隙間S2(および隙間S1)の大きさが適切でない場合、作業者は、真空ポンプVPを分解し、再度、組み立てなければならない。このような作業は非常に煩雑であり、かつ多大な時間を要する。さらに、真空ポンプVPが性能評価試験をパスするまで、作業者は、このような分解および組み立て作業を繰り返さなければならない。
【0029】
図6は、中間ケーシングと羽根車との間の隙間を調整する隙間調整部位を示す図である。本実施形態では、隙間S2の調整作業を容易に、かつ短時間で行うために、ケーシング1は、中間ケーシング11と第2羽根車2Bとの間の隙間S2を調整する調整シム25が装着可能な隙間調整部位(より具体的には、中間側隙間調整部位)26を備えている。
【0030】
図7は、図6の部分拡大図である。図7に示すように、隙間調整部位26は、排気ケーシング12と中間ケーシング11との間の、ケーシング1の合わせ面に形成されている。より具体的には、隙間調整部位26は、中間ケーシング11の、排気ケーシング12に対向する対向面30と、排気ケーシング12の、中間ケーシング11に対向する対向面31と、に形成されている。
【0031】
調整シム25は、中間ケーシング11の対向面30と排気ケーシング12の対向面31との間に配置されており、調整シム20と同様に、回転軸3と同心状に配置された環状形状を有している。調整シム25は、例えば、金属から構成されている。
【0032】
図7に示すように、真空ポンプVPは、封入液の漏洩を防止するシール部材35を備えている。シール部材35は、例えば、Oリングである。隙間調整部位26(および調整シム25)は、シール部材35の外側に配置されている。このような配置により、調整シム25は、シール部材35の機能を阻害しない。したがって、シール部材35は、その機能を十分に発揮することができ、封入液の漏洩をより確実に防止することができる。
【0033】
調整シム25の厚さ(すなわち、回転軸3の軸線CL方向の大きさ)は、隙間S2に相当する。したがって、作業者は、異なる厚さおよび/または任意の枚数の調整シム25を隙間調整部位26に装着することにより、隙間S2の大きさを任意に決定することができる。
【0034】
本実施形態によれば、作業者は、調整シム25を隙間調整部位26に装着するだけの簡単な方法により、隙間S2の大きさを決定することができる。結果として、作業者は、容易に、かつ短時間で真空ポンプVPの組み立て作業を行うことができる。
【0035】
本実施形態では、ケーシング1は、隙間S1の大きさを決定するための排気側隙間調整部位22と、隙間S2の大きさを決定するための中間側隙間調整部位26と、を備えている。したがって、作業者は、調整シム20および調整シム25のそれぞれの大きさおよび/または枚数に応じて、羽根車2Bの両側の隙間S1および隙間S2の大きさを独立して調整することができる。
【0036】
図5に戻り、作業者は、ステップS102を実行した後、調整シム25を中間側隙間調整部位26に装着する(ステップS103参照)。その後、作業者は、中間ケーシング11を回転軸3に取り付け(ステップS104参照)、第1羽根車2Aを回転軸3に取り付ける(ステップS105参照)。その後、作業者は、吸気ケーシング10を中間ケーシング11に取り付ける(ステップS106参照)。このように、作業者は、図5のステップS101~ステップS106を実行することにより、真空ポンプVPを組み立てることができる。
【0037】
隙間S1および隙間S2の大きさは、真空ポンプVPの性能(例えば、排気速度、目標到達圧力など)および軸動力に基づいて、決定される。例えば、隙間S1および隙間S2が大きい場合、真空ポンプVPの性能は低下し、軸動力は低下する。その一方で、隙間S1および隙間S2が小さい場合、真空ポンプVPの性能は増加し、軸動力は増加する。隙間S1と隙間S2とのバランスも真空ポンプVPの性能および軸動力を決定する上で重要な要素である。例えば、隙間S1の大きさと隙間S2の大きさが異なる場合、真空ポンプVPの性能は低下(または増加)し、軸動力は増加(または低下)する。
【0038】
このように、隙間S1および隙間S2の大きさは、真空ポンプVPの性能および軸動力を決定する上で、非常に重要な要素である。本実施形態では、作業者は、調整シム20および調整シム25のそれぞれを変更することにより、真空ポンプVPの性能および軸動力を、ポンプ装置PAの設置環境に応じて、容易に変更することができる。以下、隙間S1および隙間S2の大きさを調整する手順の一例について、図面を参照して説明する。
【0039】
図8は、隙間の大きさを調整する手順を示す図である。まず、作業者は、調整シム20を排気ケーシング12の排気側隙間調整部位22に装着する(ステップS201参照)。その後、作業者は、第1羽根車2Aおよび第2羽根車2Bを回転軸3に取り付ける(ステップS202参照)。作業者は、第1羽根車2Aおよび第2羽根車2Bを回転軸3に固定した状態で、作業者は、第1羽根車2Aおよび第2羽根車2Bをアキシャル荷重が作用する方向(すなわち、モータMTから離間する方向)に引っ張る(ステップS203参照)。
【0040】
この状態で、作業者は、第2羽根車2Bと排気ケーシング12との間に形成される隙間S1の初期値を測定し、この初期値に基づいて、隙間S1の大きさを調整する(ステップS204参照)。その後、作業者は、第1羽根車2Aを取り外し、中間ケーシング11を排気ケーシング12に取り付ける(ステップS205参照)。このとき、作業者は、調整シム25を中間側隙間調整部位26に装着し、隙間S1の大きさに基づいて、隙間S2の大きさを調整する(ステップS206参照)。
【0041】
図9は、吸気ケーシングと第1羽根車との間の隙間を調整する調整シムが装着可能な隙間調整部位を示す図である。図9に示すように、真空ポンプVPは、吸気ケーシング10と中間ケーシング11との間に配置された調整シム40を備えてもよい。図9に示すように、調整シム40は、吸気ケーシング10の側壁10aと第1羽根車2Aの側端面2Aaとの間の隙間S3を調整するように構成されている。調整シム40の厚さは、隙間S3の大きさに相当する。
【0042】
ケーシング1は、吸気ケーシング10と第1羽根車2Aとの間の隙間S3を調整する調整シム40が装着可能な隙間調整部位(より具体的には、吸気側隙間調整部位)41を備えている。隙間調整部位41は、吸気ケーシング10と中間ケーシング11との間の、ケーシング1の合わせ面に形成されている。より具体的には、隙間調整部位41は、吸気ケーシング10の、中間ケーシング11に対向する対向面42と、中間ケーシング11の、吸気ケーシング10に対向する対向面43と、に形成されている。
【0043】
調整シム40は、吸気ケーシング10の対向面42と中間ケーシング11の対向面43との間に配置されており、調整シム20および調整シム25と同様に、回転軸3と同心状に配置された環状形状を有している。調整シム40は、例えば、金属から構成されている。
【0044】
図9に示すように、真空ポンプVPは、封入液の漏洩を防止するシール部材45を備えている。シール部材45は、例えば、Oリングである。隙間調整部位41(および調整シム40)は、シール部材45の外側に配置されている。このような配置により、シール部材45は、その機能を十分に発揮することができ、封入液の漏洩をより確実に防止することができる。
【0045】
図10は、真空ポンプの他の実施形態を示す図である。特に説明しない本実施形態の構成は、上述した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。図10に示すように、真空ポンプVPは、中間ケーシング11を備えていない単段ポンプであってもよい。図10に示す実施形態では、吸気ケーシング10は、排気ケーシング12に隣接する隣接ケーシングである。図10に示す実施形態では、真空ポンプVPは、吸気ケーシング10と排気ケーシング12との間に配置された単一の羽根車2を備えている。
【0046】
上述した実施形態と同様に、作業者は、調整シム20を隙間調整部位(より具体的には、排気側隙間調整部位)22に装着することにより、排気ケーシング12の側壁12aと羽根車2の側端面2aとの間に所定の大きさを有する隙間S4を形成することができる。
【0047】
図11は、図10の部分拡大図である。図11に示すように、ケーシング1は、吸気ケーシング10と羽根車2との間の隙間を調整する調整シム50が装着可能な隙間調整部位(より具体的には、吸気側隙間調整部位)51を備えている。隙間調整部位51は、吸気ケーシング10と排気ケーシング12との間の、ケーシング1の合わせ面に形成されている。より具体的には、隙間調整部位51は、吸気ケーシング10の、排気ケーシング12に対向する対向面52と、排気ケーシング12の、吸気ケーシング10に対向する対向面53と、に形成されている。
【0048】
作業者は、調整シム50を隙間調整部位51に装着することにより、吸気ケーシング10の側壁10aと羽根車2の側端面2bとの間に所定の大きさを有する隙間S5を形成することができる。
【0049】
調整シム50は、吸気ケーシング10の対向面52と排気ケーシング12の対向面53との間に配置されており、調整シム20,25,40と同様に、回転軸3と同心状に配置された環状形状を有している。調整シム50は、例えば、金属から構成されている。
【0050】
図11に示すように、真空ポンプVPは、封入液の漏洩を防止するシール部材55を備えている。シール部材55は、例えば、Oリングである。隙間調整部位51(および調整シム50)は、シール部材55の外側に配置されている。このような配置により、シール部材55は、その機能を十分に発揮することができ、封入液の漏洩をより確実に防止することができる。
【0051】
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内において、種々の異なる形態で実施されてよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0052】
1 ケーシング
2 羽根車
2a 側端面
2b 側端面
2A 第1羽根車
2Aa 側端面
2B 第2羽根車
2Ba 側端面
2Bb 側端面
3 回転軸
8 吸気口
9 排気口
10 吸気ケーシング
10a 側壁
11 中間ケーシング
11a 内周壁
12 排気ケーシング
12a 側壁
15 区画壁
15a 側壁
16 軸封装置
20 調整シム
22 隙間調整部位(排気側隙間調整部位)
25 調整シム
26 隙間調整部位(中間側隙間調整部位)
30 対向面
31 対向面
35 シール部材
40 調整シム
41 隙間調整部位(吸気側隙間調整部位)
42 対向面
43 対向面
45 シール部材
50 調整シム
51 隙間調整部位(吸気側隙間調整部位)
52 対向面
53 対向面
55 シール部材
PA ポンプ装置
VP 真空ポンプ
MT モータ
S1 隙間
S2 隙間
S3 隙間
S4 隙間
S5 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11