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特開2022-126980電源装置、昇圧回路の制御装置、及び昇圧回路の出力評価装置
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  • 特開-電源装置、昇圧回路の制御装置、及び昇圧回路の出力評価装置 図1
  • 特開-電源装置、昇圧回路の制御装置、及び昇圧回路の出力評価装置 図2
  • 特開-電源装置、昇圧回路の制御装置、及び昇圧回路の出力評価装置 図3
  • 特開-電源装置、昇圧回路の制御装置、及び昇圧回路の出力評価装置 図4
  • 特開-電源装置、昇圧回路の制御装置、及び昇圧回路の出力評価装置 図5
  • 特開-電源装置、昇圧回路の制御装置、及び昇圧回路の出力評価装置 図6
  • 特開-電源装置、昇圧回路の制御装置、及び昇圧回路の出力評価装置 図7
  • 特開-電源装置、昇圧回路の制御装置、及び昇圧回路の出力評価装置 図8
  • 特開-電源装置、昇圧回路の制御装置、及び昇圧回路の出力評価装置 図9
  • 特開-電源装置、昇圧回路の制御装置、及び昇圧回路の出力評価装置 図10
  • 特開-電源装置、昇圧回路の制御装置、及び昇圧回路の出力評価装置 図11
  • 特開-電源装置、昇圧回路の制御装置、及び昇圧回路の出力評価装置 図12
  • 特開-電源装置、昇圧回路の制御装置、及び昇圧回路の出力評価装置 図13
  • 特開-電源装置、昇圧回路の制御装置、及び昇圧回路の出力評価装置 図14
  • 特開-電源装置、昇圧回路の制御装置、及び昇圧回路の出力評価装置 図15
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126980
(43)【公開日】2022-08-31
(54)【発明の名称】電源装置、昇圧回路の制御装置、及び昇圧回路の出力評価装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20220824BHJP
【FI】
H02M3/155 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021024870
(22)【出願日】2021-02-19
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124800
【弁理士】
【氏名又は名称】諏澤 勇司
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】丹沢 徹
(72)【発明者】
【氏名】内田 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】濃野 公一
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AS04
5H730BB02
5H730BB86
5H730BB88
5H730FD01
5H730FD11
5H730FD31
5H730FF01
5H730FF09
5H730VV01
(57)【要約】
【課題】出力電力を高める。
【解決手段】電源装置1は、発電素子2と、入力電力Pinを受けて、入力電圧Vinを入力電圧Vinよりも高い出力電圧Voutに昇圧した出力電力Poutを出力する昇圧回路3と、昇圧回路3に制御信号φを出力するコントローラ5と、を備える。昇圧回路3は、第1容量部31a及び第2容量部31bを有する。コントローラ5は、第1容量部31aへの充電動作と第1充電動作の後に実行される第2容量部31bへの充電動作とを含む第1制御信号φ1と、第1容量部31a及び第2容量部31bにより形成される第1合成容量部31sへの充電動作を含む第2制御信号φ2と、を有する。コントローラ5は、入力電力Pinの状態に応じて、第1制御信号φ1及び第2制御信号φ2のいずれか一方を昇圧回路3へ出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷装置が要求する要求電圧に基づく電力を供給する電源装置であって、
外部エネルギを受けて電力を発生する発電部と、
前記発電部が発生する電力を入力電力として受けて、前記入力電力における入力電圧を前記入力電圧よりも高い出力電圧に昇圧した出力電力を出力する昇圧部と、
前記昇圧部に第1制御信号又は第2制御信号を出力する制御部と、を備え、
前記昇圧部は、第1容量部及び第2容量部を含む複数の容量部を有し、
前記制御部は、
前記第1容量部への第1充電動作と前記第1充電動作の後に実行される前記第2容量部への充電動作とを含んで、前記入力電力を前記出力電力に変換する前記第1制御信号と、
前記第1容量部及び前記第2容量部により形成される合成容量部への充電動作を含んで、前記入力電力を前記出力電力に変換する前記第2制御信号と、を有し、
前記制御部は、前記入力電力の状態に応じて、前記第1制御信号及び前記第2制御信号のいずれか一方を前記昇圧部へ出力する、電源装置。
【請求項2】
前記入力電力を前記出力電力に変換する動作において、前記充電動作の回数と1回あたりの前記充電動作における前記容量部の大きさとの積は、前記第1制御信号による動作と前記第2制御信号による動作とで一定である、請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記昇圧部の動作状態を示す動作状態データを取得すると共に、前記動作状態データに示される状態の前記昇圧部の動作状態を評価する動作評価データを得る出力評価部をさらに備え、
前記制御部は、前記動作評価データに応じて、前記第1制御信号及び前記第2制御信号のいずれか一方を前記昇圧部へ出力する、請求項1又は2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記昇圧部は、前記第1容量部への充電動作、前記第2容量部への充電動作及び前記合成容量部への充電動作を制御する駆動信号を発生する駆動信号発生部をさらに有し、
前記駆動信号は、前記第1容量部への充電動作、前記第2容量部への充電動作及び前記合成容量部への充電動作を実行させる充電動作成分を含み、
前記出力評価部は、
前記動作状態データとして前記駆動信号を取得する駆動信号取得部と、
前記動作状態データである前記駆動信号が含む単位時間当たりの前記充電動作成分の数を数えて、前記充電動作成分の数を前記動作評価データとして取得する計数部と、を有する、請求項3に記載の電源装置。
【請求項5】
前記出力評価部は、
前記昇圧部に対する計測負荷電流を発生する計測負荷発生部と、
前記計測負荷電流を受けたときの前記出力電圧を前記動作状態データとして取得して、前記出力電圧を前記要求電圧と比較する電圧比較部と、
前記出力電圧が前記要求電圧より低くなる前記計測負荷電流を前記動作評価データとして取得する判定部と、を有する、請求項3に記載の電源装置。
【請求項6】
前記入力電力の状態に応じる入力電圧を取得する入力評価部をさらに備え、
前記制御部は、前記入力電圧に応じて、前記第1制御信号及び前記第2制御信号のいずれか一方を前記昇圧部へ出力する、請求項1又は2に記載の電源装置。
【請求項7】
外部エネルギを受けて電力を発生する発電部から前記電力を入力電力として受けて、前記入力電力における入力電圧を前記入力電圧よりも高い出力電圧に昇圧した出力電力を出力すると共に、第1容量部及び第2容量部を含む複数の容量部を有する昇圧回路の制御装置であって、
前記昇圧回路に第1制御信号又は第2制御信号を出力する制御部と、
前記昇圧回路の動作状態を示す動作状態データを取得すると共に、前記動作状態データに示される状態の前記昇圧回路の動作状態を評価する動作評価データを得る出力評価部と、を備え、
前記制御部は、
前記第1容量部への第1充電動作と、前記第1充電動作の後に実行される前記第2容量部への充電動作と、を含んで、前記入力電力を前記出力電力に変換する前記第1制御信号と、
前記第1容量部及び前記第2容量部により形成される合成容量部への充電動作を含んで、前記入力電力を前記出力電力に変換する前記第2制御信号と、を有し、
前記制御部は、前記入力電力の状態に応じて、前記第1制御信号及び前記第2制御信号のいずれか一方を前記昇圧回路へ出力する、昇圧回路の制御装置。
【請求項8】
外部エネルギを受けて電力を発生する発電部から前記電力を入力電力として受けて、前記入力電力における入力電圧を前記入力電圧よりも高い出力電圧に昇圧した出力電力を出力すると共に、第1容量部及び第2容量部を含む複数の容量部を有する昇圧回路の制御装置であって、
前記昇圧回路に第1制御信号又は第2制御信号を出力する制御部と、
前記入力電力の状態に応じる入力電圧を取得する入力評価部と、を備え、
前記制御部は、前記入力電圧に応じて、前記第1制御信号及び前記第2制御信号のいずれか一方を前記昇圧回路へ出力する、昇圧回路の制御装置。
【請求項9】
入力電力における入力電圧を前記入力電圧よりも高い出力電圧に昇圧した出力電力を出力する昇圧回路の出力を評価する昇圧回路の出力評価装置であって、
前記昇圧回路が有する複数の容量部に充電動作をさせる充電動作成分を含む駆動信号を前記昇圧回路から取得する駆動信号取得部と、
前記駆動信号が含む単位時間当たりの前記充電動作成分の数を数えて、前記充電動作成分の数を前記昇圧回路の出力を評価する動作評価データとして取得する計数部と、を備える、昇圧回路の出力評価装置。
【請求項10】
入力電力における入力電圧を前記入力電圧よりも高い出力電圧に昇圧した出力電力を出力する昇圧回路の出力を評価する昇圧回路の出力評価装置であって、
前記昇圧回路に対する計測負荷電流を発生する計測負荷発生部と、
前記計測負荷電流を受けたときの前記出力電圧を取得して、前記出力電圧と前記出力電圧を受ける負荷装置が要求する要求電圧とを比較する電圧比較部と、
前記出力電圧が前記要求電圧より低くなる前記計測負荷電流を前記昇圧回路の出力を評価する動作評価データとして取得する判定部と、を備える、昇圧回路の出力評価装置。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置、昇圧回路の制御装置、及び昇圧回路の出力評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今までに利用されることのなかった振動及び熱といった環境エネルギを活用する技術が注目されている。このような技術は、エナジー・ハーベストと呼ばれる。エナジー・ハーベストは、いわゆるIoT(物のインターネット:Internet of Things)のためのセンサに適用する電源技術として注目を集めている。例えば、エナジー・ハーベスト技術を適用したセンサは、装置が設置された環境に存在する振動及び熱から回収されたエネルギを利用して駆動する。エナジー・ハーベストに関する技術として、特許文献1~3が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-172377号公報
【特許文献2】特許第534052号
【特許文献3】特許第588008号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、エナジー・ハーベスト技術を支える装置として、熱エネルギを電力に変換する熱発電素子がある。周囲環境から与えられる熱を利用して熱発電素子が出力する電力は、微弱である。熱発電素子が出力する電力は、センサ又は通信ICといった負荷装置が要求する電力よりも小さい。そこで、熱発電素子が出力する電力を負荷装置が要求する電力に変換する装置が必要である。電力変換装置としてチャージポンプ回路が挙げられる。チャージポンプ回路は、入力された電力をキャパシタに蓄積する動作を繰り返して、電圧を高める。エナジー・ハーベスト技術の分野では、チャージポンプ回路から出力される電力をさらに高めることが望まれている。
【0005】
本発明は、出力電力を高めることが可能な電源装置、昇圧回路の制御装置、及び昇圧回路の出力評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態は、負荷装置が要求する要求電圧に基づく電力を供給する電源装置である。電源装置は、外部エネルギを受けて電力を発生する発電部と、発電部が発生する電力を入力電力として受けて、入力電力における入力電圧を入力電圧よりも高い出力電圧に昇圧した出力電力を出力する昇圧部と、昇圧部に第1制御信号又は第2制御信号を出力する制御部と、を備える。昇圧部は、第1容量部及び第2容量部を含む複数の容量部を有する。制御部は、第1容量部への第1充電動作と第1充電動作の後に実行される第2容量部への充電動作とを含んで、入力電力を出力電力に変換する第1制御信号と、第1容量部及び第2容量部により形成される合成容量部への充電動作を含んで、入力電力を出力電力に変換する第2制御信号と、を有する。制御部は、入力電力の状態に応じて、第1制御信号及び第2制御信号のいずれか一方を昇圧部へ出力する。
【0007】
昇圧部の出力特性は、発電部から入力される入力電力の影響を受ける。電源装置は、入力電力の状態に応じて、昇圧部における昇圧動作の態様を切り替える。その結果、昇圧部は、入力電力に応じた回路構成とすることができるので、出力電力を高めることができる。
【0008】
一形態の電源装置は、入力電力を出力電力に変換する動作において、充電動作の回数と1回あたりの充電動作における容量部の大きさとの積は、第1制御信号による動作と第2制御信号による動作とで一定であってもよい。この構成によれば、出力電力を確実に向上させることができる。
【0009】
一形態の電源装置は、昇圧部の動作状態を示す動作状態データを取得すると共に、動作状態データに示される状態の昇圧部の動作状態を評価する動作評価データを得る出力評価部をさらに備えてもよい。制御部は、動作評価データに応じて、第1制御信号及び第2制御信号のいずれか一方を昇圧部へ出力してもよい。この構成によれば、出力電力の評価を行うことができる。従って、昇圧部の回路構成を切り替えながら、動作評価データを取得すると共に、取得した動作評価データを用いて昇圧部の出力特性を評価できる。従って、出力電力を最大化できる昇圧部の回路構成を決定することができる。
【0010】
一形態の電源装置の昇圧部は、第1容量部への充電動作、第2容量部への充電動作及び合成容量部への充電動作を制御する駆動信号を発生する駆動信号発生部をさらに有してもよい。駆動信号は、第1容量部への充電動作、第2容量部への充電動作及び合成容量部への充電動作を実行させる充電動作成分を含んでもよい。出力評価部は、動作状態データとして駆動信号を取得する駆動信号取得部と、動作状態データである駆動信号が含む単位時間当たりの充電動作成分の数を数えて、充電動作成分の数を動作評価データとして取得する計数部と、を有してもよい。この構成によれば、動作評価データを得ることができる。
【0011】
一形態の電源装置の出力評価部は、昇圧部に対する計測負荷電流を発生する計測負荷発生部と、計測負荷電流を受けたときの出力電圧を動作状態データとして取得して、出力電圧を要求電圧と比較する電圧比較部と、出力電圧が要求電圧より低くなる計測負荷電流を動作評価データとして取得する判定部と、を有してもよい。この構成によっても、動作評価データを得ることができる。
【0012】
一形態の電源装置は、入力電力の状態に応じる入力電圧を取得する入力評価部をさらに備えてもよい。制御部は、入力電圧に応じて、第1制御信号及び第2制御信号のいずれか一方を昇圧部へ出力してもよい。この構成によれば、繰り返し動作を要することなく、入力電圧から直接に第1制御信号及び第2制御信号のいずれか一方を昇圧部へ出力することができる。
【0013】
本発明の別の形態は、外部エネルギを受けて電力を発生する発電部から電力を入力電力として受けて、入力電力における入力電圧を入力電圧よりも高い出力電圧に昇圧した出力電力を出力すると共に、第1容量部及び第2容量部を含む複数の容量部を有する昇圧回路の制御装置である。昇圧回路の制御装置は、昇圧回路に第1制御信号又は第2制御信号を出力する制御部と、昇圧回路の動作状態を示す動作状態データを取得すると共に、動作状態データに示される状態の昇圧回路の動作状態を評価する動作評価データを得る出力評価部と、を備える。制御部は、第1容量部への第1充電動作と、第1充電動作の後に実行される第2容量部への充電動作と、を含んで、入力電力を出力電力に変換する第1制御信号と、第1容量部及び第2容量部により形成される合成容量部への充電動作を含んで、入力電力を出力電力に変換する第2制御信号と、を有する。制御部は、入力電力の状態に応じて、第1制御信号及び第2制御信号のいずれか一方を昇圧回路へ出力する。
【0014】
この昇圧回路の制御装置によれば、昇圧回路の出力電力を高めることができる。
【0015】
本発明のさらに別の形態は、外部エネルギを受けて電力を発生する発電部から電力を入力電力として受けて、入力電力における入力電圧を入力電圧よりも高い出力電圧に昇圧した出力電力を出力すると共に、第1容量部及び第2容量部を含む複数の容量部を有する昇圧回路の制御装置である。昇圧回路の制御装置は、昇圧回路に第1制御信号又は第2制御信号を出力する制御部と、入力電力の状態に応じる入力電圧を取得する入力評価部と、を備える。制御部は、入力電圧に応じて、第1制御信号及び第2制御信号のいずれか一方を昇圧回路へ出力する。
【0016】
この昇圧回路の制御装置によっても、昇圧回路の出力電力を高めることができる。
【0017】
本発明のさらに別の形態は、入力電力における入力電圧を入力電圧よりも高い出力電圧に昇圧した出力電力を出力する昇圧回路の出力を評価する昇圧回路の出力評価装置である。昇圧回路の出力評価装置は、昇圧回路が有する複数の容量部に充電動作をさせる充電動作成分を含む駆動信号を昇圧回路から取得する駆動信号取得部と、駆動信号が含む単位時間当たりの充電動作成分の数を数えて、充電動作成分の数を昇圧回路の出力を評価する動作評価データとして取得する計数部と、を備える。
【0018】
この昇圧回路の出力評価装置によれば、入力電力に対する昇圧回路の適否を評価することができる。
【0019】
本発明のさらに別の形態は、入力電力における入力電圧を入力電圧よりも高い出力電圧に昇圧した出力電力を出力する昇圧回路の出力を評価する昇圧回路の出力評価装置である。昇圧回路の出力評価装置は、昇圧回路に対する計測負荷電流を発生する計測負荷発生部と、計測負荷電流を受けたときの出力電圧を取得して、出力電圧と出力電圧を受ける負荷装置が要求する要求電圧とを比較する電圧比較部と、出力電圧が要求電圧より低くなる計測負荷電流を昇圧回路の出力を評価する動作評価データとして取得する判定部と、を備える。
【0020】
この昇圧回路の出力評価装置によっても、入力電力に対する昇圧回路の適否を評価することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の電源装置、昇圧回路の制御装置、及び昇圧回路の出力評価装置によれば、出力電力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、第1実施形態に係る電源装置の構成を示す機能ブロック図である。
図2図2(a)は、容量部の第1の接続構成を例示する図である。図2(b)は、容量部の第2の接続構成を例示する図である。
図3図3は、電源装置の動作を示すフローチャートである。
図4図4は、第2実施形態に係る電源装置の構成を示す機能ブロック図である。
図5図5は、出力電力モニタ装置の回路構成を例示する図である。
図6図6は、出力電力モニタ装置において最大負荷電流を得る処理を説明するための図である。
図7図7は、第3実施形態に係る電源装置の構成を示す機能ブロック図である。
図8図8は、実施例の電源装置の回路構成を例示する図である。
図9図9(a)は、接続構成の一例を示す図である。図9(b)は、図9(a)の等価回路を示す図である。
図10図10(a)は、接続構成の別の一例を示す図である。図10(b)は、図10(a)の等価回路を示す図である。
図11図11(a)は検討例1において開放電圧が0.5Vであるときの段数と単位容量との関係を示すコンター図である。図11(b)は検討例1において開放電圧が0.7Vであるときの段数と単位容量との関係を示すコンター図である。
図12図12(a)は検討例1において開放電圧が1.0Vであるときの段数と単位容量との関係を示すコンター図である。図12(b)は検討例1において開放電圧が1.5Vであるときの段数と単位容量との関係を示すコンター図である。
図13図13は、検討例2において開放電圧と段数との関係及び開放電圧と単位容量との関係を併記したグラフである。
図14図14は、検討例3において、回路構成を制御する昇圧回路と、昇圧回路の構成が不変である比較例の電源装置と、の出力特性を比較したグラフである。
図15図15は、出力電力モニタ装置及びコントローラを構成するコンピュータを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照しながら電源装置、昇圧回路の制御装置、及び昇圧回路の出力評価装置の例示を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付す。図面の説明において重複する説明は省略する。
【0024】
図1に示すように、電源装置1は、外部エネルギを利用して発電する。電源装置1は、負荷装置200に電力を供給する。例えば、電源装置1が熱エネルギを利用して発電するものであり、負荷装置200が通信装置であるとする。この構成によれば、電源装置1及び負荷装置200は、火災報知器として機能する。火災によって電源装置1の温度が上昇すると、電源装置1が発電を開始する。電源装置1から出力された電力が、負荷装置200である通信装置の動作に十分な量に達すると、通信装置は、外部に火災が発生した信号を出力する。つまり、電源装置1と負荷装置200とにより構成される火災報知器は、外部から電力の提供を受けることなしに、火災の発生を報知できる。また、火災報知器は、自らバッテリを備える必要もない。
【0025】
なお、電源装置1及び負荷装置200が火災報知器を構成する説明は、一例に過ぎない。電源装置1が利用する外部エネルギは、熱エネルギに限定されない。電源装置1が利用する外部エネルギは、振動などの力学的なエネルギであってもよい。また、負荷装置200は、通信装置に限定されない。負荷装置200は、周囲環境の状態を計測するような測定装置であってもよい。
【0026】
電源装置1は、発電素子2(発電部)と、昇圧回路3(昇圧部)と、出力電力モニタ装置4(出力評価部)と、コントローラ5(制御部)と、を有する。負荷装置200は、電源装置1の構成要素に含まれない。出力電力モニタ装置4及びコントローラ5は、昇圧回路3の制御装置6を構成する。また、出力電力モニタ装置4は、昇圧回路3の出力評価装置である。
【0027】
発電素子2は、外部エネルギを受けて、当該外部エネルギを電気エネルギに変換する。発電素子2は、外部エネルギを受けて電気エネルギを発生可能な種々の素子を用いてよい。
【0028】
直流電圧の発電素子としては、太陽光エネルギを利用した太陽電池や、温度差による電荷の偏りを利用した熱電変換素子などが挙げられ、交流電圧の発電素子としては、振動による双極子モーメントの乱れを利用した圧電素子や、電磁誘導電圧を利用した振動素子、焦電効果を利用した焦電素子、電波の受信によって発電するRF素子などが挙げられる。なお、発電素子2が交流電圧を出力する場合には、発電素子2と昇圧回路3との間に、交流電圧を直流電圧に変換する装置(コンバータ)を備えてもよい。
【0029】
特に熱電変換素子は、もっともありふれたエネルギである熱エネルギを使用するという点で、今後、応用可能な範囲が拡大することが期待されている。熱電変換素子に用いられる材料は、無機半導体または有機導電性高分子などがある。カーボンナノチューブ(CNT)を使った素子は、柔軟性(フレキシビリティ)を有するとともに軽量である。さらに、カーボンナノチューブ(CNT)を使った素子は、薄膜を使った素子である。従って、発電素子2としてカーボンナノチューブ(CNT)を利用した素子を採用することにより、同一の環境でも他の材料よりも温度差を拡大できる構造を実現することができる。その結果、発電素子2を取り付けることが可能な使用環境が大きく広がる。従って、応用範囲を広げることができる。
【0030】
カーボンナノチューブ(CNT)としては、単層カーボンナノチューブ(単層CNT)、及び、多層カーボンナノチューブ(多層CNT)を用いることができる。カーボンナノチューブ(CNT)として、単層CNTを用いることが好ましい。CNTは、単層CNTまたは多層CNTをそれぞれ単独で用いてもよい。CNTは、混合して用いてもよい。混合して用いる場合、単層CNTの含有割合は、50質量%以上であることが好ましい。さらに、単層CNTの含有割合は、70質量%以上であることがより好ましい。さらに、単層CNTの含有割合は、90質量%以上であることが好ましい。単層CNTの平均直径は、0.7nm以上15nm以下である。単層CNTは、ラマンスペクトルにおけるDバンドピーク強度に対するGバンドピーク強度の比(G/D比)が1以上20以下であることが好ましい。単層CNTは、合成時における繊維状の炭素ナノ構造体の平均長さが100μm以上であることが好ましい。単層CNTのBET比表面積は、600m/g以上であることが好ましい。BET比表面積は、800m/g以上であることが更に好ましい。BET比表面積は、2500m/g以下であることが好ましい。BET比表面積は、1200m/g以下であることが更に好ましい。
【0031】
単層CNTの製造には、例えば、スーパーグロース法(国際公開第2006/011655号参照)を採用してよい。スーパーグロース法は、触媒層の触媒活性を飛躍的に向上させるものである。例えば、カーボンナノチューブ製造用の触媒層を表面に有する基材上に、原料化合物及びキャリアガスを供給する。つまり、化学的気相成長法(CVD法)によりCNTを合成する際に、系内に微量の酸化剤(触媒賦活物質)を存在させる。この方法によれば、基材表面への触媒層の形成をウェットプロセスにより行うために、効率的に製造することができる。なお、以下では、スーパーグロース法により得られるカーボンナノチューブを「SGCNT」と称することがある。SGCNT(Super Growth Carbon nanotube)は、他のCNTに比べて、純度が高い。さらに、SGCNTは、ドーピングの効果が高いため発電能力(ゼーベック係数)が大きい。従って、SGCNTは、熱電変換素子としての適性が高い。SGCNTは、低コストおよび材料純度が高いという特徴を有する。さらにSGCNTは、ドーピングがしやすいという特徴も有する。
【0032】
昇圧回路3は、発電素子2が発生する電力を入力電力Pinとして受ける。昇圧回路3は、入力電力Pinにおける入力電圧Vinを、入力電圧Vinよりも高い出力電圧Voutに昇圧する。そして、昇圧回路3は、出力電圧Voutに基づく出力電力Poutを出力する。
【0033】
昇圧回路3は、いわゆるチャージポンプである。昇圧回路3は、第1容量部31aと、第2容量部31bと、第3容量部31cと、第4容量部31dと、を有する。第1容量部31a、第2容量部31b、第3容量部31c及び第4容量部31dは、スイッチ回路32によって接続構成が切り替え可能である。例えば、昇圧回路3が第1容量部31a、第2容量部31b、第3容量部31c及び第4容量部31dを有する場合、昇圧回路3は、図2(a)に示す第1の接続構成と、図2(b)に示す第2の接続構成と、取り得る。第1の接続構成と第2の接続構成とは、スイッチ回路32の動作によって、相互に切り替え可能である。スイッチ回路32は、コントローラ5が出力する制御信号φに応じて接続構成を切り替える。
【0034】
図2(a)に示す第1の接続構成は、第1容量部31a、第2容量部31b、第3容量部31c及び第4容量部31dを直列に接続したものである。まず、第1容量部31aに入力電圧Vinが充電される。次に、入力電圧Vinと第1容量部31aに充電された電圧とが加算された第1昇圧電圧が、第2容量部31bに充電される。次に、入力電圧Vinと第1昇圧電圧が加算された第2昇圧電圧が、第3容量部31cに充電される。このような充電動作を繰り返すごとに、電圧が上昇する。そして、昇圧回路3が入力電圧Vinを出力電圧Voutに昇圧する間の昇圧動作において行われた充電動作の数を「段数」として標記する。換言すると、第1の接続構成における「段数」は、昇圧回路3が入力電圧Vinを出力電圧Voutに昇圧する間の昇圧動作において利用された容量部の数である。つまり、第1の接続構成では、第1容量部31aへの充電動作と、第2容量部31bへの充電動作と、第3容量部31cへの充電動作と、第4容量部31dへの充電動作と、がこの順に行われる。したがって、第1の接続構成の段数Nは、4である。
【0035】
第2の接続構成は、第1合成容量部31sと、第2合成容量部31kと、を直列に接続したものである。第1合成容量部31sは、第1容量部31aと第2容量部31bとを並列に接続したものである。第2合成容量部31kは、第3容量部31cと第4容量部31dとを並列に接続したものである。第2の接続構成では、まず、第1合成容量部31sに入力電圧Vinが充電される。次に、入力電圧Vinと第1合成容量部31sにsされた電圧とが加算された第1昇圧電圧が、第2合成容量部31kに充電される。つまり、第2の接続構成において、入力電圧Vinを出力電圧Voutに昇圧する間の昇圧動作において行われた充電動作の数は、2回である。換言すると、第2の接続構成では、入力電圧Vinを出力電圧Voutに昇圧する間には、第1合成容量部31sと、第2合成容量部31kと、を用いる。つまり、容量部の数は、実質的に2個である。したがって、第2の接続構成の段数Nは、2である。
【0036】
上述のとおり、「段数」を構成する容量部の数は、昇圧回路3が有する第1容量部31a、第2容量部31b、第3容量部31c及び第4容量部31dの数を必ずしも意味しない。接続構成によっては、1個の容量部が1段を構成する場合もあるし、複数個(例えば2個)の容量部が1段を構成する場合もあり得る。
【0037】
ここで、第1容量部31a、第2容量部31b、第3容量部31c及び第4容量部31dの静電容量が互いに同じであるとする。そして、上述した「段数」をNとして示す。さらに、1段あたりの静電容量を「C」として示す。そうすると、段数Nと単位容量Cとの積は、第1の接続構成と第2の接続構成との間で保存される。換言すると、昇圧回路3において、複数の容量部の接続構成が切り替わったとしても、段数Nと単位容量Cの積は、一定である。例えば、第1の接続構成では、4段(N=4)であり、1段あたりの静電容量である単位容量Cは1(C=1)であるとする。この場合、積は4である。そして、第2の接続構成では、2段(N=2)であり、1段あたりの静電容量である単位容量Cは2(C=2)であるとする。静電容量が1である第1容量部31aと、静電容量が1である第2容量部31bと、が並列に接続された場合には、第1合成容量部31sの静電容量は2である。したがって、第2の接続構成においても積は4である。
【0038】
図2(a)及び図2(b)に示す第1容量部31a、第2容量部31b、第3容量部31c及び第4容量部31dを示す矩形の面積は、それぞれの容量部の静電容量に対応するとみなすこともできる。そして、静電容量は、回路上の面積と相関する。そうすると、第1容量部31a、第2容量部31b、第3容量部31c及び第4容量部31dを示す矩形の面積は、回路基板に示す容量部の面積に相当するともみなせる。図2(a)に示す接続構成としても、図2(b)に示す接続構成としても、回路基板上に占める容量部の面積は変わらない。つまり、入力電力Pinに対応するように回路構成を変えても、回路基板上に占める容量部の面積は不変である。
【0039】
昇圧回路3は、複数の容量部の接続構成を切り替える構成を採用し、そして、いずれの接続構成においても段数Nと単位容量Cとの積は、一定である。このような構成によれば、昇圧回路3の出力電力Poutの低下を抑制できることに、発明者らは相当するに至った。
【0040】
なお、段数Nと単位容量Cとの積が一定とは、厳密に数値が等しいことに限定されない。つまり、段数Nと単位容量Cとの積は、一定とみなせる幅を含む。この幅は、昇圧回路3の出力電力Poutの低下を抑制できる効果が得られる範囲を基準として決定してもよい。また、第1容量部31a、第2容量部31b、第3容量部31c及び第4容量部31dがそれぞれ含む静電容量のばらつきに基づいて決定してもよい。
【0041】
第1容量部31a、第2容量部31b、第3容量部31c及び第4容量部31dの充電動作は、駆動信号θによって制御される。昇圧回路3は、駆動信号θを発生する駆動信号発生部33を有する。駆動信号θが出力されるとき、昇圧回路3は、負荷装置200に出力電力Poutを提供する。駆動信号θが停止されるとき、昇圧回路3は、負荷装置200に出力電力Poutを提供しない。駆動信号θは、所定の周期をもって出力される駆動パルス(充電動作成分)を含むクロック信号である。駆動信号発生部33は、出力電圧Voutに基づいて駆動信号θを出力するか否かを決定する。駆動信号発生部33は、負荷装置200が要求する要求電圧Vdより出力電圧Voutが低いとき、駆動パルスを含む駆動信号θを出力する。駆動信号発生部33は、負荷装置200が要求する要求電圧Vdより出力電圧Voutが高いとき、駆動パルスを含む駆動信号θを出力しない。
【0042】
出力電力モニタ装置4は、動作状態データに基づいて動作評価データを得る。動作状態データは、昇圧回路3の動作状態を示す。本実施形態において動作状態データは、駆動信号θである。動作評価データは、動作状態データに示される状態の昇圧回路3の動作状態を評価する。本実施形態において動作評価データは、単位時間あたりの駆動パルス数EPである。昇圧回路3の動作が良好であるとき、1つの駆動パルスあたりの出力電力は大きい。したがって、要求電力Pdを満たすための駆動パルス数EPは少なくなる。逆に、昇圧回路3の動作が良好でないとき、1つの駆動パルスあたりの出力電力は小さい。したがって、要求電力Pdを満たすための駆動パルス数EPは多くなる。その結果、駆動パルス数EPに基づけば、昇圧回路3の動作状態が良好であるか否かを知ることができる。したがって、単位時間当たりの駆動パルス数EPは、昇圧回路3の動作状態の評価に利用できる。
【0043】
出力電力モニタ装置4は、物理的な電気回路として構成されてもよい。また、出力電力モニタ装置4はコンピュータであり、上述した各動作がプログラムの実行によって実現されてもよい。この場合には、出力電力モニタ装置4は、機能構成要素として、駆動信号取得部41aと、駆動パルス計数部41bと、を有する。駆動信号取得部41aは、昇圧回路3の駆動信号発生部33から駆動信号θを受ける。駆動信号取得部41aは、駆動パルス計数部41bに駆動信号θを出力する。駆動パルス計数部41bは、駆動信号θにおいて単位時間あたりの駆動パルス数EPを数える。駆動パルス計数部41bは、駆動パルス数EPをコントローラ5に出力する。
【0044】
コントローラ5は、スイッチ回路32のための制御信号φを出力する。コントローラ5が行う出力動作は、2個の動作を含む。第1の動作は、探索動作である。コントローラ5は、探索動作において、良好な動作状態となる昇圧回路3の回路構成を探索する。具体的には、出力電力Poutが最大となる、第1容量部31a、第2容量部31b、第3容量部31c、第4容量部31dの接続構成を探す。換言すると、出力電力Poutが最大となる、段数Nと1段当たりの単位容量Cとを探す。第2の動作は、定常動作である。コントローラ5は、定常動作において、探索動作によって得られた良好な動作状態となる段数Nと1段当たりの単位容量Cとなるような制御信号φsを昇圧回路3に出力する。例えば、コントローラ5は、所定の期間の冒頭において探索動作を行う。そして、所定の期間の残り期間において定常動作を行う。そして、コントローラ5は、探索動作と定常動作とを繰り返す。
【0045】
コントローラ5は、物理的な電気回路として構成されてもよい。また、コントローラ5はコンピュータであり、上述した各動作がプログラムの実行によって実現されてもよい。この場合には、コントローラ5は、機能構成要素として、動作評価データ取得部51と、判定部52と、カウンタ53と、制御信号出力部54と、記憶部55と、を有する。
【0046】
ここで、出力電力モニタ装置4及びコントローラ5を構成するコンピュータについて説明する。図15は、コンピュータ300のハードウェア構成を示す。図15に示すように、コンピュータ300は、物理的には、演算装置であるCPU301(Central Processing Unit)と、記録媒体であるRAM302(Random Access Memory)と、ROM303(Read Only Memory)と、通信モジュール304と、入出力モジュール306と、を含む。コンピュータ300は、必要に応じて、これらの構成要素とは別の装置を含んでもよい。これらの構成要素は、互いに電気的に接続されている。コンピュータ300は、入出力モジュール306として、ディスプレイ、キーボード、マウス、タッチパネルディスプレイ等を含んでもよい。コンピュータ300は、入出力モジュール306として、ハードディスクドライブ及び半導体メモリ等のデータ記録装置を含んでもよい。また、コンピュータ300は、複数のコンピュータによって構成されてもよい。
【0047】
図1に示す出力電力モニタ装置4及びコントローラ5の機能構成要素は、以下のような動作によって実現される。まず、コンピュータ300は、CPU301及びRAM302等のハードウェア上にプログラムを読み込ませる。次に、コンピュータ300は、CPU301の制御のもとで、通信モジュール304、及び入出力モジュール306等を動作させる。さらに、コンピュータ300は、RAM302におけるデータの読み出し及び書き込みを行う。コンピュータ300のCPU301は、昇圧回路の制御処理が記述されたコンピュータプログラムを実行することによって、コンピュータ300を図1の機能構成要素として機能させる。そして、昇圧回路の制御に関する処理を順次実行する。コンピュータプログラムの実行に必要な各種データ、及び、コンピュータプログラムの実行によって生成された各種データは、全て、ROM303及びRAM302等の内蔵メモリ、又は、ハードディスクドライブなどの記憶媒体に格納される。
【0048】
まず、探索動作であるときの各構成要素の働きについて説明する。探索動作では、コントローラ5は、制御信号φを昇圧回路3に出力する信号出力動作と、制御信号φによる回路構成によって得られる駆動パルス数EPを得るパルス数取得動作と、を繰り返す。そして、最も高い出力電力Poutとなる回路構成とした制御信号φsを決定する。信号出力動作とパルス数取得動作との繰り返しは、カウンタ変数kによって制御される。
【0049】
動作評価データ取得部51は、出力電力モニタ装置4から駆動パルス数EPを受ける。動作評価データ取得部51は、駆動パルス数EPを判定部52に出力する。
【0050】
判定部52は、k回目の信号出力動作及びパルス数取得動作によって得た駆動パルス数EP(k)が、k-1回目の信号出力動作及びパルス数取得動作によって得た駆動パルス数EP(k-1)より大きいか否かを比較する。判定部52は、駆動パルス数EP(k)が駆動パルス数EP(k-1)よりも大きいとき、駆動パルス数EPを得た制御信号φを定常動作に用いる制御信号φsとして決定する。判定部52は、駆動パルス数EP(k)が駆動パルス数EP(k-1)よりも少ないとき、カウンタ変数kに1を加える。
【0051】
記憶部55は、段数Nと単位容量Cとの組み合わせをあらかじめ保存する。この組み合わせは、カウンタ変数kによって指定できる。記憶部55は、カウンタ変数kに基づいて複数の組み合わせから所定の段数Nと単位容量Cとの組み合わせを指定する。段数Nと単位容量Cとの組み合わせの情報は、制御信号出力部54に出力される。
【0052】
制御信号出力部54は、段数Nと単位容量Cとの組み合わせの情報に基づいて制御信号φを生成する。そして、制御信号出力部54は、制御信号φを昇圧回路3に出力する。制御信号φは、スイッチ回路32が含む複数のスイッチのそれぞれに与えられる複数のON/OFF信号を含む。制御信号出力部54は、段数Nと単位容量Cとの組み合わせ情報に基づいて、ONするスイッチとOFFするスイッチを決定する。
【0053】
なお、記憶部55は、所定の段数Nと単位容量Cとの組み合わせを実現するスイッチのON/OFFの情報を保存していてもよい。この場合には、コントローラ5は、制御信号出力部54を介することなく、記憶部55が直接に制御信号φを出力する。
【0054】
次に、定常動作であるときの各構成要素の働きについて説明する。定常動作では、探索動作において決定された制御信号φsを出力する。定常動作であるとき、コントローラ5は、記憶部55に記憶されている選択された段数Nと単位容量Cとの組み合わせの情報を制御信号出力部54に出力する。制御信号出力部54は、選択された段数Nと単位容量Cとの組み合わせの情報に基づいて制御信号φsを生成し、出力する。
【0055】
図3は、コントローラ5が行う探索動作の一例を示すフローチャートである。
【0056】
コントローラ5は、カウンタ変数kを初期値(1)に設定する(ステップS01)。次に、コントローラ5は、制御信号φを昇圧回路3に出力する(ステップS02)。具体的には、コントローラ5は、カウンタ変数kに基づいて、記憶部55から組み合わせ情報を読み出す。そして、コントローラ5は、組み合わせ情報を制御信号出力部54に入力する。制御信号出力部54は、組み合わせ情報に基づいてスイッチ回路32のオン/オフを決める信号を生成し、出力する。
【0057】
次に、コントローラ5は、動作評価データを得る(ステップS03)。動作評価データは、本質的には出力電流Ioutの最大値である。第1実施形態の処理では、動作評価データは、駆動信号θが含む単位時間あたりの駆動パルス数EPである。コントローラ5は、動作評価データを出力電力モニタ装置4から得る。コントローラ5は、取得した動作評価データをカウンタ変数kと紐づけする(ステップS04)。次に、コントローラ5は、動作評価データの比較を行う(ステップS05)。コントローラ5は、記憶部55から判定部52へ動作評価データを読み出す。読み出される動作評価データは、前回のループで得た値である。
【0058】
ところで、この説明では、動作評価データとして駆動パルス数EPを選択している。そして、要求電力Pdを満たす出力電力Poutを発生するとき、1個の駆動パルスに対応する出力電力Poutが大きい場合には、要求電力Pdを満たす出力電力Poutを発生させるために要する駆動パルスの数は少なくてよい。この場合には、昇圧回路3の構成は、入力電力Pinに対応していると言える。1個の駆動パルスに対応する出力電力Poutが小さい場合には、要求電力Pdを満たす出力電力Poutを発生させるために、多くの駆動パルスを要する。この場合には、昇圧回路3の構成は、入力電力Pinに対応していると言えない。探索動作において、初期状態の回路構成が対応する入力電力Pinは、最小設定値である。そして、ループを繰り返すごとに、回路構成が対応する入力電力Pinは、大きくなる。
【0059】
多くの場合、入力電力Pinは、最小設定値と最大設定値との間である。そうすると、初期状態の回路構成は、入力電力Pinに対応していない。そして、ループを繰り返すごとに、回路構成は、入力電力Pinに対応するように近づく。つまり、1個の駆動パルスに対応する出力電力Poutが大きくなるから、要求電力Pdを満たす出力電力Poutを発生させるために要する駆動パルスの数は次第に減少する。したがって、比較の結果、今回のループで得た動作評価データが前回のループで得た動作評価データより小さい場合には、回路構成が最適な回路構成に近づいている状態であると言える。したがって、入力電力Pinに適した回路構成に至っている状態ではないので、回路構成を変更したのちに、再び駆動パルス数EPを得る。回路構成を変更は、カウンタ変数kのカウントアップによって表現される(ステップS05)。
【0060】
そして、回路構成が対応する入力電力Pinが、実際に受けている入力電圧Vinより大きくなると、1個の駆動パルスに対応する出力電力Poutが減少する。つまり、要求電力Pdを満たす出力電力Poutを発生させるために要する駆動パルスの数は減少から増加に転じる。したがって、駆動パルスの数が減少から増加に転じた動作の1つ前の動作で設定した回路構成が、実際に受けている入力電力Pinに最も適していることがわかる。つまり、比較の結果、今回のループで得た動作評価データが前回のループで得た動作評価データより大きい場合には、ステップS06に移行する。そして、コントローラ5は、カウンタ変数(k-1)で示される段数と静電容量との組み合わせが、その時点での最適な構成であるとして、記憶部55に保存する。
【0061】
昇圧回路3の出力特性は、発電素子2から入力される入力電力Pinの影響を受ける。電源装置1は、入力電力Pinの状態を反映する動作状態データとして駆動信号θを取得する。そして、駆動信号θから動作評価データとして駆動パルス数を得る。当該駆動パルス数を用いて、入力電力Pinに対する昇圧回路3の構成の適否を判断する。従って、昇圧回路3における昇圧動作の態様を切り替えることが可能になる。その結果、昇圧回路3は、入力電力Pinに応じた回路構成とすることができるので、出力電力Poutを高めることができる。
【0062】
<第2実施形態>
図4に示す第2実施形態の電源装置1Aについて説明する。第1実施形態の電源装置1では、動作状態データは駆動信号θであり、動作評価データは駆動パルス数であった。第2実施形態の電源装置1Aでは、動作状態データは計測負荷電流Itestを与えたときの出力電圧Voutであり、動作評価データは計測負荷電流Itestの最大値である。
【0063】
電源装置1Aは、発電素子2と、昇圧回路3と、出力電力モニタ装置4Aと、コントローラ5Aと、を有する。発電素子2及び昇圧回路3の構成は、第1実施形態と同様であるから、詳細な説明は省略する。
【0064】
出力電力モニタ装置4Aは、計測用の負荷電流を与える。計測負荷電流Itestが小さいときに昇圧回路3の出力電力Poutは、要求電圧Vdを維持できる。計測負荷電流Itestが大きくなると昇圧回路3の出力電力Poutは、要求電圧Vdを維持できなくなる。要求電圧Vdを維持できる計測負荷電流Itestによれば、昇圧回路3の出力電力Poutの動作状態を評価できる。例えば、要求電圧Vdを維持できる計測負荷電流Itestが大きいとき、昇圧回路3の出力電力Poutは大きいといえる。要求電圧Vdを維持できる計測負荷電流Itestが小さいとき、昇圧回路3の出力電力Poutは小さいといえる。そこで、電源装置1Aは、上述のとおり、動作状態データとして計測負荷電流Itestを与えたときの出力電圧Voutを利用し、動作評価データとして計測負荷電流の最大値を利用する。
【0065】
図4及び図5を参照しながら電源装置1Aについて説明する。出力電力モニタ装置4Aは、計測負荷発生部42aと、電圧比較部42bと、最大負荷電流判定部42cと、を有する。計測負荷発生部42aは、計測負荷電流Itestを昇圧回路3に提供する。計測負荷発生部42aは、複数の計測負荷電流Itestを生じさせることが可能な構成を採用できる。例えば、計測負荷発生部42aは、複数の負荷抵抗を備え、それらの接続構成を相互に切り替え可能なものであってもよい。計測負荷発生部42aは、昇圧回路3の出力に接続されている。
【0066】
電圧比較部42bは、基準電圧Vrefと出力電圧Voutとを比較する。電圧比較部42bは、いわゆるコンパレータである。電圧比較部42bの反転入力には、抵抗R1を介して昇圧回路3の出力が接続されている。つまり、電圧比較部42bの反転入力は、出力電圧Voutを受ける。電圧比較部42bの非反転入力は、抵抗R2を介して基準電圧Vrefを受ける。基準電圧Vrefとは、例えば、負荷装置200の要求電圧Vdとしてもよい。電圧比較部42bは、出力電圧Voutが基準電圧Vrefよりも大きいとき、「0」を出力する。電圧比較部42bは、出力電圧Voutが基準電圧Vrefよりも低いとき、「1」を出力する。電圧比較部42bの出力Vdetは、最大負荷電流判定部42cに出力される。
【0067】
最大負荷電流判定部42cは、計測負荷発生部42aが出力する計測負荷電流Itestが最大値であるか否かを判定する。図6は、計測負荷電流Itestが最大値であるか否かを判定する動作を説明する図である。横軸は、計測負荷電流Itestである。縦軸は電圧比較部42bの出力Vdetである。計測負荷電流Itestが小さいとき、出力電圧Voutは基準電圧Vrefよりも高いので、電圧比較部42bの出力Vdetは「0」である。最大負荷電流判定部42cは、電圧比較部42bの出力Vdetが「0」であるとき、計測負荷発生部42aに計測負荷電流Itestを高めるための制御信号を出力する。電圧比較部42bの出力Vdetが「0」であるとは、目標の電圧(基準電圧Vref)を出力できていることを意味する。計測負荷電流Itestを段階的に高めると、出力電圧Voutが基準電圧Vrefより低くなる状態が生じる。出力電圧Voutが基準電圧Vrefより低くなると、電圧比較部42bは、出力Vdetとして「1」を出力する。図6の例示では、最大負荷電流判定部42cは、電圧比較部42bの出力Vdetが「0」となるいくつかの計測負荷電流Itestのうち、最も大きい計測負荷電流Itestを、計測負荷電流Itestの最大値としてコントローラ5Aに出力する。以下の説明では、計測負荷電流Itestの最大値を最大負荷電流Itest、maxとも称する。
【0068】
コントローラ5Aは、計測負荷電流Itestの最大値を用いて、コントローラ5Aが設定した昇圧回路3の回路構成について判定する。つまり、第2実施形態のコントローラ5Aは、昇圧回路3の回路構成を制御する動作と、当該回路構成によって得られる動作評価データを取得及び判定する動作と、を繰り返す点では、第1実施形態のコントローラ5と共通である。従って、コントローラ5Aは、構成要素として、動作評価データ取得部51、判定部52A、カウンタ53、制御信号出力部54及び記憶部55を有する。このうち、動作評価データ取得部51、カウンタ53、制御信号出力部54及び記憶部55の構成及び動作は、第1実施形態のコントローラ5と概ね共通する。第2実施形態の電源装置1Aでは、動作状態データと動作評価データとが第1実施形態と異なる。従って、第2実施形態の判定部52Aの動作は、第1実施形態の判定部52の動作と異なる。
【0069】
判定部52Aは、k回目の信号出力動作及び最大負荷電流の取得動作によって得た最大負荷電流Itest、max(k)が、k-1回目の信号出力動作及び最大負荷電流の取得動作によって得た最大負荷電流Itest、max(k-1)より大きいか否かを比較する。判定部52Aは、最大負荷電流Itest、max(k)が最大負荷電流Itest、max(k-1)よりも小さいとき、最大負荷電流Itest、max(k-1)を得た制御信号φ(k)を定常動作に用いる制御信号φsとして決定する。
【0070】
電源装置1Aの動作について説明する。第2実施形態では、探索動作における信号出力動作及び最大負荷電流Itest、maxの取得動作の繰り返しの中に、さらに、最大負荷電流Itest、maxを得る繰り返し動作を含む。
【0071】
コントローラ5Aは、カウンタ変数kを初期値(1)に設定する。次に、コントローラ5Aは、制御信号φを昇圧回路3に出力する。次に、コントローラ5Aは、出力電力モニタ装置4Aから動作評価データを得る。出力電力モニタ装置4Aは、計測負荷電流Itestの出力動作と、出力電圧Vout及び基準電圧Vrefの比較動作と、を繰り返す。そして、出力電圧Voutが基準電圧Vrefを下回ったときの計測負荷電流Itestを最大値(動作評価データ、最大負荷電流Itest、max)として判定する。
【0072】
次に、コントローラ5Aは、最大負荷電流Itest、maxに基づいて昇圧回路3の動作を評価する。第1実施形態で述べたように、コントローラ5Aは、入力電力Pinが小さい場合に対応する回路構成から探索動作を開始する。そうすると、昇圧回路3の構成は、入力電力Pinに最適となる構成に次第に近づく。つまり、出力電力Poutが増加する。その結果、最大負荷電流Itest、maxも次第に増加する。そして、回路構成が対応する入力電力Pinが、実際に受けている入力電力Pinより大きくなると、出力電力Poutが減少する。そこで、コントローラ5Aは、k回目の最大負荷電流Itest、max(k)とk-1回目の最大負荷電流Itest、max(k-1)とを比較して、最大負荷電流Itest、max(k)が最大負荷電流Itest、max(k-1)よりも小さいとき、最大負荷電流Itest、max(k)を得た制御信号φ(k)を定常動作に用いる制御信号φsとして決定する。そして、コントローラ5Aは、カウンタ変数(k-1)で示される段数Nと単位容量Cとの組み合わせが、その時点での最適な構成であるとして、記憶部55に保存する。一方、最大負荷電流Itest、max(k)が最大負荷電流Itest、max(k-1)よりも大きい場合は、入力電力Pinに適した回路構成に至っている状態ではない。従って、回路構成を変更したのちに、再び最大負荷電流Itest、maxを得る。
【0073】
第2実施形態の電源装置1Aによっても、入力電力Pinの状態に応じて昇圧回路3の構成を決めることができる。従って、発電素子2の開放電圧Vocが変動した場合であっても、十分な出力電力Poutを出力することができる。
【0074】
<第3実施形態>
図7に示す第3実施形態の電源装置1Bについて説明する。昇圧回路3の構成は、本質的には入力電力Pinの態様によって決まる。そこで、昇圧回路3の構成を決めるために、昇圧回路3に入力される入力電圧Vinに基づいて、昇圧回路3を制御してもよい。第3実施形態の電源装置1Bは、入力電圧Vinに基づいて昇圧回路3を制御する。
【0075】
電源装置1Bは、発電素子2と、昇圧回路3と、コントローラ5Bと、入力電圧モニタ装置7(入力評価部)と、を有する。また、電源装置1Bは、必要に応じて補助電源8を有してもよい。発電素子2及び昇圧回路3の構成は、第1実施形態と同様であるから、詳細な説明は省略する。
【0076】
入力電圧モニタ装置7は、入力電圧Vinを得る。つまり、入力電圧モニタ装置7は、発電素子2の開放電圧Vocを得る。入力電圧モニタ装置7は、発電素子2の出力に接続されている。入力電圧モニタ装置7は、例えば、電圧計であってもよい。入力電圧モニタ装置7は、入力電圧Vinをコントローラ5Bに出力する。
【0077】
コントローラ5Bは、入力電圧Vinに基づいて制御信号φを出力する。後述する検討例2によれば、入力電圧Vin(開放電圧Voc)には、出力電力Poutを最大化する段数Nが存在する。同様に、入力電圧Vin(開放電圧Voc)には、出力電力Poutを最大化する単位容量Cが存在する。つまり、入力電圧Vinが決まれば、段数N及び単位容量Cが決まる。つまり、第3実施形態の電源装置1Bは、第1実施形態の電源装置1Bのように、制御信号φの出力と当該制御信号φに起因して出力される動作状態評価データの取得と、を繰り返して、出力電力Poutが最も大きくなる段数N及び単位容量Cの組み合わせを探索する必要がない。
【0078】
コントローラ5Bは、入力電圧取得部51Bと、制御信号出力部54と、記憶部55と、駆動制御部56と、を有する。つまり、コントローラ5Bは、探索動作のための判定部52及びカウンタ53といった要素を備える必要がない。入力電圧取得部51Bは、入力電圧モニタ装置7から入力電圧Vinを受ける。入力電圧取得部51Bは、受け取った入力電圧Vinを制御信号出力部54に提供する。制御信号出力部54は、入力電圧Vinに基づいて、制御信号φを発生する。制御信号出力部54は、入力電圧Vinを利用して記憶部55から対応する段数N及び単位容量Cの情報を読み出す。
【0079】
記憶部55には、あらかじめ入力電圧Vinに紐づけられた段数N及び単位容量Cの情報が保存されている。当該情報は、例えば、入力電圧Vinが1V±0.25Vである場合には、段数Nが7であり単位容量Cが50pFであるというものであってもよい。つまり、段数N及び単位容量Cに紐づけられる入力電圧Vinは、所定の幅を含んでもよい。
【0080】
入力電圧Vin(開放電圧Voc)を得るためには、昇圧回路3の動作を停止する必要がある。そこで、コントローラ5Bは、駆動制御部56を有する。駆動制御部56は、昇圧回路3の動作を停止するための停止信号を出力する。当該停止信号は、昇圧回路3の駆動信号発生部33に入力される。駆動信号発生部33は、停止信号に応じて駆動信号θの出力を停止する。
【0081】
コントローラ5B及び入力電圧モニタ装置7は、昇圧回路3の出力電力Poutの一部を受けて動作する。昇圧回路3の動作が停止するということは、コントローラ5Bに電力が供給されないことを意味する。しかし、入力電圧モニタ装置7による入力電圧Vinの取得動作と、コントローラ5Bによる制御信号φの出力動作は、きわめて短時間に実行することができる。例えば、第4容量部31dへ充電された電力が出力されることによってコントローラ5B及び入力電圧モニタ装置7が動作し、その間、第1容量部31aへの充電動作を停止するといった動作によって昇圧回路3の制御動作を実行することが可能である。つまり、第1容量部31aへの充電が停止される状態を、昇圧回路3の停止とみなしてよい。
【0082】
なお、さらに確実な昇圧回路3の制御動作を行うために、電源装置1Bは、補助電源8を有してもよい。補助電源8は、昇圧回路3の動作を停止させている間に、コントローラ5B及び入力電圧モニタ装置7に電力を供給する。補助電源8は、当初から電力を蓄えている電池であってもよいし、昇圧回路3の出力電力によって充電される電池であってもよい。
【0083】
電源装置1Bの動作について説明する。まず、コントローラ5Bは、昇圧回路3の動作を停止させる。次に、入力電圧モニタ装置7は入力電圧Vin(開放電圧Voc)を得た後に、入力電圧Vinをコントローラ5Bに出力する。次に、コントローラ5Bは、入力電圧Vinを利用して記憶部55に保存された段数Nと単位容量Cとを読み出す。次に、コントローラ5Bは、読み出した段数Nと単位容量Cを実現する制御信号φを昇圧回路3に出力する。そして、コントローラ5Bは、昇圧回路3の動作を開始させる。
【0084】
第3実施形態の電源装置1Bによっても、入力電力Pinの状態に応じて昇圧回路3の構成を決めることができる。従って、発電素子2の開放電圧Vocが変動した場合であっても、十分な出力電力Poutを出力することができる。
【0085】
第3実施形態の電源装置1Bは、探索動作を要することなく、入力電力Pinの状態に応じて昇圧回路3の構成を決めることができる。したがって、コントローラ5Bの構成を単純化することができる。さらに、昇圧回路3の構成を決める処理の数が少なくなるので、昇圧回路3の構成を決定するための時間を短縮することができる。その結果、発電素子2の開放電圧Vocが短時間で変動する場合であっても、昇圧回路3の構成を決定する動作と、昇圧回路3の構成を切り替える動作と、を開放電圧Vocの変動に追従させることができる。
【0086】
<実施例>
以下、図8図9及び図10を参照しながら、電源装置100の具体的な電気回路の構成について例示する。
【0087】
電源装置100は、出力端子101aと、接地端子101bと、を有する。出力端子101aは、負荷装置200に接続されている。出力端子101aは、負荷装置200に出力電圧Voutを出力する。接地端子101bは、接地電位GNDから基準となる電位を受ける。電源装置100は、発電素子102と、昇圧回路103と、出力電力モニタ装置104と、コントローラ105と、を有する。
【0088】
発電素子102は、入力端子102aと、出力端子102bと、を有する。入力端子102a及び出力端子102bは、昇圧回路103に接続されている。発電素子102は、発電体121と、出力抵抗122と、を有する。出力抵抗122は、出力端子102bを介して昇圧回路103に接続されている。発電素子102は、外部エネルギを電気エネルギに変換する。発電素子102は、開放電圧Vocを出力する。発電素子102には、外部エネルギによって電気エネルギを発生可能な種々の素子を用いることができる。発電素子102は、一例として、TEG(Thermoelectric power Generator)である。発電素子102は、熱エネルギを利用して発電を行う。開放電圧Vocは、直流電圧である。
【0089】
昇圧回路103は、発電素子102に接続されている。昇圧回路103は、発電素子102から開放電圧Vocを受ける。昇圧回路103は、開放電圧Vocを昇圧する。昇圧された開放電圧Vocは、出力電圧Voutである。昇圧回路103は、負荷装置200に出力電圧Voutを出力する。昇圧回路103は、駆動信号θを出力する駆動信号発生部131と、電圧加算回路132Aと、電圧加算回路132Bと、を含む。
【0090】
駆動信号発生部131は、発電素子102に並列に接続されている。駆動信号発生部131は、電圧加算回路132Aに駆動信号θを出力する。駆動信号発生部131は、電圧加算回路132Bにも駆動信号θを出力する。電圧加算回路132Aは、入力端子103aを介して発電素子102に接続されている。電圧加算回路132Bは、電圧加算回路132Aに直列に接続されている。電圧加算回路132Bは、出力端子103bを介して負荷装置200に接続されている。
【0091】
電圧加算回路132Aは、キャパシタ133Aと、キャパシタ134Aと、ダイオード135Aと、スイッチ136Aと、スイッチ137Aと、スイッチ138Aと、を有する。キャパシタ133Aの一端は、駆動信号発生部131に接続されている。キャパシタ134Aの他端は、ダイオード135Aのカソード側に接続されている。キャパシタ133Aの他端と、キャパシタ134Aの一端との間には、スイッチ137Aが配置されている。キャパシタ133Aの一端と、キャパシタ134Aの一端との間には、スイッチ136Aが配置されている。キャパシタ133Aの他端と、キャパシタ134Aの他端との間には、スイッチ138Aが配置されている。また、ダイオード135Aのアノードは、昇圧回路103の入力端子103aを介して発電素子102に接続されている。
【0092】
スイッチ136A、スイッチ137A及びスイッチ138Aを切り替えることで、キャパシタ133A及びキャパシタ134Aの接続状態を切り替えることが可能である。例えば、スイッチ137AをON状態とし、スイッチ136A及びスイッチ138AをOFF状態とした場合、キャパシタ133A及びキャパシタ134Aは、互いに直列に接続される。また、スイッチ137AをOFF状態とし、スイッチ136A及びスイッチ138AをON状態とした場合、キャパシタ133A及びキャパシタ134Aは、互いに並列に接続される。すなわち、スイッチ136A、スイッチ137A及びスイッチ138Aの切り替えを行うことにより、キャパシタ133A及びキャパシタ134Aによって構成される合成キャパシタの静電容量を制御することができる。なお、スイッチ136AをON状態とし、スイッチ137A及びスイッチ138AをOFF状態とするとキャパシタ134Aのみを動作に使うこともできる。
【0093】
電圧加算回路132Bは、キャパシタ133Bと、キャパシタ134Bと、ダイオード135Bと、スイッチ136Bと、スイッチ137Bと、スイッチ138Bと、を有する。電圧加算回路132Bの接続構成は、電圧加算回路132Aの接続構成と同一である。したがって、電圧加算回路132Bの接続構成に関する説明は省略する。電圧加算回路132Bと、出力端子103bとの間には、ダイオード140が配置されている。すなわち、ダイオード140のカソード側には、出力端子103bが位置している。
【0094】
電圧加算回路132Aにおけるダイオード135Aのカソード側と、電圧加算回路132Bにおけるダイオード135Bのアノードとの間には、スイッチ139Aが配置されている。スイッチ139Aは、電圧加算回路132Aを電圧加算回路132Bに直列に接続する状態と、電圧加算回路132Aをダイオード140のアノードに直列に接続する状態とを切り替える。
【0095】
さらに、昇圧回路103は、スイッチ139Bを含む。スイッチ139Bは、入力端子103aとダイオード135Bのアノードとを接続する線路に配置されている。スイッチ139Bは、電圧加算回路132Aを経由することなく、入力端子103aをダイオード135Bのアノードに接続する。スイッチ139Bは、制御信号φ5に応じてON状態とOFF状態とを相互に切り替える。
【0096】
例えば、スイッチ139AをOFF状態にすると共にスイッチ139Bをオン状態にする。その結果、電圧加算回路132A及び電圧加算回路132Bは入力端子103aと出力端子101aに対して並列接続となる。一方、スイッチ139AをON状態にすると共にスイッチ139BをOFF状態にすると電圧加算回路132A及び電圧加算回路132Bは入力端子103aと出力端子101aに対して直列接続となる。
【0097】
図8に示す昇圧回路103は、2個の電圧加算回路132A及び電圧加算回路132Bを含む。しかし、昇圧回路103は、3個以上の電圧加算回路を含んでもよい。すなわち、昇圧回路103は、電圧加算回路132A及び電圧加算回路132Bと、電圧加算回路132Bに直列に接続された追加の電圧加算回路と、を含んでもよい。例えば、電圧加算回路132Aは、2個のキャパシタと、3個のスイッチとを含む。電圧加算回路132Aが含むキャパシタの数、スイッチの数及びこれらの接続構成は、適宜変更してよい。
【0098】
図9(a)に示す例では、コントローラ105は、第1制御信号φ1と、第2制御信号φ2と、制御信号φ3と、を昇圧回路103に出力する。第1制御信号φ1は、スイッチ136A及びスイッチ136Bを切断にする。第2制御信号φ2は、スイッチ137A及びスイッチ137Bを導通にする。制御信号φ3は、スイッチ138A及びスイッチ138Bを切断にする。また、コントローラ105は、スイッチ139Aを切り替えることにより、電圧加算回路132Aを電圧加算回路132Bに直列に接続するように、制御信号φ4を昇圧回路3に出力する。さらに、コントローラ105は、スイッチ139Bを切断にする制御信号φ5をスイッチ139Bに出力する。このとき、図9(a)に示す回路は、図9(b)に示す回路と等価である。
【0099】
図10(a)に示す例では、コントローラ105は、第1制御信号φ1と、第2制御信号φ2と、制御信号φ3と、を昇圧回路103に出力する。第1制御信号φ1は、スイッチ136A及びスイッチ136Bを導通にする。第2制御信号φ2は、スイッチ137A及びスイッチ137Bを切断にする。制御信号φ3は、スイッチ138A及びスイッチ138Bを導通にする。また、コントローラ105は、スイッチ139Aを切り替えることにより、電圧加算回路132Aをダイオード140のアノードに直列に接続するように、制御信号φ4を昇圧回路103に出力する。さらに、コントローラ105は、スイッチ139Bを導通にする制御信号φ5をスイッチ139Bに出力する。このとき、図10(a)に示す回路は、図10(b)に示す回路と等価となる。
【0100】
<検討例1>
昇圧回路103の段数Nと単位容量Cとを変数としたとき、これらの変数と出力電力Poutとの間には、相関がある。具体的には、段数Nと単位容量Cと積が保存されるとき、出力電力Poutを最大にすることができる。
【0101】
図11(a)、図11(b)、図12(a)及び図12(b)は、この関係を回路シミュレーションにより確認した結果を示す。図11(a)、図11(b)、図12(a)及び図12(b)に示すコンター図は、縦軸が単位容量Cを示し、横軸が段数Nを示す。また、ハッチングの濃淡は、出力電力Poutの大きさに対応する。濃いハッチングは、出力電力Poutが相対的に大きいことを示す。薄いハッチングは、出力電力Poutが相対的に小さいことを示す。各コンター図と、開放電圧Vocとの関係は、以下のとおりである。
図11(a):開放電圧Voc=0.5V。
図11(b):開放電圧Voc=0.7V。
図12(a):開放電圧Voc=1.0V。
図12(b):開放電圧Voc=1.5V。
【0102】
それぞれのコンター図において、出力電力Poutが最大となる段数Nと単位容量Cとの組み合わせが存在することがわかる。この最大となる段数Nと単位容量Cとの組み合わせは、点Mによって示している。出力電力Poutが最大となる段数Nと単位容量Cとの組み合わせは、開放電圧Vocの大きさに応じて変化する。図11(a)、図11(b)、図12(a)及び図12(b)を総合的に検討したとき、出力電力Poutが最大となる段数Nと単位容量Cとの組み合わせは、ある曲線Gpに存在することがわかった。この曲線Gpは、段数Nと単位容量Cとの積によって示される関数である。曲線Gpは、反比例の関係を示す。例えば、単位容量Cは、段数Nの逆数に比例するとも言える。
【0103】
この検討例1の結果によれば、段数Nと単位容量Cとが切り替え可能な回路があるとき、出力電力Poutを最大にする段数Nと単位容量Cとの組み合わせは、有限であることがわかった。その結果、段数Nと単位容量Cと積がある値となる組み合わせをあらかじめ準備しておき、その中から段数Nと単位容量Cとの組み合わせを選択することによって出力電力Poutを増大させることができることがわかった。出力電力Poutが最大となる段数Nと単位容量Cとの組み合わせは、検討例1の結果によると開放電圧Vocによって決まることがわかった。その結果、電源装置1の動作としては、以下の2個の動作モードがあり得る。
【0104】
第1に、開放電圧Vocに基づいて出力電力Poutを最大にする段数Nと単位容量Cとの組み合わせを選択する手法が採用できる。第3実施形態の電源装置1Bは、この手法を採用する。第2に、あらかじめ準備した段数Nと単位容量Cとの組み合わせについて、それぞれ出力電力Poutを取得し、最大の出力電力Poutを発生させた段数Nと単位容量Cとの組み合わせを選択する手法も採用できる。第1実施形態の電源装置1及び第2実施形態の電源装置1Aは、この手法を採用する。これは、総当たりによる探索によっても出力電力Poutを最大にする段数Nと単位容量Cとの組み合わせを特定できる程度に、出力電力Poutを最大にする段数Nと単位容量Cとの組み合わせが有限であるからこそ、採用できる。
【0105】
そもそも、昇圧回路103の入力抵抗が発電素子102の出力抵抗と等しいとき、出力電力Poutを最大化できる。すなわち、昇圧回路103の入力抵抗が発電素子102の出力抵抗と等しくなるように、昇圧回路103の回路構成を制御すれば、開放電圧Vocによらず出力電力Poutを最大化できる。開放電圧Vocが高いとき、出力電力Poutを最大化する段数Nは、減少する。段数Nが減少すると、昇圧回路3の入力抵抗も減少する。入力抵抗の減少は、1段あたりの静電容量(単位容量C)の増加によって補完できる。したがって、段数Nと単位容量Cとの積が保存される回路構成を選択することにより、出力電力Poutの低下を抑制できる。
【0106】
<検討例2>
検討例2では、開放電圧Vocと出力電力Poutが最大となる段数Nとの関係を確認した。また、検討例2では、開放電圧Vocと出力電力Poutが最大となる単位容量Cとの関係を確認した。検討例2の結果は、図13に示す。図13において、グラフG13aは、開放電圧Vocと段数Nとの関係を示す。また、グラフG13bは、開放電圧Vocと単位容量Cとの関係を示す。横軸は、開放電圧Vocを示す。第1の縦軸は、段数Nを示す。第2の縦軸は、単位容量Cを示す。
【0107】
グラフG13aを参照すると、開放電圧Vocの上昇に伴い、出力電力Poutが最大となる段数Nが減少することがわかった。昇圧回路103の昇圧比は、段数Nに比例する。開放電圧Vocが低い場合には、昇圧比を大きくする必要がある。したがって、出力電圧Voutが最大となる段数Nは多い。開放電圧Vocが高い場合には、昇圧比を大きくする必要がない。したがって、出力電力Poutが最大となる段数Nは少ない。グラフG13bを参照すると、開放電圧Vocの上昇に伴い、出力電圧Voutが最大となる単位容量Cが増加することがわかった。
【0108】
<検討例3>
検討例3では、実施形態の昇圧回路3の効果を比較例の昇圧回路との比較により確認した。実施形態の昇圧回路3は、開放電圧Vocに応じて出力電力Poutが最大となるように昇圧回路3の段数Nと静電容量とを可変にしたものである。比較例の昇圧回路3は、開放電圧Vocによらず昇圧回路3の段数Nと静電容量とを固定にしたものである。検討例3の結果は、図14に示す。図14において、横軸は、開放電圧Vocを示す。縦軸は出力電力Poutを示す。グラフG14aは実施形態の昇圧回路3に対応する。グラフG14bは比較例の昇圧回路に対応する。
【0109】
グラフG14a及びグラフG14bを参照すると、いずれも開放電圧Vocの上昇に伴って、出力電力Poutも増加することがわかった。しかし、開放電圧Vocの上昇に伴う出力電力Poutの増加の割合には、違いがあることがわかった。例えば、開放電圧Vocが1Vから2Vに上昇したとき、つまり、開放電圧Vocが2倍になった場合に、比較例の昇圧回路の出力電力Poutは、100μWから200μWに増加した。つまり、比較例の昇圧回路3の出力電力Poutは、2倍になった。一方、実施形態の昇圧回路3は、120μWから720μWに増加した。つまり、出力電力Poutは、6倍になった。検討例3によれば、実施形態の昇圧回路3は、比較例の昇圧回路よりもより大きい出力電力Poutを得ることできることがわかった。
【符号の説明】
【0110】
1,1A,1B,100…電源装置、2…発電素子(発電部)、3,103…昇圧回路(昇圧部)、4…出力電力モニタ装置(出力評価部)、5…コントローラ(制御部)、6…昇圧回路の制御装置、31a…第1容量部、31b…第2容量部、33,131…駆動信号発生部、41a…駆動信号取得部、41b…駆動パルス計数部、42a…計測負荷発生部、42b…電圧比較部、42c…最大負荷電流判定部、52,52A…判定部、200…負荷装置、φ1…第1制御信号、φ2…第2制御信号、θ…駆動信号(動作状態データ)、EP…駆動パルス数(動作評価データ)。
図1
図2
図3
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図10
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